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特許6989883ドリル補助装置、スクリューガイド装置および歯科矯正器具の取り付け補助装置セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ドリル補助装置、スクリューガイド装置および歯科矯正器具の取り付け補助装置セット
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/26 20060101AFI20220104BHJP
   A61C 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61C7/26
A61C7/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021114134
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2020192643
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507028929
【氏名又は名称】斉宮 康寛
(73)【特許権者】
【識別番号】597048997
【氏名又は名称】オカダ医材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】斉宮 康寛
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0304005(US,A1)
【文献】特表2009-531098(JP,A)
【文献】特表2019-504719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038254(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351866(US,A1)
【文献】特開2009-285358(JP,A)
【文献】特開2014-168553(JP,A)
【文献】特開2006-341067(JP,A)
【文献】特表2013-510654(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲面を有する硬口蓋の前記湾曲面から複数の孔を形成する際のドリルのガイドとなるドリルガイド装置と、前記ドリルガイド装置に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブと、を備えたドリル補助装置であって、
前記ドリルガイド装置は、
前記湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニットと、
患者の歯に被せられる固定部材と、
前記ガイド枠ユニットと前記固定部材とを連結し、前記歯を基準にして前記ガイド枠ユニットの前記湾曲面上の配置を決める連結部と、
前記ガイド枠ユニットにおける前記湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、前記ガイド枠の内側の孔に挿入された前記ガイドスリーブを保持する突起部と、
を備え、
前記ガイドスリーブは、
前記ドリルを挿入可能な内径、および前記ガイド枠の前記孔に挿入可能な外径を有する筒状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体の延在する方向に設けられる注水スリットと、
前記スリーブ本体の外周面に設けられ、前記スリーブ本体を前記孔に挿入した際に前記突起部に設けられた凹部と嵌合する突出部と、
を備え、
前記凹部の数と前記突出部の数の総和は3以上であって、
いずれの前記ガイド枠についても、当該ガイド枠に前記ガイドスリーブが挿入されたときに、前記注水スリットが口腔前庭側を向くように、1つの前記凹部と1つの前記突出部とが嵌合可能である、ことを特徴とするドリル補助装置。
【請求項2】
前記ガイドスリーブの少なくとも1つは前記スリーブ本体に複数の前記突出部が設けられ、
前記ガイドスリーブを複数の前記ガイド枠のいずれに挿入しても、前記ガイドスリーブを軸回転することなくいずれかの前記突出部が前記突起部の前記凹部と嵌合する、ことを特徴とする請求項1に記載のドリル補助装置。
【請求項3】
複数の前記ガイド枠のそれぞれに関連付けて前記突起部が個別に設けられ、
前記突起部のいずれも、当該突起部に関連付けられていない前記ガイド枠への前記ガイドスリーブの挿入を干渉しない、請求項1または請求項2に記載のドリル補助装置。
【請求項4】
前記ガイド枠ユニットを上からみて、最も左に設けられる前記ガイド枠を第1ガイド枠、最も右に設けられる前記ガイド枠を第2ガイド枠、前記第1ガイド枠および前記第2ガイド枠以外の前記ガイド枠を第3ガイド枠とし、前記第1ガイド枠に設けられる前記突起部を第1突起部、前記第2ガイド枠に設けられる前記突起部を第2突起部、前記第3ガイド枠に設けられる前記突起部を第3突起部とした場合、
前記第1突起部は前記第1ガイド枠の左側、前記第2突起部は前記第2ガイド枠の右側、前記第3突起部は前記第3ガイド枠の奥側に配置されることを特徴とする請求項3に記載のドリル補助装置。
【請求項5】
前記突起部は、複数の前記ガイド枠に関連付けられる共用突起部を有する、請求項1または請求項2に記載のドリル補助装置。
【請求項6】
前記共用突起部の前記凹部は、異なる前記突出部と嵌合可能とされる、請求項5に記載のドリル補助装置。
【請求項7】
前記共用突起部は前記凹部を複数有する、請求項5に記載のドリル補助装置。
【請求項8】
前記突出部は、複数の前記凹部と嵌合可能とされる共用突出部を有する、請求項1または請求項2に記載のドリル補助装置。
【請求項9】
前記ガイドスリーブは前記突出部を複数有し、前記ガイド枠ユニットに設けられた全ての前記凹部は、複数の前記突出部のいずれかと嵌合可能である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のドリル補助装置。
【請求項10】
湾曲面を有する硬口蓋の前記湾曲面に設けられた下孔にスクリューを埋め込むガイドとなるスクリューガイド装置であって、
前記湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠を有するガイド枠ユニットと、
患者の歯に被せられる固定部材と、
前記ガイド枠ユニットと前記固定部材とを連結し、前記歯を基準にして前記ガイド枠ユニットの前記湾曲面上の配置を決める連結部と、
前記ガイド枠ユニットにおける前記湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、前記ガイド枠の内側の孔を通って埋め込まれる前記スクリューの前記硬口蓋への埋め込み深さを規制する、1つ以上の突起部と、
先端側から前記スクリューを嵌め込む筒状の嵌合部を有し前記スクリューを前記嵌合部に嵌め込んだ状態で前記ガイド枠の前記孔に挿入可能とされる保持具本体と、前記保持具本体の長さ方向の途中位置から前記突起部に当接可能に設けられるフランジ部と、を備えるスクリュー保持具と、
を備え、
前記スクリュー保持具の前記フランジ部と前記突起部とが当接し、さらに前記嵌合部と前記スクリューとの嵌合が解除されて、前記保持具本体の回転に基づく前記スクリューの埋め込みが停止したときに、前記スクリューが所定の深さで前記硬口蓋に埋め込まれているように、前記突起部の突出高さは設定されること、を特徴とするスクリューガイド装置。
【請求項11】
湾曲面を有する硬口蓋の前記湾曲面に穿孔して複数の下孔を形成するドリルのガイドおよび前記複数の下孔のそれぞれにスクリューを埋め込むガイドとなるガイド装置と、前記ガイド装置に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブと、スクリュー保持具と、を備えた歯科矯正器具の取り付け補助装置セットであって、
前記ガイド装置は、
前記湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニットと、
患者の歯に被せられる固定部材と、
前記ガイド枠ユニットと前記固定部材とを連結し、前記歯を基準にして前記ガイド枠ユニットの前記湾曲面上の配置を決める連結部と、
前記ガイド枠ユニットにおける前記湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、前記ガイド枠の内側の孔に挿入された前記ガイドスリーブを保持する突起部と、
を備え、
前記ガイドスリーブは、
前記ドリルを挿入可能な内径、および前記ガイド枠の前記孔に挿入可能な外径を有する筒状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体の延在する方向に設けられる注水スリットと、
前記スリーブ本体の外周面に設けられ、前記スリーブ本体を前記孔に挿入した際に前記突起部に設けられた凹部と嵌合する突出部と、
を備え、
前記凹部の数と前記突出部の数の総和は3以上であって、
いずれの前記ガイド枠についても、当該ガイド枠に前記ガイドスリーブが挿入されたときに、前記注水スリットが口腔前庭側を向くように、1つの前記凹部と1つの前記突出部とが嵌合可能であり、
前記スクリュー保持具は、
先端側から前記スクリューを嵌め込む筒状の嵌合部を有し前記スクリューを前記嵌合部に嵌め込んだ状態で前記ガイド枠の前記孔に挿入可能とされる保持具本体と、
前記保持具本体の長さ方向の途中位置から前記突起部に当接可能に設けられるフランジ部と、
を備え、
