(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】静電容量検出装置および静電容量センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/24 20060101AFI20220104BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20220104BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01D5/24 D
G01B7/00 101C
G01N27/22 B
(21)【出願番号】P 2017047888
(22)【出願日】2017-03-13
【審査請求日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2016069497
(32)【優先日】2016-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517163445
【氏名又は名称】株式会社エスオラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】長田 佐
(72)【発明者】
【氏名】中澤 康二
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-225200(JP,A)
【文献】実開昭52-84846(JP,U)
【文献】実公昭45-13214(JP,Y1)
【文献】特開昭62-257054(JP,A)
【文献】特開2001-4482(JP,A)
【文献】米国特許第5602540(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第2530453(EP,A1)
【文献】特開2014-219373(JP,A)
【文献】特開2014-13862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
G01B 7/00-7/34
G01N 27/00-27/24
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量素子の静電容量の変化を検出することで、該静電容量に影響を及ぼす測定対象物の変化を検出する静電容量検出装置であって、
静電容量素子を含む複数の共振回路と、
所定周波数の入力に対する前記複数の共振回路による前記所定周波数の出力を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、
前記複数の共振回路における前記静電容量素子の静電容量の変化に基づく前記出力の変化を検出する変化検出手段と、
前記複数の共振回路において、前記静電容量素子の静電容量の変化に伴う前記所定周波数の出力の変化の方向が異なることを利用して、前記変化検出手段が検出する前記出力の変化を増大させる出力増大手段を更に備え
、
前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、少なくとも3枚以上の互いに対向する極板を有し、
前記複数の静電容量素子は、隣り合う前記極板の組み合わせによりまたは、隣り合う極板の組み合わせを直列結合または並列結合することにより、形成されることを特徴とする、静電容量検出装置。
【請求項2】
静電容量素子の静電容量の変化を検出することで、該静電容量に影響を及ぼす測定対象物の変化を検出する静電容量検出装置であって、
静電容量素子を含む複数の共振回路と、
所定周波数の入力に対する前記複数の共振回路による前記所定周波数の出力を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、
前記複数の共振回路における前記静電容量素子の静電容量の変化に基づく前記出力の変化を検出する変化検出手段と、
前記複数の共振回路において、前記静電容量素子の静電容量の変化に伴う前記所定周波数の出力の変化の方向が異なることを利用して、前記変化検出手段が検出する前記出力の変化を増大させる出力増大手段を更に備え、
前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、
設置された第一電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第二電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第三電極と、を有し、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は、各々の電極で前記測定対象物を囲うように、または直線状に並べられたことを特徴とする、静電容量検出装置。
【請求項3】
前記複数の共振回路は、
第一の静電容量素子を含み、所定の第一共振周波数において共振する周波数特性を有する第一の共振回路と、
第二の静電容量素子を含み、所定の第二共振周波数において共振する周波数特性を有する第二の共振回路と、
を有し、
前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路に、前記第一共振周波数及び前記第二共振周波数とは異なる前記所定周波数を入力して励振する周波数発振手段を備え、
前記変化検出手段は、前記測定対象物の変化による前記第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量の変化に基づく、前記第一の共振回路と前記第二の共振回路の出力の変化を検出し、
前記出力増大手段は、前記第一の共振回路の出力と、前記第二の共振回路の出力の差分を導出することで、前記出力の変化を増大させることを特徴とする、
請求項1または2に記載の静電容量検出装置。
【請求項4】
前記共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路と、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量検出装置。
【請求項5】
前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路を含む直列共振回路であり、
前記第一共振周波数は、前記第二共振周波数より高く、
前記所定周波数は、
前記第一の共振回路の周波数特性における、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第一の共振回路の出力が増加する周波数領域に属するとともに、
前記第二の共振回路の周波数特性における、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第二の共振回路の出力が減少する周波数領域に属することを特徴とする、
請求項3に記載の静電容量検出装置。
【請求項6】
前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路を含む並列共振回路であり、
前記第一共振周波数は、前記第二共振周波数より高く、
前記所定周波数は、
前記第一の共振回路の周波数特性における、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第一の共振回路の出力が減少する周波数領域に属するとともに、
前記第二の共振回路の周波数特性における、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第二の共振回路の出力が増加する周波数領域に属すること
を特徴とする、
請求項3に記載の静電容量検出装置。
【請求項7】
前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路の一方は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路を含む直列共振回路であるとともに、他方は、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路を含む並列共振回路であり、
前記所定周波数は、
前記第一共振周波数及び第二共振周波数より高い周波数領域または、前記第一共振周波数及び第二共振周波数より低い周波数領域に属することを特徴とする、
