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  • 特許-冊子の表紙めくり上げ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】冊子の表紙めくり上げ装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/12 20060101AFI20220104BHJP
   B42D 9/04 20060101ALI20220104BHJP
   B42C 1/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B65H3/12 310A
B42D9/04 Z
B42C1/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017187268
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019059611
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592225087
【氏名又は名称】株式会社サム技研
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐智
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111956(JP,A)
【文献】特開昭61-002631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B42C 1/00
B42D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じ辺が延在する方向に搬送されてくる冊子の表紙に対して吸着係合させて、搬送とともに表紙をめくり上げる装置であって、
凹部に吸引孔を形成したタイミングベルト形状の無端ベルトを凸凹面が外向きになるように備え、前記無端ベルトが搬送中の前記冊子の見開き辺に沿って3~15mm閉じ辺寄りを走行案内するガイド部材を備え、前記ガイド部材が前記無端ベルトの凸凹面をして前記冊子の表紙に係合させた後、搬送方向下流側に向かって冊子から徐々に離隔する方向へ案内するべく構成し、更に、前記無端ベルトが前記冊子に係合してから所定距離だけ離隔するまでの範囲にわたって前記吸引孔に連通する吸引スリットを前記ガイド部材に形成し、かつ、
ベルトの幅方向に於ける中央付近に吸引孔を形成するとともに、凸部の前記中央付近に溝部を形成して成る無端ベルトで構成したことを特徴とする冊子の表紙めくり上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
市町村で毎月発行されている行政広報に係る冊子、自動車販売等で大量に配布されている商用カタログに係る冊子、生協や通販の商品カタログなど、中綴じ製本された数頁から数百頁の冊子に対して、その表紙の裏側に追加の印刷物を挟み込んで一体的にハンドリングし易くする入紙という手法が広く公知である。
本発明は、このような挟み込み作業を自動化するために成されたもので、その基本的な工程である冊子の表紙めくり上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、冊子への入紙と言えば、表紙の裏側に追加印刷物が挟みこまれる。それを表紙の裏側ではなく、その次の頁の裏側へ挟み込むと入紙不良とされる。従って、基本的な工程である表紙めくり上げ工程では、確実に表紙のみをめくり上げる装置である必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-111956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決課題は、高速処理に対応できる次世代型の表紙めくり上げ装置を提供することにある。例えば、先行技術文献に開示されている装置の場合、処理速度を上げていくと表紙の次の頁、あるいはそれ以降の頁まで連れてめくり上げられ、結果的に入紙不良の発生率が高くなってしまう。ところが、近年のニーズは毎時8000部以上への対応であり、冊子の搬送速度を上げるにつれ、表紙のみの分離が難しくなる問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、閉じ辺が延在する方向に搬送されてくる冊子の表紙に対して吸着係合させて、搬送とともに表紙をめくり上げる装置であって、凹部に吸引孔を形成したタイミングベルト形状の無端ベルトを凸凹面が外向きになるように備え、前記無端ベルトが搬送中の前記冊子の見開き辺に沿って幾分か閉じ辺よりを走行案内するガイド部材を備え、前記ガイド部材が前記無端ベルトの凸凹面をして前記冊子の表紙に係合させた後、搬送方向下流側に向かって冊子から徐々に離隔する方向へ案内するべく構成し、更に、前記無端ベルトが前記冊子に係合してから所定距離だけ離隔するまでの範囲にわたって前記吸引孔に連通する吸引スリットを前記ガイド部材に形成し、かつ、ベルトの幅方向に於ける中央付近に吸引孔を形成するとともに、凸部の前記中央付近に溝部を形成して成る無端ベルトで構成した冊子の表紙めくりあげ装置を提供する。
