(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】運搬台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/04 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B62B3/04 D
(21)【出願番号】P 2018031024
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2020-10-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月2日菱電エレベータ施設株式会社に対し運搬台車の試作品を提供
(73)【特許権者】
【識別番号】518063791
【氏名又は名称】不二工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000136170
【氏名又は名称】株式会社ピカコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】見良津 建太郎
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-239045(JP,A)
【文献】米国特許第08272819(US,B1)
【文献】実開昭57-182537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00-5/08
B60P 7/06-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略矩形状の台枠(3)と、この台枠(3)の各隅部の下部に取り付けられた車輪(4)とを有する運搬台車であって、
前記台枠(3)の対向する2辺の下面にフック(F)を掛合可能なフック掛合穴(5)が形成されて
おり、
前記台枠(3)は、縦方向に長い一対の角筒材(6L)と、横方向に長い一対の角筒材(6S)と、縦長角筒材(6L)の端部と横長角筒材(6S)の端部とを連結する隅部材(7)とで形成されており、
前記フック掛合穴(5)は対向する角筒材(6)の角筒下壁(6a)に角筒内外貫通状に形成された円形穴であり、
前記角筒材(6)には、フック掛合穴(5)の周囲から枠外面にかけてフック(F)と当接可能な補強材(9)が設けられており、
前記補強材(9)は、フック掛合穴(5)と連通する補強穴(10)を形成した底壁部(9a)と、この底壁部(9a)の一端から立設して角筒材(6)の枠外面に添設固定される外壁部(9b)と、底壁部(9a)の他端から立設して角筒材(6)の枠内面に添設固定される内壁部(9c)とが設けられていることを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記補強材(9)は、板材を2箇所で屈曲した正面視略コ字形状に形成され、角筒材(6)の長手方向に間隔をおいてフック掛合穴(5)に対応する位置に下側から嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
平面視略矩形状の台枠(3)と、この台枠(3)の各隅部の下部に取り付けられた車輪(4)とを有する運搬台車であって、
前記台枠(3)の対向する2辺の下面にフック(F)を掛合可能なフック掛合穴(5)が形成されており、
前記台枠(3)は、縦方向に長い一対の角筒材(6L)と、横方向に長い一対の角筒材(6S)と、縦長角筒材(6L)の端部と横長角筒材(6S)の端部とを連結する隅部材(7)とで形、成されており、
前記フック掛合穴(5)は対向する角筒材(6)の角筒下壁(6a)に角筒内外貫通状に形成された円形穴であり、
前記角筒材(6)には、長手方向に間隔をおいてフック掛合穴(5)と対応する位置に、フック掛合穴(5)の周囲から枠外面にかけてフック(F)と当接可能な補強材(9)が設けられて
おり、
前記補強材(9)は、フック掛合穴(5)と連通する補強穴(10)を形成した底壁部(9a)と、この底壁部(9a)の一端から立設して角筒材(6)の枠外面に添設固定されていてフック(F)と当接可能な外壁部(9b)とが設けられていることを特徴とす
