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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】塗装装置、及び塗装ガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20220104BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B05B5/08 Z
B05B5/025 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017192688
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019063740
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】森 唯行
(72)【発明者】
【氏名】曽川 拓歩
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090283(JP,A)
【文献】特開2009-136860(JP,A)
【文献】特開2013-071116(JP,A)
【文献】特開2015-029960(JP,A)
【文献】特開2015-089537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-9/08
12/00-12/14
13/00-13/06
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を吐出する複数の塗装ガンと、
複数の前記塗装ガンに対して駆動電力を供給する制御盤と、を備え、
前記塗装ガンは、情報を表示可能な表示部を有し、
前記制御盤は、複数の前記塗装ガンのうち次に塗装する塗料の色に対応した一の前記塗装ガンの前記表示部に当該塗装ガンが次に使用予定である旨を示す予告表示を表示させる、
塗装装置。
【請求項2】
前記制御盤は、複数の前記塗装ガンのうち作業者の操作を受けて塗料を吐出している一の前記塗装ガンの前記表示部に現在使用中である旨を示す使用中表示を前記予告表示とは異なる態様で表示させる、
請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を吐出する塗装ガンであって、
駆動電力を供給する制御盤からの制御により次に使用予定である旨を示す予告表示を表示可能な表示部を備えている、
塗装ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗装装置、及び塗装ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のボディ塗装を行う塗装ライン等においては、大部分の塗装はロボットによって自動で行われるが、部分的な修正等については作業者の手作業いわゆる手吹き塗装によって行われることが一般的である。そして、この手吹き塗装においては、少ない人数の作業者で多数の色に対応するため、一人の作業者が多数の色の塗装を担当することが多い。この場合、作業者が用いる塗装装置は、複数の塗料の色のそれぞれに対応した複数の塗装ガンと、各塗装ガンを引っ掛けるガンラックと、を備えている。そして、作業者は、ガンラックに掛かっている複数の塗装ガンの中から指定の色に対応した一の塗装ガンを選択し持ち替えることで、塗料の色の切り替えを行う。
【0003】
一般にガンラックには、例えば各塗装ガンに対応した銘板が設けられている。各銘板には、対応する塗装ガンから吐出される塗料の色を表示する情報、例えば塗料の色の名称や識別番号等が記載されている。作業者は、この銘板が示す情報を頼りにして、指定された塗料に対応した塗装ガンを選択する。しかし、一般的に同系色の名称や識別番号等は似ていることが多い。そのため、銘板の情報のみを頼りにしていた従来構成では、例えば同系色の塗装ガンが隣接して配置されている場合等においては、作業者が銘板を読み間違えてしまい、これにより塗装ガンを取り間違えることがあった。そこで、例えば各塗装色に対応した表示灯をガンラックに設けて、選択すべき色の表示灯のみを点灯させることで、作業者に対しその塗装ガンの選択を促す技術が考えられた。
【0004】
しかしながら、作業者は、塗装ガンを一度手に持ってしまうと、その塗装ガンでの塗装が終了するまで手元や被塗装物を注視する傾向が高い。このため、作業者は、間違った塗装ガンを手に取ってしまった場合であっても、その後にガンラックの表示灯を見て塗装ガンの間違いに気付くことが難しく、実際に塗装を開始して塗料が吐出されるまで塗装ガンの間違いに気付かないことが多かった。
【0005】
