(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】粉体燃料燃焼装置及び燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23C 99/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
F23C99/00 305
(21)【出願番号】P 2019036448
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597022540
【氏名又は名称】株式会社環境経営総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】519072176
【氏名又は名称】日台マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】松下 敬通
(72)【発明者】
【氏名】柏 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】丹野 信嗣
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-916(JP,A)
【文献】特開昭61-213406(JP,A)
【文献】特公昭35-592(JP,B1)
【文献】特開2012-17872(JP,A)
【文献】特開2012-197952(JP,A)
【文献】特開平6-158062(JP,A)
【文献】特開2018-179336(JP,A)
【文献】特開昭53-80836(JP,A)
【文献】特開2005-291539(JP,A)
【文献】特開2004-347270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体燃料を燃焼させる燃焼装置であって、
前記粉体燃料を内部で燃焼させる1次燃焼室と、前記1次燃焼室から排出された燃焼ガスを燃焼させる2次燃焼室を備え、
前記1次燃焼室は、前記粉体燃料を内部に供給する燃料供給装置と、内部に空気を供給する1次空気供給口と、内部の前記粉体燃料に着火する着火バーナが設けられ、
前記1次燃焼室の底部には、下方に向けて狭まるように傾斜する傾斜部と、内部に空気を供給する底部空気供給口と、前記傾斜部の下方位置に設けられた灰出口と、筒状で上下方向に向けて配置され上端及び下端に開口を有し前記下端が前記灰出口に向けて配置され内部に空気が供給される底部空気噴射ノズルが設けられ、
前記2次燃焼室には、内部を加熱して前記1次燃焼室から排出された燃焼ガスに着火する2次バーナと、内部に燃焼用の空気を供給する2次空気供給口が設けられ、
前記1次空気供給口及び前記底部空気供給口に空気を供給する1次空気供給装置と、前記底部空気噴射ノズルに空気を供給する噴射空気供給装置と、前記2次空気供給口に空気を供給する2次空気供給装置と、
前記燃料供給装置、前記着火バーナ、前記2次バーナ、前記1次空気供給装置、前記噴射空気供給装置、及び前記2次空気供給装置の作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記燃料供給装置により前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を所定量堆積させ、
堆積された前記粉体燃料に前記着火バーナによって着火を行うと共に、前記2次バーナを作動させて前記2次燃焼室内を加熱し、
前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際に、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記堆積された前記粉体燃料の完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給して前記1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させ、
前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料の直接燃焼に必要な空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給すると共に、前記燃料供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給して燃焼させ前記燃料供給装置をバーナとして作動させ、
前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際、及び前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記2次空気供給装置を作動させ、前記2次空気供給口から前記可燃性ガスの完全燃焼に必要な量の2次燃焼用空気を供給して前記可燃性ガスを燃焼させることを特徴とする粉体燃料燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体燃料燃焼装置であって、
前記1次燃焼室内の前記粉体燃料の燠火燃焼及び灰化を行う際に、前記燃料供給装置による燃料の供給を停止させると共に、前記底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させることを特徴とする粉体燃料燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉体燃料燃焼装置であって、
前記制御装置は、前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際、及び前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記底部空気噴射ノズルに定期的又は不定期で前記粉体燃料を攪拌可能な噴射量で空気を噴射するよう前記噴射空気供給装置を制御することを特徴とする粉体燃料燃焼装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粉体燃料燃焼装置であって、
前記燃料供給装置は、前記粉体燃料が投入される燃料用ホッパと、前記燃料用ホッパ内に上下方向に向けて配置され少なくとも下方に空気を噴射するホッパ用噴射ノズルと、前記ホッパ用噴射ノズルに空気を供給するホッパ用空気供給装置と、前記ホッパ用噴射ノズルの下方に設けられ前記粉体燃料を下方に送出する燃料送出装置と、前記粉体燃料と空気とが混合される混合管と、前記混合管に空気を供給する燃料用ブロワとを有し、
