(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】片持ち式採血作業台
(51)【国際特許分類】
A61B 5/15 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61B5/15
(21)【出願番号】P 2017109438
(22)【出願日】2017-06-01
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591086854
【氏名又は名称】株式会社テクノメデイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】片本 了平
(72)【発明者】
【氏名】石田 伸司
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09538992(US,B1)
【文献】意匠登録第1519802(JP,S)
【文献】特開2011-139731(JP,A)
【文献】特開2005-065989(JP,A)
【文献】特開2002-177220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15 - 5/157
A61G 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定案内部材と、固定案内部材に対して昇降可能に構成された昇降アームとを備えた昇降手段と、
前記昇降アームに片持ち支持された採血作業板と
を備えた片持ち式採血作業台であって、
各採血作業台を仕切るパーテーション構造体を有し、
前記採血作業板が、前記昇降アームに対して水平位置から上方に向けて起立位置まで回動可能に支持され、
前記昇降手段の固定案内部材が、
前記パーテーション構造体に直接固定
され、前記採血作業板が設けられた昇降手段が、前記パーテーション構造体によって支持されるように構成し、
前記採血作業板を水平位置に移動させた時に採血作業板の下方に実質的になにもない空間を形成するようにした
ことを特徴とする片持ち式採血作業台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から血液を採血する時に用いられる採血作業台の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院等において血液検査を行うために患者から血液を採血することはよく行われている。
近年、病院等では採血専用の採血室を設け、その採血室に複数の採血台を設置し、各採血台において、医師が予め指定した血液の検査項目に応じて採血をすることが多い。
ところで、採血時には、採血作業台を挟んで患者と採血作業者が向かい合い、患者が採血作業台の作業板の上に腕を伸ばして載せて、採血作業者は腕に針を穿刺して採血を行う。
このため、採血作業台は、患者が作業板の上に腕を伸ばして載せることができるように、患者の下半身が十分に作業板の下に入ることができるように構成されていることが望ましい。
また、採血後立ち上がって時に、患者が貧血等によってバランスを崩して倒れることもあるが、このような場合に、患者と採血作業者との間に採血作業板があると、採血作業者は採血作業板越しに患者を支えなければならず、採血作業板が邪魔になる。このため、採血作業板は、必要に応じて折り畳むことができ、緊急時に採血作業者が、採血作業板越しではなく、直接、患者を支えることができるように構成されていることが望ましい。
さらにまた、採血作業台は、上記したように患者がその採血作業板の上に腕を伸ばして載せるため、採血作業台には患者の体重を支えることができる剛性が求められる。
上記した様々な要求を満たすように片持ち式の折り畳み可能な採血作業台が提案されている(特許文献1)
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した採血台は、H字状の底板に垂直方向に伸びる昇降手段を設けている。昇降手段は、底板に固定された固定案内部材と、該固定案内部材に沿って昇降可能に設けられた昇降アームとから成り、昇降アームの上端に開閉可能な採血作業板が枢止されている。
H字状の底板を設けることによって、使用時に採血台にかかる患者の体重を支えることが可能になり、また、採血作業板を昇降アームの上端に開閉可能に設けることにより、採血作業板の高さを調整可能で、使用していない時に採血作業板を跳ね上げて採血作業台を通過することを可能にしている。
