(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】自動車のフロントガラス内の割れ検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/958 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
G01N21/958
(21)【出願番号】P 2017184199
(22)【出願日】2017-09-25
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501387301
【氏名又は名称】有限会社仁木ガラス
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】仁木 守一
(72)【発明者】
【氏名】喜耒 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】浮田 浩行
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092476(JP,A)
【文献】特開平07-234187(JP,A)
【文献】特開平10-062354(JP,A)
【文献】特開平02-110356(JP,A)
【文献】特開2007-212544(JP,A)
【文献】特開平09-218161(JP,A)
【文献】特開平09-196858(JP,A)
【文献】特開昭51-022481(JP,A)
【文献】特表2016-525691(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126596(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0169213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 ー B32B 43/00
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定してなる自動車の
合わせガラスからなるフロントガラスの表面に向かって、光源から所定の入射角で光ビームを照射し、
前記光源からフロントガラス表面に照射される光ビームの反射光を受光センサで受光して反射光から得られる画像パターンを画像信号として演算回路に出力し、
前記演算回路で画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別するフロントガラスの割れ検出方法であって、
前記光源から照射する光ビームをレーザービームとし、
前記演算回路が、
入射角と反射角の何れかが異なる反射光
であって、前記フロントガラス表面と前記フロントガラス内部からの反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出することを特徴とする自動車のフロントガラス内の割れ検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載される自動車のフロントガラス内の割れ検出方法であって、
前記光源が所定の長さの直線状の光ビームを集束して自動車のフロントガラスを照射すると共に、
光ビームを直線の横方向に移動して、フロントガラスに所定の幅で光ビームを照射してガラス全面の割れを検出することを特徴とする自動車のフロントガラス内の割れ検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載される自動車のフロントガラス内の割れ検出方法であって、
前記光源が、所定の横幅で直線状の光ビームをフロントガラスに照射すると共に、
前記受光センサでもって、所定の横幅の光ビームの画像パターンを画像信号に変換して出力し、
前記演算回路で前記画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出することを特徴とする自動車のフロントガラス内の割れ検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される自動車のフロントガラス内の割れ検出方法であって、
