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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】熱硬化型導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20220104BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220104BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J9/02
C09J4/02
C09J11/06
C09J163/00
C09J11/04
H01B1/22 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018538329
(86)(22)【出願日】2017-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2017029567
(87)【国際公開番号】W WO2018047597
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2016173765
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 総一
(72)【発明者】
【氏名】真舩 仁志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】小玉 智也
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253151(JP,A)
【文献】特開2016-060761(JP,A)
【文献】特開2015-054942(JP,A)
【文献】特開2016-048807(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125644(WO,A1)
【文献】特開2012-046757(JP,A)
【文献】特開2008-288601(JP,A)
【文献】特開2016-117860(JP,A)
【文献】特開2015-135805(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093136(WO,A1)
【文献】特開2004-018715(JP,A)
【文献】特開2013-098230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 201/00
C09J 9/02
C09J 4/02
C09J 11/06
C09J 163/00
C09J 11/04
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~()成分を含む熱硬化型導電性接着剤;
(A)成分:硬化性樹脂
(B)成分:(A)成分を硬化する熱硬化剤
(C)成分:亜鉛アセチルアセトナート(二価)、アルミニウムアセチルアセトナート(三価)、鉄フタロシアニン(二価)、コバルトアセチルアセトナート(二価)、ニッケルアセチルアセトナート(二価)、ニッケルアセテート(二価)、ジブチルスズジラウレート(二価)およびオレイン酸銅(二価)からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属錯体
(D)成分:導電性粒子
(E)成分:安定剤
ここで、前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル基を有する化合物であり、前記熱硬化剤は、下記の構造の有機過酸化物であり、前記(E)成分は、キレート剤を含む。
【化1】
(ここで、R はそれぞれ独立した炭化水素基を指す。)
【請求項2】
前記(B)成分が、下記の構造の有機過酸化物である請求項1に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【化2】
(ここで、Rはそれぞれ独立した炭化水素基を指す。)
【請求項3】
記(A)成分の合計100質量部に対して前記(B)成分が1~10質量部含まれる請求項1または2のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項4】
前記(B)成分100質量部に対して前記(C)成分が0.1~10質量部含まれる請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項5】
(A)~(D)成分を含む熱硬化型導電性接着剤;
(A)成分:硬化性樹脂
(B)成分:(A)成分を硬化する熱硬化剤
(C)成分:亜鉛アセチルアセトナート(二価)、アルミニウムアセチルアセトナート(三価)、鉄フタロシアニン(二価)、コバルトアセチルアセトナート(二価)、ニッケルアセチルアセトナート(二価)、ニッケルアセテート(二価)、ジブチルスズジラウレート(二価)およびオレイン酸銅(二価)からなる群より選択される少なくとも1種の有機金属錯体
(D)成分:導電性粒子
ここで、前記硬化性樹脂は、環状エーテル基を有する化合物であり、前記熱硬化剤は、エポキシアダクト型潜在性硬化剤である。
【請求項6】
前記(A)成分がエポキシ基、脂環式エポキシ基およびオキセタン基からなる群から少なくとも1つ選択される基を有する化合物である請求項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項7】
記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成が1~30質量部含まれる請求項またはに記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項8】
(E)成分:安定剤をさらに含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項9】
前記(D)成分が、ステアリン酸により表面処理された銀粉およびステアリン酸により表面処理された銀メッキ粉から選択されてなる少なくとも1種類である請求項1~8のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項10】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分が100~1000質量部含まれる請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項11】
還元剤を含まない請求項1~10のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項12】
最表面がニッケルである被着体に使用する請求項1~11のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項13】
