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特許6989902電子インクディスプレイおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】電子インクディスプレイおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1675 20190101AFI20220104BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20220104BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20220104BHJP
   G02F 1/1676 20190101ALI20220104BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220104BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220104BHJP
   G09F 9/37 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G02F1/1675
G02F1/167
G02F1/16757
G02F1/1676
G09F9/00 302
G09F9/00 338
G09F9/00 348A
G09F9/30 330
G09F9/37
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019521075
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2017099475
(87)【国際公開番号】W WO2019037139
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2019-04-19
(31)【優先権主張番号】201710716173.7
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517271728
【氏名又は名称】ウーシー ビジョン ピーク テクノロジ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WUXI VISION PEAK TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】J1-3,FTZ,XINWU DISTRICT,WUXI,JIANGSU 214028,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バオ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャン
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-133109(JP,A)
【文献】特開2009-003437(JP,A)
【文献】特開2011-039530(JP,A)
【文献】特開2005-043810(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0068882(KR,A)
【文献】中国実用新案第204576027(CN,U)
【文献】特開2013-101261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0112387(US,A1)
【文献】国際公開第2006/018982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/165-1/1685
G02F 1/1345
G02F 1/1339
G09F 9/00
G09F 9/30
G09F 9/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極基板(5)と、上層透明電極基板(12)と、前記画素電極基板(5)と前記上層透明電極基板(12)との間に配置された電子インクマイクロカプセルアレイ(7)とを備えた電子インクディスプレイであって、
前記画素電極基板(5)には、第1パッドフレーム(15)および第2パッドフレーム(14)を含むパッドフレーム(3)が塗布されており、前記第2パッドフレーム(14)は、前記第1パッドフレーム(15)の一側に位置し、前記第1パッドフレーム(15)内には、前記電子インクマイクロカプセルアレイ(7)が配置されており、前記第2パッドフレーム(14)内には、導電性銀ペースト(8)が配置されており、前記パッドフレーム(3)は、前記上層透明電極基板(12)で被覆されており、
