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特許6989926乾燥装置及びそれを備えるインクジェット印刷装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】乾燥装置及びそれを備えるインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 27/00 20060101AFI20220104BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220104BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20220104BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20220104BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B65H27/00 Z
B41J2/01 125
B41J2/01 305
F26B3/04
F26B13/08
B41J15/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018139836
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015588
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】井沢 秀男
(72)【発明者】
【氏名】大山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和茂
(72)【発明者】
【氏名】今 秀俊
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137584(JP,A)
【文献】特開2016-078428(JP,A)
【文献】特開2016-124268(JP,A)
【文献】特開2011-168389(JP,A)
【文献】特開2014-238191(JP,A)
【文献】特開2016-215428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 27/00
B41J 2/01
F26B 1/00-25/22
B41J 15/00-15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部によりインクが付与された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための乾燥装置において、
印刷体を案内すると共に、該印刷体を加熱可能な第1加熱ロール部及び第2加熱ロール部と、
前記第1加熱ロール部の外周面に対向するように設けられた第1加熱部と、
前記第2加熱ロール部の外周面に対向するように設けられた第2加熱部と、
前記印刷体を案内すると共に、該印刷体を冷却可能な急冷ロールと、
を備え、
前記印刷体が上流側の前記第1加熱ロール部に案内された後、下流側の前記第2加熱ロール部に案内されるものであり、
前記第2加熱ロール部の設定温度が前記第1加熱ロール部の設定温度よりも高く、
前記第1加熱ロール部及び前記第1加熱部が、排気口が設けられた第1チャンバーに収容されており、
前記第2加熱ロール部及び前記第2加熱部が、排気口が設けられた第2チャンバーに収容されており、
前記急冷ロールが、前記第2加熱ロール部に近設され、
前記第2チャンバーの外に出た前記印刷体が、前記第2加熱ロール部から前記急冷ロールに直接案内されるようになっており、
前記第1加熱ロール部及び前記第2加熱ロール部には前記印刷体の裏面が接し、前記急冷ロールには前記印刷体の印刷面が接するようになっている乾燥装置。
【請求項2】
前記第1加熱部が、前記第1加熱ロール部の周方向に沿って並設された複数の第1熱風吹付装置からなり、
前記第2加熱部が、前記第2加熱ロール部の周方向に沿って並設された複数の第2熱風吹付装置からなり、
前記印刷体の印刷面と前記第1熱風吹付装置との間、及び、前記印刷体の印刷面と前記第2熱風吹付装置との間、には隙間があり、
前記第1加熱ロール部の外周面と、第1熱風吹付装置との最短距離が、5mm~10mmであり、
前記第2加熱ロール部の外周面と、第2熱風吹付装置との最短距離が、5mm~10mmであり、
前記第1熱風吹付装置及び前記第2熱風吹付装置がそれぞれ前記印刷体の印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
隣合う前記第1熱風吹付装置同士の間には隙間が設けられており、
隣合う前記第2熱風吹付装置同士の間には隙間が設けられており、
前記第1熱風吹付装置及び前記第2熱風吹付装置は、いずれも、2基の吹付けユニットからなり、
前記吹付けユニットが、底板と、底板上に配置され熱源となるシーズヒータと、当該シーズヒータに向けてエアを吹き付け可能なノズルパイプと、シーズヒータ及びノズルパイプを覆うように設けられたヒータカバーとからなり、
前記シーズヒータが、上面視でU字状に屈曲し、螺旋状のリブ部を有しており、
前記底板に設けられたスリットから前記印刷体に熱風が吹き付けられる請求項2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第1熱風吹付装置が、第1チャンバーに支持され、
前記第2熱風吹付装置が、第2チャンバーに支持され、
前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーには、それぞれ、前記印刷体の搬送を妨げないように角部に開口部を有している請求項2又は3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記印刷体の裏面が前記第1加熱ロール部に接する位置よりも上流側に設けられた補助加熱部を更に備え、
前記補助加熱部が、前記印刷体の搬送経路に沿って設けられた補助熱風吹付装置からなり、
前記印刷体の印刷面と前記補助熱風吹付装置との間には隙間があり、
前記補助熱風吹付装置が前記印刷体の印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている請求項1~4のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第1チャンバーは、上流側及び下流側の外側側面に、それぞれ、スライド部が設けられ、乾燥装置の筐体部に設けられたレール部に、前記スライド部を介して支持されており、
前記レール部は、前記体部の内部から、前記体部に設けられた切り欠き部を介して前記体部の後方に、前記第1加熱ロール部の軸芯方向に平行となるように延びており、
前記第1チャンバーは、前記スライド部を介して、前記レール部に沿って、前記体部の内部から、前記切り欠き部を通過して、前記体部の後方にスライド可能となっている請求項1~5のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記第1チャンバーは、その壁面に、複数の前記排気口が設けられており、
前記排気口は、それぞれ、前記第1チャンバーの外側に配置された排気用送風機に連通しており、
前記排気用送風機を稼動させることにより、前記第1チャンバー内のエアは、前記排気口を介して、外部の排気ダクトから排気される請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第1加熱ロール部は、その外周面にサンドブラスト、ショットブラスト又はビーズブラストによる凹凸加工が施されている請求項1~7のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記急冷ロールが、中空円柱状のドラムと、該ドラムの中空部に内蔵された円筒部と、該ドラムの一端に取り付けられたロータリージョイントと、該ロータリージョイントに取り付けられた往路管及び復路管とを有し、