また、例えば清掃時等において、複数の塗装ガンを同時にガンラックから外し、その後、各塗装ガンをガンラックに戻す際に、戻し間違えてしまうことがある。すると、塗装ガンと表示灯との対応関係が崩れてしまい、その結果、作業者が、表示灯の点灯箇所に掛かっていた塗装ガンを選択したとしても、指定された色と異なる色の塗料で塗装してしまうことになる。このため、従来の構成では、ガンラックへの戻し間違いが発生した場合に十分に対応できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-90283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数の塗装ガンから指定された一の塗装ガンを選択して塗装するものにおいて、塗装ガンの取り間違いを抑制して塗装色の間違いを防ぐことができる塗装装置、及び塗装ガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の塗装装置は、作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を吐出する複数の塗装ガンと、複数の前記塗装ガンに対して駆動電力を供給する制御盤と、を備える。前記塗装ガンは、情報を表示可能な表示部を有する。前記制御盤は、複数の前記塗装ガンのうち次に塗装する塗料の色に対応した一の前記塗装ガンの前記表示部に当該塗装ガンが次に使用予定である旨を示す予告表示を表示させる。
【0009】
また、実施形態の塗装ガンは、作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を吐出する塗装ガンであって、駆動電力を供給する制御盤からの制御により次に使用予定である旨を示す予告表示を表示可能な表示部を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態による塗装装置の使用態様の一例を概略的に示す図
図2】第1実施形態による塗装装置の構成を概略的に示す図
図3】第1実施形態による塗装装置について、表示部の表示態様の一例を示す図
図4】他の実施形態による塗装装置について、表示部の表示態様の一例を示す図(その1)
図5】他の実施形態による塗装装置について、表示部の表示態様の一例を示す図(その2)
図6】他の実施形態による塗装装置について、表示部の表示態様の一例を示す図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、塗装装置10の全体構成について説明する。図1に示す塗装装置10は、被塗装物90を手吹きにより手作業で塗装する塗装装置である。本実施形態の場合、塗装装置10は、例えば塗料を-10kV~―100V程度の高電圧に帯電させて霧状に噴霧する静電塗装装置である。なお、塗装装置10は、静電塗装装置に限られない。また、塗装装置10で使用する塗料の種類は、液体であるか粉体であるかは問わない。
【0012】
図1に示すように、塗装装置10は、複数の塗装ガン20、ガンラック30、及び制御盤40を備えている。なお、図1の例において、塗装装置10は、4台の塗装ガン20を備える構成であるが、塗装ガン20の具体的な台数はこの例のものに限られない。例えば自動車の手吹き塗装のラインの場合、塗装装置10は、10台から20台程度の塗装ガン20を備えることもある。
【0013】
各塗装ガン20は、塗料ホース51を介して、それぞれ異なる色の塗料の供給源に接続されている。これにより、各塗装ガン20には、塗料ホース51を介してそれぞれ異なる色の塗料が供給される。また、各塗装ガン20は、エアホース52を介して、エアコンプレッサー等のエア供給源に接続されている。塗料の吐出に必要な圧縮エアは、エアホース52を介して各塗装ガン20に供給される。
【0014】
図1に示すように、各塗装ガン20は、ガン本体21、トリガー22、及びハンガー部23を有している。ガン本体21は、例えば電気的絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂により構成されている。作業者は、トリガー22を操作することで、予めその塗装ガン20に設定された色の塗料を、ガン本体21の先端部から吐出させることができる。ハンガー部23は、例えば一部が下方へ開放されたU字形状に形成されている。
【0015】
ガンラック30は、複数の銘板31及び複数のフック部32を有している。銘板31及びフック部32の数は、塗装ガン20の台数に等しく、各銘板31及びフック部32は、各塗装ガン20に対応している。各銘板31には、それぞれ対応する塗装ガン20の塗料の色を示す情報として例えば塗料の色の名称や記号等が記載されている。各フック部32は、各塗装ガン20のハンガー部23を引っ掛けることが可能な形状に構成されている。作業者は、対応するフック部32に塗装ガン20のハンガー部23を引っ掛けることで、塗装ガン20をガンラック30に配置する。
【0016】
各塗装ガン20は、それぞれ接続ケーブル53を介して制御盤40に接続されている。制御盤40は、各塗装ガン20に対して駆動電力を供給する。制御盤40は、上位装置80に接続されている。上位装置80は、例えばコンベア91上を流れる被塗装物90を管理するものであり、被塗装物90の塗装色を指示する指示信号を、制御盤40に送信する。制御盤40は、指示信号を受信すると、その指示信号に対応した塗装ガン20に対して駆動電力を供給し、作業者のトリガー22の操作に基づく静電塗装を可能にする。
【0017】
