(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】イオン歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A46B15/00 N
(21)【出願番号】P 2020079355
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2020-09-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日:令和1年10月1日、掲載アドレス:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000048432.html 掲載年月日:令和1年10月9日、掲載アドレス:https://www.womenjapan.com/presents/ionic.html 掲載年月日:令和1年10月9日、掲載アドレス:https://rensai.jp/289448 掲載年月日:令和1年10月18日、掲載アドレス:https://www.asahi-mullion.com/presents/detail/8825 発行者:株式会社宝島社、刊行物:株式会社宝島社「&ROSY」2020年1号、発行日:令和1年11月22日 発行者:株式会社徳間書店、刊行物:株式会社徳間書店「月間GoodsPress」2019年11月号、発行日:令和1年10月4日 発行者:株式会社ベネッセコーポレーション、刊行物:株式会社ベネッセコーポレーション「たまごクラブ」2019年12号、発行日:令和1年11月15日 発行者:株式会社ダイヤモンド社、刊行物:株式会社ダイヤモンド社「週刊ダイヤモンド」2019年10/7号、発行日:令和1年10月7日 発行者:株式会社東洋経済新報社、刊行物:株式会社東洋経済新報社「週刊東洋経済」2019年10/21号、発行日:令和1年10月21日 発行者:株式会社朝日新聞社、刊行物:朝日新聞令和1年10月18日付夕刊、発行日:令和1年10月18日 発行者:株式会社日本歯科新聞社、刊行物:日本歯科新聞令和1年10月8日付、発行日:令和1年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】592116844
【氏名又は名称】アイオニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519358302
【氏名又は名称】ニンポー シーゴ エレクトリック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO SEAGO ELECTRIC CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 満
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】羅 寧
(72)【発明者】
【氏名】蔡 延鐘
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-13405(JP,A)
【文献】特表2013-528426(JP,A)
【文献】登録実用新案第3224381(JP,U)
【文献】国際公開第99/62372(WO,A1)
【文献】特開2000-4946(JP,A)
【文献】特開平8-19428(JP,A)
【文献】特許第2676708(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00
A61C17/22-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持する把持部と、
前記把持部から第1方向に延出している導電性の支軸部と、
前記支軸部によって支持され、ブラシ毛が設けられたヘッド部と、
前記把持部に収容され、第1電極および第2電極を有する電池と、
を含み、
前記支軸部は、前記第1電極と電気的に接続され、
前記把持部は、
基部と、
前記第1方向と直交する第2方向から前記基部を覆うカバー部と、
前記基部の前記カバー部とは反対側に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された導電部と、
を有し、
前記基部および前記カバー部の材質は、絶縁性樹脂であり、
前記導電部の材質は、導電性フィラーを含む導電性樹脂であり、
前記基部および前記カバー部は、
前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に括れた括れ部と、
前記第1方向において前記括れ部を挟む第1端部および第2端部と、
を構成し、
前記把持部には、前記第2方向からみた前記把持部の外縁に沿って前記基部と前記カバー部との境界線が設けられ、