前記スクリュー保持具の前記フランジ部と前記ガイド装置の前記突起部とが当接し、さらに前記嵌合部と前記スクリューとの嵌合が解除されて、前記保持具本体の回転に基づく前記スクリューの埋め込みが停止したときに、前記スクリューが所定の深さで前記硬口蓋に埋め込まれているように、前記突起部の突出高さは設定されること
を特徴とする歯科矯正器具の取り付け補助装置セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科矯正用インプラント装置におけるスクリューを口腔内に取り付ける際に用いられるドリル補助装置、スクリューガイド装置および歯科矯正器具の取り付け補助装置セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正においては、移動させたい歯に対して前後左右、傾斜、回転などの三次元的な矯正力を与えることで歯並びを整えている。歯に矯正力を与えるには、歯にブラケットを固定し、基準にする歯のブラケットと移動させたい歯のブラケットとの間にワイヤー等を取り付け、ワイヤーを締めていく。ワイヤーの取り回し、締め付け方などを調整することで、所望の方向へ矯正力を与えるようにしている。
【0003】
歯科矯正用のインプラント装置においては、口腔内の骨にスクリューやアンカーを埋め込み、このスクリュー等を固定端として所望の歯に矯正力を与える。埋め込まれたスクリュー等にプレートやワイヤー等が固定され、このプレートやワイヤー等を介して歯に矯正力を与えている(例えば、特許文献1~6参照)。また、歯科矯正用支持体として固定部を顎骨に固定し、露出部を口腔内に露出させる構成が開示されている(例えば、特許文献7、8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-519299号公報
【文献】特表2009-513228号公報
【文献】特開2006-314419号公報
【文献】特開2004-97787号公報
【文献】特開2001-187071号公報
【文献】特表平10-507387号公報
【文献】特開2004-174278号公報
【文献】特開2004-136134号公報
【文献】特開2009-285358号公報
【文献】特開2014-168553号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0351866号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0038254号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
矯正器具の取り付けは、少なからず患者への負担を強いることになる。また、治療を行う医師の施術負担の軽減は、治療時間の短縮や、的確かつ安定した処置に繋がる。これにより、医師のみならず患者への負担も軽減される。歯科矯正のなかでも、インプラント装置では口腔内の骨にスクリュー等を埋め込む処置が必要なため、負担軽減や高い確実性が求められる。特に、硬口蓋は凹型に湾曲しているためドリルによる孔開けの方向を正確に設定することが困難である。また、患者ごとに異なる口腔内の形状や歯の状態に対応して適切な位置や深さでドリルによる孔開けを行い、スクリューを埋め込むことは非常に難易度が高い。
【0006】
本発明は、歯科矯正用インプラント装置におけるスクリューを口腔内に取り付ける際に行われるドリルによる孔開けおよびスクリューの埋め込みを、容易かつ的確に行うことができるドリル補助装置、スクリューガイド装置および歯科矯正器具の取り付け補助装置セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、湾曲面を有する硬口蓋の湾曲面から複数の孔を形成する際のドリルのガイドとなるドリルガイド装置と、ドリルガイド装置に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブと、を備えたドリル補助装置である。
ドリルガイド装置は、湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニットと、患者の歯に被せられる固定部材と、ガイド枠ユニットと固定部材とを連結し、歯を基準にしてガイド枠ユニットの湾曲面上の配置を決める連結部と、ガイド枠ユニットにおける湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、ガイド枠の内側の孔に挿入されたガイドスリーブを保持する突起部と、を備える。
ガイドスリーブは、ドリルを挿入可能な内径、およびガイド枠の孔に挿入可能な外径を有する筒状のスリーブ本体と、スリーブ本体の延在する方向に設けられる注水スリットと、スリーブ本体の外周面に設けられ、スリーブ本体を孔に挿入した際に突起部に設けられた凹部と嵌合する突出部と、を備える。
凹部の数と突出部の数の総和は3以上であって、いずれのガイド枠についても、ガイド枠にガイドスリーブが挿入されたときに、注水スリットが口腔前庭側を向くように、1つの凹部と1つの突出部とが嵌合可能である。
【0008】
このような構成によれば、ガイド装置とガイドスリーブとが一体化せず、ガイド枠にガイドスリーブを取り付ける前にガイドスリーブをドリルに挿入し、この状態でガイド枠の孔にガイドスリーブを挿入することができる。そして、凹部と突出部とが嵌合することで、ガイド枠の高さの影響を抑制しつつ、ガイドスリーブによって高さを稼いでドリルを安定してガイドすることができる。また、ガイドスリーブの注水スリットが口腔前庭側を向くようになるため、口の開く側から容易に注水を行うことができる。
【0009】
上記ドリル補助装置において、ガイドスリーブの少なくとも1つはスリーブ本体に複数の突出部が設けられ、ガイドスリーブを複数のガイド枠のいずれに挿入しても、ガイドスリーブを軸回転することなくいずれかの突出部が突起部の凹部と嵌合することが好ましい。
これにより、ガイドスリーブを複数のガイド枠のどれに挿入しても、ガイドスリーブの向きを変えることなく突出部を凹部に嵌合させることができる。
【0010】
上記ドリル補助装置において、複数のガイド枠のそれぞれに関連付けて突起部が個別に設けられ、突起部のいずれも、突起部に関連付けられていないガイド枠へのガイドスリーブの挿入を干渉しないことが好ましい。
これにより、複数のガイド枠のそれぞれに関連付けて突起部が個別に設けられていても、ガイドスリーブをガイド枠の孔へ挿入する際に他のガイド枠の突起部に干渉することなくガイドスリーブをガイド枠へ挿入することができる。
【0011】
上記ドリル補助装置において、ガイド枠ユニットを上からみて、最も左に設けられるガイド枠を第1ガイド枠、最も右に設けられるガイド枠を第2ガイド枠、第1ガイド枠および第2ガイド枠以外のガイド枠を第3ガイド枠とし、第1ガイド枠に設けられる突起部を第1突起部、第2ガイド枠に設けられる突起部を第2突起部、第3ガイド枠に設けられる突起部を第3突起部とした場合、第1突起部は第1ガイド枠の左側、第2突起部は第2ガイド枠の右側、第3突起部は第3ガイド枠の奥側に配置される。
これにより、第1ガイド枠、第2ガイド枠および第3ガイド枠のそれぞれの突起部が互いに離れて配置され、ガイドスリーブを挿入する際の干渉を抑制することができる。
【0012】
上記ドリル補助装置において、突起部は、複数のガイド枠に関連付けられる共用突起部を有していてもよい。これにより、ガイド枠の数よりも突起部の数を減らすことができる。
【0013】
上記ドリル補助装置において、共用突起部の凹部は、異なる突出部と嵌合可能となっていてもよい。また、上記ドリル補助装置において、共用突起部は凹部を複数有していてもよい。また、上記ドリル補助装置において、突出部は、複数の凹部と嵌合可能とされる共用突出部を有していてもよい。
【0014】
上記ドリル補助装置において、ガイドスリーブは突出部を複数有し、ガイド枠ユニットに設けられた全ての凹部は、複数の突出部のいずれかと嵌合可能になっていてもよい。これにより、ガイドスリーブの向きを変えることなく、いずれかの突出部を凹部に嵌合させることができる。
【0015】
本発明の他の一態様は、湾曲面を有する硬口蓋の湾曲面に設けられた下孔にスクリューを埋め込むガイドとなるスクリューガイド装置であって、湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠を有するガイド枠ユニットと、患者の歯に被せられる固定部材と、ガイド枠ユニットと固定部材とを連結し、歯を基準にしてガイド枠ユニットの湾曲面上の配置を決める連結部と、ガイド枠ユニットにおける湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、ガイド枠の内側の孔を通って埋め込まれるスクリューの硬口蓋への埋め込み深さを規制する、1つ以上の突起部と、を備える。
このスクリューガイド装置において、先端側からスクリューを嵌め込む筒状の嵌合部を有しスクリューを嵌合部に嵌め込んだ状態でガイド枠の孔に挿入可能とされる保持具本体と、保持具本体の長さ方向の途中位置から突起部に当接可能に設けられるフランジ部と、を備えるスクリュー保持具のフランジ部と突起部とが当接し、さらに嵌合部とスクリューとの嵌合が解除されて、保持具本体の回転に基づくスクリューの埋め込みが停止したときに、スクリューが所定の深さで硬口蓋に埋め込まれているように、突起部の突出高さが設定される。
【0016】
このような構成によれば、スクリュー保持具で保持したスクリューをガイド枠の孔に挿入し、保持具本体とともにスクリューを回転させることでスクリューを硬口蓋へ埋め込んでいく。所定深さまでスクリューを埋め込むとスクリュー保持具のフランジ部がガイド枠の突起部に当接し、スクリュー保持具はその位置で規制され、スクリューのみが埋め込まれていく。やがてスクリューと嵌合部との嵌合が解除され、スクリューの埋め込みが停止するとともに、スクリュー保持具のみを取り外すことができる。
