(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】3次元傾き感知装置及びこれを用いた傾き感知方法
(51)【国際特許分類】
G01C 9/02 20060101AFI20220104BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01C9/02
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2019571995
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2018007662
(87)【国際公開番号】W WO2020009256
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2019-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519457351
【氏名又は名称】キム、テヒ
(73)【特許権者】
【識別番号】519457605
【氏名又は名称】ハ、ジチョル
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、テヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ジチョル
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502773(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0064651(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0010233(KR,A)
【文献】特開2012-088073(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102968128(CN,A)
【文献】特開2012-167940(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0940479(KR,B1)
【文献】中国実用新案第202196779(CN,U)
【文献】特開昭56-101568(JP,A)
【文献】特開2001-111090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0124103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/02
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信基地局アンテナの傾きを感知する方法として、
重力センサーを介して地平座標系の水平面(X-Y平面)を算出する段階、
各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にして太陽光の入射方向の入射ベクトルを算出する段階、
上記光量データを測定した時間と緯度情報と経度情報を太陽軌道式に適用して、地平座標系上で、太陽光の入射角の情報を取得する段階、
上記水平面(X-Y面)と、上記入射ベクトルと、上記地平座標系上で、太陽光の入射角の情報とを通じて、地平座標系上で真北方向(Y軸方向)を算出し、地平座標系を確定する段階、
確定した上記地平座標系と上記ローカル座標系から上記地平座標系上で当該移動通信基地局アンテナの方位角とチルト角を含む3次元上の傾き情報を算出する段階、を含
み、
移動通信用のアンテナに適用される場合、上記アンテナの幅方向傾きを補正した後に上記アンテナの地平座標系のチルト角と方位角を算出することを特徴とする、
傾き感知方法。
【請求項2】
上記地平座標系を確定する段階は、上記入射ベクトルを上記地平座標系上の水平面(X-Y平面)に投影し投影ベクトルを算出する段階、上記水平面(X-Y平面)上で、上記地平座標系上で太陽光の入射角の情報を使用して得られる太陽光の方位角を反映して、真北方向(Y軸)を算出する段階、上記水平面(X-Y平面)に垂直な軸(Z軸)と、上記真北方向を指す軸(Y軸)と垂直な軸(X軸)を算出し、上記地平座標系を算出する段階、を含む請求項1に記載の傾き感知方法。
【請求項3】
任意の時間(t1)において、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にした太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t1)を算出する段階、
上記時間(t1)と緯度情報及び経度情報を太陽軌道式に適用して、地平座標系上で、太陽光の入射角情報(As_t1、hs_t1)を取得する段階、
上記の任意の時間(t1)と別の時間(t2)において、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にした太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t2)を算出する段階、
上記時間(t2)と緯度情報と経度情報を太陽軌道式に適用して、地平座標系上で太陽光の入射角情報(As_t2、hs_t2)を取得する段階、
ローカル座標系上に、時間帯を変えて得られた上記入射ベクトル(L_t1、L_t2)と、上記地平座標系を基準にした太陽光の入射角の情報(As_t1、hs_t1、As_t2、hs_t2)とを通じて地平座標系の水平面(X-Y平面)を算出する段階、
いずれかの上記入射ベクトルと、これに対応する地平座標系上で、太陽光の入射角の情報から、地平座標系上で真北方向(Y軸方向)を算出し、地平座標系を確定する段階、
確定された上記地平座標系上で、上記ローカル座標系の3次元上の傾き情報を算出する段階、を含む、
傾き感知方法。
【請求項4】
上記水平面(X-Y平面)を算出する段階は、各上記入射ベクトルを高さにして、上記入射ベクトルと同時間での太陽光の高度を上記高さと母線との間の角度とし、頂点が上記ローカル座標系の原心に置かれる二つの仮想の円錐を算出する段階、各上記円錐の底面を形成する二つの円に同時に接する接線と、上記ローカル座標系の原心を内包する一対の平面を算出する段階、上記二つの円錐の時間的前後関係と、現在位置が南半球であるか北半球であるかによって、上記一対の平面のいずれかを地平座標系の水平面(X-Y平面)として決定する段階、を含む請求項3に記載の傾き感知方法。
【請求項5】
上記入射ベクトルを算出する段階は、球面上に互い向かう方向が異なって設置され、太陽光の光量を測定する複数の光センサーから、光量データと当該光センサーのIDを含む出力情報を収集する段階、上記出力情報を光量データの大きさによって並べ替えた後、予め設定した基準に基づいて数個の上位値の出力情報を選定する段階、選定された出力情報を通じて太陽光の入射方向を算出し、これを単位ベクトルに換算して入射ベクトルを計算する段階、を含む請求項1又は請求項3に記載の傾き感知方法。
【請求項6】