前記導電部は、前記境界線と離間し、
前記括れ部における前記境界線と前記導電部との間の距離は、前記第1端部における前記境界線と前記導電部との間の距離、および前記第2端部における前記境界線と前記導電部との間の距離よりも小さい、イオン歯ブラシ。
【請求項2】
請求項1において、
前記把持部に収容され、前記支軸部と前記第1電極とを電気的に接続している接続部を含み、
前記接続部は、
第1部分と、
前記第1部分と前記支軸部との間に設けられ、前記支軸部と接している第2部分と、
を有し、
前記第1部分のヤング率は、前記第2部分のヤング率よりも小さい、イオン歯ブラシ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2電極と接しているばね部を含み、
前記基部には、前記第2方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記導電部は、前記貫通孔を通って前記ばね部と接している突起部を有する、イオン歯ブラシ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれ1項において、
前記導電部の外表面には、複数の小突起部が設けられている、イオン歯ブラシ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記使用者の操作によって前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続されて発光する発光部を含み、
前記発光部は、緑色LEDまたは青色LEDである、イオン歯ブラシ。
【請求項6】
請求項5において、
前記把持部に収容され、前記発光部から発せられた光を遮光する遮光部と、
前記カバー部に設けられ、前記発光部から発せられた光を透過させる光透過部と、
を含み、
前記遮光部には、前記第2方向からみて前記光透過部と重なる貫通孔が設けられている、イオン歯ブラシ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記把持部に収容され、前記電池が設けられた基板を含み、
前記基板の前記第1方向の長さは、前記基部の前記第1方向の長さの半分よりも小さい、イオン歯ブラシ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記電池および前記括れ部は、前記把持部の前記第1方向における中心よりも前記ヘッド部側に位置している、イオン歯ブラシ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記カバー部は、超音波溶着によって、前記基部に溶着されている、イオン歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシの把持部に電池を内蔵し、この把持部を把持する使用者の手を介して歯とブラシ毛との間に電流を流して、ブラッシング効果を向上させるイオン歯ブラシが知られている。このようなイオン歯ブラシでは、把持部の外表面に導電部が設けられており、使用者が導電部に手を触れながら把持部を把持することにより、歯およびブラシ毛に電流を流すことができる。
【0003】
例えば特許文献1では、導電部の所定の方向(支軸部の延出方向)の長さと、把持部の所定の方向の長さと、の比を所定値以上とすることにより、高い確率で使用者の手を導電部に接触させることができるイオン歯ブラシが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯ブラシを把持する方法として、ペングリップが知られている。ペングリップで歯ブラシを把持すると、余計な力が入り難く、小回りがきくため歯にブラシ毛をきちんと当てて磨くことができる。ペングリップで把持された場合に、使用者が導電部に触れやすいイオン歯ブラシが求められている。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、ペングリップで把持された場合に使用者が導電部に触れ易いイオン歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にイオン歯ブラシの一態様は、
使用者が把持する把持部と、
前記把持部から第1方向に延出している導電性の支軸部と、
前記支軸部によって支持され、ブラシ毛が設けられたヘッド部と、
前記把持部に収容され、第1電極および第2電極を有する電池と、
を含み、
前記支軸部は、前記第1電極と電気的に接続され、
前記把持部は、
基部と、
前記第1方向と直交する第2方向から前記基部を覆うカバー部と、
前記基部の前記カバー部とは反対側に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された導電部と、
を有し、
前記基部および前記カバー部の材質は、絶縁性樹脂であり、