前記制御装置は、前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給する際に、前記燃料用ブロワを作動させると共に、前記燃料送出装置を作動させ、前記混合管の内部で前記粉体燃料と前記燃料用ブロワから供給される空気を混合させて前記混合管から前記1次燃焼室に前記粉体燃料を供給し、所定のタイミングで前記ホッパ用空気供給装置を作動させて前記ホッパ用噴射ノズルから空気を噴射することを特徴とする粉体燃料燃焼装置。
【請求項5】
粉体燃料燃焼装置によって粉体燃料を燃焼させる燃焼方法であって、
燃料投入行程、着火行程、ガス化燃焼行程、直接燃焼行程、及び燠火・灰化行程より構成され、
前記粉体燃料燃焼装置は、
前記粉体燃料を内部で燃焼させる1次燃焼室と、前記1次燃焼室から排出されたガスを燃焼させる2次燃焼室を備え、
前記1次燃焼室は、前記粉体燃料を内部に供給する燃料供給装置と、内部に空気を供給する1次空気供給口と、内部の前記粉体燃料に着火する着火バーナが設けられ、
前記1次燃焼室の底部には、下方に向けて狭まるように傾斜する傾斜部と、内部に空気を供給する底部空気供給口と、前記傾斜部の下方位置に設けられた灰出口と、筒状で上下方向に向けて配置され上端及び下端に開口を有し前記下端が前記灰出口に向けて配置され内部に空気が供給される底部空気噴射ノズルが設けられ、
前記2次燃焼室には、内部を加熱する2次バーナと、内部に燃焼用の空気を供給する2次空気供給口が設けられ、
前記1次空気供給口及び前記底部空気供給口に空気を供給する1次空気供給装置と、前記底部空気噴射ノズルに空気を供給する噴射空気供給装置と、前記2次空気供給口に空気を供給する2次空気供給装置と、
前記燃料供給装置、前記着火バーナ、前記2次バーナ、前記1次空気供給装置、前記噴射空気供給装置、及び前記2次空気供給装置の作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置により、
前記燃料投入行程では、前記燃料供給装置により前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を所定量堆積させ、
前記着火行程では、前記2次バーナによって前記2次燃焼室内を加熱し、前記2次燃焼室内が所定温度に達した後、前記堆積された前記粉体燃料に前記着火バーナによって着火し、
前記ガス化燃焼行程では、前記堆積された前記粉体燃料の完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給して前記1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させ、前記可燃性ガスを前記2次燃焼室内に導入し、前記2次空気供給口から2次燃焼用空気を供給して前記可燃性ガスを完全燃焼させ、
前記直接燃焼行程では、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料の直接燃焼に必要な空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給すると共に、前記燃料供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給して燃焼させ前記燃料供給装置をバーナとして作動させ、前記1次燃焼室から排出される燃焼ガスを前記2次燃焼室内に導入し、前記2次空気供給口から2次燃焼用空気を供給して前記燃焼ガスを完全燃焼させ、
前記燠火・灰化行程では、前記燃料供給装置による燃料の供給を停止させ、前記1次燃焼室内に残存する前記粉体燃料を燠火燃焼させて灰化させることを特徴とする粉体燃料燃焼方法。
【請求項6】
請求項5に記載の粉体燃料燃焼方法であって、
前記燠火・灰化行程において、前記底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させることを特徴とする粉体燃料燃焼方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の粉体燃料燃焼方法であって、
前記制御装置により、前記ガス化燃焼行程、及び前記直接燃焼行程において、前記底部空気噴射ノズルに定期的又は不定期で前記粉体燃料を攪拌可能な噴射量で空気を噴射するよう前記噴射空気供給装置を制御することを特徴とする粉体燃料燃焼方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の粉体燃料燃焼方法であって、
前記燃料供給装置は、前記粉体燃料が投入される燃料用ホッパと、前記燃料用ホッパ内に上下方向に向けて配置され少なくとも下方に空気を噴射するホッパ用噴射ノズルと、前記ホッパ用噴射ノズルに空気を供給するホッパ用空気供給装置と、前記ホッパ用噴射ノズルの下方に設けられ前記粉体燃料を下方に送出する燃料送出装置と、前記粉体燃料と空気とが混合される混合管と、前記混合管に空気を供給する燃料用ブロワとを有し、
前記燃料投入行程及び前記直接燃焼行程において、前記制御装置により、前記燃料用ブロワを作動させると共に、前記燃料送出装置を作動させ、前記混合管の内部で前記粉体燃料と前記燃料用ブロワから供給される空気を混合させて前記混合管から前記1次燃焼室に前記粉体燃料を供給し、所定のタイミングで前記ホッパ用空気供給装置を作動させて前記ホッパ用噴射ノズルから空気を噴射することを特徴とする粉体燃料燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体燃料を燃焼させる燃焼装置、及びその燃焼装置における燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粉炭を燃料として燃焼を行い、燃焼熱を回収して発電プラント等に過熱蒸気を供給するボイラが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のボイラは、中空形状で鉛直方向に沿って設置される火炉と、固体燃料と燃焼用空気とを混合した微粉炭混合気を火炉内に噴射するために鉛直方向に配置された三台の燃焼バーナを備えている。
【0003】
また、当該ボイラは、燃焼バーナより鉛直方向の下方で燃焼用空気を火炉内に噴射する炉底空気ノズルと、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴射方向を水平方向に調整可能な水平方向調整装置とを有している。特許文献1のボイラでは、このような構成とすることで、火炉内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制している。