【0017】
本発明の別の一態様は、湾曲面を有する硬口蓋の湾曲面に穿孔して複数の下孔を形成するドリルのガイドおよび複数の下孔のそれぞれにスクリューを埋め込むガイドとなるガイド装置と、ガイド装置に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブと、を備えた歯科矯正器具の取り付け補助装置セットである。
ガイド装置は、湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニットと、患者の歯に被せられる固定部材と、ガイド枠ユニットと固定部材とを連結し、歯を基準にしてガイド枠ユニットの湾曲面上の配置を決める連結部と、ガイド枠ユニットにおける湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、ガイド枠の内側の孔に挿入されたガイドスリーブを保持する突起部と、を備える。
ガイドスリーブは、ドリルを挿入可能な内径、およびガイド枠の孔に挿入可能な外径を有する筒状のスリーブ本体と、スリーブ本体の延在する方向に設けられる注水スリットと、スリーブ本体の外周面に設けられ、スリーブ本体を孔に挿入した際に突起部に設けられた凹部と嵌合する突出部と、を備える。
この歯科矯正器具の取り付け補助装置セットにおいて、凹部の数と突出部の数の総和は3以上であって、いずれのガイド枠についても、当該ガイド枠にガイドスリーブが挿入されたときに、注水スリットが口腔前庭側を向くように、1つの凹部と1つの突出部とが嵌合可能である。
また、先端側からスクリューを嵌め込む筒状の嵌合部を有しスクリューを嵌合部に嵌め込んだ状態でガイド枠の孔に挿入可能とされる保持具本体と、保持具本体の長さ方向の途中位置から突起部に当接可能に設けられるフランジ部と、を備えるスクリュー保持具のフランジ部と突起部とが当接し、さらに嵌合部とスクリューとの嵌合が解除されて、保持具本体の回転に基づくスクリューの埋め込みが停止したときに、スクリューが所定の深さで硬口蓋に埋め込まれているように、突起部の突出高さが設定される。
【0018】
このような構成によれば、ガイド装置のガイド枠にガイドスリーブを挿入することでドリルをガイドして、硬口蓋の湾曲面に穿孔して複数の下孔を形成する。この際、ガイド枠の孔にガイドスリーブを挿入して凹部と突出部とが嵌合することで、ガイド枠の高さの影響を抑制しつつ、ガイドスリーブによって高さを稼いでドリルを安定してガイドすることができる。また、ガイドスリーブの注水スリットが口腔前庭側を向くようになるため、口の開く側から容易に注水を行うことができる。
【0019】
また、下孔を形成した後、ガイド装置を取り外すことなくそのまま利用してガイド枠の孔にスクリューを挿入し、硬口蓋に埋め込む。この際、スクリュー保持具で保持したスクリューをガイド枠の孔に挿入し、保持具本体とともにスクリューを回転させることでスクリューを硬口蓋へ埋め込んでいく。所定深さまでスクリューを埋め込むとスクリュー保持具のフランジ部がガイド枠の突起部に当接し、スクリュー保持具はその位置で規制され、スクリューのみが埋め込まれていく。やがてスクリューと嵌合部との嵌合が解除され、スクリューの埋め込みが停止するとともに、スクリュー保持具のみを取り外すことができる。
【0020】
本発明のまた別の一態様は、口腔内に複数のスクリューを埋め込むために用いられるガイド装置であって、スクリューの埋め込み位置上に配置される筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニットと、患者の歯に被せられる固定部材と、ガイド枠ユニットと固定部材とを連結し、歯を基準にしてガイド枠ユニットの口腔内での位置を決める連結部と、を備え、複数のガイド枠のそれぞれには、ガイド枠の内側の孔に挿入される部材の挿入深さを設定する非環状の突起部が、ガイド枠における口腔に接触する側とは反対側に突出するように設けられたことを特徴とするガイド装置である。
【0021】
このような構成によれば、非環状の突起部によって、ガイド枠の孔に部材(ドリルのガイドスリーブやスクリュー)を挿入する際、他のガイド枠や突起部と干渉せずに施術できるとともに、部材の挿入深さを安定化させることができる。
【0022】
上記ガイド装置において、固定部材は、患者の複数の臼歯のそれぞれの形に合わせて形成され、それぞれの臼歯に被せられる複数の歯型凹部を有していることが好ましい。これにより、臼歯の形に合わせて形成された歯型凹部によって安定してガイド枠を位置決めすることができる。
【0023】
上記ガイド装置において、複数の歯型凹部は、第1歯型凹部、第2歯型凹部および第3歯型凹部を有し、第1歯型凹部は右大臼歯に被せられ、第2歯型凹部は左大臼歯に被せられ、第3歯型凹部は右小臼歯に被せられることが好ましい。これにより、3つの歯型凹部で安定感を高めるとともに、3つのうちの2つを右側の臼歯に被せることで、左側(術者からみて右側)に施術具を入れるスペース(ドリル装置を入れるスペースなど)を確保しやすくなる。
【0024】
本発明のさらにまた別の一態様は、上記のガイド装置に用いられるドリルのガイドスリーブであって、ガイド枠の孔に挿入される筒状のスリーブ本体と、スリーブ本体の延在する方向に設けられる注水スリットと、スリーブ本体の外周面に設けられる突出部と、を備え、突出部がガイド枠の突起部に当接することにより、スリーブ本体のガイド枠の孔への挿入深さが調整されることを特徴とするガイドスリーブである。
【0025】
このような構成によれば、ドリルの先端部分にスリーブ本体を嵌め込み、スリーブ本体をガイド枠の孔に挿入することで、ドリルを入れるスペースを確保しつつ、ガイド枠によるドリルの角度の安定化を図ることができる。この際、注水スリットを一定の向きにしてどのガイド枠の孔にスリーブ本体を挿入しても、スリーブ本体の複数の突起部のいずれかがガイド孔の突起部と当接して、各ガイド枠に対応したドリルの深さ方向のガイドを行うことができる。
【0026】
本発明のさらにまた別の一態様は、上記のガイドスリーブが装着されたドリル装置であって、孔開け方向に延びるドリル刃と、ドリル刃に連設される軸体とからなるドリルと、ドリルの軸体を保持する保持機構と、保持機構とともにドリルを回転させる回転機構とを有する回転動作部と、スリーブ本体にドリルを挿通させた状態にあるガイドスリーブと、を備えるドリル装置である。
【0027】
このような構成によれば、ガイドスリーブをドリルに挿通させて、ガイドスリーブとともにドリルをガイド装置のガイド枠に挿入することにより、口腔内にドリル装置を入れるスペースを確保しつつ、ドリルによる穴開け方向および深さを正確かつ安定して設定することができる。
【0028】
本発明のさらにまた別の一態様は、上記のガイド装置に用いられるスクリュー保持具であって、先端側にスクリューを嵌め込む嵌合部を有し、スクリューを嵌合部に嵌め込んだ状態でガイド枠の孔に挿入される保持具本体と、保持具本体の長さ方向の途中位置から、突起部に当接可能に設けられるフランジ部と、を備えたことを特徴とするスクリュー保持具である。
【0029】
このような構成によれば、保持具本体の嵌合部にスクリューを嵌め込んだ状態でガイド枠の孔に挿入し、保持具本体を軸回転させてスクリューを口腔内に埋め込んでいく。この際、所定深さまで埋め込むとフランジ部が突起部と当接して保持具本体の進行が止まり、スクリューのみが埋め込まれていく。やがてスクリューが嵌合部から外れることで、スクリューの埋め込み深さが決まることになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、歯科矯正用インプラント装置におけるスクリューを口腔内に取り付ける際に行われるドリルによる孔開けおよびスクリューの埋め込みを、容易かつ的確に行うことができるドリル補助装置、スクリューガイド装置および歯科矯正器具の取り付け補助装置セットを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係るガイド装置の構成を例示する斜視図である。
図2】(a)および(b)は、ガイドスリーブの構成を例示する斜視図である。
図3】ガイドスリーブとガイド枠との関係を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
図5】本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
図6】本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
図7】本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
図8】本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
図9】本実施形態に係るスクリュー保持具を例示する斜視図である。
図10】(a)および(b)は、スクリュー保持具によるスクリューの埋め込み方法を例示する模式断面図である。
図11】(a)から(c)は、スクリュー保持具によるスクリューの埋め込み方法を例示する模式断面図である。
図12】(a)から(c)は、インプラント装置の取り付け例を説明する模式図である。
図13】硬口蓋への施術の例を示す模式図である。
図14】(a)および(b)は、太い軸体を有するドリルを用いた孔開けの例を示す図である。
図15】太い軸体を有するドリルを用いた孔開けの例を示す図である。
図16】(a)および(b)は、太い軸体を有するドリルを用いた孔開けの例を示す図である。
図17】太い軸体を有するドリルを用いた孔開けの例を示す図である。
