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  • 特許-加圧検査治具および加圧検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】加圧検査治具および加圧検査方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/82 20060101AFI20220104BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B29C65/82
G01M3/26 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017089091
(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2018187771
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 龍之
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】江丸 仁
(72)【発明者】
【氏名】戸田 晴富
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315670(JP,A)
【文献】特開平11-277027(JP,A)
【文献】特開2008-107338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の遮水シートの端部同士を重ね合わせた状態で一方の遮水シートの縁を他方の遮水シートの表面に固着することにより筒状に形成されたシート重合部の接合状態を検査する際に使用される加圧検査治具であって、
前記シート重合部の一端に挿入される送気部と、
前記シート重合部の一端において、前記2枚の遮水シートを挟持することにより前記シート重合部を遮蔽するチャック部と、からなり、
前記チャック部は、一対の挟持部材と、一対の前記挟持部材の両端を貫通する締付ボルトと、を備えており、
前記挟持部材の中央部には、他の前記挟持部材側に突出する把持部が形成されていて、
前記把持部は、前記シート重合部の幅よりも大きな幅を有し、
前記把持部の中央には、前記送気部と嵌合可能な凹部が形成されていることを特徴とする、加圧検査治具。
【請求項2】
前記送気部が断面視多角形状の嵌合部を有しており、
前記凹部が、前記嵌合部の上半分または下半分の外形と同形状を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の加圧検査治具。
【請求項3】
2枚の遮水シートの端部同士を重ね合わせた状態で一方の遮水シートの縁を他方の遮水シートの表面に固着することにより筒状に形成されたシート重合部の接合状態を請求項1または請求項2に記載の加圧検査治具を利用して確認する加圧検査方法であって、
前記シート重合部の端部に送気部を挿入するとともに、前記シート重合部の端部において前記2枚の遮水シートおよび前記送気部をチャック部により挟持することによって当該シート重合部の端部を密閉した後、
前記送気部から前記シート重合部に所定の圧力の流体を圧入して当該シート重合部内の圧力を計測することを特徴とする、加圧検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シート接合部の加圧検査治具および加圧検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場では、投棄された廃棄物から汚染物質などが外部に流出することがないように、遮水層により周囲を覆っている。遮水層は、複数の遮水シートを接合することにより、廃棄物処分場の側面および底面を覆っている。遮水シート同士の接合方法としては、遮水シートの端部同士を重ね合せた状態で、一方の遮水シートの縁部を他方の遮水シートの表面に溶着することにより行う、いわゆるダブルシーム構造が知られている。ダブルシーム構造による接合部では、両端が密封された帯状の重合部分(筒状部分)が形成される。
【0003】
遮水層を施工する際には、接合状態の検査を行うことで、遮水シート同士が確実に接合されていることを確認する。
遮水シートの接合部の検査方法として、例えば、接合部(筒状部分)に空気を圧入して、内部の加圧状態を測定する加圧検査方法が採用される場合がある。加圧検査方法では、接合部(筒状部分)の両端部をバイスで遮蔽した状態で、接合部に突き刺した送気用の針から空気を圧入し、一定時間(例えば30秒間)の間、内部の圧力が一定の圧力(例えば、初期値の80%以上)を保持することを確認する。
また、特許文献1には、接合部に突き刺した針から煙を送り込んだ後、当該煙が接合部から外部に流出する箇所を確認する検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-069490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の検査方法では、接合部に針を突き刺す際に、遮水シートの重合部分(2枚の遮水シート)を針が貫通することがないように行う必要があるが、遮水シートは所定の固さと厚みを有しているため、針を突き刺す際の加減が難しい。また、先端が尖った針は慎重に取り扱う必要がある。