る運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を載置して運搬する運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運搬台車は、特許文献1に開示されているように、平面視略矩形状の台枠と、この台枠の各隅部の下部に取り付けられた車輪とを有し、台枠の対向する2辺の下面に掛止部を設けて、ベルトやロープなどを掛止可能にしている。前記掛止部は帯板状の取付板に掛棒を沿設状態に突設して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、台枠の2辺の下面に設けた掛止部を介して、台枠上に載置された載置物の荷崩れを防止するベルトやロープなどを掛止することができるが、掛止部は掛棒の一端を取付板に固着し、掛棒の他端を自由端にしたものであるため、ラッシングベルト等のフックを掛けるには掛止安定性の確保が難いものである。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした運搬台車を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、台枠の対向する2辺の下面にフック掛合穴を形成して、フックを安定的に掛合できるようにした運搬台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、平面視略矩形状の台枠3と、この台枠3の各隅部の下部に取り付けられた車輪4とを有する運搬台車であって、
前記台枠3の対向する2辺の下面にフックFを掛合可能なフック掛合穴5が形成されており、
前記台枠3は、縦方向に長い一対の角筒材6Lと、横方向に長い一対の角筒材6Sと、縦長角筒材6Lの端部と横長角筒材6Sの端部とを連結する隅部材7とで形成されており、
前記フック掛合穴5は対向する角筒材6の角筒下壁6aに角筒内外貫通状に形成された円形穴であり、
前記角筒材6には、フック掛合穴5の周囲から枠外面にかけてフックFと当接可能な補強材9が設けられており、
前記補強材9は、フック掛合穴5と連通する補強穴10を形成した底壁部9aと、この底壁部9aの一端から立設して角筒材6の枠外面に添設固定される外壁部9bと、底壁部9aの他端から立設して角筒材6の枠内面に添設固定される内壁部9cとが設けられていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記補強材9は、板材を2箇所で屈曲した正面視略コ字形状に形成され、角筒材6の長手方向に間隔をおいてフック掛合穴5に対応する位置に下側から嵌合されていることを特徴とする。
第3に、平面視略矩形状の台枠3と、この台枠3の各隅部の下部に取り付けられた車輪4とを有する運搬台車であって、
前記台枠3の対向する2辺の下面にフックFを掛合可能なフック掛合穴5が形成されており、
前記台枠3は、縦方向に長い一対の角筒材6Lと、横方向に長い一対の角筒材6Sと、縦長角筒材6Lの端部と横長角筒材6Sの端部とを連結する隅部材7とで形成されており、
前記フック掛合穴5は対向する角筒材6の角筒下壁6aに角筒内外貫通状に形成された円形穴であり、
前記角筒材6には、長手方向に間隔をおいてフック掛合穴5と対応する位置に、フック掛合穴5の周囲から枠外面にかけてフックFと当接可能な補強材9が設けられており、
前記補強材9は、フック掛合穴5と連通する補強穴10を形成した底壁部9aと、この底壁部9aの一端から立設して角筒材6の枠外面に添設固定されていてフックFと当接可能な外壁部9bとが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台枠にフックを安定的に掛合できるようになる。
即ち、本発明は、台枠3の対向する2辺の下面にフック掛合穴5が形成されているので、台枠3の対向する2辺の下面にフックFを安定的に掛合することができる。
また本発明は、フック掛合穴5は角筒材6の角筒下壁6aに形成された円形穴であるので、フックFの掛合位置が略一定化し、フックFの掛合安定性をより高めることができる。
【0009】
さらに本発明は、角筒材6には、フック掛合穴5の周囲から枠外面にかけてフックFと当接可能な補強材9が設けられているので、フックFが金属であっても角筒材6を摩耗したり損傷したりすることなく保護ができる。
さらにまた本発明は、補強材9は底壁部9aと外壁部9bと内壁部9cとを有し、底壁部9aでフック掛合穴5を補強し、外壁部9bで角筒材6の枠外面を補強し、内壁部9cで角筒材6の補強及び補強材9の取付強度の確保ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】補強材の3面図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~5において、運搬台車1は、大別して平面視略矩形状の台枠3と、この台枠3の各隅部の下部に取り付けられた4個の車輪4とを有する。
前記台枠3は、縦方向に長い一対の角筒材(縦長角筒材)6Lと、横方向に長い一対の角筒材(横長角筒材)6Sと、縦長角筒材6Lの端部と横長角筒材6Sの端部とを連結する隅部材7とを有している。
【0012】
台枠3は、一対の縦長角筒材6L間にはそれらと平行な中央角筒材6Mが配置され、この中央角筒材6Mの前後端部は横長角筒材6Sと連結され、一対の横長角筒材6S間にはそれらと平行な2枚の底桟材6Pが配置され、この底桟材6Pは両縦長角筒材6L及び中央角筒材6Mの下面に固着されている。
