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特許6989770ドライエッチング剤、ドライエッチング方法及び半導体装置の製造方法
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  • 特許-ドライエッチング剤、ドライエッチング方法及び半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-ドライエッチング剤、ドライエッチング方法及び半導体装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ドライエッチング剤、ドライエッチング方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 13/08 20060101AFI20220104BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09K13/08
H01L21/302 104Z
H01L21/302 301Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018029381
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2018141146
(43)【公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2017035848
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 啓之
(72)【発明者】
【氏名】八尾 章史
(72)【発明者】
【氏名】柏葉 崇
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-51236(JP,A)
【文献】特開平9-137274(JP,A)
【文献】特開昭60-77429(JP,A)
【文献】特開平1-319714(JP,A)
【文献】特開平10-27781(JP,A)
【文献】特開2017-50413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 13/08
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、化学式CF-CO(x=2または3、y=1,2,3,4または5、z=2x-1-y)で表され、酸素原子を含む三員環構造を有するハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含むドライエッチング剤。
【請求項2】
さらに、不活性ガスを含む請求項1に記載のドライエッチング剤。
【請求項3】
さらに、添加ガス、及び不活性ガスを含む請求項1に記載のドライエッチング剤。
【請求項4】
添加ガスが酸化性ガス、又は還元性ガスである、請求項3に記載のドライエッチング剤。
【請求項5】
前記酸化性ガスが、含酸素ガス及び含ハロゲンガスからなる群から選ばれる少なくとも1種のガスであり、
前記含酸素ガスが、O、O、CO、CO、COCl、COF、CFOF、及びNOからなる群から選ばれる少なくとも1種のガスであり、
前記含ハロゲンガスが、F、NF、Cl、Br、I、CFCl、CFCl、CFCl、及びYF(式中、YはCl、Br、又はIを表し、nは整数を表し、1≦n≦7である。)からなる群から選ばれる少なくとも1種のガスであり、
前記還元性ガスが、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、及びHからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである、請求項4に記載のドライエッチング剤。
【請求項6】
前記不活性ガスがN、He、Ar、Ne、及びKrからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである、請求項2~5のいずれか1項に記載のドライエッチング剤。
【請求項7】
前記ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの含有率が、1~60体積%である請求項1~6のいずれか1項に記載のドライエッチング剤。
【請求項8】
CF、CFH、CF、CFH、C、C、CH、C、CH、C、C、C、C、CH、CH、C、C、C、C10、、CHF、C、C、CFI、CF、及びCFIからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のドライエッチング剤。
【請求項9】
前記ハイドロフルオロアルキレンオキサイドが、1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイド、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイド、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイド、及び、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~8のいずれか1項に記載のドライエッチング剤。
【請求項10】
前記ハイドロフルオロアルキレンオキサイドが1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイドである請求項9に記載のドライエッチング剤。
【請求項11】