冷却水が、前記往路管からロータリージョイントを介して前記円筒部の内部流路に流入され、前記ドラムの他端に衝突すると、前記円筒部の外部流路に案内され、該外部流路からロータリージョイントを介して前記復路管に流出されるようになっている請求項1~8のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記印刷体を案内すると共に、該印刷体を冷却可能な冷却ロールを更に備え、
該冷却ロールが、前記急冷ロールの下流側に配設され、且つ、
前記印刷体が前記急冷ロールに案内された後、前記冷却ロールに案内されるものである請求項1~9のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項11】
被印刷体を搬送しながら印刷するための印刷部と、
該印刷部により印刷された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための請求項1~10のいずれか1項に記載の乾燥装置と、
を備え、
前記印刷部が、複数のインクジェット印刷用ヘッドからなるものであるインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及びそれを備えるインクジェット印刷装置に関し、更に詳しくは、印刷部により印刷された印刷体を乾燥するための乾燥装置及びそれを備えるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、フィルム、布帛等の被印刷体に印刷を施す印刷装置が知られている。
かかる印刷は、一般に、被印刷体に、着色剤と、水系溶媒とを含むインクを付与し、印刷体とするものである。そのため、印刷直後の印刷体は、水系溶媒を含むウェットの状態であり、印刷体から当該水系溶媒を除去する必要がある。
【0003】
印刷直後の印刷体においては、上述したように水系溶媒を除去する必要があるところ、水系溶媒の除去に時間を要した場合、インクの乾燥不足による被印刷体へのインク滲み、インクの凝集、他色インクとの混色、さらには印刷面との接触部材へのインク転写から起きる被印刷体への再転写などから、画質が低下するという問題がある。このため、印刷装置においては、印刷直後の印刷体を乾燥させるため、乾燥装置を搭載したものが開発されている。
【0004】
例えば、ウエブの両面に連続して記録可能なインクジェット記録装置であって、複数配設された記録ヘッドと、記録ヘッドにより記録されたウエブを乾燥するための乾燥機と、ウエブを案内する案内ローラと、を備えるインクジェット記録装置(例えば、特許文献1参照)や、ウエブの記録面側に配設されたラインヘッドと、ウエブを案内する案内ローラと、ウエブの非記録面側に配設された吸引機構と、ラインヘッドにより記録されたウエブを乾燥するための乾燥機とを備えるインクジェット記録装置(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
また、媒体を搬送するための第1搬送部と、第1搬送部によって搬送される媒体に液体を塗布するための液体塗布部とを有する液体塗布ユニットと、液体塗布部によって液体が塗布された媒体を搬送するための第2搬送部と、媒体に塗布された液体を乾燥するための乾燥部とを有する乾燥ユニットであって、第2搬送部を制御することによって乾燥ユニット内における媒体に付与される張力を制御することが可能な乾燥ユニットとを備え、液体塗布ユニットと乾燥ユニットとを接続して液体塗布ユニットと乾燥ユニットとの間の媒体の搬送路を形成した時、又は、2つの乾燥ユニットを接続して2つの乾燥ユニット間の媒体の搬送路を形成した時には、一方のユニットにおける媒体の搬送動作と他方のユニットにおける媒体の搬送動作とがそれぞれ独立して制御可能なように、接続された2つのユニット間に調整部が設けられ、搬送する媒体の種類に応じて、液体塗布装置が備える乾燥ユニットの数を決定する液体塗布装置の構築方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-116019号公報
【文献】特開2013-18247号公報
【文献】特開2016-107549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1及び2に記載のインクジェット印刷装置に搭載された乾燥機においては、乾燥時間が比較的短いため、印刷体を十分に乾燥するためには、乾燥機の設定温度を極めて高温とする必要がある。
そして、乾燥機の設定温度を極めて高温とした場合、印刷体は十分に乾燥されるものの、印刷体の温度が急激に上昇することから、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じる恐れがある。なお、カックルとは、印刷体が波を打ったように湾曲した状態になることをいう。
【0008】
また、上記特許文献3記載の液体塗布装置においては、乾燥ユニットを2台設けているが、その分、搬送速度を2倍としているため、結果的に、印刷体の温度が急激に上昇することを抑制することはできない。したがって、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを十分に抑制できるとは言えない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、印刷体を乾燥することができると共に、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを十分に抑制することができる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、印刷体の乾燥において、ウェットの印刷体を十分に加熱すること、及び、その後水系溶媒に十分な気化エネルギーを付与すること、の2段階が必要ではないかと考えた。
そして、第1加熱ロール部及び第1加熱部、並びに、第2加熱ロール部及び第2加熱部を備えるものとし、印刷体を段階的に加熱する構成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、(1)印刷部によりインクが付与された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための乾燥装置において、印刷体を案内すると共に、該印刷体を加熱可能な第1加熱ロール部及び第2加熱ロール部と、第1加熱ロール部の外周面に対向するように設けられた第1加熱部と、第2加熱ロール部の外周面に対向するように設けられた第2加熱部と、印刷体を案内すると共に、該印刷体を冷却可能な急冷ロールと、を備え、印刷体が上流側の第1加熱ロール部に案内された後、下流側の第2加熱ロール部に案内されるものであり、第2加熱ロール部の設定温度が第1加熱ロール部の設定温度よりも高く、第1加熱ロール部及び第1加熱部が、排気口が設けられた第1チャンバーに収容されており、第2加熱ロール部及び第2加熱部が、排気口が設けられた第2チャンバーに収容されており、急冷ロールが、第2加熱ロール部に近設され、第2チャンバーの外に出た印刷体が、第2加熱ロール部から急冷ロールに直接案内されるようになっており、第1加熱ロール部及び第2加熱ロール部には印刷体の裏面が接し、急冷ロールには印刷体の印刷面が接するようになっている乾燥装置に存する。
【0012】
本発明は、(2)第1加熱部が、第1加熱ロール部の周方向に沿って並設された複数の第1熱風吹付装置からなり、第2加熱部が、第2加熱ロール部の周方向に沿って並設された複数の第2熱風吹付装置からなり、印刷体の印刷面と第1熱風吹付装置との間、及び、印刷体の印刷面と第2熱風吹付装置との間、には隙間があり、第1加熱ロール部の外周面と、第1熱風吹付装置との最短距離が、5mm~10mmであり、第2加熱ロール部の外周面と、第2熱風吹付装置との最短距離が、5mm~10mmであり、第1熱風吹付装置及び第2熱風吹付装置がそれぞれ印刷体の印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている上記(1)記載の乾燥装置に存する。
【0013】
