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特許6989746変異型2-デオキシ-シロ-イノソース合成酵素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】変異型2-デオキシ-シロ-イノソース合成酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/88 20060101AFI20220104BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220104BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C12N9/88
C12N15/60 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P19/02
C12N15/10 200Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019509266
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2018010349
(87)【国際公開番号】W WO2018180568
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2019-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2017061572
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/研究開発項目(2)木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/木質バイオマスから各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】505111982
【氏名又は名称】学校法人 新潟科学技術学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】高久 洋暁
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晴丈
(72)【発明者】
【氏名】和田 光史
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 大輔
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/109479(WO,A1)
【文献】鈴木涼子他,アミノ酸置換による2-deoxy-scyllo-inosose(DOI)合成酵素活性の強化,日本農芸化学会大会講演要旨集,2017年03月05日,Vol.2017,2C23a04,要旨全文
【文献】J.Org.Chem.,2004年,vol.69,p.593-600
【文献】Proteins,2008年,vol.70,p.517-527
【文献】新潟薬科大学応用生命科学部研究年報2014(平成26年),2015年09月01日,p.31-33
【文献】脇坂直樹他,進化工学的手法による芳香族化合物前駆体合成酵素の高活性変異体の取得とその前駆体生産の効率化,日本農芸化学会大会講演要旨集,2011年03月05日,Vol.2011,p.1,要旨全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 9/88
C12N 15/60
C12N 15/63
C12P 19/02
C12P 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、下記(1)~(4)のうち少なくとも1種類のアミノ酸変異を有するポリペプチドであって、配列番号1のアミノ酸配列からなる野生型DOI合成酵素よりも高いDOI合成活性を有するポリペプチド
(A1)配列番号1のアミノ酸配列
(A2)グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列であって、且つ、配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(1)アミノ酸変異(a)及びアミノ酸変異(d)
(2)アミノ酸変異(b)及びアミノ酸変異(d)
(3)アミノ酸変異(c)及びアミノ酸変異(d)
(4)アミノ酸変異(e)
ここで、アミノ酸変異(a)~(e)はそれぞれ以下のアミノ酸変異を表す:
(a)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から14番目のアスパラギン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(b)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から37番目のチロシン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されるアミノ酸変異
(c)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から290番目のアラニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(d)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から293番目のトリプトファン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
(e)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から319番目のヒスチジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
【請求項2】
上記(4)の場合に、前記ポリペプチドがさらにアミノ酸変異(d)を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記(A2)のアミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有する、請求項1又は請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、(4)のアミノ酸変異を有する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のポリペプチドが有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する、ポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドの上流に連結されたプロモーター配列、及び前記ポリヌクレオチドの下流に連結されたターミネーター配列を含む発現カセット。
【請求項7】
請求項6に記載の発現カセットを含有するベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換体を培養することを含む、グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドの製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項8に記載の形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸と接触させることにより、グルコース又はグルコース-6-リン酸を2-デオキシ-シロ-イノソースへ変換することを含む、2-デオキシ-シロ-イノソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、改変2-デオキシ-シロ-イノソース(以下、「DOI」という。)合成酵素、該改変DOI合成酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、該ベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いた改変DOI合成酵素の製造方法、及びDOIの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックや洗剤など私達の日常生活において身近な製品の多くは、化石資源を原料として製造されている。これらの化成品原料となる炭素6員環化合物は、石油化学工業により、原油から生産されている。しかし、石油から化学製品原料を製造する従来からの石油化学プロセスを用いた場合には、有限な資源である石油の枯渇とそれに伴う価格の高騰、多量の二酸化炭素の排出による地球温暖化など、地球的規模の問題が生じる懸念がある。
【0003】
炭素6員環骨格を持つキラルな化合物であるDOIは、医薬、農薬、酸化抑制剤や香料等の各種有用化学品の合成のための非常に重要な中間原料である。DOIはカテコールやドロキノンなどの2価フェノールやヒドロキシヒドロキノンに合成変換することができる。例えば、Kakinuma等, Tetrahedron Letters, 2000, vol.41, p.1935は、DOIをカテコールに合成変換することを開示している。カテコールは神経系医薬品などの原料、食品香料原料、ヘアケア商品などの酸化防止剤などに使用され、ヒドロキノンは止血剤、鎮痛剤等の原料、美白剤等の化粧品に使用され、世界的に需要の高い物質である。DOIは、さらには、擬似糖であるカルバグルコースにも変換ができ、用途の広い中間原料である。例えば、特開2005-053899号公報は、DOIを原料としてカルバグルコースを合成することを開示している。
【0004】
多数の臨床医学的に重要な化学療法剤である2-デオキシストレプタミン含有アミノグリコシド系抗生物質の生合成過程に関与する酵素の1つに、初発の糖質を炭素環化する酵素が見出された。ブチロシン生産菌バチルス・サーキュランスに属する微生物より精製されたこの酵素は、グルコース-6-リン酸を基質、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を補酵素として、多段階の反応を触媒し、最終的にDOIを生合成した。Kudo等, J.Antibiot., 1999, vol.52, p.559及び特開2000-236881号公報は、バチルス・サーキュランスに属する微生物よりそのDOI合成酵素遺伝子(グルコース-6-リン酸をDOIに変換する反応を触媒する酵素をコードするbtrC)をクローニングし、大腸菌内でその遺伝子を発現、精製することで組換えDOI合成酵素を大量に得たことを記載している。さらに、特開2014-064513号公報は、グルコースにヘキソキナーゼ又はポリリン酸グルコキナーゼとDOI合成酵素を作用させる二段階の酵素反応か、グルコース-6-リン酸にDOI合成酵素を作用させる一段階の酵素反応でDOIが合成できることを開示している。さらにこの他にもHirayama等, J.Antibiot., 2005, vol.58, p.766はストレプトマイセス・フラジアエ由来のDOI合成酵素を開示しており、Subba等, Mol.Cells, 2005, vol.20, p.90はストレプトマイセス・リボシジフィカス由来のDOI合成酵素を開示しており、Kharel等, Arch.Biochem.Biophys., 2004, vol.429, p.204はストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のDOI合成酵素を開示しており、Unwin等, J.Antibiot., 2004, vol.57, p.436はミクロモノスポラ・エキノスポラ由来のDOI合成酵素を開示しており、Kharel等, FEMS Microbiol.Lett., 2004, vol.230, p.185はストレプトマイセス・テネブラリウス由来のDOI合成酵素を開示しており、Hirayama等, J.Antibiot., 2006, vol.59, p.358はストレプトアロテイカス・ヒンダスタヌス由来のDOI合成酵素を開示している。
【0005】
そのほか、特開2013-135697号公報は特定のアミノ酸配列を有する耐熱性DOI合成酵素を開示しており、Tamegai等, Biosci.Biotechnol.Biochem., 2010, vol.74, p.1215はバチルス・サーキュランスのDOI合成酵素に付随するBtrC2タンパク質の役割を記載している。国際公開第2006/109479号及びKogure等, J.Biotechnol., 2007, vol.129, p.502は、DOI合成酵素の遺伝子からなる発現カセットを開示しており、細胞内の糖代謝の工学的改変による生産量の増強も試みられている。国際公開第2010/053052号は、スクロース非PTS遺伝子群の中で少なくともスクロース加水分解酵素(CscA)をコードする遺伝子を有すると共に、2-デオキシ-シロ-イノソース(DOI)生産系が付与又は強化され、好ましくは糖取り込み能力強化系を更に有するDOI生産大腸菌が開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献及び非特許文献に記載された技術は、DOI合成酵素のアミノ酸配列を改変することにより、DOI合成酵素活性を増強することを試みたものではない。DOI合成酵素を用いてDOIを高効率で生産できるシステムを構築するためには、酵素の改変による酵素活性の増強も有効な手段である。DOIの生産効率を向上できれば、DOIをより安価で、短時間に多量に生産することが可能になる。酵素の活性を高める手法として、酵素の基質と結合する活性中心のアミノ酸を改変し、高活性の酵素を選択する方法がある。また、目的の酵素をコードする遺伝子に試験管内で迅速に人工的に変異を誘発し、多数の変異遺伝子群の中から、目的の活性に改変された酵素をコードする遺伝子を選抜する進化工学的手法もある。後者の方法は、洗剤用酵素、生分解性プラスチック生産用酵素等の改変に適用されているが、DOI合成酵素の改変への応用は知られていない。
【0007】
本発明者等は、DOI合成酵素の活性に着目し、向上したDOI合成活性を有するDOI合成酵素を用いてグルコース-6-リン酸を効率よくDOIに変換することにより、短時間で大量のDOIが製造できる可能性があるとの着想を得た。本開示に係る一実施形態は、上記状況に鑑み、配列番号1のアミノ酸配列からなる野生型DOI合成酵素よりも高いDOI合成活性を有する改変DOI合成酵素、該改変DOI合成酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、該ベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いた改変DOI合成酵素の製造方法、及びDOIの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、進化工学的手法を用いることにより、DOI合成酵素をよりDOI合成活性が高い酵素へと改変することに成功した。また、該手法で得られた改変酵素をコードする遺伝子を含む形質転換体を用いて、従来よりも効率的にDOIを製造することに成功した。
【0009】
本開示によれば、以下の(1)~(9)が提供される。
(1)下記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、下記(a)~(e)のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を有するポリペプチド。