少なくとも、化学式CF-CO(x=2または3、y=1,2,3,4または5、z=2x-1-y)で表され、酸素原子を含む三員環構造を有するハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含むドライエッチング剤をプラズマ化して得られるプラズマガスを用いて、
二酸化シリコン、窒化シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、及び炭化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種のシリコン系材料を選択的にエッチングするドライエッチング方法。
【請求項12】
前記ドライエッチング剤は、(A)前記ハイドロフルオロアルキレンオキサイドと、(B)H、O、CO、及びCOFからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のガスと、Arのみからなり、
(A)、(B)、及びArの体積流量比をそれぞれ1~60%:1~60%:5~98%(但し、各々のガスの体積流量比の合計は100%である。)であり、
前記シリコン系材料は、二酸化シリコン及び窒化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載のドライエッチング方法。
【請求項13】
前記ハイドロフルオロアルキレンオキサイドが1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイドである請求項11又は12に記載のドライエッチング方法。
【請求項14】
さらに、水素と不活性ガスを含むドライエッチング剤を用いて、二酸化シリコンを選択的にエッチングする請求項11に記載のドライエッチング方法。
【請求項15】
基板上に、二酸化シリコン、窒化シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、及び炭化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種のシリコン系材料膜を形成する工程と、
前記シリコン系材料膜の上に、所定の開口部を有するレジスト膜を形成する工程と、
請求項11に記載のドライエッチング方法を用いて、前記開口部から前記シリコン系材料膜をエッチングする工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含むドライエッチング剤、及びそれを用いたドライエッチング方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、半導体製造においては、極めて微細な処理技術が求められており、湿式法に代わりドライエッチング法が主流になっている。ドライエッチング法は、真空空間において、プラズマを発生させて、物質表面上に微細なパターンを分子単位で形成させる方法である。
【0003】
二酸化ケイ素(SiO)等の半導体材料のエッチングにおいては、下地材として用いられるシリコン、ポリシリコン、チッ化ケイ素等に対するSiOのエッチング速度を大きくするため、エッチング剤として、CF、CHF、C、C、C等のパーフルオロカーボン(PFC)類やハイドロフルオロカーボン(HFC)類が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、これらのPFC類やHFC類は、いずれも大気寿命の長い物質であり、高い地球温暖化係数(GWP)を有していることから京都議定書(COP3)において排出規制物質となっている。半導体産業においては、経済性が高く、微細化が可能な低GWPの代替物質が求められてきた。
【0005】
そこで、特許文献1には、PFC類やHFC類の代替物質として、4~7個の炭素原子を有するパーフルオロケトンを含有する反応性ガスをクリーニングガスやエッチングガスとして用いる方法が開示されている。しかしながら、これらのパーフルオロケトンの分解物質には少なからず高GWPのPFCが含まれることや、沸点が比較的高い物質が含まれることから、必ずしもエッチングガスとして好ましくなかった。
【0006】
特許文献2には2~6個の炭素原子を有するハイドロフルオロエーテルをドライエッチングガスとして用いる方法が開示されているが、特許文献1と同様、これらの直鎖のハイドロフルオロエーテルについても総じてGWPが高く、地球環境的には好ましくなかった。
【0007】
このような背景の下、更なる低GWPを有し、かつ工業的にも製造が容易な化合物の開発が求められてきており、分子内に二重結合、三重結合を有する不飽和フルオロカーボンを用いてエッチング用途として検討されてきた。これに関連する従来技術として、特許文献3にはC2a+1OCF=CFを含むエーテル類、CFCF=CFH、CFCH=CF等のフッ素化オレフィン類をSi膜、SiO膜、Si膜、または高融点金属シリサイト膜をエッチングする方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドなどのパーフルオロ環状エーテル類を必須成分とするガスにより半導体材料をドライエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2004-536448号公報
【文献】特開平10-140151号公報
【文献】特開平10-223614号公報
【文献】特公平03-043776号公報
【文献】特表平5-500945号公報
【文献】特開昭58-134086号公報
【0010】
【文献】E.T.McBee.et al、J.Am.Chem.Soc.1953,75,4091-4092.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