図18】(a)および(b)は、共用突起部の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0033】
(ガイド装置の構成)
図1は、本実施形態に係るガイド装置の構成を例示する斜視図である。
本実施形態に係るガイド装置1は、口腔内にドリル装置100によって孔hを開ける際のガイドとして用いられるとともに、孔hに複数のスクリュー5(後述の図9参照)を埋め込むためのガイドとしても用いられる。
本実施形態では、説明の便宜上、口腔内の硬口蓋HPから上顎骨に孔hを開ける場合を例とし、孔hを開ける硬口蓋HPの面から離れる方向を上(上側)、硬口蓋HPの面に近づく方向を下(下側)とする。また、左右方向、奥および手前で示す方向は患者を基準とした方向とする。
【0034】
ガイド装置1は、ガイド枠ユニット10と、固定部材20と、連結部30とを備える。ガイド枠ユニット10は、スクリュー5の埋め込み位置上に配置される筒状のガイド枠101が複数互いに連結するように構成される。本実施形態では、硬口蓋HPに開ける例えば4つの孔hの位置にそれぞれ対応して4つのガイド枠101が設けられ、この4つのガイド枠101が互いに連結した状態に設けられる。
【0035】
固定部材20は、患者の歯Tに被せられる部材である。本実施形態において、固定部材20は、患者の所定の歯Tの形に合わせて形成された歯型凹部201を有する。歯型凹部201を対応する歯Tに被せることで固定部材20が患者の歯Tを基準として的確に固定される。固定部材20を安定して固定するため、歯型凹部201は複数設けられていることが好ましい。例えば、患者の複数の臼歯のそれぞれの形に合わせて形成された複数の歯型凹部201が設けられる。複数の臼歯のそれぞれの形に合わせて複数の歯型凹部201を設けることで、固定部材20を安定して歯Tにセットすることができる。
【0036】
例えば、複数の歯型凹部201は、右大臼歯T1に被せられる第1歯型凹部201aと、左大臼歯T2に被せられる第2歯型凹部201bと、右小臼歯T3に被せられる第3歯型凹部201cとを有する。これにより、3つの歯型凹部201で安定感を高めるとともに、3つのうちの2つを右側の臼歯(右大臼歯T1および右小臼歯T3)に被せることで、左側(術者からみて右側)に施術具を入れるスペース(ドリル装置100を入れるスペースなど)を確保しやすくなる。
なお、歯型凹部201はこれらの歯以外の歯に被せられるように設けられていてもよい。
【0037】
連結部30は、ガイド枠ユニット10と固定部材20とを連結し、歯Tを基準にしてガイド枠ユニット10の口腔内での位置を決める部材である。連結部30は棒状に設けられ、固定部材20の各歯型凹部201とガイド枠ユニット10との間を繋ぐように設けられる。連結部30は、隣り合う歯型凹部201どうしを直接繋ぐものがあってもよい。連結部30によってガイド枠ユニット10と固定部材20との位置関係が決まり、各歯型凹部201を対応する歯Tに被せることで、口腔内での複数のガイド枠101の位置が決定される。
【0038】
本実施形態に係るガイド装置1において、複数のガイド枠101のそれぞれには、ガイド枠101の内側の孔101hに挿入される部材の挿入深さを設定する非環状の突起部102が設けられる。突起部102は、ガイド枠101の上側(硬口蓋HPに接触する側とは反対側)に突出するように設けられる。
【0039】
ガイド枠101の孔101hにはガイドスリーブ2やスクリュー5が挿入される。例えばガイドスリーブ2については、ガイドスリーブ2の外径はガイド枠101の孔101hの内径とほぼ等しい(僅かに小さい)。また、ガイド枠101の高さはガイドスリーブ2の長さよりも低く、ガイド枠101の孔101hにガイドスリーブ2を挿入すると、ガイド枠101の高さよりも高い位置にガイドスリーブ2の上端が位置することになる。ガイドスリーブ2はドリル装置100のドリル110を挿入する際のガイドとなる。ガイドスリーブ2の構成については後述する。
【0040】
ガイド枠101のそれぞれに非環状の突起部102が設けられていることで、ガイド枠101の孔101hにガイドスリーブ2などの部材を挿入する際、他のガイド枠101や他の突起部102と干渉せずにガイドスリーブ2などを適切な深さで挿入することができる。
【0041】
(ガイドスリーブの構成)
図2(a)および(b)は、ガイドスリーブの構成を例示する斜視図である。図2(a)および(b)はそれぞれガイドスリーブ2を異なる方向からみた斜視図となっている。
ガイドスリーブ2は、ガイド枠101の孔101hに挿入される筒状のスリーブ本体21と、スリーブ本体21の延在する方向に設けられる注水スリット22と、スリーブ本体21の外周面に設けられる突出部23とを備える。
【0042】
スリーブ本体21の長さはガイド枠101の高さよりも長く、スリーブ本体21をガイド枠101の孔101hに挿入するとガイド枠101よりも高い位置に突出した状態になる。スリーブ本体21の孔21hにはドリル装置100のドリル110が挿入される。ドリル110はスリーブ本体21の孔21hの方向に挿入されることでスリーブ本体21をガイドとして支持される。スリーブ本体21をドリル110に挿入した状態でガイド枠101の孔101hに挿入すると、ドリル110はガイド枠101に挿入されたスリーブ本体21によってガイドされることになる。
【0043】
注水スリット22は、ドリル110によって硬口蓋HPに孔hを開ける際に、スリーブ本体21の孔21hに挿入されたドリル110に対して冷却用の水を注ぐためのスリットである。ガイド枠101の孔101hにスリーブ本体21を挿入した際、注水スリット22はガイド枠101よりも上の位置から下端まで設けられており、ガイド枠101に遮られることなくドリル110に水を注ぐことができる。
【0044】
突出部23は、スリーブ本体21の外周面の途中に外周面から径方向外側に向けて突出するように設けられる。スリーブ本体21をガイド枠101の孔101hに挿入すると、ガイド枠101の突起部102と突出部23とが当たる位置までスリーブ本体21が挿入される。すなわち、突出部23は、突出部23との位置関係によってスリーブ本体21をガイド枠101の孔101hに挿入する深さを決める役目を果たす。
【0045】
図3は、ガイドスリーブとガイド枠との関係を示す斜視図である。
ガイドスリーブ2のスリーブ本体21の外周面には、周方向に所定の間隔で複数の突出部23が設けられる。例えば、注水スリット22の位置を除き上からみて90度間隔で3つの突出部23が設けられる。
【0046】
一方、ガイド枠101の突起部102には、上端から下方に向けた途中まで凹部1021が設けられる。ガイド枠101の孔101hにスリーブ本体21を挿入した際、この凹部1021に突出部23が嵌め込まれ、凹部1021の底に突出部23が到達した位置でスリーブ本体21の挿入深さが決まることになる。
【0047】
すなわち、ガイド枠101の突起部102の凹部1021における底の高さ(ガイド枠101の下面からの高さ)と、ガイドスリーブ2の突出部23における下面の高さとの関係から、ガイドスリーブ2をガイド枠101の孔101hに挿入した際の挿入深さが決定される。
【0048】
また、ガイドスリーブ2をガイド枠101の孔101hに挿入していくとき、突出部23が凹部1021に嵌め込まれることでガイドスリーブ2の回転を規制することができる。したがって、ガイドスリーブ2は、ドリル110の回転に影響されることなくガイド枠101の孔101hに挿入されていくことになる。
【0049】
ここで、複数のガイド枠101のそれぞれに設けられる非環状の突起部102は、上からみてガイド枠101の上端の周の180度以下、好ましくは90度以下の範囲であることが好ましい。また、隣り合うガイド枠101において、互いの突起部102が最近位置にならないように配置される。さらに、全てのガイド枠101において、それぞれの突起部102は、ガイドスリーブ2を回転しなくてもいずれかの突出部23と嵌合できる位置に設けられることが好ましい。
【0050】
例えば、ガイド枠ユニット10を上からみて、最も左に設けられるガイド枠101を第1ガイド枠101a、最も右に設けられるガイド枠101を第2ガイド枠101b、中央の手前に配置されるガイド枠101を第3ガイド枠101c、中央の奥に配置されるガイド枠101を第4ガイド枠101dとする。
また、第1ガイド枠101aに設けられる突起部102を第1突起部102a、第2ガイド枠101bに設けられる突起部102を第2突起部102b、第3ガイド枠101cに設けられる突起部102を第3突起部102c、第4ガイド枠101dに設けられる突起部102を第4突起部102dとする。
また、ガイドスリーブ2を上からみて、注水スリット22を手前にした状態で左側に設けられる突出部23を第1突出部23a、右側に設けられる突出部23を第2突出部23b、注水スリット22とは反対側に設けられる突出部23を第3突出部23cとする。
【0051】
第1突起部102a~第4突起部102dのそれぞれは、上からみて90度程度の範囲で設けられ、第1突起部102aは第1ガイド枠101aの左側、第2突起部102bは第2ガイド枠101bの右側、第3突起部102cは第3ガイド枠101cの奥側、第4突起部102dは第4ガイド枠101dの奥側に配置される。
【0052】
これにより、ガイドスリーブ2の注水スリット22を手前にした状態で回転させることなく、第1ガイド枠101a~第4ガイド枠101dのどのガイド枠101にガイドスリーブ2を挿入したとしても、第1突出部23a~第3突出部23cのいずれかが挿入したガイド枠101の突起部102の凹部1021に嵌め込まれるようになる。
【0053】