前記光源と前記受光センサとの相対位置を変更して、前記受光センサが入射角の異なる光ビームの画像パターンを検出することを特徴とする自動車のフロントガラス内の割れ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスの内部に進行する割れを検出する方法に関し、とくにフロントガラスを車両に固定する状態でガラス内部の割れを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスは、走行中に小石などが当たって表面が局部的に小さく凹む損傷、通称「打点」と呼ばれ傷が表面にできるのを皆無にできない。ガラス表面に打点ができると、この打点から内部に割れが進行する。割れの進行はガラス表面の衝撃によって変化する。フロントガラスに発生する打点や割れは、ドライバーの視界を悪くして安全運転を阻害する。表面にできる打点は、目視して判定できるが、内部に進行する割れは、ガラス内部に極めて狭い隙間で発生するので、視る方向によって目立ち難く、目視による判定が難しい。しかしながら、現実の運転状態においては、打点と割れの両方がドライバーの視界を悪くする。それは、フロントガラスを透過する光の方向や外的環境によって、ドライバーの視界を著しく悪くするからである。とくに、視界が悪い雨の夜間走行時にあっては、打点や割れによる視界の低下は、ドライバーの安全運転を著しく阻害する原因となる。
【0003】
ガラス内部に進行する割れは、使用環境によっては視界を著しく低下させるにもかかわらず、一見しては割れを正確に判定できず、いかに割れを正確に検出できるかは安全運転のためには極めて大切である。ガラス内部の割れを検出する方法として、ガラスに光を照射し、透過光を検出して割れを検出する方式が開発されている。(特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-75296号公報
【文献】特開平07-68587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、ガラス板に一方の端面から内部に光を照射し、光をガラス板の内部で全反射させながら面方向に透過させて、他方の端面に配置している光センサで透過光を検出する。ガラス板の内部に割れがあると、割れが光を散乱して光センサの受光量を低下させる。したがって、光センサの受光量の変化を検出して割れを検出できる。この方法は、光をガラス板の内部で全反射させながら面方向に透過させるので、自動車のフロントガラスのように、車両に取り付けた状態では割れを検出できない。車両に取り付けたフロントガラスの内部に光を入射して面方向に透過できず、また、フロントガラスの端面に光センサを配置できないからである。さらに、以上の方法は、ガラス板の内部で光を全反射させながら面方向に透過させるので、光が透過する経路が長くてガラス板の内部の光の減衰が大きく、さらにヒビによる透過光の減衰を光センサの受光量の変化として検出するので、小さいヒビを正確に検出できない欠点がある。
【0006】
特許文献2は、自動車の強化ガラスの割れを検出する方法を記載している。この方法は、
図5に示すように、光源102から強化ガラス101に光を透過し、透過光をさらにガラスの下に配置する反射器104で反射してガラスに透過し、ガラスを透過する光の強度を検出器103で検出してガラスの割れを検出する方法を記載する。割れのあるガラスは、破損しないガラスに比較して透過光の強度が低下する。したがって、透過光の強度を検出して強化ガラスの割れを検出できる。強化ガラスは、通常の状態において多大なテンションと圧縮とが加えられているので均一に割れる。強化ガラスにおいて発生する割れは常にガラスの表面全体に沿って均一にガラスの表面に対して垂直に走る。割れの均一性によって、光源と検出器とを強化ガラスのいずれの個所に位置させても同等の効果が得られるので、強化ガラス全面の割れを検出する必要はない。強化ガラスは、表面を圧縮して破壊に対する抵抗性を高めており、局部的な割れがガラス全体に走るので、全体の割れを検出する必要はない。
【0007】
しかしながら、近年の自動車のフロントガラスには強化ガラスに代わって合わせガラスが使用される。合わせガラスは、両面の板ガラスの間に樹脂製の中間膜を挟んで接着した構造である。合わせガラスは強化ガラスのように一部の割れが全体に走ることがなく、たとえば、飛び石などで局部的に打点ができ、この打点からガラス内部に割れが進行する。打点と割れの部位と形状は種々雑多であらゆる部位に種々の打点や割れが発生する。したがって、強化ガラスの割れを検出する方法では、合わせガラスの割れを確実に検出できない。
【0008】
本発明は、従来の以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の目的の一は、フロントガラスを車両から外すことなく、極めて小さい割れをも正確に検出できる自動車のフロントガラス内部の割れ検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の自動車のフロントガラスの割れ検出方法は、車両に固定している自動車の合わせガラスからなるフロントガラス1の表面に向かって、光源2から所定の入射角で光ビームを照射し、光源2からフロントガラス表面に照射される光ビームの反射光を受光センサ3で受光して反射光から得られる画像パターンを画像信号として演算回路4に出力し、演算回路4でもって画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別する。さらに、以上のフロントガラスの割れ検出方法は、演算回路4でもって、入射角と反射角の何れかが異なる反射光であって、フロントガラス表面とフロントガラス内部からの反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出する。