PFC類やHFC類はGWPが高いため規制対象物質であり、それらの代替物質であるパーフルオロケトン類、直鎖状ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロフルオロビニルエーテル類やパーフルオロエーテル類は、分解物質に少なからず高GWPのPFCが含まれることや製造が難しく経済的でないことから、地球環境に対する影響が小さく、かつ必要とされる性能を有するドライエッチング剤の開発が求められている。
【0012】
エッチング性能については、プラズマエッチングの場合、例えばCFのガスからFラジカルを作り、SiOをエッチングすると等方性にエッチングされる。微細加工が要求されるドライエッチングにおいては、等方性よりも異方性エッチングが可能なエッチング剤が望まれている。
【0013】
本発明は、地球環境負荷が小さく、かつ、特殊な装置を使用することなく異方性エッチングが可能で、良好な加工形状が得られるドライエッチング剤、及びそれを用いたドライエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ドライエッチングにおいて異方性エッチングに好適で、かつ地球環境への影響がより小さい物質としてハイドロフルオロアルキレンオキサイドを見出した。
【0015】
すなわち、本発明では、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含むドライエッチング剤を提供する。ドライエッチング剤には、酸化性ガス又は還元性ガス等の添加ガス、及び、不活性ガスを添加することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明におけるドライエッチング剤に含まれるハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、分子内に1個の酸素原子を有し、且つ三員環構造であり分子内歪みを有するため、直鎖のエーテル類に比べて大気中でのOHラジカル等による分解性が高く、地球温暖化への寄与もCFやCFH等のPFC類やHFC類より格段に低いことから、環境への負荷が軽いという効果を奏す。
【0017】
また、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、エッチング性能という観点においても、分子内にCFの構造を含み、CF が形成されやすく、さらに分子内水素を有し且つ環状化合物であるため、F/C比が低いことから孔や溝の側壁保護に有利であり、そのため異方性エッチングを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明で用いた実験装置の概略図である。
図2】エッチング処理により得られる、シリコンウェハ上の開口部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明におけるドライエッチング剤について詳細に説明する。
【0020】
本発明のドライエッチング剤は、少なくとも化学式CF-CO(x=2または3、y=1,2,3,4または5、z=2x-1-y)で表される酸素原子を含む三員環構造を有するハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含む。
【0021】
ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの具体的としては、1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイド、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイド、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイド、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイド、1,4,4,4-テトラフルオロブチレンオキサイド、2,4,4,4-テトラフルオロブチレンオキサイド、3,4,4,4-テトラフルオロブチレンオキサイド、1,1,4,4,4-ペンタフルオロブチレンオキサイド、1,2,4,4,4-ペンタフルオロブチレンオキサイド、1,3,4,4,4-ペンタフルオロブチレンオキサイド、2,3,4,4,4-ペンタフルオロブチレンオキサイド、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチレンオキサイド、1,1,2,4,4,4-ヘキサフルオロブチレンオキサイド、1,1,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチレンオキサイド、1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチレンオキサイド、2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチレンオキサイド、1,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチレンオキサイド、1,1,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチレンオキサイド、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチレンオキサイド、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチレンオキサイド、などが挙げられる。なお、これらの化合物にはトランス体とシス体といった立体異性体が存在し、さらに、それぞれに対して鏡像異性体が存在する。しかし、本発明においては、いずれかの異性体もしくは両者の混合物として用いることができる。
