(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】床吹出口装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/068 20060101AFI20220104BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F24F13/068 A
F24F13/10 E
(21)【出願番号】P 2018077881
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591014042
【氏名又は名称】株式会社久米設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591219429
【氏名又は名称】空調技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
(72)【発明者】
【氏名】酒井 義幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 美穂
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】上野 景太
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃三
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-205080(JP,A)
【文献】特表2012-512375(JP,A)
【文献】特開2009-127910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0139133(US,A1)
【文献】特開平07-301453(JP,A)
【文献】実公平08-001397(JP,Y2)
【文献】特開平07-012370(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-004272(KR,U)
【文献】特開2013-127336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和対象空間に面する吹出開口部を有して空気調和対象空間の床に配設され、床下の空気供給用通路を通じて供給される調和空気を前記吹出開口部から空気調和対象空間に吹出す床吹出口装置において、
前記空気供給用通路としての床下空間に連通する床下側開口部を下部に設けられると共に、空気調和対象空間に連通する床面側開口部を上部に設けられる中空の略箱状体で形成され、床下側開口部を通じて調和空気を内部に導入する吹出口本体と、
前記吹出開口部としての貫通孔を複数穿設配置される略板状体で形成され、前記吹出口本体の床面側開口部に前記貫通孔を連通させて吹出口本体の上側に配設され、床面の一部をなすフェース部と、
前記吹出口本体内に配設されて、吹出口本体内部の空間を中央の開口領域と当該中央の開口領域を取り囲む外側の開口領域との二つに分ける略筒状の仕切り部と、
前記吹出口本体の下側に吹出口本体に対し上下移動可能に配設され、吹出口本体下部との間の隙間量を変化させて、床下空間から床下側開口部を経て吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整可能とするダンパ部とを備え、
前記フェース部の各貫通孔が、フェース部における前記中央の開口領域の上側にあたる範囲に設けられて中央の開口領域のみに連通する第一の吹出開口部の組と、フェース部における前記外側の開口領域の上側にあたる範囲に設けられて外側の開口領域のみに連通する第二の吹出開口部の組との二組に分けられてなり、
前記ダンパ部が、床下側開口部のうち少なくとも前記外側の開口領域の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第一の流量調整状態と、床下側開口部のうち外側の開口領域の下側にあたる部位をダンパ部で閉止しつつ、床下側開口部のうち前記中央の開口領域の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第二の流量調整状態とを、切替可能とされることを
特徴とする床吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の床吹出口装置において、
前記ダンパ部が、
前記吹出口本体の床下側開口部全体にわたる大きさとされ、前記中央の開口領域の下側にあたる部位の所定箇所に、前記中央の開口領域へ床下空間から調和空気を流入可能とする空気流通孔部を設けられ、吹出口本体に対し、吹出口本体と仕切り部の各下端部から離れた状態と、吹出口本体と仕切り部の各下端部に接して、吹出口本体の床下側開口部のうち外側の開口領域の下側にあたる部位を閉止する状態とを切替可能とされる第一ダンパと、
当該第一ダンパの下側に配設され、第一ダンパから離れて前記空気流通孔部を開放する状態と、第一ダンパに接して空気流通孔部を閉止する状態とを切替可能とされる第二ダンパとを有してなり、
前記第一の流量調整状態では、第一ダンパと第二ダンパが所定間隔で上下に離隔した位置関係を維持しつつ吹出口本体に対し一体に上下移動可能とされ、
前記第二の流量調整状態では、第一ダンパが吹出口本体と仕切り部の各下端部に接して動かない一方、第二ダンパが吹出口本体及び第一ダンパに対し上下移動可能とされることを
特徴とする床吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の床吹出口装置において、
前記吹出口本体内に配設され、一部を吹出口本体に連結されると共に、他部を前記ダンパ部の第二ダンパに連結され、第二ダンパを上下に移動させる昇降機構を備え、
前記ダンパ部の第一ダンパが、第二ダンパの上側に弾性変形可能な支持部材を介在させて配設され、
前記支持部材が、前記第一の流量調整状態では、第一ダンパと第二ダンパとの離隔状態を維持して第一ダンパを第二ダンパと一体に移動可能とする一方、前記第二の流量調整状態では、弾性変形して第二ダンパの第一ダンパに対する移動を許容することを
特徴とする床吹出口装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の床吹出口装置において、
前記ダンパ部の第一ダンパが、所定の大きさの下向きの凹部を設けられた形状とされてなり、
前記第二ダンパが、第一ダンパに接して第一ダンパの空気流通孔部を閉止する状態まで移動すると、第一ダンパの凹部に収まって第一ダンパの下端より上側に位置することを