【0004】
特許文献1に記載されたボイラは、公報の段落0027や0051等に記載されているように、燃料として主に石炭を粉砕した微粉炭を微粉燃料(固体燃料)として用いている。
【0005】
一方で、本願発明者等は、特許文献2に開示された炭化燃料製造装置及び炭化燃料製造方法を用いて、主に再利用のために回収された合成樹脂等を原料として質の高い炭化燃料を製造することを行っている。
【0006】
特許文献2に開示された炭化燃料製造装置及び炭化燃料製造方法によれば、回収された合成樹脂の質が悪く、再生に向いていない合成樹脂であっても、石炭に近いカロリーを有する炭化燃料とすることができる。このため、回収されたが再利用が難しいような合成樹脂や、埋め立て処分しかできないような合成樹脂についても、質の高い燃料として再生することができるので、合成樹脂の再資源化と埋め立て処分場の負担軽減等の優れた効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-145976号公報
【文献】国際公開公報WO2008/074189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1におけるボイラは、縦長の火炉において、縦方向に3箇所の燃焼バーナを設置し、微粉炭が火炉内で燃焼されるように構成しているが、未燃物は火炉の底部に堆積する。特許文献1においては、この火炉の底部に堆積した微粉炭に対して、炉底空気ノズルから燃焼用の空気を導入し、炉底内の未燃物の焼却を行っている。
【0009】
また、特許文献1におけるボイラでは、当該公報の
図9に表示されているように、炉底に灰や未燃分を貯留するホッパが設けられている。特許文献1のボイラでは、このホッパに貯留された灰や未燃分をホッパ底部に設置した未燃分量計測装置と未燃分分析装置にて分析して、炉底空気ノズルからの空気の噴射方向を調節し、未燃分量が減少するように制御している。
【0010】
特許文献1のように、未燃分量計測装置や未燃分分析装置、或いは空気ノズルの噴射方向を可変とする構成は、大型のプラントであれば、技術的又はコストの面で対応が可能である。しかしながら、小型の装置においては、装置の構造が複雑となり、設置コストが嵩む。また、これらの計測装置やノズルの可変機構については、日々のメンテナンスも必要となり、ランニングコストも上昇するという不都合がある。
【0011】
本発明は、上記不都合を解消するため、未燃分量計測装置や未燃分分析装置を設けることなく、また、燃焼室内への空気の噴射方向を可変とすることなく、燃焼室内の被燃焼物を効率よく灰化させることができる燃焼装置及び燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の粉体燃料燃焼装置は、粉体燃料を燃焼させる燃焼装置であって、前記粉体燃料を内部で燃焼させる1次燃焼室と、前記1次燃焼室から排出された燃焼ガスを燃焼させる2次燃焼室を備え、前記1次燃焼室は、前記粉体燃料を内部に供給する燃料供給装置と、内部に空気を供給する1次空気供給口と、内部の前記粉体燃料に着火する着火バーナが設けられ、前記1次燃焼室の底部には、下方に向けて狭まるように傾斜する傾斜部と、内部に空気を供給する底部空気供給口と、前記傾斜部の下方位置に設けられた灰出口と、筒状で上下方向に向けて配置され上端及び下端に開口を有し前記下端が前記灰出口に向けて配置され内部に空気が供給される底部空気噴射ノズルが設けられ、前記2次燃焼室には、内部を加熱して前記1次燃焼室から排出された燃焼ガスに着火する2次バーナと、内部に燃焼用の空気を供給する2次空気供給口が設けられ、前記1次空気供給口及び前記底部空気供給口に空気を供給する1次空気供給装置と、前記底部空気噴射ノズルに空気を供給する噴射空気供給装置と、前記2次空気供給口に空気を供給する2次空気供給装置と、前記燃料供給装置、前記着火バーナ、前記2次バーナ、前記1次空気供給装置、前記噴射空気供給装置、及び前記2次空気供給装置の作動を制御する制御装置を備えている。
【0013】
前記制御装置は、前記燃料供給装置により前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を所定量堆積させ、堆積された前記粉体燃料に前記着火バーナによって着火を行うと共に、前記2次バーナを作動させて前記2次燃焼室内を加熱し、前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際に、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記堆積された前記粉体燃料の完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給して前記1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させ、前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料の直接燃焼に必要な空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給すると共に、前記燃料供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給して燃焼させ前記燃料供給装置をバーナとして作動させ、前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際、及び前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記2次空気供給装置を作動させ、前記2次空気供給口から前記可燃性ガスの完全燃焼に必要な量の2次燃焼用空気を供給して前記可燃性ガスを燃焼させることを特徴とする。
【0014】
本発明の粉体燃料燃焼装置では、堆積された粉体燃料のガス化燃焼を行う際に、1次燃焼室に固定された1次空気供給口、底部空気供給口、及び底部空気噴射ノズルから空気を供給して1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させており、1次空気供給口、底部空気供給口のみならず、底部空気噴射ノズルからも空気を噴射している。本発明では、このような構成で粉体燃料の完全燃焼を行うことができるので、未燃性分の分析や1次空気供給ノズルの角度等を変更が不要となる。
【0015】