前記(B)成分100質量部に対して前記(C)成分が0.5~10質量部含まれる請求項1~12のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【請求項14】
ゴム、エラストマーおよび熱可塑性樹脂を含まない請求項1~13のいずれか1項に記載の熱硬化型導電性接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続抵抗値が低い熱硬化型導電性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銅粉を添加した導電性ペーストは還元剤を添加することが知られているが、還元剤を添加する目的は銅粉の酸化を防いで導電性の低下を抑止するためである。一方、特開2009-70724号公報に記載の発明は、金属錯体と還元剤を含む銅粉を用いた導電性ペーストである。当該発明は金属錯体を還元して微小な金属粒子が発生することにより、導電性が向上する。しかしながら、導電性ペーストの塗膜そのものの導電性が良くなるだけで、電極等の被着体への影響は考慮されない。
【0003】
導電性接着剤は、二つの被着体を接続する材料である。そのため、回路抵抗は被着体の抵抗値、被着体と導電性接着剤の界面における接続抵抗値および導電性接着剤の抵抗値からなり、回路抵抗値が低くなればなるほど、接続抵抗値が回路抵抗に影響を与えることが知られている。特に、ニッケルなどの金属では表面に不動態が形成されており、接続抵抗値が高くなる傾向がある。接続抵抗値を低くするため特開2000-133043号公報の発明が見いだされているが、導電性粒子としてニッケル粉を必須成分としているため、導電性接着剤の抵抗値が高くなる傾向が見られる。
【発明の概要】
【0004】
従来は、被着体がニッケルなどの場合に、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂を用いて接続抵抗を低くする導電性接着剤を実現することが困難であった。
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、熱硬化型導電性接着剤に関する手法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)~(D)成分を含む熱硬化型導電性接着剤である。
【0007】
(A)成分:硬化性樹脂
(B)成分:(A)成分を硬化する熱硬化剤
(C)成分:有機金属錯体
(D)成分:導電性粒子。
【0008】
本発明の第二の実施態様は、前記(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物であり、(B)成分が後記一般式1の構造の有機過酸化物である第一の実施態様に記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0009】
本発明の第三の実施態様は、前記(B)成分が、後記一般式2の構造の有機過酸化物である第一または第二の実施態様に記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0010】
本発明の第四の実施態様は、前記(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物の場合、前記(A)成分の合計100質量部に対して前記(B)成分の有機過酸化物が1~10質量部含まれる第一から第三の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0011】
本発明の第五の実施態様は、前記(B)成分100質量部に対して前記(C)成分が0.1~10質量部含まれる第一から第四の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0012】
本発明の第六の実施態様は、前記(A)成分が環状エーテル基を有する化合物であり、前記(B)成分が前記(A)成分を硬化する潜在性硬化剤である第一から第五の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0013】
本発明の第七の実施態様は、前記(A)成分がエポキシ基、脂環式エポキシ基およびオキセタン基からなる群から少なくとも1つ選択される基を有する化合物であり、前記(B)成分がアミン化合物またはカチオン触媒である第一から第六の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0014】
本発明の第八の実施態様は、前記(A)成分が環状エーテル基を有する化合物の場合、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分の潜在性硬化剤が1~30質量部含まれる第六または第七の実施態様に記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0015】
本発明の第九の実施態様は、前記(C)成分の金属が二価または三価の金属である第一から第八の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0016】
本発明の第十の実施態様は、前記(C)成分がアルコキシ基および/またはカルボキシレート基を有する配位子からなる有機金属錯体である第一から第九の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0017】
本発明の第十一の実施態様は、前記(C)成分の金属が、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、スズおよび銅よりなる群から選択されてなる少なくとも1種類である第一から第十の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0018】
本発明の第十二の実施態様は、前記(D)成分が、ステアリン酸により表面処理された銀粉およびステアリン酸により表面処理された銀メッキ粉から選択されてなる少なくとも1種類である第一から第十一の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0019】
本発明の第十三の実施態様は、(A)成分100質量部に対して、(D)成分が100~1000質量部含まれる第一から第十二の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0020】
本発明の第十四の実施態様は、還元剤を含まない第一から第十三の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【0021】