(A1)配列番号1のアミノ酸配列
(A2)グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列であって、且つ、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(a)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から14番目のアスパラギン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(b)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から37番目のチロシン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されるアミノ酸変異
(c)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から290番目のアラニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(d)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から293番目のトリプトファン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
(e)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から319番目のヒスチジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
【0010】
(2)前記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、前記(d)及び前記(e)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有する、前記(1)に記載のポリペプチド。
(3)前記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、前記(d)のアミノ酸変異と、前記(a)、(b)、(c)及び(e)から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸変異を有する、前記(1)に記載のポリペプチド。
【0011】
(4)前記(1)~前記(3)のいずれか1つに記載のポリペプチドが有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する、ポリヌクレオチド。
(5)前記(4)に記載のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドの上流に連結されたプロモーター配列、及び前記ポリヌクレオチドの下流に連結されたターミネーター配列を含む発現カセット。
(6)前記(5)に記載の発現カセットを含有するベクター。
【0012】
(7)前記(6)に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
(8)前記(7)に記載の形質転換体を培養することを含む、グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドの製造方法。
(9)前記(1)~前記(3)のいずれか1つに記載のポリペプチド、前記(7)に記載の形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸と接触させることにより、グルコース又はグルコース-6-リン酸を2-デオキシ-シロ-イノソースへ変換することを含む、2-デオキシ-シロ-イノソースの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、配列番号1のアミノ酸配列からなる野生型DOI合成酵素よりも高いDOI合成活性を有する改変DOI合成酵素、該改変DOI合成酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、該ベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いた改変DOI合成酵素の製造方法、及びDOIの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】DOIから合成変換可能な芳香族化合物を示す図である。
図2】解糖系のホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子(pgi)、ペントースリン酸経路のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(zwf)、及びグリコーゲン生合成経路に向かうホスホグルコムターゼ遺伝子(pgm)を遺伝子破壊し、グルコース-6-リン酸を優先的にDOI合成酵素(btrC遺伝子にコードされるタンパク質)が利用するように代謝工学的改変をしたΔpgiΔzwfΔpgm株を示す図である。
図3A】エラープローンPCRを用いた変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製からDOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離(1,2,3次選抜)までの工程における変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製を示す図である。
図3B】エラープローンPCRを用いた変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製からDOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離までの工程における1次選抜を示す図である。
図3C】エラープローンPCRを用いた変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製からDOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離までの工程における2次選抜を示す図である。
図3D】エラープローンPCRを用いた変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製からDOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離までの工程における3次選抜を示す図である。
図4】pGADPの構造を示す図である。
図5】pGADP-mbtrCの構造を示す図である。
図6】pGADP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(◆)とpGADP-mbtrCの1つ(後にpGADP-btrC(W293R)と判明)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)の培養(2×YT+2%グルコース+2%マンニトール、50ml、30℃)に伴う培地中のDOI生産量のタイムコースを示す図である。
図7】(左)野生型DOI合成酵素(WT)、(右)変異型DOI合成酵素(W293R)のDOI合成酵素活性を示す図である。
図8】pGADP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(◆)、pGADP-btrC(W293R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)、pGADP-mbtrC(後にpGADP-btrC(W293R/N14T)と判明)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)、pGADP-mbtrC(後にpGADP-btrC(W293R/Y37F)と判明)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(×)、pGADP-mbtrC(後にpGADP-btrC(W293R/A290T)と判明)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(+)、pGADP-mbtrC(後にpGADP-btrC(W293R/H319R)と判明)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(●)の培養(2×YT+2%グルコース+2%マンニトール、50ml、30℃)に伴う培地中のDOI生産量のタイムコースを示す図である。
図9】左から野生型DOI合成酵素(WT)、変異型DOI合成酵素(W293R)、変異型DOI合成酵素(W293R/N14T)、変異型DOI合成酵素(W293R/Y37F)、変異型DOI合成酵素(W293R/A290T)、変異型DOI合成酵素(W293R/H319R)のDOI合成酵素活性を示す図である。
図10】pGAPP-btrC(W293R/H319R)の構造を示す図である。
図11】pGAPP-btrCの構造を示す図である。
図12A】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(W293R/H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+5%グルコース+5%マンニトール、50ml、30℃)に伴う培地の濁度のタイムコースを示す図である。
図12B】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(W293R/H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+5%グルコース+5%マンニトール、50ml、30℃)に伴う培地中のグルコース濃度のタイムコースを示す図である。
図12C】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(W293R/H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+5%グルコース+5%マンニトール、50ml、30℃)に伴う培地中のマンニトール濃度のタイムコースを示す図である。
図12D】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(W293R/H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+5%グルコース+5%マンニトール、50ml、30℃)に伴うDOI生産量のタイムコースを示す図である。
図13】pGAPP-btrC(H319R)の構造を示す図である。
図14A】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+3%グルコース+4%マンニトール、30ml、30℃)に伴う培地の濁度のタイムコースを示す図である。
図14B】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+3%グルコース+4%マンニトール、30ml、30℃)に伴う培地中のグルコース濃度のタイムコースを示す図である。
図14C】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+3%グルコース+4%マンニトール、30ml、30℃)に伴う培地中のマンニトール濃度のタイムコースを示す図である。
図14D】pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(■)とpGAPP-btrC(H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(▲)の培養(2×YT+3%グルコース+4%マンニトール、30ml、30℃)に伴うDOI生産量のタイムコースを示す図である。
図15】pGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfの構造を示す図である。
図16】pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfの構造を示す図である。
図17】pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfの構造を示す図である。
図18A】pGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示す図である。
図18B】pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示す図である。
図18C】pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示によれば、配列番号1のアミノ酸配列からなる野生型DOI合成酵素よりも高いDOI合成活性を有する改変DOI合成酵素、該改変DOI合成酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、該ベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いた改変DOI合成酵素の製造方法、及びDOIの製造方法を提供することができる。
【0016】
本開示に係る改変DOI合成酵素によれば、高いDOI合成活性によりDOI生産速度を向上することが可能であり、短時間で効率よくグルコース-6-リン酸をDOIへ変換することができる。本開示に係る改変DOI合成酵素の製造方法によれば、改変DOI合成酵素遺伝子を宿主細胞で発現させることにより、DOI合成活性が高い改変合成酵素を製造することができる。また、本開示に係るDOIの製造方法によれば、該改変DOI合成酵素遺伝子を利用して、高い効率でグルコースからDOIを製造することができる。
【0017】
前述のとおり、DOIはカテコールやヒドロキノンなどの2価フェノールやヒドロキシヒドロキノンに合成変換することができる(図1参照)。本開示における一実施形態によれば、医薬品、工業品の製造原料として広く普及することが期待されているDOIを、簡便かつ大量に効率よく製造することが可能である。このようにして製造したDOIから、例えば、医薬品、工業品の製造原料として広く普及することが期待されている1,2,4-トリヒドロキシベンゼンを、製造することも可能である。
【0018】
<改変DOI合成酵素>
本開示に係る改変DOI合成酵素は、下記(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、以下の(a)~(e)のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を有するポリペプチドである。
(A1)配列番号1のアミノ酸配列
(A2)グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列であって、且つ、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(a)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から14番目のアスパラギン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(b)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から37番目のチロシン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されるアミノ酸変異