このような観点から、本発明は、簡易かつ安全に遮水シート接合部の加圧検査を実施することを可能とした加圧検査治具および加圧検査方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の加圧検査治具は、2枚の遮水シートの端部同士を重ね合わせた状態で一方の遮水シートの縁を他方の遮水シートの表面に固着することにより筒状に形成されたシート重合部の接合状態を検査する際に使用するものである。この加圧検査治具は、前記シート重合部の一端に挿入される送気部と、前記シート重合部の一端において前記2枚の遮水シートを挟持することにより前記シート重合部を遮蔽するチャック部とからなり、前記チャック部は、一対の挟持部材と一対の前記挟持部材の両端を貫通する締付ボルトとを備えており、前記挟持部材の中央部には他の前記挟持部材側に突出する把持部が形成されていて、前記把持部は前記シート重合部の幅よりも大きな幅を有し、前記把持部の中央には、前記送気部と嵌合可能な凹部が形成されていることを特徴とする。なお、前記送気部が断面視多角形状の嵌合部を有しており、前記凹部が前記嵌合部の上半分または下半分の外形と同形状に形成されているのが望ましい。
【0007】
また、本発明の加圧検査方法は、2枚の遮水シートの端部同士を重ね合わせた状態で一方の遮水シートの縁を他方の遮水シートの表面に固着することにより筒状に形成されたシート重合部の接合状態を前記加圧検査治具を利用して確認するものである。この加圧検査方法は、前記シート重合部の端部に送気部を挿入するとともに、前記シート重合部の端部において前記2枚の遮水シートおよび前記送気部をチャック部により挟持することによって当該シート重合部の端部を密閉した後、前記送気部から前記シート重合部に所定の圧力の流体を圧入して当該シート重合部内の圧力を計測することを特徴とする。
【0008】
かかる加圧検査治具および加圧検査方法によれば、先端が尖った針を使用する必要がないため、取り扱いやすい。また、送気部およびチャック部のシート重合部への設置が容易なため、作業性に優れている。チャック部を利用してシート重合部の端部を遮蔽するため、バイス等の端部を遮蔽するための治具を別途用意する必要がない。また、針を遮水シートに突き刺す必要がないため、作業性に優れている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加圧検査治具および加圧検査方法によれば、簡易かつ安全に遮水シート接合部の加圧検査を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る加圧検査状況を示す図である。
図2】加圧検査治具の送気部を示す平面図である。
図3】(a)は加圧検査治具のチャック部を示す正面図、(b)は挟持部材51を示す斜視図である。
図4】加圧検査治具2の設置状況を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では、複数の遮水シート1をつなぎ合わせることにより廃棄物処分場の遮水層を形成する場合において、図1に示すように、遮水シート1同士の接合部(シート重合部3)の接合状態を検査する加圧検査治具2と、これを利用した加圧検査方法について説明する。
本実施形態では、2枚の遮水シート1,1の端部同士を重ね合わせた状態で一方の遮水シート1の縁を他方の遮水シート1の表面に固着することにより遮水シート1同士を接合する、いわゆるダブルシーム構造を採用している。加圧検査は、ダブルシーム構造により筒状に形成されたシート重合部3の接合状態を確認するものである。
【0012】
加圧検査は、シート重合部3の一端に設置された加圧検査治具2を利用して行う。
加圧検査治具2は、送気部4とチャック部5とを備えている。
送気部4は、圧縮空気を圧送可能な中空部材である。送気部4は、図2に示すように、先端側の挿入部41と、基端部に形成された接続部42と、挿入部41と接続部42との間に形成された嵌合部43とを備えている。
【0013】
挿入部41は、シート重合部3に挿入される部分である。本実施形態の挿入部41は、先端が尖っていない針状部材であって、いわゆる鈍針である。なお、挿入部41は、シート重合部3に挿入可能で、かつ、圧縮空気を挿通可能な部材あれば限定されるものではなく、例えば、先端が尖ったいわゆる鋭針であってもよい。
接続部42は、圧縮空気の送気管7を接続するためのコネクタであって、送気部4の基端部に形成されている。なお、接続部42の構成は限定されるものではなく、例えば、ネジ式コネクタであってもよいし、ワンタッチ式コネクタであってもよい。
嵌合部43は、送気部4の軸方向中央部に形成された断面視多角形状(本実施形態では断面ひし形状)部分である。本実施形態の嵌合部43は、チャック部5の厚さ(図3(a)において紙面と直交する方向の長さ)以上の長さを有している。なお、嵌合部43の断面形状は限定されるものではなく、例えば、五角形や六角形であってもよい。また、嵌合部43の形成箇所は、必ずしも軸方向中央部である必要なく、例えば、接続部42の先端側に隣接して形成されていてもよい。また、嵌合部43の長さは限定されない。
【0014】
チャック部5は、シート重合部3の一端において遮水シート1,1を挟持することで、シート重合部3の一端を遮蔽する。本実施形態のチャック部5は、図3(a)に示すように、一対の挟持部材51,51と、一対の挟持部材51,51を貫通する締付ボルト52,52とを備えている。
挟持部材51は、シート重合部3の幅(一方の遮水シート1の縁と他方の遮水シート1の縁との間隔)よりも大きな幅を有した金属部材により構成されている。挟持部材51の中央部には、他の挟持部材51側に突出する把持部53が形成されていて、挟持部材51の両端には、固定部54が形成されている。
【0015】
把持部53は、シート重合部3の幅よりも大きな幅を有しており、把持部53の中央には、凹部55が形成されている。把持部53の高さ寸法は、凹部55に向かうに従って大きくなるように形成されている。凹部55は、嵌合部43の上半部分または嵌合部43の下半部分の断面形状と同形状(本実施形態では二等辺三角形)に形成されている。すなわち、一対の挟持部材51,51の凹部55同士を対向させると、嵌合部22の断面形状と同形状(ひし形)の空間が形成される。また、一対の挟持部材51,51の凹部55同士を対向させると、凹部55の両側には、凹部55から把持部53の端部に向かうに従って間隔が大きくなる隙間が形成される。
