(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】スクロール加熱装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20220104BHJP
F28D 7/02 20060101ALI20220104BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20220104BHJP
F02G 1/055 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F23K5/00 302
F28D7/02
F23L15/00 A
F02G1/055 A
(21)【出願番号】P 2020219269
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2020-12-28
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502250743
【氏名又は名称】國立成功大學
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】呉 志勇
(72)【発明者】
【氏名】陳 文立
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0174470(US,A1)
【文献】米国特許第6532339(US,B1)
【文献】登録実用新案第3164946(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F28D 7/16
F23L 15/00
F02G 1/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースの中心に位置する反応ゾーンと、第一流路と、第二流路とを備え、
前記第一流路及び前記第二流路は、それぞれ前記ベースの上に設けられ、前記反応ゾーンから周縁に向けて延伸し、
前記第一流路及び第二流路は、前記反応ゾーンを起点として前記ベースの周縁に向けて螺旋状に延伸し、且つ前記第一流路及び第二流路の幅は前記ベースの中心部に近接する箇所から前記ベースの周縁に向けて狭くなり、外側が狭く内側が広い形態であり、
ガスが前記ベースの周縁に位置する第一流路の一端から前記ベースの中心部に近接する他端に向けて流動し、
外側が狭く内側が広い第一流路を通過することにより、ガスの流速は最初に加速され、次いで徐々に広くなる第一流路で減速して前記反応ゾーンに進入し、
前記ガスが前記反応ゾーンに停留する時間を延長し、
燃焼後の排気ガスは前記ベースの中心部に近接する第二流路の一端から前記ベースの周縁に位置する他端に流出される
ことを特徴とするスクロール加熱装置。
【請求項2】
前記第一流路及び第二流路はそれぞれフェルマー(Fermat)螺旋、ヴォ―ゲル(Vogel)螺旋及びアルキメデス(Archimedean)螺旋のうちから選択される1つまたはそれらの複数を組み合わせた構成であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール加熱装置。
【請求項3】
前記ベースは、前記ベースの周縁に設置され前記第一流路に連通する吸気口、及び前記ベースの周縁に設置され前記第二流路に連通する排気口を備え、
前記吸気口及び前記排気口は対向するように設置されることを特徴とする請求項2に記載のスクロール加熱装置。
【請求項4】
複数のピンフィンをさらに備え、前記ベースは第一面及び第一面の反対側に設置される第二面をさらに含み、
前記複数のピンフィンは前記第一面に間隔を空けて設置され、前記第一流路及び第二流路は前記第二面に位置する
ことを特徴とする請求項3に記載のスクロール加熱装置。
【請求項5】
前記第一流路及び第二流路を閉鎖するために前記第二面に設置されるカバーをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のスクロール加熱装置。
【請求項6】
前記第一流路は、前記ベースの中心部に近接する第一端部、及び前記ベースの中心部から離間し前記吸気口に連接する第二端部を有し、
前記第二流路は、前記ベースの中心部に近接する第三端部、及び前記ベースの中心部から離間し前記排気口に連接する第四端部を有することを特徴とする請求項5に記載のスクロール加熱装置。
【請求項7】
前記第一面から前記第二面までの距離(厚さ)は3mmであることを特徴とする請求項6に記載のスクロール加熱装置。
【請求項8】