本発明は、(3)隣合う第1熱風吹付装置同士の間には隙間が設けられており、隣合う第2熱風吹付装置同士の間には隙間が設けられており、第1熱風吹付装置及び第2熱風吹付装置は、いずれも、2基の吹付けユニットからなり、吹付けユニットが、底板と、底板上に配置され熱源となるシーズヒータと、当該シーズヒータに向けてエアを吹き付け可能なノズルパイプと、シーズヒータ及びノズルパイプを覆うように設けられたヒータカバーとからなり、シーズヒータが、上面視でU字状に屈曲し、螺旋状のリブ部を有しており、底板に設けられたスリットから印刷体に熱風が吹き付けられる上記(2)記載の乾燥装置に存する。
本発明は、(4)第1熱風吹付装置が、第1チャンバーに支持され、第2熱風吹付装置が、第2チャンバーに支持され、第1チャンバー及び第2チャンバーには、それぞれ、印刷体の搬送を妨げないように角部に開口部を有している上記(2)又は(3)に記載の乾燥装置に存する。
【0014】
本発明は、()印刷体の裏面が第1加熱ロール部に接する位置よりも上流側に設けられた補助加熱部を更に備え、補助加熱部が、印刷体の搬送経路に沿って設けられた補助熱風吹付装置からなり、印刷体の印刷面と補助熱風吹付装置との間には隙間があり、補助熱風吹付装置が印刷体の印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている上記(1)~()のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
【0015】
本発明は、(6)第1チャンバーは、上流側及び下流側の外側側面に、それぞれ、スライド部が設けられ、乾燥装置の筐体部に設けられたレール部に、スライド部を介して支持されており、レール部は、体部の内部から、体部に設けられた切り欠き部を介して体部の後方に、第1加熱ロール部の軸芯方向に平行となるように延びており、第1チャンバーは、スライド部を介して、レール部に沿って、体部の内部から、切り欠き部を通過して、体部の後方にスライド可能となっている上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
本発明は、(7)第1チャンバーは、その壁面に、複数の排気口が設けられており、排気口は、それぞれ、第1チャンバーの外側に配置された排気用送風機に連通しており、排気用送風機を稼動させることにより、第1チャンバー内のエアは、排気口を介して、外部の排気ダクトから排気される上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
【0016】
本発明は、(第1加熱ロール部は、その外周面にサンドブラスト、ショットブラスト又はビーズブラストによる凹凸加工が施されている上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
本発明は、(9)急冷ロールが、中空円柱状のドラムと、該ドラムの中空部に内蔵された円筒部と、該ドラムの一端に取り付けられたロータリージョイントと、該ロータリージョイントに取り付けられた往路管及び復路管とを有し、冷却水が、往路管からロータリージョイントを介して円筒部の内部流路に流入され、ドラムの他端に衝突すると、円筒部の外部流路に案内され、該外部流路からロータリージョイントを介して復路管に流出されるようになっている上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
【0017】
本発明は、(10)印刷体を案内すると共に、該印刷体を冷却可能な冷却ロールを更に備え、該冷却ロールが、急冷ロールの下流側に配設され、且つ、印刷体が急冷ロールに案内された後、冷却ロールに案内されるものである上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の乾燥装置に存する。
【0018】
本発明は、(11)被印刷体を搬送しながら印刷するための印刷部と、該印刷部により印刷された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の乾燥装置と、を備え、印刷部が、複数のインクジェット印刷用ヘッドからなるものであるインクジェット印刷装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乾燥装置においては、第1加熱ロール部及び第2加熱ロール部を備えるので、搬送される印刷体に対する乾燥時間を十分に長くすることができる。
また、第1加熱ロール部及び第1加熱部、並びに、第2加熱ロール部及び第2加熱部、で印刷体の両側を加熱することにより、効率良く印刷体を乾燥させることができる。
【0020】
このとき、本発明の乾燥装置においては、第2加熱ロール部の設定温度が第1加熱ロール部の設定温度よりも高いので、設定温度が比較的低い第1加熱ロール部及び第1加熱部により、ウェットの印刷体が十分に加熱され、設定温度が比較的高い第2加熱ロール部及び第2加熱部により、水系溶媒に十分な気化エネルギーが付与される。なお、十分な気化エネルギーが付与されることにより、水系溶媒が気化し印刷体から除去される。
このように、本発明の乾燥装置においては、印刷直後のウェットの印刷体を段階的に加熱することができるので、印刷体を確実に乾燥することができると共に、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを抑制することができる。
【0021】
ここで、第1加熱ロール部の設定温度はインクに含まれる水系溶媒の沸点以下であることが好ましい。すなわち、第1加熱ロール部においては、水系溶媒の気化よりも印刷体の加熱が優先される。これにより、印刷体の温度が急激に上昇することを確実に防止できる。
【0022】
本発明の乾燥装置においては、第1加熱部として、複数の第1熱風吹付装置が、第1加熱ロール部の周方向に沿って並設されており、第2加熱部として、複数の第2熱風吹付装置が、第2加熱ロール部の周方向に沿って並設されている場合、印刷体に対し、ムラなく熱風を吹き付けることができる。このことにより、印刷体は、部分的に乾燥速度の差が生じることを抑制でき、より均一に乾燥されることになる。
【0023】
このとき、隣合う第1熱風吹付装置同士の間、及び、隣合う第2熱風吹付装置同士の間には隙間が設けられていることが好ましい。この場合、印刷体に吹き付けられた熱風を、当該隙間から逃がすことができる。これにより、吹き付けられた熱風の対流が生じるので、印刷体周辺で水系溶媒が含まれる熱風が停滞することを防止できる。
【0024】
本発明の乾燥装置においては、補助熱風吹付装置からなる補助加熱部を更に備える場合、印刷体が第1加熱ロール部に接する前に、当該印刷体の印刷面側を予め加熱することができる。なお、印刷体の印刷面側は、インクが付与されているので、印刷体の裏面側よりも加熱効率が劣る。このため、印刷体の印刷面側を予め加熱しておくことにより、印刷体全体をより均一に効率良く乾燥することが可能となる。
【0025】
本発明の乾燥装置においては、第2加熱ロール部及び第2加熱部が、排気口が設けられたチャンバーに収容されている場合、気化した水系溶媒を、チャンバー内に留め、且つ、チャンバーの排気口から排気することができる。これにより、気化した水系溶媒が浮遊し、印刷体に再付着したり、乾燥装置に付着することを防止することができる。
【0026】
本発明の乾燥装置においては、第2加熱ロール部に近設される急冷ロールを備える場合、チャンバーの外に出た印刷体が、第2加熱ロール部から直接案内される急冷ロールにより、急冷されるので、印刷体における水系溶媒の気化が強制的に停止される。これにより、気化した水系溶媒がチャンバーの外に放出されることを抑制することができる。
【0027】
本発明の乾燥装置においては、急冷ロールの下流側に配設された冷却ロールを備える場合、印刷体を十分に冷却することができる。
これにより、印刷体を巻取り等で回収する場合は、巻き取る際の印刷体の寸法変化を極力抑制することができる。
また、巻取りに限らず、後処理機を接続した場合、後処理機への影響が少ない。
また、印刷体の温度を乾燥前の状態に戻すことにより、当該印刷体の裏面に、別途印刷することも可能となる。
また、下流側のローラの膨張等の弊害を抑制することもできる。
【0028】