次に、図2も参照して、塗装ガン20及び制御盤40の具体的構成について説明する。なお、図2は、制御盤40に1台の塗装ガン20が接続された図となっているが、実際は、1台の制御盤40には複数台の塗装ガン20が接続されている。塗装ガン20は、ガン本体21、トリガー22、ハンガー部23の他、塗料バルブ24、エアバルブ25、ノズル26、高電圧発生部27、高電圧出力部28、及び表示部29などを有している。
【0018】
塗料バルブ24及びエアバルブ25は、トリガー22の引き操作によって開放される。塗料バルブ24は、塗料ホース51を介して塗料供給源としての塗料ポンプ54及び塗料タンク55に接続されている。塗料タンク55内の塗料は、塗料ポンプ54によって塗料ホース51を通り塗料バルブ24へ供給される。塗料ホース51は、電気絶縁性を有する例えば合成樹脂製のホースなどで構成されている。エアバルブ25は、エアホース52を介してコンプレッサ56に接続されている。コンプレッサ56で生じた圧縮エアは、エアホース52を通ってエアバルブ25へ供給される。
【0019】
ノズル26は、ガン本体21の先端部に設けられている。ノズル26の内部には、詳細は図示しないが、塗料供給口や、霧化エア孔及びパターン形成エア孔が設けられている。塗料バルブ24の出力側は、ノズル26の塗料供給口に接続されている。エアバルブ25の出力側は、ノズル26の霧化エア孔及びパターン形成エア孔に接続されている。トリガー22が引き操作されて塗料バルブ24及びエアバルブ25が解放されると、ノズル26には、塗料バルブ24を介して塗料が供給されるとともに、エアバルブ25を介して圧縮空気が供給される。ノズル26に供給された塗料は、霧化エア孔から吐出される圧縮空気によって微粒子化されるとともに、パターン形成エア孔から吐出される圧縮空気によって塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されて噴霧される。
【0020】
高電圧発生部27は、いわゆるカスケードと称され、入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態において、高電圧発生部27は、制御盤40から供給された駆動電力の電圧を5000倍程度に昇圧し、これにより高電圧を出力する。塗装ガン20と制御盤40とを接続する接続ケーブル53は、動力線531、制御線532、及び電流検出線533を含んでいる。動力線531は、塗装ガン20に対して交流電圧を供給するためのものである。制御線532は、表示部29を動作させるための信号及び電力を送信するためのものである。電流検出線533は、高電圧発生部27に流れる電流を検出するためのものである。接続ケーブル53は、その外周側が例えば電気絶縁性を有する保護管に覆われて保護されている。
【0021】
高電圧発生部27は、入力トランス271、倍電圧整流回路272、出力抵抗273を有している。入力トランス271は、制御盤40と倍電圧整流回路272との間を電気的に絶縁し、制御盤40から供給される交流電圧を倍電圧整流回路272へ出力する。倍電圧整流回路272は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。倍電圧整流回路272は、入力トランス271から入力された交流電圧を昇圧及び整流し、直流の高電圧に変換する。
【0022】
倍電圧整流回路272から出力された直流の高電圧は、出力抵抗273を介して高電圧出力部28に供給され、高電圧出力部28から、例えば-10kV~-100kV程度の直流の出力電圧として出力される。高電圧出力部28は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル26の近傍又はノズル26の内部に設けられている。そのため、ノズル26から噴霧された塗料の微粒子には、高電圧出力部28から出力される直流の出力電圧が印加される。
【0023】
倍電圧整流回路272は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正または負のいずれかに設定することができる。本実施形態の場合、倍電圧整流回路272の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。したがって、微粒子化された塗料は負の高電圧に帯電される。
【0024】
表示部29は、例えば単色LEDや電球等の光源で構成されており、単色の光を発光することができる。表示部29は、作業者がガン本体21を手に持ったときにその作業者から視認可能な位置に設けられている。例えば、表示部29は、ガン本体21においてノズル26とは反対側に設けられている。表示部29は、制御線532を介して制御盤40に接続されている。
【0025】
表示部29は、その点灯状態によって作業者に特定の情報を提示することができる。表示部29は、制御盤40からの信号に基づいて点灯、点滅、及び消灯が制御される。本実施形態の場合、図3に示すように、表示部29が点滅している状態は、予告表示を意味する。予告表示は、その塗装ガン20が次の塗装つまり次の被塗装物90を塗装する際に使用するものである旨を示す表示である。また、表示部29が点灯している状態は、使用中表示を意味する。使用中表示は、その塗装ガン20が現在塗装のために使用されている旨、すなわち高電圧に帯電させた塗料を吐出している最中である旨を示す表示である。このように、使用中表示は、予告表示とは異なる態様で表示される。