上記傾き感知方法が移動通信用のアンテナに適用される場合において、上記アンテナの幅方向傾きを補正した後に上記アンテナの地平座標系のチルト角と方位角を算出することを特徴とす
る請求項3に記載の傾き感知方法。
【請求項7】
3次元上の傾き情報を算出する段階の後に、上記3次元上の傾き情報が、通信を利用して管理サーバへ送信される段階を含む請求項1又は請求項3に記載の傾き感知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元空間上における当該デバイスの傾きの感知に関し、太陽の方位角と高度を利用するための感知装置及びこれを備えて設置されたアンテナなどの3次元傾き感知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信基地局アンテナは、目的の面積の中で効率的な通信が行われるように、密集して設置される。これらのアンテナは、指向的で、意図した面積を担当できるように、アンテナが指向する方向(方位角)が予め設計される。また、アンテナは、支柱などを利用して高く設置され、地面に向かってある程度下げた角度(チルト(tilt))に設置されることが要求される。例えば、複数のアンテナが高い山に建てられた支柱を中心に放射状に設置され、各アンテナは、他の支柱に建てられたアンテナが担当する領域に応じて適切にチルトされることで、設計上の担当すべき面積に対する通信サービスを提供できるようになる。
【0003】
これらの意図を持って設計されたアンテナの方位角とチルトに合わせてアンテナを設置するためには、別途考案された角度測定装置や、さまざまな補助測定方法を使用する。
【0004】
すでに設置されたアンテナの方位角とチルトを調べることは、アンテナのメンテナンスにおいて非常に重要である。最初の設置時、角度調整のエラー、アンテナを支持する支柱施設の老朽化、台風などの外部環境への継続な露出などの様々な原因で、アンテナの角度は、最初に意図したことからずれることがあり、これは、特定のエリアでの通信サービスの質の低下につながる。アンテナの設置角度を再確認するためには、作業者が、別の角度測定装置などを持ってアンテナに接近しなければならないが、通常高い位置に設置されたアンテナに接近すること自体が危険で難しいので効率的ではない。
【0005】
このような点を考慮して、アンテナに直接設置することで、アンテナの角度を測定する方法が開発された。しかし、このような従来の技術は、電子コンパスモジュール、モーション認識センサー、傾斜センサーなど様々な計測モジュールを多数備えなければならないので、価格が高くなる点で限界がある。当該測定装備は一つのアンテナ毎に必要となるため、測定装備の高コストは汎用的使用の大きな障害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、太陽光を利用して、アンテナなどの機器の3次元上の傾き角度を取得することができるようにして、当該機器の現在の指向方向が最初に設計した意図に合うか否かをすぐに確認できるようにすることで、当該装備のメンテナンスの利便性を向上させようとするものである。
【0007】
その他、本発明の詳細な目的は、以下に記載されている具体的な内容を通じて、この技術分野の専門家や研究者に自明に把握され、理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、実施形態として、球球面を提供する構造体、上記構造体の球面に互い向かう方向を異にして設置され、太陽光の光量を測定する複数の光センサー、各上記光センサーの出力情報を受信する光センサー受信部、上記出力情報を受信したときの日付と時刻のカレンダー情報を提供する時間提供部及び集められた上記出力情報から太陽光の入射角を分析し、分析された上記太陽光の入射角、上記カレンダー情報及び太陽軌跡式から地平座標系を算出し、上記地平座標系と対比して、現在の位置の3次元上の傾き情報を算出する演算部を含む傾き感知装置を提案する。
【0009】
実施形態によって、上記構造体の中に設置され、水平面(X-Y平面)を検出する重力センサーを含むことができ、この実施形態では、移動中でも傾き情報を算出することができる。
【0010】
追加の構成として、遠隔地にある管理サーバーとの通信のための通信部を含み、上記通信部から上記サーバへ送信される通信情報には、上記3次元上の傾き情報が含まれることができる。さらに、上記時間提供部はジーピーエス(GPS)モジュールであることができる。
【0011】
一方、上記構造体は、測地線ドーム形状であることができ、凹面であることもできる。また、上記構造体は、半球よりも大きく、かつ一部が取り除かれた形の球形から成り、上記構造体を支持する支持体をさらに含むことができる。
【0012】
他の実施形態では隣接する光センサーの中間距離地点で、上記構造体の表面から法線方向に立てられており、太陽光の入射角に応じて、一部の光センサーに影を落とすスクリーン壁体を含むことができる。
【0013】
また、上記構造体は、透過性の保護膜で保護された状態で、アンテナ装置の上端部に露出するように設置することができる。
【0014】
一方、感知方法の第1の実施形態として、重力センサーを介して地平座標系の水平面(XY平面)を算出する段階と、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にして、太陽光の入射方向の入射ベクトルを算出する段階と、上記光量データを測定した時間と緯度情報と経度情報とを太陽軌道式に適用して、地平座標系上で、太陽光の入射角の情報を取得する段階と、上記水平面(XY平面)と、上記入射ベクトルと、上記地平座標系上で、太陽光の入射角の情報とを通じて、地平座標系上で真北方向(Y軸方向)を算出し、地平座標系を確定する段階及び確定された上記地平座標系上で、上記ローカル座標系の3次元上の傾き情報を算出する段階を含む傾き感知方法を提示する。
【0015】
具体的には、上記地平座標系を確定する段階は、上記入射ベクトルを上記地平座標系上の水平面(XY平面)に投影して投影ベクトルを算出する段階と、上記水平面(XY平面)上で、上記の地平座標系上で、太陽光の入射角の情報を通じて得られる太陽光の方位角を反映して、真北方向(Y軸)を算出する段階と、そして上記水平面(XY平面)に垂直な軸(Z軸)と、上記真北方向を指す軸(Y軸)と垂直な軸(X軸)を算出し、上記地平座標系を算出する段階を含むことができる。
【0016】