本発明の第十五の実施態様は、最表面がニッケルである被着体に使用する第一から第十四の実施態様のいずれかに記載の熱硬化型導電性接着剤である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の熱硬化型導電性接着剤は、(A)成分:硬化性樹脂、(B)成分:前記(A)成分を硬化する熱硬化剤、(C)成分:有機金属錯体及び(D)成分:導電性粒子を含むことを特徴とするものである。かかる構成を有することにより、被着体がニッケルなどの場合に、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂において接続抵抗を低くすると共に、保存安定性も維持された取扱性が良好な熱硬化型導電性接着剤を提供することができる。
【0023】
本発明の熱硬化型導電性接着剤(単に組成物ともいう)の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、硬化性樹脂であり、後記(B)成分の熱硬化剤を添加した組成物は加熱により硬化する。硬化性樹脂とは(メタ)アクリル基を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリル基を有するウレタン変性オリゴマー、(メタ)アクリル基を1つ有するモノマー、(メタ)アクリル基を2つ有するモノマー、(メタ)アクリル基を3つ有するモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、エポキシ基、脂環式エポキシ基およびオキセタン基などの環状エーテル基を有する化合物なども指す。本発明の熱硬化型導電性接着剤では、被着体がニッケルなどの場合でも、(A)成分として上記した(メタ)アクリル基を有する化合物や環状エーテル基を有する化合物などの多種類の熱硬化型の硬化性樹脂において接続抵抗を低くすることができ、保存安定性にも優れる。
【0024】
(メタ)アクリル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル基を有するウレタン変性オリゴマーやエポキシ変性オリゴマーなどの変性オリゴマーや分子内に(メタ)アクリル基を1つ以上有するモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
(メタ)アクリル基を有するウレタン変性オリゴマーとは、ポリオールとポリイソシアネートによりウレタン結合を形成して、未反応のイソシアネート基に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物やアクリル酸を付加させる合成などにより得られてなるものが知られている。具体例としては、共栄社化学株式会社製のAH-600、AT-600、UA-306H、UF-8001G、ダイセルオルネクス株式会社製のエベクリルシリーズとして220などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
(メタ)アクリル基を1つ有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の特性を損なわない範囲において分子内に(メタ)アクリル基を2つ以上有するモノマーを添加することができるが、導電性の発現を考慮すると、分子内に(メタ)アクリル基を2つ以上有するモノマーを添加しない方が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル基を2つ有するモノマーとしては、1、3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレ-ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジアクリロイルイソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
(メタ)アクリル基を3つ有するモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
エポキシ基、脂環式エポキシ基およびオキセタン基などの環状エーテル基を有する化合物としては、エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂やオキセタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらを2種類以上組み合わせてもよい。
【0031】
エポキシ樹脂としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が含まれることが好ましい。1種類だけ使用しても2種類以上を混合して使用しても良い。エポキシ樹脂の具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、例えばビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ノボラック型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸などのカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとアミン類、シアヌル酸類、ヒダントイン類との反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
市販されているビスフェノール型エポキシ樹脂としては、三菱化学株式会社製のjERシリーズとして827、828EL、YL983U等、DIC株式会社製のEPICLONシリーズとして830、エピクロンEXA-835LV等が挙げられる。新日鉄住金株式会社製のエポトートシリーズとして、YD-128、YDF-170等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化物の物性を考慮すると、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。また市販されているグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製のEP-3950S等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また、1分子内に1個のエポキシ基を有する化合物を含んでも良い。当該エポキシ樹脂は一般的に反応性希釈剤とも呼ばれ、具体的には、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、C12~C14アルコールグリシジルエーテル、ブタンジグリシジルエーテル、ヘキサンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメチルジグリシジルエーテル、又はポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールをベースとするグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応性希釈剤は、低粘度化および硬化性の観点から1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物と組み合わせて使用することが好ましい。
【0034】