前記導電部の材質は、導電性フィラーを含む導電性樹脂であり、
前記基部および前記カバー部は、
前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に括れた括れ部と、
前記第1方向において前記括れ部を挟む第1端部および第2端部と、
を構成し、
前記把持部には、前記第2方向からみた前記把持部の外縁に沿って前記基部と前記カバー部との境界線が設けられ、
前記導電部は、前記境界線と離間し、
前記括れ部における前記境界線と前記導電部との間の距離は、前記第1端部における前記境界線と前記導電部との間の距離、および前記第2端部における前記境界線と前記導電部との間の距離よりも小さい。
【0008】
なお、本考案に係る記載では、「電気的に接続」という文言を、例えば、「特定の部材(以下「A部材」という)に「電気的に接続」された他の特定の部材(以下「B部材」という)」などと用いている。本考案に係る記載では、この例のような場合に、A部材とB部材とが、直接接して電気的に接続されているような場合と、A部材とB部材とが、他の部材を介して電気的に接続されているような場合とが含まれるものとして、「電気的に接続」という文言を用いている。
【0009】
前記イオン歯ブラシの一態様において、
前記把持部に収容され、前記支軸部と前記第1電極とを電気的に接続している接続部を含み、
前記接続部は、
第1部分と、
前記第1部分と前記支軸部との間に設けられ、前記支軸部と接している第2部分と、
を有し、
前記第1部分のヤング率は、前記第2部分のヤング率よりも小さくてもよい。
【0010】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記第2電極と接しているばね部を含み、
前記基部には、前記第2方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記導電部は、前記貫通孔を通って前記ばね部と接している突起部を有してもよい。
【0011】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記導電部の外表面には、複数の小突起部が設けられていてもよい。
【0012】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記使用者の操作によって前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続されて発光する発光部を含み、
前記発光部は、緑色LEDまたは青色LEDであってもよい。
【0013】
前記イオン歯ブラシの一態様において、
前記把持部に収容され、前記発光部から発せられた光を遮光する遮光部と、
前記カバー部に設けられ、前記発光部から発せられた光を透過させる光透過部と、
を含み、
前記遮光部には、前記第2方向からみて前記光透過部と重なる貫通孔が設けられていてもよい。
【0014】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記把持部に収容され、前記電池が設けられた基板を含み、
前記基板の前記第1方向の長さは、前記基部の前記第1方向の長さの半分よりも小さくてもよい。
【0015】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記電池および前記括れ部は、前記把持部の前記第1方向における中心よりも前記ヘッド部側に位置していてもよい。
【0016】
前記イオン歯ブラシのいずれかの態様において、
前記カバー部は、超音波溶着によって、前記基部に溶着されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るイオン歯ブラシでは、括れ部における境界線(基部とカバー部との境界線)と導電部との間の距離は、第1端部における境界線と導電部との間の距離、および第2端部における境界線と導電部との間の距離よりも小さい。そのため、本発明に係るイオン歯ブラシでは、ペングリップで把持された場合に使用者が導電部に触れ易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す正面図。
【
図2】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す側面図。
【
図3】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す背面図。
【
図4】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す分解斜視図。
【
図5】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す分解斜視図。
【