特徴とする床吹出口装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載の床吹出口装置において、
前記昇降機構が、雌ねじを設けられた所定のロータを回転させるように作動可能として吹出口本体に一体に取り付けられるモータと、当該モータにおけるロータの雌ねじに螺合させて配設され、下端部を前記第二ダンパに固定されるねじ軸とを有してなり、
前記モータのロータの回転で、ロータの雌ねじに螺合するねじ軸をモータに対し相対移動させて、第二ダンパを上下動させることを
特徴とする床吹出口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和対象空間に床側から調和空気を吹出して空気調和を行う床吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル内のオフィス空間等の室内空間に対し空気調和を行う場合、調和空気を空気調和対象の室内空間に吹出す吹出口は、室内空間への調和空気の到達しやすさ等を考慮して天井に配設されることが一般的である。しかしながら、室内空間の天井高さによっては、空気調和に係るエネルギー消費を抑えるために、近年、室内空間の床に吹出口を設置して調和空気を吹出すようにして、人の活動する床から所定高さ範囲の居住域(タスク域)に対する効率のよい空気調和を行う例も増えている。このような場合に用いられる従来の床設置型の吹出口装置の例として、特開2009-127910号公報や実公平8-1397号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-127910号公報
【文献】実公平8-1397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各特許文献に示されるような従来の床吹出口装置は、床下空間から供給された調和空気を床面の開口部から吹出すものであり、床下側に流量調整用のダンパ機構を設けて、室内空間に吹出す調和空気の流量を変化させられる構造が多く採用されていた。
【0005】
ただし、こうした従来の床下で流量調整可能な床吹出口装置では、調和空気の流量を小さくした場合、同時に室内空間への吹出速度も低下していた。こうした吹出速度の低下は調和空気の到達距離に影響を及ぼし、特に、冷房の場合、床面の開口部から上向きに吹出される低温の空気が、より温かい室内空気に対して重く、室内空間を上方へ進行しにくいことも相まって、調和空気の流量を小さくすると室内空間における調和空気の到達距離が極端に小さくなり、室内空間における居住域に調和空気を行き渡らせることができず、空気調和能力が著しく低下してしまうという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、調和空気の流量を小さくした場合でも、床面の吹出開口部から空気調和対象空間に吹出す調和空気の吹出速度が過度に小さくならず、空気調和対象空間を上向きに進行する調和空気の到達距離を十分確保でき、冷房時においても居住域に対し効率よく空気調和を実行できる床吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る床吹出口装置は、空気調和対象空間に面する吹出開口部を有して空気調和対象空間の床に配設され、床下の空気供給用通路を通じて供給される調和空気を前記吹出開口部から空気調和対象空間に吹出す床吹出口装置において、前記空気供給用通路としての床下空間に連通する床下側開口部を下部に設けられると共に、空気調和対象空間に連通する床面側開口部を上部に設けられる中空の略箱状体で形成され、床下側開口部を通じて調和空気を内部に導入する吹出口本体と、前記吹出開口部としての貫通孔を複数穿設配置される略板状体で形成され、前記吹出口本体の床面側開口部に前記貫通孔を連通させて吹出口本体の上側に配設され、床面の一部をなすフェース部と、前記吹出口本体内に配設されて、吹出口本体内部の空間を中央の開口領域と当該中央の開口領域を取り囲む外側の開口領域との二つに分ける略筒状の仕切り部と、前記吹出口本体の下側に吹出口本体に対し上下移動可能に配設され、吹出口本体下部との間の隙間量を変化させて、床下空間から床下側開口部を経て吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整可能とするダンパ部とを備え、前記フェース部の各貫通孔が、フェース部における前記中央の開口領域の上側にあたる範囲に設けられて中央の開口領域のみに連通する第一の吹出開口部の組と、フェース部における前記外側の開口領域の上側にあたる範囲に設けられて外側の開口領域のみに連通する第二の吹出開口部の組との二組に分けられてなり、前記ダンパ部が、床下側開口部のうち少なくとも前記外側の開口領域の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第一の流量調整状態と、床下側開口部のうち外側の開口領域の下側にあたる部位をダンパ部で閉止しつつ、床下側開口部のうち前記中央の開口領域の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第二の流量調整状態とを、切替可能とされるものである。
【0008】
このように本発明によれば、吹出口本体の下側に上下移動で吹出口本体との間の隙間量を変えるダンパ部を設けて、床下空間から床下側開口部を経て吹出口本体内へ流入する調和空気の流量を吹出口本体に対するダンパ部の上下移動で調整可能とすることに加え、吹出口本体内部を仕切り部で外側の開口領域と中央の開口領域に分け、吹出口本体の床下側開口部のうち外側の開口領域の下側にあたる部位をダンパ部で必要に応じて閉止して、外側の開口領域への調和空気の流入を阻止可能とし、且つこの外側の開口領域への調和空気の流入を阻止する一方で、中央の開口領域に流入する調和空気の流量をダンパ部で調整可能とすることにより、吹出口本体の外側の開口領域と中央の開口領域の両方に調和空気を導入して、フェース部の全ての吹出開口部から調和空気を吹出す状態から、ダンパ部の移動で調和空気の流量を小さくしていくと、ダンパ部で吹出口本体の外側の開口領域への調和空気の流入を阻止して、中央の開口領域にのみ調和空気を導入し、この調和空気をフェース部中央の第一の吹出開口部のみから集中的に吹出す状態に切替わることとなり、調和空気の流量を小さくするのと共に実際に調和空気が吹出す開口部の面積を小さくでき、調和空気の流量を小さくした場合でも吹出速度の低下が抑えられ、調和空気を居住域の範囲に確実に到達させることができ、例えば上向きに進行しにくい冷房の場合に調和空気の流量を小さくしても、居住域に対し無理なく空気調和を行える。
【0009】