【0010】
以上の割れ検出方法は、フロントガラスを車両から外すことなく、小さい割れをも正確に検出できる特徴がある。それは、以上の割れ検出方法が、車両に固定しているフロントガラス表面に光源から光ビームを照射し、フロントガラスに照射された光ビームの反射光を受光センサで受光して反射光から得られる画像パターンを画像信号として演算回路に出力し、演算回路でもって、画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別することに加えて、さらに光源から光ビームをフロントガラスに照射して、入射角や反射角の異なる反射光から得られる複数の画像パターンを演算回路で合成してガラス内部の割れを判別するからである。以上の方法は、光源からフロントガラスの表面に向かって光ビームを照射して、フロントガラスからの反射光を受光センサで検出するので、光源と受光センサの両方をフロントガラスの端面に配置する必要がなく、両方をフロントガラス表面から離して配置して、内部に進行する割れを検出でき、さらに、入射角又は反射角の異なる光ビームによる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出するので、種々の形態で内部に進行する割れを正確に検出できる特徴がある。ガラス内部にできる割れは、特定の形状となることはなく、衝撃を受ける状態によって、内部に進行する深さが異なり、また形状も種々な状態に変化する。形状が特定されない内部の割れは、照射される光ビームをランダムな方向に反射する。ランダムな方向に反射される反射光は、必ずしも特定の位置に配置している受光センサに検出されず、割れの形態によっては受光センサが割れからの反射光を充分な受光量で検出できないことがある。本発明の割れ検出方法は、入射角や反射角が異なる複数の画像パターンを合成して割れを検出する。割れが特定の方向から入力されて特定の方向に反射する反射光を受光センサに向かって反射しない状態にあっても、異なる入射角や反射角の際には、受光センサで検出される反射光の強度が変化する。このため、ガラス内部にできるあらゆる形態の割れを正確に検出できる特徴がある。さらにまた、光ビームをフロントガラスの内部で全反射させながら面方向に透過させることなく、フロントガラスの表面に向かって光ビームを照射して、その反射光を受光センサで検出して割れを検出するので、光ビームの強度に対する受光センサの受光量が大きく、発光出力の小さい光源を使用しながら、フロントガラス内に進行する僅かな割れをも正確に検出できる特徴がある。
【0011】
本発明の他の態様にかかる自動車のフロントガラス内の割れ検出方法は、光源2が所定の長さの直線状の光ビームを集束して自動車のフロントガラス1を照射し、照射される光ビームを直線の横方向に移動して、フロントガラス1に所定の幅で光ビームを照射してガラス全面の割れを検出することができる。
【0012】
本発明の他の態様にかかる自動車のフロントガラス内の割れ検出方法は、光源2が、所定の横幅で直線状の光ビームをフロントガラス1に照射し、受光センサ3でもって、所定の横幅の光ビームの画像パターンを画像信号に変換して演算回路4に出力し、演算回路4で画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様にかかる自動車のフロントガラス内の割れ検出方法は、光源2と受光センサ3との相対位置を変更して、受光センサ3が入射角の異なる光ビームの画像パターンを検出することができる。
【0014】
本発明の自動車のフロントガラス内の割れ検出方法は、光源2から照射する光ビームをレーザービームとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるフロントガラスの割れ検出方法に使用する割れ検出装置の概略構成図である。
【
図2】割れ検出装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図3】割れ検出装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図4】
図3に示す割れ検出装置で検出されるフロントガラスの正面図である。
【
図5】従来の自動車の強化ガラスの割れを検出する方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための自動車ガラスの割れ検出方法を例示するものであって、本発明は自動車のフロントガラスの割れ検出方法を以下の方法に特定しない。ただし、本発明は、合わせガラスであるフロントガラスの割れ検出方法に係るもので、強化ガラスの割れを検出するものではない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