請求項3に記載の静電容量検出装置。
【請求項8】
前記第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量の変化前においては、
前記所定の周波数における前記第一の共振回路の出力と、前記第二の共振回路の出力の差分は略零であることを特徴とする、
請求項3及び、請求項5から7のいずれか一項に記載の静電容量検出装置。
【請求項9】
前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、少なくとも4枚以上の互いに対向する極板を有し、
前記複数の静電容量素子は、隣り合う前記極板の組み合わせによりまたは、隣り合う極板の組み合わせを直列結合または並列結合することにより、形成されることを特徴とする、
請求項1に静電容量検出装置。
【請求項10】
請求項2に記載の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は、各々の電極で前記測定対象物を囲うように並べられ
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極によって囲われる領域に、医療用の薬液が通過するチューブが配置されたことを特徴とする、医療用薬液検査装置。
【請求項11】
請求項2に記載の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は直線状に並べられ、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極の並びに沿うように、医療用の薬液が通過するチューブが配置されたことを特徴とする、医療用薬液検査装置。
【請求項12】
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は直線状に並べられ、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は、環状の形状または、環の一部をなす形状を有し、同軸上に並べられたことを特徴とする
請求項2に記載の静電容量検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極を、医療用の薬液が通過するチューブが前記環内を貫通するように配置したことを特徴とする、医療用薬液検査装置。
【請求項14】
複数の静電容量素子の静電容量の変化を検出することで、該静電容量に影響を及ぼす測定対象物の変化を検出する検出方法であって、
静電容量素子を含む2つ共振回路を、該2つの共振回路の共振周波数とは異なる所定周波数の入力で励振し、
前記2つの共振回路の各々の出力の変化の差分を取得することで、前記2つの共振回路の静電容量素子の静電容量の変化を検出
し、
前記複数の静電容量素子は、3枚以上の互いに対向する極板のうちの隣り合う前記極板の組み合わせによりまたは、隣り合う極板の組み合わせを直列結合または並列結合することにより、形成されることを特徴とする、検出方法。
【請求項15】
医療用の薬液が通過するチューブ上に、2つの静電容量素子を配置し、
前記2つの静電容量素子の各々を含む2つ共振回路を、該2つの共振回路の共振周波数とは異なる所定周波数の入力で励振し、
前記2つの共振回路の各々の出力の変化の差分を取得することで、前記2つの共振回路の静電容量素子の静電容量の変化を検出し、
前記静電容量の変化から、前記医療用の薬液の状態を検査することを特徴とする、医療用薬液検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の物理量に応じた静電容量を電気信号に変換する静電容量検出装置である。変換部に、電圧の周波数特性を急峻化する共振回路の、インピーダンス変化型の静電容量検出装置に関するものである。例えば対象物の微小変位量による静電容量の変化などの計測に適している。
【背景技術】
【0002】
平行板コンデンサの静電容量Cは、絶縁物を隔て2つの極板を対向させたときの容量で(1)式に示す。
【数1】
C:静電容量[F]、ε:誘電率[F/m]、S:極板の有効面積[m
2]、d:極板間距離[m]
【0003】
極板を対向させ、極板に電位Vを与えると、極板に電荷Qが蓄えられる。一般に電位を高めると、これと比例して蓄えられる電荷も多くなる。多量の電荷を蓄えられる導体を、静電容量Cが大きいと言う。
この関係を(2)式に示す。
Q=CV
∴C=Q/V[F]・・・(2)
ここで、Q:電気量(電荷)[C]、V:電位[V]
【0004】
極板間距離dを微小変化すると、静電容量Cの変化は次式となる。
【数2】
【0005】
極板間距離d+Δdのとき静電容量Cの変化率ΔC/Cは(4)式となる。
【数3】
すなわち、極板間距離の変位は容量の変化となる。
【0006】
振動型または共振型静電容量センサは、抵抗RとコイルLとコンデンサCで構成され、対象物の変位の容量成分が共振周波数に寄与することの応用で、ある特定の共振点の移動を追尾するもので、この方式は検出回路が複雑となる。
【0007】
上記の問題を解決するものとして、たとえば再表2009-537822号では、一定周波数の基準位相信号と、共振回路のインピーダンスの容量成分が位相に寄与するので、両者の信号の位相差から静電容量検出装置が開示されている。
【0008】
前記によると、位相差検出回路が複雑となる。静電容量の変化に応じた位相の変化が正確に検出できない。速い応答速度で得られないなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記参考文献1に記載された静電容量検出装置では、基準となる位相信号と、対象物の物理量に応じた静電容量で変化する位相を比較して、位相差から物理量を測定するものである。この方式は、複雑な位相検出回路が不可欠という欠点がある。解決しようとする課題は、位相検出回路などの複雑な回路が不要で、簡単な共振回路で測定対象物と極板間の距離に逆比例する静電容量を、電圧の周波数特性の振幅から検出する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、共振回路の共振点近傍の周波数における、インピーダンス変化を検出する原理の応用によるものである。前記したように、検出回路が簡単であり、励振電流振幅を一定に保てば、極板より発振する電界により、測定対象物と極板間に静電容量が形成される。当該静電容量は電圧の周波数特性の振幅変化として変位や厚さを計測できる。
【0012】
図1にRLC直列共振回路の共振周波数特性を示す。共振点f
0より低い低周波数領域f
1のとき、f
1を中心にした電流波形の傾きから、周波数が±Δf変化すると、電流lm
1も同様に変化する。たとえば、低周波数領域f
1+Δfでは、中心電流lm
1より増加する。また、周波数f
1-Δfでは、中心電流lm
1より減少する。同様に共振点f
0より高い高周波数領域f
2では、f
2を中心にした電流波形の傾きから周波数が±Δf変化すると、電流lm
2も同様に変化する。本発明は、以上の観点と知見に基づいてなされている。
【0013】
上記実施には、共振点を中心に高周波領域と低周波領域の傾きを用いるので、共振周波数特性が接近した第一共振回路と第二共振回路の2つを必要とする。ここで、第一共振回路の共振周波数特性を第一共振周波数と、第二共振回路の共振周波数特性を第二共振周波数と呼ぶ。
図2に円筒型プローブの概略図を示す。図示したように4層の極板P1、P2、P3、P4を積層にした構造とした。極板間は絶縁体であり、4層の極板から静電容量C1、C2、C3が形成される。円筒の4層極板と2層極板を接続してアース(ゼロ電位)とする。図示したようにE
C2端子とアース間の静電容量はC2+C3の合成容量であり、E
C1端子とアース間の静電容量はC1となる。以上の構造により、プローブ内には異なった静電容量が生成される。
【0014】
抵抗RとコイルLとコンデンサCの直列共振回路の共振周波数f
0は(5)式となる。
【数4】
上式から共振周波数f
0はコイルLが一定のとき、コンデンサCの静電容量で決まる。上記プローブは、静電容量C1の第一共振回路と合成容量(C2+C3)の第二共振回路から成っている。
【0015】
図3に2つの共振周波数特性を模式的に示した。図示した、第一共振のコンデンサの容量が第二共振のコンデンサの容量より小さいとき、2つの共振回路に同時に一定振幅の正