本発明のインクジェット印刷装置においては、上述した乾燥装置を備えるので、複数のインクジェット印刷用ヘッドにより印刷を施した印刷体を、印刷直後に乾燥することができ、且つ、当該印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明に係る乾燥装置の一実施形態の概略を示す透視側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る乾燥装置の第1加熱ロール部の水平断面図である。
図3(A)】図3(A)は、本実施形態に係る乾燥装置の第1熱風吹付装置を示す透視斜視図である。
図3(B)】図3(B)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置のシーズヒータを示す上面図である。
図3(C)】図3(C)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置のA-A線で切断した断面図である。
図3(D)】図3(D)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置の下面図である。
図4図4は、図1の乾燥装置を反対側から見た透視側面図である。
図5図5は、本実施形態に係る乾燥装置の急冷ロールを幅方向に切断した垂直断面図である。
図6図6は、本実施形態に係る乾燥装置の冷却ロールを幅方向に切断した垂直断面図である。
図7図7は、本発明に係るインクジェット印刷装置の一実施形態の概略を示す透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
まず、本発明に係る乾燥装置について説明する。
本発明に係る乾燥装置は、印刷部により、被印刷体にインクが付与された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための装置である。
乾燥装置は、印刷装置に搭載して用いることも、印刷装置に並設して連続的に用いることも可能である。
ここで、上記被印刷体としては、長尺状の紙、フィルム、布帛等が採用できる。
上記インクとしては、特に限定されないが、染料、顔料等の着色剤と、水系溶媒と、必要に応じて添加される公知の添加剤とを含むものが用いられる。
上記印刷装置としては、インクジェット印刷装置、オフセット印刷装置、グラビア印刷装置、フレキソ印刷装置、スクリーン印刷装置等が採用できる。
なお、本明細書において、「上流側」とは印刷体の搬送経路における上流側を意味し、「下流側」とは印刷体の搬送経路における下流側を意味する。すなわち、第1加熱ロール部側を上流側とし、第2加熱ロール部側を下流側としている。
また、「印刷面」とは、印刷体のインクが付与されている側の面を意味し、「裏面」は、印刷面の反対側の面を意味する。
また、「幅方向」とは、印刷体における搬送方向に直交する方向を意味する。
【0032】
図1は、本発明に係る乾燥装置の一実施形態の概略を示す透視側面図である。なお、後述する排気口15aの図示は省略している。
図1に示すように、本実施形態に係る乾燥装置Hは、印刷体Xを案内すると共に、該印刷体Xを加熱可能な加熱ロール部10(以下「第1加熱ロール部」という。)及び加熱ロール部20(以下「第2加熱ロール部」という。)と、第1加熱ロール部10の外周面に対向するように設けられた加熱部11(以下「第1加熱部」という。)と、第2加熱ロール部20の外周面に対向するように設けられた加熱部21(以下「第2加熱部」という。)と、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11が収容されたチャンバー15(以下「第1チャンバー」という。)と、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21が収容されたチャンバー25(以下「第2チャンバー」という。)と、印刷体Xの裏面が第1加熱ロール部10に接する位置よりも上流側に設けられた補助加熱部50と、印刷体Xを案内すると共に、該印刷体Xを冷却可能な急冷ロール30と、印刷体Xを案内すると共に、該印刷体Xを冷却可能な冷却ロール40とを備える。
【0033】
乾燥装置Hにおいては、図示しない印刷部によりインクが付与された印刷体Xが、第1加熱ロール部10、第2加熱ロール部20、急冷ロール30及び冷却ロール40により順次案内される。なお、冷却ロール40に案内された後の乾燥された印刷体Xは、例えば、図示しない回収部に案内され、当該回収部でいわゆる巻取り方式や折畳み方式により回収される。若しくは、冷却ロール40に案内された後の乾燥された印刷体Xは、例えば、別の印刷装置の印刷部に案内され、印刷体の裏面が再度印刷される。
乾燥装置Hにおいて、印刷体Xは、これらに案内されながら、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11、並びに、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21により加熱され、急冷ロール30及び冷却ロール40により冷却される。
【0034】
このように、乾燥装置Hにおいては、印刷体Xが、第1加熱ロール部10及び第2加熱ロール部20に案内されながら、乾燥されるので、印刷体Xに対する乾燥時間を十分に長くすることができる。
また、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11、並びに、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21、で印刷体Xの両側を加熱することにより、効率良く印刷体Xを乾燥させることができる。
【0035】
まず、インクが付与された印刷体Xは、案内ロールに案内され、補助加熱部50により加熱乾燥される。
乾燥装置Hにおいて、補助加熱部50は、印刷体Xの裏面が第1加熱ロール部10に接する位置よりも上流側の印刷体Xの印刷面側に、当該印刷体Xに沿うように設けられる。
乾燥装置Hにおいては、インクが付与された印刷体Xが第1加熱ロール部10に到達する前に、当該印刷体Xの裏面よりウェットな印刷面が、補助加熱部50により予め加熱される。これにより、印刷体Xは、後述する第1加熱ロール部10及び第1加熱部11、並びに、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21において、印刷体Xの印刷面及び裏面における乾燥速度の差を極力小さくすることができる。その結果、印刷体X全体をより均一に効率良く乾燥することが可能となる。
【0036】
補助加熱部50は、印刷体Xの搬送経路に沿って設けられた補助熱風吹付装置51からなる。なお、補助熱風吹付装置51は、乾燥装置Hの筐体部HAに取り付けられた図示しないフレームに支持される。
補助熱風吹付装置51は、印刷体Xに対して熱風を吹き付け可能となっている。すなわち、印刷体Xの印刷面と補助熱風吹付装置51との間には隙間があり、補助熱風吹付装置51が印刷体Xの印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている。
【0037】
印刷体Xと補助熱風吹付装置51との最短距離は、後述する第1加熱ロール部10の外周面と第1熱風吹付装置14との最短距離H1と同様に、5mm~10mmであることが好ましい。
補助熱風吹付装置51は、後述するサーモスタットや熱電対と同等のものが取り付けられていてもよい。
補助熱風吹付装置51の設定温度は、100~140℃であることが好ましい。
補助熱風吹付装置51の構造は、後述する第1加熱部11の熱風吹付装置14の構造と同じであるので、その他の詳細な説明は省略する(図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)参照)。なお、補助熱風吹付装置51は、3基の吹付けユニット14aからなっている(図3(A)参照)。
【0038】
補助加熱部50を通過した印刷体Xは、第1加熱ロール部10の外周面に巻き付くようにして、当該第1加熱ロール部10により案内される。すなわち、第1加熱ロール部10は、印刷体Xを案内すると共に、該印刷体Xを加熱可能となっている。