前記導電性銀ペースト(8)は、前記画素電極基板(5)上の配線および前記上層透明電極基板(12)上の配線のそれぞれと電気的に接触しており、前記上層透明電極基板(12)上の前記配線は、前記電子インクマイクロカプセルアレイ(7)と電気的に接触しており、前記上層透明電極基板(12)には、透明電極基材(17)が配置されており、前記パッドフレーム(3)と前記上層透明電極基板(12)との周囲は、防水接着剤(4)によって密封固定されていることを特徴とする電子インクディスプレイ。
【請求項2】
前記パッドフレーム(3)の一側に位置し、導電性粘着テープACF(11)を介して前記画素電極基板(5)に粘着された集積回路モジュール(10)をさらに備え、前記集積回路モジュール(10)と前記導電性粘着テープACF(11)との周囲は、RTVシリコーンゴム(9)によって前記画素電極基板上で封止されていることを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項3】
前記パッドフレーム(3)は、前記パッドフレーム(3)の縁部に位置し、前記上層透明電極基板(12)を支持するための空洞構造である支持フレーム(16)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項4】
前記電子インクマイクロカプセルアレイ(7)は、異なるサイズを有する複数のマイクロカプセルが均等に分布することによって構成されており、前記マイクロカプセルは、30~300μmの直径を有し、少なくとも2種の異なる光電特性を有する電気泳動粒子を含み、それぞれの電気泳動粒子は、電子インクディスプレイ内の様々な色彩表示を実現するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項5】
前記パッドフレーム(3)のフレームは、幅が10~300μmであり、高さが5~150μmであり、前記パッドフレーム(3)の材料は樹脂であり、前記樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂またはポリウレタン樹脂であり、前記樹脂には、樹脂微小球またはガラス微小球である支持材料が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項6】
前記画素電極基板(5)は、セグメントコードおよびドットマトリクスを含み、前記画素電極基板(5)の材料は、ガラス又はプラスチックであり、前記プラスチックは、PI、PEN又はPETであることを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項7】
前記上層透明電極基板(12)と前記電子インクマイクロカプセルアレイ(7)との接触面には、ITO、銀ナノワイヤ、グラフェンまたはカーボンナノチューブである導電層が塗布されており、前記透明電極基材(17)は、ガラス、プラスチック、保護層(18)を有するガラス又は保護層(18)を有するプラスチックであり、前記プラスチックは、PI、PEN、またはPETであることを特徴とする請求項1に記載の電子インクディスプレイ。
【請求項8】
TFTガラス基板を画素電極基板(5)として使用し、ODF工法によってシーリング材を使用して画素電極基板(5)においてパッドフレーム(3)の形状となるように塗布し、シーリング材を硬化させ、前記パッドフレーム(3)の形状は、第1パッドフレーム(15)、第2パッドフレーム(14)および支持フレーム(16)を含むステップ1と、
ODF工法によって、ディスペンサを用いて第1パッドフレーム(15)内にマイクロカプセル型電子インクを滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って電子インクマイクロカプセルアレイ(7)を形成するステップ2と、
ディスペンサを用いて前記第2パッドフレーム(14)内に導電性銀ペースト(8)を滴下塗布するステップ3と、
上層透明電極基板(12)を前記パッドフレーム(3)全体に圧着するステップ4と、
レーザによって前記上層透明電極基板(12)の一部を切断し、前記画素電極基板(5)における集積回路モジュール(10)の所定位置を露出させるステップ5と、
前記上層透明電極基板(12)を透明電極基材(17)で被覆するステップ6と、
ディスペンサを用いて前記パッドフレーム(3)の周囲に防水接着剤(4)を滴下塗布してエッジシールを行い、次に、紫外線を照射して硬化させるステップ7と、
COG工法によって前記画素電極基板(5)の縁部に集積回路モジュール(10)を搭載するステップ8と、
RTVシリコーンゴム技術を用いて前記集積回路モジュール(10)をRTVシリコーンゴム(9)内に封止して電子インクディスプレイの製造を完成するステップ9とを備えることを特徴とする電子インクディスプレイの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ2において、前記電子インクマイクロカプセルアレイ(7)を形成する前に、ディスペンサを用いて第1パッドフレーム(15)内における前記画素電極基板(5)の表面にプライマ(6)を滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って前記画素電極基板(5)を保護するための下塗り膜を形成することを特徴とする請求項8に記載の電子インクディスプレイの製造方法。