自動車のフロントガラスに使用される合わせガラスは、中間に樹脂層を挟んで両面にガラスを接着している。このフロントガラスは、従来の強化ガラスのように全体に割れが走って小さく破砕されることはない。合わせガラスは、事故の衝撃でドライバーがフロントガラスを破って飛び出すのを防止できるので、強化ガラスよりも安全にドライバーを保護できる。ただ、合わせガラスは、走行中に飛び石が当たって局部的に打点が発生し、打点から内部に割れが進行する。またワイパーがフロントガラスを擦って無数の擦り傷が付く欠点はある。とくに、ワイパーによる損傷では、フロントガラスとの間に埃が溜まりやすく、また埃は、シリカとアルミナの混合物であるガラスに匹敵する硬度の微細な砂が混ざっていることが多いので、これがワイパーで擦り付けられると、ガラスの表面に微細な無数の擦り傷ができ、この擦り傷がドライバーの視界、とくに夜間や雨のときの視界を著しく悪くする。
【0018】
図1ないし
図3に示すフロントガラスの割れの検出方法は、フロントガラス1を自動車に固定する状態で、合わせガラス表面から内部に伸びる割れを検出する。さらに、以上の検出方法は、ガラス内部に進行する割れに加えて、表面にできる微細な擦り傷をも検出できる。フロントガラス表面の無数の擦り傷は、昼間にはほとんど目立たないので傷の程度を簡単に検出できないが、夜間の対向車のヘッドライトからの光を散乱し、さらにワイパーで雨水を払拭する状態では視界を著しく悪化して安全運転を阻害する。このため、擦り傷の程度が判定できることは安全運転の実現から極めて有効である。
【0019】
図1ないし
図3は、フロントガラス1に使用される合わせガラスの割れ検出方法を示す。これ等の割れ検出方法は、フロントガラス1の表面に向かって、光源2から所定の入射角で光ビームを照射する。光源2からフロントガラス表面に照射される光ビームの反射光は、受光センサ3で受光する。受光センサ3は反射光から得られる画像パターンを画像信号として演算回路4に出力する。演算回路4は画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別する。
図1ないし
図3に検出方法に使用される装置は、フロントガラス1の裏面に濃い黒などの暗色のシート5を配置して、フロントガラス1を透過した光の反射を少なくしている。暗色のシート5は反射率の低い黒色で無地のシートが最適であるが、無地で黒以外の暗色のシートも使用できる。無地のシート5は、フロントガラス1の背面に密着して配置され、あるいは接近して配置されて、表面に照射される光ビームの反射を少なくして、ガラス内部の割れをより明確に検出する。
【0020】
光源2は所定の放射角で光ビームをガラス表面に照射する。自動車のフロントガラス表面の全面を照射する光ビームを照射する光源2は、1組の光源2を定位置に配置して、ガラス全面を照射する。
図3に示すように、ガラス表面を所定の幅で照射する光ビームの光源2は、たとえば、光ビームが、
図4のハッチングで示すように、所定横幅があってガラスの幅方向に伸びる直線状の領域を照射する。この光源2は、
図4の矢印で示すように、光ビームを照射する区画領域6をガラス表面に沿って移動してガラス全面を照射する。
図4の光ビームは、所定の横幅でガラスの幅方向に伸びる直線状にガラス表面の一部を照射する。この光ビームは、光ビームの直線の横方向、すなわちガラスの長手方向に移動してガラス全面を照射する。
図4に示す直線状の光ビームは、ガラスの幅方向の両側まで伸びる長さで、ガラスの長手方向に移動して、ガラス全面を照射できる。ただし、光源2は、ガラス表面の横幅と長手方向のいずれかよりも狭いスポット領域を照射する放射角として、このスポット領域を縦横に走査してガラス全面を照射することもできる。光源2から照射する光ビームは、例えば、レーザービームとすることができる。
【0021】
受光センサ3も、
図1に示すように、ガラス全面を1枚の画像パターンとして検出するものにあっては、1組の受光センサ3を定位置に配置してガラス全面を画像パターンとして認識できる。
図2と
図3に示すように、ガラス表面を複数に区画した区画領域6を画像パターンとして認識する受光センサ3は、認識する区画領域6を矢印で示すようにガラス表面に沿って移動して、ガラス全面の画像パターンを検出する。
図4に示すように、区画領域6を、幅方向に伸びる所定の横幅の直線状とする受光センサ3は、矢印で示すように、直線の幅方向に移動してガラス全面の画像パターンを認識する。
【0022】