このとき、加熱ロール部10に対する印刷体Xの巻き付き角度θ、すなわち、第1加熱ロール部10の側面において、印刷体Xが第1加熱ロール部10に最初に接する点と、第1加熱ロール部10の軸中心とを結ぶ第1線、及び、印刷体Xが第1加熱ロール部10に最後に接する点と、第1加熱ロール部10の軸中心とを結ぶ第2線、のなす角度θが、180度以上であることが好ましく、270度以上であることがより好ましい。この場合、乾燥時間を十分に長くできるため、比較的低温で印刷体を乾燥させることができる。
【0039】
乾燥装置Hにおいて、第1加熱ロール部10は、中空円柱状であり、その外周面が加熱されるようになっている。このため、印刷体Xは、第1加熱ロール部10の外周面に接することにより加熱される。なお、印刷体Xが擦れることによる印刷面の画質低下を防止するため、第1加熱ロール部10は、印刷体Xの裏面が接するように配置することが好ましい。
【0040】
図2は、本実施形態に係る乾燥装置の第1加熱ロール部の水平断面図である。なお、第1チャンバー15は図示していない。
図2に示すように、第1加熱ロール部10は、中空円柱状のドラム12と、ドラム12を加熱するためのバンドヒーター13と、ドラム12の両側が取り付け固定された軸芯16とを有する。
【0041】
第1加熱ロール部10において、ドラム12は、アルミニウム等の金属からなる。
また、ドラム12は、その外周面にサンドブラスト、ショットブラスト、ビーズブラスト等による凹凸加工が施されている。これにより、印刷体Xの裏面と第1加熱ロール部10(ドラム12)の外周面とが接する際に、これらの間に仮に空気が入り込んだとしても、その空気を凹凸面による隙間から逃がすことができ、さらに、グリップを高めることでドラムへの密着性も向上する。その結果、印刷体Xの乾燥効率が低下することを抑制できる。
【0042】
バンドヒーター13は、環状であり、ドラム12内部において、ドラム12の内周面に沿うように取り付けられる。
また、バンドヒーター13は、ドラム12の幅方向に対して3基が並設されている。
各バンドヒーター13においては、それぞれ、電源端子13aと、バンドヒーター13の温度を測定するための熱電対13bと、異常加熱時にヒーターへの電源供給を遮断するためのサーモスタット13cとが内周面に取り付けられている。
【0043】
したがって、各バンドヒーター13は、それぞれ独立に、温度設定が可能であり、温度調整も可能となっている。
また、例えば、印刷体Xの幅が小さい場合は、使用しないバンドヒーター13の電源をOFFにすることも可能である。
【0044】
ここで、第1加熱ロール部10の設定温度は、例えば、80~120℃で用いられる。かかる設定温度は100℃以下であることが好ましい。すなわち、第1加熱ロール部10においては、水系溶媒の気化よりも印刷体の加熱が優先される。このため、第1加熱ロール部10において、水系溶媒の気化を極力抑制し、印刷体Xの温度が急激に上昇しないように、加熱することになる。
【0045】
軸芯16は、軸受けを介してブラケットB1に支持されており、当該ブラケットB1は、フレームを介して乾燥装置Hの筐体部HAに取り付けられている。このため、第1加熱ロール部10は、ブラケットB1に対して、回転自在となっている。なお、第1加熱ロール部10は、印刷体Xの搬送による摩擦力により回転し、結果として、印刷体Xと共に回転することになる。
また、軸芯16は、一端に電源用ロータリーコネクタ16aが取り付けられており、他端に信号用ロータリーコネクタ16bが取り付けられている。
そして、上述した各電源端子13aは、ケーブルを介して、電源用ロータリーコネクタ16aに接続されており、上述した各熱電対13bは、ケーブルを介して、信号用ロータリーコネクタ16bに接続されている。
【0046】
図1に戻り、乾燥装置Hにおいて、第1加熱部11は、第1加熱ロール部10の外周面に対向するように、印刷体Xを介して、設けられる。すなわち、印刷体Xの印刷面から一定の間隔をおいて第1加熱部11が設けられている。
したがって、印刷体Xは、裏面が第1加熱ロール部10により加熱され、印刷面が第1加熱部11により加熱されることになる。
【0047】
第1加熱部11は、第1加熱ロール部10の周方向に沿って並設された複数の熱風吹付装置14(以下「第1熱風吹付装置」という。)からなる。なお、第1加熱部11である複数の第1熱風吹付装置14は、第1チャンバー15に支持される。
第1熱風吹付装置14は、印刷体Xに対して熱風を吹き付け可能となっている。すなわち、印刷体Xの印刷面と第1熱風吹付装置14との間には隙間があり、第1熱風吹付装置14が印刷体Xの印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている。これにより、印刷体Xに対し、ムラなく熱風を吹き付けることができる。また、印刷体Xは、部分的に乾燥速度の差が生じることを抑制でき、より均一に乾燥されることになる。
【0048】
ここで、第1加熱ロール部10の外周面と、第1熱風吹付装置14との最短距離H1(図1参照)は、5mm~10mmであることが好ましい。
かかる最短距離H1が5mm未満であると、最短距離H1が上記範囲内にある場合と比較して、印刷体Xが第1熱風吹付装置14(底板14a4)に接触する恐れがあり、最短距離H1が10mmを超えると、最短距離H1が上記範囲内にある場合比較して、第1熱風吹付装置14による乾燥効率が急激に低下する傾向がある。
【0049】
図3(A)は、本実施形態に係る乾燥装置の第1熱風吹付装置を示す透視斜視図であり、図3(B)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置のシーズヒータを示す上面図であり、図3(C)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置のA-A線で切断した断面図であり、図3(D)は、図3(A)に示す第1熱風吹付装置の下面図である。
図3(A)に示すように、第1熱風吹付装置14は、2基の吹付けユニット14aからなる。
また、各吹付けユニット14aは、第1加熱ロール部10の幅に略一致するように、第1加熱ロール部10の幅方向に延びる中空角柱状となっている。このため、第1熱風吹付装置14から吹き付けられる熱風は、第1加熱ロール部10の全幅に及ぶことになる。
【0050】
吹付けユニット14aは、底板14a4と、底板14a4上に配置され熱源となるシーズヒータ14a1と、当該シーズヒータ14a1に向けてエアを吹き付け可能なノズルパイプ14a2と、シーズヒータ14a1及びノズルパイプ14a2を覆うように設けられたヒータカバー14a3とからなる。
【0051】
図3(B)に示すように、シーズヒータ14a1は、上面視でU字状に屈曲しており、両側の端部に電極が設けられている。
シーズヒータ14a1は、螺旋状のリブ部Rを有しているため、その表面積が大きくなっている。これにより、シーズヒータ14a1の周辺において、比較的広範囲でエアを加熱することが可能となっている。
【0052】
図3(C)に示すように、シーズヒータ14a1は、上述したようにU字状であるため、図3(A)のA-A線で切断すると、上流側と下流側に一列ずつ設けられていることになる。
そして、ノズルパイプ14a2は、その両側のシーズヒータ14a1の間の上方に設けられている。
また、ノズルパイプ14a2は、内部を圧縮されたエアが流通可能となっており、ノズルパイプ14a2の下側に、両側のシーズヒータ14a1に向けて設けられた一対のノズル穴Nを有している。なお、かかるノズル穴Nは、ノズルパイプ14a2の長さ方向に沿って複数設けられている(図3(A)参照)。このため、ノズル穴Nから吹き付けられるエアは、シーズヒータ14a1により加熱されることになる。
【0053】
このとき、ノズル穴Nの径は、ノズルパイプ14a2のエアの流入口から離れるに従って徐々に小さくなっている。すなわち、ノズルパイプ14a2のエアの流入口から最も離れた奥の部分では流入したエアのエア圧が大きくなり、ノズルパイプ14a2のエアの流入口に近い部分では流入したエアのエア圧が小さくなるため、ノズル穴Nの径を奥に行くほど小さくすることにより、各ノズル穴Nからのエアの吹付け量を均一にすることができる。