また、本発明に係る床吹出口装置は必要に応じて、前記ダンパ部が、前記吹出口本体の床下側開口部全体にわたる大きさとされ、前記中央の開口領域の下側にあたる部位の所定箇所に、前記中央の開口領域へ床下空間から調和空気を流入可能とする空気流通孔部を設けられ、吹出口本体に対し、吹出口本体と仕切り部の各下端部から離れた状態と、吹出口本体と仕切り部の各下端部に接して、吹出口本体の床下側開口部のうち外側の開口領域の下側にあたる部位を閉止する状態とを切替可能とされる第一ダンパと、当該第一ダンパの下側に配設され、第一ダンパから離れて前記空気流通孔部を開放する状態と、第一ダンパに接して空気流通孔部を閉止する状態とを切替可能とされる第二ダンパとを有してなり、前記第一の流量調整状態では、第一ダンパと第二ダンパが所定間隔で上下に離隔した位置関係を維持しつつ吹出口本体に対し一体に上下移動可能とされ、前記第二の流量調整状態では、第一ダンパが吹出口本体と仕切り部の各下端部に接して動かない一方、第二ダンパが吹出口本体及び第一ダンパに対し上下移動可能とされるものである。
【0010】
このように本発明によれば、ダンパ部が、吹出口本体の床下側開口部全体にわたる大きさの第一ダンパと、この第一ダンパの中央部の空気流通孔部を開閉可能とする第二ダンパとの組合せ構造とされ、ダンパ部の第一の流量調整状態では、第一ダンパと第二ダンパを一体に上下移動させて、空気流通孔部を通じて中央の開口領域への調和空気の流入を許容しつつ、外側の開口領域に流入する調和空気の流量を調整し、ダンパ部の第二の流量調整状態では、第一ダンパを吹出口本体と仕切り部に当接させて外側の開口領域への流入を制限した上で、第二ダンパを動かして、中央の開口領域に流入する調和空気の流量を調整できると共に、第二ダンパを第一ダンパに接するまで動かすと、空気流通孔部を閉止して中央の開口領域に調和空気を流入させない全閉状態が得られることにより、第一ダンパと第二ダンパを用いて第一の流量調整状態と第二の流量調整状態とでそれぞれ適切に調整を実行可能な機構を簡略に実現できると共に、第二ダンパで空気流通孔部を閉止して全閉状態とすれば、床吹出口装置から調和空気の吹出を行わないようにすることもでき、空気調和対象空間の状況に応じて吹出状態を柔軟に調整できる。
【0011】
また、本発明に係る床吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体内に配設され、一部を吹出口本体に連結されると共に、他部を前記ダンパ部の第二ダンパに連結され、第二ダンパを上下に移動させる昇降機構を備え、前記ダンパ部の第一ダンパが、第二ダンパの上側に弾性変形可能な支持部材を介在させて配設され、前記支持部材が、前記第一の流量調整状態では、第一ダンパと第二ダンパとの離隔状態を維持して第一ダンパを第二ダンパと一体に移動可能とする一方、前記第二の流量調整状態では、弾性変形して第二ダンパの第一ダンパに対する移動を許容するものである。
【0012】
このように本発明によれば、第二ダンパを上下に移動させる昇降機構を設けると共に、弾性変形可能な支持部材を介して第二ダンパで第一ダンパを下から支持するようにして、第一ダンパと第二ダンパを一体に上下移動可能で、且つ第一ダンパに対する第二ダンパの相対移動を支持部材の変形で許容可能とすることにより、第一ダンパと第二ダンパを共に動かして、外側の開口領域に流入する調和空気の流量を調整する状態と、第一ダンパで外側の開口領域への調和空気の流入を制限しつつ、第二ダンパを第一ダンパに対し移動させて、中央の開口領域への調和空気の流入を調整する仕組みを極めて簡略な機構で実現でき、装置コストを抑えられると共に、機構の安定性や信頼性を高められ、適切且つ無理のない吹出状態の調整が行える。
【0013】
また、本発明に係る床吹出口装置は必要に応じて、前記ダンパ部の第一ダンパが、所定の大きさの下向きの凹部を設けられた形状とされてなり、前記第二ダンパが、第一ダンパに接して第一ダンパの空気流通孔部を閉止する状態まで移動すると、第一ダンパの凹部に収まって第一ダンパの下端より上側に位置するものである。
【0014】
このように本発明によれば、第一ダンパに下向きの凹部を設け、第二ダンパを第一ダンパに接するまで移動させると、第二ダンパが第一ダンパの凹部に収まるようにして、第二ダンパが第一ダンパの下端より下に露出しない状態にできることにより、必要に応じて第二ダンパを第一ダンパの凹部に収めるようにすれば、第二ダンパに外部からの力が直接加わりにくい状態が容易に得られることとなり、例えば、輸送時等に第二ダンパに外力が加わって第二ダンパ他の破損を招くような事態を確実に防げる。
【0015】
また、本発明に係る床吹出口装置は必要に応じて、前記昇降機構が、雌ねじを設けられた所定のロータを回転させるように作動可能として吹出口本体に一体に取り付けられるモータと、当該モータにおけるロータの雌ねじに螺合させて配設され、下端部を前記第二ダンパに固定されるねじ軸とを有してなり、前記モータのロータの回転で、ロータの雌ねじに螺合するねじ軸をモータに対し相対移動させて、第二ダンパを上下動させるものである。
【0016】
このように本発明によれば、ダンパ部を上下動させる昇降機構が、下端部を第二ダンパに一体に取り付けられたねじ軸と、このねじ軸に螺合するロータを有して吹出口本体に取り付けられ、ロータを回転させてねじ軸を上下に動かすモータとからなり、モータでねじ軸を動かすことで第二ダンパをはじめとするダンパ部を上下動させることにより、簡略な機構でダンパ部の第二ダンパに移動のための力を効率よく付与して、確実にダンパ部を上下動させることができ、ダンパ部による調和空気の流量調整が無理なく行えると共に、第二ダンパの上側に支持された第一ダンパに対し適切に上向きの力を付与して、第一ダンパを吹出口本体や仕切り部の下端部に当接させた状態を安定的に維持でき、外側の開口領域への調和空気の流入を第一ダンパで阻止する状態を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る床吹出口装置の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る床吹出口装置の床設置状態における縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る床吹出口装置の第一の状態における縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る床吹出口装置の第二の状態における縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る床吹出口装置の第三の状態における縦断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る床吹出口装置の床設置状態における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る床吹出口装置を前記