しかし、この従来の採血作業台は、患者の体重を支えるために全体として高い剛性を必要としており、特に、底板は、採血作業板の上に患者が腕を載せた時に採血作業台が前後左右に揺れたり、倒れたりしないように、採血作業板の幅方向及び前後方向に対して十分な大きさを確保する必要がある点で課題が残っている。
即ち、上記したように、採血作業台は、患者が採血作業板の上に腕を伸ばして載せることができるように、患者の下半身が十分に採血作業板の下に入ることができるように構成されている必要があるところ、従来の採血作業台は、十分な大きさの底板を設ける必要があるため、例えば、イスの脚部が底板にひっかかってしまい、患者の下半身が十分に採血作業板の下に入らない等の問題がある。また、無理に患者の下半身を採血作業板の下まで入れようとして、イスの脚部や車いすのタイヤの一部を底板の上に載せると、イスや車いすにガタツキが生じる。採血作業は、患者の腕に針を穿刺するものであるため、患者の身体は当然に安定している必要があり、このようにイスや車いすにガタツキが生じる構成は問題がある。
さらに、従来の採血作業台のように広く大きい底板が設けられていると、例えば、採血後に貧血等により患者が倒れそうになり、採血作業者が採血作業板を跳ね上げて患者の近くまで行って患者を支えようとする時に、底板に足が引っかかって躓く等の原因になるため問題がある。
本発明は、上記した従来の問題点を全て解決することができる採血作業台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために本発明に係る片持ち式採血作業台は、固定案内部材と固定案内部材に対して昇降可能に構成された昇降アームとを備えた昇降手段と、前記昇降アームに片持ち支持された採血作業板とを備えた片持ち式採血作業台であって、前記採血作業板が、前記昇降アームに対して水平位置から上方に向けて起立位置まで回動可能に支持され、前記昇降手段の固定案内部材を、各採血作業台を仕切るパーテーション構造体に直接固定して該採血作業台が前記パーテーション構造体によって支持されるように構成し、前記採血作業板を水平位置に移動させた時に採血作業板の下方に実質的になにもない空間を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る片持ち式採血作業台は、固定案内部材と固定案内部材に対して昇降可能に構成された昇降アームとを備えた昇降手段と、前記昇降アームに片持ち支持された採血作業板とを備えた片持ち式採血作業台であって、前記採血作業板が、前記昇降アームに対して水平位置から上方に向けて起立位置まで回動可能に支持され、前記昇降手段の固定案内部材を、各採血作業台を仕切るパーテーション構造体に直接固定して該採血作業台が前記パーテーション構造体によって支持されるように構成し、前記採血作業板を水平位置に移動させた時に採血作業板の下方に実質的になにもない空間を形成するようにしたことを特徴としているので、採血作業板の下方にイスや車いすの障害になるものが一切なく、従って、患者の下半身を十分に採血作業板の下方に入れることが可能になる。また、患者の下半身を十分に採血作業板の下方にいれても、採血作業板の下方には実質的になにもない空間が形成されているので、イスや車いすのタイヤが底板等に乗り上げることがなく、従って、イスや車いすにガタツキが生じることがない。さらに、採血作業板が水平位置から上方に向けて起立位置まで回動可能に構成されているため、採血後に患者が貧血等で倒れそうになった時に採血作業者は採血作業板を跳ね上げて患者の近くに行き患者を支えることが可能になり、また、上記したように採血作業板の下方には実質的になにもない空間が形成されているので、採血作業者が患者の近くへ行く時に、底板等が足に引っかかる危険もない。
採血台を仕切るパーテーションは採血台を複数並べて設置する時に患者のプライバシーを守るために設けられるものであるため、採血作業台のために別途専用の固定構造体を設ける必要なく、採血作業台を適切な位置に支持することが可能になる。パーテーションは採血台を仕切るために設けられるので、必ず、採血台に隣接して配置されるため、採血作業台を固定する固定構造体としては最適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る採血作業台の第一の実施例を示す斜視図であり、作業板が最下位置で水平位置にある状態を示している。
【
図2】本発明に係る採血作業台の第一の実施例を示す斜視図であり、作業板が上方に上げられた位置で水平位置にある状態を示している。