また市販されている1分子内に1個のエポキシ基を有する化合物(反応性希釈剤)としては、日油株式会社製のエピオールTB、MOMENTIVE社製のCARDURA E10P等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
脂環式エポキシ基を有する化合物とは、主にエポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物である。その具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-m-ジオキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
市販されている脂環式エポキシ基を有する化合物としては、信越化学工業株式会社製の多官能の脂環式エポキシ基含有シリコーンオリゴマーであるX-40-2670等が挙げられる。株式会社ダイセル製のセロキサイドシリーズとして2021P等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
オキセタン基を有する化合物の具体例としては、3-(メタ)アクリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の1官能オキセタン化合物、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ブタン、1,6-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ヘキサン等の2官能オキセタン化合物、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。低粘度化および硬化性の観点から、脂環式エポキシ基を有する化合物とオキセタン基を有する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0038】
市販されているオキセタン基を有する化合物としては、東亞合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズとしてOXT-211、OXT-221等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明で使用することができる(B)成分とは、(A)成分である硬化性樹脂を硬化する熱硬化剤である。(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物の場合、(B)成分は有機過酸化物が好ましく、(A)成分が環状エーテル基を有する化合物の場合、(B)成分は潜在性硬化剤であり、(A)成分がエポキシ基、脂環式エポキシ基およびオキセタン基からなる群から少なくとも1つ選択される基を有する化合物の場合、(B)成分である潜在性硬化剤としては(熱硬化性を有する)アミン化合物またはカチオン触媒が好ましい。すなわち、本発明の熱硬化型導電性接着剤では、明確な理由は分かっていないが、被着体がニッケルなどの場合でも、上記(メタ)アクリル基を有する化合物や環状エーテル基を有する化合物などの多種類の熱硬化型の硬化性樹脂である(A)成分に対して、熱硬化剤である(B)成分、とりわけ上記した(A)成分毎に最適化した上記熱硬化剤、これに後記(C)成分と(D)成分を組み合わせることにより接続抵抗を低くすることができ、保存安定性にも優れる。
【0040】
本発明で使用することができる前記有機過酸化物としては、下記一般式1の構造の有機過酸化物が好ましい。特に好ましくは、下記一般式2の構造の有機過酸化物である。かかる有機過酸化物を用いることで、明確な理由は分かっていないが、上記した接続抵抗を低くし、保存安定性に優れるとする効果をより顕著に発現することができる。ここで、RとRはそれぞれ独立した炭化水素基を指し、直鎖状でも環状でも良い。有機過酸化物としては、ジ-n-プロピル-パーオキシジカーボネート、ジ-iso-プロピル-パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチル-パーオキシジカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化1】
【0042】
前記有機過酸化物の具体例としては、日油株式会社製のパーロイルシリーズとしてNPP-50M、IPP-50、IPP-27、TCP、OPP、SBPなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0043】
(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物の場合、(A)成分の合計100質量部に対して(B)成分である有機過酸化物を1~10質量部含むことが好ましく、2~9質量部含むことがより好ましく、3~8質量部含むことがさらに好ましい。(B)成分が1質量部以上では低温硬化性が発現し、10質量部以下では保存安定性を維持することができる。
【0044】
前記潜在性硬化剤として熱硬化性を有するアミン化合物は、粉末状に粉砕された粉体が挙げられる。つまり、25℃で液状のエポキシ樹脂に25℃で固体の前記硬化剤が分散された一液型エポキシ樹脂において、経時による粘度変化や物性変化が少ないなどの保存安定性が確保できる硬化剤を潜在性硬化剤と言う。具体的には、室温で粉体のイミダゾール誘導体やエポキシ樹脂に三級アミンを付加させて反応を途中で止めているエポキシアダクト化合物を粉砕した粉末であるエポキシアダクト型潜在性硬化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましくは、前記エポキシアダクト型潜在性硬化剤で、市販されているものとしては味の素ファインテクノ株式会社製のアミキュアシリーズや、株式会社T&K TOKA製のフジキュアシリーズ(FXR-1081等)や旭化成ケミカルズ株式会社製のノバキュアシリーズなどが挙げられる。100℃以下で反応を開始するアミン化合物である事が好ましく、さらに好ましくは90℃以下である。
【0045】
前記熱硬化性のカチオン触媒としては、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、六フッ化アンチモン、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド、テトラキスペンタフルオロフェニレートボレート(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;B(C )などのカチオン種とアミン、4級アンモニウム、金属などのカチオン種からなる塩であり、これらに限定されるものではない。カチオン触媒の具体例としては、KING INDUSTRIES社製のK-PUREシリーズとしてTAG-2713、CXC-1820、TAG-2172、TAG-2507、CXC-1612、CXC-1615、TAG-2678、CXC-1614、TAG-2689、CXC-2689C、TAG-2690、CXC-1742、CXC-1613、CXC-1821、CXC-1756、CXC-1765などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