図1ないし
図5に基づいて説明する。本実施形態では、床スラブ等の下地部分の上側に床パネルを所定寸法空けて配設した、床下空間のある二重床構造の床に設けられ、空気調和対象の室内空間に面する、床吹出口装置の例について説明する。
【0019】
前記各図において本実施形態に係る床吹出口装置1は、空気調和対象空間となる室内空間に面する床60に配設され、室内空間側及び床下空間側にそれぞれ連通する開口部を配置されてなる略箱状の吹出口本体10と、この吹出口本体10上側で吹出開口部21、22を複数配置されて床面の一部をなすフェース部20と、吹出口本体10内に配設される略筒状の仕切り部30と、吹出口本体10の下側に吹出口本体10に対し上下動可能に配設されるダンパ部40と、吹出口本体10内に配設されてダンパ部40を上下に移動可能とする昇降機構50とを備える構成である。
【0020】
前記吹出口本体10は、空気供給用通路としての床下空間90に連通する床下側開口部11を下部に設けられると共に、室内空間70に連通する床面側開口部12を上部に設けられる中空円筒状の略箱状体で形成される構成である。この吹出口本体10は、床60に設けられた吹出口設置用の開口部に挿入されることで床に配設される。吹出口本体10の上端部は、外側方へ鍔状に拡張形成され、この上端の鍔状部分のみが床60の上側に位置することとなる。
【0021】
吹出口本体10上部には、開口断面形状が円形の床面側開口部12が設けられており、この床面側開口部12に対し、吹出口本体10とは別体となる前記フェース部20が嵌合配設される。床面側開口部12に面する吹出口本体10内周には、フェース部20を載置可能な段部分が形成されており、フェース部20表面を床面と略同じ高さに支持する仕組みである。
【0022】
また、吹出口本体10内部には、その内部空間を横断する配置とされて、仕切り部30や昇降機構50を固定状態で取り付けられる板状の支持部17が設けられる。
【0023】
この吹出口本体10には、調和空気の供給用通路としての床下空間90を通じて供給される調和空気が床下側開口部11から内部に導入されることとなる。この調和空気を、吹出口本体10内部を経由して上側のフェース部20における吹出開口部21、22に到達させ、これら吹出開口部21、22を通じて室内空間に吹出せる仕組みである。
【0024】
前記フェース部20は、上側に人や物が載っても容易に変形しない、強度のある円形の略板状体で形成され、吹出開口部21、22としての貫通孔を複数穿設配置され、吹出口本体10の床面側開口部12に前記貫通孔を連通させて吹出口本体10の上側に配設され、床面の一部をなすものである。
【0025】
このフェース部20に設けられる複数の貫通孔は、長孔形状とされてフェース部20の中央部に平行に並べて配置される第一の吹出開口部21と、フェース部20の外周寄りにフェース部中心に対し回転対称として配置される第二の吹出開口部22との二組に分けられる。
【0026】
前記第一の吹出開口部21は、フェース部20の中央部に平行に等間隔で並ぶ配置で複数穿設される長孔であり、いずれもフェース部20表面に対し直角となる向きの孔とされる構成である。
【0027】
前記第二の吹出開口部22は、円形のフェース部20の中心を配列の中心として、等角度間隔で且つ回転対称をなす配置で複数穿設される長孔である。これら吹出開口部22はいずれも、フェース部20表裏面において略スリット状の長孔形状とされる孔開口の長手方向延長線がフェース部20中心を通らずにずれる配置として穿設されている。また、第二の吹出開口部22は、フェース部20表面と裏面の孔開口位置を、孔長手方向に直交する向きへ互いにずらした配置として穿設されて、上下方向に対し傾斜した孔形状とされる構成である。
【0028】
前記仕切り部30は、円筒体として形成され、支持部17に取り付けられて吹出口本体10内に配設され、吹出口本体内部の空間を中央の開口領域14とこの中央の開口領域14を取り囲む外側の開口領域15との二つに分けるものである。
【0029】
仕切り部30の上端はフェース部20の下面に近接させて配設されると共に、仕切り部上端とフェース部下面との間には弾性材製のガスケットが介設されて、仕切り部30とフェース部20との間で気密を確保して、この部位を通じて中央の開口領域14と外側の開口領域15との間で調和空気の流通が生じることのないようにしている。
【0030】
仕切り部30で仕切られた吹出口本体10内における中央の開口領域14の上側にあたるフェース部20の中央部には、第一の吹出開口部21が配置されており、中央の開口領域14を通った調和空気の気流はフェース部20の第一の吹出開口部21から吹出す。また、吹出口本体10内における外側の開口領域15の上側にあたるフェース部20の外周寄り部分には、第二の吹出開口部22が配置されており、外側の開口領域15を通った調和空気の気流は、フェース部20の第二の吹出開口部22から吹出すこととなる。
【0031】
前記ダンパ部40は、吹出口本体10の下側に吹出口本体10に対し上下動可能に配設され、吹出口本体10下部との間の隙間量を変化させて、床下空間90から床下側開口部11を経て吹出口本体10内に流入する調和空気の流量を調整可能とするものである。
【0032】
このダンパ部40は、吹出口本体10の床下側開口部11全体にわたる大きさとされる第一ダンパ41と、第一ダンパ41の下側で且つ前記中央の開口領域14の下側に位置する第二ダンパ42と、第一ダンパ41と第二ダンパ42との間に介在させて配設される弾性変形可能な支持部材43とを備える構成である。
【0033】
前記第一ダンパ41は、中央部が円錐台状に盛り上がった、円形の皿を伏せたような形状として形成され、吹出口本体10の下側に上下動可能に配設され、中央の開口領域14の下側にあたる部位の所定箇所に、この中央の開口領域14へ床下空間90から調和空気を流入可能とする空気流通孔部41aを穿設される構成である。
【0034】
前記第二ダンパ42は、第一ダンパ41より小さい、底部中央を凸状に突出させた円形の略皿状体として形成され、前記昇降機構50の下端部に取り付けられて、第一ダンパ41の下側に位置するように配設され、昇降機構50による駆動で上下に移動可能とされる構成である。
【0035】
この第二ダンパ42には、一端部を第二ダンパ42の底部に固定されて上方に起立状態となるガイド軸44が設けられる。ガイド軸44は、第一ダンパ41を貫通すると共に、吹出口本体10内の支持部17に設けられた孔に上下に摺動可能に挿入されることで、吹出口本体10に対する移動方向を上下方向のみに制限される。こうしてガイド軸44の移動方向を制限することで、第二ダンパ42の吹出口本体10に対する移動の向きを上下方向のみとするよう拘束する仕組みである。