【
図3】本発明に係る採血作業台の第一の実施例を示す斜視図であり、作業板が上方に上げられた位置で起立位置にある状態を各々示している。
【
図4】本発明に係る採血作業台の第二の実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る採血作業台の第三の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した幾つかの実施例を参照して本発明に係る採血作業台の実施の形態について説明していく。
【0009】
図1~
図3は、本発明に係る採血作業台の第一の実施例を示す斜視図であり、
図1は作業板が最下位置で水平位置にある状態を示し、
図2は作業板が上方に上げられた位置で水平位置にある状態を示し、
図3は作業板が上方に上げられた位置で起立位置にある状態を各々示している。
図面に示すように、本発明に係る片持ち式採血作業台1は、昇降手段2と、昇降手段2に片持ち支持された採血作業板3から成る。
図中符号20は固定構造体としてのパーテーション構造体を示しており、このパーテーション構造体20は、相互に離間して配置された二枚の仕切り板21,22を有し、これら仕切り板21及び22の間に、三つの引出しを備えた収容部23が設けられている。
前記昇降手段2は、それ自体が、前記パーテーション構造体20の一方の仕切り板23の側面に固定されて動かない固定案内部材4と、該固定案内部材4に入れ子式に伸縮自在に収容された昇降アーム5とから成り、該昇降アーム5は、固定案内部材4に設けられた昇降ボタン6を操作することで、不図示のモータや油圧ジャッキ等の適当な駆動手段によって固定案内部材4に対して上下に動くように構成されている。前記モータや油圧ジャッキ等の動力源は、パーテーション構造体20に設けられた電源を使用する。
前記昇降アーム5の上端には採血作業板3が回動可能に片持ち支持されている。以下に採血作業板3の支持構造について説明する。
図3において、符号7は、支持プレートを示しており、この支持プレート7は昇降アーム5の上端に、昇降アーム5の長手方向と直交する方向、即ち、水平方向を向くように固定されている。この支持プレート7は、採血作業板3を使用位置、即ち、水平位置に移動させた時に、採血作業板3にかかる患者の体重を支持するのに十分な強度及び寸法を有する。また、
図3において、符号8は、採血作業板3の裏面に固定された連結プレートを示しており、この連結プレート8と支持プレート7とが、一対のヒンジ部材9及び10によって回動可能に連結されている。支持プレート7と連結プレート8との間には、採血作業板3を上方に回動させた時に採血作業板3の回転角度を規制するステー11が設けられており、このステー11は、採血作業板3を起立位置まで回動させた時に、採血作業板3が水平位置に戻る方向に動かないようにロックされる、公知のロック機構を備えたステーであり、採血作業板3を一度起立位置まで回動させると、ステー11のロックを解除しない限りは採血作業板3を水平位置に動かすことができないように構成されている。
上記したように構成された支持プレート7には、採血作業板3の水平度を調整するための一対のアジャスタ12が設けられている。
また、支持プレート7及び連結プレート8には、鉄道車両やバス等に用いられるドアをスライドさせるだけでワンタッチで閉まるように構成された公知のスライドラッチが設けられている。具体的には、例えば、支持プレート7にバネ等によって閉方向に付勢された回転可能な係止部を有するラッチ本体13を設け、連結プレート8には、前記ラッチ本体13の係止部が係止するラッチ受け部14が設けられている。
【0010】
上記したように構成された採血作業台によれば、採血作業板3を片持ち支持する昇降手段2の固定案内部材4が固定構造体としてのパーテーション構造体20に固定されているため、採血作業台が独自に底板を有する必要がない。このため、採血作業体3を使用位置、即ち、水平位置に移動させた時に採血作業板3の下方には実質的になにもない空間が形成されることになり、これにより、採血のために患者が採血作業板3の上に腕を載せる時に、何の障害もなく、患者がその下半身を十分に採血作業板3の下方に入れることが可能になり、底板にイスや車いすが乗り上げる等してイスや車いすにガタツキが生じたりすることもなくなる。
さらに、昇降手段2を操作することで採血作業板3の高さを、患者の体形や伸長に合わせて調整することが可能である。