内部に割れや擦り傷のないフロントガラス1は、照射される光ビームを、表面と裏面とで特定の方向に特定の割合で反射する。ガラスの表面と裏面で反射される光は、入射角と反射角とが同じ角度となり、反射率は表面状態で特定されて一定値となる。ガラスの表面と裏面とで反射される反射光は一定強度となるので、受光センサ3で検出される画像パターンにおいて、濃淡のない、すなわちコントラストのない画像パターンとなる。内部に割れが進行し、あるいはガラス表面に無数の擦り傷のあるガラスは、表面と裏面のみでなく、照射される光ビームを種々の方向に反射する。割れや擦り傷の反射光は受光センサ3に受光される。割れや擦り傷はガラスに局部的に発生するので、割れや擦り傷からの反射光を受光する受光センサ3の画像パターンは、割れや擦り傷によってコントラストができる。ガラスの割れや擦り傷は、特定の形状では発生しない。割れや擦り傷は、大きさや形状が種々の形態となるので、割れや擦り傷の反射光は方向と強度の両方が一定とならない。割れや擦り傷の反射光は、入射角の方向によって強く、また入射角の方向によって小さくなる。受光センサ3は、割れや擦り傷の反射光を検出し、画像パターンにおいてコントラストの差として検出するので、光ビームの反射光が弱い割れを確実に検出できない。
【0023】
図1と
図2に示す割れ検出方法は、光源2と受光センサ3との相対位置を変更して、受光センサ3が入射角と反射角の異なる光ビームの画像パターンを検出して、ガラス内部の割れを検出する。
図1の検出方法は、複数の光源2から異なる入射角の光ビームでガラス表面を照射して、種々の形態の微細な割れを確実に検出する。この検出装置は、複数の光源2から異なる入射角の光ビームをフロントガラス1に照射し、演算回路4は、入射角の異なる反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出する。ガラス表面に特定の方向から照射する光ビームのみでガラスの割れを検出する方法は、割れの形態によっては、反射光の強度が著しく低下して正確に検出できないことがある。
図1の割れ検出方法は、ガラス表面に異なる入射角で光ビームを照射する。異なる入射角でガラス表面に照射される光ビームは、割れを異なる角度で照射するので、あらゆる形態の割れに照射され、何れかの方向から照射される光ビームの反射光が強くなる。あらゆる種類の割れからの反射光を強くできる方法は、受光センサ3で得られる画像パターンのコントラストを強く、とくに割れ領域のコントラストを強くして、割れを確実に検出する。
【0024】
図1の割れ検出装置は、1組の受光センサ3と複数の光源2を備える。複数の光源2は、ガラス表面に異なる方向から光ビームを照射する。この図の検出装置は3組の光源2でガラス表面を照射する。図の光源2は、光ビームの放射角を、ガラス全面を照射する角度とするので、各々の光源2を固定している。ガラス全面を照射できない放射角の光源2は、移動してガラス全面を照射する。異なる位置に配置される光源2から放射される光ビームは、ガラス表面を異なる角度から照射する。
【0025】
受光センサ3は、ガラス全面からの反射光を検出して画像パターンとして認識する。ガラス内部に発生する割れは、照射される光ビームを種々の方向に反射する。ただ、ガラス内部の割れは、全ての方向から照射される光ビームを全ての方向に均一に反射することはなく、照射される光ビームを種々の方向にランダムに反射する。
図1において、A点に発生したガラス内部の割れは、各々の光源2から入射される光を反射し、A点の反射光は受光センサ3で検出される。受光センサ3が検出する反射光の強度は同じではない。A点の割れは、複数の光源2から異なる入射角で照射される光ビームを反射するが、全ての光源2から放射される光ビームを同じ強度では反射しない。ある方向から照射される光ビームの反射光は弱くなるとしても、全ての方向から入射される光ビームの反射光が弱くなる確率は低いので、他の方向から照射される光ビームの反射光は強くなって、受光センサ3に検出される。このことから、A点が複数の光源2から異なる入射角の光ビームで照射されると、何れかの光源2からの光ビームを強く反射して、受光センサ3で割れが検出される。図の検出装置は、3個の光源2でガラス表面を異なる入射角で照射するが、光源2の個数を多くすることは、より微細な割れを検出することに有効である。したがって、光源2の個数は4個以上とすることもできる。ただ、2組の光源2が異なる入射角でガラス内部を照射して、ガラス内部の割れを検出することもできるので、光源2の数は2組とすることもできる。
【0026】
受光センサ3は、光ビームの反射光を受光して得られる画像パターンを画像信号として演算回路4に出力する。演算回路4は、受光センサ3から入力される画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別するが、この演算回路4は、入射角が異なる光ビームの反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出する。