【0036】
この第二ダンパ42の上側に、コイルばねである支持部材43が、ガイド軸44を取り巻く配置として配設され、さらに支持部材43の上側に第一ダンパ41が載置されて配設される。なお、第一ダンパ41は、これを貫通するガイド軸44の外周面に摺接するように配設されており、第二ダンパ42に対する相対移動の向きや吹出口本体10に対する移動の向きを上下方向のみに制限される。
【0037】
この第一ダンパ41が、弾性変形可能な支持部材43を介して第二ダンパ42の上側に配設されることで、第一ダンパ41が吹出口本体10と仕切り部30の各下端部に接していない、上下動可能範囲にある状態では、支持部材43が第一ダンパ41と第二ダンパ42との離隔状態を維持して、昇降機構50で動かされる第二ダンパ42と一体に第一ダンパ41が吹出口本体10に対し移動可能となる。
【0038】
こうして、第一ダンパ41は、吹出口本体10に対し第二ダンパ42と共に上下に移動して、吹出口本体10と仕切り部30の各下端部から離れた状態と、吹出口本体10と仕切り部30の各下端部に接して、吹出口本体10の床下側開口部11のうち前記外側の開口領域15の下側にあたる部位を閉止する状態とを切替可能とされる。
【0039】
一方、第一ダンパ41が吹出口本体10と仕切り部30の各下端部に接した状態では、昇降機構50の第二ダンパ42を動かそうとする力に伴って支持部材43が弾性変形して、第二ダンパ42の第一ダンパ41に対する移動を許容することで、第二ダンパ42が吹出口本体10及び第一ダンパ41に対し上下に移動可能とされることとなる。
【0040】
こうして、第二ダンパ42は、第一ダンパ41から離れて第一ダンパ41の空気流通孔部41aを開放する状態と、第一ダンパ41に接して第一ダンパ41の空気流通孔部41aを閉止する状態とを切替可能とされる。
【0041】
そして、ダンパ部40としては、所定間隔をなす第一ダンパ41と第二ダンパ42を一体に上下移動させて、空気流通孔部41aを通じた吹出口本体10の中央の開口領域14への調和空気の流入を許容しつつ、床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する状態(第一の流量調整状態)と、床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位を第一ダンパ41で閉止した上で、床下側開口部11のうち中央の開口領域14の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を第二ダンパ42で調整する状態(第二の流量調整状態)とを、切替可能となっている。
【0042】
この他、ダンパ部40の第一ダンパ41は、皿を伏せたような形状とされて、第二ダンパ42より大きい下向きの凹部41bを設けられており、第二ダンパ42が第一ダンパ41に接して空気流通孔部41aを閉止する状態まで移動すると、第二ダンパ42が第一ダンパ41の凹部41bに収まり、第一ダンパ41の下端より上側に位置することとなる。
【0043】
この場合、輸送時等、必要に応じて第二ダンパ42を第一ダンパ41の凹部41bに収めるようにすれば、第二ダンパ42に外部からの力が直接加わりにくい状態が容易に得られ、第二ダンパ42に外力が加わって第二ダンパ他の破損を招くような事態を防止できる。
【0044】
前記昇降機構50は、吹出口本体10内に配設され、一部を吹出口本体10に連結されると共に、他部をダンパ部40の第二ダンパ42に連結され、これら一部と他部との相対位置関係を変化させて、第二ダンパ42を上下に移動させるものである。
【0045】
詳細には、昇降機構50は、内部に雌ねじが設けられたロータ52を回転させるモータ51と、このモータ51のロータ52に螺合して配設され、下端部を第二ダンパ42に連結固定されるねじ軸53とを有する構成である。
【0046】
昇降機構50では、吹出口本体10の支持部17に連結固定されたモータ51がロータ52を回転させることで、ロータ52に螺合するねじ軸53を上下動させて、このねじ軸53と一体の第二ダンパ42を上下動させる仕組みである。
【0047】
この昇降機構50と共に、モータ51の作動状態を制御して、ダンパ部40の位置を変化させ、吹出口本体10に流入させる調和空気の流量を調整可能とする制御部55と、この制御部55と接続され、室内空間70で調和空気の流量に係る使用者の入力操作を受ける操作部56とが設けられる。
【0048】
前記制御部55は、吹出口本体10近くに配設され、操作部56及び昇降機構50のモータ51と電気的に接続されて、室内空間に面する操作部56から、使用者の操作に基づく指示入力を受け、操作ごとにあらかじめ設定された制御内容に従ってモータ51を作動させて、ダンパ部40を上下方向に移動させるものである。
【0049】
この制御部55は、使用者の操作に基づいてモータ51の作動を制御し、ダンパ部40の上下方向の位置を変化させることで、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間の大きさや、ダンパ部40における第一ダンパ41と第二ダンパ42との間の隙間の大きさを変化させる。これにより、床下空間90から床下側開口部11を通じて吹出口本体10内の中央の開口領域14や外側の開口領域15に流入させる調和空気の流量を調整して、各吹出開口部21、22から吹出される調和空気の風量や吹出範囲を所望の状態に設定できる仕組みである。
【0050】
制御部55は、例えば、ダンパ部40が可動範囲の最も下側に位置して調和空気の流量が最大となる状態(
図2参照)を初期状態とし、初期状態からダンパ部40を動かしてダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間を小さくし、調和空気の流量が流量最大状態の約2/3となる第一の状態(
図3参照)、この第一の状態からダンパ部40をさらに動かしてダンパ部40の第一ダンパ41が吹出口本体10と仕切り部30の各下端部に接すると共に第一ダンパ41と第二ダンパ42との間の隙間を小さくして、調和空気の流量が流量最大状態の約1/3となる第二の状態(
図4参照)、この第二の状態から第二ダンパ42をさらに動かして第二ダンパ42が第一ダンパ41に接し、調和空気の流量が0となる第三の状態(
図5参照)、の各状態が、操作部56が使用者に操作されるごとに順次切り替わるようにする。
【0051】