前記スクロール加熱装置の材質は熱伝導材料であり、前記熱伝導材料は金属、金属合金及びセラミックのうちから選択される1つまたは複数の組み合わせであることを特徴とする請求項7に記載のスクロール加熱装置。
【請求項9】
前記ガスは、ジメチルエーテル(DME)、メタン(CH
4)、合成ガス(Syn-gas)、天然ガス及び液化石油ガスから選択される1つまたは複数の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載のスクロール加熱装置。
【請求項10】
スターリングエンジンの加熱端に結合することを特徴とする請求項1に記載のスクロール加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月02日に米国特許庁に提出された米国特許出願第63/108452号に基づく優先権を主張するものであり、米国特許出願第63/108452号の全内容を本出願に参照により援用する。
【0002】
本発明は、加熱装置に関し、更に詳しくは、スクロール加熱装置に関する。
【背景技術】
【0003】
スターリングエンジン(Stirling Engine)は、高効率の外燃エネルギー変換装置であり、熱源の温度が十分高ければ太陽光エネルギー、廃熱、核燃料、牛糞、プロパン、天然ガス、沼気(メタン)、ブタン、石油等の燃料を使用して運転することが可能である。特定の燃料を使用しなければいけないガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃エンジンとは違い、メンテナンスが容易である上に効率が高く、静穏性も信頼性もより高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によるスターリングエンジンは熱交換器を使用して外部の熱源を吸収し、ヒートパイプを利用して熱伝導効率を高めている。しかしながら、加熱過程で熱気が四散してしまうため、燃焼効率が低かった。また、加熱過程での内部構造の圧力の変化が大きく、熱交換器が機械構造及び重量の制限を受けた。ベースが薄い熱交換器を使用することで熱伝導効率を高めることもできるが、構造強度が低くなり、反対に、ベースが厚い熱交換器を使用すると構造強度を高めることはできるが、熱伝導効率が低下した。ヒートパイプによって熱伝導効率を高めることもできるが、高コストであり、重量が重い等の欠点があり、改善が求められている。
【0005】
また、スターリングエンジンにとって、適温及び熱伝導の供給は重要な操作パラメータである。よって、どのように適温の熱源を提供してスターリングエンジンを駆動するかが核心的な鍵であった。また、燃焼学界では触媒を使用して低温酸化燃焼を行うことを長年研究しているが、低質燃料を完全に酸化させて化学エネルギーを取得することが最大の課題であった。
【0006】
エネルギーコストの上昇、エネルギーの欠乏、及び地球温暖化等の環境問題を鑑み、スターリングエンジン装置の研究開発が進んでいるが、現在バーナー及び熱伝導ベースを統合した製品はなおも存在しなかった。また、低質燃料を使用する設計により、持続可能な炭素経済燃料に適合させ、農畜で生じる沼気及びバイオマスガス化の需要を満たすためには、従来の技術にはより良い解決法を提案する必要性があった。
【0007】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベース、反応ゾーン、及び第一流路及び第二流路によるスクロール加熱装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、従来のスターリングエンジンの加熱装置を改良し、超薄型の加熱端(ベース)にロールケーキ構造を有する第一流路及び第二流路を設計し、前記第一流路及び第二流路が優れた熱伝導及び蓄熱能力を有し、温度を複数のピンフィン表面に高速に伝達可能にすることで、全体的な機械強度を高め、従来の熱交換器が機械構造及び重量の制限を受けて熱伝導効率が低下するという欠点を解決する。
【0010】
前記反応ゾーンは前記ベースの中心位置に位置し、前記第一流路及び第二流路は前記ベースにそれぞれ位置していると共に前記反応ゾーンから外に向けて延伸している。前記第一流路及び第二流路は前記反応ゾーンを起点として前記ベースの周縁に向けて螺旋状に延伸し、且つ前記第一流路及び第二流路の幅は前記ベースの中心部に近接する箇所から前記ベースの周縁に向けて徐々に狭くなり、外側が狭く内側が広い形態を形成している。ガスが前記ベースの周縁に位置している第一流路の一端から前記ベースの中心部に近接している他端に向けて流動すると、外側が狭く内側が広い第一流路を通過することでガスがまず流速を加速し、次いで徐々に広くなる第一流路で減速して前記反応ゾーンに進入し、前記ガスが前記反応ゾーンに停留する時間を延長し、燃焼後の排気ガスが前記ベースの中心部に近接する第二流路の一端に沿って前記ベースの周縁に位置している他端に向けて流出する。