【0026】
そして、表示部29が消灯している状態は、その塗装ガン20が現在使用されておらず、かつ、次の塗装でも使用される予定が無いことを意味する。なお、本実施形態において、表示部29の点灯、点滅、及び消灯は、作業者の視覚による認識を基準としている。すなわち、例えば表示部29の点灯状態には、作業者が点滅であると認識できない程高速で表示部29を点滅させている状態も含まれる。
【0027】
図2に示すように、制御盤40は、電流検出部41、電源部42、制御部43、エアフロースイッチ44、及び操作パネル45を有している。電流検出部41は、電流検出線533を介して、高電圧発生部27に接続されている。電流検出部41は、高電圧発生部27に流れる電流の大きさを検出し、その検出結果を制御部43に与える。電源部42は、動力線531を介して、高電圧発生部27に接続されている。電源部42は、詳細は図示しないが、スイッチング素子や出力トランス、直流電源部、及び発振回路を有している。電源部42は、高電圧発生部27に対して、駆動電圧として例えば2Vから20V程度の任意の電圧でかつ周波数が20kHz程度の交流パルス電圧を供給する。
【0028】
制御部43は、図示しないCPUや、ROM、RAMなど有したマイクロコンピュータにより構成されている。制御部43は、電源部42の出力を制御することで、塗装ガン20の高電圧発生部27から出力される出力電圧の値や、その出力電圧の出力及び停止を制御することができる。
【0029】
エアフロースイッチ44は、エアバルブ25とコンプレッサ56とを接続するエアホース52の途中部分に設けられている。エアフロースイッチ44は、エアホース52にエアが流れると動作して制御部43へ信号を出力する。その際にエアフロースイッチ44が出力する信号は、トリガー検出信号と称される。
【0030】
制御部43は、正常動作時つまり高電圧発生部27に過電流異常が生じていない場合、エアフロースイッチ44からトリガー検出信号が入力されると、電源部42から交流パルス電圧を出力させる。これにより、高電圧発生部27から静電塗装用の高圧の出力電圧が出力される。そして、制御部43は、電源部42から交流パルス電圧を出力した場合に、表示部29に対して使用中表示を表示させるための信号を送信する。本実施形態の場合、制御部43は、使用中表示として表示部29を点灯させる。
【0031】
操作パネル45は、複数のスイッチ類451及び表示器452を有している。作業者は、スイッチ類451を操作することで、各種設定を行う。また、表示器452には、設定内容や現在の動作状況等が表示される。また、制御盤40は、図示しないブザーなどの報知器を有していてもよい。
【0032】
また、制御部43は、上位装置80と通信可能に接続されている。上位装置80は、制御部43に対して、次の被塗装物90の塗装色を指示する指示信号を送信する。制御部43は、上位装置80から指示信号を受信すると、その指示信号に基づいて、制御盤40に接続された各塗装ガン20のうち次に塗装する塗料の色に対応した一の塗装ガン20を特定する。そして、制御部43は、各塗装ガン20のうち特定した一の塗装ガン20の表示部29を点滅させることで、次に使用する予定の塗装ガン20に予告表示を表示させる。
【0033】
なお、現在使用している塗装ガン20と次に使用する予定の塗装ガン20とが同一である場合、本実施形態では、制御部43は、予告表示よりも使用中表示を優先させる。すなわち、上位装置80から受信した指示信号に基づいて特定した一の塗装ガン20が、現在使用中の塗装ガン20である場合、制御部43は、その使用中の塗装ガン20について、作業者のトリガー22が継続している間は表示部29を使用中表示として点灯させる。そして、制御部43は、作業者のトリガー22の操作が解除されてその塗装作業が終わった後に、予告表示として表示部29を点滅させる。
【0034】
このように、本実施形態の塗装装置10は、複数の塗装ガン20と、制御盤40と、を備える。塗装ガン20は、情報を表示可能な表示部29を有しており、作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を吐出することができる。制御盤40は、各塗装ガン20に対して駆動電力を供給する。そして、制御盤40は、各塗装ガン20のうち次に塗装する塗料の色に対応した一の塗装ガン20の表示部29にその塗装ガン20が次に使用予定である旨を示す予告表示を表示させる。
【0035】