弦波電流の周波数f
Aで励振した。周波数f
A点のときの静電容量Cを中心にΔCだけ容量が減少すると図中の(C-ΔC)線上に移動する。共振周波数特性の傾きから、第一共振の電流は増加する。一方、第二共振では電流は減少する。同様にΔCだけ容量が増加すると図中の(C+ΔC)線上に移動して、共振周波数特性の傾きから、第一共振の電流は減少と同時に、第二共振の電流は増加する。以上の結果、容量変化に対して共振周波数特性の電流の変化は拡大され、高い感度で変位や厚さが計測できる。なお、第一共振と第二共振は図示したように、適当に共振周波数特性の重複することが不可欠となる。ここで周波数f
Aは、本発明における所定周波数に相当する。
【0016】
本発明は、静電容量素子の静電容量の変化を検出することで、該静電容量に影響を及ぼす測定対象物の変化を検出する静電容量検出装置であって、
静電容量素子を含む複数の共振回路と、
所定周波数の入力に対する前記複数の共振回路による前記所定周波数の出力を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、
前記複数の共振回路における前記静電容量素子の静電容量の変化に基づく前記出力の変化を検出する変化検出手段と、
前記複数の共振回路において、前記静電容量素子の静電容量の変化に伴う前記所定周波数の出力の変化の方向が異なることを利用して、前記変化検出手段が検出する前記出力の変化を増大させる出力増大手段を更に備えることを特徴とする、静電容量検出装置である。
【0017】
これによれば、複数の共振回路において、例えば、静電容量素子の静電容量が増加した場合に、所定周波数の出力が増加するものと、減少するものが存在することを利用して、静電容量素子の静電容量の同じ量の変化に対して、より大きな出力を得ることが可能となる。従って、より高い感度とSN比をもって、静電容量素子の静電容量の変化を検出することができる。その結果、測定対象物の変化をより高い感度とSN比をもって、検出することが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記複数の共振回路は、
第一の静電容量素子を含み、所定の第一共振周波数において共振する周波数特性を有する第一の共振回路と、
第二の静電容量素子を含み、所定の第二共振周波数において共振する周波数特性を有する第二の共振回路と、
を有し、
前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路に、前記第一共振周波数及び前記第二共振周波数とは異なる前記所定周波数を入力して励振する周波数発振手段を備え、
前記変化検出手段は、前記測定対象物の変化による前記第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量の変化に基づく、前記第一の共振回路と前記第二の共振回路の出力の変化を検出し、
前記出力増大手段は、前記第一の共振回路の出力と、前記第二の共振回路の出力の差分を導出することで、前記出力の変化を増大させるようにしてもよい。
【0019】
これによれば、第一の共振回路と、第二の共振回路の出力の差分をとるという、簡単な処理で、より高い感度とSN比をもって、静電容量の変化を検出することができる。その結果、簡単な処理で、測定対象物の変化をより高い感度とSN比をもって、検出することが可能となる。
【0020】
また、本発明においては、前記共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続
した直列回路と、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路の少なくともいずれか一方を含むこととしてもよい。これによれば、より一般的な簡単な構成の共振回路を用いて、静電容量素子の静電容量の変化を検出することが可能となる。なお、本発明における第一の共振回路及び第二の共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路を含む直列共振回路であってもよいし、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路を含む、並列共振回路であってもよい。また前記直列回路と前記並列回路の両方を含む複合的な共振回路であってもよい。
【0021】
また、本発明においては、前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路を含む直列共振回路であり、
前記第一共振周波数は、前記第二共振周波数より高く、
前記所定周波数は、
前記第一の共振回路の周波数特性における、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第一の共振回路の出力が増加する周波数領域に属するとともに、
前記第二の共振回路の周波数特性における、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第二の共振回路の出力が減少する周波数領域に属するようにしてもよい。
【0022】
これによれば、第一の共振回路及び、第二の共振回路における静電容量素子の静電容量が変化した場合に、より確実に、第一の共振回路及び、第二の共振回路における出力の増減の方向を逆にすることができる。その結果、第一の共振回路と第二の共振回路の出力の差分をとることにより、より確実に、出力を増大させることが可能となる。なお、ここにおいて、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して第一の共振回路の出力が増加する周波数領域とは、第一の共振回路の周波数特性における波形の立ち上りの部分を意味する。また、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して第二の共振回路の出力が減少する周波数領域とは、第二の共振回路の周波数特性における立ち下りの部分を意味する。
【0023】
また、本発明においては、前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路は、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路を含む並列共振回路であり、
前記第一共振周波数は、前記第二共振周波数より高く、
前記所定周波数は、
前記第一の共振回路の周波数特性における、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第一の共振回路の出力が減少する周波数領域に属するとともに、
前記第二の共振回路の周波数特性における、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して前記第二の共振回路の出力が増加する周波数領域に属するようにしてもよい。
【0024】
これによっても、第一の共振回路及び、第二の共振回路における静電容量素子の静電容量が変化した場合に、より確実に、第一の共振回路及び、第二の共振回路における出力の増減の方向を逆にすることができる。その結果、第一の共振回路と第二の共振回路の出力の差分をとることにより、より確実に、出力を増大させることが可能となる。なお、ここにおいて、第一共振周波数より低い周波数領域であって、周波数の増加に対して第一の共振回路の出力が減少する周波数領域とは、第一の共振回路の周波数特性における波形の立ち下りの部分を意味する。また、第二共振周波数より高い周波数領域であって、周波数の増加に対して第二の共振回路の出力が増加する周波数領域とは、第二の共振回路の周波数特性における立ち上りの部分を意味する。
【0025】
また、本発明においては、前記第一の共振回路及び前記第二の共振回路の一方は、前記静電容量素子とインダクタを直列接続した直列回路を含む直列共振回路であるとともに、他方は、前記静電容量素子とインダクタを並列接続した並列回路を含む並列共振回路であり、
前記所定周波数は、
前記第一共振周波数及び第二共振周波数より高い周波数領域または、前記第一共振周波数及び第二共振周波数より低い周波数領域に属するようにしてもよい。
【0026】