【請求項10】
蒸着方式によって前記透明電極基材(17)内の保護層(18)を前記透明電極基材(17)の表面に蒸着することを特徴とする請求項8に記載の電子インクディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイおよびその製造方法に関し、特に電子インクディスプレイおよびその製造方法に関し、電子ディスプレイ技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイ技術は、前世紀の70年代に最初に提案され、過去の10年間において大いに開発され、性能および製造方法においては大幅に向上した。米国特許第3892568号明細書には、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動ディスプレイ材料の製造プロセスが開示されている。日本特許第1086116号明細書には、少なくとも1種の電気泳動粒子を含み、マイクロカプセルによって被覆された電気泳動液を有する電気泳動ディスプレイシステムが開示されている。米国特許第5930026、5961804、6017584、6120588号明細書には、マイクロカプセルによって被覆された電気泳動ディスプレイユニットにおいて、電気泳動表示液は、2つ以上の異なる光電特性を有する電気泳動粒子を含むことが開示されている。米国特許第6930818号明細書には、マイクロカップ(microcup)構造によって被覆された電気泳動ディスプレイユニットが開示されている。
【0003】
図1および図2は、電子ペーパー用フィルム(20)と、電子ペーパー用フィルム(20)を被覆する保護フィルム(PS)(22)と、電子ペーパー用フィルム(20)の下方に位置するガラス基板(21)とを備えた従来技術における電子インクディスプレイの概略構成図である。電子ペーパー用フィルム(20)は、複数回の塗布および裁断によって得られ、ITO透明電極、電子インクカプセル層、ホットメルト接着剤層、およびOCA層から構成されている。使用される保護フィルム(PS)(22)は、PET層および防水層から構成されている。電子インクの製造過程において、まず、裁断された電子ペーパー用フィル(20)の銀ペーストの穴に一定量の導電性銀ペースト(8)を滴下し、ガラス基板(21)をホットプレスによってホットメルト接着剤層に貼り合わせて電子ペーパー用フィルム(20)と粘着させる。次に、裁断された保護フィルム(PS)(22)を機械によって電子ペーパー用フィルム(20)に圧着する。集積回路(IC)モジュール(10)をCOG工法によってガラス基板(21)に直接搭載し、次に、エッジバンディングのためにディスペンサを用いてスクリーンの周囲を防水接着剤(4)で被覆し、最後に、集積回路モジュール(10)を保護するために、シリコンゴム(19)で集積回路モジュール(10)の周囲を被覆する。
【0004】
しかし、現在のところ、電気泳動ディスプレイ技術は、性能および製造方法において依然として以下のような多くの欠点を有している。
1 マイクロカプセル型電子ペーパー用フィルムの製造工程は複雑である。具体的には以下の通りである。
【0005】
a)マイクロカップ型電子ペーパー用フィルムの塗布においては、装置に対する精度要件が高く、使用コストが高く、塗布の欠陥が多く、マイクロカプセルの分布およびフィルムの厚さが不均等である。
【0006】
b)電子ペーパー用フィルム(20)のパッケージ技術における難度が高く、工程が不安定であり、生産効率が低く、液漏れが生じ、コントラストが低く、使用温度範囲が狭いなどの問題が発生する。
【0007】
c)電子ペーパー用フィルム(20)の裁断損失率が40%に及ぶことが多く、その結果、電子インク利用良品率は40%未満となる。
【0008】
2 電子インクディスプレイの製造工程が複雑であり、生産自動化度および生産効率が低下し、良品率が低く、材料損失が大きく、生産コストが高いなどの問題が生じる。
【0009】
近年、液晶のサイズが大きくなるにつれて、ODF(one drop filling)工法がますます注目を集めている。従来の液晶製造工程と比較すれば、ODF工法は以下の特徴を有する。
1)液晶注入時間が大幅に短縮され、サイズおよび厚さなどの要因によって制限されず、製造時間が短縮される。従来技術では3日間で完成する作業は、ODF工法であれば1日足らずで完成できる。
2)工程数が減少し、材料および他の補助材料が大幅に削減される。
3)液晶の利用率が向上し、ODF製造プロセスにおける液晶利用率が95%以上にも達し、従来技術では60%にすぎない。
4)生産自動化の実現に寄与し、スペースの節約および人員の削減ができる。