【0011】
好ましくは、前記第一流路及び第二流路はフェルマー(Fermat)螺旋、ヴォ―ゲル(Vogel)螺旋、アルキメデス(Archimedean)螺旋等のうちの1つまたはそれらの組み合わせに基づいて配置している。
【0012】
好ましくは、前記ベースは、前記ベースの周縁に設置していると共に前記第一流路に連通している吸気口、及び前記ベースの周縁に設置していると共に前記第二流路に連通している排気口を備え、前記吸気口及び前記排気口は対向するように設置している。
【0013】
好ましくは、前記スクロール加熱装置は複数のピンフィンをさらに備え、前記ベースは第一面及びその反対側に設置している第二面をさらに含み、複数の前記ピンフィンは前記第一面に間隔を空けて設置し、前記第一流路及び第二流路は前記第二面に位置している。
【0014】
好ましくは、前記スクロール加熱装置は前記第一流路及び第二流路を閉鎖するために前記第二面に設置しているカバーをさらに備えている。
【0015】
好ましくは、前記第一流路は、前記ベースの中心部に近接している第一端部、及び前記ベースの中心部から離間していると共に前記吸気口に連接している第二端部を有している。前記第二流路は、前記ベースの中心部に近接している第三端部、及び前記ベースの中心部から離間していると共に前記排気口に連接している第四端部を有している。
【0016】
好ましくは、前記第一面乃至前記第二面の厚さは3mmである。
【0017】
好ましくは、前記スクロール加熱装置の材質は熱伝導材料であり、熱伝導材料は金属、金属合金、セラミック等のうちの1つまたはそれらの組み合わせから選択している。
【0018】
好ましくは、前記ガスは、ジメチルエーテル(DME)、メタン(CH4)、合成ガス(Syn-gas)、天然ガス、液化石油ガス、沼気等のうちの1つまたはそれらの組み合わせから選択している。
【0019】
好ましくは、前記スクロール加熱装置はスターリングエンジンの加熱端に結合するのに適用している。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、次のような効果がある。ガスが前記第一流路から前記反応ゾーンに向けて移動すると、両側にある第二流路の排気ガスにより予熱され、且つ外側が狭く内側が広い第一流路を通過することでガスがまず流速を加速し、次いで徐々に広くなる第一流路で減速して前記反応ゾーンに進入し、前記ガスが前記反応ゾーンに停留する燃焼時間を延長する。排気ガスが前記第二流路から前記排気口に向けて移動し、次いで前記反応ゾーンに進入するガスを予熱するため、前記スクロール加熱装置が熱伝導及び蓄熱能力を兼ね備え、不要な熱の散失及び利用可能なエネルギーの損耗を減らし、化学エネルギーを熱エネルギーに変換する操作を安定的に実行する。また、燃料ガスの種類も制限を受けず、低発熱量で引火し、直接燃焼するのが困難なガスに運用することで、この種類の低発熱量燃料の制限と枠組みを突破し、エネルギーの有効的な再利用を実現する。
【0021】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好ましい実施例に係るスクロール加熱装置を説明する概略図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例に係るスクロール加熱装置を他の角度からみた概略図である。
【
図3】本発明の好ましい実施例に係るスクロール加熱装置をさらなる他の角度からみた概略図である。
【
図4】本発明の好ましい実施例のガスと排気ガスの移動経路を示す概略図である。
【
図6】本発明の好ましい実施例とスターリングエンジンの設置を説明する概略図である。
【
図7】本発明の好ましい実施例とスターリングエンジンの電力出力状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0024】
次に、
図1~7を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
【0025】
本発明に係るスクロール加熱装置1は、ベース11と、反応ゾーン12と、第一流路13と、第二流路14と、複数のピンフィン15と、カバー16と、を備えている。前記スクロール加熱装置1はスターリングエンジン9の加熱端に結合するのに適用している(
図1、
図2と
図3参照)。
【0026】