これによっても、第一の共振回路及び、第二の共振回路における静電容量素子の静電容量が変化した場合に、より確実に、第一の共振回路及び、第二の共振回路における出力の増減の方向を逆にすることができる。その結果、第一の共振回路と第二の共振回路の出力の差分をとることにより、より確実に、出力を増大させることが可能となる。
【0027】
また、本発明では、前記第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量の変化前においては、
前記所定の周波数における前記第一の共振回路の出力と、前記第二の共振回路の出力の差分は略零としてもよい。
【0028】
これによれば、前記第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量の変化前において、前記第一の共振回路の出力と、前記第二の共振回路の出力の差分を略零とすることができ、第一の静電容量素子及び前記第二の静電容量素子の静電容量が変化した際に、差分信号の測定値をそのまま、静電容量の変化値として読み取ることが可能となる。その結果、静電容量素子の静電容量の変化をより容易に検出することが可能となる。
【0029】
また、本発明においては、前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、少なくとも4枚以上の互いに対向する極板を有し、
前記複数の静電容量素子は、隣り合う前記極板の組み合わせによりまたは、隣り合う極板の組み合わせを直列結合または並列結合することにより、形成されるようにしてもよい。
【0030】
これによれば、測定プローブを構成する極板を適宜、組み合わせて、静電容量が異なる複数の静電容量素子をより容易に形成することが可能となる。その結果、複数の共振回路における共振周波数を適切に異ならしめることができ、複数の共振回路において、前記静電容量素子の静電容量の変化に伴う前記所定周波数の出力の変化の方向が異なる状況を、より容易に実現することが可能となる。
【0031】
また、本発明においては、前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、
設置された第一電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第二電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第三電極と、を有し、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は、各々の電極で前記測定対象物を囲うように並べられるようにしてもよい。
【0032】
これによれば、より確実に、第一電極、第二電極及び、第三電極で囲まれた測定対象物の変化を検出することができる。
【0033】
また、本発明は、上記の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極によって囲われる領域に、医療用の薬液が通過するチューブが配置されたことを特徴とする、医療用薬液検査装置としてもよい。これによれば、より簡単にまたは、より精度よく、医療用薬液の成分の変化や相違を検査することが可能である。
【0034】
また、本発明においては、前記複数の静電容量素子を収納した測定プローブを更に備え、
前記測定プローブは、
設置された第一電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第二電極と、
前記第一電極との組み合わせで静電容量素子を形成する第三電極と、を有し、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は直線状に並べられるようにしてもよい。
【0035】
これによれば、例えば、第一電極、第二電極及び、第三電極の並び方向に流れる液体の成分が変化したことを、より容易に検出することができる。また、第一電極、第二電極及び、第三電極の並び方向に測定対象を移動させることで、当該測定対象の移動量を測定することができる。
【0036】
また、本発明においては、前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極は、環状の形状または、環の一部をなす形状を有し、同軸上に並べられるようにしてもよい。これによれば、測定対象を、第一電極、第二電極及び、第三電極における前記環の軸上を移動させるようにし、当該測定対象の移動量をより確実に検出することができる。また、測定対象を液体とすることで、より確実に、当該液体の成分が変化したことを検出することができる。なお、ここにおける“環”は必ずしも円環を意味しない。多角形状や、それ以外の閉じた形状の全てを含む趣旨である。
【0037】
また、本発明は、第一電極、第二電極及び、第三電極が、各々の電極で測定対象物を囲うように並べられた上記の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極で囲われた空間を通過するように、医療用の薬液が通過するチューブが配置されたことを特徴とする、医療用薬液検査装置であってもよい。
【0038】
これによれば、より簡単にまたは、より精度よく、医療用薬液の成分の変化や相違を検査することが可能である。
【0039】
また、本発明は、第一電極、第二電極及び、第三電極は直線状に並べられた上記の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極の並びに沿うように、医療用の薬液が通過するチューブが配置されたことを特徴とする、医療用薬液検査装置であってもよい。これによっても、より簡単にまたは、より精度よく、医療用薬液の成分の変化や相違を検査することが可能である。
【0040】
また、本発明は、第一電極、第二電極及び、第三電極が、環状の形状または、環の一部をなす形状を有し、同軸上に並べられた上記の静電容量検出装置を用いた医療用薬液検査装置であって、
前記第一電極、前記第二電極及び、前記第三電極を、医療用の薬液が通過するチューブが前記環内を貫通するように配置したことを特徴とする、医療用薬液検査装置であってもよい。これによっても、より簡単に、より精度よく、医療用薬液の成分の変化や相違を検査することが可能である。
【0041】
また、本発明は、静電容量素子の静電容量の変化を検出することで、該静電容量に影響を及ぼす測定対象物の変化を検出する検出方法であって、
静電容量素子を含む2つ共振回路を、該2つの共振回路の共振周波数とは異なる所定周波数の入力で励振し、
前記2つの共振回路の各々の出力の変化の差分を取得することで、前記2つの共振回路の静電容量素子の静電容量の変化を検出する、検出方法であってもよい。
【0042】
また、本発明は、前記医療用の薬液が通過するチューブ上に、2つの静電容量素子を配置し、
前記2つの静電容量素子の各々を含む2つ共振回路を、該2つの共振回路の共振周波数とは異なる所定周波数の入力で励振し、
前記2つの共振回路の各々の出力の変化の差分を取得することで、前記2つの共振回路の静電容量素子の静電容量の変化を検出し、
前記静電容量の変化から、前記医療用の薬液の状態を検査することを特徴とする、医療用薬液検査方法であってもよい。
【0043】
また、本発明は、対象物の変化に応じた静電容量を電圧に変換する静電容量検出装置であって、対象物に対向する測定プローブ内は、電圧の周波数特性を急峻化する共振回路で形成した電圧振幅検出手段と、共振回路を一定周波数、一定振幅の正弦波電流で励振する周波数発信手段と、静電容量変化を電圧に変換する検出手段を備えることを特徴とする静電容量検出装置であってもよい。
【0044】
また、本発明は、前記共振回路は、対象物と対向する測定プローブ内に具備し、電圧の周波数特性を急峻化するコイルとキャパシタ成分と直列接続した第一共振回路と、第一共振より共振周波数特性の共振点が異なる第二共振回路と、電圧の周波数特性を急峻化するコイルとキャパシタ成分と並列接続した第三共振回路と、第三共振より共振周波数特性の共振点が異なる第四共振回路を有することを特徴の上記の静電容量検出装置であってもよい。
【0045】
また、本発明は、前記急峻化手段は、対象物の変化に応じた静電容量が増大して検出する手段であり、第一共振回路と第二共振回路の組み合わせと、第三共振回路と第四共振回路の組み合わせと、直列共振回路のいずれかの一つと、並列共振回路のいずれかの一つが組み合わせであることを特徴の上記の静電容量検出装置であってもよい。