図6】本実施形態に係るイオン歯ブラシを模式的に示す分解斜視図。
【
図7】本実施形態に係るイオン歯ブラシの接続部および支軸部を模式的に示す断面図。
【
図8】本実施形態に係るイオン歯ブラシの使用方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0020】
1. イオン歯ブラシ
1.1. 構成
本実施形態に係るイオン歯ブラシについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るイオン歯ブラシ100を模式的に示す正面図である。
図2は、本実施形態に係るイオン歯ブラシ100を模式的に示す側面図である。
図3は、本実施形態に係るイオン歯ブラシ100を模式的に示す背面図である。
図4~
図6は、本実施形態に係るイオン歯ブラシ100を模式的に示す分解斜視図である。
【0021】
なお、
図1~
図6では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。Y軸方向を、第1方向ともいう。Z軸方向を、第2方向ともいう。X軸方向は、第3方向ともいう。
【0022】
イオン歯ブラシ100は、
図1~
図6に示すように、例えば、把持部10と、基板20と、電池30と、電池カバー部40と、接続部50と、発光部60と、遮光部70と、光透過部72と、支軸部80と、ヘッド部90と、を含む。なお、便宜上、
図4~
図6では、ヘッド部90の図示を省略している。
【0023】
把持部10は、使用者が把持する部分(持つ部分)である。把持部10は、例えば、Y軸方向に長手方向を有する形状である。把持部10のY軸方向の大きさ(長さ)は、例えば、ヘッド部90のY軸方向の長さよりも大きい。
【0024】
把持部10は、括れ部12を有している。括れ部12は、X軸方向に括れた部分である。把持部10は、
図1に示すように、Z軸方向からみて、X軸方向の大きさ(幅)が極大となる第1極大部13aおよび第2極大部13bを有している。括れ部12は、第1極大部13aと第2極大部13bとの間の部分であって、X軸方向の幅が、第1極大部13aおよび第2極大部13bのうち小さい方の幅以下の部分である。図示の例では、第1極大部13aは、第2極大部13bよりもヘッド部90側に位置しており、第1極大部13aにおけるX軸方向の幅W1は、第2極大部13bにおけるX軸方向の幅W2よりも小さい。したがって、括れ部12は、第1極大部13aと第2極大部13bとの間の部分であって、X軸方向の幅が、第1極大部13aの幅W1以下の部分である。
【0025】
把持部10の括れ部12は、X軸方向の幅が極小となる極小部13cを有している。図示の例では、括れ部12のX軸方向の幅は、第1極大部13aから極小部13cに向かって徐々に小さくなり、極小部13cから第2極大部13bに向かって徐々に大きくなっている。極小部13cは、把持部10のY軸方向における中心Cよりも、ヘッド部90側に位置している。括れ部12には、例えば、滑り止め部14が設けられている。滑り止め部14は、Y軸方向に並んだ複数の凸部によって構成されている。
【0026】
把持部10は、第1端部16と、第2端部18と、を有している。第1端部16および第2端部18は、Y軸方向において括れ部12を挟んでいる。第1端部16は、ヘッド部90側の端部である。図示の例では、第1端部16と括れ部12との境界に第1極大部13aが位置している。第2端部18は、ヘッド部90とは反対側の端部である。図示の例では、第2端部18は、第2極大部13bを有している。
【0027】
把持部10は、基部110と、導電部120と、カバー部130と、を有している。以下では、+Z軸方向を「表面側」ともいい、-Z軸方向を「裏面側」ともいう。表面側は、ブラシ毛91が設けられている側である。
【0028】
基部110は、例えば、Y軸方向に長手方向を有する形状である。基部110の裏面側には、
図6に示すように、凹部112が設けられている。凹部112は、導電部120と嵌め合わされる形状を有している。凹部112の底面(凹部112を規定する基部110の面)には貫通孔114が設けられている。貫通孔114は、基部110をZ軸方向に貫通している。
【0029】
基部110の表面側には、
図5に示すように、凹部116が設けられている。凹部116は、Z軸方向からみて、基部110の外縁に沿って設けられている。凹部116は、カバー部130の凸部132と係合する形状を有している。
【0030】
基部110の材質は、絶縁性樹脂である。基部110の材質は、例えば、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂である。基部110には、導電性フィラーが含まれていない。なお、基部110の材質は、ABS樹脂に限定されず、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどであってもよい。