また、台枠3には、前後各端部に、横長角筒材6Sと、これに固定の一対の隅部材7と、この隅部材7に連結された縦長角筒材6Lとに跨ってそれらの下面に底板6Wがボルト固定されており、この底板6Wの下面に車輪4のキャスタ台4aが固定されている。
【0013】
前記台枠3の縦長角筒材6L、中央角筒材6M、横長角筒材6S及び隅部材7の各上面は略面一であり、これらの上面に対して底板6Wの上面は凹みとなっており、運搬台車1を上下に積み重ねるとき、前記底板6Wの上面は上側の運搬台車1の車輪4の載置面となる。
前記台枠3の縦長角筒材6L、中央角筒材6M及び横長角筒材6Sは、
図2に示すように、アルミ合金等で断面略四角形の角パイプで形成され、隅部材7及び底桟材6Pもアルミ合金で押し出し成形されている。
【0014】
前記隅部材7は、挿通孔12を形成した筒形状の筒部7Aと、縦長角筒材6Lを挟んで連結する一対の縦連結片7Bと、横長角筒材6Sを挟んで連結する一対の横連結片7Cと、縦連結片7Bと横連結片7Cとの間の一対の平行なナット係止用の係合リブ7Dとを上下両端に亘って長く形成している。
隅部材7の筒部7Aは、内周に支柱11の下端を挿入可能な挿通孔12を形成し、かつこの挿通孔12と連通して挿通孔12と同心の溝底を有する逃げ溝13を対向2カ所に形成している。
【0015】
支柱11は運搬台車1を押し引くために必要に応じて使用され、下端を挿通孔12に挿入して底板6Wで受け、下端と筒部7Aとに径方向にボルト17を貫通し、このボルト17に係合リブ7Dに係止されたナット18を螺合して締結する。
前記筒部7Aの外周面にはゴム又は樹脂等で形成された緩衝材16が着脱可能に装着されている。
【0016】
前記台枠3の対向する2辺を形成する一対の縦長角筒材6Lには、下面にフックFを掛合可能なフック掛合穴5が形成されている。このフック掛合穴5は縦長角筒材6Lの角筒下壁6aに角筒内外貫通状に形成された円形穴である。
各縦長角筒材6Lには長手方向に間隔をおいて2個所に補強材9が設けられている。この補強材9はフック掛合穴5と対応する位置に配置されていて、フック掛合穴5の周囲を補強し、縦長角筒材6Lを補強する。
【0017】
前記補強材9は、板材を2個所で屈曲して正面視略コ字形状にして、縦長角筒材6Lに下側から嵌合したものであり、フック掛合穴5と連通する補強穴10を形成した底壁部9aと、この底壁部9aの一端から立設して角筒材6の枠外面に添設固定される外壁部9bと、底壁部9aの他端から立設して角筒材6の枠内面に添設固定される内壁部9cとを有している。
【0018】
運搬台車1上に載置される荷物は、
図3に示すように、ラッシングベルト20を掛けて荷崩れを防止する。このラッシングベルト20の端部に設けたフックFはフック掛合穴5及び補強穴10に挿入されて穴周囲部に掛合される。
補強穴10の穴周囲部となる補強材9の底壁部9aは、フック掛合穴5の穴周囲部となる縦長角筒材6Lの角筒下壁6aを補強することになり、フックFから受ける負荷を十分に支持することができる。
【0019】
また、フック掛合穴5及び補強穴10を円形穴にすると、フックFが掛かるのは外壁部9bとの距離が最も近い部位となり、縦長角筒材6Lの長手方向におけるフックFの掛合位置は略一定になる。
前記フック掛合穴5及び補強穴10に掛合されたフックFは、縦長角筒材6Lの枠外面に当接することになるが、縦長角筒材6Lが直接当接せずに、補強材9の外壁部9bが代わって当接し、縦長角筒材6L自体が損傷するのを防止する。
【0020】
補強材9の内壁部9cは外壁部9bと同一寸法に形成しているが、外壁部9bより短くてもよく、外壁部9bと共に縦長角筒材6Lにリベット等で固着されることにより、縦長角筒材6Lの内外面を補強する。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
【0021】
例えば、フック掛合穴5及び補強材9は横長角筒材6Sにも設けてもよく、また各角筒材6の長手方向に1又は3個所以上に設けてもよい。
フック掛合穴5及び補強穴10の穴形状は楕円形、角形にすることも可能である。
補強材9は内壁部9cを割愛したり、底壁部9aのみで形成して角筒材6の角筒下壁6aに固着したりしてもよい。
【0022】
運搬台車1は、車輪4を3輪又は6輪以上にしてもよく、支柱11は台枠3に固着していてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 運搬台車
3 台枠
4 車輪
4a キャスタ台
5 フック掛合穴
6 角筒材
6L 縦長角筒材
6M 中央角筒材
6P 底桟材
6S 横長角筒材
6W 底板
6a 角筒下壁
7 隅部材
7A 筒部
7B 縦連結片
7C 横連結片
7D 係合リブ
9 補強材
9a 底壁部
9b 外壁部
9c 内壁部
20 ラッシングベルト
F フック