さらにまた、採血台を仕切るパーテーションは採血台を複数並べて設置する時に患者のプライバシーを守るために設けられるものであるため、採血作業台のために別途専用の固定構造体を設ける必要なく、採血作業台を適切な位置に支持することが可能になる。
さらに、採血作業板3が水平位置から上方に向けて起立位置まで回動可能に構成されているため、採血後に患者が貧血等で倒れそうになった時に採血作業者は採血作業板3を跳ね上げて患者の近くに行き患者を支えることが可能になり、また、上記したように採血作業板3の下方には実質的になにもない空間が形成されているので、採血作業者が患者の近くへ行く時に、底板等が足に引っかかる危険もない。
さらに、上記したように構成された採血作業台によれば、支持プレート7と連結プレート8との間にロック付きのステー11を設け、採血作業板3を起立位置まで回動させるとステー11がロックされ、ロックを解除しない限りは採血作業板3が水平位置に戻る方向に動けなくなるように構成されているので、一度、採血作業板3を起立位置まで回動させれば、その後、何の操作もなく、突然、採血作業板3が水平方向に動いて、採血場を通過しようとしている採血作業者等に当たる等の危険がない。
さらにまた、上記したように構成された採血作業台によれば、支持プレート7と連結プレート8との間に、所謂、スライドラッチ機構が設けられており、採血作業板3が水平位置にある時にはラッチを解除しない限りは、採血作業板3を起立位置に向けて動かすことができないように構成されているので、採血時に突然採血作業板3が起立方向に動いてしまう等の問題も生じない。
【0011】
次に、
図4を参照して、本発明に係る採血作業台の別の実施例を説明する。
図4の実施例において、
図1~3の実施例に対応する構成部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
この第二実施例における採血作業台1′は、その昇降手段2′の構成のみが
図1~3に示した実施例と異なる。
具体的には昇降手段2′は、固定案内部材4′と、該固定案内部材4′を入れ子式に覆うように昇降可能に設けられた昇降アーム5′とから成り、固定案内部材4′の下部が固定アングル15を介してパーテーション構造体20の仕切り板22に固定されている。
昇降アーム5′は、モータや油圧ジャッキ等の適当な駆動手段によって、支持部材4′に対して上下に昇降するように構成されており、昇降のための昇降ボタン6′は、昇降アーム5′に設けられている。
他の構成は
図1~
図3に示した実施例と同一又は同等である。
上記したように構成された第二実施例に係る採血作業台によれば、固定案内部材4′の下部を固定アングル15を介してパーテーション構造体20の仕切り板22に固定する構造上、固定アングル15が若干、内側方向(即ち、昇降手段2′から離れる方向)に突出しているが、固定案内部材4′をパーテーション構造体20に固定することにより、採血作業台1′の全体は、実質的にパーテーション構造体20によって支持されることになるため、固定アングル15の内側方向への飛び出しは僅かあり、前記採血作業板を水平位置に移動させた時に採血作業板の下方に実質的になにもない空間が形成されることになる。
【0012】
次に、
図5を参照して、本発明に係る採血作業台のさらに別の実施例について説明する。
図5の実施例において、
図1~3の実施例に対応する構成部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
この第三実施例における採血作業台1′′は、昇降手段2′′と該昇降手段2′′に回動可能に設けられた採血作業板3′′を有する。
昇降手段2′′は、パーテーション構造体20の一方の仕切り板22に固定された固定案内部材4′′と、該固定案内部材4′′に対して上下に昇降可能に入れ子式に収容された昇降アーム5′′から成り、該昇降アーム5′′に採血作業板3′′が回動可能に設けられている。昇降アーム5′′は、モータ又は油圧ジャッキ等の適当な駆動手段によって固定案内部材4′′に対して上下に動く。図中、符号6′′は昇降アーム5′′を駆動する昇降ボタンである。
【符号の説明】
【0013】
1 片持ち式採血作業台
2 昇降手段
3 採血作業板
4 固定案内部材
5 昇降アーム
6 昇降ボタン
7 支持プレート
8 連結プレート
9 ヒンジ部材
10 ヒンジ部材
11 ステー
12 アジャスタ
13 ラッチ本体
14 ラッチ受け部
15 固定アングル
20 パーテーション構造体
21 仕切り板
22 仕切り板
23 収容部