【0031】
導電部120は、基部110の裏面側に設けられている。導電部120は、基部110のカバー部130とは反対側に設けられている。図示の例では、導電部120は、基部110の凹部112に設けられている。導電部120は、
図5に示すように、係合部122a,122b,122c,122dを有しており、係合部122a,122b,122c,122dが基部110の係合部118a,118b,118c,118d(
図6参照)とそれぞれ係合して、導電部120が凹部112に嵌め合わされている。
【0032】
導電部120は、例えば、Y軸方向に長手方向を有する形状である。導電部120は、
図5に示すように、基部110に設けられた貫通孔114を通る突起部124を有している。
【0033】
導電部120は、
図3に示すように、括れ部12および第2端部18にわたって設けられている。導電部120は、把持部10の外表面を構成している。図示の例では、導電部120は、第1端部16には設けられていない。Z軸方向からみて、括れ部12における導電部120のX軸方向の最大幅W3は、第2端部18における導電部120のX軸方向の最大幅W4よりも大きい。導電部120は、導電部120におけるX軸方向の幅が括れ部12において最大値を有する形状である。
【0034】
導電部120は、
図2に示すように、基部110とカバー部130との境界線140と離間して設けられている。把持部10には、Z軸方向からみた把持部10の外縁に沿って境界線140が設けられている。括れ部12における境界線140と導電部120との間の距離D1は、第1端部16における境界線140と導電部120との間の距離D2、および第2端部18における境界線140と導電部120との間の距離D3よりも小さい。距離D1は、例えば、0.5mm以上5mm以下であり、好ましくは1mm以上4mm以下である。距離D2は、例えば、5mm以上10mm以下であり、好ましくは6mm以上8mm以下である。距離D3は、例えば、10mm以上20mm以下であり、好ましくは12mm以上18mm以下である。
【0035】
導電部120の外表面には、複数の小突起部126が設けられている。小突起部126の大きさは、突起部124の大きさよりも小さい。
図3に示す例では、複数の小突起部126は、楕円状に設けられている。複数の小突起部126によって、導電部120の外表面は、ザラザラした質感を有している。
【0036】
導電部120の材質は、導電性フィラーを含む導電性樹脂である。具体的には、導電部120の材質は、炭素を含む(炭素が添加された)ABS樹脂である。ABS樹脂に添加される炭素は、導電性フィラーであり、例えば、カーボンブラック、黒鉛、天然グラファイト、人造グラファイトなどである。なお、導電性フィラーは、炭素に限定されず、例えば、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅などであってもよい。また、導電性フィラーが添加される樹脂は、ABS樹脂に限定されず、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどであってもよい。
【0037】
カバー部130は、基部110の表面側に設けられている。図示の例では、カバー部130は、Z軸方向から基部110を覆っている。基部110は、導電部120とカバー部130とに挟まれている。カバー部130は、
図6に示すように、凸部132を有している。凸部132は、Z軸方向からみて、カバー部130の外縁に沿って設けられている。カバー部130の材質は、例えば、基部110と同じである。
【0038】
カバー部130は、例えば、超音波溶着によって、基部110に溶着されている。具体的には、カバー部130の凸部132を、基部110に設けられた凹部116に挿入させた状態で、超音波振動を与えつつ圧力を加える。これにより、凸部132および凹部116が互いに溶着し、カバー部130を基部110に溶着させることができる。超音波溶着における超音波振動の周波数および圧力は、凸部132の大きさ、形状、および材質に合わせて、適宜設定することができる。カバー部130および基部110の材質がABS樹脂の場合、超音波溶着における周波数は、例えば、15kHz以上25kHz以下であり、好ましくは18kHz以上20kHz以下である。カバー部130および基部110の材質がABS樹脂の場合、超音波溶着における圧力は、例えば、0.4MPa以上0.6
MPa以下である。
【0039】
カバー部130は、支軸部80を固定している。カバー部130は、支軸部80を基部110に固定する固定部134を有している。支軸部80は、固定部134を貫通して(通って)基部110に固定されている。
【0040】