また、本発明の粉体燃料燃焼装置では、前記1次燃焼室内の前記粉体燃料の燠火燃焼及び灰化を行う際に、前記燃料供給装置による燃料の供給を停止させると共に、前記底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させてもよい。
【0016】
本発明の粉体燃料燃焼装置において、粉体燃料の成分によっては、1次燃焼室内の粉体燃料の燠火燃焼及び灰化を行う際、1次燃焼室及び2次燃焼室内で白煙が発生し、2次燃焼室よりも下流に設置されるサイクロン集塵機及びバグフィルタ等の装置に負荷がかかる場合があった。
【0017】
本願発明者等が鋭意検討を重ねた結果、燠火燃焼及び灰化を行う際に白煙が発生した場合、助燃バーナや2次バーナを用いて1次燃焼室及び2次燃焼室内を加熱するという方法を用いることなく、底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させることにより、この白煙の発生を防止することができることを知見した。従って、1次燃焼室内の粉体燃料の燠火燃焼及び灰化を行う際、1次燃焼室及び2次燃焼室内で白煙が発生する場合には、底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させればよい。
【0018】
また、本発明の粉体燃料燃焼装置において、前記制御装置は、前記堆積された前記粉体燃料のガス化燃焼を行う際、及び前記堆積された前記粉体燃料の直接燃焼を行う際に、前記底部空気噴射ノズルに定期的又は不定期で前記粉体燃料を攪拌可能な噴射量で空気を噴射するよう前記噴射空気供給装置を制御してもよい。
【0019】
当該制御により、前記底部空気噴射ノズルから噴射される定期的又は不定期の空気により粉体燃料が攪拌されるので、粉体燃料が炉底の壁面に固着するのを防止することができ、粉体燃料を効率よく燃焼させることができる。
【0020】
また、本発明の粉体燃料燃焼装置において、前記燃料供給装置は、前記粉体燃料が投入される燃料用ホッパと、前記燃料用ホッパ内に上下方向に向けて配置され少なくとも下方に空気を噴射するホッパ用噴射ノズルと、前記ホッパ用噴射ノズルに空気を供給するホッパ用空気供給装置と、前記ホッパ用噴射ノズルの下方に設けられ前記粉体燃料を下方に送出する燃料送出装置と、前記粉体燃料と空気とが混合される混合管と、前記混合管に空気を供給する燃料用ブロワとを有し、前記制御装置は、前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給する際に、前記燃料用ブロワを作動させると共に、前記燃料送出装置を作動させ、前記混合管の内部で前記粉体燃料と前記燃料用ブロワから供給される空気を混合させて前記混合管から前記1次燃焼室に前記粉体燃料を供給し、所定のタイミングで前記ホッパ用空気供給装置を作動させて前記ホッパ用噴射ノズルから空気を噴射するものとしてもよい。
【0021】
当該構成によれば、ホッパ用空気供給装置により、燃料用ホッパ内の粉体燃料を燃料送出装置に円滑に送出することができ、安定して混合管から1次燃焼室内に粉体燃料を供給することができる。
【0022】
また、本発明の粉体燃料燃焼方法は、粉体燃料燃焼装置によって粉体燃料を燃焼させる燃焼方法であって、燃料投入行程、着火行程、ガス化燃焼行程、直接燃焼行程、及び燠火・灰化行程より構成され、前記粉体燃料燃焼装置は、前記粉体燃料を内部で燃焼させる1次燃焼室と、前記1次燃焼室から排出されたガスを燃焼させる2次燃焼室を備え、前記1次燃焼室は、前記粉体燃料を内部に供給する燃料供給装置と、内部に空気を供給する1次空気供給口と、内部の前記粉体燃料に着火する着火バーナが設けられ、前記1次燃焼室の底部には、下方に向けて狭まるように傾斜する傾斜部と、内部に空気を供給する底部空気供給口と、前記傾斜部の下方位置に設けられた灰出口と、筒状で上下方向に向けて配置され上端及び下端に開口を有し前記下端が前記灰出口に向けて配置され内部に空気が供給される底部空気噴射ノズルが設けられ、前記2次燃焼室には、内部を加熱して前記1次燃焼室から排出された燃焼ガスに着火する2次バーナと、内部に燃焼用の空気を供給する2次空気供給口が設けられ、前記1次空気供給口及び前記底部空気供給口に空気を供給する1次空気供給装置と、前記底部空気噴射ノズルに空気を供給する噴射空気供給装置と、前記2次空気供給口に空気を供給する2次空気供給装置と、前記燃料供給装置、前記着火バーナ、前記2次バーナ、前記1次空気供給装置、前記噴射空気供給装置、及び前記2次空気供給装置の作動を制御する制御装置を備えている。
【0023】
前記制御装置により、前記燃料投入行程では、前記燃料供給装置により前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を所定量堆積させ、前記着火行程では、前記2次バーナによって前記2次燃焼室内を加熱し、前記2次燃焼室内が所定温度に達した後、前記堆積された前記粉体燃料に前記着火バーナによって着火を行い、前記ガス化燃焼行程では、前記堆積された前記粉体燃料の完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給して前記1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させ、前記可燃性ガスを前記2次燃焼室内に導入し、前記2次空気供給口から2次燃焼用空気を供給して前記可燃性ガスを完全燃焼させ、前記直接燃焼行程では、前記1次空気供給装置及び前記噴射空気供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料の直接燃焼に必要な空気量を前記1次空気供給口、前記底部空気供給口、及び前記底部空気噴射ノズルから供給すると共に、前記燃料供給装置を作動させて前記1次燃焼室内に前記粉体燃料を供給して燃焼させ前記燃料供給装置をバーナとして作動させ、前記1次燃焼室から排出される燃焼ガスを前記2次燃焼室内に導入し、前記2次空気供給口から2次燃焼用空気を供給して前記燃焼ガスを完全燃焼させ、前記燠火・灰化行程では、前記燃料供給装置による燃料の供給を停止させ、前記1次燃焼室内に残存する前記粉体燃料を燠火燃焼させて灰化させることを特徴とする。
【0024】
本発明の粉体燃料燃焼方法は、燃料投入行程、着火行程、ガス化燃焼行程、直接燃焼行程、及び燠火・灰化行程より構成されている。そのガス化燃焼行程において、1次空気供給口、底部空気供給口、及び底部空気噴射ノズルから空気を供給して1次燃焼室内で可燃性ガスを発生させており、1次空気供給口、底部空気供給口のみならず、底部空気噴射ノズルからも空気を噴射している。従って、下方に向けて狭まるように傾斜する底部の内部に堆積された粉体燃料に対して、空気が噴射されるので、従来の焼却方法に比べて、粉体燃料を確実に燃焼させることができる。