【0054】
吹付けユニット14aにおいて、シーズヒータ14a1及びノズルパイプ14a2は、底板14a4と、当該底板14a4に連結されたヒータカバー14a3とにより形成される空間Vに収容されている。このため、空間Vは、シーズヒータ14a1により加熱されたエアで充填されることになる。
そして、底板14a4には、スリットSが設けられており、加熱されたエア、すなわち、熱風が当該スリットSから印刷体Xに吹き付けられることになる。
なお、かかるスリットSの幅H2は、吹付け幅及びエア圧の観点から、0.5mm~1.0mmであることが好ましい。
【0055】
図3(D)に示すように、吹付けユニット14aにおいて、スリットSは、底板14a4の長手方向(第1加熱ロール部10の幅方向)に沿って延びるように複数設けられている。これにより、第1加熱ロール部10の全幅に対して熱風を吹き付け可能となっている。
【0056】
図1に戻り、第1加熱部11においては、隣合う第1熱風吹付装置14同士の間に、隙間Tが設けられている。これにより、第1熱風吹付装置14のスリットSから印刷体Xに吹き付けられた熱風及び気化した水系溶媒を、当該隙間Tから外部に逃がすことができる。その結果、吹き付けられた熱風の対流が生じるので、印刷体X周辺で水系溶媒を含む熱風が停滞することを防止できる。
【0057】
なお、第1熱風吹付装置14は、上述した、サーモスタットや熱電対と同等のものが取り付けられていてもよい。
また、第1熱風吹付装置14の設定温度は、第1加熱ロール部10の設定温度以上であることが好ましく、具体的には、第1加熱ロール部10の設定温度に0~20℃足した温度であることが好ましい。
【0058】
乾燥装置Hにおいて、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11は、第1チャンバー15に収容されている。
第1チャンバー15は、前面(図1の紙面手前側の面)及び後面(図1の紙面奥側の面)にドラム12に対応する穴を有する箱状であり、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11と干渉しないように、且つ、これらを覆うように設けられている。
また、第1チャンバー15は、印刷体Xの搬送を妨げないように角部に開口部を有している。
乾燥装置Hにおいては、仮に、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11による加熱により、印刷体Xの水系溶媒が気化したとしても、それを第1チャンバー15内に十分に閉じ込めることができる。
【0059】
第1チャンバー15は、上流側及び下流側の外側側面に、それぞれ、スライド部Pが設けられており、乾燥装置の筐体部HAに設けられたレール部Lに、スライド部Pを介して支持されている。
また、レール部Lは、体部HAの内部から、体部HAに設けられた切り欠き部Kを介して体部HAの後方(図1の紙面奥側)に、第1加熱ロール部10の軸芯方向(幅方向)に平行となるように延びている。このため、第1チャンバー15は、スライド部Pを介して、レール部Lに沿って、体部HAの内部から、切り欠き部Kを通過して、体部HAの後方にスライド可能となっている。なお、このとき、第1チャンバー15の前面の穴がドラム12を通過する。
加熱装置Hにおいては、第1チャンバー15を体部HAの後方にスライドさせることにより、メンテナンスが容易となるという利点がある。
【0060】
また、第1チャンバー15は、その内壁面が、ガラスウール等のそれ自体に耐熱性のある図示しない断熱材で覆われている。このため、第1チャンバー15は、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11が発する熱が第1チャンバー15の外に伝達されることを抑制する、いわゆる遮熱効果を発揮することができる。
【0061】
図4は、図1の乾燥装置を反対側から見た透視側面図である。また、図4においては、排気口15aに連結される配管の図示は省略している。
図4に示すように、第1チャンバー15は、その壁面に、複数の排気口15aが設けられている。そして、各排気口15aは、第1チャンバー15の外側に配置された排気用送風機D1に連通している。したがって、排気用送風機D1を稼動させることにより、第1チャンバー15内のエアは、排気口15aを介して、外部の図示しない排気ダクトから排気することが可能となっている。これにより、第1チャンバー15内において、水系溶媒が気化して浮遊していたとしてもこれを除去できるので、浮遊する水系溶媒が結露して印刷体Xに再付着したり、乾燥装置H内に付着して汚染することを防止することができる。
また、第1チャンバー15内において、上述した第1加熱部11にエアを供給するための供給用送風機D2は、排気用送風機D1に並設されている。なお、第1チャンバー15には、第1加熱部11にエアを供給するための供給口も設けられているが、供給口の位置と、第1加熱部11の位置とが重なるため、図示していない。
【0062】
図1に戻り、乾燥装置Hにおいては、上流側の第1加熱ロール部10を通過した印刷体Xが、複数の案内ロールを介して、下流側の第2加熱ロール部20に案内される。
第2加熱ロール部20は、中空円柱状であり、その外周面が加熱されるようになっている。このため、印刷体Xは、第2加熱ロール部20の外周面に接することにより加熱される。なお、印刷体Xが擦れることによる印刷面の画質低下を防止するため、第2加熱ロール部20は、印刷体Xの裏面が接するように配置することが好ましい。
なお、第2加熱ロール部20は、ブラケットB2に支持されており、当該ブラケットB2は、フレームを介して乾燥装置Hの筐体部HAに取り付けられている。
また、第2加熱ロール部20の構造は、上述した第1加熱ロール部10の構造と同じであるので、その他の詳細な説明は省略する(図2参照)。
【0063】
ここで、第2加熱ロール部20の設定温度は、第1加熱ロール部10の設定温度よりも高くする。すなわち、第2加熱ロール部20においては、第1加熱ロール部10により十分に加熱された印刷体Xに対し、水系溶媒を気化させる。このため、第2加熱ロール部20においては、水系溶媒を積極的に気化させ、印刷体Xを確実に乾燥させる。
なお、第2加熱ロール部20の設定温度は、100~140℃であることが好ましい。
【0064】
乾燥装置Hにおいて、第2加熱部21は、第2加熱ロール部20の外周面に対向するように、印刷体Xを介して、設けられる。すなわち、印刷体Xの印刷面から一定の間隔をおいて第2加熱部21が設けられている。
したがって、印刷体Xは、裏面が第2加熱ロール部20により加熱され、印刷面が第2加熱部21により加熱されることになる。
【0065】
第2加熱部21は、第2加熱ロール部の周方向に沿って並設された複数の熱風吹付装置24(以下「第2熱風吹付装置」という。)からなる。なお、第2熱風吹付装置24は、第2チャンバー25に支持される。
第2熱風吹付装置24は、印刷体Xに対して熱風を吹き付け可能となっている。すなわち、印刷体Xの印刷面と第2熱風吹付装置24との間には隙間があり、第2熱風吹付装置24が印刷体Xの印刷面に向けて熱風を吹き付け可能となっている。これにより、印刷体Xに対し、ムラなく熱風を吹き付けることができる。また、印刷体Xは、部分的に乾燥速度の差が生じることを抑制でき、より均一に乾燥されることになる。
【0066】
第2加熱部21においては、隣合う第2熱風吹付装置24同士の間に、隙間Tが設けられている。これにより、第2熱風吹付装置24のスリットSから印刷体Xに吹き付けられた熱風を、当該隙間Tから外部に逃がすことができる。その結果、吹き付けられた熱風の対流が生じるので、印刷体X周辺で水系溶媒を含む熱風が停滞することを防止できる。
【0067】
第2加熱ロール部20の外周面と第2熱風吹付装置24との最短距離は、上述した第1加熱ロール部10の外周面と第1熱風吹付装置14との最短距離H1と同様に、5mm~10mmであることが好ましい。