図3(b)に示すように、固定部54には、締付ボルト52を挿通するための貫通孔56が形成されている。
締付ボルト52は、一対の挟持部材51,51の貫通孔56に挿通される。図3(a)に示すように、締付ボルト52の先端側にナット57を螺合することで、一対の挟持部材51,51に締付力を付与する。
【0016】
本実施形態の加圧検査方法では、まず、シート重合部3の一端に加圧検査治具2を設置する。加圧検査治具2は、図4に示すように、シート重合部3の一端に送気部4を挿入するとともに、シート重合部3の一端をチャック部5によって密閉する。
送気部4は、遮水シート1同士の間に挿入する。このとき、嵌合部43が2枚の遮水シート1,1に挟まれた状態になるまで送気部4を差し込む。また、シート重合部3の上下にそれぞれ挟持部材51を配設した状態で、両挟持部材51,51に挿通した締付ボルト52にナット57を螺合することによりシート重合部3の端部を挟持する。このとき、嵌合部43と凹部55とを嵌合させることで、遮水シート1,1とともに送気部4も挟持する。把持部53,53の間に介在させた遮水シート1,1の端部を把持部53,53で押圧することにより、嵌合部43の外面に遮水シート1,1を密着させる。
【0017】
本実施形態では、シート重合部3の一端側において、遮水シート1の一部を切り欠くことで、シート重合部3の両脇に一対の溝11,11を形成しておく。加圧検査治具2をシート重合部3の一端に設置する際には、締付ボルト52が溝11を挿通するため、シート重合部3をチャック部5によって遮蔽することが可能となる。なお、本実施形態では、三角形状の溝11を形成するが、溝11の形状は限定されるものではない。また、溝11は、必要に応じて形成すればよい。また、溝11に代えて、締付ボルト52を挿通可能な貫通孔を遮水シート1に形成してもよい。
【0018】
次に、図1に示すように、シート重合部3の他端をバイス6により遮蔽する。本実施形態のバイス6は、一対の挟持部61(図面では一方の挟持部61のみが表示されている)と握部62とを有している。挟持部61は、シート重合部3の幅(一方の遮水シート1の縁と他方の遮水シート1の縁との間隔)よりも大きな幅を有している。バイス6は、シート重合部3の上下にそれぞれ挟持部61を配設した状態で、握部62で締め付けることにより、シート重合部3の他端を遮蔽する。バイス6の構成は限定されるものではない。また、シート重合部3の他端の遮蔽方法は、限定されるものではない。なお、シート重合部3の他端を遮蔽するタイミングは限定されるものではなく、例えば、加圧検査治具2をシート重合部3の一端に設置する前に行ってもよい。
【0019】
シート重合部3の両端を加圧検査治具2およびバイス6によって遮蔽したら、送気部4からシート重合部3内に所定の圧力の圧縮空気を圧入して、シート重合部3内の圧力を計測する。圧縮空気は、図示しないエアーポンプから送気部4の接続部42に接続された送気管7を介して圧送する。本実施形態では、シート重合部3内が所定の圧力(本実施形態では0.1MPa)になるように、シート重合部3内に圧縮空気を圧入した後、30秒間のシート重合部3内の圧力の変化を測定する。
本実施形態では、シート重合部3内の30秒間の圧力が80%(0.08MPa)維持されていれば、シート重合部3が良好に接合されていると認定する。シート重合部3の接合を確認したら、加圧検査を終了し、加圧検査治具2およびバイス6を撤去する。
【0020】
本実施形態の加圧検査治具2および加圧検査方法によれば、加圧検査治具2(送気部4)のシート重合部3への設置が容易なため、作業性に優れている。すなわち、遮水シート1に針を貫通させる手間を省略することで、作業の手間を大幅に低減することができる。また、送気部4として先端が尖った針を使用する必要がないため、取り扱いやすい。また、チャック部5を利用してシート重合部3の一端を遮蔽するため、加圧検査治具2とは別にバイス等の端部を遮蔽するための治具を別途用意する必要がない。そのため、作業の手間を低減することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、送気部4の一部に断面視多角形状の嵌合部43が形成されている場合について説明したが、嵌合部43は必要に応じて形成すればよい。また、嵌合部43は、必ずしも多角形状である必要はなく、例えば、断面楕円形状であってもよいし、複数の凹凸が形成された形状であってもよい。
チャック部5の挟持部材51には、遮水シート1との当接面にゴムシート等の緩衝材が設けられていてもよい。挟持部材51を構成する材料は、シート重合部3の端部を遮蔽することが可能な強度を有していれば、金属部材に限定されるものではない。
圧縮空気の供給手段はエアーポンプに限定されるものではなく、例えば、コンプレッサーであってもよい。また、前記実施形態では、シート重合部3内に圧縮空気を圧入するものとしたが、加圧試験に使用する流体は圧縮空気に限定されるものではない。例えば、水等の液体であってもよいし、煙等であってもよい。
加圧検査において管理基準となるシート重合部3内の圧力は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
遮水シート1の用途は、遮水層に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
1 遮水シート
2 加圧検査治具
3 シート重合部
4 送気部
41 挿入部
42 接続部
43 嵌合部
5 チャック部
51 挟持部材
52 締付ボルト
53 把持部
54 固定部
55 凹部
56 貫通孔
57 ナット
6 バイス
7 送気管
図1
図2
図3
図4