感知方法の第2の実施形態として、任意の時間(t1)において、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にした太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t1)を算出する段階と、上記時間(t1)と緯度情報と経度情報とを太陽軌道式に適用して、地平座標系上で、太陽光の入射角情報(As_t1、hs_t1)を取得する段階と、上記任意の時間(t1)と、別の時間(t2)において、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系を基準にした太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t2)を算出する段階と、上記時間(t2)と緯度情報と経度情報とを太陽軌道式に適用して、地平座標系上で、太陽光の入射角情報(As_t2、hs_t2)を取得する段階と、ローカル座標系上に、時間帯を変えて得られた上記入射ベクトル(L_t1、L_t2)と、上記地平座標系を基準とした太陽光の入射角の情報(As_t1、hs_t1、As_t2、hs_t2)とを通じて地平座標系の水平面(XY平面)を算出する段階と、いずれかの上記入射ベクトルと、これに対応する地平座標系上で、太陽光の入射角の情報から、地平座標系上で真北方向(Y軸方向)を算出し、地平座標系を確定する段階及び確定された上記地平座標系上で、上記ローカル座標系の3次元上の傾き情報を算出する段階を含む感知方法を提示する。第2の実施形態は、第1の実施形態とは異なり、重力センサーを使用していない。
【0017】
具体的には、上記水平面(XY平面)を算出する段階は、各上記入射ベクトルを高さにして、上記入射ベクトルと同時間での太陽光の高度を上記の高さと母線との間の角度とし、頂点が上記ローカル座標系の原心に置かれる二つの仮想の円錐を算出する段階と、各上記円錐の底面を形成する二つの円形に同時に接する接線と、上記ローカル座標系の原心を内包する一対の平面を算出する段階と、そして上記二つの円錐の時間的前後関係と、現在位置が南半球であるか北半球であるかによって、上記一対の平面のいずれかを地平座標系の水平面(XY平面)として決定する段階を含む。
【0018】
一方、上記入射ベクトルを算出する段階は、球面上に互い向かう方向が異なって設置され、太陽光の光量を測定する複数の光センサーから、光量データと当該光センサーのIDを含む出力情報を収集する段階と、上記出力情報を光量データの大きさによって並べ替えた後、予め設定した基準に基づいて数個の上位値の出力情報を選定する段階と、そして選定された出力情報を通じて太陽光の入射方向を算出し、これを単位ベクトルに換算して入射ベクトルを計算する段階を含むことができる。
【0019】
さらに、上記傾き感知方法が移動通信用のアンテナに適用することができる。この場合、上記アンテナの幅方向傾きを補正した後に上記アンテナの地平座標系に対するチルト角と方位角を算出することができる。
【0020】
また、3次元上の傾き情報を算出する段階の後に、上記3次元上の傾き情報は、通信を利用して管理サーバへ送信される段階を含み、リモート管理システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、接近が難しい場所や高めに設置された移動通信用アンテナなどの機器が設計意図に合わせて指向するか否かを簡単に把握できるようになる。太陽光を利用するので、従来の地磁気センサーなどに比べてエラーを発生させる原因の影響が減り、信頼性の高い測定結果を提供することができ、低コストで感知装置の提供が可能である。
【0022】
その他、本発明の効果は、以下に記載されている具体的な内容を通じて、または本発明を実施する過程で、この技術分野の専門家や研究者に自明に把握され、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る3次元傾き感知装置の使用状態を示す斜視図。
【
図2】
図1に示された実施形態に係る地平座標系とローカル座標系を示した図面。
【
図3】本発明の実施形態に係る3次元傾き感知装置の構成を簡単に示したブロック図。
【
図4】本発明の実施形態に係る3次元傾き感知装置に採用された光センサーの配置を示した斜視図。
【
図5】本発明の実施形態に係る感知装置の使用状態を簡単に示したもので、(a)は断面図であり、(b)は、一部の展開図。
【
図6】本発明の実施形態において、構造体が、他の形態の3次元傾き感知装置を示す斜視図。
【
図7】本発明の実施形態に係る3次元傾き感知装置が高緯度地域で太陽光を受光する状態を示す概念図。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る3次元傾き感知装置に関連し、(a)は斜視図であり、(b)は、使用状態を示した断面図。
【
図9】本発明の第1の実施形態による傾き感知方法の概略的なフローチャート。
【
図10】
図9の第1の実施形態の中で、太陽光の入射ベクトル算出段階に関する詳細フローチャート。
【
図11】
図9の第1の実施形態の中で地平座標系を算出する段階に関する詳細フローチャート。
【
図12】
図9の第1の実施形態の中で重力センサーを介した水平面の算出過程に関する図面。
【
図13】
図7の第1の実施形態の中で地平座標系を算出する過程に関する図面。
【
図14】
図7の第1の実施形態の中で地平座標系を算出する過程に関する図面。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る傾き感知方法の概略的なフローチャート。
【
図16】
図13の第2の実施形態にて水平面を算出する過程に関する図面。
【
図17】
図13の第2の実施形態にて地平座標系の確定過程に関する図面。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照して、本発明に係る3次元傾き感知装置及びこれを用いた傾き感知方法の構成、機能、及び作用を説明する。ただし、図面と実施形態に渡って同一または類似の構成要素の図面番号は統一して使用することとする。
【0025】
また、以下の説明では「第1」、「第2」などの用語は、技術的な意味が同一性の範囲にある構成要素を便宜上区別するために使用される。つまり、ある一つの構成は、任意に、「第1の構成」または「第2の構成」と命名されることができる。
【0026】
添付された図面は、本発明の適用された実施形態を示したもので、本発明の技術的思想を添付された図面によって制限解釈してはならない。この技術分野に属する専門家の見地から、図面に示された一部または全部が発明の実施のために必然的に要求される形状、模様、順序であれば、これは請求の範囲に記載された発明を限定しない。
【0027】
以下の説明で「地平座標系」は、もともと地球科学で天体の位置を示すために使用される座標系である。傾きを感知しようとするデバイスの位置で、地平座標系は、当該デバイスの傾きを判断する基準座標系で使用される。地平座標系の三軸それぞれを「X軸」、「Y軸」、「Z軸」と表記することにする。特に真北方向(N)は、Y軸方向と一致する。
【0028】
「ローカル座標系」は、傾き感知装置が有する座標系を意味する。傾き感知装置は、互いに垂直な3次元の軸を備える。このローカル座標系の三軸を、X’軸、Y’軸、Z’軸に表記することとする。傾き感知装置に備えられる多数の構成要素、すなわち光センサー、重力センサー、時間提供部などの位置関係は、設計による製造によって確定される。これらの構成要素の位置関係は、ローカル座標系上で特定の座標値で定められる。この特定の座標値は固定的であり、メモリなどに保存する。