【0046】
また、本発明は、前記測定プローブは、少なくとも4層の極板の構成から成り、第一層と第二層の静電容量C1と、第二層と第三層の静電容量C2と、第三層と第四層の静電容量C3である。第二層と第四層を接続してアースとすると、C1がつかさどる第一共振と合成容量C2+C3がつかさどる第二共振が形成され、第一共振と第二共振の共振周波数の共振点が異なることを特徴とする上記の静電容量検出装置であってもよい。
【0047】
また、本発明は、前記共振回路で、共振周波数特性の共振点より低い低周波領域の電流と、共振周波数特性の共振点より高い高周波領域の電流から、対象物とプローブ間に形成された静電容量が増大して変換されることを特徴した上記の静電容量検出装置であってもよい。
【0048】
また、本発明は、測定の基準点(原点)は、周波数発信手段の周波数で第一共振回路と第二共振回路を同時に一定振幅の電流で励振して、2つの共振回路の出力電圧により任意に設定できることを特徴とする上記の静電容量検出装置であってもよい。
【0049】
なお、本発明においては、上記した課題を解決するための手段を、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明は、対象物の物理量に応じた静電容量を電気信号に変換する静電容量検出装置である。変換部には、電圧の周波数特性を急峻化した共振特性を採用したインピーダンス変化型である。測定対象物と極板間の距離に逆比例して、静電容量で変化する電圧の周波数特性の振幅から変位量を検出できることを特徴とする。
【0051】
本発明の静電容量検出装置は、対象物と対向する測定プローブ内に2回路の急峻化した周波数特性を有する第一共振回路と第二共振回路を備えた構造である。また、この第一共振回路と第二共振回路は共振周波数の共振点が僅かに異なることが特徴である。
【0052】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、極板より発振する電界により、測定対象物とプローブ間に形成された静電容量の検出に基づくものであり、第一共振周波数と第二共振周波数の傾きから、静電容量が増大されと同等の効果を生み出し、高い検出感度が得られる静電容量検出装置が提供できる。
【0053】
本発明の測定の基準点(原点)設定は、共振周波数の異なる共振回路に、同時に周波数発信手段で励振する周波数で設定できる。
図3で示した第一共振と第二共振の波形の一致点のf
A(
図3参照)となる周波数では、第一共振と第二共振の電流が等しい値となり、原点の設定は周波数発信手段の周波数で任意に調整ができる。すなわち別途に、基準点(測
定原点)の設定回路を不要とすることを特徴とした静電容量検出装置が提供できる。
【0054】
対象物と対向する測定プローブ内部は、抵抗5、9とコイル6、10と電圧振幅検出回路7、8の簡単な回路構成である。プローブの主たる静電容量は先端部で形成され、検出感度を左右する寄生容量の増大をもたらすことのない構造とした。電圧振幅変換回路に緩衝増幅器を備え、検出部とケーブル間の緩衝の役割であり、ケーブルの長さが検出感度に影響を与えないことを特徴とする静電容量検出装置。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1はRLC直列共振回路の共振周波数特性の説明図である。
【
図3】
図3は本発明の測定原理を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図4はRLC共振回路の測定原理を示した説明図である。
【
図5】
図5はRLC共振回路の測定原理を示した説明図である。
【
図6】
図6は実施形態の等価回路を示した説明図である。
【
図7】
図7は実施例の周波数―出力電圧の関係を示した。
【
図9】
図9は実施例の変位―出力電圧の関係を示した。
【
図10】
図10は実施例2の静電容量検出装置のブロック線図である。
【
図11】
図11は実施例2の静電容量検出装置のブロック線図の第2の例である。
【
図12】
図12は実施例2の静電容量検出装置のブロック線図の第3の例である。
【
図14】
図14は実施例3における周波数の出力電圧の関係をプロットした結果である。
【
図15】
図15は実施例3における薬液Aと薬液A+薬液Bに対する、静電容量検出装置の出力電圧を比較した結果である。
【
図19】
図19は実施例におけるRLC共振回路の構成のバリエーションと、共振周波数特性を示した図である。
【
図20】
図20は実施例におけるRLC共振回路の構成の第2のバリエーションと、共振周波数特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
測定プローブの概略図を
図2に示した。図示したように4層の極板P1、P2、P3、P4の極板が接触しないように極板間を絶縁して積層した構造とした。プローブ内では静電容量C1と、静電容量C2、静電容量C3が形成される。第二層P2と第四層P4を接続してアース(ゼロ電位)とした。図示したように第三層P3のE
C2端子とアース間の静電容量は(C2+C3)の合成容量となる。第二層P2のE
C1端子とアース間の静電容量はC1となり、プローブ内には異なった静電容量C1と(C2+C3)を形成され、第一共振回路と第二共振回路を具備した測定プローブにより静電容量検出センサが提供できる。
【0057】
本発明の
図4に実施形態の第一共振回路の等価回路を示した。第一共振回路は抵抗5とコイル6と静電容量C1の直列共振回路で構成した。周波数発振手段4で当該共振回路を励振し、対象物の物理量に応じた静電容量C1の変化を電圧振幅検出回路7で電圧に変換した。また、急峻化手段としてはコイルに限定されることなく、インダクタンス成分を有する素子であればよい。なお、ここで周波数発振手段4は本実施例において周波数発振手段に相当する。また、電圧振幅検出回路7は変化検出手段に相当する。
【0058】
図5に実施形態の第二共振回路の等価回路を示す。第二共振回路は抵抗9とコイル10とプローブ内の合成静電容量C2、C3の直列共振回路で構成した。周波数発振手段4で当該共振回路を励振し、対象物の物理量に応じた合成静電容量C2、C3の変化を電圧振幅検出回路8で電圧に変換した。また、急峻化手段としてはコイルに限定されることなく、インダクタンス成分を有する素子であればよい。なお、電圧振幅検出回路8は変化検出手段に相当する。
【0059】
図6に本発明の実施形態の等価回路を示す。対象物と対向する測定プローブは、図中の抵抗5、9とコイル6、10と電圧振幅検出回路7、8の構成である。第一共振回路と第二共振回路の電流を電圧振幅検出回路7、8で取り出し、差動増幅器を備えた検出手段11の出力電圧差から変位を計測できる静電容量検出装置を提供する。ここで、検出手段11は、本実施例において出力増大手段に相当する。本実施例においては、電圧振幅検出回路7、8及び検出手段11によって、本実施例における検出手段が構成する。
【0060】
高感度の静電容量検出には、配線などの寄生容量を含む全体の静電容量Cと、対象物の変化に伴う静電容量ΔCとの比が小さいことが望ましい。インピーダンス変化による電圧の周波数特性の振幅変化を明確にするために、周波数発振手段4と直列接続したRLC共振回路の抵抗Rの値により、共振周波数特性の先鋭度が調整できる。
【0061】
<実施例1>
プローブの外形10mm、第一共振回路に抵抗5はR=100Ω、コイル6はL=1.5mHと静電容量C1を直列接続し、第二共振回路に抵抗9はR=100Ω、コイル10はL=1.5mHと静電容量C2+C3を直列接続して共振特性を求めた。一定振幅の正弦波電流で励振周波数を1.10MH
Zから10kH
Zステップごとに、周波数と電圧の関係をプロットした結果を
図7に示す。図示したように急峻化した第一共振周波数と第二共振周波数の、2つの共振周波数特性が得られた。
【0062】
本発明の静電容量検出装置のブロック線図を
図8に示した。周波数発信は可変抵抗VRからの直流電圧を、16ビットのA/D変換器12に印加した。16ビットA/D変換のデータがダイレクト・ディジタル・シンセサイザ13の入力となり、正弦波波形を出力する。定電流回路14により、一定電流、一定振幅の正弦波電流を第一共振回路と第二共振回路に印加した。なお、この際に印加された正弦波電流の周波数は、本実施例において所定周波数に相当する。また、ここにおいて、定電流回路14を含んで周波数発振手段が構成される。