図1において、演算回路4は、3個の光源2から異なる入射角で放射される光ビームの反射光で検出する3組の画像パターンを演算してガラス内部の割れを検出する。演算回路4は、受光センサ3から入力される画像パターンに相当する画像信号を演算して、ガラス内部の割れを判定する。入力される画像信号は、割れに相当する部分の信号レベルが高くなる。演算回路4は、3組の画像パターンの画像信号を合成して全体の画像、すなわち全体画像を演算し、演算する全体画像から信号レベルが高くなる領域を割れと判定する。ガラス内部の割れは、複数の画像パターンに含まれるので、複数の画像パターンを合成、すなわち複数の画像信号を合成することでガラス内部の割れに相当する信号レベルはより高くなって、割れはより確実に検出される。
【0027】
図2の割れ検出方法は、種々の割れを確実に検出するために、移動する受光センサ3が異なる反射角の反射光を検出し、演算回路4は、反射角の異なる反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出する。特定の方向からの反射光のみでガラスの割れを検出する方法は、割れの形態によっては、反射光の強度が著しく低下して正確に検出できないことがある。
図2の割れ検出方法は、ガラス内部の割れが反射する反射光であって、反射角が異なる反射光を受光センサ3で検出する。ガラス内部の割れは、入射される光ビームを種々の方向に反射するが、全方向に同じ強度に反射しないので、特定方向の反射光の強度が弱くなっても、全ての方向の反射光が弱くなるのではない。反射角が異なる複数の反射光を受光センサ3で検出する検出装置は、強い反射光を受光センサ3で検出することで、画像パターンのコントラストを強く、とくに割れ領域のコントラストを強くして、割れを確実に検出する。
【0028】
図2の割れ検出装置は、光ビームがガラス全面を照射する1組の光源2と、ガラス表面に沿って移動して、ガラス全面の画像パターンを検出する受光センサ3とを備える。受光センサ3は、ガラス表面の所定幅の領域の反射光を検出して画像パターンを検出し、ガラス表面に沿って移動しながら、ガラス全面の画像パターンを検出する。図の検出装置は、1組の受光センサ3を移動してガラス全面の画像パターンを検出する。この受光センサ3は、ガラス表面を複数の区画領域6に区画して、ガラス表面に沿って移動して、区画された複数の区画領域6の画像パターンを検出して、ガラス全面の画像パターンを検出する。図示しないが、複数組の受光センサ3を並べて、各々の受光センサ3でガラス全面の一部の画像パターンを検出し、全ての受光センサ3でガラス全面の画像パターンを検出することもできる。
【0029】
ガラス内部に発生したA点の割れは、照射される光ビームを種々の方向に反射するので、異なる位置の受光センサ3で検出される。
図2において、A点の割れの反射光は、移送方向に並ぶa、b、cで示す位置の受光センサ3の画像パターンに含まれる。A点の割れが、a、b、cの位置にある受光センサ3の画像パターンの内部にあるからである。受光センサ3のa、b、cの画像パターンは、異なる位置で反射光を検出するので、各々の画像パターンで検出されるA点の反射光は、異なる反射角となる。ガラス内部の割れは、特定の方向から照射される光ビームを全ての方向に均一に反射することはなく、照射される光ビームを種々の方向にランダムに反射するので、
図2において、A点に発生したガラス内部の割れの反射光の強度は同じ強度ではない。A点の割れは、特定の方向から入射される光ビームを反射するが、全ての方向に同じ強度では反射せず、ある方向の反射光は弱くなっても、全ての方向の反射光が弱くなることはなく、特定方向の反射光は強くなって、受光センサ3に検出される。したがって、A点を特定の入射角の光ビームで照射すると、何れかの反射角の反射光が強くなる。図の検出装置は、3区画の画像パターンでA点の割れを検出するが、検出する画像パターンの個数を多くして、すなわち、移動する受光センサ3が検出する画像パターンのピッチを小さくして、より多くの画像パターンで割れを検出することで、より微細な割れを検出できる。
【0030】
受光センサ3は、画像パターンを画像信号として演算回路4に出力する。演算回路4は、受光センサ3から入力される画像信号を演算処理してフロントガラス内部の割れを判別するが、この演算回路4は、入射角と反射角が異なる光ビームの反射光から得られる複数の画像パターンを合成してガラス内部の割れを検出する。
図2において、演算回路4は、3位置で検出する3組の画像パターンを演算してガラス内部の割れを検出する。演算回路4は、受光センサ3から入力される3組の画像パターンに相当する画像信号を演算して、ガラス内部の割れを判定する。入力される画像信号は、割れに相当する部分の信号レベルが高くなるので、演算回路4は、3組の画像パターンの画像信号を合成して全体の画像、すなわち全体画像を演算し、演算する全体画像から信号レベルが高くなる領域を割れと判定する。ガラス内部の割れは、複数の画像パターンに含まれるので、複数の画像パターンを合成、すなわち複数の画像信号を合成することでガラス内部の割れに相当する信号レベルはより高くなって、割れはより確実に検出される。
【0031】