カバー部130および基部110は、括れ部12、第1端部16、および第2端部18を構成している。導電部120は、括れ部12および第2端部18を構成している。すなわち、括れ部12および第2端部18は、基部110、導電部120、およびカバー部130を有している。第1端部16は、基部110およびカバー部130を有している。
【0041】
カバー部130のヘッド部90と接続される側には、第1係合部136が設けられている。第1係合部136は、
図1に示すように、ヘッド部90の第2係合部97と係合可能である。第1係合部136は、第2係合部97と係合することができれば、その形状は特に限定されない。
【0042】
基板20は、
図4~
図6に示すように、把持部10に収容されている。基板20は、例えば、ねじ22によって基部110に固定されている。図示の例では、ねじ22は、2つ設けられており、基板20は、2か所で固定されている。
図4に示すように、基板20のY軸方向の長さL1は、基部110のX軸方向の長さL2の半分よりも小さい。
【0043】
電池30は、把持部10に収容されている。図示の例では、電池30は、基板20の裏面側に設けられている。電池30および括れ部12は、把持部10のX軸方向における中心Cよりもヘッド部90側に位置している。電池30は、例えば、略円盤状のリチウム電池である。電池30は、第1電極32と、第2電極34と、を有している。図示の例では、電池30は、第1電極32を基板20に向けて、基板20に搭載されている。第1電極32は、例えば、負極である。第2電極34は、例えば、正極である。
【0044】
電池カバー部40は、
図6に示すように、第2電極34を覆って設けられている。電池カバー部40は、第2電極34と接している。電池カバー部40は、導電部120の突起部124と電池30との間に設けられている。電池カバー部40は、突起部124と接している。電池カバー部40は、突起部124と接しているばね部42を有している。図示の例では、ばね部42は、2つ設けられている。導電部120は、電池カバー部40を介して、第2電極34と電気的に接続されている。電池カバー部40の材質は、例えば、金属である。
【0045】
接続部50は、把持部10に収容されている。接続部50は、基部110と基板20との間に設けられている。接続部50は、基板20に設けられた配線(図示せず)を介して、第1電極32と電気的に接続されている。接続部50は、支軸部80と第1電極32とを電気的に接続している。ここで、
図7は、接続部50および支軸部80を模式的に示す断面図である。なお、
図7では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0046】
接続部50は、
図7に示すように、第1部分52と、第2部分54と、を有している。第1部分52の材質は、例えば、樹脂である。第1部分52は、スポンジであってもよい。第1部分52のヤング率は、第2部分54のヤング率よりも小さい。第1部分52は、支軸部80に押されて凹んでいる。第2部分54は、第1部分52と支軸部80との間に設けられている。図示の例では、第2部分54は、第1部分52の全表面を覆っている。第2部分54は、支軸部80と接している。第2部分54の材質は、例えば、ステンレス鋼である。
【0047】
発光部60は、
図5に示すように、把持部10に収容されている。発光部60は、基板20の表面側に設けられている。発光部60は、緑色光を発する緑色LED(Light Emitting Diode)、または青色光を発する青色LEDである。発光部60は、使用者の操作によって第1電極32および第2電極34と電気的に接続されて発光する。具体的には、カバー部130には、ボタン62が設けられており、使用者がボタン62を押すことにより、基板20に設けられたスイッチ64がONとなる。これにより、第1電極32および第2電極34と電気的に接続されて、発光部60は発光する。一方、使用者がボタン62を押していない状態では、スイッチ64がOFFとなり、発光部60は発光しない。
【0048】
遮光部70は、把持部10に収容されている。遮光部70は、基板20とカバー部130との間に設けられている。遮光部70は、発光部60から発せられた光を遮光する。遮光部70には、貫通孔71が設けられている。図示の例では、貫通孔71は、遮光部70をZ軸方向に貫通している。遮光部70の材質は、例えば、ウレタン樹脂である。
【0049】
光透過部72は、カバー部130に設けられている。光透過部72は、カバー部130を貫通して設けられている。光透過部72は、発光部60から発せられた光を透過させる。Z軸方向からみて、貫通孔71は、光透過部72と重なっている。ボタン62が押されることによって発光部60から発せられた光は、貫通孔71を通った後、光透過部72を透過して、イオン歯ブラシ100の外部に照射される。一方、電池30が消耗し、所定の電圧を有していない場合には、使用者がボタン62を押しても発光部60は発光しない。したがって、使用者は、光透過部72を透過した光をイオン歯ブラシ100の外部において視認することにより、電池30の電圧の検査を行うことができる。