例えば、注水スリット22を手前にしてガイドスリーブ2を第1ガイド枠101aの孔101hに挿入すると、第1ガイド枠101aの左側に設けられた第1突起部102aの凹部1021に、スリーブ本体21の左側に設けられた第1突出部23aが嵌まることになる。
【0054】
また、注水スリット22を手前にしてガイドスリーブ2を第2ガイド枠101bの孔101hに挿入すると、第2ガイド枠101bの右側に設けられた第2突起部102bの凹部1021に、スリーブ本体21の右側に設けられた第2突出部23bが嵌まることになる。
【0055】
また、注水スリット22を手前にしてガイドスリーブ2を第3ガイド枠101cの孔101hに挿入すると、第3ガイド枠101cの奥側に設けられた第3突起部102cの凹部1021に、スリーブ本体21の奥側に設けられた第3突出部23cが嵌まることになる。
【0056】
また、注水スリット22を手前にしてガイドスリーブ2を第4ガイド枠101dの孔101hに挿入すると、第4ガイド枠101dの奥側に設けられた第4突起部102dの凹部1021に、スリーブ本体21の奥側に設けられた第3突出部23cが嵌まることになる。
【0057】
このように、複数のガイド枠101に順にガイドスリーブ2を挿入していく際、どのガイド枠101の孔101hに挿入する場合でもガイドスリーブ2を回転させることなくいずれかの突出部23がガイド枠101の突起部102の凹部1021に嵌め込まれることになる。これにより、注水スリット22をいつも同じ位置(例えば、口腔の手前側)にすることができ、ドリル110による孔開けの際の注水を決まった位置から行うことができる。
【0058】
また、本実施形態のように突起部102が非環状になっていることで、複数のガイド枠101が接近した状態で配置されていても、1つのガイド枠101の孔101hにガイドスリーブ2などを挿入する際、他のガイド枠101の突起部102と干渉せずに挿入することができる。特に、隣り合うガイド枠101のそれぞれの突起部102が互いに最近位置に配置されていないため、上からみて突起部102とは反対側に十分な空間を構成でき、ガイドスリーブ2を挿入する際に他の突起部102と干渉せずに施術できる。
【0059】
さらに、ガイドスリーブ2を挿入する際、ガイドスリーブ2の突出部23が突起部102の凹部1021に嵌め込まれることで、ガイドスリーブ2の挿入深さを安定して設定することができる。
【0060】
(ガイド装置の使用例)
次に、本実施形態に係るガイド装置1を用いた孔開けおよびスクリュー取り付けの例を説明する。
図4から図8は、本実施形態に係るガイド装置を用いた孔開けの例を説明する模式図である。
先ず、予め患者の歯Tの形に合わせて歯型凹部201の凹み形状、固定部材20に対してガイド枠ユニット10が患者の硬口蓋HPの所定位置に配置されるように連結部30の位置、長さ等を決定して、患者に合わせたガイド装置1を形成しておく。
【0061】
ガイド装置1を形成した後、図4に示すように、ガイド装置1を患者の口腔内にセットする。すなわち、ガイド装置1の固定部材20の歯型凹部201を患者の対応する歯Tに被せる。これにより、ガイド装置1のガイド枠ユニット10の位置が予め設定された患者の硬口蓋HPの所定位置にセットされる。ガイド枠ユニット10が硬口蓋HPの所定位置にセットされると、各ガイド枠101の位置が孔hを開ける位置の上に配置されることになる。各ガイド枠101の位置も、予め患者の口腔の状態(硬口蓋HPおよび上顎骨の状態)に合わせて孔開けに適した位置に設定されている。
【0062】
ガイド装置1をセットする際、第1歯型凹部201aを右大臼歯T1に対応して形成し、第2歯型凹部201bを左大臼歯T2に対応して形成し、第3歯型凹部201cを右小臼歯T3に対応して形成するとよい。3つの歯型凹部201で安定感を高めるとともに、3つのうちの2つを右側の臼歯(右大臼歯T1および右小臼歯T3)に被せることで、左側(術者からみて右側)に施術のためのスペースを確保しやすくなるためである。
【0063】
次に、図5に示すように、ドリル装置100のドリル110にガイドスリーブ2を挿入し、ガイド枠101の上に配置する。すなわち、ドリル装置100としては、孔開け方向に延びるドリル刃111と、ドリル刃111に連結される軸体112とからなるドリル110と、ドリル110の軸体112を保持する保持機構120と、保持機構120とともにドリル110を回転させる回転機構を有する回転動作部130と、スリーブ本体21にドリル110を挿通させた状態にあるガイドスリーブ2とを備える。
【0064】
ドリル110にガイドスリーブ2を挿入する際、ガイドスリーブ2の注水スリット22を手前にするとよい。注水スリット22が手前にあると、注水処理を行いやすくなるとともに注水状態を把握しやすくなる。そして、例えば、一番左の第1ガイド枠101aの上にドリル110を配置する。
【0065】
次に、図6に示すように、ガイドスリーブ2を挿入したドリル110をガイドスリーブ2とともに第1ガイド枠101aの孔101hに挿入し、注水スリット22から注水しながらドリル110によって硬口蓋HPから上顎骨に孔を開けていく。
【0066】
ドリル110は第1ガイド枠101aに挿入されたガイドスリーブ2によってガイドされ、真っ直ぐ入っていく。また、ガイドスリーブ2が第1ガイド枠101aの孔101hに挿入されると、ガイドスリーブ2の左側の第1突出部23aが第1ガイド枠101aの第1突起部102aの凹部1021に嵌まり、凹部1021の底に第1突出部23aが到達した位置で、それ以上深く入らないようになる。これにより、ガイドスリーブ2は第1ガイド枠101a内で安定して保持され、このガイドスリーブ2を介してドリル110もガイドスリーブ2によって真っ直ぐ支持されることになる。そして、ドリル110によって予定された深さまで掘り進めていく。なお、ドリル110は、スリーブ本体21の上端にドリル110の軸体112を保持する保持機構120が当接する深さまで進めて行くようにしてもよい。これにより、必要以上に深く孔hを開けることがなくなる。
【0067】
ここで、ガイド枠101によってドリル110のガイドを行う際、ガイド枠101の厚さ(高さ)が高いほどドリル110のガイドの安定性は高まる。しかし、ガイド枠101の厚さが高いほど口腔内でガイド枠101の上方のスペースが狭くなり、ガイド枠101にドリル110を挿入する際の施術性が悪化する。このため、本実施形態では、ガイド枠101の厚さ(高さ)を低くしておき、ドリル110にガイドスリーブ2を挿入した状態でガイドスリーブ2とともにドリル110をガイド枠101に挿入している。これにより、ガイド枠101の上方のスペースを十分に確保できるとともに、ガイド枠101にガイドスリーブ2を挿入することでドリル110をガイドする際の高さをガイドスリーブ2の高さまで引き上げることができる。
【0068】
また、ガイド枠101に対するガイドスリーブ2の挿入深さは突起部102の凹部1021の底に突出部23が当たる位置で決まるため、ドリル110で孔hを開ける際の深さに制限を設けることができる。このドリル110の深さのガイドとなる突起部102は非環状に設けられるため、ガイドスリーブ2やドリル装置100が他のガイド枠の突起部102に干渉することなく施術できる。
【0069】
次に、図7に示すように、ガイドスリーブ2を挿入したドリル110をガイドスリーブ2とともに、別のガイド枠101(例えば、一番右の第2ガイド枠101b)の孔101hに挿入し、注水スリット22から注水しながらドリル110によって硬口蓋HPから上顎骨に孔を開けていく。
【0070】
ドリル110は第2ガイド枠101bに挿入されたガイドスリーブ2によってガイドされ、真っ直ぐ入っていく。また、第1ガイド枠101aによって孔hを開けたときと同じ向きのままガイドスリーブ2を第2ガイド枠101bの孔101hに挿入すると、ガイドスリーブ2の右側の第2突出部23bが第2ガイド枠101bの第2突起部102bの凹部1021に嵌まり、凹部1021の底に第2突出部23bが到達した位置で、それ以上深く入らないようになる。これにより、ガイドスリーブ2は第2ガイド枠101b内で安定して保持され、このガイドスリーブ2を介してドリル110もガイドスリーブ2によって真っ直ぐ支持されることになる。そして、ドリル110によって予定された深さまで掘り進めていく。なお、先と同様に、ドリル110は、スリーブ本体21の上端にドリル110の軸体112を保持する保持機構120が当接する深さまで進めて行くようにしてもよい。これにより、必要以上に深く孔hを開けることがなくなる。
【0071】
ここで、先の孔開けのときとガイドスリーブ2の向きを変えずに第2ガイド枠101bへ挿入しても、第2ガイド枠101bでは右側に設けられた第2突起部102bの凹部1021に、ガイドスリーブ2の右側の第2突出部23bが嵌まることになり、ガイドスリーブ2の第2ガイド枠101bに対する挿入深さを規制できることになる。
また、ガイドスリーブ2を回転させずにするため、注水スリット22はいつも同じ向き(手前)になっており、注水を行いやすい。
【0072】
第3ガイド枠101cおよび第4ガイド枠101dを用いた孔開けも同様である。例えば、図8に示すように、ガイドスリーブ2を挿入したドリル110をガイドスリーブ2とともに、一番奥の第4ガイド枠101dの孔101hに挿入し、ドリル110によって硬口蓋HPから上顎骨に孔hを開けていく。
【0073】