【0022】
本発明において使用するハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、ハイドロフルオロオレフィンを酸化する方法などの公知の方法により得ることができる。
例えば、特許文献5には、フッ素化アルキル基を持つエポキシドの合成方法として、フルオロアルキル基を持つ置換オレフィンに対し、次亜フッ素酸(HOF)を用いて酸化反応を行うことで、対応するエポキシドを製造できることが開示されているので、この反応を用いて得ることができる。また、特許文献6には、パーフルオロプロペンに対する、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いた酸化反応が開示されている。この反応を用いてハイドロフルオロアルキレンオキサイドを得ることができる。
ハイドロフルオロオレフィンの酸化以外の方法として、1,3,3,3-テトラフルオロアセト酢酸エチルを出発原料とし、多段階工程の反応を経て、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンオキシドを得る方法が、非特許文献1に開示されている。この反応を用いてハイドロフルオロアルキレンオキサイドを得ることができる。
【0023】
ハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、分子内に水素を有し、過剰なFラジカルをHFとして除去するとともに、マスク上に適度に堆積して保護膜として作用する。これにより、被エッチング層に対する選択性が向上する。また、エッチング過程においても被エッチング層に形成されたトレンチやホールの側壁に保護膜として堆積することにより、Fラジカルによる等方的エッチングに対し、異方性エッチングの選択性を向上すると考えられる。また、酸素を含む環状構造を有することから、活性種の一部は自らの酸素によってCOとして除去され、過剰な保護膜の堆積によるホールの閉塞などを予防する効果が期待される。
【0024】
なお、エッチングガスとして用いる場合には、取り扱いの上で適度な蒸気圧を有することが望ましい。そのため、上記化合物の中では比較的蒸気圧の高い、1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイドや2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンオキサイド、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイド、または、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピレンオキサイドが特に望ましい。
【0025】
前述したように、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロ-2-ブチン、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン、ヘキサフルオロプロペン等をエッチングガスとして用いることは既に知られている。これらのフッ素化オレフィン化合物はそれ自身、多くのフッ素原子を持ち、酸化シリコン系材料に対し高いエッチング速度を有することからも、一見好ましい方法である。通常、これらの化合物をエッチングガスとして用いる場合には、ポリマー成分が堆積量をコントロールするため酸素との混合ガスとして使用する。しかしながら、酸素量が適切でないと二重結合もしくは三重結合部位を持つ為ポリマー化の進行が著しく、過剰なポリマー成分が堆積することによって、エッチング装置内を汚染したりマスク上に堆積してエッチング形状に異常をきたしたりすることがあった。一方で、本発明の対象とするハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、二重結合又は三重結合を持たないため、ポリマー成分の過剰な生成を抑制することができる。
【0026】
本発明において使用するハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、N、He、Ar、Ne、Kr等の不活性ガスで希釈しても使用可能である。特にArではハイドロフルオロアルキレンオキサイドとの相乗効果によって、より高いエッチングレートが得られる。不活性ガスの添加量は出力、排気量等の装置の形状、性能や対象膜特性に依存するが、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの流量の1/10から20倍が好ましい。
【0027】
本発明のエッチング剤は、各種ドライエッチング条件下で実施可能であり、対象膜の物性、生産性、微細精度等によって、種々の添加剤を加えることが可能である。
【0028】
本発明において使用するハイドロフルオロアルキレンオキサイドは、チャンバーに供給するドライエッチング剤中に1~60体積%含有させることが好ましい。また、詳細は後述するが、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドを1~60体積%とし、添加ガス(なお、ここで言う「添加ガス」とは、O、F等の酸化性ガス、若しくはH、CO等の還元性ガスを示す。)、及び不活性ガスをそれぞれ後述する体積%の範囲で混合させることが好ましい。