【0063】
上記実施形態により、変位と出力電圧の関係を
図9に示す。測定条件は、前述の共振回路によって構成されたプローブ先端と、平坦なアルミ板50×50mmとの間隙を500μmを基準点(中心)として対向設置した。基準点から1μm単位で変化したときの出力電圧―変位特性を
図9に示した。図示したように、変位に応じて出力電圧は直線的に変化し、静電容量検出装置として良好な結果が得られた。
【0064】
以上、上記実施形態について説明してきたが、その他、応用例として絶縁体の厚さ測定や2個のプローブを対向して、導体の厚み測定に好適である。また、測定面積に応じてプローブを複数個使用できる。実施例では、静電容量とコイルの直列接続としているが、静電容量とコイルを並列接続した、第三共振回路と第四共振回路も同様の効果が得られる。
【0065】
緩衝増幅器を備えた電圧振幅変換回路により、静電容量検出プローブのケーブル長さや引き回し等で検出感度に影響を与えることなく、ノイズ低減にも好適な静電容量検出装置として良好な結果が得られた。
【0066】
<実施例2>
図10に本実施例における静電容量検出装置のブロック線図を示す。本実施例における共振回路を励振する周波数は、定電圧回路と多回転抵抗器21によるアナログ電圧を、A/D変換器22によってディジタル量に変換している。そして、ディジタルデータにより正弦波発生回路のダイレクト・ディジタル・シンセサイザ23から正弦波波形を出力する。なお、共振回路の励振周波数はアナログ電圧を可変して設定している。さらに、回路のインピーダンス変化を精確に得るため、発明者の検討によれば定電流回路(定電流増幅回路)24を採用することが好適である。ここで、本実施例の周波数発振手段は定電流回路(定電流増幅回路)24を含んで構成される。
【0067】
測定プローブは、図中の抵抗27、28とコイル29、30と静電容量素子31、32により構成されている。急峻化手段としては、共振特性のQ値を大きくするインピーダンス成分やリアクタンス成分を有する素子であればよい。抵抗27とコイル29と静電容量素子(C1)31で構成する第一共振回路と、抵抗28とコイル30と静電容量素子(C2)32で構成する第二共振回路の電流を電圧の振幅検出回路25、26でそれぞれ出力する。そして、差動増幅器33によって、振幅検出回路25、26からの出力の差分を増幅する検出手段を介して、測定対象物の誘電率を第一共振回路と第二共振回路の静電容量変化として計測するものである。ここで、振幅検出回路25、26は、本実施例において変化検出手段に相当する。また、差動増幅器33は、出力増大手段に相当する。また、振幅検出回路25、26及び差動増幅器33を含んで、本実施例における検査手段が構成される。
【0068】
なお、
図10に示した静電容量検出装置は、第一共振回路と第二共振回路における静電容量素子31、32両端の電圧値を出力として、その出力の差分を取得するために好適な回路構成であった。これに対し、第一共振回路と第二共振回路における静電容量素子31、32両端における電流値を出力として、その出力の差分を取得する場合には、
図11に示した回路構成が好適である。
図11に示す静電容量検出装置の回路構成は、
図10に示
したものに比較して、抵抗27、28とコイル29、30と静電容量素子31、32の順番が異なる。
【0069】
すなわち、第一共振回路においては、GNDから、抵抗27、静電容量素子31、コイル30の順番で直列接続されている。また、第二共振回路においては、GNDから、抵抗27、静電容量素子31、コイル30の順番で直列接続されている。
図11に示す回路構成によれば、静電容量素子31、32両端における電流値を抵抗27、28の両端電圧として、より好適に検出可能となっている。
【0070】
また、本実施例においては、静電容量素子31、32の静電容量の変化を、第一共振回路と第二共振回路における共振周波数の変化として直接検出することも可能である。
図12には、この場合に好適な静電容量検出装置の回路構成を示す。
図12に示した回路構成において、201は周波数自動スイープ機能を含む周波数設定器、202は周波数カウンタ、203は周波数記憶装置である。
図12に示した回路構成では、周波数設定器201によって周波数スイープを行い、振幅検出回路25と26との間の出力差を差動増幅器33にて検出し出力増大する。そして、増大された差分出力であるE
0が零になるような周波数を自動で設定する。さらに、その周波数を周波数カウンタ202で検出し、周波数記憶装置203において記憶する。この状態で静電容量素子31、32の静電容量の変化により、差分出力E
0が零になるような周波数f
Aが変化する。この周波数変化に基づいて静電容量素子31、32の静電容量の変化を検出する。この回路構成によっても、静電容量素子31、32の静電容量の変化を好適に検出することが可能である。
【0071】
<実施例3>(ダブルバッグ未開通検出)
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例におけるダブルバッグは医療用の薬液Aが下室に、薬液Bが上室に分離した状態で充填されたものであり、使用時には、薬液Aと薬液Bを分離している隔壁を破ることで分離を解き、薬液Aと薬液Bを混合する。本発明に係る第一共振回路と第二共振回路で構成した静電容量検出装置を用いることで、ダブルバッグにおける隔壁が開通し、薬液Aと薬液Bが確実に混合しているか否かを静電容量の変化として検出することができる。
【0072】
(検出部)
図13(a)には、本実施例における検出部の概略図を示す。本実施例における検出部は、外径18mm、長さ110mmのガラス製の試験管に、幅8mmのアルミ箔電極を外周に接着固定して、電極E1と電極E2とした構成である。なお、試験管の中心部にアルミ箔電極の幅10mmを外周に接着固定してアース(GND)電極を設けている。アース電極と電極E1の間隙は15mm、アース電極と電極E2の間隙は10mm程度とした。
図13(b)は、外径15mmのガラス製試験管、長さ100mmに薬液Aを10ml充填し、測定のサンプルとした。
図13(c)は、外径15mmのガラス製試験管に、薬液Aを5mlと薬液Bを5mlを混合した測定サンプルとした。本発明の静電容量検出装置は第一共振回路と第二共振回路の出力電圧の差異から静電容量の変化を検証したものである。なお、本実施例において、アース電極は第一電極に相当する。電極E1は第二電極に相当する。電極E2は第三電極に相当する。
【0073】
(共振特性)
本発明は、第一共振周波数特性と第二共振周波数特性を利用することを見出し、この知見に基づいているものである。
図13(a)の測定プローブに抵抗R、コイルL、と静電容量素子C1を直列接続した第一共振回路と、抵抗R、コイルL、と静電容量素子C2を直列接続した第二共振回路の、直列共振周波数特性を求めた。
図14は、一定振幅の正弦波電流で10kH
Zステップごとの、周波数と電圧の関係をプロットした結果を示す。
【0074】
図14に示したように急峻化した、第一共振周波数特性と第二共振周波数特性の二つの共振周波数特性が得られた。また、同図から第一共振周波数特性と第二共振周波数特性に交差点が存在することが確認できる。発明者の検討によれば、第一共振周波数特性および第二共振周波数特性の微調整は、各電極間の距離またはコイルのインダクタンスまたは静電容量素子(コンデンサー)の静電容量などで行うことが可能である。本実施例においても、第一共振周波数特性と第二共振周波数特性の交点近傍の周波数を所定周波数とし、第一共振回路及び第二共振回路を励振してもよい。
【0075】
なお、本実施例では、共振周波数特性のピーク周波数のオーダーは1MH
Z程度であったが、このピーク周波数は、1kH
Z程度から1GH
Z程度で使用可能であり、好適には100kH
Zから10MH
Zである。また、
図14においては測定値として電圧を示しているが、
図11や
図12に示した静電容量検出装置を用いることで、測定値としては他の物理量を選択することも可能である。
図12に示した静電容量検出装置を用いれば、電流測定を行うことが可能であり、
図13に示した静電容量検出装置を用いれば、周波数として測定を行うことが可能である。
【0076】
(検証実験結果)