(c)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から290番目のアラニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がトレオニンに置換されるアミノ酸変異
(d)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から293番目のトリプトファン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
(e)配列番号1のアミノ酸配列におけるN末端から319番目のヒスチジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基がアルギニンに置換されるアミノ酸変異
このような、特定のアミノ酸残基の置換を有する改変DOI合成酵素は、当該アミノ酸残基置換により向上したDOI合成活性を有する。本開示に係る改変DOI合成酵素は、(A1)又は(A2)のアミノ酸配列に対して、下記(a)~(e)のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列を有するポリペプチドと言うこともできるが、この表現において「(A1)又は(A2)のアミノ酸配列に対して、下記(a)~(e)のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入した」とは最終的なアミノ酸配列を特定するためだけに用いられているものであって、スタートポイントとなるアミノ酸配列及び実際の配列改変操作の過程を限定するものではない。
【0019】
配列番号1のアミノ酸配列は、バチルス・サーキュランス由来のDOI合成酵素のアミノ酸配列であり、btrC遺伝子によってコードされている。改変DOI合成酵素は、配列番号1のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有しており、本開示においては変異型DOI合成酵素とも呼ばれる。配列番号1のアミノ酸配列を以下の表1に示す。
【表1】
【0020】
グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性は、50mM Phosphate Buffer(pH7.7)、5mM グルコース-6-リン酸、5mM β-NAD、0.2mM CoCl・6HO、及び測定対象のDOI合成酵素10μgからなる溶液を46℃で5分間反応させ、反応後に反応溶液をフェノール/クロロホルム処理をして、除蛋白を行い、遠心後の水層画分10μlをサンプルとして、HPLCでDOIを定量し、活性を算出することにより測定できる。また、DOI合成酵素1mgが1分間あたりに合成するDOIの量を比活性とする。HPLCの条件は、
カラム :Phenomenex Kinetex XB-C18 100Å(Phenomenex社製)
溶離液 :HO/メタノール(80/20)
流量 :0.7ml/min
カラム温度:40℃
検出 :UV262nm
注入量 :2μl
とする。
【0021】
また、アミノ酸配列の配列同一性は、例えばBLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラムを用いてデフォールトパラメータで評価することができる。
【0022】
また、(A1)又は(A2)のアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列における特定の位置のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基とは、例えばBLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラム(デフォールトパラメータ)によって配列番号1のアミノ酸配列と(A1)又は(A2)のアミノ酸配列とをアラインメントした場合に、配列番号1中の特定位置のアミノ酸残基と対応することが見いだされた、(A1)又は(A2)のアミノ酸配列中のアミノ酸残基のことを指す。
【0023】
前記(A2)のアミノ酸配列が有する、配列番号1のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上、あるいは90%以上、あるいは95%以上の配列同一性であってもよい。
ここで、前記(A2)のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列においてDOI合成酵素活性を失わない範囲での配列の改変を有するアミノ酸配列であってもよい。つまり、配列番号1のアミノ酸配列に対してDOI合成酵素活性を失わない範囲で配列の改変を加えたアミノ酸配列であってもよい。このような改変としては、アミノ酸残基の挿入、欠失、置換及びアミノ酸配列N末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加が挙げられる。アミノ酸残基の挿入、欠失及び置換のうち1つ以上がある場合は、挿入、欠失及び置換の各々は、存在する場合は、例えば1~30アミノ酸残基、あるいは1~20アミノ酸残基、あるいは1~10アミノ酸残基、あるいは1~5アミノ酸残基であってもよく、アミノ酸残基の挿入、欠失及び置換の総数は例えば1~50アミノ酸残基、あるいは1~30アミノ酸残基、あるいは1~10アミノ酸残基、あるいは1~5アミノ酸残基であってもよい。また、末端に付加されるアミノ酸残基の数としては、存在する場合は一末端当たり例えば1~50アミノ酸残基、あるいは1~30アミノ酸残基、あるいは1~10アミノ酸残基、あるいは1~5アミノ酸残基であってもよい。このような追加のアミノ酸残基は、細胞外への分泌等のためのシグナル配列を形成していてもよい。シグナル配列の例としては、大腸菌のOmpAシグナル配列などが挙げられる。
【0024】
前記(a)~(e)のアミノ酸変異は、いずれも、DOI合成酵素活性を上昇させるアミノ酸変異である。本開示に係る改変DOI合成酵素は、前記(a)~(e)のアミノ酸変異のうちいずれか1つのみを有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。例えば、改変DOI合成酵素は、前記(a)~(e)のアミノ酸変異のうち2つを有していてもよく、3つを有していてもよく、4つを有していてもよく、5つを有していてもよい。一実施形態においては、改変DOI合成酵素は、(d)及び(e)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有し、この場合さらに(a)~(c)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有していてもよい。別の実施形態においては、改変DOI合成酵素は、(d)のアミノ酸変異を有し、さらに(a)、(b)、(c)及び(e)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有する。さらに別の実施形態においては、改変DOI合成酵素は、(d)のアミノ酸変異を有し、さらに(a)、(b)、及び(e)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有する。この場合はさらに(c)のアミノ酸変異を有してもよい。さらに別の実施形態においては、改変DOI合成酵素は、(d)のアミノ酸変異を有し、さらに(a)及び(e)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有する。この場合はさらに(b)及び(c)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有してもよい。さらに別の実施形態においては、改変DOI合成酵素は、(d)のアミノ酸変異及び(e)のアミノ酸変異を有する。この場合はさらに(a)~(c)のアミノ酸変異のうち少なくとも1つを有してもよい。
また、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-シロ-イノソースを生成する酵素活性を有するポリペプチドは、酵素の機能に関係する構造について配列番号1のアミノ酸と高度に類似する構造を有するため、このようなポリペプチドに対しても上記の(a)~(e)のアミノ酸変異はそれぞれDOI合成酵素活性を上昇させる効果を奏する。
【0025】
上記のように、(a)~(e)のアミノ酸変異のうち1つ以上を有することにより、向上したDOI合成酵素活性を有する改変DOI合成酵素が得られる。改変DOI合成酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を有するDOI合成酵素(本開示においては、野生型DOI合成酵素ともいう)よりも高いDOI合成活性を有することが好ましい。改変DOI合成酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を有するDOI合成酵素に対し、好ましくは1.1倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.2倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.3倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.4倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.5倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.6倍以上高いDOI合成活性を有し、より好ましくは1.7倍以上高いDOI合成活性を有し、一層好ましくは1.8倍以上高いDOI合成活性を有する。
【0026】
上記(a)~(e)のアミノ酸変異は、DOI合成酵素の進化工学的改変により得られたものである。
【0027】
<DOI合成酵素の進化工学的改変>
進化工学的改変とは、目的のタンパク質をコードする遺伝子に対して、試験管内で人工的に突然変異を誘発させて、所望の性質に改変されたタンパク質を選抜し、該目的タンパク質分子を改変する技術をいう。
【0028】
目的酵素遺伝子へのランダムな変異の導入は、目的の酵素遺伝子を保有する微生物に対して、アルキル化試薬(N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン等)処理、核酸塩基の酸化的脱アミノ化試薬(亜硝酸等)処理、放射線(紫外線、X線等)照射、又はPCRを利用したランダムな変異導入、を行うことによって行うことができる。
【0029】
PCRを利用したランダムな変異の導入は、目的酵素遺伝子を含むDNA断片を鋳型として、該遺伝子の増幅過程において、DNAポリメラーゼによるDNA複製の正確性を低める条件下でPCR反応を行い、増幅したDNA配列中にエラーを蓄積させるエラープローンPCRを行うことでできる。エラープローンPCRにおいては、反応溶液中にマンガンイオンを添加したり、4種類のデオキシリボ核酸(dNTP)の各濃度のバランスを崩したりすることによって、DNAポリメラーゼの正確性を低下させ、変異を導入することができる。
【0030】
例えば、バチルス・サーキュランス由来のDOI合成酵素遺伝子(btrC)をエラープローンPCRで変異させる場合には、当該遺伝子を有するプラスミド(例えば、国際公開第2006/109479号に記載のpLEX-btrC)やDNA断片を鋳型として、当該遺伝子増幅用のプライマーを利用して、DNAポリメラーゼの正確性を低下させる条件下において、PCRを実施すればよい。DNAポリメラーゼの正確性を低下させる条件としては、後述の実施例1に記載の条件などが挙げられる。
【0031】
また、ランダムな変異導入により得られた改変酵素遺伝子群は、所望の性質について向上した機能を有するかどうかを指標にしてスクリーニングすることができる。例えば、改変酵素遺伝子群が発現する改変酵素群のDOI合成活性を測定して、変異導入前よりもDOI合成活性が向上した改変酵素を選抜することができる。このようにして、所望の性質について向上した活性を有する改変酵素を得ることができる。得られた改変酵素をコードする遺伝子に対してさらにランダムな変異導入を行い、上記と同様にスクリーニングをすることにより、所望の性質について一層向上した活性を有する改変酵素を得ることができる。
【0032】
進化工学的改変により、酵素中における活性中心の位置が分からなくても、向上した性質を有する改変酵素を得ることが可能となる。また、このような向上は、進化工学的改変によれば、機能との関係が事前には知られていないアミノ酸残基位置におけるアミノ酸変異あるいはその組み合わせにより、累積的に達成することができる。このことから、本開示に係るDOI合成酵素が有する改変及びそれによるDOI合成活性の向上は、当業者が予想することができないものである。
【0033】
<改変DOI合成酵素をコードする遺伝子>
本開示に係る改変DOI合成酵素をコードする遺伝子は、前記改変DOI合成酵素をコードする任意の核酸であってよい。特定のアミノ酸配列をコードする核酸のヌクレオチド配列は、コドンの縮重の範囲内で変化させることができる。この場合、組換え微生物の宿主となる微生物において使用頻度が高いコドンを使用した方が、遺伝子の発現効率の点からは好ましい。本開示によれば、改変DOI合成酵素が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが提供される。
【0034】
なお、遺伝子のヌクレオチド配列は、コードすべきアミノ酸配列からコドン表を元に設計することもできる。設計したヌクレオチド配列は、既知のヌクレオチド配列を遺伝子組み換え技術を利用して改変することで得てもよいし、ヌクレオチド配列を化学的に合成することで得てもよい。
ヌクレオチド配列を改変する方法としては、例えば、部位特異的変異法(Kramer,W. and Frita,H.J., Methods in Enzymology,vol.154,P.350(1987))、リコンビナントPCR法(PCR Technology,Stockton Press(1989))、特定の部分のDNAを化学合成する方法、遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法、遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、又は、ニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤で処理する方法、市販の突然変異導入キットを使用する方法などが挙げられる。
【0035】
目的の遺伝子にランダムに変異を有する遺伝子の発現を行うため、種々の宿主・ベクター系を利用することができる。宿主・ベクター系として細菌、酵母等の系を利用することができるが、ランダムに変異を有する遺伝子を効率よく発現、製造できれば特に制限されない。得られた変異導入されたPCR断片を、発現に必要なプロモーター、ターミネーターを有し、かつ宿主内で発現できる発現ベクターに連結し、宿主に導入する。
【0036】
<改変DOI合成酵素遺伝子発現カセット>