ガイドスリーブ2は、他のガイド枠101によって孔を開けた際と同じ向きのまま第4ガイド枠101dに挿入される。これにより、ガイドスリーブ2の注水スリット22とは反対側の第3突出部23cが第4ガイド枠101dの第4突起部102dの凹部1021に嵌まり、凹部1021の底に第3突出部23cが到達した位置で、それ以上深く入らないようになる。これにより、ガイドスリーブ2は第4ガイド枠101d内で安定して保持され、このガイドスリーブ2を介してドリル110もガイドスリーブ2によって真っ直ぐ支持されることになる。そして、ドリル110によって予定された深さまで掘り進めていく。なお、先と同様に、ドリル110は、スリーブ本体21の上端にドリル110の軸体112を保持する保持機構120が当接する深さまで進めて行くようにしてもよい。これにより、必要以上に深く孔hを開けることがなくなる。
【0074】
ここで、先の孔開けのときとガイドスリーブ2の向きを変えずに第4ガイド枠101dへ挿入しても、第4ガイド枠101dでは奥側に設けられた第4突起部102dの凹部1021に、ガイドスリーブ2の奥側の第3突出部23cが嵌まることになり、ガイドスリーブ2の第4ガイド枠101dに対する挿入深さを規制できることになる。
また、ガイドスリーブ2を回転させずにするため、注水スリット22はいつも同じ向き(手前)になっており、注水を行いやすい。
【0075】
(スクリュー保持具)
次に、ドリル110によって開けた孔hにスクリュー5をねじ込む際に用いられるスクリュー保持具について説明する。
図9は、本実施形態に係るスクリュー保持具を例示する斜視図である。
スクリュー保持具3は、ガイド装置1のガイド枠101を利用してスクリュー5を孔にねじ込む際にスクリュー5を保持する部材である。
【0076】
スクリュー保持具3は、先端側にスクリュー5を嵌め込む嵌合部311を有し、スクリュー5を嵌合部311に嵌め込んだ状態でガイド枠101の孔101hに挿入される保持具本体31と、保持具本体31の長さ方向の途中位置から、ガイド枠101の突起部102に当接可能に設けられるフランジ部32と、を備える。
【0077】
スクリュー5は、ドリル110で開けた上顎骨の孔hに埋め込まれるねじ部51と、口腔内に露出する多角柱頭部52とを有する。ねじ部51はスクリュー形状になっており、上顎骨の孔hにねじ込むことができるようになっている。ねじ部51は、2条ねじや3条ねじといった多条ねじになっていることが好ましく、3点支持による横揺れ防止の観点から3条ねじになっていることがより好ましい。スクリュー5の材料には、生体親和性に優れた材料として、例えば純チタンおよびチタン合金等のチタン系材料やステンレス合金などが用いられる。
【0078】
多角柱頭部52の外形は正多角柱(例えば、六角柱)になっている。多角柱頭部52の中心には雌ねじが設けられており、後述するボルト7(図12参照)を締め付けられるようになっている。ねじ部51と多角柱頭部52との間にはフランジ部53が設けられている。スクリュー5を上顎骨に埋め込む際、フランジ部53の下面が硬口蓋HPの表面に当接する位置までスクリュー5が埋設される。
【0079】
スクリュー5を孔に埋め込む際、孔に対して真っ直ぐに埋め込む必要がある。本実施形態では、スクリュー保持具3の嵌合部311にスクリュー5の多角柱頭部52を嵌め込み、保持具本体31の延長上にスクリュー5を固定する。この状態でスクリュー5をガイド枠101の孔101hに挿入し、保持具本体31を軸回転させる。これにより、スクリュー保持具3をガイド枠101にガイドさせながら軸回転でき、スクリュー5を孔hに真っ直ぐ埋め込むことができる。
【0080】
図10(a)から図11(c)は、スクリュー保持具によるスクリューの埋め込み方法を例示する模式断面図である。
先ず、先に説明したガイド装置1を用いて硬口蓋HPから上顎骨に孔hを開けた後、ガイド装置1をそのまま口腔内に残しておく。この状態で、図10(a)に示すように、スクリュー保持具3の嵌合部311にスクリュー5の多角柱頭部52を嵌め込み、ガイド枠101の孔101hの上に配置する。多角柱頭部52は、スクリュー5が脱落しない程度の嵌め合いで嵌合部311に嵌め込まれる。
【0081】
次に、図10(b)に示すように、ガイド枠101の孔101hにスクリュー5を挿入し、孔にスクリュー5を埋め込んでいく。この際、施術者は手または術具を用いてスクリュー保持具3の保持具本体31を軸回転させる。これにより、保持具本体31の回転と一緒にスクリュー5が回転して孔hにねじ込まれていく。保持具本体31はガイド枠101にガイドされて進んでいくため、スクリュー5の埋め込み方向を安定させることができる。
【0082】
さらにスクリュー保持具3の保持具本体31を回転させてスクリュー5をねじ込んでいくと、図11(a)に示すように、スクリュー保持具3のフランジ部32がガイド枠101の突起部102の上端に当接する。
【0083】
この状態からさらにスクリュー保持具3の保持具本体31を回転させると、図11(b)に示すように、スクリュー保持具3の位置はそのままで、スクリュー5のみが埋め込まれていく。すなわち、スクリュー保持具3の進行は止まっても、スクリュー保持具3の嵌合部311からスクリュー5の多角柱頭部52が外れるまではスクリュー5を回転させることができ、スクリュー5のみをねじ込んでいくことができる。
【0084】
そして、嵌合部311からスクリュー5の多角柱頭部52が外れると、それ以上はスクリュー5を回転させることができず、スクリュー保持具3が空転する状態になる。この状態で、図11(c)に示すようにスクリュー保持具3をガイド枠101の孔101hから抜き出す。スクリュー保持具3のフランジ部32が突起部102に当たった位置で、嵌合部311とスクリュー5の多角柱頭部52との嵌合深さが、スクリュー5のフランジ部53と硬口蓋HPとの隙間とほぼ一致するようにすることで、スクリュー5の多角柱頭部52が嵌合部311から抜けた際、丁度、フランジ部53と硬口蓋HPとが当たる位置までスクリュー5が埋め込まれることになる。そして、そこまでスクリュー5が埋め込まれると、スクリュー保持具3をガイド枠101の孔101hから負荷なく抜き出すことができる。
【0085】
他の孔hにスクリュー5を埋め込む場合も同様に行われる。本実施形態では、ガイド枠101の突起部102が非環状に設けられているため、ガイド枠101の孔101hにスクリュー5やスクリュー保持具3を挿入する際、他のガイド枠101や他の突起部102と干渉せずに施術できる。また、スクリュー保持具3と突起部102との当接によってスクリュー5の埋め込み深さが規制され、確実に適切な深さまでスクリュー5を埋め込むことができるようになる。
【0086】
(インプラント装置の取り付け例)
図12(a)から(c)は、インプラント装置の取り付け例を説明する模式図である。
図12では、硬口蓋HPにインプラント装置を取り付ける例が示される。
先ず、図12(a)に示すように、硬口蓋HPに4つのスクリュー5を埋め込む。スクリュー5を埋め込むため、予め、本実施形態に係るガイド装置1を用いて硬口蓋HPに孔hを開けておき、その孔hにガイド装置1およびスクリュー保持具3を用いてスクリュー5を埋め込む。
【0087】
スクリュー5は、フランジ部53の下面が硬口蓋HPの口蓋粘膜に当たる位置まで埋め込まれる。硬口蓋HPにはスクリュー5の多角柱頭部52が露出する状態になる。本実施形態に係るガイド装置1を用いることで、患者に合わせた的確な位置および深さで孔hを開け、スクリュー5を安定した深さで埋め込むことができる。
【0088】
次に、図12(b)に示すように、硬口蓋HPに埋め込んだ4つのスクリュー5にベース部材6を取り付ける。ベース部材6にはスクリュー5の多角柱頭部52を通す孔61が設けられる。複数の孔61のうちいくつかは長孔になっており、スクリュー5の位置と孔61との僅かな位置ずれを吸収できるようになっている。
【0089】
4つのスクリュー5にベース部材6を取り付けた後は、各スクリュー5の多角柱頭部52にボルト7を締め付ける。これにより、ベース部材6が4つのスクリュー5に確実に固定されることになる。
【0090】
次に、図12(c)に示すように、ベース部材6の固定部62に補助具9を固定する。例えば、ワイヤー型の補助具9は歯Tに取り付けたバンドやブラケットに締結される。ワイヤー型の補助具9は、剛性の高いステンレス合金系のワイヤーを用いて歯Tとベース部材6との相対位置を固定してもよいし、ばね性の高いチタン合金系のワイヤーを用いて適宜湾曲させた状態として補助具9による矯正力(張力や押圧力)を調整して、ベース部材6を基準(固定源)にして歯Tに最適な力を加えてもよい。
【0091】
(口腔内への施術)
口腔内に下孔を形成した後、スクリューを埋め込む施術として、歯槽骨への人工歯根の設置が挙げられる。人工歯根は、歯根と同等の大きさを有するため、その直径は4mm程度である。このように大きな部材を埋め込むため、人工歯根を埋め込む前の下孔形成は、複数段階で行われる。
【0092】
具体的には、最初は細いドリルで深さ設定のための下孔が穿孔され、その後、細いドリルで形成した下孔を太いドリルを用いて拡径して、人工歯根を挿入するための空間(埋入窩)を歯槽骨内に形成する。それゆえ、細いドリルを用いた穿孔では、適切な深さの下孔形成が求められ、穿孔方向について厳密な制御は必要とされない。
【0093】
一方、太いドリルで拡径する際には、人工歯根を挿入する埋入窩の外径がこの工程で設定されるため、ドリルの回転軸をガイドスリーブで整えることが行われる場合もある。この場合には、ドリル刃は孔の側面を削ることから、連結部(ドリル軸部)はドリル刃よりも細く形成され、この連結部が挿入されるガイドスリーブは、その外径がドリル刃よりも太くなる部分を有して、歯槽骨上に設けられたガイド枠に嵌合される。
【0094】
このような歯槽骨への施術に対して、本実施形態では硬口蓋HPへの施術を行う場合に好適なものとなっている。
図13は、硬口蓋への施術の例を示す模式図である。