【0050】
支軸部80は、把持部10からY軸方向に延出している。具体的には、支軸部80は、
図1に示すように、基部110の+Y軸方向側の端部から、ヘッド部90を把持部10に装着した際のブラシ部92近傍まで、Y軸方向に延出している。図示の例では、支軸部80の形状は、棒状である。支軸部80は、
図6に示すように、把持部10に収容されている被収容部82を有している。被収容部82は、接続部50と接している。支軸部80は、接続部50および基板20に設けられた配線(図示せず)を介して、第1電極32と電気的に接続されている。支軸部80の材質は、例えば、ステンレス鋼である。
【0051】
ヘッド部90は、
図1に示すように、支軸部80によって支持されている。ヘッド部90は、例えば、ブラシ毛91が設けられた(植毛された)ブラシ部92と、ブラシ部92から一体的にくびれて延出しているシャンク部93と、を有している。
【0052】
ヘッド部90の、ブラシ毛91が植毛されている外表面94であって、ブラシ部92近傍の位置には、支軸部80の一部を露出する開口部95が設けられている。ヘッド部90の材質は、例えば、ABS樹脂、PP(polypropylene)樹脂などである。
【0053】
ヘッド部90のシャンク部93には、支軸部80が挿入される支軸部挿入穴96が設けられている。支軸部挿入穴96は、開口部95と連通している。シャンク部93の把持部10と接続される側には、カバー部130に設けられた第1係合部136と係合する第2係合部97が設けられている。第2係合部97は、第1係合部136と係合することができれば、その形状は特に限定されない。
【0054】
1.2. 使用方法
図8は、イオン歯ブラシ100の使用方法を説明するための図である。
図8に示すように、使用者Uは、ペングリップでイオン歯ブラシ100の把持部10を把持する。使用者Uの人差し指は、把持部10の括れ部12の側面に設けられた境界線140に触れる。括
れ部12の境界線140と導電部120との間の距離D1は、第1端部16の境界線140と導電部120との間の距離D2、および第2端部18の境界線140と導電部120との間の距離D3よりも小さいので、使用者Uの人差し指が境界線140に触れると、使用者Uの人差し指は導電部120にも触れる。図示の例では、使用者Uの親指は、括れ部12の滑り止め部14に触れている。さらに、使用者Uの中指も括れ部12に触れている。
【0055】
使用者Uが導電部120に手を触れながら把持部10を把持し、ブラシ毛91によって歯をブラッシングすると、ブラシ毛91は、唾液等の液体によって濡れ、開口部95を含む液体の連なった経路を介して支軸部80と電気的に導通可能な状態となる。すなわち、開口部95は、液体を媒体として、ブラシ毛91と支軸部80とを電気的に導通可能にするための開口部である。これにより、電流は、電池30から使用者Uの手、体、歯、ブラシ毛91、開口部95を含む液路、支軸部80、電池30という経路で流れ、電位傾斜によって歯垢除去効果等のブラッシング効果を高めることができる。
【0056】
なお、イオン歯ブラシ100を把持する方法は、ペングリップのみに限定されない。例えば、使用者Uは、ペングリップと、把持部10を手のひら全体で把持するパームブリップと、の2つの方法でイオン歯ブラシ100を把持してもよい。
【0057】
1.3. 作用効果
イオン歯ブラシ100では、括れ部12における境界線140と導電部120との間の距離D1は、第1端部16における境界線140と導電部120との間の距離D2、および第2端部18における境界線140と導電部120との間の距離D3よりも大きい。そのため、イオン歯ブラシ100では、ペングリップで把持された場合に、使用者Uの人差し指が導電部120に触れ易い。これにより、歯およびブラシ毛91に電流が流れる可能性を高くすることができ、ブラッシング効果を向上させることができる。
【0058】
さらに、距離D2および距離D3が距離D1よりも小さいため、その分、導電部120の面積(Z軸方向からみた場合の面積)を小さくすることができる。導電性フィラーを含む導電性樹脂は、絶縁性樹脂よりも高価であるため、導電部120の面積を小さくすることにより、低コスト化を図ることができる。
【0059】
さらに、導電部120は、境界線140と離間している。そのため、超音波溶着によってカバー部130を基部110に溶着させる際に、基部110に対するカバー部130の溶着強度を高めることができる。導電性フィラーを含む導電性樹脂である導電部120は、絶縁性樹脂である基部110およびカバー部130と、超音波による溶融の度合いが異なる。そのため、例えば導電部が境界線と接していると、カバー部の導電部と接している部分において、溶着強度が低下してしまう。