5)ODF工法のプロセスにより、後続の製造工程のための製造業者による様々な高価な設備投資が不要となり、設備投資が大幅に削減される。
ODF技術は現在、ほとんどの高世代且つ大型TFT-LCD製品の生産に使用されている。しかし今日まで、ODF工法は、未だ電子インクディスプレイの製造には使用されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、現在の電子インクディスプレイの製造過程における問題に鑑み、ODF工法に基づいて、マイクロカプセル型電子インクの方法と併せて電子インクディスプレイの製造を完成できる新型電子インクディスプレイの構造およびその製造方法を提供することを目的とする。電子インクディスプレイ層の構造が簡素化され、透光性がより良好になり、光損失が減少し、製造工程が簡素化され、生産工程が短縮され、自動化が実現され、生産効率および良品率が向上する。
【0011】
上記の技術的目的を実現するために、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。電子インクディスプレイであって、画素電極基板と、上層透明電極基板と、前記画素電極基板と前記上層透明電極基板との間に配置された電子インクマイクロカプセルアレイとを備えている。その特徴として、前記画素電極基板には、第1パッドフレーム、第2パッドフレームおよび支持フレームを含むパッドフレームが塗布されている。前記第2パッドフレームおよび前記支持フレームは両方とも、前記第1パッドフレームの一側に位置し、前記第1パッドフレーム内には、前記電子インクマイクロカプセルアレイが配置されており、前記第2パッドフレーム内には、導電性銀ペーストが配置されている。前記パッドフレームは、前記上層透明電極基板で被覆されており、前記導電性銀ペーストは、前記画素電極基板上の配線および前記上層透明電極基板上の配線のそれぞれと電気的に接触しており、前記上層透明電極基板上の前記配線は、前記電子インクマイクロカプセルアレイと電気的に接触している。前記上層透明電極基板には、透明電極基材が配置されており、前記パッドフレームと前記上層透明電極基板との周囲は、防水接着剤によって密封固定されている。
【0012】
さらに、前記電子インクディスプレイは、前記パッドフレームの一側に位置し、導電性粘着テープ(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して前記画素電極基板に粘着された集積回路モジュールをさらに備えている。前記集積回路モジュールと前記導電性粘着テープACFとの周囲は、RTVシリコーンゴムによって画素電極基板上で封止されている。
【0013】
さらに、前記第2パッドフレームは2つあり、前記支持フレームは4つある。2つの前記第2パッドフレームのそれぞれは、一列に配置された4つの支持フレームの両端に位置する。前記支持フレームは、前記上層透明電極基板を支持するための空洞構造である。
【0014】
さらに、前記電子インクマイクロカプセルアレイは、異なるサイズを有する複数のマイクロカプセルが均等に分布することによって構成されている。前記マイクロカプセルは、30~300μmの直径を有し、少なくとも2種の異なる光電特性を有する電気泳動粒子を含む。それぞれの電気泳動粒子は、電子インクディスプレイ内の様々な色彩の表示を実現するために使用される。
【0015】
さらに、前記パッドフレームのフレームは、幅が10~300μmであり、高さが5~150μmである。前記パッドフレームの材料は樹脂であり、前記樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂またはポリウレタン樹脂が挙げられる。前記樹脂には、樹脂微小球またはガラス微小球である支持材料が含まれている。
【0016】
さらに、前記画素電極は、セグメントコードおよびドットマトリクスを含む。前記画素電極の材料は、ガラス又はプラスチックであり、前記プラスチックは、PI、PEN又はPETである。
【0017】
さらに、前記上層透明電極基板と前記電子インクマイクロカプセルアレイとの接触面には、ITO、銀ナノワイヤ、グラフェンまたはカーボンナノチューブである導電層が塗布されている。前記透明電極基材は、ガラス、プラスチック、保護層を有するガラス又は保護層を有するプラスチックであり、前記プラスチックとしては、PI、PEN、PETが挙げられる。
【0018】
上記の技術的目的をさらに達成するために、本発明は、以下のステップを含む電子インクディスプレイの製造方法をさらに提供する。
ステップ1 TFTガラス基板を画素電極基板として使用し、ODF工法によってシーリング材を使用して画素電極基板においてパッドフレームの形状となるように塗布し、シーリング材を硬化させる。前記パッドフレームの形状は、第1パッドフレーム、第2パッドフレームおよび支持フレームを含む。
ステップ2 ODF工法によって、ディスペンサを用いて第1パッドフレーム内にマイクロカプセル型電子インクを滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って電子インクマイクロカプセルアレイを形成する。