前記スクロール加熱装置1の材質は熱伝導材料であり、前記熱伝導材料は金属、金属合金(好ましくはステンレス、アルミニウム合金…)、セラミック等のうちの1つまたはそれらの組み合わせから選択し、その耐熱温度は933Kに達する。熱伝導金属材料の良好な熱伝導特性により、スターリングエンジン9に効果的に熱伝導を行う。燃料の種類は制限されず、各種ガス燃料に運用可能であり、低発熱量で引火し、直接燃焼するのが困難なガスにより、この種の低発熱量燃料の制限及び枠組みを突破し、この種の燃料ガスを応用することで、エネルギーの有効的な再利用を実現する。ここでは、燃料ガスとも呼ばれる前記ガスは、ジメチルエーテル(DME)、メタン(CH4)、合成ガス(Syn-gas)、天然ガス、液化石油ガス、沼気、バイオマスガス等のうちの1つまたはそれらの組み合わせから選択している。ジメチルエーテルの取得は十分に容易であり、バイオマスを抽出精錬することで生成するバイオマスガスによりCO及びH2を生成し、さらに加工してジメチルエーテルを製造する。ジメチルエーテルはバイオマスガスに比べて十分携帯しやすく、且つ引火しやすいため、燃料を十分に代替可能なポテンシャルがある。
【0027】
図4、
図5と
図6を合わせて、前記ベース11は、第一面111と、反対側に設置している第二面112と、前記ベース11の周縁に設置していると共に前記第一流路13に連通している吸気口113と、前記ベース11の周縁に設置していると共に前記第二流路14に連通している排気口114と、を備え、前記吸気口113及び前記排気口114は対向するように設置している。前記吸気口113は未燃焼の常温の混合ガスを吸入し、前記排気口114は燃焼後の高温の排気ガスを排出し、且つガスの吸入及び排気ガスの排出は同時進行する。
【0028】
前記ベース11には前記第二面112の中心点を通過する横軸L1と、前記横軸L1に直交すると共に前記ベース11の中心点を通過する縦軸L2と、前記ベース11の中心点を貫通している中心線L3とを定義している。
【0029】
ここでは、スターリングエンジン9は前記ベース11の第一面111に位置し、前記第一面111乃至前記第二面112までの厚さは3mmであり、すなわち、前記ベース11の厚さは3mmである。
【0030】
前記反応ゾーン12は前記ベース11の中心位置に位置している。
【0031】
前記第一流路13は前記ベース11の第二面112に位置していると共に前記反応ゾーン12から外に向けて延伸し、前記第一流路13は前記反応ゾーン12を起点として前記ベース11の周縁に向けて螺旋状に延伸している。前記第一流路13の幅W1~ W8は前記ベース11の中心部に近接する箇所から前記ベース11の周縁に向けて徐々に狭くなり、外側が狭く内側が広い形態を形成している。
【0032】
前記第二流路14は前記ベース11の第二面112にそれぞれ位置していると共に前記反応ゾーン12から外に向けて延伸し、前記第二流路14は前記反応ゾーン12を起点として前記ベース11の周縁に向けて螺旋状に延伸している。前記第二流路14の幅W1’~ W8’は前記ベース11の中心部に近接する箇所から前記ベース11の周縁に向けて徐々に狭くなり、外側が狭く内側が広い形態を形成している。
【0033】
また、前記第一流路13は、前記ベース11の中心部に近接している第一端部131、及び前記ベース11の中心部から離間していると共に前記吸気口1134に連接している第二端部132を有している。前記第二流路14は、前記ベース11の中心部に近接している第三端部141、及び前記ベース11の中心部から離間していると共に前記排気口114に連接している第四端部142を有している。
【0034】
前記第一流路13及び前記第二流路14はフェルマー(Fermat)螺旋、ヴォ―ゲル(Vogel)螺旋、アルキメデス(Archimedean)螺旋等のうちの1つまたはそれらの組み合わせに基づいて配置している。ここでは、前記第一流路13及び前記第二流路14はフェルマー(Fermat)螺旋に基づいて配置している。
【0035】
更に、前記中心線L3から前記ベース11の周縁にかけての第一流路13の幅の広さが幅W1>幅W2>幅W3>幅W4>幅W5>幅W6>幅W7>幅W8の順となっている。前記中心線L3から前記ベース11の周縁にかけての第二流路14の幅の広さが幅W1’>幅W2’>幅W3’>幅W4’>幅W5’>幅W6’>幅W7’>幅W8’の順となっている。
【0036】
更に、前記中心線L3を基準として、左右の第一流路13及び第二流路14の幅は対称となり、すなわち、W1及びW1’の幅は同じであり、W2及びW2’の幅は同じであり、W3及びW3’の幅は同じであり、W4及びW4’の幅は同じであり、W5及びW5’の幅は同じであり、W6及びW6’の幅は同じであり、W7及びW7’の幅は同じであり、W8及びW8’の幅は同じである。