第2熱風吹付装置24は、上述したサーモスタットや熱電対と同等のものが取り付けられていてもよい。
第2熱風吹付装置24の設定温度は、第2加熱ロール部20の設定温度以上であることが好ましく、具体的には、第2加熱ロール部20の設定温度に0~20℃足した温度であることが好ましい。
なお、第2熱風吹付装置24の構造は、上述した第1加熱部11の第1熱風吹付装置14の構造と同じであるので、その他の詳細な説明は省略する(図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)参照)。
【0068】
乾燥装置Hにおいて、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21は、第2チャンバー25(チャンバー)に収容されている。
第2チャンバー25は、前面(図1の紙面手前側の面)及び後面(図1の紙面奥側の面)にドラム12に対応する穴を有する箱状であり、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21と干渉しないように、且つ、これらを覆うように設けられている。
また、第2チャンバー25は、印刷体Xの搬送を妨げないように角部に開口部を有している。
乾燥装置Hにおいては、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21による加熱により、印刷体Xの水系溶媒が気化しても、それを第2チャンバー25内に十分に閉じ込めることができる。
【0069】
第2チャンバー25は、上流側及び下流側の外側側面に、それぞれ、スライド部Pが設けられており、乾燥装置の筐体HAに設けられたレール部Lに、スライド部Pを介して支持されている。
また、レール部Lは、体部HAの内部から、体部HAに設けられた切り欠き部Kを介して体部HAの後方(図1の紙面奥側)に、第2加熱ロール部20の軸芯方向(幅方向)に平行となるように延びている。このため、第2チャンバー25は、スライド部Pを介して、レール部Lに沿って、体部HAの内部から、切り欠き部Kを通過して、体部HAの後方にスライド可能となっている。なお、このとき、第2チャンバー25の前面の穴がドラム12を通過する。
加熱装置Hにおいては、第2チャンバー25を体部HAの後方にスライドさせることにより、メンテナンスが容易となるという利点がある。
【0070】
また、第2チャンバー25は、その内壁面が、ガラスウール等のそれ自体に耐熱性のある図示しない断熱材で覆われている。このため、第2チャンバー25は、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21が発する熱が第2チャンバー25の外に伝達されることを抑制する、いわゆる遮熱効果を発揮することができる。
【0071】
第2チャンバー25は、上述した第1チャンバー15と同様に、その壁面に、複数の排気口15aが設けられている。そして、各排気口15aは、上述した第1チャンバー15と同様に、第2チャンバー25の外側に配置された排気用送風機D1に連通している。したがって、排気用送風機D1を稼動させることにより、第2チャンバー25内のエアは、排気口15aを介して、外部の図示しない排気ダクトから排気することが可能となっている。これにより、第2チャンバー25内において、水系溶媒が気化して浮遊してもこれを除去できるので、例えば、浮遊する水系溶媒が結露して印刷体Xに再付着したり、乾燥装置H内に付着して汚染することを防止することができる。
また、第2チャンバー25内において、上述した第2加熱部21にエアを供給するための供給用送風機D2は、排気用送風機D1に並設されている。なお、第2チャンバー25には、第2加熱部21にエアを供給するための供給口も設けられているが、供給口の位置と、第2加熱部21の位置とが重なるため、図示していない。
【0072】
乾燥装置Hにおいて、印刷体Xは、第2加熱ロール部20から急冷ロール30に直接案内される。すなわち、第2加熱ロール部20に案内される印刷体Xは、第2チャンバー25の外に出た直後に急冷ロール30に案内されるようになっている。
このとき、印刷体Xは、第2加熱ロール部20及び第2加熱部24により加熱された状態から、急冷ロールにより急激に冷却される。これにより、印刷体Xにおける水系溶媒の気化が強制的に停止されるので、気化した水系溶媒が第2チャンバー25の外に放出されることを抑制することができる。
【0073】
急冷ロール30は、中空円柱状であり、その外周面が冷却されるようになっている。このため、印刷体Xは、急冷ロール30の外周面に接することにより冷却される。なお、急冷ロール30は、水系溶媒をより多く含む印刷面が接するように配置することが好ましい。
なお、急冷ロール30は、乾燥装置Hの体部HAに取り付けられたフレームに支持される。
【0074】
図5は、本実施形態に係る乾燥装置の急冷ロールを幅方向に切断した垂直断面図である。
図5に示すように、急冷ロール30は、中空円柱状のドラム31と、当該ドラム31の中空部31aに内蔵された円筒部31bと、当該ドラム31の一端に取り付けられたロータリージョイント32と、当該ロータリージョイント32に取り付けられた往路管32a及び復路管32bとを有する。
急冷ロール30においては、ドラム31の中空部31aと、ロータリージョイント32、往路管32a及び復路管32bの内部とが連通している。
【0075】
急冷ロール30においては、ロータリージョイント32を介して、ドラム31内に冷却水が流通するようになっている。
具体的には、急冷ロール30において、冷却水は、往路管32aからロータリージョイント32を介して円筒部31bの内部流路31b1に流入され、ドラム31の他端に衝突すると、円筒部31bの外部流路31b2に案内され、当該外部流路31b2からロータリージョイント32を介して復路管32bに流出されるようになっている。これにより、急冷ロール30は、十分に冷却されることになる。
【0076】
乾燥装置Hにおいて、印刷体Xは、急冷ロール30から複数の案内ロールを介して、下流側の冷却ロール40に案内される。
冷却ロール40は、上下方向に一対設けられている。各冷却ロール40は、それぞれ、中空円柱状であり、その外周面が冷却されるようになっている。このため、印刷体Xは、冷却ロール40の外周面に接することにより更に冷却される。
なお、冷却ロール40は、乾燥装置Hの体部HAに取り付けられたフレームに支持される。
【0077】
図6は、本実施形態に係る乾燥装置の冷却ロールを幅方向に切断した垂直断面図である。
図6に示すように、冷却ロール40は、いずれも、中空円柱状のドラム41と、当該ドラム41の中空部41aに内蔵された円柱部41bと、当該ドラム41の両端にそれぞれ取り付けられたロータリージョイント42と、一端側のロータリージョイント42に取り付けられた往路管42aと、他端側のロータリージョイント42に取り付けられた復路管42bとを有する。
冷却ロール40においては、ドラム41の中空部41aと、両端のロータリージョイント42、往路管42a及び復路管42bの内部とが連通している。
【0078】
冷却ロール40においては、ロータリージョイント42を介して、ドラム41内に冷却水が流通するようになっている。
具体的には、冷却ロール40において、冷却水は、往路管42aから一端側のロータリージョイント42を介して中空部41aの円柱部41bの外部流路41b2に案内され、当該外部流路41b2から他端側のロータリージョイント42を介して復路管42bに流出されるようになっている。これにより、冷却ロール40は、十分に冷却されることになる。
【0079】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいては、上述したように、印刷直後のウェットの印刷体Xを、設定温度が異なる、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11と、第2加熱ロール部20及び第2加熱部21とで段階的に加熱するので、印刷体Xを確実に乾燥することができると共に、印刷体X自体がカールしたり、印刷体Xにシワやカックルが生じることを抑制することができる。