本開示に係る遺伝子発現カセットは、前述の改変DOI合成酵素をコードする遺伝子を、後述の宿主細胞内で発現させ得るものであれば特に限定されない。遺伝子発現カセットは、改変DOI合成酵素をコードする核酸配列に加えて、例えば、プロモーター、エンハンサー、RBS (リボソーム結合配列)、ターミネーター等のうち1つ以上を含んでいてもよい。遺伝子発現カセットは、改変DOI合成酵素をコードする核酸配列に加えて、該核酸配列の上流にプロモーター及び該核酸配列の下流にターミネーターを含むことが好ましい。例えば、大腸菌を宿主細胞とするタンパク質の大量発現系においては、改変DOI合成酵素をコードするDNA配列の上流側(5’末端側)にプロモーター、エンハンサー、及びRBS (リボソーム結合部位)等のDNA配列を連結し、改変DOI合成酵素をコードするDNA配列の下流側(3’末端側)に、例えばターミネーターのDNA配列を連結した構成を採用できる。これら各要素は、大腸菌内で所望の機能を発揮する配列であれば特に限定されない。プロモーターには構成的に発現を行うプロモーター及び誘導的に発現を行うプロモーターがある。本開示に係るDOI遺伝子発現カセットにおいては、いずれのタイプのプロモーターを用いてもよい。また、大腸菌を宿主細胞とする場合には、IPTG (イソプロピルチオガラクトピラノシド)等の誘導物質により発現を誘導できるプロモーターを用いてもよい。
【0037】
一例として大腸菌を利用する場合、前記プロモーターの例としては、ラクトースオペロンのプロモーター、トリプトファンオペロンのプロモーター、前2種類の融合プロモーター、λファージのプロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、グルタメートデカルボキシラーゼ遺伝子プロモーター、gadAプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)プロモーター等が挙げられる。ターミネーターは特に限定されず、例えばrrnターミネーター、AspAターミネーターなどを利用可能である。
【0038】
また、リボソーム結合部位の例としては、シャインダルガノ(SD)配列のAGGAGなどが挙げられる。エンハンサーとしては、公知のエンハンサーが使用可能である。
【0039】
<改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクター>
本開示に係る改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクターは、前述の改変DOI合成酵素をコードする遺伝子を有し、後述の宿主細胞内で発現させ得るものであれば特に限定されない。改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクターは好ましくは前記改変DOI合成酵素遺伝子発現カセットを含む。
【0040】
一例として大腸菌を利用する場合、効率よく遺伝子発現を行なうために種々の発現ベクターが構築されている。ラクトースオペロンのプロモーター、トリプトファンオペロンのプロモーター、前2種類の融合プロモーター、λファージのプロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、グルタメートデカルボキシラーゼ遺伝子プロモーター、gadAプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)プロモーター等の下流に変異処理遺伝子を接続し、該遺伝子の下流にターミネーターを接続した改変DOI合成酵素発現ベクターを構築することができる。ターミネーターにはrrnターミネーター、AspAターミネーターなどが利用されうるが、特に制限されるものではない。
【0041】
ベクターとしては、宿主細胞内で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばEscherichia coliを宿主細胞とする場合にはLambda gt10、Lambda gt11などを例示することができる。また、プラスミドとしては、例えばEschenchia coliを宿主細胞とする場合には、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(Boehringer Mannheim社製)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8、pQE-30(QIAGEN社製)、pBluescriptII SK(+)、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、pET-3(Novagen社製)、pUC18、pSTV28、pSTV29、pUC118(宝酒造社製)、pLEX(Invitrogen社製)、pQE80L(QIAGEN社製)、pBR322等を例示することができる。
【0042】
改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクターは、改変DOI合成酵素をコードするDNAを転写させるためのプロモーターを有していてもよい。プロモーターの例としては、上述のプロモータが挙げられる。また、改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクターは、リボソーム結合配列を含んでいてもよい。リボソーム結合配列の例としては、シャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列が挙げられ、SD配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6~18ヌクレオチド)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
転写及び翻訳を効率的に行うため、目的のタンパク質のN末端は発現ベクターのコードする別のタンパク質のN末端部分に融合されていてもよい。
【0043】
目的とするタンパク質の発現にはターミネーターは必ずしも必要ではないが、構造遺伝子直下にターミネーターを配置することが望ましい。
クローニングの際、前記のようなベクターを、挿入されるDNAの切り出しに使用した制限酵素で切断してベクターDNA断片を得ることができるが、必ずしも挿入されるDNAの切り出しに使用した制限酵素と同一の制限酵素を用いる必要はない。挿入されるDNA断片とベクターDNA断片とを結合させる方法は、公知のDNAリガーゼを用いる方法であればよく、例えば挿入されるDNA断片の付着末端とベクターDNA断片の付着末端とのアニーリングの後、適当なDNAリガーゼの使用により挿入されるDNA断片とベクターDNA断片との組換えDNAを作製する。必要に応じて、アニーリングの後、微生物等の宿主細胞に移入して生体内のDNAリガーゼを利用し組換えDNAを作製することもできる。
【0044】
本開示に係る組換えDNAを宿主細胞に導入するには、Sambrook,J.,et.al.,”Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(2001)等に記載されている分子生物学、生物工学及び遺伝子工学の分野において公知の一般的な方法を利用することができる。例えばコンピテントセルを用いる方法や、エレクトロポレーションを用いる方法が挙げられる。
【0045】
このようにして作製された発現ベクターを複製、維持することができる宿主内に導入することにより改変DOI合成酵素遺伝子を発現する形質転換体を得ることができる。次いで得られた形質転換体の発現するDOI合成酵素の性質を検証することにより該酵素の改変を検証する。
【0046】
<形質転換体>
本開示に係る形質転換体は、本開示に係る改変DOI合成酵素遺伝子発現ベクターを含む形質転換体である。
形質転換体作製に使用する宿主細胞としては、組換えDNAが安定かつ自律的に増殖可能で、さらに外来性DNAの形質が発現できるものであればよい。宿主細胞は、微生物の細胞であることが好ましい。前記微生物の細胞は、真核生物(例えば酵母)の細胞であっても、原核生物の細胞であってもよい。宿主細胞の例として大腸菌(Escherichia coli)の細胞が挙げられるが、特に大腸菌の細胞に限定されるものではなく、エシェリヒア属細菌の細胞、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバチルス属細菌の細胞、シュードモナス属細菌などの細菌類の細胞、サッカロミセス属、ピキア属、カンジダ属などの酵母類の細胞、アスペルギルス属などの糸状菌類の細胞などが使用できる。
【0047】
宿主細胞は、DOI合成酵素の基質となるグルコース-6-リン酸を多量に蓄積する宿主細胞であることが好ましい。このような宿主細胞としては、例えば、大腸菌においてグルコースリン酸イソメラーゼをコードするpgi遺伝子を破壊した株(例えば、国際公開第2006/109479号に記載の大腸菌GI724Δpgi株)、大腸菌においてpgi遺伝子及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードするzwf遺伝子を破壊した株(例えば、国際公開第2010/053052号に記載の大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株)、並びに大腸菌においてpgi遺伝子、zwf遺伝子及びホスホグルコムターゼをコードするpgm遺伝子を破壊した株(図2参照)(例えば、国際公開第2006/109479号に記載の大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株)がある。
【0048】
宿主細胞はグルコースからグルコース-6-リン酸を生成する酵素をコードする遺伝子、例えばglk、を有する細胞であることが好ましい。
また、宿主細胞には、細胞外のグルコースをそのまま細胞内に取り込む能力をさらに付与してもよく、このために例えばグルコース輸送促進タンパク質遺伝子をさらに導入してもよい。グルコース輸送促進タンパク質遺伝子としては、例えば、ザイモモナス・モビリス由来のglfなどがある。また、宿主細胞には、フルクトース及びスクロースの向上した利用能をさらに付与してもよく、このために例えばスクロース加水分解酵素遺伝子をさらに導入してもよい。スクロース加水分解酵素遺伝子としては、例えば、大腸菌O-157由来のcscAなどがある。このような遺伝子を有するベクターの例として、国際公開第2010/053052号に記載されているプラスミドベクターpGAP-btrC-cscA-glfなどがある。
【0049】
宿主細胞に組換えDNAを移入する方法としては、例えば宿主細胞が大腸菌の場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などが用いることができる。コンピテントセルとしては、大腸菌DH5αのコンピテントセルなどが利用できる。このようにして得られた形質転換体は、培養されることにより、改変DOI合成酵素を安定に生産することができる。前記形質転換体の培養の条件は、元々の宿主微生物の培養条件と同様であり、公知の条件を用いることができる。
【0050】
該形質転換体の培養には、種々の炭素源、窒素源、無機塩類及び有機栄養源を任意に用いることができる。炭素源としては、例えばグルコース、ショ糖、糖蜜、油脂などが利用できる。窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
【0051】
炭素源、窒素源、無機物及びその他の栄養素を適量含有する培地ならば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用できる。培地の例として、例えば、LB液体培地、RM液体培地、2×YT液体培地、L寒天培地、RMM液体培地などが挙げられる。あるいはLB寒天プレートなどであってもよい。なお、選択マーカーを含む発現ベクターにより形質転換した形質転換体の培養においては、例えば、前記選択マーカーが薬剤耐性である場合には、それに対応する薬剤を含む培地を使用し、前記選択マーカーが栄養要求性である場合には、それに対応する栄養素を含まない培地を使用する。
培養条件は、培地の種類、培養方法により適宜選択すればよく、形質転換体が生育する条件であれば特に制限はない。
【0052】
培養温度は、該形質転換体が生育可能な温度であればよい。培養の際のpHは、該形質転換体が生育可能なpHであればよい。培養時間はDOI合成酵素を効率よく生産できる時間であれば特に制限はない。
培養温度は例えば20℃~45℃の範囲内の温度であってもよく、25℃~35℃の範囲内の温度であってもよく、24℃~37℃の範囲内の温度であってもよい。培地のpHは、例えば4~8の範囲で選べばよく、5~8の範囲であってもよく、6.5~8の範囲であってもよい。培養は、微生物の種類に応じて、好気的に行ってもよいし、嫌気的に行ってもよい。
【0053】
培養期間は例えば1時間~7日間であってもよく、6時間~60時間であってもよく、12時間~30時間であってもよい。培養期間は、改変DOI合成酵素の産生量が最大になるように設定してもよい。例えば、好気条件下でpHは6以上8以下のpH、温度は25℃以上40℃以下の範囲内の温度で、pHと温度を適切に制御しながら培養した場合、培養に必要な時間は48時間以内としてもよい。培養時間は0.5時間~30時間の範囲内であってもよい。
培養は前記培養成分を含有する液体培地中で、振とう培養、通気攪拌培養、連続培養又は流加培養などの通常の培養方法を用いて行うことができる。
【0054】
得られた形質転換体を、DOIが生産可能な条件下で培養し、培養液中のDOIの生産量状況を調べる。例えば、DOIの生産量状況は、ガスクロマトグラフ質量分析計や高速液体クロマトグラフ分析計で調べることができる。このような生産量分析は、Kogure等, J.Biotechnol., 2007, vol.129, p.502を参照して行うことができる。
【0055】
上記において、DOIの生産量状況に変化が認められた形質転換体については、該形質転換体が有する発現ベクターを抽出し、該酵素をコードする遺伝子の塩基配列を決定する。次いで、該酵素の推定アミノ酸配列を野生型酵素のアミノ酸配列と比較し、どのアミノ酸が該酵素の性質の改変に寄与しているかを特定することができる。
【0056】
性質が改変された酵素の推定アミノ酸配列上に複数のアミノ酸置換が見出された場合には、それぞれのアミノ酸の置換が酵素の性質の改変にどの程度寄与しているかを、部位特異的変異導入法で任意の1つのアミノ酸を他のアミノ酸へ置換し、調べることができる。
【0057】
上記で得られた変異型酵素の酵素学的性質は、各変異型酵素を分離・精製後、比活性、基質特異性、至適温度、至適pH等を調べ、野生型酵素と比較することにより、酵素の性質の変化を検証することができる。
【0058】
形質転換体が産生した改変DOI合成酵素は、培養物中の形質転換体を含む培養液をそのまま採取して利用することもできる。また、得られた培養物から濾過又は遠心分離などの手段により形質転換体を採取して利用することもできる。採取した形質転換体を機械的方法又はリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEthylenediaminetetraacetic acid(EDTA)等のキレート剤及び又は界面活性剤を添加してポリペプチドを可溶化し、溶液として分離採取することができる。
【0059】
<改変DOI合成酵素の製造方法>