【0037】
前記第一流路13及び前記第二流路14は前記第二面112に交錯するように設置している。最も外側の円に位置しているガスが経路R1に沿って前記反応ゾーン12に向けて移動すると、一側の経路R2中に位置している加熱した排気ガスにより予熱される。ガスが第二円に移動すると、両側にある経路R2中に位置している加熱した排気ガスにより予熱され、過程中に前記第一流路13中に位置しているガスの移動過程では両側にある排気ガスにより前記反応ゾーン12に到達するまで持続的に予熱され、ガスの予熱効果を高めている。反対に、最も内側の円に位置している排気ガスが前記経路R2に沿って前記排気口114に向けて移動すると、排気ガスが前記反応ゾーン12から前記排気口114に向けて移動したばかりであるため温度が最高となっており、これにより前記反応ゾーン12に進入したガスを予熱し、予熱効果を高める効果を達成し、同時に熱循環効率を最適化し、不要な熱の散失及び利用可能なエネルギーの損耗(exergy destruction)を減らし、予熱反応物に必要な別途のエネルギーにより可燃性を高め、低発熱量燃料を安定的に燃焼させている。
【0038】
複数の前記ピンフィン15は前記第一面111に間隔を空けて設置し、多くの接触表面積を有し、高い熱伝達率を提供し、複数の前記ピンフィン15の表面からスターリングエンジン9に熱を伝達している。前記カバー16は前記第一流路13及び前記第二流路14を閉鎖するために前記第二面112に設置している。前記ベース11の第一面111乃至前記第二面112の厚さは僅か3mmであり、且つ前記第一流路13及び前記第二流路14は優れた熱伝導及び蓄熱能力を有し、温度を複数の前記ピンフィン15の表面に高速に伝達し、全体的な機械強度を高め、従来の熱交換器が機械構造及び重量の制限を受けて熱伝導効が低くなるという欠点を解決している。また、超薄型のスクロール加熱装置1の設計により、表面積対体積比(Area/Volume)を極大化し、熱伝導量を増加している。
【0039】
ガスが前記経路R1に沿って前記ベース11の周縁に位置している第一流路13の第二端部132から前記ベース11の中心部に近接している第一端部131に向けて流動すると、外側が狭く内側が広い第一流路13を通過することでガスがまず流速を加速し、次いで徐々に広くなる第一流路13で減速して前記反応ゾーン12に進入する。ガスの流速が減速する過程で、前記ガスが前記反応ゾーン12に停留する燃焼時間が延長する。また、前記第一流路13中に位置しているガスが移動過程で両側にある排気ガスにより持続的に予熱され、ガスの予熱時間及び効果がさらに増加し、ガスが完全燃焼する。
【0040】
燃焼後の排気ガスは前記ベース11の中心部に近接している第二流路14の第三端部141に沿って前記ベース11の周縁に位置している第四端部142に向けて流出し、熱が前記反応ゾーン12に進入するガスに伝達し、こうして前記スクロール加熱装置1が熱伝導及び蓄熱能力を兼ね備えている。予熱可能な加熱装置の設計により、化学エネルギーを熱エネルギーに変換する操作を安定的に実行し、希薄燃焼状態で常圧のスターリングエンジン9に安定した熱源を提供する。
【0041】
実験過程では、燃料ガスとしてジメチルエーテル(DME)、メタン、及び合成ガスを使用している。前記ベース11の厚さが3mmである場合、スターリングエンジン9を稼働させると16Wの電力を安定的に出力する。前記ベース11の厚さが10mmである場合、スターリングエンジン9を稼働させると10Wの電力を安定的に出力する。前記ベース11の厚さが15mmである場合、スターリングエンジン9を稼働させると6Wの電力を安定的に出力する。
【0042】
また、本発明の加熱装置はさらに活性アルミナ材質の触媒担体を前記第一流路13及び前記第二流路14中に配置している。活性アルミナは表面を白銀塩により湿式めっきを施した後に表面を鍛焼して形成し、これにより反応の活性化エネルギーを低下させ、前記加熱装置内で低温の酸化還元反応を持続的に実行する。さらに、触媒に酸化セリウムを添加し、触媒の酸素運搬能を強化している。酸化セリウムは酸素イオン伝導酸化物に属し、三酸化二セリウムを容易に形成すると共に結晶格子内の酸素原子を放出し、酸素空孔を発生させ、反応の進行の完成度を高め、触媒の活性を強化し、燃料及び空気のガスを前記加熱装置中で完全に反応させ、蓄熱して前記スクロール加熱装置1の温度を維持する。
【0043】