硬口蓋HPへのスクリュー埋め込みでは、人工歯根の埋設の場合と比べて細径(1~2mm)のスクリュー5が埋め込まれる。このため、1回の穿孔で下孔(孔h)を完成させ、形成した下孔にスクリュー5を埋め込む。患者への負担を最小限にする観点から、これらの下孔形成とスクリュー埋め込みとは、1回の施術で済ませることが望ましい。
【0095】
この場合、CT(Computed Tomography)などによって上顎骨の厚さを計測しておくことにより、形成する下孔の深さを予め設定することができる。この設定値に基づいて、穿孔に用いるドリル刃111の長さが設定される。
【0096】
このドリル刃111の長さは10mm程度となることが一般的である。ここで、ドリル刃111の外径よりも軸体112の外径の方が太いドリル110を用いると、穿孔したときに、軸体112のドリル刃111側の端部が上顎骨に接するとそれ以上の深さにドリル110は掘り進まないので、下孔の深さを適切に制御することができる。
【0097】
硬口蓋HPへのスクリュー埋め込みは、人工歯根の埋設とは異なり、硬口蓋HPが口腔内に作る腕状(凹型)の非平面(湾曲面)の狭い領域に複数の細いスクリュー5を埋め込むことが必要とされる。このため、細いドリル110での穿孔のそれぞれについて、穿孔方向をより正確に制御する必要がある。
【0098】
それぞれの下孔の穿孔方向を整えるためには、複数の穿孔位置に対応する複数のガイド枠101を有するガイド装置1を硬口蓋HP上に配置して、そのガイド枠101に支持されたガイドスリーブ2内にドリル刃111を挿入することにより、ドリル刃111の軸方向をガイドスリーブ2の中空軸に揃えることが好ましい。
【0099】
ここで、ガイドスリーブ2が適切に機能するためには、ドリル刃111の根元に位置する軸体112とガイドスリーブ2の内壁を摺動させることが必要とされるため、ガイドスリーブ2は、ドリル刃111の長さを超える長さを有して、硬口蓋HPから口腔内へと突出している必要がある。
【0100】
前述のとおり、ドリル刃111の長さは10mm程度であることから、ガイドスリーブ2の突出高さは10mm以上程度となってしまう。例えば、硬口蓋HPの椀状の深さを30mmだとすると、ドリル装置100のドリル110を含む長さは最低でも40mmであるから、口腔内で突出したガイドスリーブ2の上端からドリル刃111を挿入しようとすると、硬口蓋HP上に都合50mmの空間を設けなければならない。これは患者に過度に大きく口を開けることを求めることになり、患者にとって大きな負担となる。
【0101】
なお、人工歯根の埋設では、穿孔方向を制御することが必要とされるのは下孔を拡径する場合である。この場合、下孔の内側面を削るドリル刃の軸方向長さを短くすることが可能であるから、硬口蓋HPのドリリングの場合のように口腔内にガイドスリーブが突出することはない。
【0102】
(ドリル補助装置)
この硬口蓋HPへのドリリングに固有の問題(ガイドスリーブ2の突出量が多い)を解決するために、本実施形態では、ドリルガイド装置となるガイド装置1と、ガイド装置1に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブ2と、を備えたドリル補助装置A(図1参照)が用いられる。
【0103】
ガイド装置1は、硬口蓋HPの湾曲面の上に配置され、筒状のガイド枠が複数互いに連結してなるガイド枠ユニット10と、患者の歯に被せられる固定部材20と、ガイド枠ユニット10と固定部材20とを連結し、歯を基準にしてガイド枠ユニット10の湾曲面上の配置を決める連結部30と、ガイド枠ユニット10における湾曲面に対向する側とは反対側の一部から突出し、ガイド枠101の内側の孔101hに挿入されたガイドスリーブ2を保持する突起部102と、を備える。
【0104】
また、ガイドスリーブ2は、ドリル110を挿入可能な内径、およびガイド枠101の孔101hに挿入可能な外径を有する筒状のスリーブ本体21と、スリーブ本体21の延在する方向に設けられる注水スリット22と、スリーブ本体21の外周面に設けられ、スリーブ本体21を孔101hに挿入した際に突起部102に設けられた凹部1021と嵌合する突出部23と、を備える。
【0105】
このドリル補助装置Aでは、凹部1021の数と突出部23の数の総和は3以上であって、いずれのガイド枠101についても、ガイド枠101にガイドスリーブ2が挿入されたときに、注水スリット22が口腔前庭側を向くように、1つの凹部1021と1つの突出部23とが嵌合可能である。
【0106】
このような本実施形態に係るドリル補助装置Aでは、ガイド装置1とガイドスリーブ2とを一体化せずに、ガイドスリーブ2をガイド装置1に脱着可能に設け、ガイド装置1にガイドスリーブ2を取り付ける前にガイドスリーブ2にドリル110を挿入可能とした。このようにすれば、ドリル110に取り付けられたガイドスリーブ2をガイド装置1に取り付けることで、ガイドスリーブ2の中空軸はガイド枠101の中空軸と揃うため、ドリル110の穿孔方向をガイド枠101の中空軸方向に揃えることができる。
【0107】
また、ドリル110にガイドスリーブ2を挿入した状態でドリル110およびガイドスリーブ2のガイド枠101への取り付けが行われるため、ドリル110をガイド枠101に挿入するときはガイドスリーブ2の高さの影響を受けず、患者は過度に口を開ける必要がなくなり、患者への負担少なくすることができる。
【0108】
ドリル補助装置Aは、複数のガイドスリーブ2を備えていてもよい。それぞれのガイドスリーブ2は突出部23を有しているが、1つのガイドスリーブ2に複数の突出部23が設けられていてもよいし、1つの突出部23が設けられていてもよい。1つのガイドスリーブ2に複数の突出部23が設けられている場合、ガイドスリーブ2を複数のガイド枠101のいずれに挿入しても、ガイドスリーブ2を軸回転することなくいずれかの突出部23が突起部102の凹部1021と嵌合するようになっている。これにより、ガイドスリーブ2をどのガイド枠101に挿入しても、ガイドスリーブ2の向きを変えることなく突出部23を凹部1021に嵌合させることができる。
【0109】
ここで、ガイドスリーブ2のガイド装置1への取り付けは、ガイドスリーブ2の側面の一部を切り欠いて設けられた注水スリット22が手前側に(口腔前庭側を向くように)位置した状態がドリル作業中に維持されるように行わなければならない。また、1回の施術で、近接する複数の位置に下孔を設ける必要があるため、ガイド装置1では、ガイドスリーブ2を脱着可能なガイド枠101の複数が隣り合って配置される。このため、一つの穿孔位置のためのガイド枠101に設けられたガイドスリーブ2との嵌合部分(突起部102)が、他の位置に穿孔する際に邪魔になってはならない。
【0110】
これらの要請を満たすために、ガイドスリーブ2には、その注水スリット22が設けられていない側面から突出してガイドスリーブ2の中空軸方向に沿って延在する板状の突出部23を複数設けておくことが好ましい。また、それぞれのガイド枠101には、ガイド枠101における硬口蓋HPに対向する面と反対側の面に、中空軸方向に凸設された突起部102が非環状に設けられ、この突起部102にガイドスリーブ2の突出部23が嵌合可能な凹部1021が設けられる。
【0111】
これにより、いずれのガイド枠101についても、ガイドスリーブ2の突出部23をガイド枠101の突起部102の凹部1021に嵌合させたときに、ガイドスリーブ2の注水スリット22が一定の方向(口腔前庭側)を向くように露出させることが実現される。
【0112】
また、ドリル補助装置Aにおいて、複数のガイド枠101のそれぞれに関連付けて突起部102が個別に設けられている場合、突起部102のいずれも、その突起部102に関連付けられていないガイド枠101へのガイドスリーブ2の挿入を干渉しないことが好ましい。例えば、ガイド装置1に複数のガイド枠101が設けられている場合、左側に配置されたガイド枠101に関連付けられた突起部102はガイド装置1の左寄りに設けられ、右側に配置されたガイド枠101に関連付けられた突起部102はガイド装置1の右寄りに配置される。
これにより、複数のガイド枠101のそれぞれに関連付けて突起部102が個別に設けられていても、ガイドスリーブ2をガイド枠101の孔101hへ挿入する際に他のガイド枠101の突起部102に干渉することなくガイドスリーブ2をガイド枠101へ挿入することができる。
【0113】
また、ドリル補助装置Aにおいて、ガイドスリーブ2が複数の突出部23を有している場合、ガイド枠ユニット10に設けられた全ての凹部1021は、複数の突出部23のいずれかと嵌合可能になっていることが好ましい。これにより、ガイドスリーブ2の向きを変えることなく、いずれかの突出部23を凹部1021に嵌合させることができる。このため、1つ(1種類)のガイドスリーブ2を用意すれば、全ての凹部1021に嵌合可能なドリル補助装置Aを構成することができる。
【0114】
(スクリューガイド装置)
本実施形態では、このドリリングにおいてガイドスリーブ2を取り付けるために設けられた突起部102を、スクリュー埋め込み工程の際のスクリュー5の埋め込み深さの制御にも用いる。これにより、ガイド装置1を、下孔形成だけでなく、スクリュー埋め込みの際のスクリューガイド装置B(図9参照)とすることができる。
【0115】
すなわち、スクリューガイド装置Bは、先に説明したガイド枠ユニット10、固定部材20、連結部30および1つ以上の突起部102と、スクリュー保持具3とを備える。
【0116】
具体的には、埋め込むスクリュー5を保持するスクリュー保持具3が、スクリュー5を保持する保持具本体31に加えて、保持具本体31よりも外径が大きく、スクリュー埋め込み作業の途中で突起部102に当接するフランジ部32を有している。