ステップ3 ィスペンサを用いて第2パッドフレーム内に導電性銀ペーストを滴下塗布する。
ステップ4 上層透明電極基板をパッドフレーム全体に圧着する。
ステップ5 レーザによって上層透明電極基板の一部を切断し、画素電極基板における集積回路モジュールの所定位置を露出させる。
ステップ6 上層透明電極基板を透明電極基材で被覆する。
ステップ7 ィスペンサを用いてパッドフレームの周囲に防水接着剤を滴下塗布してエッジシールを行い、次に、紫外線を照射して硬化させる。
ステップ8 COG工法によって画素電極基板の縁部に集積回路モジュールを搭載する。
ステップ9 RTVシリコーンゴム技術を用いて集積回路モジュールをRTVシリコーンゴム内に封止して電子インクディスプレイの製造を完成する。
【0019】
さらに、前記ステップ2において、電子インクマイクロカプセルアレイを形成する前に、ィスペンサを用いて第1パッドフレーム内における画素電極基板の表面にプライマを滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って画素電極基板を保護するための下塗り膜を形成する。
【0020】
さらに、蒸着方式によって前記透明電極基材内の保護層を透明電極基材の表面に蒸着する。
【0021】
従来の電子インクディスプレイに対して、本発明は、以下の利点を有する。
1) 本発明は、ODF工法を採用して電子インクディスプレイを生産することより、ODF技術のメリットを十分に利用し、マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ技術と併せて、従来の電子インクディスプレイの生産過程における一連の問題を克服することができる。
2) ODF工法を採用することにより、従来の電子ペーパー用フィルムの複雑な生産工程が省かれる。電子ペーパー生産と電子ペーパーディスプレイとを直接合わせて処理することにより、電子ペーパーディスプレイの後続の製造工程が大幅に簡素化され、工程が短縮され、自動化の実現が容易になり、生産効率および良品率が向上するなどの多くのメリットを有する。
3) ODF工法を使用して電子インクディスプレイを生産するにあたって、現在の電子インクディスプレイの55.1181102インチというサイズの限界を容易に打破し、131.2335958インチ以上の大型スクリーンの製造を実現することができ、大型電子インクディスプレイの製造において独特の優越性を有する。
4) 電子インクディスプレイ層の構造が簡素化され、透光性がより良好になり、光損失が少ないため、電子インクは、より高いコントラストおよびより良い白色のコントラストを表現し、これにより、電子インクディスプレイの駆動方式および表示効果が大いに向上する。既存の一般的な技術と比較すれば、特にトゥルーカラーにおいては、より良好な色彩飽和度およびより優れた色彩解像度を得ることができる。
5) 電子インクディスプレイは、防水密封性能が向上し、より強い環境適用性を有し、より広い温度範囲および湿度範囲において使用され得る。
6) 電子インク層には、蛍光材料が含まれているため、ディスプレイの表示効果が向上する。
7) 低電圧(3V)駆動が可能となる。
8) 大きいカプセル(80マイクロメートルより大きい)の塗布における困難性、および、コーティングされたカプセル内の空間が圧縮される問題は克服され、これにより、多粒子およびカラーディスプレイを実現することができる。
9) 製造工程における設備投入が減少し、工法のプロセスの簡素化により、後続の製造工程における設備が大幅に削減され、スペースの節約および人員の削減ができる。
10) 電子インクの材料の利用率が向上し、従来工法による40%未満の利用率からODF工法による95%以上の利用率となる。
11) ITO、保護フィルムなどを含む他の材料の消費が減少する。
12) 電子インクディスプレイの製造期間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の電子インクディスプレイの投影した上面概略構成図である。
図2図1におけるA-Aの断面概略構成図である。
図3】本発明の投影した上面概略構成図である。
図4】本発明に係る実施形態1の図3におけるA-Aの断面概略構成図である。
図5】本発明に係る実施形態1の図4の部分拡大図である。
図6】本発明に係る実施形態1の、保護層を有する図4の部分拡大図である。
図7】本発明に係る実施形態2の図3におけるB-Bの断面概略構成図である。
図8】本発明に係る実施形態2の図7の部分拡大図である。
図9】本発明のODF工法によって形成されたパッドフレームの上面概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面および実施形態と併せて本発明について詳細に説明する。
【0024】
なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、以下の説明において参照する各図面は、本発明の内容を理解するためであり、各図に例示した電子インクディスプレイ構成に限定されるものではない。
【0025】
図3~5に示すように、実施例1では、2粒子電子インクディスプレイを例とする。画素電極基板5と、上層透明電極基板と、画素電極基板5と上層透明電極基板との間に配置された電子インクマイクロカプセルアレイ7とを備えた電子インクディスプレイであって、その特徴としては、画素電極基板5は、セグメントコードおよびドットマトリクスを含む。画素電極基板5の材料は、ガラス又はプラスチックであり、プラスチックは、PI、PEN又はPETである。画素電極基板5には、パッドフレーム3が塗布されており、第1パッドフレーム15内には、異なるサイズを有する複数のマイクロカプセルが均等に分布することによって構成された電子インクマイクロカプセルアレイ7が配置されている。電子インクマイクロカプセルアレイ7と画素電極基板5との間には、画素電極基板5を保護するためのプライマ6が塗布されている。マイクロカプセルは、30~300μmの直径を有するが、50~150μmの範囲が好ましく、80~120μmの範囲が最も好ましい。マイクロカプセル内には、複数の白色粒子1および複数の黒色粒子2が含まれており、白色粒子1と黒色粒子2との印加電界が異なるため、電子インクディスプレイは、白黒表示をすることができる。また、マイクロカプセル内には、蛍光材料が含まれていてもよい。蛍光材料としては、無機蛍光材料および有機蛍光材料が挙げられ、無機蛍光材料としては、希土類蛍光材料、金属硫化物などが挙げられ、有機蛍光材料としては、小分子蛍光材料および高分子蛍光材料などが挙げられる。第2パッドフレーム14内には、導電性銀ペースト8が配置されている。パッドフレーム3は、上層透明電極基板12で被覆されおり、導電性銀ペースト8は、画素電極基板上の配線および上層透明電極基板12上の配線のそれぞれと電気的に接触している。上層透明電極基板12上の前記配線は、電子インクマイクロカプセルアレイ7と電気的に接触しており、透明電極基材17で被覆されている。上層透明電極基板12には、ITO、銀ナノワイヤ、グラフェンまたはカーボンナノチューブである導電層が塗布されている。透明電極基材17は、ガラス、プラスチック、保護層18を有するガラス又は保護層18を有するプラスチックである。図6は、保護層18を有する透明電極基材17の断面概略構成図である。プラスチックとしては、PI、PEN、PETが挙げられる。パッドフレーム3と上層透明電極基板12との周囲は、防水接着剤4によって密封固定されている。電子インクディスプレイは、パッドフレーム3の一側に位置し、導電性粘着テープACF11を介して画素電極基板5に粘着された集積回路モジュール10をさらに備えている。集積回路モジュール10と導電性粘着テープACF11との周囲は、RTVシリコーンゴム9によって画素電極基板5上で封止されている。
【0026】
図3図7および図8に示すように、実施例2では、多粒子電子インクディスプレイを例とする。実施形態1と同じ構造を有する電子インクディスプレイであって、異なる部分としては、電子インクマイクロカプセルアレイ7におけるマイクロカプセル内には、複数の白色粒子1、複数の黒色粒子2および他の粒子13が含まれている。他の粒子13は、1つであってもよく複数であってもよい。白色粒子1、黒色粒子2および他の粒子13の印加電界が異なるため、異なる光電特性を有する各色の電気泳動粒子が集積回路モジュール10によって駆動されることにより、電子インクディスプレイは、様々な色彩、パターン表示を実現することができる。
【0027】
図9は、本発明の実施形態におけるパッドフレーム3の上面概略構成図である。パッドフレーム3のフレームの幅は10~300μmであり、好ましい厚さは50~200μmである。フレームの高さは5~150μmであり、好ましい高さは15~60μmである。パッドフレーム3の材料は樹脂であり、樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂またはポリウレタン樹脂が挙げられる。樹脂には、樹脂微小球またはガラス微小球である支持材料が含まれている。パッドフレーム3は、第1パッドフレーム15、第2パッドフレーム14および支持フレーム16を含む。第2パッドフレーム14および支持フレーム16は両方とも、第1パッドフレーム15の一側に位置し、第2パッドフレーム14は2つあり、支持フレーム16は4つある。2つの第2パッドフレーム14のそれぞれは、一列に配された4つの支持フレーム16の両端に位置する。支持フレーム16は、上層透明電極を支持するとともに、防水接着剤4の用量を減少させ、防水効果を改善する役割を果たすための空洞構造である。
【0028】