そして、第三の状態、すなわち第二ダンパ42が第一ダンパ41の空気流通孔部41aを閉止した全閉状態、で使用者が操作部56の操作を行った場合には、制御部55は、モータ51を上記とは逆向きに作動させてダンパ部40を下方に動かし、ダンパ部40が可動範囲の最も下側に位置して調和空気の流量を最大とする初期状態(
図2参照)に復帰させ、以降は前記同様に、操作部56が使用者に操作されるごとに、第一の状態、第二の状態、第三の状態に順次切り替える処理が繰り返されることとなる。
【0052】
前記操作部56は、フェース部20中央に埋め込まれる状態で配設されて、室内空間から調和空気の吹出状態の調整に係る操作を可能とするものである。この操作部56には、例えば押しボタン式のスイッチを用いることができ、使用者の入力操作を受けて、開閉状態が切り替えられたことを電気的に接続された制御部55で検知することで、制御部55が操作を認識し、モータ51を作動させることとなる。
【0053】
この操作部56は、フェース部20に配設されて吹出口装置1と一体化されたものに限られず、リモコン等の専用端末や、汎用の携帯通信端末、パーソナルコンピュータ等の機器でもよい。
【0054】
そして、遠隔操作となる場合、操作部56と制御部55との通信は、リモコン等で一般的な赤外線式や電波式の他、例えばIEEE 802.11シリーズやIEEE 802.15シリーズの規格方式に代表される無線通信を用いることもできる。
なお、操作部56の近傍のフェース部20中央に、ダンパ部40の移動により調整された調和空気の風量を示す表示部を設けるようにすることもできる。
【0055】
次に、前記構成に基づく床吹出口装置における吹出状態について説明する。前提として、初期状態では、吹出口本体10下側のダンパ部40があらかじめ設定された最下方の位置に位置調整されており、吹出気流全体の風量がその調整可能な範囲で最大(例えば、約150CMH)とされているものとする。
【0056】
図2に示すように、ダンパ部40が最も下側に位置する初期状態では、床60の下側の床下空間90を通じて供給される調和空気が、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間を経て、吹出口本体10内に入る。
【0057】
詳細には、ダンパ部40の第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通って、床下空間90から吹出口本体10内に調和空気が進行すると共に、ダンパ部40の第一ダンパ41と第二ダンパ42との間、及び、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通って、調和空気が吹出口本体10内に進行する。
【0058】
ダンパ部40の第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通った調和空気は、吹出口本体内の主に外側の開口領域15に向かい、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通った調和空気は、主に中央の開口領域14に向かう。ただし、第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通った調和空気の一部が、第一ダンパ41と仕切り部30との間を通って、中央の開口領域14に向かったり、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通った調和空気の一部が、第一ダンパ41と仕切り部30との間を通って、外側の開口領域15に向かうこともある。
【0059】
調和空気は、吹出口本体10の内部を上向きに進み、上方の床面側開口部12を経て、フェース部20の各吹出開口部21、22に達する。吹出口本体10の内部で、仕切り部30の内側となる中央の開口領域14を通った調和空気は、フェース部20の第一の吹出開口部21を通じて上向きに室内空間に吹出す。
【0060】
一方、仕切り部30より外となる外側の開口領域15を通った調和空気は、第二の吹出開口部22を通過する過程で傾斜した孔形状により進行方向を変えられ、各吹出開口部22に応じた斜め上向きにそれぞれ吹出すこととなる。
【0061】
そして、各吹出開口部22を通過した調和空気の気流は、回転対称関係として配置された各吹出開口部22から所定角度の斜め上にそれぞれ吹出した後合成され、上方へ向けて渦巻状に旋回しつつ上向きに進行する旋回流になる。
【0062】
ただし、第一の吹出開口部21からの上向きの気流の影響で、調和空気の吹出気流全体の上向きに進行する速度成分が強くなっており、前記第二の吹出開口部22からの気流が合成された旋回流も横方向にあまり広がらず室内空間を上向きに進む吹出状態が得られる。
【0063】
こうして、床吹出口装置1から調和空気の気流を上向きに室内空間へ十分な風量として吹出して、調和空気の気流を室内空間の居住域の範囲に無理なく到達させて空気調和を実行する状態が得られる。
【0064】
続いて、室内空間における使用者が、操作部56への一回の押操作を行って、初期状態から調和空気の流量がより少ない前記第一の状態(
図3参照)に切り替えた場合の吹出状態について説明する。
【0065】
使用者が操作部56への一回の押操作を行うと、操作部56への操作に基づいて制御部55がモータ51を作動させ、ダンパ部40の第一ダンパ41及び第二ダンパ42を上方へあらかじめ設定された所定量(例えば、15mm)移動させる。ダンパ部40の上方への移動に伴い、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間は小さくなり、ダンパ部40の第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通って吹出口本体10内への流入する調和空気の量は減少する。
【0066】
また、ダンパ部40と吹出口本体10間の隙間が小さくなることで、第一ダンパ41と仕切り部30との間の隙間も小さくなっており、この隙間を調和空気が通過しにくくなるのに伴い、ダンパ部40の第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通った調和空気は、ほとんど外側の開口領域15に向かう。そして、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通った調和空気は、ほとんど中央の開口領域14に向かう。
【0067】
なお、第一ダンパ41が仕切り部30下端に近付く一方で、第一ダンパ41と第二ダンパ42との間隔は維持されており(
図3参照)、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通って吹出口本体10内に入る調和空気の量は初期状態の場合とほとんど変わらない。