(A)成分が環状エーテル基を有する化合物の場合、(A)成分100質量部に対して、(B)成分である潜在性硬化剤は1~30質量部が好ましく、2~26質量部がより好ましく、3~25質量部がさらに好ましい。1質量部以上の場合は硬化性が低下せず、30質量部以下の場合は保存安定性を維持することができる。
【0047】
さらに、本発明の特性を損なわない範囲において、(A)成分が環状エーテル基を有する化合物の場合に、潜在性硬化剤の他に酸無水物、フェノール化合物、チオール化合物などの硬化剤も含んでよい。通常、前記液状硬化剤を単独で使用しても硬化が遅いため、潜在性硬化剤を硬化促進剤として前記液状硬化剤と合わせて使用することが知られている。
【0048】
本発明で使用することができる(C)成分としては、有機金属錯体である。明確な理由は分かっていないが、(C)成分を添加することで最表面がニッケルである被着体に対する接続抵抗が低下する。(C)成分に含まれる金属としては、二価または三価の金属であり、詳しくは、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、銅などが挙げられる。明確な理由は分かっていないが、(C)成分として上記した二価または三価の金属からなる有機金属錯体を添加することで、最表面がニッケルである被着体であっても、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂において接続抵抗を低くすると共に、保存安定性に優れており、更に優れた取扱性を奏することができる。また、本発明では、(C)成分が、アルコキシ基および/またはカルボキシレート基を有する有機配位子からなる有機金属錯体である事が好ましい。詳しくは、上記(有機)配位子としては、アセテート、アセチルアセテート、ヘキサノエイト、フタロシアノエートなどが挙げ有られるが、これらに限定されるものではない。明確な理由は分かっていないが、(C)成分として上記有機配位子からなる有機金属錯体を添加することで、最表面がニッケルである被着体であっても、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂において接続抵抗を低くすると共に、保存安定性に優れており、更に優れた取扱性を奏することができる。
【0049】
(C)成分としては、オレイン酸銅(二価)、亜鉛アセチルアセテート(亜鉛アセチルアセトナート)(二価)、アルミニウムアセチルアセテート(アルミニウムアセチルアセトナート)(三価)、コバルトアセチルアセテート(コバルトアセチルアセトナート)(二価)、ニッケルアセテート(二価)、ニッケルアセチルアセテート(ニッケルアセチルアセトナート)(二価)、鉄フタロシアニン(二価)、ジブチルスズジラウレート(二価)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
市販されている(C)成分の有機金属錯体としては、日本化学産業株式会社製のナーセム亜鉛(亜鉛アセチルアセトナート(二価))、ナーセムアルミニウム(アルミニウムアセチルアセトナート(三価))、ナーセム第二コバルト(コバルトアセチルアセトナート(二価))、ナーセムニッケル(ニッケルアセチルアセトナート(二価))等が挙げられる。また共同薬品株式会社製のKS-1260(ジブチルスズジラウレート(二価)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
(C)成分の具体例としては、日本化学産業株式会社製のアセチルアセトン金属錯体シリーズとしてナーセムZn、ナーセムAL、ナーセムCo、ナーセムNiなどが、オクチル酸金属石鹸シリーズとして、共同薬品株式会社製のKS-1260などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
(B)成分100質量部に対して(C)成分が0.01~20質量部含むことが好ましく、0.1~15質量部含むことがさらに好ましく、0.5~10質量部含むことが特に好ましい。(C)成分が0.01質量部以上含まれると接続抵抗が低減され、(C)成分が20質量部以下であると保存安定性を維持することができる。
【0053】
本発明で使用することができる(D)成分は導電性粒子である。明確な理由は分かっていないが、ステアリン酸により表面処理された導電性粒子は、保存安定性を向上させる効果があるため、(D)成分としてステアリン酸により表面処理した導電性粒子を使用することが好ましい。導電性粒子としては、電気伝導性を発現すれば良く粒子の材質、粒子の形状は限定されない。導電性粒子の材質としては、銀粉、ニッケル粉、パラジウム粉、カーボン粉、タングステン粉、メッキ粉など挙げられ、特に電気伝導性に優れる銀粉が好ましい。また、導電性粒子の形状としては、球状、不定形、フレーク状(鱗片状)、フィラメント状(針状)および樹枝状など挙げられる。複数の種類を混合して使用しても良い。特に、原料原価が安いことから、絶縁性酸化金属、ニッケル粉または絶縁体の粉体を銀メッキ処理した導電性粒子が好ましい。絶縁性酸化金属とは、具体的に銅粉、アルミニウム粉または鉄粉などが挙げられ、金属表面に不動態が形成されており導電性が発現しない様な金属である。樹脂成分に混練するためには、50%平均粒径(d50)が100μm以下で有ることが好ましい。(D)成分としては、コストと導電性を考慮すると、ステアリン酸により表面処理された銀粉およびステアリン酸により表面処理された銀メッキ粉の少なくとも1種類であることが好ましい。ここで、平均粒径はレーザー粒度計やSEMなどにより計測されるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
ステアリン酸などの滑剤による導電性粒子の表面処理方法としては、溶剤に希釈したステアリン酸を導電性粒子と共にボールミル等で処理した後に溶剤を乾燥させる方法などが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0055】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分を100~1000質量部含むことが好ましく、さらに好ましくは、200~600質量部である。(D)成分が100質量部以上の場合には導電性が発現し、1000質量部以下の場合には糸ひき等が発生せず作業性に問題が発生しない。
【0056】
さらに、本発明の特性を損なわない範囲において、(E)成分として安定剤を添加しても良い。(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物の場合は、(E)成分としてリン酸エステル化合物、重合禁止剤およびキレート剤などが含まれるがこれらに限定されるものではない。発生したラジカル種を捕捉することで保存安定性を保つために重合禁止剤を使用することもできる。また、発生した金属イオンを捕捉するためにキレート剤を使用することができる。