【0029】
添加ガスを混合することにより飛躍的にプロセスウインドウを広げることができ、特殊な基板の励起操作等なしにサイドエッチ率が小さく高アスペクト比が要求される加工にも対応できる。
【0030】
生産性を上げるために、エッチング速度を上げたい時は、添加ガスとして酸化性ガスを添加することが好ましい。酸化性ガスとして、具体的には、O、O、CO、CO、COCl、COF、CFOF、NO等の含酸素ガスや、F、NF、Cl、Br、I、CFCl、CFCl、CFCl、YF(Y=Cl、Br、I、1≦n≦7)等の含ハロゲンガスが挙げられる。この中でも、金属のエッチング速度を更に加速することができることから、O、COF、F、NF、Clが好ましく、Oが特に好ましい。
【0031】
酸化性ガスの添加量は出力等の装置の形状、性能や対象膜の特性に依存するが、通常、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの流量に対し1/10から30倍であり、好ましくは、1/10から10倍である。
【0032】
もし、酸化性ガスを、30倍を超える量で添加する場合、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの優れた異方性エッチング性能が損なわれることがある。前述した酸化性ガスの流量が1/10より少ない場合には、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドが高分子化した堆積物が著しく増加することがある。
【0033】
また、等方的なエッチングを促進するFラジカル量の低減を所望するときは、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、Hに例示される還元性ガスの添加が有効である。
【0034】
還元性ガスの添加量が多すぎる場合には、エッチングに働くFラジカルが著しく減量して、生産性が低下することがある。特に、H、Cを添加するとSiOのエッチング速度は変化しないのに対して、Siのエッチング速度は低下し、選択性が上がることから、下地のシリコンに対してSiOを選択的にエッチングすることが可能である。
【0035】
還元性ガスの添加量は出力等の装置の形状、性能や対象膜の特性に依存するが、通常、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドの流量に対し1/100から3倍であり、好ましくは、1/25から1倍である。
【0036】
なお、添加ガスについては、1種類、もしくは2種類以上を混合して添加することもでき、当業者が適宜調整することができる。
【0037】
なお、本発明では、添加ガスと共に、N、He、Ar、Ne、Kr等の不活性ガスを添加する。
【0038】
このように、本発明において使用するドライエッチング剤は、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含むものであるが、当該エッチング剤における好ましい組成を、体積%と共に以下に示す。なお、各ガスの体積%の合計は100%である。
【0039】
例えば、ハイドロフルオロアルキレンオキサイド、及び添加ガス、及び、不活性ガスを共存させる場合の体積%は、それぞれ当該オキサイド:添加ガス:不活性ガス=1~60%:1~60%:5~98%とすることが好ましく、さらに、4~40%:4~40%:20~92%とすることが特に好ましい。
【0040】
また、異なる材料の膜が露出する被加工物に対してエッチングをする際に、異なる材料間のエッチング選択比の制御などを目的として、他の含ハロゲンガスを添加することができる。例えば、SiN/SiOの選択比の制御や、半導体装置の電極を構成する金属材料と、シリコン系材料との選択比の制御を目的に、CF、CFH、CF、CFH、C、C、CH、C、CH、C、C、C、C、CH、CH、CClFH、C、C、C、C10、C、CHF、C、及び、Cからなる群から選ばれる少なくとも1種のガス)を加えてエッチングすることができる。これらの化合物を添加することによりエッチングガスのF/C比を変動することができ、プラズマ中に含まれる活性種の種類と量を制御し、各膜種のエッチング速度を変化させられる。これらの化合物の添加量は、選択的エッチングを阻害しないようにF/C比を変動することが好ましく、ハイドロフルオロアルキレンオキサイドに対し0.01~2体積倍が望ましい。また、エッチング速度の向上などを目的として、CFI、CF、CFI等のフッ化ヨウ化メタンを添加できる。
【0041】
次に、本発明におけるドライエッチング剤を用いたエッチング方法について説明する。
【0042】
特に、本発明のドライエッチング剤を用いたエッチング方法は、半導体材料に対して有効に適用できる。半導体材料として、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化フッ化シリコンまたは炭化酸化シリコンのシリコン系材料、を挙げることができる。
【0043】
また、本発明のドライエッチング剤を用いたエッチング方法は、反応性イオンエッチング(RIE)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマエッチング、マイクロ波エッチング等の各種エッチング方法、並びに反応条件は特に限定せず用いることができる。本発明で用いるエッチング方法は、エッチング処理装置内で対象とするハイドロフルオロアルキレンオキサイドのプラズマを発生させ、装置内にある対象の被加工物の所定部位に対してエッチングすることにより行う。例えば半導体装置の製造において、シリコンウェハ上にシリコン系材料膜を成膜し、特定の開口部を設けたレジスト膜を上部に塗布し、シリコン系材料膜を除去するようにレジスト膜の開口部をエッチングする。