【0060】
イオン歯ブラシ100では、把持部10に収容され、支軸部80と第1電極32とを電気的に接続している接続部50を含み、接続部50は、第1部分52と、第1部分52と支軸部80との間に設けられ、支軸部80と接している第2部分54と、を有し、第1部分52のヤング率は、第2部分54のヤング率よりも小さい。そのため、イオン歯ブラシ100では、接続部が第2部分のみから構成されている場合に比べて、接続部50が支軸部80に押されて凹み易く、接続部50と支軸部80との接触面積を増やすことができる。これにより、接続部50と支軸部80との導通を、より確実に行うことができる。
【0061】
イオン歯ブラシ100では、第2電極34と接しているばね部42を含み、基部110には、Z軸方向に貫通する貫通孔114が設けられ、導電部120は、貫通孔114を通ってばね部42と接している突起部124を有する。そのため、イオン歯ブラシ100で
は、ばね部42によって導電部120を付勢することができる。これにより、接続部50と支軸部80との導通を、より確実に行うことができる。
【0062】
イオン歯ブラシ100では、導電部120の外表面には、複数の小突起部126が設けられている。そのため、使用者Uは、導電部120に触れているか否か、手触りによって知ることができる。
【0063】
イオン歯ブラシ100では、使用者Uの操作によって第1電極32および第2電極34と電気的に接続されて発光する発光部60を含み、発光部60は、緑色LEDまたは青色LEDである。そのため、イオン歯ブラシ100では、発光部60の発光によって電池30の残量を知ることができる。さらに、例えば発光部が赤色光を発する赤色LEDの場合、使用者は、赤色光を視認すると何か問題が生じたのではないかと勘違いする可能性がある。しかし、イオン歯ブラシ100の発光部60緑色LEDまたは青色LEDであるため、そのような心配がない。
【0064】
イオン歯ブラシ100では、把持部10に収容され、発光部60から発せられた光を遮光する遮光部70と、カバー部130に設けられ、発光部60から発せられた光を透過させる光透過部72と、を含み、遮光部70には、Z軸方向からみて光透過部72と重なる貫通孔71が設けられている。そのため、イオン歯ブラシ100では、遮光部70が設けられていない場合に比べて、発光部60から発せられた光がカバー部130の光透過部72が設けられていない部分に拡散することを防ぐことができる。
【0065】
イオン歯ブラシ100では、把持部10に収容され、電池30が設けられた基板20を含み、基板20のY軸方向の長さL1は、基部110のY軸方向の長さL2の半分よりも小さい。そのため、イオン歯ブラシ100では、長さL1が長さL2の半分よりも大きい場合に比べて、軽量化を図ることができる。
【0066】
イオン歯ブラシ100では、電池30および括れ部12は、把持部10のY軸方向における中心Cよりもヘッド部90側に位置している。そのため、イオン歯ブラシ100では、例えば括れ部が中心Cよりもヘッド部側に位置し電池が中心Cよりも反対側(ヘッド部とは反対側)に位置している場合に比べて、イオン歯ブラシ100の重心の位置を括れ部12に近づけることができる。これにより、使用者Uは、ペングリップで把持部10の括れ部12をバランス良く把持することができる。
【0067】
イオン歯ブラシ100では、カバー部130は、超音波溶着によって、基部110に溶着されている。そのため、イオン歯ブラシ100では、カバー部130を基部110に強固に溶着させることができる。
【0068】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0069】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0070】
10…把持部、12…括れ部、13a…第1極大部、13b…第2極大部、13c…極小
部、14…滑り止め部、16…第1端部、18…第2端部、20…基板、22…ねじ、30…電池、32…第1電極、34…第2電極、40…電池カバー部、42…ばね部、50…接続部、52…第1部分、54…第2部分、60…発光部、62…ボタン、64…スイッチ、70…遮光部、71…貫通孔、72…光透過部、80…支軸部、82…被収容部、90…ヘッド部、91…ブラシ毛、92…ブラシ部、93…シャンク部、94…外表面、95…開口部、96…支軸部挿入穴、97…第2係合部、100…イオン歯ブラシ、110…基部、112…凹部、114…貫通孔、116…凹部、118a,118b,118c,118d…係合部、120…導電部、122a,122b,122c,122d…係合部、124…突起部、126…小突起部、130…カバー部、132…凸部、134…固定部、136…第1係合部、140…境界線