【0057】
(A)成分が(メタ)アクリル基を有する化合物の場合は、(E)成分としてリン酸エステル化合物を使用することができる。具体的には下記一般式3の様な化合物である。ここで、Rは有機基を示し、nは1または2を示す。明確な理由は分かっていないが、リン酸エステル化合物は保存安定性を向上させる効果がある。(E)成分のリン酸エステル化合物としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(E)成分のリン酸エステル化合物としては、下記一般式4の様な分子内に(メタ)アクリル基を有するリン酸エステル化合物であることが好ましい。ここで、Rは水素またはメチル基を示し、Rは2価の炭化水素基を示し、nは1または2を示す。一般式4の化合物を使用することで、硬化時にラジカル重合に関与するため、硬化物が加熱された際に硬化物外に揮発することが無く、アウトガスを低減させることができる。
【0058】
【化2】
【0059】
(E)成分の重合禁止剤の具体例としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤、アルキル化ジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-ヒドロキシ-4-ベンゾイリオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等のN-オキシル系重合禁止剤などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
(E)成分のキレート剤の具体例としては、株式会社同人化学研究所製のEDTA・2Na、EDTA・4Na(4NA:エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸四ナトリウム塩四水和物)などが挙げられ、25℃で液状のキレート剤としてはキレスト株式会社製のMZ-8などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
(A)成分が環状エーテル基を有する化合物の場合、(E)成分として反応抑制剤を安定剤として添加できる。反応抑制剤とは、(A)成分と(B)成分の反応を抑制する化合物であり、ホウ酸エステル、リン酸、アルキルリン酸エステル、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチルなどを使用することができる。前記ホウ酸エステルとしては、トリブチルボレート、トリメトキシボロキシン、ホウ酸エチル、エポキシ-フェノール-ホウ酸エステル配合物(四国化成工業株式会社製 キュアダクト L-07N)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。前記アルキルリン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチルなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。(E)成分は単独でも複数を混合して使用しても良い。保存安定性を考慮すると、リン酸、トリブチルボレート(ホウ酸トリブチル)、トリメトキシボロキシン、p-トルエンスルホン酸メチルであることが好ましい。
【0062】
(E)成分の安定剤は添加量が多すぎると保存安定性が良くなる一方で、反応性が遅くなることや硬化しないなどの弊害がでるため、(A)成分100質量部に対して、(E)成分を0.001~5.0質量部添加することが好ましく、0.01~4.5質量部添加することがより好ましく、0.1~4.0質量部添加することがさらに好ましい。
【0063】
本発明の特性を損なわない範囲において(D)成分の導電性粒子以外の充填剤を添加することができる。(D)成分の導電性粒子以外の充填剤は、無機充填剤や有機充填剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機充填剤として、導電性を発現しない金属粉(粉体表面が酸化による不動態を形成した金属粉)、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉、タルク粉、シリカ粉、ヒュームドシリカ粉等が挙げられ、有機充填剤としては、アクリル粒子、ゴム粒子、スチレン粒子など(充填剤としてそのまま分散させて使用する粒子材料)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記充填剤を添加することで粘度やチクソ性を制御することができると共に、強度の向上を図ることができる。平均粒径や形状などの粉体特性については特に限定はないが、組成物への分散のし易さとノズル詰まりを考慮すると、50%平均粒径(d50)は0.001~50μmが好ましい。特に、ヒュームドシリカ粉は添加することでチクソ性を付与すると共に保存安定性も維持される。ヒュームドシリカ粉の具体例としては、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL R805、R972などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。ここで、平均粒径はレーザー粒度計やSEMなどにより計測されるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分以外の充填剤は0.1~10質量部添加されることが好ましい。充填剤が0.1質量部以上の場合は流動性を安定化すると共に作業性を向上することができ、10質量部以下の場合は保存安定性を維持することができる。
【0065】
本発明の組成物(熱硬化型導電性接着剤)には、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料などの着色剤、難燃剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により導電性、樹脂強度、接着強さ、作業性、保存安定性等に優れた接着剤またはその硬化物が得られる。ただし、粘性が高くなり糸ひきなど作業性に支障がでるため、ゴム、エラストマーおよび熱可塑性樹脂(アクリルやエポキシと溶解(相溶)させて使用する材料)を含まない事が好ましい。ここで、ゴムとしては、特に制限されるものではなく、例えば、天然ゴム;イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン(ブチルゴム)、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムが挙げられる。エラストマーとしては、特に制限されるものではなく、例えば、スチレン系、オレフィン/アルケン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系等の(熱可塑性)エラストマーが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリアルキレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。これらは、上記したように、いずれもアクリルやエポキシと溶解(相溶)させて使用する材料である。