本開示に係るDOI合成活性を有するポリペプチド(改変DOI合成酵素)の製造方法は、本開示に係る形質転換体を培養することを含む。形質転換体の培養に用いる培地及び培養条件、培養方法等については、本開示に係る形質転換体の説明で述べた通りである。培養条件は、宿主細胞が生育しDOI合成活性を有するタンパク質を産生できる条件であれば特に制限はない。
本開示に係る形質転換体を培養することにより、本開示に係るベクター上の改変DOI合成酵素をコードする遺伝子が発現し、改変DOI合成酵素が生成する。例えば、適切な培地中、好気条件下、pH6~8の範囲内のpH、温度25℃~40℃の範囲内の温度において、48時間以内の培養により改変DOI合成酵素を得ることができる。
【0060】
生成した改変DOI合成酵素は、形質転換体の細胞(例えば大腸菌の菌体)内及び培地のうち少なくとも1つに含まれた状態にある。この形質転換体の細胞及び培地を精製せずにそのままDOI合成反応に用いてもよく、あるいは培地から改変DOI合成酵素を精製してもよい。この際には、細胞を破砕あるいは溶解することで、細胞内の改変DOI合成酵素も回収することができる。あるいは、遠心分離等によって培地から細胞を分離し、この分離した細胞をDOI合成反応に用いてもよく、あるいはこの細胞を乾燥、凍結又は凍結乾燥して保存してもよい。あるいは分離した細胞を破砕又は溶解して、放出されたDOI合成酵素をそのままDOI合成反応に用いてもよく、あるいは放出されたDOI合成酵素を精製してもよい。酵素の精製には、遠心分離、塩析、脱塩、クロマトグラフィー、電気泳動、限外ろ過等の、一般的な精製法を、適切に調節した条件下で用いることができる。例えば、Lysis bufferを用いた細胞の溶解、Ni-NTAアガロースへのDOI合成酵素の固定、及び溶出bufferによる溶出によりDOI合成酵素を精製することもできる。
【0061】
<DOIの製造方法>
本開示に係るDOI製造方法は、本開示に係る改変DOI合成酵素、本開示に係る形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸と接触させることにより、グルコース又はグルコース-6-リン酸をDOIへ変換することを含む、DOIの製造方法である。
【0062】
形質転換体の培養物とは、形質転換体を培養して得られる、細胞と周囲の培地等からなる産物を指す。培養物は使用しなくともよく、例えば、予め調製された乾燥若しくは凍結させた形質転換体の細胞を、直接反応系に添加してもよい。
【0063】
形質転換体の培養物を得るための培地、培養条件、培養方法等は、上記の形質転換体の培養に用いることができる培地、培養条件、培養方法等と同様である。培養条件は、宿主細胞が生育しDOI合成活性を有するタンパク質を産生できる条件であれば特に制限はない。
【0064】
また、前記形質転換体の処理物とは、形質転換体が産生する改変DOI合成酵素の活性を失わない範囲で、形質転換体に対して任意の処理を行った産物を指す。このような処理としては、例えば、加熱処理、冷却処理、機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、自己消化、界面活性剤処理及び酵素処理(例えば細胞溶解処理)からなる群から選択される1つ以上を含む処理などが挙げられる。たとえ、このような処理によって形質転換体自体が死滅したとしても、当該形質転換体が産生した酵素の活性が残存していれば、反応に用いることが可能である。
【0065】
前記培養物の処理物とは、形質転換体が産生する改変DOI合成酵素の活性を失わない範囲で、形質転換体の培養物に対して任意の処理を行った産物を指す。このような処理としては、加熱処理、冷却処理、細胞の機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、細胞の自己消化、界面活性剤処理、酵素処理(例えば細胞破壊処理)、細胞分離処理、精製処理及び抽出処理からなる群から選択される1つ以上を含む処理が挙げられる。例えば、形質転換体の細胞を培地等から分離して、分離された細胞を反応系に添加してもよい。このような分離には、濾過又は遠心分離などの手段が使用可能である。あるいは、改変DOI合成酵素を夾雑物から分離するための精製処理を行い、該精製処理により得られた酵素を含む溶液を反応系に添加してもよい。あるいは、培養物を、メタノールやアセトニトリル等の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒を用いて抽出した抽出物を反応系に添加してもよい。このような精製物又は抽出物は、形質転換体の細胞を含まないものであってもよい。当該形質転換体の細胞が存在しなくても、酵素の活性が残存していれば、反応に用いることが可能である。
【0066】
上記のような細胞の破砕あるいは溶解処理は、リゾチーム処理、凍結融解、超音波破砕などの公知の方法に従い形質転換体の細胞膜を破壊することにより、行うことができる。
【0067】
本開示に係る形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物と、グルコース又はグルコース-6-リン酸との接触は、以下のような条件で行うことが好ましい。
接触は基質としてのグルコース又はグルコース-6-リン酸を含む溶液中で行うことが好ましい。もちろん、溶液はグルコースとグルコース-6-リン酸の両方を含んでいてもよい。反応は、反応の効率等から、NAD、NADP等の補酵素の存在下で行うことが好ましい。
【0068】
反応条件は、上記反応が進む限り、特に限定されない。例えば、溶液のpHは、改変DOI合成酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、例えば、反応時のpHは、4.0~9.0の範囲内のpHであることが好ましく、好ましくは5.0~8.0の範囲内のpHであり、6.0~8.0の範囲内のpHであることがより好ましい。溶液の温度も、改変DOI合成酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、好ましくは10℃~50℃の範囲内の温度、より好ましくは20℃~45℃の範囲内の温度、更により好ましくは30℃~42℃の範囲内の温度である。
【0069】
溶液の媒体としては、水若しくは水性媒体、有機溶媒又は水若しくは水性媒体と有機溶媒の混合液が用いられる。水性媒体としては、例えばリン酸緩衝液、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-エタンスルホン酸)緩衝液、トリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]塩酸緩衝液等の緩衝液が用いられる。有機溶媒としては反応を阻害しないものであればいずれでもよく、例えばアセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、キシレン、メタノール、エタノール、ブタノール等が用いられる。あるいは溶液は液体培地であってもよい。
【0070】
本開示に係る形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物と、グルコース又はグルコース-6-リン酸との接触は、振盪若しくは攪拌下で行うのが好ましい。例えば、このような接触は溶液中で行うことができる。例えば、前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物を含む溶液に、グルコース又はグルコース-6-リン酸を基質溶液の形態であるいは固体の形態で添加してもよい。
反応開始時若しくは反応途中において、反応液のpHを適切な範囲に維持するため、酸やアルカリを添加してもよい。反応溶液に添加可能なアルカリの例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の他、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸カリウム、アンモニアなど水に溶解して、液性を塩基性とするものが挙げられる。反応溶液に添加可能な酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などが挙げられる。
【0071】
上記接触は、例えば、空気雰囲気下で行ってもよく、脱酸素雰囲気下で行ってもよい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0072】
好ましい実施形態では、使用される、形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物は、前記改変DOI合成酵素を含んでいる。このため、前記接触により、反応溶液中に共に存在している前記改変DOI合成酵素が作用し、DOIを高い生産効率で生産する。なお、前記形質転換体の処理物若しくは前記培養物の処理物が生きた状態の前記形質転換体を含んでいることは必須ではないが、反応に関与する物質を代謝により継続的に供給することができるという観点からは、生きた状態の前記形質転換体を含むことが好ましい。
【0073】
形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物の添加時期は、反応開始時に一括で添加しても構わないし、反応中に分割して又は連続して添加しても構わない。同様に、原料となるグルコース又はグルコース-6-リン酸も、反応開始時に一括で添加しても構わないし、反応中に分割して又は連続して添加しても構わない。
【0074】
グルコース又はグルコース-6-リン酸の反応溶液中における濃度は、例えば0.1質量%~20質量%であり、あるいは0.5質量%~15質量%であり、あるいは2質量%~10質量%であってもよい。
【0075】
前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物と、グルコース又はグルコース-6-リン酸とを接触させる方法としては、前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸を含む溶液に加え、攪拌しながら反応を進行させる方法、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸を含む溶液に加え、振とうしながら反応を進行させる方法、前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物とピリドキシン又はその塩とを溶液中で充分に混和の後、静置して反応を進行させる方法などが挙げられる。好ましくは、反応効率の観点より、前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物をグルコース又はグルコース-6-リン酸を含む溶液に加え、攪拌しながら反応を進行させる方法が挙げられる。
【0076】
反応に使用可能な反応容器としては特に制限はない。好ましくは、添加した前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物とピリドキシン又はその塩を含む溶液とが十分混和されるように攪拌できるとともに、改変DOI合成酵素の最適温度範囲内に保てるように温度調節機能を有する反応容器であることが好ましい。
【0077】
前記形質転換体、前記形質転換体の培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物と、グルコース又はグルコース-6-リン酸との接触時間(反応時間)は、改変DOI合成酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、例えば30分間~100時間であり、あるいは2時間~50時間であってもよい。また、反応はバッチ式で行ってもよく、反応途中で、基質及び前記微生物、前記培養物若しくは前記処理物のうち一方又は両方を逐次添加するセミバッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。セミバッチ式や連続式の場合は、新たな原料及び前記形質転換体、前記培養物若しくは前記処理物のうち一方又は両方が供給される等の操作が行われるため、反応時間の上限は特に限定はされない。例えば、グルコース又はグルコース-6-リン酸を連続的に添加してもよい。
【0078】
一実施形態においては、DOIの製造方法は、本開示に係る形質転換体を培地中で培養することを含む。培地は好ましくは液体培地であり、また、好ましくはグルコース又はグルコース-6-リン酸を含む。cscAの導入等によりフルクトース利用能が向上している形質転換体の場合には、培地はさらにフルクトースを含んでいてもよい。使用できる培地及び培養条件、培養方法等については、上述の、形質転換体の培養に使用できる培地、培養条件、培養方法等を適用できる。例えば、2×YT液体培地等を用いることができる。このような培地に、グルコース又はグルコース-6-リン酸を添加して、所望の濃度のグルコース又はグルコース-6-リン酸を培地中に含むようにしてもよい。培養温度は例えば25℃~35℃の範囲内の温度でもよく、培養時間は例えば5時間~30時間であってもよい。グルコース又はグルコース-6-リン酸の培地中における濃度は、例えば0.1質量%~20質量%であり、あるいは0.5質量%~15質量%であり、あるいは1.5質量%~10質量%であってもよい。このような培養によっても、形質転換体の存在によりDOIが産生される。
【0079】
DOI生産のための培養(以下本培養とも呼ぶ)の前に、形質転換体に対し前培養を行ってもよい。前培養に用いる培地は、DOI生産のための培養に用いる培地とは異なる培地であってもよい。培地の差異は、基本培地の差異であってもよいし、グルコース又はグルコース-6-リン酸の濃度における差異であってもよい。前培養に用いる培地、培養条件、培養方法等については、上述の、形質転換体の培養に使用できる培地、培養条件、培養方法等を適用できる。前培養に用いる培地は、グルコースもグルコース-6-リン酸も含まない培地であってもよい。前培養に用いる培地の例としては、RM液体培地やRMM液体培地が挙げられるが、2×YT液体培地であってもよい。前培養は形質転換体の状態が安定するまで行えばよいが、前培養時間は例えば3時間~48時間であり、あるいは8時間~30時間であってもよい。前培養後の形質転換体は、そのまま培地ごと本培養のための培地に添加してもよく、遠心処理等で前培養に用いた培地から分離してから本培養のための培地に添加してもよい。通常は、本培養の培養液量は、前培養の培養液量よりも大きな培養用量、例えば体積で10倍以上、あるいは20倍以上、とすることができる。
【0080】
本培養は、バッチ式で行ってもよく、反応途中で、グルコース又はグルコース-6-リン酸を逐次添加するセミバッチ式で行ってもよく、グルコース又はグルコース-6-リン酸を連続的に添加する連続式で行ってもよい。セミバッチ式や連続式の場合は、新たな原料が供給される等の操作が行われるため、反応時間の上限は特に限定はされない。
【0081】
上記の方法においては、グルコース又はグルコース-6-リン酸を原料として本開示に係る形質転換体若しくは前記培養物又は前記形質転換体若しくは前記培養物の処理物を用いることにより、DOIを高い生産効率で製造することができる。上記の方法により得られたDOIは、例えばカテコールに変換して神経系医薬品などの原料、食品香料原料、ヘアケア商品などの酸化防止剤などに利用でき、ヒドロキノンに変換して止血剤、鎮痛剤等の原料、美白剤等の化粧品などに利用可能である。上記の方法で得られたDOIを脱水することにより1,2,4-トリヒドロキシベンゼン(THB)を得ることができる。さらに上記の方法で得られたTHBの水酸基をグリシジルエーテル化して1,2,4-トリグリシジルオキシベンゼン(TGB)を得ることができる。TGBは耐熱性に優れ、かつ常温で低粘度の液状であり、電子部品の封止材、回路基材、接着剤、コーティング材、塗料、複合材料のマトリックス樹脂など広い範囲に渡って利用できる。