【0029】
「太陽軌跡式」は、地平座標系上での太陽の軌跡を方位角と高度で提供する。観測位置(緯度)、日付、時刻の入力を受けて、太陽の方位角(A、Azimuth)と高度(h、Altitude)を算出する。これらの太陽軌跡式はすでに公開されて広く使用されており、例えば、ネブラスカ-リンカーン大学天文教育学科のサイト(http://astro.unl.edu/naap/motion3/motion3.html)、アメリカ国立海洋大気局のサイト(https://www.esrl.noaa.gov/gmd/grad/solcalc/)などで太陽軌跡式に関する情報やプログラムなどを確保することができる。
【0030】
「傾き情報」または「傾斜情報」の用語は、混用される。「傾き情報」は、地平座標系上での傾き感知装置、すなわち、傾き感知装置が設置された装置の3次元的傾き角度を提供する。
【0031】
傾き情報は、少なくとも「方位角」、「高度」及び「ロール角」を含む。
図2の(b)を参照する。「方位角」は、地平座標系の水平面(X-Y平面)上で真北方向(Y軸)からローカル座標系のY’軸まで時計回りに回転した角度(A)である。一方、「高度」は、水平面(X-Y面)からZ軸に向かう角度(h)である。また、「ロール角」は、ローカル座標系のX’-Z’平面で、Y’軸を回転軸にして回転した角度(r)である。
【0032】
座標系は、必要に応じて極座標や直交座標系が使用されることができる。これらの座標系間の変換は、公知の通りである。
【0033】
本発明の実施形態に係る傾き感知装置は、あるデバイスに装着されて使用され、そのデバイスの3次元上の傾き情報(または「傾斜情報」に記載する)を提供する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る傾き感知装置の使用例を示す。傾き情報を取得しようとするデバイスは、移動通信用のアンテナ装置(101)である。アンテナ装置(101)のほか、傾きを測定する必要がある様々な機器に傾き感知装置が使用されることができる。以下では、傾き感知装置がアンテナ装置に設置されることを中心に説明する。
【0035】
移動通信用アンテナ装置(101)は、地面に立てられる支柱(102)に設置される。アンテナ装置(101)は、ローカル座標系(X’Y’Z’)を有する。
図2の(a)を参照する。アンテナ装置(101)の前面をY’軸とし、アンテナ装置(101)の上下方向をZ’軸とする。アンテナ装置(101)は、特定の方位角(A0)と、特定のチルト角(t0)で設置されるように設定され、ロール角は、主に0°に設定される。
【0036】
図示していないが支柱には複数のアンテナが放射状に設置されることができる。
【0037】
アンテナ装置(101)には、傾き感知装置(100)が設置される。傾き感知装置は、太陽光を利用することで、太陽光を受け入れることに有利になるようアンテナ装置(101)の上端部に備えられる。特に光を受け入れる部分がアンテナ装置の上部に露出されて、なるべく広い守備範囲で太陽光を受け入れることができるように構成する。
【0038】
傾き感知装置(100)がアンテナ装置(101)に設置され、アンテナ装置(101)と結束されることにより、傾き感知装置(100)と、アンテナ装置(101)は、同一のローカル座標系(X’Y’Z’)を使用することができる。つまり傾き感知装置(100)が向かう方向が地平座標系上で確定されると、これをアンテナ機器(101)が向かう方向に使用することができる。
【0039】
アンテナ装置は、移動通信サービスが提供される広い面積に多数分散設置されている。適切なサービスエリアを確保するために、アンテナ装置は、山の頂上、ビルの屋上などなるべく高い位置に設置される。これらのアンテナ装置の傾き情報は、管理の利便性のために、ネットワークなどを介して遠隔地にある管理サーバー(103)へ送信されることができる。この時、管理サーバ(103)に傾き情報を送信する場合において、無線ネットワークを使用したり、移動通信用のアンテナ装置に内蔵された通信プロトコルを準用して、アンテナの内部を経由して通信することができる。
【0040】
管理サーバー(103)は、多数のアンテナ装置から各機器の傾き情報を取得し、アンテナ装置の意図した設置方向と対比して健全性評価を行うことができる。
【0041】
これにより、設置場所でいちいちアンテナの方向を測定しなくても簡単にすべてのアンテナの健全性を評価することができる。特に移動通信サービスが円滑に行われなかった区域のネットワークを分析することにおいて、当該区域を担当するアンテナ装置の傾き情報を、障害の原因の一つとして扱えるようになる。
【0042】
また、アンテナ装置を新設したり、以前設置したアンテナ装置の方向をメンテナンスした場合は、正しい方向に設置したか否かをすぐに知ることができるようになる。
【0043】
図2(b)のベクトルKは、アンテナ装置の設計された設置方向を指すベクトルである。地平座標系上で方位角の増加値(d_A)、高度の増加値(d_h)及びロール角の増加値(d_r)が反映されることにより、ベクトルK は、ベクトルY’ に変更されることを表す。
【0044】
設計による設置方向を指すベクトルKとベクトルY’の比較による方位角の増加値(d_A)、高度の増加値(d_h)及びロール角の増加値(d_r)は、管理サーバーで計算することができる。
【0045】
または傾き感知装置内のベクトルKについての情報が保存される場合、傾き感知装置内で方位角の増加値(d_A)、高度の増加値(d_h)及びロール角の増加値(d_r)を算出することもできる。
【0046】
図3乃至
図5は、本発明の実施形態に係る傾き感知装置に関する。
【0047】
本発明の実施形態に係る傾き感知装置は、構造体、複数の光センサー、光センサー受信部、時間提供部、重力センサー及び演算部を含む。追加の構成として通信部を含むことができる。
【0048】
構造体(1)は、半球形状又は半球以上を超え全球に近い形状の球面を提供する。ここで、球面は曲面に形成されるか、または測地線ドーム形状に製作されることができる。構造体は、太陽の軌跡を考慮して、全球の一部分だけを使用することもできる。
【0049】
複数の光センサー(2)は、構造体が提供する球面上に互い向かう方向が異なるように設置される。この時、光センサー(2)は、光量を測定することができる様々なフォトセンサーが使用されることができる。光センサーの種類に応じて、太陽から放出される可視光線に加えて、太陽から放出され、受け入れるセンサーの方向に沿って測定結果を異にする多様なエネルギー(例えば紫外線など)を使用することができる。
【0050】
本発明の実施形態では、光センサー(2)は、受け入れた光の光量データを出力するようになるが、複数の光センサーは、同じ光量に対して同じ出力をするように補正される。
【0051】
光センサー(2)の設置の便利、操作の利便性などのために、構造体(1)を測地線ドーム形状にして、各面の中心に光センサー(2)を設置することができる。
【0052】