図15には本実施例における実験結果を示す。実験は、薬液Aと薬液A+薬液Bに対する、静電容量検出装置の出力電圧を比較することによって行った。まず、薬液Aを検出部(測定プローブ)の試験管内に挿入する。この状態で、多回転抵抗器21によりの直流電圧をディジタル変換し、このディジタル量により、正弦波発生回路のダイレクト・ディジタル・シンセサイザ23からディジタル設定した正弦波波形出力を得た。この出力波形に定電流増幅回路24を経させた後、一定振幅且つ一定周波数の正弦波電流で第一共振回路と第二共振回路を励振した。つぎに薬液A+薬液Bの混合液を検出部(測定プローブ)の試験管内に挿入し、同様の測定を行った。
【0077】
実験は、薬液Aと薬液A+薬液Bとを静電容量検出装置で測定した際の、出力電圧を比較することを目的とした。なお、本実施例では、比較検討を明確にするため、薬液Aに対する測定出力電圧が負電圧を示すように、共振回路の正弦波周波数を多回転抵抗器21で設定した。
【0078】
本発明は、たとえば
図14の直列共振周波数特性に示してあるように、第一共振周波数特性と第二共振周波数特性の両者が交差するようにしている。換言すると、第一共振周波数特性と第二共振周波数特性の両者が交差するように、各構成要素のパラメータを調整している。そして、この交差点近傍の励振周波数により、正負の静電容量検出装置の出力電圧が得られる。
【0079】
薬液Aと薬液A+薬液Bとを静電容量検出装置で測定した際の、静電容量検出装置の出力電圧をプロットした結果を
図15に示す。本実施例における測定では、静電容量検出装置の安定性を確認する目的で、午前に2時間間隔で2回、午後に2時間間隔で2回の平均値を、10日間の測定した値を示している。図示したように、薬液Aと薬液Aと薬液Bの混合に応じて、正負に出力電圧が変化することが確認でき、ダブルバッグ未開通検出に本発明に係る静電容量検出装置が有効であることが実証された。なお、本実施例においては、具体的な測定対象として、濾過型人工腎臓用補液サブパックBi(ニプロ社製)を使用した。しかしながら、本発明は、高カロリー薬液や腹膜透析液などの全てのダブルバッグ製剤に適用することが可能である。なお、本実施例においては上述のように、薬液Aに対する測定出力電圧が負電圧を示し、薬液A+薬液Bに対する測定出力電圧が正電圧を示すように、共振回路の正弦波周波数を多回転抵抗器21で設定した。しかしながら、2種類の薬液についての測定出力電圧を比較する場合に、必ずしも一方が負電圧、他方が正電圧を示すように設定する必要はない。両方の薬液についての測定出力電圧が正電圧になって
もよいし、負電圧になっても構わない。
【0080】
<実施例4>
次に本発明の実施例4について説明する。実施例3においては、ガラス製の試験管に、アルミ箔電極を外周に接着固定して、電極E1と電極E2とし、試験管の中心部にアルミ箔電極を接着固定してアース(GND)電極を設けることにより、薬液Aと薬液Aと薬液Bの混合に応じて、出力電圧が変化することが確認された。その結果、本発明がダブルバッグ未開通検出に対して有効であることが実証された。
【0081】
それに対し、本実施例においては、試験管を用いるのではなく、ダブルバッグ中の薬液が通過するチューブに電極E1、電極E2及びGNDを設け、直接、ダブルバッグが正常に開通され、ダブルバッグ中の薬液が混合されているか否かを検出可能な構成について説明する。
【0082】
図16に、本実施例における静電容量検出装置の検出部(測定プローブ)の構成を示す。
図16(a)に示す例は、ダブルバッグに接続され、ダブルバッグ内の薬液A、Bが通過するチューブ38に、環状の金属箔電極を外周に接着固定して、電極E1と電極E2とした構成である。なお、電極E1と電極E2との中心部に更に環状の金属箔電極を外周に接着固定してアース(GND)電極を設けている。アース電極と電極E1によって静電容量素子31が形成され、アース電極と電極E2によって静電容量素子32が形成される。
【0083】
図16(b)に示す例も、ダブルバッグに接続され、ダブルバッグ内の薬液A、Bが通過するチューブ38に、金属箔電極を外周に接着固定して、電極E1、アース電極及び電極E2とした構成である。
図16(a)に示す例との相違点は、電極E1、アース電極及び電極E2が環状ではなく、環の一部を構成する形状を有する点である。
図16(b)に示す例では、電極E1、アース電極及び電極E2は半円形状を有している。この場合においても、アース電極と電極E1によって静電容量素子31が形成され、アース電極と電極E2によって静電容量素子32が形成される。
【0084】
本実施例の構成によれば、ダブルバッグから流出する薬液が、薬液Aだけか、薬液Aと薬液Bの混合液かを、チューブ38に設けられた検出部によって、リアルタイムに検出することが可能である。これにより、より確実に、ダブルバッグの未開通による不都合を防止することが可能である。本実施例において、アース電極は第一電極に相当する。電極E1は第二電極に相当する。電極E2は第三電極に相当する。なお、本実施例においては、電極E1、アース電極及び、電極E2は、チューブ38の軸方向に平行に直線状に配置されており、また、環状または半円形状の各電極の軸は、チューブ38の軸方向を向いている例について説明した。しかしながら、本発明における第一電極、第二電極及び第三電極はそのような構成に限られない。電極E1、アース電極及び、電極E2は、チューブ38の軸方向に平行に並んでいる必要は無く、チューブ38の軸方向に対して斜め方向に並んでいてもよい。また、直線状に配置されている必要はなく、例えばジグザグに配置されていてもよい。
【0085】
また、環状または半円形状の各電極の軸は、チューブ38の軸方向を向いている必要はなく、各電極の軸はチューブ38の軸方向に対して斜め方向を向いていてもよく、さらに、各電極の軸方向が異なる方向を向いていてもよい。さらに本発明における“環”は必ずしも“円環”を意味しない。よって、電極E1、アース電極及び、電極E2は、必ずしも円形やまたは半円形状である必要はない。多角形状や、多角形の一部を構成する形状であってもよいし、さらに異なる形状を採用しても構わない。
【0086】
<実施例5>
次に本発明の実施例5について説明する。本実施例においては、ダブルバッグ中の薬液が通過するチューブに直接、電極E1、電極E2及びGNDを設けるのではなく、チューブが内側に配置されるように設けられたホルダに、電極E1、電極E2及びGNDを設ける例について説明する。
【0087】
図17には、本実施例における検出部(測定プローブ)の概略構成を示す。
図17(a)は検出部(測定プローブ)の斜視図、
図17(b)は検出部(測定プローブ)を、薬液が通過する上流側となる側から見た平面図である。本実施例においては、ダブルバッグに接続されたチューブが内側に配置されるホルダ39が設けられている。ホルダ39は、内部に凹部を有する樋状の形状を有している。ホルダ39を構成する三方の壁面の外側には、電極E1、電極E2及びアース電極が固定されている。そして、ホルダ39の凹部にダブルバッグのチューブを挿入して配置して薬液を通過させることで、測定対象物である薬液を、電極E1、電極E2及びアース電極によって三方から囲うことが可能になる。
【0088】
本実施例のような構成によっても、アース電極と電極E1によって静電容量素子31が形成され、アース電極と電極E2によって静電容量素子32が形成される。そして、本実施例の構成によれば、ダブルバッグから流出する薬液が、薬液Aだけか、薬液Aと薬液Bの混合液かを、チューブのホルダ39に設けられた検出部(測定プローブ)によって、リアルタイムに検出することが可能である。これにより、より確実またはより簡単に、ダブルバッグの未開通による不都合を防止することが可能である。本実施例において、アース電極は第一電極に相当する。電極E1は第二電極に相当する。電極E2は第三電極に相当する。
【0089】
<実施例6>
次に本発明の実施例6について説明する。本実施例においては、ダブルバッグ中の薬液が通過するチューブが内部を通過するように設けられたホルダに、電極E1、電極E2及びGNDを設ける例であって、各電極の配置が実施例5とは異なる例について説明する。
【0090】
図18には、本実施例における検出部(測定プローブ)の概略構成を示す。
図18(a)は検出部(測定プローブ)の斜視図、