【0068】
調和空気は、初期状態の場合と同様、吹出口本体10の内部を上向きに進み、上方の床面側開口部12を経て、フェース部20の各吹出開口部21、22に達する。吹出口本体10の内部で、中央の開口領域14を通った調和空気が、フェース部20の第一の吹出開口部21を通じて上向きに室内空間に吹出し、外側の開口領域15を通った調和空気が、第二の吹出開口部22を通過してこれら各吹出開口部22に応じた斜め上向きにそれぞれ吹出す。そして、各吹出開口部22を通過した気流は、各吹出開口部22から斜め上にそれぞれ吹出した後合成され、上方へ向けて渦巻状に旋回しつつ進行する旋回流になる。
【0069】
ただし、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間が小さくなった分、床下空間90からダンパ部40の第一ダンパ41外周と吹出口本体10との間の隙間を通り、吹出口本体10内の外側の開口領域15に進行する調和空気の量は初期状態より減少しているので、外側の開口領域15から第二の吹出開口部22を通って吹出す調和空気の量も減っている。
【0070】
しかし、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通って吹出口本体10内の中央の開口領域14に入る調和空気の量は上記の隙間減少の影響を受けておらず、この中央の開口領域14からフェース部20の第一の吹出開口部21を通じて上向きに室内空間に吹出す調和空気の量は初期状態とほぼ変わらないことから、第二の吹出開口部22からの吹出量が減った分、フェース部20中央の第一の吹出開口部21から吹出す調和空気の気流の影響が強まり、第二の吹出開口部22から吹出した旋回流もあまり周囲に拡散せずに上方に進行することで、調和空気全体の吹出量は設定により初期状態の約2/3に減少しているものの、到達距離を十分確保できる。
【0071】
こうして、床吹出口装置1から、全体の吹出量は初期状態より少ないものの、調和空気の気流を上向きに室内空間へ吹出して、調和空気の気流を室内空間の居住域の範囲に確実に到達させて空気調和を実行する状態が得られる。
【0072】
さらに、室内空間における使用者が、操作部56への一回の押操作を行って、第一の状態から調和空気の流量がより少ない前記第二の状態(
図4参照)に切り替えた場合の吹出状態について説明する。
【0073】
使用者が操作部56への一回の押操作を行うと、操作部56への操作に基づいて制御部55がモータ51を作動させ、ダンパ部40を上方へ所定量移動させ、ダンパ部40の第一ダンパ41と吹出口本体10及び仕切り部30とを当接させる。この当接に伴い、第一ダンパ41と吹出口本体10との間の隙間や、第一ダンパ41と仕切り部30との間の隙間がなくなることで、吹出口本体10内部の外側の開口領域15には調和空気は進入せず、外側の開口領域15に通じる第二の吹出開口部22からは調和空気は吹出さない状態となる。また、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通った調和空気は、全てが中央の開口領域14に向かう。
【0074】
また、この第一ダンパ41が仕切り部30下端に接してそれ以上上方に動かない状態では、モータ51の作動によりねじ軸53と一体の第二ダンパ42が支持部材43を変形させながら上昇して第一ダンパ41に近付くことで、第一ダンパ41と第二ダンパ42との間隔は小さくなり(例えば、約15mmとなる)、第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通って吹出口本体10内に入る空気の量は初期状態や第一の状態の場合より少なくなる。
【0075】
調和空気の気流は、外側の開口領域15に進入できないので、吹出口本体10内の中央の開口領域14のみを上向きに進み、上方の床面側開口部12を経て、フェース部20の第一の吹出開口部21に達する。調和空気は、第一の吹出開口部21を通じて上向きに室内空間に吹出す。
【0076】
第一ダンパ41の空気流通孔部41aを通って吹出口本体10内の中央の開口領域14に入る調和空気の量は、第一ダンパ41と第二ダンパ42との間隔が小さくなった分、減少しており、この中央の開口領域14からフェース部20の第一の吹出開口部21を通じて上向きに室内空間に吹出す調和空気の流量は初期状態や第一の状態の場合より少ない。
【0077】
しかし、フェース部20外周寄りの第二の吹出開口部22からの吹出が一切無く、中央の第一の吹出開口部21からのみ調和空気が吹出すようになっており、調和空気の通過する吹出開口部の面積が減ることで、調和空気全体の吹出量は設定により初期状態の約1/3に減少しているものの、吹出速度の低下が生じず、到達距離を十分確保できる。
【0078】
こうして、床吹出口装置1から、吹出量は少ないものの、調和空気の気流を上向きに吹出速度を低下させることなく吹出して、調和空気の気流を室内空間の居住域の範囲に十分に到達させて、空気調和を効率よく実行する状態が得られる。
【0079】
この他、室内空間における使用者が、操作部56への一回の押操作を行って、第二の状態から、調和空気の吹出しがない前記第三の状態(
図5参照)に切り替えた場合について説明する。
【0080】
使用者が操作部56への一回の押操作を行うと、操作部56への操作に基づいて制御部55がモータ51を作動させ、ダンパ部40の第二ダンパ42を上方へ所定量移動させ、第一ダンパ41と第二ダンパ42との間隔をさらに小さくしていき、最終的に第二ダンパ42と第一ダンパ41とを当接させる。この当接に伴い、第一ダンパ41の空気流通孔部41aが閉塞され、調和空気の中央の開口領域14への流入はなくなる。
【0081】
この時、第一ダンパ41は移動せず、吹出口本体10及び仕切り部30と当接した状態を維持しているため、第一ダンパ41と吹出口本体10との間の隙間や、第一ダンパ41と仕切り部30との間の隙間もなく、吹出口本体10内の外側の開口領域15に調和空気が進入することはない。
こうして、吹出口本体10内への調和空気の流入がないことで、フェース部20の各吹出開口部21、22からの調和空気の吹出しもない状態となる。
【0082】
この調和空気の吹出しがない第三の状態から、使用者が操作部56への一回の押操作を行うと、操作部56への操作に基づいて制御部55がモータ51をこれまでとは逆向きに作動させ、はじめにダンパ部40の第二ダンパ42を下方へ移動させ、押し縮められていた支持部材43を伸びるように変形させながら第一ダンパ41と第二ダンパ42との間隔を大きくしていき、最終的に支持部材43が十分に伸びて第一ダンパ41が吹出口本体10及び仕切り部30に押し付けられず、これらから離れて第二ダンパ42と共に動く状態とする。