【0082】
なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【実施例
【0083】
以下、実施例により実施形態を具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。なお、実施例において、特に断らない限り、物質の含有量又は添加量を表す「%」は「質量%」を意味する。
【0084】
(実施例1)
<エラープローンPCRによる変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの構築>
エラープローンPCRを用いた変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーの作製からDOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離(1,2,3次選抜)までの工程を図3A図3Dに示した。
【0085】
配列番号1に示すバチルス・サーキュランス由来のDOI合成酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子(btrC)に、エラープローンPCRでランダムに変異を導入した。btrC遺伝子全長を含むプラスミドpLEX-btrC(国際公開第2006/109479号に記載されている、バチルス・サーキュランス由来のDOI合成酵素の42kDaサブユニットをコードするbtrC遺伝子をベクターpLEX(Invitrogen)のマルチクローニングサイトのNdeI-XbaI部位に挿入したもの)を鋳型として、btrC遺伝子の開始コドン上流にSalI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号2に示すプライマー1(5’-acgcgtcgacatgacgactaaacaaatttg-3’)とbtrC遺伝子の終止コドン上流にPstI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号3に示すプライマー2(5’-aaaactgcagttacagcccttcccgga-3’)を用い、DNAポリメラーゼの正確性を低下させる条件(表2)でPCRを実施することで、変異箇所を限定することなくbtrC遺伝子全領域へのランダムな変異の導入を実施した。
【0086】
【表2】

【0087】
PCRは、94℃で2分30秒保持後、94℃で20秒の熱変性、50℃で25秒のアニーリング、72℃で1分10秒のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに72℃で3分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。
【0088】
このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、DNA断片を回収した。回収したDNA断片を制限酵素SalIとPstIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、変異型DOI合成酵素遺伝子のDNA断片を取得した。
【0089】
次いで、変異型DOI合成酵素遺伝子のDNA断片を宿主細胞(大腸菌)で発現させるための発現ベクターを構築した。pLEXベクター(Invitrogen)を鋳型として、配列番号4に示すプライマー3(5’-atggtaccgagctcggatcc-3’)と5’側にXbaI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号5に示すプライマー4(5’-ctagtctagactaggagataatttatcaccgcag-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、52℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、DNA断片を回収した。回収したDNA断片を制限酵素SalIとXbaIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、発現ベクターのDNA断片を取得した。
【0090】
次いで、変異型DOI合成酵素遺伝子のDNA断片を宿主細胞(大腸菌)で発現させるためのプロモーターとして、gadAプロモーターを取得した。gadAプロモーターは、具体的には以下のようにして取得した。大腸菌の染色体DNAを鋳型として、5’側にXbaI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号6に示すプライマー5(5’-ctagtctagagtcgtttttctgct-3’)と5’側にSalI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号7に示すプライマー6(5’-acgcgtcgacttcgaactccttaaatttatttgaaggc-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、50℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、DNA断片を回収した。回収したDNA断片を制限酵素SalIとXbaIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、gadAプロモーターのDNA断片を取得した。
【0091】
次いで、上記で増幅させた発現ベクターのDNA断片とgadAプロモーターのDNA断片を、2×Ligation mixを用い、16℃、30分で反応させ、連結することでgadAプロモーターのDNA断片を発現ベクターのDNA断片に挿入し、発現ベクターpGADP(図4)を取得した。
【0092】
上記操作によって得られた発現ベクターpGADPを制限酵素SalIとPstIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、変異型DOI合成酵素遺伝子のDNA断片を連結挿入することによって、変異型DOI合成酵素遺伝子(mbtrC)の分子集団を得た。
【0093】
上記操作によって取得した分子集団を大腸菌DH5αのコンピテントセル細胞に形質転換し、変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーを構築した。
【0094】
(実施例2)
<DOI高生産DOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離>
上記操作により取得された変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーから変異型DOI合成酵素遺伝子ライブラリー(pGADP-mbtrC、図5)を抽出し、DOI合成酵素の基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌GI724Δpgi株(国際公開第2006/109479号及びKakinuma等, Tetrahedron Letters, 2000, vol.41, p.1935に記載されている、大腸菌GI724株におけるpgi遺伝子を破壊した株)のコンピテントセルに形質転換した。形質転換細胞をL寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、2%寒天、100μg/mlアンピシリン)で培養し、生育したクローンをDOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離の選抜対象とした。
【0095】
1次選抜では、まず、得られた選抜対象クローンをRM液体培地(2%カザミノ酸、1%グリセロール、0.6%NaHPO、0.3%KHPO、0.05%NaCl、0.1%NHCl、1mM MgCl、100μg/mlアンピシリン)が1mlずつ入ったディープウェルプレート96Well丸底に植菌し、30℃で24時間振とうし、前培養を行った。次に、前培養液を1次選抜用2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、1%グルコース、100μg/mlアンピシリン)が1mlずつ入ったディープウェルプレート96Well丸底に10μlずつ植菌し、30℃で15時間振とうし、本培養を行った。本培養後の培養液を遠心分離して菌体を除いた上清10μl、滅菌蒸留水90μl、メタノール100μl、オキシム化試薬NBHA(20mg/ml)を混合し、60℃で1時間オキシム化反応を行った。オキシム化反応後、減圧濃縮遠心機で乾固し、メタノール200μlで再溶解後、表3の条件でHPLC分析を行い、DOI濃度を決定し、野生型DOI合成酵素遺伝子を有するクローンよりもDOI生産量の多かった候補クローンを選抜した。
【0096】
【表3】
【0097】
1次選抜において得られた候補クローンを対象として、2次選抜を実施した。2次選抜では、1次選抜において得られた候補クローンをRM液体培地が3mlずつ入った試験管に植菌し、30℃で24時間振とうし、前培養を行った。次に、前培養液を2次選抜用2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、2%グルコース、100μg/mlアンピシリン)が50mlずつ入った500ml三角フラスコに濁度OD600=0.1になるように植菌し、30℃で36時間振とうし、本培養を行った。本培養開始0、12、24、36時間後の培養液を遠心分離して菌体を除いた上清10μlに対し、1次選抜におけるDOI濃度測定操作と同様の操作を行うことで、DOI濃度をHPLCで決定し、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素遺伝子を有するクローンよりもDOI生産量の多かった候補クローンを選抜した。
【0098】
2次選抜において得られた候補クローンを対象として、3次選抜を実施した。2次選抜で得られたクローンから、プラスミドベクターを精製単離し、DOI合成酵素の基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(国際公開第2006/109479号及びKakinuma等, Tetrahedron Letters, 2000, vol.41, p.1935に記載されている、大腸菌GI724株におけるpgi遺伝子、zwf遺伝子及びpgm遺伝子を破壊した株)のコンピテントセル細胞に形質転換した。形質転換細胞をL寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、2%寒天、100μg/mlアンピシリン)で培養し、生育したクローンを3次選抜に用いた。3次選抜では、まず、得られた選抜対象クローンをRMM液体培地(2%カザミノ酸、0.5%マンニトール、0.6%NaHPO、0.3%KHPO、0.05%NaCl、0.1%NHCl、1mM MgCl、100μg/mlアンピシリン)が3mlずつ入った試験管に植菌し、30℃で24時間振とうし、前培養を行った。次に、前培養液を3次選抜用2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、2%グルコース、2%マンニトール、100μg/mlアンピシリン)が50mlずつ入った500ml三角バッフルフラスコに濁度OD600=0.1になるように植菌し、30℃で36時間振とうし、本培養を行った。本培養開始0、12、24、36時間後の培養液を遠心分離して菌体を除いた上清10μlに対し、1次選抜におけるDOI濃度測定操作と同様の操作を行うことで、DOI濃度をHPLCで決定し、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素遺伝子を有するクローンよりもDOI生産量の多かった候補クローンを選抜した(図6)。図6中、◆で表されるデータ系列は配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素遺伝子を有するクローンによるDOI生産量、■で表されるデータ系列は野生型DOI合成酵素遺伝子を有するクローンよりもDOI生産量の多かった候補クローンによるDOI生産量である。
【0099】
(実施例3)
<変異型DOI合成酵素遺伝子の塩基配列の解析>
DOI合成酵素遺伝子の変異点を決定するために、上記3次選抜において得られたクローンのDOI合成酵素遺伝子の塩基配列解析を行った。解析用プライマーは、配列番号8に示すプライマー7(5’-ggagccaaccgaagaacc-3’)、配列番号9に示すプライマー8(5’-ctagtctagagtcgtttttctgct-3’)、配列番号10に示すプライマー9(5’-acctgatgcccgaacatg-3’)、配列番号11に示すプライマー10(5’-agatcgaatccgggtccg-3’)の計4種のプライマーを使用し、ベックマンコールター社製のDTCS Quick Start Kitを利用して、PCR反応を行い、その反応サンプルをベックマンコールター社製のCEQ8000ジェネティックアナライザーにより解析した。解析の結果、DOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから877番目のTがAに塩基置換されていた。すなわち、N末端から293番目のトリプトファンがアルギニンにアミノ酸置換されていた。このようにして、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素と比較して、DOI生産性を向上させる変異型DOI合成酵素をコードする遺伝子(btrC(W293R))を取得した。
【0100】
(実施例4)
<野生型及び変異型DOI合成酵素の生産及び精製>
配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素を含むプラスミドベクターpLEX-btrC(国際公開第2006/109479号に記載されている)をテンプレートとして、btrC遺伝子の開始コドン上流にBamHI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号12に示すプライマー11(5’-cgcggatccatgacgactaaacaaattt-3’)、btrC遺伝子の終止コドン上流にHindIII制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号13に示すプライマー12(5’-cccaagcttttacagcccttccccgatc-3’)を用いてbtrC遺伝子のヌクレオチド配列をPCR法により増幅し、大腸菌組換え蛋白質高発現ベクターpQE80L(QIAGEN)に連結し、大腸菌DH5αに形質転換し、プラスミドpQE80L-btrCを得た。pQE80Lベクターに連結することによりヒスチジンタグ配列とDOI合成酵素が融合した組換えDOI合成酵素を生産することができる。組換え蛋白質としてDOI合成酵素を高発現させた大腸菌を遠心により回収後、Lysis buffer(500mM Phosphate Buffer(pH7.7)、300mM NaCl、0.2mM CoCl・6HO)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕機にかけ、大腸菌を破砕後、遠心をすることにより組換えDOI合成酵素を上清に回収した。上清液とヒスチジンタグ配列と特異的に結合するNi-NTAアガロースを混合して、Ni-NTAアガロースにDOI合成酵素を結合させた後、Wash buffer(500mM Phosphate Buffer(pH7.7)、30mM Imidazole、0.2mM CoCl・6HO)を加えて、洗浄し、遠心して上清を捨てた。組換えDOI合成酵素が結合したNi-NTAアガロースに溶出buffer(50mM Phosphate Buffer(pH7.7)、200mM Imidazole、0.2mM CoCl・6H0)を加えて、組換えDOI合成酵素を溶出させ、高純度の組換えDOI合成酵素を精製することができた。