図18(b)は検出部(測定プローブ)を、薬液が通過する場合の進行方向に垂直な方向から見た側面図である。本実施例においても、ホルダ39は、内部に凹部を有する樋状の形状を有している。そして、本実施例においては、電極E1、電極E2及びアース電極の各々が、ホルダ39を形成する三つの壁面を外周から囲うような同じ形状を有しており、ホルダ39の長手方向すなわち、チューブ内の薬液の進行方向に並ぶように配置されている。なお、本実施例における電極E1、電極E2及びアース電極は断面“コ”の字状の形状を有していることになるが、この場合の電極E1、電極E2及びアース電極の形状も、環の一部をなす形状に相当する。この場合の環は、例えば四角形の断面を有する。
【0091】
本実施例のような構成によっても、アース電極と電極E1によって静電容量素子31が形成され、アース電極と電極E2によって静電容量素子32が形成される。そして、本実施例の構成によれば、ダブルバッグから流出する薬液が、薬液Aだけか、薬液Aと薬液Bの混合液かを、チューブのホルダ39に設けられた検出部(測定プローブ)によって、リアルタイムに検出することが可能である。これにより、より確実またはより簡単に、ダブルバッグの未開通による不都合を防止することが可能である。本実施例において、アース電極は第一電極に相当する。電極E1は第二電極に相当する。電極E2は第三電極に相当する。
【0092】
なお、上記の実施例においては、第一共振回路及び、第二共振回路が、抵抗Rと、コイルLと、静電容量素子C1またはC2とが直列接続される、直列共振回路を構成する場合
について説明した。この場合には、
図3、
図7、
図14に示したように、第一共振回路及び、第二共振回路の共振特性がともに、上に凸状となる特性を示した。しかしながら、本発明の静電容量検出装置における第一共振回路及び第二共振回路の構成は上記に限られない。
【0093】
例えば、
図19(a)に示すように、第一共振回路及び第二共振回路を、コイルLと、静電容量素子C1またはC2とが並列接続される並列共振回路としてもよい。この場合には、
図19(b)に示すように、第一共振回路及び第二共振回路の共振特性は下に凸状となる特性を示す。このような構成によっても、第一共振回路及び第二共振回路を、コイルLと、静電容量素子C1またはC2とが直列接続される直列共振回路とした場合と同様、より高い感度またはより高い精度で、静電容量の変化を検出することができ、測定対象物の変化を検出することが可能である。この場合にも、第一共振回路及び第二共振回路の共振特性の交点となる周波数を所定周波数とし、この周波数で第一共振回路及び第二共振回路を励振してもよい。
【0094】
また、例えば、
図20(a)に示すように、第一共振回路及び第二共振回路のいずれか一方を直列共振回路とし、他方を並列共振回路としてもよい。
図20(a)の例では、第一共振回路を、コイルLと、静電容量素子C1とが直列接続される直列共振回路とし、第二共振回路を、コイルLと、静電容量素子C2とが並列接続される並列共振回路としている。この場合には、
図20(b)に示すように、第一共振回路の共振特性は上に凸状となり、第二共振回路の共振特性は下に凸状となる特性を示す。このような構成では、
図20(b)に示すように、第一共振回路の共振特性と、第二共振回路の共振特性とを二箇所で交差させることができる。
【0095】
よって、第一共振回路及び第二共振回路を励振する所定周波数をいずれの交点に合わすことも可能であり、構成上の自由度を向上させることができる。また、この場合には必ずしも第一共振回路及び第二共振回路の共振周波数を相違させる必要がなく、共振周波数を共通としてもよい。この観点からも回路構成上の自由度を向上させることが可能である。
【0096】
なお、
図20に示す場合には、直列共振回路と並列共振回路を
図12に示したタイプの静電容量検出装置に組み込んで使用しても構わない。すなわち、たとえば
図12における振幅検出回路25と26の出力を監視しながら、周波数設定器201で周波数をスイープする。そうすることにより、
図20における第一共振回路及び第二共振回路の共振周波数より、低い周波数領域の交点を使うのか、高い周波数領域の交点を使うのかを、周波数カウンタ202で設定することができる。この制御はコントローラ(マイコン)によって実行してもよい。
【0097】
なお、上記の実施例では、第一共振回路及び第二共振回路における、静電容量素子の静電容量の変化に伴う所定周波数近傍の出力の変化の方向が異なることを前提としていた。しかしながら、仮に第一共振回路及び第二共振回路における、静電容量素子の静電容量の変化に伴う所定周波数近傍の出力の変化の方向が同じ場合であっても、上記の静電容量検出装置や医療用薬液検査装置を使用することができる。第一共振回路及び第二共振回路における出力の差分を導出することで、ノイズの軽減などの効果は充分に期待できる。
【0098】
なお、本発明の実施態様としては以下の態様も可能であるので、ここに列挙する。
〔実施態様1〕
対象物の変化に応じた静電容量を電圧に変換する静電容量検出装置であって、対象物に対向する測定プローブ内は、電圧の周波数特性を急峻化する共振回路で形成した電圧振幅検出手段と、共振回路を一定周波数、一定振幅の正弦波電流で励振する周波数発信手段と、静電容量変化を電圧に変換する検出手段を備えることを特徴とする静電容量検出装置。
〔実施態様2〕
前記共振回路は、対象物と対向する測定プローブ内に具備し、電圧の周波数特性を急峻化するコイルとキャパシタ成分と直列接続した第一共振回路と、第一共振より共振周波数特性の共振点が異なる第二共振回路と、電圧の周波数特性を急峻化するコイルとキャパシタ成分と並列接続した第三共振回路と、第三共振より共振周波数特性の共振点が異なる第四共振回路を有することを特徴の実施態様1の静電容量検出装置。
〔実施態様3〕
前記急峻化手段は、対象物の変化に応じた静電容量が増大して検出する手段であり、第一共振回路と第二共振回路の組み合わせと、第三共振回路と第四共振回路の組み合わせと、直列共振回路のいずれかの一つと、並列共振回路のいずれかの一つが組み合わせであることを特徴の実施態様2の静電容量検出装置。
〔実施態様4〕
前記測定プローブは、少なくとも4層の極板の構成から成り、第一層と第二層の静電容量C1と、第二層と第三層の静電容量C2と、第三層と第四層の静電容量C3である。第二層と第四層を接続してアースとすると、C1がつかさどる第一共振と合成容量C2+C3がつかさどる第二共振が形成され、第一共振と第二共振の共振周波数の共振点が異なることを特徴とする実施態様1ないし実施態様3に記載の静電容量検出装置。
〔実施態様5〕
前記共振回路で、共振周波数特性の共振点より低い低周波領域の電流と、共振周波数特性の共振点より高い高周波領域の電流から、対象物とプローブ間に形成された静電容量が増大して変換されることを特徴した実施態様1ないし実施態様4のいずれか1つに記載の静電容量検出装置。
〔実施態様6〕
測定の基準点(原点)は、周波数発信手段の周波数で第一共振回路と第二共振回路を同時に一定振幅の電流で励振して、2つの共振回路の出力電圧により任意に設定できることを特徴とする実施態様1ないし実施態様5のいずれか1つに記載の静電容量検出装置。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、医療用の薬液等の液体の成分の検査・測定の他、真円度、偏心、半導体ウェハーやシート、絶縁物のコーティングの厚みの測定などに用いても好適である。
【符号の説明】
【0100】
1…静電容量C1
2…静電容量C2
3…静電容量C3
4…周波数発信手段
5…抵抗R
6…コイルL
7…電圧振幅変換回路
8…電圧振幅変換回路
9…抵抗R
10…コイルL
11…検出手段
12…A/D変換回路
13…ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ
14…定電流回路
21…定電圧回路と多回転抵抗
22…A/D変換回路
23…ダイレクト・ディジタル・シンセサイダ回路(DDS回路)
24…定電流回路
25…振幅検出回路
26…振幅検出回路
27…抵抗R
28…抵抗R
29…コイルL
30…コイルL
31…静電容量素子C1
32…静電容量素子C2
33…差動増幅回路
34…出力端子
38…チューブ
39…ホルダ
201…周波数設定器
202…周波数カウンタ
203…周波数記憶装置
P1,P2、P3、P4…極板