構造体(1)を半球形状または測地線ドーム形状に選択することとは関係なく、表面に設置された光センサー(2)の受光面(21)から垂直な法線(22)が、構造体(1)の中心(11)に集まるように設計することができる。これらの設計は、光センサーの出力に対し、各光センサーの設置角度、位置に対する追加の数値補正なしでそのまま使用できるようにする。したがって、光センサーの出力値を利用した各種演算量が加重される負担を減らし、迅速な演算結果を得ることができるという利点がある。
【0053】
図5の(a)は、仮想的な球面で等間隔に固定された多数の光センサー(2)を示す。各光センサー(2)の受光面(21)の法線(22)は、球面の法線と同じように設置されている。
【0054】
図面の左上部から斜めに表示された矢印は太陽光(SL)を意味する。図面で光センサー(2)ごとに異なる入射角で太陽光(SL)が流入されるので、光センサー(2)ごとに出力値が互いに異なる。
【0055】
十分な数の光センサーを備れば、最大出力値を持つ光センサーの法線方向が、太陽光の入射方向と同じものと見なすことができる。このように、できるだけ多くの光センサーを使用することが分解能を向上させるためには望ましく、傾き感知装置の大きさ、コスト、演算の負担などを考慮して具備される光センサーの数を適正数に限定することができる。設置した数の減少に伴う分解能の補完は分析アルゴリズムを利用して解消することができる。これについては、後で改めて説明する。
【0056】
光センサー受信部は、複数の光センサーからの出力情報を受信するインタフェースを提供する。出力情報は、光センサーのアイディー(ID)、測定された出力値を含む。
【0057】
時間提供部は、光センサーからの出力情報を受信したときの日付と時間に関するカレンダー情報を提供する。このカレンダー情報は、太陽軌跡式に代入するパラメータとして活用される。
【0058】
時間提供部はネットワーククロック(Clock)受信機または無線の時間同期抽出モジュールまたは後述するジーピーエス(GPS)モジュールであることができる。カレンダー情報は、データ通信網を介して取得することができ、時間同期サーバー(たとえば、NPTサーバ)でネットワーククロックを送信する場合、これを受信して時刻情報を抽出して使用したり、移動通信信号を復調して、時間情報を抽出する方法などがある。
【0059】
さらに時間提供部はジーピーエス(GPS)モジュールを使用することができる。ジーピーエスモジュールは、衛星からのカレンダー情報を受信することができる。さらに、現在位置の地理的なデータ(緯度や経度)を得ることができる。特にジーピーエスモジュールを備える場合は、移動が可能な機器の傾き情報を得ることができるという利点がある。
【0060】
一方、通信部を備えるなど、管理サーバーを介してカレンダー情報を得ることができたり、他のネットワーク通信を介して、カレンダー情報を得ることができる場合は、時間提供部を省略することができる。
【0061】
演算部は、太陽光の入射角の分析、地平座標系の算出、傾き情報などを算出することができる。演算部は、シーピーユー(CPU)、キャッシュなどの一般的な演算装置が備える構成要素を含むことができる。
【0062】
重力センサー(3)は、構造体(1)の内部に設置されることができ、重力の方向を検出する。この重力方向と垂直な面を地平座標系上の水平面(X-Y面)に定めることができる。
【0063】
重力センサー(3)は、構造体(1)の中心(11)に合わせて設置することができる。また、重力センサー(3)の上面を構造体(1)の水平面と平行に合わせて、重力センサー(3)の設置方向をローカル座標系のX軸またはY軸に合わせることができる。これらの重力センサーの設置位置は、光センサーらの設置角度を構造体の中心に合わせたものと同様に、重力センサー(3)の出力値に対する追加補正なしでそのまま使用できるようにする。
【0064】
他の実施形態では、重力センサーは、構造体の内部に設置されるが、構造体の中心からやや外れた位置に設置することができる。具体的には、構造体のローカル座標系のX’-Y’平面上に設置され、重力センサーの垂直軸は構造体のZ’軸と平行に設置されることができる。
【0065】
重力センサー(3)は、重力が作用する方向を検知し、これをローカル座標系上の座標値((x1、y1、z1)、
図12の重力ベクトルを参照)で算出する。これらの重力センサーは、多数が公開されており、例えば、ANALOG DEVICES(登録商標)社のADXL345モデルがある。
【0066】
本発明の地平座標系の水平面(X-Y面)を検出する方法は、二つの方法があり、これは第1の実施形態と第2実施形態に区分される。重力センサーを使用しない傾き感知方法の第2の実施形態では、重力センサーを省略することができる。
【0067】
特に重力センサーが省略される場合、構造体の曲面は凹面に形成することができる。または測地線ドームを陰刻して凹面の多角形構造を採用することができる。
【0068】
追加の構成として通信部は、ネットワークに接続するインターフェースを提供する。通信部の詳細な構成は、公知されたものと同じことができ、通信部が備えることにより、遠隔地にある管理サーバーとの通信が可能になる。通信部は、演算部を通じて得られた3次元上の傾き情報を管理サーバーへ送信することができる。
【0069】
さらに傾き情報を生成するための測定開始命令、カレンダー情報、位置情報(緯度や経度)、太陽軌跡式プログラムなど必要なデータを管理サーバから受信することができる。
【0070】
一方、通信部は、発信専用に設定することができ、このような場合、前述した測定開始命令、カレンダー情報、位置情報(緯度や経度)、太陽軌跡式プログラムなどは、傾き感知装置内のメモリに予め格納されるか、時間提供部、GPSモジュールなどを通じて感知装置内で取得できる。
【0071】
また、追加の構成として、構造体(1)を離隔されるように覆う保護膜(4)をさらに含むことができる。この保護膜(4)は、円滑な投光が可能な材質で製作されることができ、表面に汚染を低減するための防汚コーティングが行われることができる。透光性材質と防汚コーティングの材質は、雨水によって汚染源を洗い流せる程度で十分であり、すでに開発された多くの公知技術の一部を選択して適用することができる。
【0072】
図6と
図7は、構造体が半球以上を超え球に近い形状の球面を提供する形態の傾き感知装置に関する。
【0073】
図面を参照する。構造体は、一部が切られた形の球形からなり完全な球から垂直な二つの平面が交わる領域が削除された形態を有する。
【0074】
構造体は、支持体によって支持される。図面を参照する。支持体は、六面体形状として構造体の切られた部分に結合されて構造体を支持する一方、内部に空間が形成されて時間提供部、演算部などの各種の構成が設置されることができる。
【0075】
構造体は、半球形状より大きく、全体球形状より小さい範囲内の形状を持つことができ、支持体は、アンテナ装置の上端部に装着しやすい平らな面を持つことができる。
【0076】
図7は、アンテナが設置されている地域が高緯度でアンテナの面が北に向って、45°程度傾いて設置された形態を示す。アンテナが傾いて設置されることにより、アンテナの上に置かれた構造体もアンテナの傾きの程度だけ傾いている。