この塗装装置10によれば、作業者は、ガンラック30に掛かっている複数の塗装ガン20の中から、予告表示が表示されている塗装ガン20、つまり表示部29が点滅している塗装ガン20を選択し、次の塗装作業に使用することができる。そのため、次に使用する塗装ガン20を適切に選択することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、表示部29は、塗装ガン20に設けられている。そのため、作業者は、仮に間違った塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、その手に取った塗装ガン20の表示部29の表示状態を見ることで、つまり自己の手元にある塗装ガン20の表示部29が点滅しているか否かを見ることで、手に取った塗装ガン20が正しいものであるかどうかを容易に把握することができる。そのため、作業者は、仮に間違った塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、塗装前の段階で気付き易くなり、その結果、塗装色の間違いをより確実に抑制することができる。
【0037】
更に、例えば清掃時等において、各塗装ガン20を同時にガンラック30から外した場合、その後、作業者の戻し間違いによって、各塗装ガン20がガンラック30上の正しい位置に戻されない可能性がある。すなわち、塗装ガン20を同時にガンラック30から外し、その後、各塗装ガン20をガンラック30に戻した場合に、各塗装ガン20の位置が入れ違ってしまうことがある。すると、銘板31に記載されている塗料の色と、実際に塗装ガン20から吐出される塗料の色とが異なってしまう。その結果、銘板31の記載を信じた作業者がそのまま塗装ガン20を使用すると、間違った色で被塗装物90を塗装してしまうことになる。
【0038】
一方、本実施形態によれば、表示部29は、上述したように塗装ガン20に設けられている。このため、塗装ガン20を戻し間違えて銘板31に記載されている塗料の色と実際に塗装ガン20から吐出される塗料の色とが異なってしまい、その結果、銘板31の記載を信じた作業者が間違った塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、手にした塗装ガン20の表示部29が予告表示で表示されていなければ、つまり表示部29が点滅していなければ、作業者は、その塗装ガン20が次に使用されるものでないものと容易に気付くことができる。その結果、本実施形態の塗装装置10によれば、塗装色の間違いをより確実に抑制することができる。
【0039】
また、制御盤40は、各塗装ガン20のうち作業者の操作を受けて塗料を吐出している一の塗装ガン20の表示部29に、現在塗装中である旨を示す使用中表示を、予告表示とは異なる態様で表示させる。これによれば、作業者は、表示部29に表示されている使用中表示を見ることで、例えば塗装ガン20から吐出されている塗料に高電圧が印加されていることを知ることができる。その結果、作業者は、より安全に配慮するようになり、作業の安全性が高まる。また、予告表示だけでなく使用中表示も表示部29に表示させることにより、表示部29の機能を有効活用することができる。つまり、表示灯29は、使用中表示を表示するための表示灯と、予告表示を表示するための表示灯と、を兼用している。これにより、予告表示と使用中表示を表示する表示灯をそれぞれ別に設けた場合に比べて、部品点数が削減でき、その結果、塗装ガン20の製造コストも低減することができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、表示部29は、単色LEDや電球に限られず、例えば二色又は複色のLEDで構成するこができる。例えば、表示部29を、黄色及び赤色に二色に切替可能な二色LEDで構成することもできる。この場合、制御部43は、図4に示すように、例えば予告表示として表示部29を黄色で発光させ、使用中表示として表示部29を赤色で発光させても良い。
【0041】
また、表示部29は、1つの光源に限られず、例えば2つの光源で構成しても良い。この場合、表示部29として、例えば2つの第1表示灯、第2表示灯を並べて設ける。第1表示灯及び第2表示灯は、例えば単色LEDや複色LED、又は電球等で構成することができる。そして、制御部43は、図5に示すように、例えば予告表示の場合は第1表示灯を点灯させるとともに第2表示灯を消灯させ、使用中表示の場合は第1表示灯を消灯させるとともに第2表示灯を点灯させても良い。
【0042】
また、表示部29は、光源に限られず、例えば文字や記号を表示可能な液晶パネルで構成しても良い。この場合、制御部43は、図6に示すように、例えば予告表示の場合はその液晶パネルに「次色」の文字を表示させ、使用中表示の場合はその液晶パネルに「高電圧印加中」の文字を表示させても良い。
【0043】
更に、表示部29は、上述したものに限られず、例えば数字を表示可能なセグメント表示器や、電圧計や電流計に用いられるようなアナログメーターであっても良い。表示部29としてセグメント表示器を用いる場合、例えば表示する数値によって予告表示と使用中表示の表示態様を分ければ良い。また、表示部29としてアナログメーターを用いる場合、例えば針の振れ幅や周期によって予告表示と使用中表示の表示態様を分ければ良い。
【0044】
なお、各実施形態は、上記したかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0045】
図面中、10は塗装装置、20は塗装ガン、29は表示部、40は制御盤、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6