【0006】
また、冊子の見開き辺に近い方の角部をR面取り形状に形成した凸部で成る無端ベルトで構成した冊子の表紙めくりあげ装置とすることも可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明装置では、冊子の見開き辺の近傍で凸凹面を有する無端ベルトが吸着することで表紙の冊子見開き辺側の端部を次々と変形させることでき、この変形の生起で表紙裏面への空気流入を誘発させることが可能となり、結果的に表紙と次の頁との間を極めて確実に離隔させる起点を作ることができる。
尚、前記した従来技術では搬送方向先端部から変形させ、そこへ空気を吹き込むことで表紙分離するものであるのに対し、本願装置では更に加えて、搬送方向と直交する冊子の見開き辺近傍をして分離起点となるような表紙の変形を生起させることができるので、表紙と表紙以降の頁との間を極めて良好にして安定的に分離することができる。
また、ベルトの幅方向に於ける中央付近に吸引孔を形成するとともに、凸部の前記中央付近に溝部を形成して成る無端ベルトで構成されているため、吸引に伴う表紙の変形を追加的に生じさせることができ、結果的に表紙のみの分離、めくり上げ効果を向上させることができる。
【0008】
また、冊子の見開き辺に近い側の角部をR面取り形状に形成した凸部で成る無端ベルトで構成したことを特徴とする表紙めくりあげ装置に於いては、表紙の見開き辺近傍がよりたやすく変形しやすくする効果がある。
【0009】
尚、従来技術で開示されているようなエアー吹き付けを斯様な変形個所に向けて付加することの効果も顕著となって、総じて、高速搬送下での冊子表紙めくり上げ効果は相乗的に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】は本願表紙めくり上げ装置を説明するための正面図
図2】は本願装置の構造について説明するための平面図
図3】は本願装置の構造について説明するための右側面
図4】は本願装置の運用状態を説明するための平面図
図5】は図1に於けるA-A断面を図示した説明図
図6】は他の実施例に係る図1に於けるA-A断面を図示した説明図
図7】は更に他の実施例に係る図1に於けるA-A断面を図示した説明図
図8】は無端ベルトの構成について説明するための説明図
図9】は無端ベルトの断面に係る構成について説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0011】
以下、本願発明の実施例装置について詳細に説明する。
図1は、好ましい実施例装置の正面図である。そして、ハッチングした部材はその断面を図示している。図中、1はタイミングベルト形状で成る無端ベルトであり、3個の従動プーリー11と駆動プーリー12に捲回されている。また、無端ベルト1の凸凹面は外向きにされ、冊子5の表紙5aと係合する範囲にわたって、2で指すガイド部材で緩やかな曲線状に案内されている。即ち、前記ガイド部材2が前記無端ベルト1の凸凹面をして前記冊子の表紙5aに係合させた後、搬送方向下流側に向かって冊子5から徐々に離隔する方向へ案内されている。尚、本実施例では、紙面右側から左側に向けて適宜な手段で、冊子5は搬送され、図示した状態は冊子5の表紙5aがめくり上げられ、そこに仕切り部材13が介在している状態である。即ち、冊子5と概ね同期した速度で回動する無端ベルト1の吸着作用で表紙5aのめくり上げを完了した時点を図示している。
【0012】
また、図2ならびに図3は理解を容易にするために前記した無端ベルト1とガイド部材2を取り除いて図示した平面図と右側面図である。図中、10は筐体板であり、そこに従動プーリー11を片持ち支持し、モーター14を取付して、該モーター14の出力軸に駆動プーリー12を取り付けている。また、図示を略したガイド部材2も筐体板10に固定されている。
図4は、次々と搬送されてくる冊子5に対して、平面図で図示した実施例装置をして運用している状況の説明図である。図中、5cは中綴じされた冊子の閉じ辺を指し、5bは見開き辺を指している。即ち、冊子5をその綴じ辺5cが延在する方向に搬送する搬送路に対して無端ベルト1が搬送中の前記冊子の見開き辺5bに沿って幾分か閉じ辺5c寄りを走行するように配置している。
【0013】
次に、3種類の実施例について、図5乃至図9に基づいて説明する。
図8は無端ベルト1の一部について斜視図で図示した説明図であるが、その形状は公知のタイミングベルトに類似する。従って、凸部1aと凹部1bが交互に連接して連ね、そのピッチは3~10mm程度、好ましくは5~8mmとし、凸凹部の厚み差は1~5mm、好ましくは2~4mm程度を目安に構成される。そして、凹部1bに適宜な直径で成る多数の吸引孔3を形成する。