【0083】
制御部55はモータ51をさらに作動させ、ダンパ部40の第一ダンパ41及び第二ダンパ42を下方へ移動させる。ダンパ部40の下方への移動に伴い、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間は大きくなり、ダンパ部40と吹出口本体10との間の隙間を通って吹出口本体10内への調和空気の流入を許容する状態となる。
【0084】
ダンパ部40が可動範囲の最も下側の位置に達すると制御部55はモータ51を停止させる。こうして、ダンパ部40が可動範囲の最も下側に位置して調和空気の流量が最大となる初期状態(
図2参照)に復帰することとなる。これ以降は、使用者が操作部56を操作するごとに前記同様の状態の切替えと初期状態への復帰が繰り返される。
【0085】
このように、本実施形態に係る床吹出口装置においては、吹出口本体10の下側に上下移動で吹出口本体10との間の隙間量を変えるダンパ部40を設けて、床下空間90から吹出口本体内へ流入する調和空気の流量を吹出口本体10に対するダンパ部40の上下移動で調整可能とすることに加え、吹出口本体内部を仕切り部30で外側の開口領域14と中央の開口領域15に分け、吹出口本体10の床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位をダンパ部40の第一ダンパ41で必要に応じて閉止して、外側の開口領域15への調和空気の流入を阻止可能とし、且つこの外側の開口領域15への調和空気の流入を阻止する一方で、中央の開口領域14に流入する調和空気の流量をダンパ部40の第二ダンパ42で調整可能とすることから、吹出口本体10の中央の開口領域14と外側の開口領域15の両方に調和空気を導入して、フェース部20の全ての吹出開口部21、22から調和空気を吹出す状態から、ダンパ部40の移動で調和空気の流量を小さくしていくと、ダンパ部40で吹出口本体10の外側の開口領域15への調和空気の流入を阻止して、中央の開口領域14にのみ調和空気を導入し、この調和空気をフェース部中央の第一の吹出開口部21のみから集中的に吹出す状態に切替わることとなり、調和空気の流量を小さくするのと共に実際に調和空気が吹出す開口部の面積を小さくでき、調和空気の流量を小さくした場合でも吹出速度の低下が抑えられ、調和空気を居住域の範囲に確実に到達させることができ、例えば上向きに進行しにくい冷房の場合に調和空気の流量を小さくしても、居住域に対し無理なく空気調和を行える。
【0086】
なお、前記実施形態に係る床吹出口装置においては、ダンパ部40を互いに相対移動可能な第一ダンパ41と第二ダンパ42との組合せで形成する構成としているが、これに限られるものではなく、例えば、
図6に示すように、吹出口本体10の床下側開口部11のうち、外側の開口領域15の下側にあたる部位の閉止状態をダンパ部45の一部で維持したまま、床下側開口部11のうち中央の開口領域14の下側にあたる部位について、ダンパ部45の上下移動による吹出口本体内に流入する調和空気の流量調整が許容される構造を採用できるのであれば、一体構造のダンパ部45を用いる構成とすることもできる
【0087】
また、前記実施形態に係る床吹出口装置においては、昇降機構50をなすモータ51を作動させることで、ねじ軸52と一体の第二ダンパ42を動かし、ダンパ部40全体を上下に移動させられる構成としているが、これに限られるものではなく、例えば、下端部を第二ダンパ42に回転可能に取り付けられたねじ軸を、吹出口本体10の支持部17に設けた雌ねじに螺合して配設し、ねじ軸上端部には室内側から吹出口本体内に差し込んだ操作用器具を係合可能な係合部を形成して、吹出口本体に流入する調和空気の流量を調整する場合には、フェース部に設けた貫通孔を通じて操作用器具端部をねじ軸上端の係合部に係合させ、操作用器具を介した室内空間側からの操作で吹出口本体に対しねじ軸を螺動させ、ダンパ部40を上下移動させるような、手動でダンパ部を動かして調整を行う構成を採用することもできる。
【0088】
また、前記実施形態に係る床吹出口装置においては、フェース部20中央の吹出開口部21を単純な上下方向の貫通孔とする構成としているが、これに限らず、フェース部中央の吹出開口部を斜め向きの貫通孔として、フェース部の各吹出開口部から吹出される調和空気の気流をこの中央の吹出開口部からの気流による影響で全体的に斜め上向きとなるようにする構成とすることもできる。この場合、フェース部を吹出口本体に対し回転可能とすれば、使用者がフェース部の向きを変えて調和空気の吹出方向を適宜調整できることとなる。さらに、フェース部20を単一の板状体として形成するのに代えて、フェース部を、吹出開口部を斜め向きとされた中央部と外周部とが別部品として分かれた組合せ構造とすると共に、中央部を外周部に対し回転可能として、使用者がフェース部中央部のみ向きを変えて、吹出し方向を容易に調整可能な構成とすることもできる。
【0089】
さらに、前記実施形態に係る床吹出口装置において、ダンパ部40は、床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第一の流量調整状態と、床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位をダンパ部40の一部で閉止しつつ、床下側開口部11のうち中央の開口領域14の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整する第二の流量調整状態とを、切替可能な構成としているが、これに限らず、ダンパ部が、第一の流量調整状態では、床下側開口部11のうち中央の開口領域14の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整するようにし、且つ、第二の流量調整状態では、床下側開口部11のうち中央の開口領域14の下側にあたる部位をダンパ部40の一部で閉止しつつ、床下側開口部11のうち外側の開口領域15の下側にあたる部位について、吹出口本体内に流入する調和空気の流量を調整するような構成としてもかまわない。
【符号の説明】
【0090】
1 床吹出口装置
10 吹出口本体
11 床下側開口部
12 床面側開口部
14 中央の開口領域
15 外側の開口領域
17 支持部
20 フェース部
21、22 吹出開口部
30 仕切り部
40、45 ダンパ部
41 第一ダンパ
41a 空気流通孔部
41b 凹部
42 第二ダンパ
43 支持部材
44 ガイド軸
50 昇降機構
51 モータ
52 ロータ
53 ねじ軸
55 制御部
56 操作部
60 床
70 室内空間
90 床下空間