本発明の実施形態におけるパッドフレーム3のフレームの幅、厚さについては、実際のニーズに応じて設定すればよい。第1パッドフレーム15、第2パッドフレーム14および支持フレーム16のサイズ、形状についても実際に生産するディスプレイのサイズに応じて設定すればよい。第2パッドフレーム14および支持フレーム16の数および配置方向は、決まっておらず、自由に配置されてよい。
【0029】
本発明の実施形態における導電性銀ペースト8は、導電性ビーズで代替されてよい。パッドフレーム3を形成するためのシーリング材の硬化方法は、光硬化、熱硬化または湿気硬化などであってよいが、光硬化方法が好ましい。プライマ6は、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、またはポリシリコン樹脂などである。
【0030】
本発明の実施形態における電子インクディスプレイの製造方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする。
ステップ1 TFTガラス基板を画素電極基板として使用し、ODF工法によってシーリング材を使用して画素電極基板5においてパッドフレーム3の形状となるように塗布し、シーリング材を硬化させる。パッドフレーム3の形状は、第1パッドフレーム15、第2パッドフレーム14および支持フレーム16を含む。
ステップ2 ODF工法によって、ディスペンサを用いて第1パッドフレーム15内にマイクロカプセル型電子インクを滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って電子インクマイクロカプセルアレイ7を形成する。
電子インクマイクロカプセルアレイ7を形成する前に、ィスペンサを用いて第1パッドフレーム15内における画素電極基板5の表面にプライマ6を滴下塗布し、次に、加熱乾燥を行って画素電極基板5を保護するための下塗り膜を形成する。次に、第1パッドフレーム15内におけるカプセル注入エリアにおいてガラス微小球または樹脂微小球をあらかじめスプレーしてよい。
ステップ3 ィスペンサを用いて第2パッドフレーム14内に導電性銀ペースト8を滴下塗布する。
ステップ4 上層透明電極基板12をパッドフレーム3全体に圧着する。
ステップ5 レーザによって上層透明電極基板12の一部を切断し、画素電極基板5における集積回路モジュール10の所定位置を露出させる。
ステップ6 上層透明電極基板12を透明電極基材17で被覆する。
蒸着方式によって透明電極基材17内の保護層18を透明電極基材17の表面に蒸着する。
ステップ7 ィスペンサを用いてパッドフレーム3の周囲に防水接着剤4を滴下塗布してエッジシールを行い、次に、紫外線を照射して硬化させる。
ステップ8 COG工法によって画素電極基板5の縁部に集積回路モジュール10を搭載する。
ステップ9 RTVシリコーンゴム技術を用いて集積回路モジュール10をRTVシリコーンゴム9内に封止して電子インクディスプレイの製造を完成する。
【0031】
本発明は、ODF工法を採用して電子インクディスプレイを生産することより、ODF技術のメリットを十分に利用し、マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ技術と併せて、従来の電子インクディスプレイの生産過程における一連の問題を克服することができる。ODF工法を採用することにより、従来の電子ペーパー用フィルムの複雑な生産工程が省かれる。電子ペーパー生産と電子ペーパーディスプレイとを直接合わせて処理することにより、電子ペーパーディスプレイの後続の製造工程が大幅に簡素化され、工程が短縮され、自動化の実現が容易になり、生産効率および良品率が向上するなどの多くのメリットを有する。また、本発明に係る電子インクディスプレイは、-25度~60度の温度範囲内において使用され得る。131.2335958インチ以上の大型電子インクディスプレイの製造を実現することができる。
【0032】
以上、本発明およびその実施形態について説明したが、当該説明は限定するものではない。また、図示されたものは、本発明に係る実施形態の1つのみであり、実際の構成を限定するものではない。要するに、当業者が本発明の示唆を受け、本発明の創造の趣旨から逸脱しない場合において、非創造的に設計された当該技術的解決手段に類似する構造形態および実施形態は、本発明の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0033】
1 白色粒子
2 黒色粒子
3 パッドフレーム
4 防水接着剤
5 画素電極基板
6 プライマ
7 電子インクマイクロカプセルアレイ
8 導電性銀ペースト
9 RTVシリコーンゴム
10 集積回路(IC)モジュール
11 導電性粘着テープACF
12 上層透明電極基板
13 他の粒子
14 第2パッドフレーム
15 第1パッドフレーム
16 支持フレーム
17 透明電極基材
18 保護層
19 シリコンゴム
20 電子ペーパー用フィルム
21 ガラス基板
22 保護フィルム(PS)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9