【0025】
本発明の粉体燃料燃焼方法では、前記燠火・灰化行程において、前記底部空気噴射ノズルからの空気の供給を停止させてもよい。当該処理により、粉体燃料の燠火・灰化の際の白煙の発生を防止することができる。
【0026】
また、本発明の粉体燃料燃焼方法において、前記制御装置により、前記ガス化燃焼行程、及び前記直接燃焼行程において、前記底部空気噴射ノズルに定期的又は不定期で前記粉体燃料を攪拌可能な噴射量で空気を噴射するよう前記噴射空気供給装置を制御してもよい。当該制御により、1次燃焼室の底部に堆積された粉体燃料を攪拌させることができるので、従来の焼却方法に比べて、粉体燃料を確実に燃焼させることができる。
【0027】
また、本発明の粉体燃料燃焼方法において、前記燃料供給装置は、前記粉体燃料が投入される燃料用ホッパと、前記燃料用ホッパ内に上下方向に向けて配置され少なくとも下方に空気を噴射するホッパ用噴射ノズルと、前記ホッパ用噴射ノズルに空気を供給するホッパ用空気供給装置と、前記ホッパ用噴射ノズルの下方に設けられ前記粉体燃料を下方に送出する燃料送出装置と、前記粉体燃料と空気とが混合される混合管と、前記混合管に空気を供給する燃料用ブロワとを有し、前記燃料投入行程及び前記直接燃焼行程において、前記制御装置により、前記燃料用ブロワを作動させると共に、前記燃料送出装置を作動させ、前記混合管の内部で前記粉体燃料と前記燃料用ブロワから供給される空気を混合させて前記混合管から前記1次燃焼室に前記粉体燃料を供給し、所定のタイミングで前記ホッパ用空気供給装置を作動させて前記ホッパ用噴射ノズルから空気を噴射するようにしてもよい。
【0028】
当該制御によれば、燃料投入行程及び直接燃焼行程において、ホッパ用空気供給装置により、燃料用ホッパ内の粉体燃料を燃料送出装置に円滑に送出することができ、安定して混合管から1次燃焼室内に粉体燃料を供給することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、回収された合成樹脂や廃プラスチック等を原料とする炭化燃料のような粉体燃料であっても、良好に燃焼させることができる燃焼装置及び燃焼方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態の粉体燃料燃焼装置を含む発電システムを示す説明図。
【
図2】本実施形態の粉体燃料燃焼装置における燃料供給装置を示す説明図。
【
図3】本実施形態の粉体燃料燃焼装置の1次燃焼室の底部の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態の一例である粉体燃料燃焼装置及び粉体燃料燃焼方法について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態の粉体燃料燃焼装置を含む発電システムを示す説明図である。
図2は、本実施形態の粉体燃料燃焼装置における燃料供給装置を示す説明図である。
図3は、本実施形態の粉体燃料燃焼装置の1次燃焼室の底部の構成を示す説明図である。本実施形態においては、粉体燃料は特許文献2に記載された炭化燃料製造装置により製造された廃プラスチックを原料とする粉末状のチャを用いている。
【0032】
本実施形態の粉体燃料燃焼装置1は、
図1に示すように、粉体燃料Fによる発電システム2に用いられる燃焼装置である。発電システム2は、粉体燃料燃焼装置1に加えて、ボイラ3、集塵装置4、発電装置5、煙突6及びこれらを制御する制御装置7を備えている。
【0033】
粉体燃料燃焼装置1は、
図1に示すように、燃料供給装置10と、1次燃焼室20と、2次燃焼室50と、空気供給灰出装置32と、サイクロン集塵機60とを備えている。サイクロン集塵機60の出口はボイラ3に接続されている。
【0034】
1次燃焼室20は、本実施形態では全体的に円筒形であり、その上方に位置する天井部21と、天井部21の下方に位置する胴部22と、胴部22の下方に位置する底部23から構成されている。
【0035】
天井部21には、1次燃焼室20内で発生した可燃性ガス或いは燃焼ガスが排出される1次排気口24が設けられている。また、1次排気口24には、1次燃焼室20内で発生した燃焼ガスの温度を検出する第1温度センサ25が設けられている。なお、1次排気口24は、
図1のように、天井部21の天板に形成されていてもよく、側面に形成されていてもよい。
【0036】
胴部22には、燃料供給装置10が接続されている。この燃料供給装置10は、粉体燃料Fが投入される燃料用ホッパ11と、粉体燃料Fと燃焼用空気とを混合させる混合管12と、燃料用ホッパ11に投入された粉体燃料Fを任意の供給量で混合管12に供給する燃料送出装置13と、燃焼用空気を混合管12に供給する燃料用ブロワ14と、混合管12の先端部にあるバーナ口15とを備えている。
【0037】
燃料用ホッパ11には、その中央に、上下方向に延びる筒状のホッパ用噴射ノズル16が設けられている。ホッパ用噴射ノズル16は、円筒状の部材であり、上下端部が開口しており、側面には空気が噴射される噴射口16aが複数設けられている。ホッパ用噴射ノズル16の下端部は、燃料用ホッパ11の開口部11aに向けて設けられている。また、ホッパ用噴射ノズル16には、エアコンプレッサ70、燃料用電磁弁17及び燃料用空気供給管16bからなるホッパ用空気供給装置18が接続されている。
【0038】
燃料供給装置10の燃料送出装置13は、円筒状のケース13aの内部でロータリーバルブ13bが回転して粉体燃料Fの送出を行う。燃料の時間当たりの送出量は、図示しないモータをインバータ制御して、ロータリーバルブ13bの回転数を調整することにより行われる。
【0039】
燃料供給装置10の燃料用ブロワ14も図示しないモータをインバータ制御することにより送風量を調節することができる。燃料送出装置13の粉体燃料Fの送出量と、燃料用ブロワ14の送風量を調節することにより、バーナ口15から吹き出される燃料の空燃比を変更することができる。
【0040】
燃料供給装置10は、1次燃焼室20内で燃焼が行われている状態で、バーナ口15から粉体燃料Fと燃焼用空気が1次燃焼室20内に供給されると、バーナ口15の近傍で粉体燃料Fが着火し、その後はバーナとして燃焼が行われる。
【0041】