【0077】
知られているように、高緯度地域の太陽の高度は低いので、
図7の(a)に示すように半球状の構造体には、法線方向に太陽光が届きにくく、センサーで太陽光を感知することも難しい。
【0078】
このように、地球上で地域に関係なく、傾いた物体(アンテナ)の上に装着して太陽の入射光を検出することにより太陽の方向を測定するためには、構造体が半球の形状では十分ではない。もし半球形状の構造体を使用するためには、構造体を適切に動かして、太陽光を検出することができるよう、別の駆動部が必要である。
【0079】
しかし、
図7の(b)に示すように半球以上の構造体を支持体に支持して使用すると、半球の下の部分で、太陽光を感知することが可能である。
【0080】
したがって、構造体を動かすための駆動部がなくても、測定エリアとは無関係に、太陽光を容易に検出することができ、地球上のどの地域でも太陽光を容易に検出して、アンテナの傾きを測定することができる。
【0081】
図8は、本発明の他の実施形態に係る傾き感知装置に関する。
【0082】
本発明の他の実施形態に係る傾き感知装置(100)は、構造体(1)、複数の光センサー(2)、光センサー受信部、時間提供部、重力センサー(3)及び演算部を含む。追加の構成として通信部または保護膜(4)を含むことができる。以下で説明する内容と抵触しない範囲内で、前述した実施形態に係る傾き感知装置の各構成要素が持つ特徴をそのまま含むことができる。
【0083】
他の実施形態に係る傾き感知装置で採用された構造体(1)は、前述した実施形態の構造体と同様に、球状または測地線ドーム型で提供され、さらにスクリーン壁体(12)を含む。
【0084】
スクリーン壁体(12)は、隣接する光センサーの中間距離地点で、構造体(1)の表面から法線方向に立てられている。構造体(1)は、太陽光の入射角によって、一部の光センサーに影を落とすことになる。
【0085】
図8の(b)でスクリーン壁体(12)によって複数の光センサー(2_1と2_6乃至2_11)に、影(SH)が落ちる。受光面(21)が陰る光センサー(2_1と2_6乃至2_11)は、光を受ける光センサー(2_2乃至2_5)に比べて非常に低い出力を出すので、分析する光センサーを選定する際に明確に排除することができるようになる。一部の光センサーを分析対象として選定する方法については、後述する。
【0086】
図9乃至
図14は、本発明の第1の実施形態による傾き感知方法に関する。
【0087】
第1の実施形態による傾き感知方法は、重力センサーを備えた感知装置を使用することで、水平面を算出する段階(s1)、太陽光の入射ベクトルを算出する段階(s2)、太陽軌跡式により太陽光の入射角情報を算出する段階(s3)、これらから地平座標系を算出する段階(s4)及び傾斜情報を算出する段階(s5)を含む。さらに傾き情報を管理サーバーへ送信する段階(s6)をさらに含むことができる。
【0088】
[重力センサーから地平座標系の水平面(X-Y平面)を算出する段階]
【0089】
図12は、重力センサー(3)と水平面(X-Y平面)に関する。ローカル座標系(X’、Y’、Z’)は、感知装置の現在の状態に応じて、3次元上で任意の方向に傾いた状態を示す。重力センサー(3)も、ローカル座標系にしたがって、任意の方向に傾いた状態である。
【0090】
重力は鉛直下方に作用し、重力センサー(3)は、重力に対して、重力ベクトルをローカル座標系の特定の座標値(x1、y1、z1)に出力するようになる。この重力ベクトルは、地平座標系の水平面に垂直なベクトルなので、重力ベクトルを地平座標系のZ軸(垂直軸)とすることができる。さらにZ軸に垂直な面を地平座標系の水平面(X-Y面)として算出する。
【0091】
[太陽光の入射方向の入射ベクトル(L)を算出する段階]
【0092】
図5と
図10は、入射ベクトルの算出に関する。ここで、入射ベクトル(L)は、ローカル座標系の原心を基準に、太陽に向かう単位ベクトルであり、太陽光の入射方向を指す。
【0093】
複数の光センサー(2)から入射ベクトル(L)を算出する方法は、光センサーの出力情報を収集する段階(s21)、分析の意味がある複数の出力情報を選定する段階(s22)、選定された出力情報から太陽光の入射方向を算出する段階(s23)、入射方向の単位ベクトル(入射ベクトル(L))を計算する段階(s24)を含む。
【0094】
各光センサーの出力情報は、光センサー受信部を介して、メモリに保存され、演算部に提供される。
【0095】
演算部は、出力情報の大きさによって並べ替えて、いくつかの分析する出力情報を選定することができる。この時、選ばれる出力情報は、測定された光量の最上位を含む上位の値を含むものである。
【0096】
ここで、出力情報の並び替えや選定は、様々な公知のアルゴリズムの中から選択することができる。
【0097】
また、分析する出力情報の数は、光センサーの設置された数などに応じて、ユーザーが任意に設定することができる。たとえば、十分な分解能を発揮することができるほどの数の光センサーを備えている場合、最大出力値を示す一つの光センサーを選定することができる。この場合は、その光センサーの座標値を太陽光の入射方向とすることができる。
【0098】
図5の(a)で太陽光(SL)の入射角は、すべての光センサー(2)の法線方向とも一致していない。光センサー(2)の受光面(21)と太陽光(SL)の入射角の近似度に応じて、各光センサーで測定した光量データに差が生じる。
【0099】
このような場合は、出力情報(光量データ)が比較的大きい数個の光センサーを選定することができ、選定された光センサーは、
図5の(b)に示すように、出力情報が最大値である光センサー(2_a)と、その周辺の光センサー(2_b乃至2_g)であることが期待できる。このように、出力情報が最大値である光センサー(2_a)と、その周辺の光センサー(2_b乃至2_g)の両方を考慮することができるように、配置された出力情報の連続的増減の程度を任意の基準値(基準増減値)と比較して、出力情報をグループ化することができる。
【0100】
例えば、出力情報(光量データ)が(1.4)、(1.33)、(1.31)、(1.3)、(1.26)、(1.25)、(1.24)、(1.1)、(1.05)...の順にソートされ、基準値が0.1であれば、(1.4)から(1.24)まではグループ1に包摂され、前方の光量データ(1.24)と0.1を超えて差がある1.1以下は、他のグループに包摂されることができる。この内有意なグループ1のみを分析対象とすることができる。
【0101】
選定された出力情報の中から光センサーのアイディー(ID)を介して、分析対象の光センサーの座標値を知ることができる。この座標値を数学的解析により太陽光の入射方向を算出することができる。この時、数学的解析で補間、線形解析、統計分析などの公知の様々な分析方法が適用されることができる。さらに数学的解釈において光量データの大きさの差を加重するのを考慮することで、より正確な太陽光の入射方向を算出することができる。