また、図9に無端ベルト1の凹部で切断した場合の側面断面図を例示しているが、注目すべきは、(a)図,(b)図ならびに(c)図で図示した凸部1aの形状に関する詳細についてである。即ち、(b)図で図示した実施例無端ベルト1は、(a)図で例示したものと比べてみると、凸部1aの角部にR面取り1cを形成している。また、(c)図に図示したものは、(b)図で例示したものと比べてみると、更に凸部1aのベルト幅方向中ほどに溝部1dが形成されている。換言すれば、無端ベルト1の凸部1aの形状に関する詳細をして、めくり上げ性能に少なからずの影響を与えるものである。
【0014】
図5乃至図7は、前述した図1に於いて図示したA―A断面を図示している。図中、10は筐体板であり、2は該筐体板10に取付けられたガイド部材であり、ガイド部材2には2bで指す吸引ポケットが形成されており、更に、該吸引ポケット2bに連なる吸引スリット2cが形成されている。尚、それぞれの図に於ける(b)図は、9で指す参考空気流線を(a)図に付記したものである。また、(c)図は、前記したA-A断面の個所から更に搬送方向下流位置に於いて、冊子5の表紙5aを吸着めくり上げした個所の状態を図示している。
【0015】
さて、ここで注目すべきは無端ベルト1の紙面左端に於ける表紙5a端部の変形である。即ち、無端ベルト1の凸凹面が、表紙5aの見開き辺5b近傍をして、図示したような変形を生起させる。例えば、図6で図示した無端ベルト1の場合は、凸部1aの角部がR面取り1cされているので、変形による曲げ跡が表紙5aに残り難いこともあって、好ましくはR状の面取りに限定することなく公知のC面取りあるいは類する斯様な面取り形状とする。尚、面取りの無い図5で例示した実施例の場合、吸引力を強め過ぎると、表紙5aの紙質によっては好ましくない曲げ跡が残留する。要は、支障のない程度であれば足りるが、吸引力を適度に維持することが肝要である。
【0016】
次に、図7に例示した実施例についてであるが、本実施例は、R面取り1cに加えて凸部1aの中ほどに溝部1dを形成した無端ベルト1で構成されている。即ち、前記図5で例示したものに斯様な溝部1dを付加した場合も同様ではあるが、適切な吸引圧力を付与すれば、その溝部1d近傍でも表紙5aの変形が生起される。尚、紙質にもよるが、薄い紙で成る表紙5aの場合は、表紙の次にある頁も幾分かの変形が波及するが、斯様な変形の発生は、頁分離の作用効果がある。
【0017】
また、無端ベルト1の幅についてであるが、8~30mm程度、望ましくは12~20mmで足り、搬送中の冊子の開き辺から、3~15mm、望ましくは5~8mm程度、冊子閉じ辺5c寄りを走行するように設定される。換言すれば、無端ベルト1から見開き辺5bまでの端部が、冊子5の搬送中に変形される。そして、斯様な変形が生起されれば、それを起点として頁間に空気が自然流入して、結果的に表紙分離が良好に進捗する。勿論、意図的に斯様な起点を狙った個所にエアーノズルでエアー吹き付けする構成にすれば、早急な進捗を促すこともできる。
【0018】
尚、無端ベルト1と筐体板10との関係についてであるが、前記した実施例では無端ベルト1の凹部1b空間を通じて、筐体板10側(図面右側)からの空気流入を制限するような構成を採用している。即ち、図5に図示した実施例装置では、筐体板10の下部で、そのような流入を阻止するような実施例を例示している。また、図6ならびに図7で図示した実施例では、多少の流入は許容可能であることも示唆している。要は、吸引孔3を通して付与される吸引圧力に依存するが、吸引流量が多ければ、多少のリークは問題とされない。
【0019】
従って、吸引環境を好ましく確保するため、例示した実施例のようにガイド部材2の内部に吸引ポケットを形成して負圧環境のバッファ機能を備えるとともに、吸引スリット2cを搬送方向に延長するような形で形成している。尚、この吸引スリット2cは、列状に多数の孔を穿設することで代用可能であることは言うまでもない。
【0020】
以上の通り、本発明に係る表紙めくり上げ装置は、冊子の表紙裏側へ追加印刷物を挟み込む工程の前工程にあって、凸凹面を有する無端ベルト1を介して吸着搬送することで、見開き辺の近傍部を好ましく変形して、表紙分離のための起点を生起することが出来、結果的に高速搬送下であっても表紙のみをめくり上げることが極めて良好かつ安定的に行うことが出来る。従って、係る業界に貢献すること確実である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・無端ベルト、1a・・・凸部、1b・・・凹部、1c・・・R面取り、1d・・・溝部、2・・・ガイド部材、2a・・・吸引孔、2b・・・吸引ポケット、2c・・・吸引スリット、3・・・吸引孔、5・・・冊子、5a・・・冊子の表紙、10・・・筐体板、11・・・従動プーリー、12・・・駆動プーリー、13・・・仕切り部材、14・・・駆動モーター・・・・・である。















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9