【0101】
同様に、変異型DOI合成酵素(btrC(W293R))についても、上記で取得した変異型DOI合成酵素(btrC(W293R))を含むプラスミドベクターをテンプレートとして、btrC遺伝子の開始コドン上流にBamHI制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号12に示すプライマー11(5’-cgcggatccatgacgactaaacaaattt-3’)、btrC遺伝子の終止コドン上流にHindIII制限酵素サイトを付加したヌクレオチド配列に相当する配列番号13に示すプライマー12(5’-cccaagcttttacagcccttccccgatc-3’)を用いてbtrC(W293R)遺伝子のヌクレオチド配列をPCR法により増幅し、大腸菌組換え蛋白質高発現ベクターpQE80L(QIAGEN)に連結し、大腸菌DH5αに形質転換し、プラスミドpQE80L-btrC(W293R)を得た。同様な方法で組換え変異型DOI合成酵素の生産、精製を行った。
【0102】
(実施例5)
<野生型及び変異型DOI合成酵素の活性測定>
実施例4で精製した野生型及び変異型DOI合成酵素の酵素活性をグルコース-6-リン酸、NADを用いて測定した。アッセイの反応溶液の組成は、50mM Phosphate Buffer(pH7.7)、5mM グルコース-6-リン酸、5mM β-NAD、0.2mM CoCl・6HO、野生型又は変異型DOI合成酵素 10μgとし、46℃、5分間反応させた。反応後、反応溶液をフェノール/クロロホルム処理をして、除蛋白を行い、遠心後の水層画分10μlをサンプルとして、実施例2における1次選抜におけるDOI濃度測定に用いたHPLCを用いた方法でDOIを定量し、活性を算出した。また、DOI合成酵素1mgが1分間あたりに合成するDOIの量を比活性とした。変異型DOI合成酵素(W293R)のDOI合成酵素活性は、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素の活性よりも、1.5倍高活性であった(図7)。
【0103】
(実施例6)
さらにDOI生産性を向上させる変異型DOI合成酵素遺伝子を取得するために、変異型DOI合成酵素遺伝子(W293R)を含むプラスミドをテンプレートとして、実施例1に示したエラープローンPCR法で、新たな変異型DOI合成酵素遺伝子クローンライブラリーを構築した。次いで、実施例2のDOI合成酵素遺伝子変異クローンの単離に示した1、2、3次選抜を実施し、変異型DOI合成酵素遺伝子(W293R)を含むクローンよりもさらにDOI生産性の向上したクローンを取得した(図8)。図8中、◆で表されるデータ系列はpGADP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株によるDOI生産量を表し、■で表されるデータ系列はpGADP-btrC(W293R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株によるDOI生産量を表し、▲で表されるデータ系列、×で表されるデータ系列、+で表されるデータ系列、及び●で表されるデータ系列は、それぞれ異なる変異型DOI合成酵素遺伝子を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株によるDOI生産量を表す。
【0104】
次に実施例3の変異型DOI合成酵素遺伝子の塩基配列の解析と同様に塩基配列解析をした結果、表4に示すように、以下の4種の変異型DOI合成酵素遺伝子が得られた。
DOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから877番目のTがAに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から293番目のトリプトファンがアルギニンにアミノ酸置換され、且つDOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから41番目のAがCに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から14番目のアスパラギンがトレオニンにアミノ酸置換された変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/N14T))。
DOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから877番目のTがAに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から293番目のトリプトファンがアルギニンにアミノ酸置換され、且つDOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから110番目のAがTに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から37番目のチロシンがフェニルアラニンにアミノ酸置換された変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/Y37F))。
DOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから877番目のTがAに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から293番目のトリプトファンがアルギニンにアミノ酸置換され、且つDOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから868番目のGがAに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から290番目のアラニンがトレオニンにアミノ酸置換された変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/A290T))。
DOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから877番目のTがAに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から293番目のトリプトファンがアルギニンにアミノ酸置換され、且つDOI合成酵素遺伝子(btrC)の開始コドンから956番目のAがGに塩基置換されたことにより、配列番号1におけるN末端から319番目のヒスチジンがアルギニンにアミノ酸置換された変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))。
【0105】
【表4】
【0106】
野生型DOI合成酵素遺伝子を含むクローン、W293R変異を有する変異型DOI合成酵素遺伝子を含むクローン、及び表4に示した各クローンによるDOI生産(図8に示したもの)について、以下の表5に数値を示す。
【0107】
【表5】
【0108】
次に実施例4と同様に上記4種の(btrC(W293R/N14T))、(btrC(W293R/Y37F))、(btrC(W293R/A290T))、(btrC(W293R/H319R))の変異型DOI合成酵素を生産、精製した。その後、実施例5と同様に野生型DOI合成酵素と各変異型DOI合成酵素のアッセイを行い、活性を比較した結果、
変異型DOI合成酵素(W293R/N14T)のDOI合成酵素活性は、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素の活性よりも、1.92倍高活性(図9)、
変異型DOI合成酵素(W293R/Y37F)のDOI合成酵素活性は、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素の活性よりも、1.57倍高活性(図9)、
変異型DOI合成酵素(W293R/A290T)のDOI合成酵素活性は、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素の活性よりも、1.45倍高活性(図9)、
変異型DOI合成酵素(W293R/H319R)のDOI合成酵素活性は、配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素の活性よりも、1.83倍高活性(図9)、
であり、以上4種の変異型DOI合成酵素遺伝子は全て配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素よりも高活性であった。
【0109】
(実施例7)
<変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))を導入した形質転換体によるDOI発酵生産性>
変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))のDNA断片を宿主細胞(大腸菌)で発現させるための発現ベクターを構築した。具体的には、pLEXベクター(Invitrogen)を鋳型として、配列番号4に示すプライマー3(5’-atggtaccgagctcggatcc-3’)と5’側にBamHI制限酵素サイトを有する配列番号14に示すプライマー13(5’-cgcggatccgagataatttatcaccgcag-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、50℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、DNA断片を回収した。回収したDNA断片を制限酵素BamHIとPstIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、発現ベクターのDNA断片を取得した。
【0110】
次いで、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))のDNA断片を宿主細胞(大腸菌)で発現させるためのプロモーターとして、gapAプロモーターを取得した。gapAプロモーターは、具体的には以下のようにして取得した。大腸菌の染色体DNAを鋳型として、5’側にBamHI制限酵素サイトを有する配列番号15に示すプライマー14(5’-cgcggatccgcgggaagagtgaggcgagtc-3’)と5’側にリン酸基を付加した配列番号16に示すプライマー15(5’-atattccaccacctatttg-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、50℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、gapAプロモーターのDNA断片を回収した。
【0111】
次いで、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))を含むプラスミドを鋳型として、5’側にリン酸基を付加した配列番号17に示すプライマー16(5’-atgacgactaaacaaatttgttttgcgg-3’)と5’側にPstI制限酵素サイトを有する配列番号18に示すプライマー17(5’-aaaactgcagttacagcccttcccggatc-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、50℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))のDNA断片を回収した。
【0112】
次に、上記で増幅させたgapAプロモーターのDNA断片と、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R))のDNA断片とを、2×Ligation mixを用い、16℃、30分で反応させた。このようにして得たLigation産物を鋳型として、配列番号15に示すプライマー14と配列番号18に示すプライマー17とを用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、94℃で30秒の熱変性、50℃で30秒のアニーリング、68℃で1分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、30サイクル実施し、さらに68℃で2分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片をフェノール/クロロホルムで処理し、遠心分離し、上清をエタノール沈殿して、DNA断片を回収した。回収したDNA断片を制限酵素BamHIとPstIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって精製・単離し、発現ベクターのDNA断片を取得した。このDNA断片を、上記した発現ベクターのDNA断片に連結挿入し、プラスミドpGAPP-btrC(W293R/H319R)を得た(図10)。また、同様な方法で配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素遺伝子が挿入されたpGAPP-btrCも得た(図11)。
【0113】
プラスミドpGAPP-btrC(W293R/H319R)及びpGAPP-btrCを精製単離し、DOI合成酵素の基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(国際公開第2006/109479号及びKakinuma等, Tetrahedron Letters, 2000, vol.41, p.1935に記載されている)のコンピテントセルに形質転換した。形質転換細胞を2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、100μg/mlアンピシリン)が3ml入った試験管に植菌し、30℃で24時間振とうし、前培養を行った。次に、前培養液を評価培養用2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、5%グルコース、5%マンニトール、100μg/mlアンピシリン)が50mlずつ入った500ml三角バッフルフラスコに濁度OD600=0.1になるように植菌し、30℃で60時間振とうし、本培養を行った。本培養開始0、12、24、36、48、60時間後の培養液を遠心分離して菌体を除いた上清10μlに対し、実施例2における1次選抜におけるDOI濃度測定操作と同様の操作を行うことで、DOI濃度をHPLCで決定した。また、菌体の濁度、培地中のグルコース濃度、マンニトール濃度もあわせて測定した。菌体濁度は分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定し、グルコース濃度は和光純薬工業(株)製のグルコースCII-テストワコーに従い、マンニトール濃度は、Magazyme社製のMannitol Assay Kitに従って測定した。