また、印刷体Xは、急冷ロール30及び冷却ロール40により十分に冷却されるので、印刷体Xを巻取り等で回収する場合は、巻き取る際の印刷体Xの寸法変化を極力抑制することができる。
さらに、印刷体Xの温度を乾燥前の状態に戻すことにより、当該印刷体の裏面に、別途印刷することも可能となる。
【0080】
次に、本発明に係るインクジェット印刷装置について説明する。
図7は、本発明に係るインクジェット印刷装置の一実施形態を示す透視側面図である。
図7に示すように、本実施形態に係るインクジェット印刷装置Iは、被印刷体X1を供給するための給紙部61と、被印刷体X1を搬送しながら印刷するための印刷部62と、該印刷部62により印刷された長尺状の印刷体Xを搬送しながら乾燥するための乾燥装置Hと、乾燥された印刷体Xを回収するための回収部63とを備える。
【0081】
インクジェット印刷装置Iにおいては、印刷部62が、複数のインクジェット印刷用ヘッドからなる。なお、かかるインクジェット印刷用ヘッドの方式は、ラインヘッド方式であっても、シリアルヘッド方式であってもよい。
また、各インクジェット印刷用ヘッドには、上述したインクが、YMCK等の色毎に充填される。
【0082】
インクジェット印刷装置Iにおいては、図示しないサーボモータによってプルローラ70を回転させることによって、任意の速度で印刷体Xが搬送される。
また、印刷体Xのテンションは、ロードセル等を用いた図示しないテンションセンサが取り付けられたテンションローラ71によって検知され、目標のテンションとなるように、サーボモータにより、プルローラ70の回転量を調整することが可能となっている。
また、印刷部62下方の印刷体Xの搬送経路はアーチ状となっている。これにより、印刷体Xのバタつきを抑えることができる。
【0083】
インクジェット印刷装置Iにおいては、上述した乾燥装置Hを備えているので、複数のインクジェット印刷用ヘッドにより印刷を施した印刷体Xを、印刷直後に乾燥することができ、且つ、当該印刷体X自体がカールしたり、印刷体Xにシワやカックルが生じることを十分に抑制することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0085】
本実施形態に係る乾燥装置Hは、補助加熱部50を備えているが、当該補助加熱部50は必ずしも必須ではない。
【0086】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいて、第1加熱ロール部10は、中空円柱状のドラム12と、ドラム12を加熱するためのバンドヒーター13と、ドラム12の両側が取り付け固定された軸芯16とを有しているが、第1加熱ロール部10は外周面が加熱可能であればこの構造に限定されない。なお、第2加熱ロール部20についても同様である。
【0087】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいて、第1加熱ロール部10のドラム12は、その外周面に凹凸加工が施されているが必ずしも必須でない。
また、凹凸加工の代わりに、ドラム12の表面に細溝を設けてもよい。
なお、第2加熱ロール部20のドラムについても同様である。
【0088】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいては、第1加熱部11として、並設された第1熱風吹付装置14を示しているが、印刷体Xの少なくとも一面を加熱乾燥可能であれば、この構造に限定されない。なお、補助加熱部50及び第2加熱部21についても同様である。
【0089】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいては、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11を収容する第1チャンバー15は、必ずしも必須ではない。
なぜなら、チャンバーは浮遊する水系溶媒を閉じ込め除去するために用いるところ、第1加熱ロール部10及び第1加熱部11の設定温度は、水系溶媒を積極的に気化させる温度ではないためである。
また、同様の理由で、乾燥装置Hにおいては、第1加熱ロール部10には、近設する急冷ロールが設けられていない。
なお、水系溶媒が浮遊するのを確実に防止するため、第1チャンバー15を設け、且つ、第1加熱ロール部10に近設する急冷ロールを設けることも当然可能である。
【0090】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいて、急冷ロール30は、中空円柱状のドラム31と、当該ドラム31の中空部31aに内蔵された円筒部31bと、当該ドラム31の一端に取り付けられたロータリージョイント32と、当該ロータリージョイント32に取り付けられた往路管32a及び復路管32bとを有しているが、印刷体Xを冷却可能であれば、この構造に限定されない。
【0091】
本実施形態に係る乾燥装置Hにおいて、冷却ロール40は、中空円柱状のドラム41と、当該ドラム41の中空部41aに内蔵された円柱部41bと、当該ドラム41の両端にそれぞれ取り付けられたロータリージョイント42と、一端側のロータリージョイント42に取り付けられた往路管42aと、他端側のロータリージョイント42に取り付けられた復路管42bとを有しているが、印刷体Xを冷却可能であれば、この構造に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の乾燥装置は、印刷装置の印刷部により、被印刷体にインクが付与された長尺状の印刷体を搬送しながら乾燥するための装置として利用できる。かかる乾燥装置によれば、印刷体を乾燥することができると共に、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを十分に抑制することができる。
本発明のインクジェット印刷装置は、被印刷体にインクを付与することにより、文字や図柄を印刷するための装置として利用できる。かかるインクジェット印刷装置によれば、上記乾燥装置を備えるため、印刷体を乾燥することができると共に、印刷体自体がカールしたり、印刷体にシワやカックルが生じることを十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0093】
10・・・第1加熱ロール部(加熱ロール部)
11・・・第1加熱部(加熱部)
12,31,41・・・ドラム
13・・・バンドヒーター
13a・・・電源端子
13b・・・熱電対
13c・・・サーモスタット
14・・・第1熱風吹付装置(熱風吹付装置)
14a・・・吹付けユニット
14a1・・・シーズヒータ
14a2・・・ノズルパイプ
14a3・・・ヒータカバー
14a4・・・底板
15・・・第1チャンバー(チャンバー)
15a・・・排気口
16・・・軸芯
16a・・・電源用ロータリーコネクタ
16b・・・信号用ロータリーコネクタ
20・・・第2加熱ロール部(加熱ロール部)
21・・・第2加熱部(加熱部)
24・・・第2熱風吹付装置(熱風吹付装置)
25・・・第2チャンバー(チャンバー)
30・・・急冷ロール
31,41・・・ドラム
31a,41a・・・中空部
31b・・・円筒部
31b1・・・内部流路
31b2,41b2・・・外部流路
32,42・・・ロータリージョイント
32a,42a・・・往路管
32b,42b・・・復路管
40・・・冷却ロール
41b・・・円柱部
50・・・補助加熱部
51・・・補助熱風吹付装置
61・・・給紙部
62・・・印刷部
63・・・回収部
70・・・プルローラ
71・・・テンションローラ
B1,B2・・・ブラケット
D1・・・排気用送風機
D2・・・供給用送風機
F1・・・フレーム
H・・・乾燥装置
HA・・・体部
H1・・・最短距離
H2・・・幅
I・・・インクジェット印刷装置
K・・・切り欠き部
L・・・レール部
N・・・ノズル穴
P・・・スライド部
R・・・リブ部
S・・・スリット
T・・・隙間
X・・・印刷体
X1・・・被印刷体
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】
図3(C)】
図3(D)】
図4
図5
図6
図7