【0066】
また、本発明の熱硬化型導電性接着剤には、還元剤を含まない事が好ましい。上記構成を有する本発明の熱硬化型導電性接着剤では、明確な理由は分かっていないが、還元剤を含まなくても、被着体がニッケルなどの場合でも、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂を用いて接続抵抗を低くすることができるためである。ここで、還元剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄(II)イオン、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、スズ(II)イオン、亜硫酸塩、ヒドラジン(ウォルフ・キッシュナー還元)、亜鉛アマルガム(Zn(Hg))(クレメンゼン還元)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)、シュウ酸(C)、ギ酸(HCOOH)、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)等が挙げられる。
【0067】
また、本発明の熱硬化型導電性接着剤は、最表面がニッケルである被着体に使用する事が好ましい。上記構成を有する本発明の熱硬化型導電性接着剤では、明確な理由は分かっていないが、最表面がニッケルである被着体であっても、多種類の熱硬化型の硬化性樹脂において接続抵抗を低くすると共に、保存安定性に優れており、更に優れた取扱性を奏することができるためである。ここで、最表面がニッケルである被着体としては、特に制限されるものではなく、主にニッケルメッキを施したものであり、例えば、SPCC(冷延鋼板)、ステンレス、銅製の部材に対して、電解メッキや無電解メッキを施したもの(電線、プリント回路(基)板等)が挙げられる。
【実施例
【0068】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、調製した熱硬化型導電性接着剤を単に組成物とも呼ぶ。
【0069】
[実施例1~10、比較例1]
実施例1~10および比較例1の組成物を調製するために、下記成分を準備した。
【0070】
(A)成分:硬化性樹脂
・(メタ)アクリル基を有するウレタン変性オリゴマーである、分子内に官能基数(アクリル基)を6つ有する芳香族ウレタンアクリレート(エベクリル220 ダイセルオルネクス株式会社製)
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA 日本触媒株式会社製)
(B)成分:(A)成分を硬化する熱硬化剤
・ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(25℃で固体)(パーロイルTCP 日油株式会社製)(上記一般式2の構造の有機過酸化物の1種)
(C)成分:有機金属錯体
・亜鉛アセチルアセトナート(二価)(ナーセム亜鉛 日本化学産業株式会社製)
・アルミニウムアセチルアセトナート(三価)(ナーセムアルミニウム 日本化学産業株式会社製)
・鉄フタロシアニン(二価) 試薬
・コバルトアセチルアセトナート(二価)(ナーセム第二コバルト 日本化学産業株式会社製)
・ニッケルアセチルアセトナート(二価)(ナーセムニッケル 日本化学産業株式会社製)
・ニッケルアセテート(二価) 試薬
・ジブチルスズジラウレート(二価)(KS-1260 共同薬品株式会社製)
・オレイン酸銅(二価) 試薬
(D)成分:導電性粒子
・銀粉1:下記の粉体特性を有するステアリン酸により表面処理されたフレーク状銀粉
タップ密度:3.17g/cm
50%平均粒径(d50):5.0μm(レーザー粒度計)
BET比表面積:0.67m/g
・銀粉2:下記の粉体特性を有するステアリン酸により表面処理されたフレーク状銀粉
タップ密度:3.57g/cm
50%平均粒径(d50):1.2μm(レーザー粒度計)
BET比表面積:2.01m/g
その他成分;(E)成分:安定剤
・2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(JPA-514 城北化学工業株式会社製)
・2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)(試薬)
・エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸四ナトリウム塩四水和物(25℃で固体)(4NA(EDTA・4Na) 株式会社同人化学研究所製)。
【0071】
(メタ)アクリル基を有する化合物を(A)成分とする実施例1~10および比較例1の組成物を調製した。詳しくは、(A)成分、(B)成分、(C)成分およびその他成分の(E)成分を秤量して撹拌釜に投入して1時間撹拌した。その後、(D)成分を秤量して撹拌釜に投入し、実施例1~10および比較例1の組成物(熱硬化型導電性接着剤としての(メタ)アクリル樹脂組成物)を調製した。また、(B)成分100質量部に対する(C)成分の添加量もあわせて表1-1~1-2に表記する。詳細な調製量は表1-1~1-2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0072】
【表1-1】
【0073】
【表1-2】
【0074】
実施例1~10、比較例1の組成物(又はその硬化物)に対して、保存安定性確認、体積抵抗率測定、接続抵抗測定を実施した。その結果を表2-1~2-2にまとめた。
【0075】
[保存安定性確認]
ポリテトラフルオロエチレン製の棒で撹拌した後に組成物を2.0cc計量し、温調装置により25℃に設定した状態でブルックフィールド(型番:DV-2+Pro)を用いて粘度を測定した。測定条件としては、コーンロータにはCPE-41(3°×R2.4)を使用し、回転速度は10rpmにて行った。3分後の粘度を「初期粘度(Pa・s)」とする。その後、組成物を入れた容器を25℃雰囲気下に保管して、初期粘度の2倍以上の粘度(増粘していなくても組成物の内部にゲル化物が発生する状態も含む)になるまで粘度測定を行った。保管開始から24時間毎に粘度を測定し、初期粘度の測定と同じ方法で粘度測定を行った。粘度が初期粘度の2倍以上に増粘した時点で安定性を損なったと判断して、2倍になった時間の前の時間を「保存安定性(時間)」とした。48時間以上の保存安定性を保持することが好ましく、72時間以上の保存安定性を保持することがより好ましい。
【0076】
[体積抵抗率測定]