【0102】
太陽光の入射方向は、球面のいずれかのポイントのローカル座標系の座標値で計算され、ユニットサイズでとることにより入射ベクトルが算出される。
【0103】
図13を参照する。入射ベクトル(L)は、ローカル座標系上での太陽光の入射方向を示すもので、ローカル座標系に中心がある仮想のユニットサイズ球の表面に一点で表示可能である。
【0104】
一方、
図8の他の実施形態に係る感知装置(100)において、スクリーン壁体(12)は、一部の光センサーに影(SH)が差すようにして光量データのギャップを大きく発生させる。これにより、排除する光センサーの選定が2_2乃至2_5で明確になる利点がある。特に感度が小さい光センサーを採用したり、天気が曇ったりして入射された太陽光の光量が少ない場合などにおいて、人為的に太陽光と垂直するまたは垂直に近い光センサーの出力情報と、そのほかの光センサーの出力情報の違いを大きくすることができる利点がある。
【0105】
[太陽軌跡式に基づいて太陽光の入射角の情報を取得する段階]
【0106】
太陽軌跡式にアンテナが設置された緯度と日付と時刻を入力すると、地平座標系を基準にした太陽光の入射角情報(方位角と高度)を知ることができる。太陽の軌道は、一年を周期に繰り返すことに基づき、地球科学の領域で広く知られている常識なので、ここでは重複した説明を省略する。
【0107】
太陽の軌跡のテーブルまたはプログラムは、感知装置に内蔵されたり、通信部を介して管理サーバから提供されることができる。また、太陽光の入射角の情報を計算するための緯度は、備えたジーピーエス(GPS)モジュールから得るか、感知装置に予め入力されたものでもよい。日付と時刻は、時間提供部(またはGPSモジュール)から得ることができる。または、緯度、日付と時刻は管理サーバーから送信されることもできる。このように、太陽軌跡式を利用して、太陽光の入射角の情報を取得するための方式は多様に変更されることができる。
【0108】
[地平座標系を算出する段階]
【0109】
先に算出した水平面(X-Y平面)、入射ベクトルと太陽光の入射角の情報を通じて、地平座標系の真北方向(Y軸)とX軸を算出し地平座標系を確定する。
【0110】
図11を参照する。地平座標系の水平面(XY平面)上に入射ベクトル(ローカル座標系)を投影して投影ベクトルを算出する段階(s41)、太陽光入射角の情報の中で方位角を利用して、投影ベクトルを回転させて真北方向を算出する段階(s42)、Z軸とY軸に垂直なX軸を決定し地平座標系(XYZ)を算出する段階(s43)を含む。
【0111】
図13乃至
図14は、地平座標系を算出するための、上記段階(s41乃至s43)に関する。
【0112】
図13で、ローカル座標系(X’Y’Z’)に入射ベクトル(L)が表示されている。地平座標系の水平面(X-Y平面)上に入射ベクトルを投影し投影ベクトル(T)を算出することができる。投影ベクトル(T)の算出において、三角関数とZ’軸とZ軸の間の角度が使用される。
【0113】
投影ベクトル(T)の方向は、地平座標系の水平面(X-Y平面)で太陽が位置する方向を指す。
【0114】
入射角の情報は、入射ベクトルの作成時点と同じ時間における、地平座標系を基準とする太陽の方位角(As)と高度(hs)のデータが含まれている。この内方位角データを使用して、投影ベクトルを水平面(X-Y平面)上で逆に回転させる(
図14の(a)参照)。方位角Asだけ逆に回転された投影ベクトル(T_2)が示す方向は、地平座標系の真北(N)方向であり、地平座標系のY軸方向である。
【0115】
算出されたY軸と既に知っているZ軸から、これらに垂直なX軸を決定することにより、X軸、Y軸、Z軸が全部決定された地平座標系(XYZ)を算出することになる。
【0116】
[傾き情報を算出する段階]
【0117】
図14の(b)を参照する。前述の過程を通じて得られた地平座標系(XYZ)は、ローカル座標系(X’Y’Z’)で計算されたものなので、地平座標系とローカル座標系の相互関係を知ることができる。地平座標系を基準に、ローカル座標系がどの方向からどれだけ回転されたかを計算し、方位角、高度、及びロール角を含む傾き情報を算出する。
【0118】
このように太陽光の入射角を分析し、カレンダー情報、太陽軌跡式と重力センサーを利用して、アンテナのローカル座標系から地平座標系を確定することができ、ローカル座標系との相互関係に基づいて地平座標系上でアンテナが指向する方位角とティルティング角度を知ることができる。
【0119】
[傾き情報を管理サーバーへ送信する段階]
【0120】
傾き情報は、通信部を介して管理サーバへ送信されることができる。この時、傾き情報には、アンテナのアイディー(ID)、方位角、高度、及びロール角が含まれており、追加のタイムスタンプ(time stamp)、地平座標系を基準にしたZ ’ベクトル値を含むことができる。
【0121】
送信される傾き情報は、方位角、高度、及びロール角などを加工して得られる付加的なデータを含むことができる。たとえば高度に代わって地平座標系のチルト角(Z軸とアンテナのZ’軸との間の角度)を送信することができる。または極座標値を直交座標系の座標値で置換することもできる。
【0122】
特に移動通信用のアンテナに適用される場合において、傾き情報は、アンテナの幅方向の傾き(ロール角)を地平座標系の水平面(XY面)と垂直になるように補正した後、地平座標系のアンテナの現在の方位角と現在のチルト角を算出することができる。
【0123】
移動通信用アンテナの設置方向は、通常方位角とチルト角に設定され、設定の段階でロール角は当然0°とみなされる。
【0124】
ロール角が0°である場合、当該アンテナの方位角と傾斜角を主な関心事項とすることができる。このような点を反映して、ロール角が0°になるように、ローカル座標系を回転させた後、方位角とチルト角を傾き情報として算出することができる。このように算出され、管理サーバーへ送信された傾き情報はすぐに設計値と照合することができ、異常の有無を迅速に判定することができるようになる。
【0125】
さらに、測定されたロール角が一定水準を超えた場合は、アンテナが向う方向が大きく外れているので、方位角とチルト角は意味がなくなる。この点を考慮し、ロール角が一定水準を超える場合は、方位角とチルト値をヌル値(NULL)で返信するように構成することもできる。
【0126】
図15乃至
図17は、本発明の第2の実施形態に係る傾き感知方法に関する。
【0127】
本発明の第2の実施形態に係る傾き感知方法は、重力センサーを使用していない。その代わりに、地平座標系の水平面(X-Y平面)を算出するためには、時間差による太陽の移動を利用する。
【0128】
以下で説明する内容と抵触しない範囲で、第1の実施形態に係る各段階の特徴が、第2の実施形態の対応する段階で実質的に同じように適用することができる。
【0129】
具体的に