保持具本体31は、先端側からスクリュー5を嵌め込む筒状の嵌合部311を有し、スクリュー5を嵌合部311に嵌め込んだ状態でガイド枠101の孔101hに挿入可能とされる。フランジ部32は、保持具本体31の長さ方向の途中位置から突起部102に当接可能に設けられる。
【0117】
スクリュー埋め込みが行われてスクリュー5を保持するスクリュー保持具3が硬口蓋HP側にある程度移動すると、所定の高さに凸説された突起部102にフランジ部32が当接する。フランジ部32が突起部102に当接することにより、スクリュー保持具3はそれ以上硬口蓋HPに近づくことができなくなるが、スクリュー締結のためのスクリュー保持具3の回転は継続されるため、保持具本体31に保持されたスクリュー5の硬口蓋HP内部への埋め込みは停止することなく継続される。そして、スクリュー5の埋め込みがある程度進行すると、スクリュー5が嵌合部311から分離して、スクリュー5の埋め込みが停止する。これにより、スクリュー5の埋め込み深さの制御が実現される。また、スクリュー5の埋め込みが完了した状態で、スクリュー保持具3の嵌合部311からスクリュー5が自動的に分離することになり、スクリュー保持具3のみをガイド枠101から抜き出すことができる。
【0118】
(歯科矯正器具の取り付け補助装置セット)
上記説明したガイド装置1およびガイドスリーブ2は、歯科矯正器具の取り付け補助装置セットC(図1および図9参照)としても構成される。すなわち、歯科矯正器具の取り付け補助装置セットCは、湾曲面を有する硬口蓋HPの湾曲面に穿孔して複数の下孔を形成するドリル110のガイドおよび複数の下孔のそれぞれにスクリュー5を埋め込むガイドとなるガイド装置1と、ガイド装置1に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブ2と、を備える構成である。
【0119】
(太い軸体を有するドリルを用いた孔開け)
図14図17は、太い軸体を有するドリルを用いた孔開けの例を示す図である。
図14(a)には、太い軸体112を有するドリル110の斜視図が示される。このドリル110の軸体112の外径は、ドリル刃111の外径よりも太くなっている。図14(b)には、ドリル110にガイドスリーブ2を挿入した状態を示す斜視図が示される。ガイドスリーブ2の内径は、ドリル110の軸体112の外径よりも僅かに大きくなっている。これにより、ガイドスリーブ2に対してドリル110の回転や摺動が妨げられないようになっている。
【0120】
硬口蓋HPへの孔開けを行うには、先ず、図15に示すように、ガイドスリーブ2を挿入したドリル110を、ガイド枠101の上に配置する。
次に、図16(a)に示すように、ガイドスリーブ2を挿入したドリル110をガイドスリーブ2とともにガイド枠101の孔101hに挿入する。この際、ドリル110よりも先にガイドスリーブ2をガイド枠101の孔101hに立てるように挿入する。ガイドスリーブ2の突出部23がガイド枠101の突起部102に設けられた凹部1021と嵌合することで、ガイドスリーブ2の位置(軸回りの位置)が決まり、ガイドスリーブ2の軸回りの回転抑制と、ガイドスリーブ2の向きが設定される(注水スリット22が口腔前庭側を向くように設定される。)。
【0121】
ガイドスリーブ2がガイド枠101の孔101hに挿入されると、ガイドスリーブ2の高さによってドリル110のガイド高さが増す状態となる。この状態で、図16(b)に示すように、ドリル110を回転させてガイドスリーブ2に沿って硬口蓋HP側へ進めることでドリル刃111によって孔hを開ける。この際、ドリル110の軸体112がドリル刃111よりも太いため、ドリル110の挿入深さは、軸体112のドリル刃111側の端部が硬口蓋HPに当接する位置で規制される。
【0122】
硬口蓋HPに孔hを開けたあとは、図17に示すように、ドリル110をガイドスリーブ2とともにガイド枠101から抜き出す。隣接する穿孔位置へ孔hを開ける場合には、ドリル110にガイドスリーブ2を挿入したままの状態で隣接するガイド枠101にドリル110をガイドスリーブ2とともに挿入する。この際、ガイドスリーブ2の向きを変えることなく隣接するガイド枠101に挿入しても、ガイドスリーブ2の先とは別の突出部23が隣接するガイド枠101の突起部102の凹部1021と嵌合し、ガイドスリーブ2の位置(軸回りの位置)を決めることができる。
【0123】
このように、口腔内の中央上側(上顎側)であって湾曲面を有する硬口蓋HPへの穿孔やスクリュー埋め込みを行う施術は、口の比較的外側にある歯槽骨への穿孔やスクリュー埋め込みとは異なり、ドリル装置や補助具のアクセスが非常に悪い位置での施術が必要となる。特に、椀状になった硬口蓋HPに複数本のスクリュー5を埋め込む場合、下孔の軸方向やスクリュー5の軸方向が非平行になる。これらの軸方向の角度は個々の患者によって異なり、口を開ける大きさにも限界があることから、1つのガイド装置1で複数の穿孔やスクリューガイドを行うための構成は、歯槽骨に対する穿孔やスクリューガイドとは全く異なる。
【0124】
本実施形態では、このように湾曲面を有する硬口蓋HPへの穿孔やスクリュー埋め込みを行う場合に、ガイド装置1とガイドスリーブ2とを別体にして狭い施術スペースであっても的確にドリルガイドを行うことができるとともに、穿孔からスクリュー埋め込みまで同じガイド装置1を付けたまま連続して行うことができる。すなわち、このような湾曲面を有する硬口蓋HPへの穿孔やスクリュー埋め込みを行う際の本実施形態の特有の作用効果は、歯槽骨への穿孔を行う際のガイドの構成を適用しただけでは到底得ることはできない。
【0125】
図18(a)および(b)は、共用突起部の例を示す斜視図である。
図18(a)および(b)に示す共用突起部1020は、複数のガイド枠101に関連付けられたものである。例えば、隣接する2つのガイド枠101について1つの共用突起部1020が設けられている。
図18(a)に示す共用突起部1020には、横方向に連通する1つの凹部1021が設けられる。図18(b)に示す共用突起部1020には、両側面にそれぞれ凹部1021が互いに連通することなく設けられる。
このように共用突起部1020を用いる場合には、ガイド枠101と突起部102とが1対1に対応しないことになる。複数のガイド枠101に関連付けられた共用突起部1020を設けることで、ガイド枠ユニット10の構成を簡素化することができる。
【0126】
また、ガイドスリーブ2に設けられる突出部23は、複数の凹部1021と嵌合可能とされる共用突出部であってもよい。すなわち、ドリル補助装置Aおよび歯科矯正器具の取り付け補助装置セットCにおいて、凹部1021の数と突出部23(共用突出部を含む)の数の総和は3以上であればよい。
【0127】
以上説明したように、実施形態によれば、歯科矯正用インプラント装置におけるスクリュー5を取り付ける際に必要なドリル110による孔開けおよびスクリュー5の埋め込みを、容易かつ的確に行うことができるガイド装置1、ガイドスリーブ2、ドリル装置100、スクリュー保持具3、ドリル補助装置A、スクリューガイド装置Bおよび歯科矯正器具の取り付け補助装置セットCを提供することが可能になる。
【0128】
なお、上記に本実施形態およびその具体例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態では硬口蓋HPから上顎骨に孔hを開けてスクリュー5を埋め込む例を示したが、口腔内の他の場所に孔hを開けてスクリュー5を埋め込む場合であっても適用可能である。また、前述の実施形態またはその具体例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0129】
1…ガイド装置
2…ガイドスリーブ
3…スクリュー保持具
5…スクリュー
6…ベース部材
7…ボルト
9…補助具
10…ガイド枠ユニット
20…固定部材
21…スリーブ本体
21h…孔
22…注水スリット
23…突出部
23a…第1突出部
23b…第2突出部
23c…第3突出部
30…連結部
31…保持具本体
32…フランジ部
51…ねじ部
52…多角柱頭部
53…フランジ部
61…孔
62…固定部
100…ドリル装置
101…ガイド枠
101a…第1ガイド枠
101b…第2ガイド枠
101c…第3ガイド枠
101d…第4ガイド枠
101h…孔
102…突起部
102a…第1突起部
102b…第2突起部
102c…第3突起部
102d…第4突起部
1020…共用突起部
110…ドリル
111…ドリル刃
112…軸体
120…保持機構
130…回転動作部
201…歯型凹部
201a…第1歯型凹部
201b…第2歯型凹部
201c…第3歯型凹部
311…嵌合部
1021…凹部
A…ドリル補助装置
B…スクリューガイド装置
C…歯科矯正器具の取り付け補助装置セット
HP…硬口蓋
T…歯
T1…右大臼歯
T2…左大臼歯
T3…右小臼歯
h…孔
【要約】      (修正有)
【課題】口腔内へのドリルによる孔開けおよびスクリューの埋め込みを、容易かつ的確に行うことができるようにする歯科矯正器具の取り付け補助装置セットを提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、湾曲面を有する硬口蓋の湾曲面から複数の孔を形成する際のガイドとなるドリルガイド装置1と、ドリルガイド装置に着脱自在に嵌め込まれるガイドスリーブ2と、を備えたドリル補助装置である。ドリルガイド装置は、筒状のガイド枠101が複数互いに連結してなるガイド枠ユニット10と、患者の歯に被せられる固定部材20と、ガイド枠ユニットと固定部材とを連結し、ガイド枠ユニットの湾曲面上の配置を決める連結部30と、ガイド枠に挿入されたガイドスリーブを保持する突起部102と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18