厚さ2.0mm×幅50mm×長さ100mmのガラス板上に、長さ100mm×幅10mmになる様にマスキングテープ(50μm厚)を貼り付け、組成物(熱硬化型導電性接着剤)をスキージして均一な塗膜を形成してテストピースを作製した(n=2)。130℃に設定したホットプレートにテストピースを静置して30秒間放置した後、ホットプレートからテストピースを取り外した。テストピースの温度が25℃に下がった後に、板状の電極を付けたデュアルディスプレイマルチメータを用いて、電極間の距離が50mmの状態で「抵抗値(Ω)」を測定した。(抵抗値)×(組成物の硬化物の幅×組成物の硬化物の厚さ(断面積))/(電極間の距離)から体積抵抗率を計算して「導電性(×10-6Ω・m)」とした。導電性を確保する観点から、導電性は1000×10-6Ω・m以下であることが好ましい。
【0077】
[接続抵抗測定]
幅10mmで厚さ100μmのマスキングテープに、長さ方向に沿って10mm間隔で直径5mm×5個の穴を開けた。幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmの無電解ニッケルメッキ板に当該マスキングテープを貼り付けて、組成物(熱硬化型導電性接着剤)をスキージした後、マスキングテープを剥がした。130℃に設定したホットプレートにテストピースを静置して30秒間放置した後、ホットプレートからテストピースを取り外した。隣同士の組成物の硬化物にデュアルディスプレイマルチメータの針状電極を触れさせて抵抗を測定して「接続抵抗(mΩ)」とした。導電性の安定化には、接続抵抗は100mΩ以下であることが好ましい。
【0078】
【表2-1】
【0079】
【表2-2】
【0080】
(メタ)アクリル基を有する化合物を(A)成分とする実施例1~10と比較例1を比較すると、(C)成分の有無により被着体の界面に於ける接続抵抗値が大きく異なることが分かる。一方で、組成物の硬化前における保存安定性と硬化後の導電性に関しては、実施例および比較例で違いは無い。
【0081】
[実施例11~14、比較例2~3]
実施例11~14および比較例2~3の組成物を調製するために、下記成分を準備した。
【0082】
(A)成分:硬化性樹脂
・3-エチル-3フェノキシメチルオキセタン(アロンオキセタンOXT-211 東亞合成株式会社製)
・3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(アロンオキセタンOXT-221 東亞合成株式会社製)
・多官能の脂環式エポキシ基含有シリコーンオリゴマー(X-40-2670 信越化学工業株式会社製)
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021P 株式会社ダイセル製)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(EP-3950S 株式会社ADEKA製)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エピクロンEXA-835LV DIC株式会社製)
・p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(エピオールTB 日油株式会社製)
・ネオデカン酸グリシジルエステル(CARDURA E10P MOMENTIVE社製)
(B)成分:(A)成分を硬化する熱硬化剤
・アニオン種がテトラキスペンタフルオロフェニレートボレート(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート);B(C でカチオン種が4級アンモニウムの塩(K-PURE CXC-1821 KING INDUSTRIES社製)
・25℃で固体の変性アミン化合物からなる潜在性硬化剤(フジキュアーFXR-1081 株式会社T&K TOKA製)
(C)成分:有機金属錯体
・亜鉛アセチルアセトナート(二価)(ナーセム亜鉛 日本化学産業株式会社製)
・ニッケルアセチルアセトナート(二価)(ナーセムニッケル 日本化学産業株式会社製)
・オレイン酸銅(二価) 試薬
(D)成分:導電性粒子
・銀粉1:下記の粉体特性を有するステアリン酸により表面処理されたフレーク状銀粉
タップ密度:3.17g/cm
50%平均粒径(d50):5.0μm(レーザー粒度計)
BET比表面積:0.67m/g
・銀粉3:下記の粉体特性を有する球状銀粉
タップ密度:6.1g/cm
50%平均粒径(d50):3.5μm(レーザー粒度計)
BET比表面積:0.2m/g
・銀粉4:下記の粉体特性を有するフレーク状銀粉
タップ密度:5.0g/cm
50%平均粒径(d50):5.7μm(レーザー粒度計)
BET比表面積:0.4m/g
その他成分:安定剤;(E)成分
・エポキシ-フェノール-ホウ酸エステル配合物(キュアダクトL-07N 四国化成工業株式会社製)。
【0083】
環状エーテル基を有する化合物を(A)成分とする実施例11~14、比較例2~3を調製した。詳しくは(A)成分、(B)成分、(C)成分およびその他成分の(E)成分を秤量して撹拌釜に投入して1時間撹拌した。その後、(D)成分を秤量して撹拌釜に投入し、実施例11~14および比較例2~3の組成物(熱硬化型導電性接着剤としてのエポキシ樹脂組成物)を調製した。詳細な調製量は表3に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0084】
【表3】
【0085】
実施例11~14、比較例2~3の組成物(又はその硬化物)に対して、前記の保存安定性確認、前記の体積抵抗率測定、前記の接続抵抗測定を実施した。ただし、体積抵抗率測定および接続抵抗測定における組成物の硬化条件を120℃設定で20秒間加熱した後で80℃設定で30分間加熱する条件とする。その結果を表4にまとめた。
【0086】
【表4】
【0087】
環状エーテル基を有する化合物を(A)成分とする実施例11~14と比較例2、3を比較すると、(C)成分の有無により被着体の界面に於ける接続抵抗値が大きく異なることが分かる。一方で、組成物の硬化前における保存安定性と硬化後の導電性に関しては、実施例および比較例で違いは無い。本実施例1~14では、表2と表4の結果から、(A)成分と(B)成分によらず、接続抵抗値の低減が見られ、組成物で回路を組んだ時に回路抵抗の低減が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
近年、電気・電子部品の筐体にニッケルなどを使用することが多い。当該金属は、接続抵抗値が高くなり、回路抵抗の上昇を招いていたが、本発明により接続抵抗値を低くすることができる。さらに、保存安定性も維持されて長時間の吐出作業中に吐出量が変化することが無いと共に、短時間硬化により被着体に加熱によるダメージを減少させることができる。これらの特性から、本発明は様々な電気・電子部品などの組み立てに使用することができ、広い用途に展開される可能性がある。
【0089】
本出願は、2016年9月6日に出願された日本国特許出願第2016-173765号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。