図15を参照する。第2の実施形態は、時間差をつける二つの入射ベクトルを算出する段階(p1、p2)は、各時間で太陽光の入射角の情報を取得する段階(p3、p4)、水平面を算出段階(p5)、地平座標系を算出する段階(p6)及び傾き情報を算出する段階(p7)を含む。さらに、第1の実施形態と同様に、傾き情報を管理サーバーへ送信する段階(p8)を含む。
【0130】
ここで時間差をつけて入射ベクトルを算出する段階(p1、p2)は、同じ時間に行われていない場合、いずれを先に実行してもよい。ただし、時間の前後は後の水平面(X-Y平面)を算出する段階に影響を与えるので、p1、p2のいずれの段階が先に実行されたかを知っている必要がある。以下では、説明の便宜のためにt1の時点がt2の時点より先行すると見なす。
【0131】
また、結果の値(ベクトル、情報)が時間に依存する場合、_t1、_t2を加えて表記し区別することにする。
【0132】
[時間差をつけて二つの入射ベクトルを算出する段階]
【0133】
任意の時間(t=t1)で、各光センサーから測定された太陽光の光量データから、ローカル座標系(X’Y’Z’)を基準とした太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t1)を算出する。
【0134】
上記の任意の時間(t1)と、別の時間(t2)に、同じ方法で、太陽光の入射方向の入射ベクトル(L_t2)を算出する。
【0135】
時間差だけ太陽の位置は移動するので、t1時間に応じた入射ベクトル(L_t1)とt2の時間に応じた入射ベクトル(L_t2)は異なる。
【0136】
十分な信頼性を確保するためにt1とt2の時間差は、少なくとも30分以上とすることができ、好ましくは、時間単位での差が出るようにすることができる。
【0137】
光センサーの出力情報から入射ベクトル(L_t1、L_t2)を算出する詳細な構成は、前述した第1の実施形態と実質的に同一であるので、重複した説明は省略する。
【0138】
[太陽軌跡式に基づいて太陽光の入射角の情報を取得する段階]
【0139】
太陽軌跡式にアンテナ装置の緯度と日付と時刻(t1、t2)を代入して、地平座標系での太陽光の入射角情報(方位角(As_t1、As_t2)及び高度(hs_t1、hs_t2))を取得する。
【0140】
t1とt2の時間の差によって、太陽の位置を示す入射情報も、互いに異なる。
【0141】
太陽軌跡式のパラメータ等の詳細については、前述した第1の実施形態と実質的に同一であるので、重複した説明は省略する。
【0142】
[地平座標系の水平面(X-Y平面)を算出する段階]
【0143】
第2の実施形態では、地平座標系の水平面(XY面)を計算するために、先に得られた入射ベクトル(L_t1、L_t2)と、入射角情報(As_t1、As_t2、hs_t1、hs_t2))を用いて、幾何学的分析を実行する。また、現在の緯度(具体的には、北半球か南半球かの区別)を参照する。
【0144】
詳細な実行段階には、各入射ベクトル(L_t1、L_t2)と、同時間の入射角情報(As_t1、As_t2、hs_t1、hs_t2))からローカル座標系上に仮想の円錐を算出する段階は、各円錐の底面を形成する二つの円形に同時に接する接線と、ローカル座標系の原心を内包する一対の平面(P1、P2)を算出する段階と一対の平面(P1、P2)のいずれかを地平座標系の水平面(XY平面)として決定する段階を含む。
【0145】
図16の(a)において、二つの円錐(C1、C2)は、t1とt2によるものであり、(b)と(c)は、理解の便宜のために切り離し示したものである。
【0146】
図面で円錐(C1、C2)の高さは入射ベクトル(L_t1、L_t2)である。入射ベクトル(L_t1、L_t2)はベクトル値で、各円錐(C1、C2)が置かれる方向を決定する。
【0147】
円錐(C1、C2)の母線と高さ(入射ベクトル)との間の角度は、太陽の高度(hs_t1、hs_t2)に該当する。ここで高度(hs_t1、hs_t2)は太陽光の入射角の情報から得られたものである。
【0148】
たとえば、t1、t2が午前中の時間帯に属すると仮定すると、高度(hs_t1)は、正午に近いt2時間の高度(hs_t2)よりも小さい。これは円錐(C1)の母線のなす角度が円錐(C2)の母線のなす角度より小さい理由となる。
【0149】
これら二つの円錐(C1、C2)の頂点をローカル座標系の原点に移動すると、
図16の(a)と同じである。
【0150】
これらの円錐(C1、C2)の底面(ウォン)に外接しながら、同時に、ローカル座標系の原心を内包する一対の平面(P1、P2)を選ぶことができる。
【0151】
特定の時間(t1、t2)での太陽の高度(hs_t1、hs_t2)だけ差があり、ローカル座標系の原点を通る平面(P1、P2)のいずれかは、地平座標系の水平面(X-Y面)である。
【0152】
具体的には一対の平面(P1、P2)のいずれが地平座標系の水平面であるかは、測定された位置(アンテナの位置)が北半球であるか、南半球であるかによって異なる。太陽の軌跡が時間の流れに沿って東から西に移動することと、太陽の軌跡が北半球では南に偏り南半球では反対であることを考慮して、いずれかの平面を水平面(X-Y面)として決定することができる。この時、プログラム上、南半球と北半球の区分は、緯度の条件式で簡単に実現することができる。
【0153】
図16でt1がt2に先行することを前提としたので、アンテナが北半球に位置する場合は、平面(P1)が水平面(X-Y面)として決定される。もしアンテナが南半球に位置する場合は、平面(P2)が水平面(X-Y面)として決定される。また、水平面(X-Y面)から地平座標系のZ軸を算出することができる。
【0154】
これらの幾何学的解釈をするために、様々な数学的なアルゴリズムが適用されることができる。
【0155】
[地平座標系を算出する段階]
【0156】
確定された水平面(X-Y面)、いずれかの入射ベクトル及びそれに対応する太陽光の入射角の情報から、地平座標系の真北方向(Y軸)を算出する。
【0157】
図17はこれに関連し、前の段階で選定された水平面(X-Y面)にt1での入射ベクトル(L_t1)を投影した投影ベクトル(T)が示されている。この投影ベクトル(T)を水平面(X-Y面)上でZ軸を回転軸にして、太陽光の方位角(As_t1)だけ逆に回転させてY軸を算出することができる。また、決定されたZ軸とY軸からこれらに垂直なX軸を算出し、地平座標系(XYZ)を確定することができる。
【0158】
投影ベクトル算出段階と、投影ベクトルを方位角だけ回転する段階などの詳細な内容は、前述した第1の実施形態と実質的に同じである。
【0159】
さらに傾き情報を算出する段階(p7)、傾き情報を管理サーバーへ送信する段階(p8)の内容は、前述した第1の実施形態の対応する段階と実質的に同じなので、重複した説明は省略する。
【0160】
本発明の第1の実施形態による傾き感知方法は、重力センサーを使用することにより、位置の移動が可能な機器に使用が可能である。
【0161】
一方、第2の実施形態に係る傾き感知方法は、重力センサーを使用しないことにより、設置位置が固定された装置に限定される必要がある。ただし、第1の実施形態の感知装置より安価な構成が可能な利点がある。