また、胴部22の周壁には、1次燃焼室20内に1次燃焼用の空気を供給する1次空気供給口26が複数設けられている。この1次空気供給口26には、胴部22の外側に設けられた1次空気供給装置である1次空気用ブロワ27から空気が供給される。
【0042】
また、胴部22の上方位置には、水蒸気導入口28及びベントガス導入口29が設けられている。これらの導入口からは、必要に応じて1次燃焼室20内に水蒸気及びベントガスを導入することができる。水蒸気としては、特許文献2に開示された燃料製造装置による燃料製造の際に回収された臭い成分を含有する水蒸気等を導入可能である。ベントガスとしては、特許文献2に開示された燃料製造装置による燃料製造の際に回収されたガスを使用することができる。
【0043】
また、胴部22には、1次燃焼室20内の燃焼を補助する助燃バーナ30と、この助燃バーナ30に空気を供給する助燃用電磁弁30aが設けられている。この助燃バーナ30には、燃料として特許文献2に開示された燃料製造装置による燃料製造の際に回収されたベントオイル等が用いられる。
【0044】
1次燃焼室20の底部23には、胴部22の壁面から下方に向けて狭まるように傾斜する傾斜部23aが形成され、傾斜部23aの下方には灰出口23bが形成されている。傾斜部23aには、内部に燃焼用の空気を導入する底部空気供給口31が複数設けられている。この底部空気供給口31には、1次空気用ブロワ27から空気が供給される。
【0045】
また、底部23には、傾斜部23aの内部に空気供給灰出装置32と、底部23内に投入された粉体燃料Fに着火する着火バーナ33が設けられている。この着火バーナ33で使用される燃料は、灯油或いは重油等が用いられる。
【0046】
空気供給灰出装置32は、底部空気噴射ノズル34と、灰送出装置35とを備えている。底部空気噴射ノズル34は、上下方向に延びる筒状の部材であり、傾斜部23aのほぼ中央に設けられている。底部空気噴射ノズル34は、上端及び下端が開口しており、側面には空気が噴射される噴射口34aが複数設けられている。底部空気噴射ノズル34の下端部は、灰出口23bに向けて設けられている。
【0047】
底部空気噴射ノズル34には、噴射空気供給装置36として、エアコンプレッサ70及び底部用電磁弁37、及び底部空気供給管38が接続されている。この噴射空気供給装置36から底部空気噴射ノズル34に噴射用空気が供給される。
【0048】
灰送出装置35は、円筒状のケース35aの内部でロータリーバルブ35bが回転して灰の送出を行う。また、灰送出装置35には、ケース35aの下方部分の内部に水を噴射する散水ノズル39が設けられている。この散水ノズル39から水が噴射されると、ケース35a内の灰が冷却されると共に、灰が水によって集結し、周囲に飛散することなく下方に落下する。
【0049】
灰出口23bの下方には、灰受け器40が配置されており、灰出口23bから排出される灰を貯留することができる。この灰受け器40は、フォークリフト等の移動手段により、灰出口23bの下方位置から灰の回収場所まで移動可能となっている。
【0050】
粉体燃料燃焼装置1には、その他に、助燃バーナ30に燃料であるベントオイルを供給するベントオイルタンク71、散水ノズル39に水を供給するウォータータンク72等が設けられている。
【0051】
2次燃焼室50は、円筒状の燃焼室であり、1次燃焼室20の燃焼ガスが導入される1次排気口24が接続されている。この1次排気口24の接続部近傍には、燃焼ガスに着火を行う2次バーナ51が設けられている。また、2次燃焼室50の周壁には、2次燃焼を行わせるための2次燃焼用空気を供給する2次空気供給口52が複数設けられている。この2次空気供給口52には、2次空気供給装置である2次空気用ブロワ53から空気が供給される。
【0052】
2次燃焼室50の下流側には2次排気口54が設けられ、サイクロン集塵機60に接続されている。この2次排気口54には、2次燃焼室50の燃焼ガスの温度を検出する第2温度センサ55が設けられている。また、サイクロン集塵機60の下方には、サイクロン用回収装置61が設けられている。
【0053】
サイクロン用回収装置61は、ロータリーバルブ62と、スクリューコンベヤ63によって構成されている。このサイクロン用回収装置61によって、サイクロン集塵機60で回収された粉塵は、再度1次燃焼室20内に戻されて燃焼が行われる。
【0054】
本実施形態の発電システム2におけるボイラ3は、サイクロン集塵機60によって集塵処理が行われた排気ガスの熱で過熱蒸気や飽和蒸気を発生させる装置である。本実施形態では、ボイラ3は約600℃の排気ガスから熱回収を行い、排気ガスの出口温度を約200℃まで下降させている。
【0055】
発電装置5は、ボイラ3によって発生した蒸気で図示しないタービンを回転させて発電する装置である。この発電装置5は、現在一般に使用さているものを採用している。ボイラ3によって発生した蒸気は、このように発電装置5に用いられる他、暖房設備等の付帯設備にも用いることもできる。
【0056】
ボイラ3の下流側には集塵装置4が設けられている。この集塵装置4は、一般に広く用いられているバグフィルタ等を用いることができる。また、バグフィルタの前にガスの温度を降下させる装置等も必要に応じて設置する。その他、集塵装置4としては、遠心式集塵機、電気式集塵機、或いは重力式集塵装置等の他の集塵装置を用いることもできる。また、発電システム2の規模や燃焼させる燃料の種類によっては、この集塵装置4自体を省略することができる。
【0057】
煙突6には、図示しない吸引ファンが設けられており、粉体燃料燃焼装置1から発生する排気ガスを煙突6まで吸引して外部に放出する。この吸引ファンもインバータ制御によって駆動され、制御装置7からの信号によって回転数が制御される。
【0058】
制御装置7は、いわゆる制御盤と呼ばれるものであり、各種操作スイッチと、各装置の運転状態を示すインジケータと、各装置の制御を行うコンピュータを内蔵している(それぞれ図示省略)。制御装置7のコンピュータは、CPU、記憶装置、通信装置等を備えており(それぞれ図示省略)、記憶装置には本実施形態の粉体燃料燃焼装置1を含む発電システム2の運転を実行するプログラムが記憶されている。
【0059】
次に、本実施形態の粉体燃料燃焼装置1の燃焼方法について説明する。本実施形態の燃焼方法は、燃料投入行程、着火行程、ガス化燃焼行程、直接燃焼行程、及び燠火・灰化行程より構成される。これらの各行程は、制御装置7に記憶されたプログラムによって実行される。
【0060】