表1はジメチルエーテル、メタン、合成ガスを使用して電力を出力する際の燃料当量比及び熱電変換効率を示す。実験データから分かるように、ジメチルエーテルは燃焼効率が最高1.5%である燃料であり、その単位体積のエネルギー密度(energy density)が最高であり、且つその性質は液化石油ガスに相当するため、常温で加圧して液体として運搬貯蔵可能である。現在有力なディーゼルエンジンの代替燃料となっており、家庭用の液化石油ガスを代替可能である。
【0044】
【0045】
熱効率(η
th)は秒単位で計算する。
W
outは発生する仕事を示す(スターリングエンジンの出力電力により計算する)。
Qinは燃料の総エネルギーを示す。
【0046】
図7は前記スクロール加熱装置1及びスターリングエンジン9を結合した電力出力実験を示す。過程では、スターリングエンジン9の加熱端及び前記スクロール加熱装置1を結合して試験を行い、前記スターリングエンジン9及び前記スクロール加熱装置1の温度差が大きくなるほど、出力されるパワーが大きくなり、温度差が200℃の場合、約12W電力を出力することを発見した。実験結果から分かるように、前記スクロール加熱装置1はスターリングエンジン9の加熱端に有効的に結合し、熱伝導効率を高め、スターリングエンジン9の性能を大幅に向上する。
【0047】
本発明は各種の低発熱量燃料に応用可能であり、例えば、入手しやすい養豚業の廃棄物の沼気をエネルギー出力に応用可能である。養豚過程で形成する沼気の主要成分はメタンであり、実験の試験中にメタンを前記スクロール加熱装置1の燃料ガスとすることで、温室効果ガスの排出を効果的に減少することができる。養殖業者はこの装置が発生させる電力を養殖場に供給することで、電力ネットワークの電力供給に頼らずに現地で自給可能になり、電力の自給自足という利点を実現する。また、分散式発電の応用により、長距離の電力輸送に起因するエネルギーの損失を回避し、エネルギーの不要な損耗を減らす。
【0048】
以上を総合すると、本発明に係るスクロール加熱装置1は、前記ベース11、前記反応ゾーン12、前記第一流路13、前記第二流路14、複数の前記ピンフィン15、及び前記カバー16間の相互の設置により、前記第一流路13及び前記第二流路14が外側が狭く内側が広い形態を形成している。ガスが前記第一流路13から前記反応ゾーン12に向けて移動すると、両側にある第二流路14の排気ガスにより予熱され、外側が狭く内側が広い第一流路13を通過することでガスがまず流速を加速し、次いで徐々に広くなる第一流路13で減速して前記反応ゾーン12に進入し、前記ガスの燃焼反応時間が延長する。排気ガスが前記第二流路14から前記排気口114に向けて移動すると、前記反応ゾーン12に進入するガスを再度予熱することで、前記スクロール加熱装置1が熱伝導及び蓄熱能力を兼ね備え、不要な熱の散失及び利用可能なエネルギーの損耗を減少させ、化学エネルギーを熱エネルギーに変換する操作を安定的に実行する。また、燃料ガスの種類は制限されず、低発熱量で引火し、直接燃焼するのが困難なガスに運用することで、この種の低発熱量燃料の制限及び枠組みを打破し、エネルギーの有効的な再利用を実現し、本発明の目的を確実に達成する。
【0049】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 スクロール加熱装置
11 ベース
111 第一面
112 第二面
113 吸気口
114 排気口
12 反応ゾーン
13 第一流路
131 第一端部
132 第二端部
14 第二流路
141 第三端部
142 第四端部
15 ピンフィン
16 カバー
9 スターリングエンジン
R1 経路
R2 経路
L1 横軸
L2 縦軸
L3 中心線
W1 幅
W2 幅
W3 幅
W4 幅
W5 幅
W6 幅
W7 幅
W8 幅
W1’幅
W2’幅
W3’幅
W4’幅
W5’幅
W6’幅
W7’幅
W8’幅
【要約】 (修正有)
【課題】スクロール加熱装置を提供する。
【解決手段】ベース11と反応ゾーンと第一流路13及び第二流路14を備えている。反応ゾーンはベースの中心部に位置し、第一及び第二流路はベースにそれぞれ位置していると共に反応ゾーンから外に向けて延伸し、第一及び第二流路は反応ゾーンを起点としてベースの周縁に向けて螺旋状に延伸し、第一及び第二流路の幅はベースの中心部に近接する箇所からベースの周縁に向けて徐々に狭くなっている。ガスがベースの周縁に位置している第一流路からベースの中心部に近接する箇所に流動すると、外側が狭く内側が広い第一流路を通過することでガスがまず流速を加速し、次いで徐々に広くなる第一流路で減速して反応ゾーンに進入し、前記ガスが前記反応ゾーンに停留する時間を延長し、燃焼後の排気ガスがベースの中心部に近接する第二流路に沿ってベースの周縁に位置している箇所に流出する。
【選択図】
図1