【0044】
なお、本発明に係るエッチング方法は、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料等の上に積層した構造、いわゆる微小電気機械システム(MEMS;Micro Electro Mechanical Systemsの略)の製造時におけるエッチングにも適用できる。また、本発明の方法を応用することにより、MEMSを利用した磁気記録ヘッド、圧力センサー、加速度センサー等の既存製品における半導体装置の製造も可能となる。
【0045】
エッチングを行う際のプラズマ発生装置に関しては、特に限定はないが、例えば、高周波誘導方式及びマイクロ波方式の装置等が好ましく用いられる。
【0046】
エッチングを行う際の圧力は、異方性エッチングを効率よく行うために、ガス圧力は0.133~133Paの圧力で行うことが好ましい。0.133Paより低い圧力ではエッチング速度が遅くなり、一方、133Paを超える圧力ではレジスト選択比が損なわれることがある。
【0047】
エッチングを行う際のハイドロフルオロアルキレンオキサイド、及び、添加ガス、及び、不活性ガスそれぞれの体積流量比率は、前述した体積%と同じ比率でもってエッチングを行うことができる。
【0048】
また、使用するガス流量は、エッチング装置のサイズに依存する為、当業者がその装置に応じて適宜調整することができる。
【0049】
また、エッチングを行う際の温度は300℃以下が好ましく、特に異方性エッチングを行うためには240℃以下とすることが望ましい。300℃を超える高温では等方的にエッチングが進行する傾向が強まり、必要とする加工精度が得られないこと、また、レジストが著しくエッチングされるために好ましくない。
【0050】
エッチング処理を行う反応時間は、特に限定はされないが、概ね5分~30分程度である。しかしながらエッチング処理後の経過に依存する為、当業者がエッチングの状況を観察しながら適宜調整するのが良い。
【0051】
なお、前述した還元性ガス等と混合して使用したり、圧力、流量、温度等を最適化することにより、例えばコンタクトホールの加工時のシリコンとシリコン酸化膜とのエッチング速度の選択性を向上させたりすることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0053】
本発明のドライエッチング剤をコンタクトホール加工に適用し、層間絶縁膜(SiO)または窒化珪素膜をエッチングした例を実施例1~実施例7に示す。実施例7には、CFIを、トランス-1,3,3,3-テトラフルプロピレンオキサイド(t-TFOと略す)に対して10%添加してエッチングした例を示す。また、比較例としてパーフルオロカーボンであるCFやC(オクタフルオロシクロブタン)、C(ヘキサフルオロ1,3ブタジエン、CF=CF-CF=CF)をそれぞれ使用した場合を比較例1~比較例8として示す。
【0054】
本実施例に用いる実験装置の概略図を図1に示す。
【0055】
チャンバー11内の上部電極5に接続されたガス導入口16からプロセスガスを導入後、チャンバー11内圧力を2Paに設定し、高周波電源13(13.56MHz、0.22W/cm)によりプロセスガスを励起させ生成した活性種を、下部電極14上に設置した試料18に対し供給しエッチングを行った。
【0056】
試料18としては、単結晶シリコンウェハ上にSiO膜または窒化珪素膜を5μm成膜し、膜上に線幅0.3μmの開口部を設けたレジストを塗布したものを用いた。試料18に対して、C、C、CF、又はt-TFOを用いた表1に記載の組成のプロセスガスにてプロセス圧力2Paにてエッチングを30分間行った。エッチング処理後、シリコンウェハ断面をSEM観察することで、エッチング速度、アスペクト比及びサイドエッチ率を評価した。アスペクト比は、図2に示すように、(c/b)×100で表される。サイドエッチ率R(%)は、サイドエッチ(側壁の削れ量)と開口部線幅との比率を意味し、具体的には図2に示すように、R=(a/b)×100で表わされる。
【0057】
エッチング試験結果を表1に示す。
【表1】
【0058】
実施例1~実施例4より、本発明におけるドライエッチング剤は、比較例1~比較例8に示すCF、C,Cと比較して、SiOおよびSiに対し高アスペクト比、低サイドエッチ率であり、良好なコンタクトホール加工形状が得られている。また、実施例5に示すように微量の水素を添加することにより、SiOエッチングにおいて、添加しない場合に比べて高いアスペクト比かつ低サイドエッチ率でのエッチングができた。また、実施例7に示すようにCFIの添加はエッチング速度向上に寄与しており、有用である。
【0059】
実施例1~実施例7より、本発明におけるドライエッチング剤は、比較例1~比較例8の従来知られたCF、C、Cに比べて、アスペクト比が高く、サイドエッチ率が小さい、良好なコンタクトホール加工形状が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明で対象とするハイドロフルオロアルキレンオキサイドを含む剤は、ドライエッチング剤として利用できる。また、それを用いたエッチング方法は、半導体の製造方法としても利用できる。
【符号の説明】
【0061】
10 反応装置
11 チャンバー
12 圧力計
13 高周波電源
14 下部電極
15 上部電極
16 ガス導入口
17 ガス排出ライン
18 試料
24 基板
25 エッチング対象層
26 レジスト膜
27 サイドエッチ
図1
図2