図3の検出装置は、光源2と受光センサ3を移動台7に固定している。移動台7は、ガラス表面に沿って移動しなが、光源2からはガラス表面に光ビームを照射し、光ビームの反射光を受光センサ3で受光する。受光センサ3は、一定の周期で光ビームを受光して、複数に区画された区画領域6の画像パターンを検出する。移動台7は、光源2と受光センサ3を固定して定位置に配置して、光源2と受光センサ3との相対位置を変化させることなくガラス表面に沿って移動する。
【0032】
移動台7は、駆動機構8を介してガラス表面に沿って移動する。図の駆動機構8は、平行に配置している2本のネジ棒11と、ネジ棒11を一緒に回転するモータ12と、モータ12の回転をコントロールする制御回路13とを備える。移動台7はネジ棒11の雄ネジに噛み合う雌ねじ孔(図示せず)を設けている。この駆動機構8は、制御回路13がモータ12の回転を制御して、移動台7をネジ棒11に沿って移動させる。モータ12は正逆に回転されて移動台7を往復運動させる。移動台7の移動距離はモータ12の回転数や回転時間で特定される。制御回路13は、モータ12の回転数や回転時間から移動台7の移動距離を検出し、移動台7が予め設定している距離を移動する毎に、移動台7が設定距離を移動したことを示す移動信号を出力する。受光センサ3は、移動信号を検出する毎に反射光から画像パターンを検出する。
図3において、受光センサ3が画像パターンを検出する間隔、すなわち移動台7の設定距離(d)は、受光センサ3が検出する画像パターン(P、Q)が互いに重なり合う距離に設定される。したがって、設定距離(d)は画像パターンとして認識される区画領域6の横幅、すなわち移送方向の幅(W)よりも狭く設定される。
【0033】
受光センサ3が画像パターンを検出する設定距離(d)と区画領域6の横幅(W)との比率、すなわち設定距離(d)/区画領域6の横幅(W)は、例えば50%よりも小さく、好ましくは30%よりも小さく、さらに好ましくは20%よりも小さく設定される。設定距離(d)/横幅(W)の比率を小さくすることは、区画領域6の特定の位置に発生する割れの検出回数が多くなって、ガラス内部の割れを検出できる確率が高くなる。
【0034】
受光センサ3は、移動台7が予め設定している距離、すなわち設定距離(d)移動する毎に区画領域6の画像パターンを検出して演算回路4に出力する。演算回路4は、受光センサ3から入力される画像パターンを合成してガラス全面の全体画像を演算して、ガラス内部の割れを検出する。全体画像は、複数の画像パターンを加算して合成されるが、合成される隣の画像パターンは、
図4に示すように、境界部分で互いに重なって両側の画像パターンに検出される。
図4においてP領域の画像パターンの右側と、Q領域の画像パターンの左側は同じ領域の画像を検出するので、演算回路4は、P領域の画像パターンの右側と、Q領域の画像パターンの左側とを合成して、割れのコントラストを明確にする。割れは光ビームを反射して反射光の強度が強くなる、すなわち割れを検出する部分で受光センサ3の出力電圧が高くなる。したがって、受光センサ3の画像パターンを画像信号として演算回路4に出力すると、割れを示す部分の画像信号は電圧値が高くなる。このため、演算回路4が画像信号の電圧値を加算して画像パターンを合成することで、合成された全体画像において、ガラス内部の割れを示す画像信号の電圧値が高くなって、割れをより明確に検出できる。
図4の検出装置は、画像パターンの約半分を重なるように合成して、全体画像を演算するが、画像パターンの重なり部分をさらに多くすることで、ガラス内部の割れの反射光強度を検出している画像パターンの画像信号を加算して全体画像を合成して、全体画像から割れをより確実に検出できる特徴がある。
【0035】
演算回路4は、多数の画像パターンを合成して得られる全体画像をパターン認識して、ガラス内部の割れを判定する。演算回路4は、パターン認識において、全体画像から局部的にコントラストが設定値よりも高くなる領域の面積が閾値を越えるとガラス内部の割れと判定する。ガラス表面に付着する塵は、光ビームを反射してコントラストが設定値よりも高くすることがある。ただ、塵でコントラストが高くなる領域は、極めて狭い領域に限られるので、コントラストが設定値よりも高くなる領域に閾値を設けて、閾値よりも高くなる領域を割れと判定して、塵と割れとを識別できる。さらに、演算回路4は、種々の割れを検出して割れのパターンを記憶し、コントラストが高くなる領域の形状と記憶するパターンとを比較して、割れと判定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はフロントガラスを自動車に固定する状態で内部に発生する割れを検出する方法として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1…フロントガラス
2…光源
3…受光センサ
4…演算回路
5…シート
6…区画領域
7…移動台
8…駆動機構
11…ネジ棒
12…モータ
13…制御回路
101…強化ガラス
102…光源
103…検出器
104…反射器