【0114】
図12Aに培地の濁度のタイムコース、図12Bに培地中のグルコース濃度のタイムコース、図12Cに培地中のマンニトール濃度のタイムコース及び図12DにDOI生産量のタイムコースを示す。pGAPP-btrC(W293R/H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(図12A図12D中における▲で示されるデータ系列)は、pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(図12A図12D中における■で示されるデータ系列)の約2倍のDOI生産速度を示した。
【0115】
(実施例8)
<変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(H319R))を導入した形質転換体によるDOI発酵生産性>
変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(H319R))のDNA断片を宿主細胞(大腸菌)で発現させるための発現ベクターを構築した。配列番号1のアミノ酸配列の野生型DOI合成酵素遺伝子が挿入されたpGAPP-btrC(図11)を鋳型として、配列番号19に示すプライマー18(5’-ttccattatttaatccgcgataacaagagg-3’)と配列番号20に示すプライマー19(5’-cctcttgttatcgcggattaaataatggaa-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅には、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で2分保持後、98℃で15秒の熱変性、55℃で30秒のアニーリング、68℃で6分のDNA伸長の反応を1サイクルとして、20サイクル実施し、さらに68℃で3分保持し、得られたPCR増幅産物を4℃で保持した。このようにPCR増幅したDNA断片を制限酵素DpnIで消化し、大腸菌DH5αに形質転換し、プラスミドpGAPP-btrC(H319R)を得た(図13)。
【0116】
プラスミドpGAPP-btrC(H319R)及びpGAPP-btrCを精製単離し、DOI合成酵素の基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(国際公開第2006/109479号及びKakinuma等, Tetrahedron Letters, 2000, vol.41, p.1935に記載されている)のコンピテントセルに形質転換した。形質転換細胞を2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、100μg/mlアンピシリン)が3ml入った試験管に植菌し、30℃で24時間振とうし、前培養を行った。次に、前培養液を評価培養用2×YT液体培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、3%グルコース、4%マンニトール、100μg/mlアンピシリン)が30mlずつ入った200ml三角バッフルフラスコに濁度OD600=0.1になるように植菌し、30℃で48時間振とうし、本培養を行った。本培養開始0、12、24、36、48時間後の培養液を遠心分離して菌体を除いた上清10μlに対し、実施例2における1次選抜におけるDOI濃度測定操作と同様の操作を行うことで、DOI濃度をHPLCで決定した。また、菌体の濁度、培地中のグルコース濃度、マンニトール濃度もあわせて測定した。菌体濁度は分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定し、グルコース濃度は和光純薬工業(株)製のグルコースCII-テストワコーに従い、マンニトール濃度は、Magazyme社製のMannitol Assay Kitに従って測定した。
【0117】
図14Aに培地の濁度のタイムコース、図14Bに培地中のグルコース濃度のタイムコース、図14Cに培地中のマンニトール濃度のタイムコース及び図14DにDOI生産量のタイムコースを示す。pGAPP-btrC(H319R)を含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(図14A図14D中における▲で表されるデータ系列)は、pGAPP-btrCを含む大腸菌GI724ΔpgiΔzwfΔpgm株(図14A図14D中における■で表されるデータ系列)の約1.2倍のDOI生産速度を示した。
【0118】
(実施例9)
<変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/N14T)、(W293R/H319R))を導入した形質転換体によるジャーファーメンターでのDOI発酵生産性評価>
ジャーファーメンターの培養では実施例8とは異なる宿主と発現ベクターを用いた。宿主にはDOI合成酵素基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株(国際公開第2010/053052号に記載されている、大腸菌MG1655株におけるpgi遺伝子及びzwf遺伝子を破壊した株)を用いた。一方、発現ベクターについては以下のように作成した。
【0119】
DOI合成酵素遺伝子(btrC)を含むプラスミドベクターpGAP-btrC-cscA-glf(国際公開第2010/053052号に記載されている、GADPHプロモータ、バチルス・サーキュランスのDOI合成酵素遺伝子であるbtrC、大腸菌O-157株由来のスクロース加水分解酵素遺伝子であるcscA及びザイモモナス・モビリス由来のグルコース輸送促進タンパク質遺伝子であるglfの発現ユニットをpBR322(Genbank accession No.J01749)に組み込んだもの)を鋳型にして配列番号21に示すプライマー20(5’-cattacaggcttttaaataaaatcggg -3’)、配列番号22に示すプライマー21(5’- taaaagcctgtaatgggcggacacgtc -3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(TAKARA)を用いた。PCRの反応条件は98℃で10秒間の熱変性、55℃で15秒間のアニーリング、72℃で40秒間のDNA伸長反応を1サイクルとして30サイクル実施した。このように増幅したPCR産物を大腸菌DH5αに形質転換し、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R))を含むプラスミドベクターpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを得た。(図15
【0120】
変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R))を含むプラスミドベクターpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを鋳型にして配列番号23に示すプライマー22(5’- tgttttacctttgcattcggcgaacat-3’)、配列番号24に示すプライマー23(5’-tgcaaaggtaaaacaccggtccgcaaa-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(TAKARA)を用いた。PCRの反応条件は98℃で10秒間の熱変性、58℃で15秒間のアニーリング、72℃で40秒間のDNA伸長反応を1サイクルとして30サイクル実施した。このように増幅したPCR産物を大腸菌DH5αに形質転換し、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/N14T))を含むプラスミドベクターpGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfを得た。(図16
【0121】
また、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R))を含むプラスミドベクターpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを鋳型にして配列番号25に示すプライマー24(5’- ttaatccgcgataacaagaggggctac-3’)、配列番号26に示すプライマー25(5’- ttatcgcggattaaataatggaagat-3’)を用い、PCR増幅を行った。PCR増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(TAKARA)を用いた。PCRの反応条件は98℃で10秒間の熱変性、54.4℃で15秒間のアニーリング、72℃で40秒間のDNA伸長反応を1サイクルとして30サイクル実施した。このように増幅したPCR産物を大腸菌DH5αに形質転換し、変異型DOI合成酵素遺伝子(btrC(W293R/H319R)を含むプラスミドベクターpGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを得た。(図17
【0122】
プラスミドpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glf及びプラスミドpGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfをMonarch(登録商標) Plasmid Miniprep kit(New England Biolabs)を用いて精製単離し、DOI合成酵素の基質であるグルコース-6-リン酸が高蓄積する大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株(国際公開第2010/053052号に記載されている)のコンピテントセルに形質転換し、アンピシリン100μg/mlを含むLB寒天プレートで37℃で一晩培養することによって3種類のプラスミドpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfをそれぞれ含む、3種類のMG1655ΔpgiΔzwf株を得た。
【0123】
3種類のプラスミドpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfをそれぞれ含むMG1655ΔpgiΔzwf株について、ジャーファーメンターを用いたDOI生産性評価を行った。
前培養としてLB培地(1%ハイポリペプトンN、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、0.01%FeSO・7HO)が100gずつ入った500ml三角バッフルフラスコにアンピシリン100mg/mlを0.1ml加え、3種類のプラスミドpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfをそれぞれ含む3種類のMG1655ΔpgiΔzwf株を、0.1ml別々の上記三角バッフルフラスコに植菌し、一晩120rpm、28℃で撹拌培養を行った。
【0124】
培地成分1(0.2%KHPO4、0.2%KHPO、0.01%FeSO・7HO、0.03%アデカノール)350gが入った1L培養槽(ABLE社製造培養槽 BML-01KP3)を滅菌し、培地成分2(10%(NHSO、4.6%NHCl、4.6%MgSO・7HO)を15g、50%コーンスティープリカーを5g 、50%フィチン酸を700μl加え、前培養液を10g植菌し培養を開始した。培養開始とともに試薬糖液(21%Glc、21%Fru、1%Xyl)を0.13g/minの速度で30時間流加した。試薬糖液はグルコース溶液、フルクトース溶液、キシロース溶液をそれぞれ別々に高圧蒸気滅菌し混合して作製した。
【0125】
培養は大気圧下、通気量0.5L/min、撹拌速度800rpm、培養温度30℃、pH6.0(12.5%アンモニア溶液で調整)で32時間行った。培養開始0、8、24、27、32時間後の培養液を遠心分離して、菌体を取り除いた上清を滅菌蒸留水で100倍希釈し、フィルター(マイレクス-GV、0.22μm、PVDF、4mm)を用いてろ過し、表7の条件に従ってDOI、グルコース、フルクトース、キシロース濃度の測定をHPLCを用いて行った。
図18AにpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示し、図18BにpGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示し、図18CにpGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株でのDOI生産量(▲)、グルコース濃度(●)、フルクトース濃度(◆)、キシロース濃度(■)のタイムコースを示した。
【0126】
表6に3種類のプラスミドpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glf、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfをそれぞれ含むMG1655ΔpgiΔzwf株の32時間目のDOI濃度を示した。つまり、pGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを含む大腸菌MG1655ΔpgiΔzwf株それぞれの32時間培養を行った後のDOI濃度を示した図である。
【0127】
【表6】
【0128】
32時間目のDOI濃度はpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株で56.6g/L、pGAPP-btrC(W293R/N14T)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株で30.6g/L、pGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株で70.5g/Lとなった。
よってpGAPP-btrC(W293R/H319R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株でpGAPP-btrC(W293R)-cscA-glfを含むMG1655ΔpgiΔzwf株の約1.2倍のDOI生産性を示した。
【0129】
【表7】
【0130】
2017年3月27日に出願された日本国特許出願2017-061572の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
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図14D
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図18B
図18C
【配列表】
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