(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】静電塗装装置
(51)【国際特許分類】
B05B 5/08 20060101AFI20220104BHJP
B05B 5/025 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B05B5/08 Z
B05B5/025 A
(21)【出願番号】P 2017192689
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】森 唯行
(72)【発明者】
【氏名】曽川 拓歩
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090283(JP,A)
【文献】特開平11-169753(JP,A)
【文献】特開2009-136860(JP,A)
【文献】特開2012-086142(JP,A)
【文献】特表2008-546522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-9/08
12/00-12/14
13/00-13/06
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を高電圧に帯電させて吐出する複数の静電塗装ガンと、
複数の前記静電塗装ガンのそれぞれ対して前記高電圧を発生させるための駆動電力を供給する
電源部を有する制御盤と、を備え、
前記静電塗装ガンは、
前記
電源部から供給された前記駆動電力の電圧を昇圧して前記高電圧を発生させる高電圧発生部と、
前記制御盤と前記高電圧発生部との間に設けられ、前記
電源部から供給される前記駆動電力を受けて動作することで、当該静電塗装ガンが現在使用中である旨を示す使用中表示を表示する表示灯と、を有し、
前記制御盤は、
複数の前記静電塗装ガンのうち次に塗装する塗料の色に対応した一の前記静電塗装ガンについては、当該静電塗装ガンが次に使用予定である旨を示す予告表示として前記使用中表示とは異なる態様でかつ前記駆動電力の電圧よりも低い電圧で前記表示灯を動作させる、
静電塗装装置。
【請求項2】
前記制御盤は、前記予告表示として、前記表示灯を点滅させる、
請求項1に記載の静電塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のボディ塗装を行う塗装ライン等においては、大部分の塗装はロボットによって自動で行われるが、部分的な修正等については作業者の手作業いわゆる手吹き塗装によって行われることが一般的である。そして、この手吹き塗装においては、少ない人数の作業者で多数の色に対応するため、一人の作業者が多数の色の塗装を担当することが多い。この場合、作業者が用いる塗装装置は、複数の塗料の色のそれぞれに対応した複数の塗装ガンと、各塗装ガンを引っ掛けるガンラックと、を備えている。そして、作業者は、ガンラックに掛かっている複数の塗装ガンの中から指定の色に対応した一の塗装ガンを選択し持ち替えることで、塗料の色の切り替えを行う。
【0003】
一般にガンラックには、例えば各塗装ガンに対応した銘板が設けられている。各銘板には、対応する塗装ガンから吐出される塗料の色を表示する情報、例えば塗料の色の名称や識別番号等が記載されている。作業者は、この銘板が示す情報を頼りにして、指定された塗料に対応した塗装ガンを選択する。しかし、一般的に同系色の名称や識別番号等は似ていることが多い。そのため、銘板の情報のみを頼りにしていた従来構成では、例えば同系色の塗装ガンが隣接して配置されている場合等においては、作業者が銘板を読み間違えてしまい、これにより塗装ガンを取り間違えることがあった。そこで、例えば各塗装色に対応した表示灯をガンラックに設けて、選択すべき色の表示灯のみを点灯させることで、作業者に対しその塗装ガンの選択を促す技術が考えられた。
【0004】
しかしながら、作業者は、塗装ガンを一度手に持ってしまうと、その塗装ガンでの塗装が終了するまで手元や被塗装物を注視する傾向が高い。このため、作業者は、間違った塗装ガンを手に取ってしまった場合であっても、その後にガンラックの表示灯を見て塗装ガンの間違いに気付くことが難しく、実際に塗装を開始して塗料が吐出されるまで塗装ガンの間違いに気付かないことが多かった。
【0005】