本実施形態の燃焼方法では、まず燃料投入行程が行われる。燃料投入行程においては、燃料供給装置10を用いて1次燃焼室20内に粉体燃料Fを所定量堆積させる。粉体燃料Fの量は、1次燃焼室20の約1/3の容積が埋まる程度としている。この所定量としては、粉体燃料燃焼装置1の運転効率を考慮すると、1次燃焼室20の約1/4~1/2程度が好ましいが、粉体燃料Fの性質によって適宜変更することができる。
【0061】
この燃料投入行程においては、まず、燃料供給装置10の燃料用ホッパ11に粉体燃料Fを投入した状態で燃料供給装置10を始動させる。この粉体燃料Fの燃料用ホッパ11への投入は、コンベヤ等を用いて制御装置7により制御してもよく、コンベヤ等を手動で操作して行ってもよい。
【0062】
燃料供給装置10が制御装置7により始動されると、ロータリーバルブ13bが回転し、燃料用ホッパ11内の粉体燃料Fがロータリーバルブ13bによってケース13aの下方に搬送される。このとき、燃料用ホッパ11では、所定のタイミングでホッパ用空気供給装置18からホッパ用噴射ノズル16に噴射用の空気が送られる。これにより、燃料用ホッパ11内の粉体燃料Fがブリッジ等を起こすことなくロータリーバルブ13bによってケース13aの下方に搬送される。
【0063】
ホッパ用空気供給装置18を作動させるタイミングは、粉体燃料Fの状態に応じて適宜変更することができ、例えば1~10分毎にホッパ用空気供給装置18を作動させてもよく、燃料用ホッパ11に粉体燃料Fを追加する毎に作動させてもよい。
【0064】
一方で、燃料用ブロワ14の運転も開始され、混合管12に空気が供給される。これにより、混合管12の内部で粉体燃料Fと供給された空気が混合され、バーナ口15から前方に放出される。
【0065】
このとき、1次燃焼室20内では着火バーナ33や助燃バーナ30は作動していないため、燃料供給装置10から放出された粉体燃料Fは1次燃焼室20の底部23に堆積する。この燃料供給装置10の運転を1次燃焼室20の約1/3の容積が埋まるまで続け、所定の量まで粉体燃料Fが供給された後、燃料供給装置10の運転を停止させる。
【0066】
本実施形態の燃焼方法においては、次に着火行程が行われる。着火行程においては、まず2次燃焼室50の2次バーナ51の燃焼を開始し、2次燃焼室50内の温度を上昇させる。2次燃焼室50の温度が所定温度(800℃等)となった後、着火バーナ33を作動させて1次燃焼室20内に堆積している粉体燃料Fに着火する。このとき、第1温度センサ25により1次燃焼室20内における堆積した粉体燃料Fへの着火が確認されたときは、着火バーナ33を停止させる。
【0067】
次に、ガス化燃焼行程について説明する。ガス化燃焼行程では、1次燃焼室20内で、燃料投入行程で投入された粉体燃料Fの一部が燃焼して可燃性ガスを発生させる。1次燃焼室20には、1次空気用ブロワ27、1次空気供給口26及び底部空気供給口31から1次燃焼用の空気が供給されている。
【0068】
ガス化燃焼行程において、1次燃焼室20内に導入される1次燃焼用の空気は、粉体燃料Fの完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気量が供給される。従って、1次燃焼室20内では、粉体燃料Fの一部が燃焼し、周囲の粉体燃料Fを加熱しながら少しずつ燃焼範囲を広げていくため、粉体燃料Fから可燃性ガスが発生する。
【0069】
このとき、空気供給灰出装置32の底部空気噴射ノズル34からは断続的に空気が1次燃焼室20内に供給される。底部空気噴射ノズル34からは、上下端部及び噴射口34aから空気が噴射される。このとき、例えば、所定時間微小の空気量の噴射を行い、定期的又は不定期に噴射量を増加させる制御を行う。具体的には、5分間は底部空気噴射ノズル34の周囲の粉体燃料Fが風圧により移動しないような量の空気を噴射し、5分毎に底部空気噴射ノズル34の周囲の粉体燃料Fが攪拌可能な強さで空気の噴射を行う。
【0070】
或いは、5分毎のような定期的な噴射のみならず、通常は弱い風圧での空気の噴射を行い、1次燃焼室20内の温度が所定温度以下になった際に粉体燃料Fが攪拌されるような強さで空気の噴射を行ってもよい。この断続的な底部空気噴射ノズル34の上下の開口部分、及び側面に設けられた噴射口34aからの空気の噴射により、1次燃焼室20の底部23に堆積している粉体燃料Fが攪拌されて良好な燃焼が行われる。
【0071】
ガス化燃焼行程において、加熱された2次燃焼室50内に1次燃焼室20からの可燃性ガスが排出されると、2次バーナ51によって可燃性ガスが着火し、2次燃焼室50内で完全燃焼が行われる。
【0072】
本実施形態では、2次燃焼室50内の燃焼温度が800℃以上、好ましくは900℃以上となるように制御を行っている。なお、2次バーナ51は、第2温度センサで検出される温度が所定の温度以上になったときは作動を停止するが、その後も2次燃焼室50内では1次燃焼室20からの可燃性ガスによって燃焼が継続する。
【0073】
このガス化燃焼行程においては、制御装置7によって、2次燃焼室50内の燃焼温度がほぼ一定となるように制御される。2次燃焼室50内の燃焼温度の制御は、2次空気用ブロワ53により可燃性ガスの完全燃焼に必要な一定量の2次空気を供給した状態で、1次空気用ブロワ27による1次空気の量の調節により行われる。
【0074】
また、このとき、助燃バーナ30による燃焼を制御して2次燃焼室50内の燃焼温度を制御することもできる。一方で、水蒸気導入口28からの水蒸気の供給、及びベントガス導入口29からのベントガスの導入があった場合でも、1次空気用ブロワ27による1次空気の量の調節で2次燃焼室50内の燃焼温度を制御することができる
【0075】
2次燃焼室50内で完全燃焼された後の排気ガスは、2次排気口54から排出されてサイクロン集塵機60を経てボイラ3に導入される。サイクロン集塵機60では、排気ガス中の粉塵を分離してサイクロン集塵機60の底部に落下させる。この底部に落下した粉塵は、サイクロン用回収装置61のロータリーバルブ62及びスクリューコンベヤ63によって、1次燃焼室20内に戻されて燃焼が行われる。
【0076】
このように粉塵が除去された排気ガスは、2次排気口54においては高温であるが、ボイラ3によって熱交換されて温度が下がり、集塵装置4及び煙突6を介して外気に放出される。
【0077】
ボイラ3では、燃焼後の排気ガスの熱によって蒸気が生成され、この蒸気を用いて発電装置5で発電が行われる。本実施形態では、粉体燃料Fは特許文献2に記載された炭化燃料製造装置により製造された回収プラスチックを原料とするチャを用いている。このように、発電装置5では、燃料である粉体燃料Fは回収プラスチックが原料であり、その回収プラスチックを用いて発電を行っているため、極めて環境負荷の小さい発電を行うことができる。
【0078】
このガス化燃焼行程を所定時間継続すると、1次燃焼室20内に堆積された粉体燃料Fがガス化燃焼から直接燃焼に徐々に切り替わる。この燃焼状態の切り替わりは、1次燃焼室20内の温度と、2次燃焼室50内の温度条件によって判断する。
【0079】
具体的には、1次燃焼室20内の温度が現状維持か上昇傾向にある状態において、2次燃焼室50の温度が下降し始めるタイミングでガス化燃焼から直接燃焼に徐々に切り替わることを検知する。制御装置7の制御により、2次燃焼室50の燃焼温度を一定にするために1次空気用ブロワ27による1次空気の量の調節を行っている。
【0080】
1次燃焼室20内での粉体燃料Fの燃焼が進むと、粉体燃料Fが徐々に減っていくため、制御装置7は、可燃性ガスを増やすために1次空気用ブロワ27の回転数を高くするよう制御する。この状態が進むと、1次燃焼室20内で減少した粉体燃料Fの量と、増加した1次空気の量が適正な空燃比に近づき、完全燃焼に近づいていくため、2次燃焼室50へ送り込まれる可燃性ガスの量が減り、2次燃焼室50内の温度低下が始まる。このような2次燃焼室50内の温度低下が検知されると、制御装置7は、燃焼状態が切り替わったものと判断する。
【0081】
本実施形態の燃焼方法においては、ガス化燃焼行程が終了すると直接燃焼行程に移行する。直接燃焼行程では、1次燃焼室20の底部23に堆積した粉体燃料Fが直接燃焼により燃焼を続ける。このとき、底部空気供給口31から空気が供給されると共に、底部空気噴射ノズル34からも断続的に空気が噴射されている。
【0082】
また、直接燃焼行程においては、燃料供給装置10から粉体燃料Fの供給が行われる。燃料供給装置10から粉体燃料Fが供給されると、1次燃焼室20内は粉体燃料Fの発火温度を超えている状態であるため、バーナ口15から噴射された粉体燃料Fが着火され、連続して燃焼を続けるようになる。このように、直接燃焼行程においては、燃料供給装置10は粉体燃料用バーナとして作動する。
【0083】
燃料供給装置10から噴射された粉体燃料Fは、このように燃焼しながら1次燃焼室20内に供給され、燃焼した成分は燃焼ガスとして2次燃焼室50に排出され、燃焼しきれなかった部分は1次燃焼室20内に燃焼しながら堆積される。また、1次燃焼室20内に供給された粉体燃料Fは、1次空気供給口26及び底部空気噴射ノズル34から供給される燃焼用空気によって燃焼が継続され、徐々に灰化される。
【0084】
本実施形態の燃焼方法においては、直接燃焼行程が終了すると燠火・灰化行程に移行する。直接燃焼行程を終了する場合、燃料供給装置10による粉体燃料Fの供給を停止させる。これにより、1次燃焼室20内での燃焼は、1次燃焼室20の底部23に堆積する粉体燃料Fのみとなり、直接燃焼から徐々に燠火燃焼へと移行し、燠火燃焼が継続すると粉体燃料Fは徐々に灰化する。
【0085】
このとき、底部空気噴射ノズル34からの空気の噴射を停止させ、1次空気供給口26及び底部空気供給口31からの空気の供給のみを行う。このように、底部空気噴射ノズル34からの空気の噴射を停止させることにより、2次燃焼室50から排出される排気ガスの白煙の発生を防止することができる。
【0086】
燠火・灰化行程において、粉体燃料Fが燠火燃焼に移行することにより、残存する粉体燃料Fが徐々に灰化され、最終的にほぼ灰となる。1次燃焼室20内の粉体燃料Fが灰化されたことは、1次燃焼室20内の温度を第1温度センサ25で検出することができる。
【0087】
灰化された粉体燃料Fの灰は、空気供給灰出装置32の灰送出装置35によって1次燃焼室20の外部に送出される。灰送出装置35においては、ロータリーバルブ35bを回転させて1次燃焼室20の底部23にある灰を灰出口23bから外部に排出する。その際、断続的に底部空気噴射ノズル34から空気が強く噴射させ、底部23に堆積する灰が円滑に外部に排出させる。
【0088】
灰出口23bにおいては、散水ノズル39から水が噴射されるため、ケース35a内の灰の温度が低下すると共に水によって灰が集結し、周囲に飛散することなく下方に落下する。灰出口23bの下方には、灰受け器40が配置されており、灰出口23bから排出される灰を収容し、必要に応じてフォークリフト等で灰の回収場所へ運搬する。
【0089】
このように、本発明の粉体燃料燃焼装置1を含む発電システム2は、固定された底部空気噴射ノズル34及び底部空気供給口31からの1次空気の供給によって、粉体燃料Fの完全燃焼を行っている。従って、特許文献1のように、未燃性分の分析を行う必要がなく、1次空気の供給に際して角度を変化させる必要もない。
【0090】
また、本発明の粉体燃料燃焼装置1では、空気供給灰出装置32の底部空気噴射ノズル34によって、1次燃焼室20の底部23の粉体燃料Fに断続的に空気を噴射しているため、粉体燃料Fが炉底に堆積することなく、確実に燃焼・灰化され、1次燃焼室20の外部に排出される。従って、本発明の粉体燃料燃焼装置1は、粉体燃料Fを確実に燃焼させ、発電装置5等によるエネルギー回収を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1…粉体燃料燃焼装置、2…発電システム、3…ボイラ、4…集塵装置、5…発電装置、6…煙突、7…制御装置、10…燃料供給装置、11…燃料用ホッパ、11a…開口部、12…混合管、13…燃料送出装置、13a…ケース、13b…ロータリーバルブ、14…燃料用ブロワ、15…バーナ口、16…ホッパ用噴射ノズル、16a…噴射口、17…燃料用電磁弁、18…ホッパ用空気供給装置、20…1次燃焼室、21…天井部、22…胴部、23…底部、23a…傾斜部、23b…灰出口、24…1次排気口、25…第1温度センサ、26…1次空気供給口、27…1次空気用ブロワ、28…水蒸気導入口、29…ベントガス導入口、30…助燃バーナ、31…底部空気供給口、32…空気供給灰出装置、33…着火バーナ、34…底部空気噴射ノズル、34a…噴射口、35…灰送出装置、35a…ケース、35b…ロータリーバルブ、36…噴射空気供給装置、37…底部用電磁弁、38…底部空気供給管、39…散水ノズル、40…灰受け器、50…2次燃焼室、51…2次バーナ、52…2次空気供給口、53…2次空気用ブロワ、54…2次排気口、55…第2温度センサ、60…サイクロン集塵機、61…サイクロン用回収装置、62…ロータリーバルブ、63…スクリューコンベヤ、70…エアコンプレッサ、71…ベントオイルタンク、72…ウォータータンク。