また、例えば清掃時等において、複数の塗装ガンを同時にガンラックから外し、その後、各塗装ガンをガンラックに戻す際に、戻し間違えてしまうことがある。すると、塗装ガンと表示灯との対応関係が崩れてしまい、その結果、作業者が、表示灯の点灯箇所に掛かっていた塗装ガンを選択したとしても、指定された色と異なる色の塗料で塗装してしまうことになる。このため、従来の構成では、ガンラックへの戻し間違いが発生した場合に十分に対応できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数の塗装ガンから指定された一の塗装ガンを選択して塗装するものにおいて、塗装ガンの取り間違いを抑制して塗装色の間違いを防ぐことができる静電塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
静電塗装装置は、作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を高電圧に帯電させて吐出する複数の静電塗装ガンと、複数の前記静電塗装ガンのそれぞれ対して前記高電圧を発生させるための駆動電力を供給する電源部を有する制御盤と、を備える。前記静電塗装ガンは、前記電源部から供給された前記駆動電力の電圧を昇圧して前記高電圧を発生させる高電圧発生部と、前記制御盤と前記高電圧発生部との間に設けられ、前記電源部から供給される前記駆動電力を受けて動作することで、当該静電塗装ガンが現在使用中である旨を示す使用中表示を表示する表示灯と、を有している。前記制御盤は、複数の前記静電塗装ガンのうち次に塗装する塗料の色に対応した一の前記静電塗装ガンについては、当該静電塗装ガンが次に使用予定である旨を示す予告表示として前記使用中表示とは異なる態様でかつ前記駆動電力の電圧よりも低い電圧で前記表示灯を動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による塗装装置の使用態様の一例を概略的に示す図
【
図2】一実施形態による塗装装置の構成を概略的に示す図
【
図3】一実施形態による塗装装置について、表示灯の表示態様の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、
図1を参照して、静電塗装装置10の全体構成について説明する。
図1に示す静電塗装装置10は、被塗装物90を手吹きにより手作業で塗装する塗装装置である。本実施形態の場合、静電塗装装置10は、例えば塗料を-10kV~-100V程度の高電圧に帯電させて霧状に噴霧する静電塗装装置である。なお、静電塗装装置10は、静電塗装装置に限られない。また、静電塗装装置10で使用する塗料の種類は、液体であるか粉体であるかは問わない。
【0011】
図1に示すように、静電塗装装置10は、複数の静電塗装ガン20、ガンラック30、及び制御盤40を備えている。なお、
図1の例において、静電塗装装置10は、4台の静電塗装ガン20を備える構成であるが、静電塗装ガン20の具体的な台数はこの例のものに限られない。例えば自動車の手吹き塗装のラインの場合、静電塗装装置10は、10台から20台程度の静電塗装ガン20を備えることもある。
【0012】
各静電塗装ガン20は、塗料ホース51を介して、それぞれ異なる色の塗料の供給源に接続されている。これにより、各静電塗装ガン20には、塗料ホース51を介してそれぞれ異なる色の塗料が供給される。また、各静電塗装ガン20は、エアホース52を介して、エアコンプレッサー等のエア供給源に接続されている。塗料の吐出に必要な圧縮エアは、エアホース52を介して各静電塗装ガン20に供給される。
【0013】
図1に示すように、各静電塗装ガン20は、ガン本体21、トリガー22、及びハンガー部23を有している。ガン本体21は、例えば電気的絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂により構成されている。作業者は、トリガー22を操作することで、予めその静電塗装ガン20に設定された色の塗料を、ガン本体21の先端部から吐出させることができる。ハンガー部23は、例えば一部が下方へ開放されたU字形状に形成されている。
【0014】
ガンラック30は、複数の銘板31及び複数のフック部32を有している。銘板31及びフック部32の数は、静電塗装ガン20の台数に等しく、各銘板31及びフック部32は、各静電塗装ガン20に対応している。各銘板31には、それぞれ対応する静電塗装ガン20の塗料の色を示す情報として例えば塗料の色の名称や記号等が記載されている。各フック部32は、各静電塗装ガン20のハンガー部23を引っ掛けることが可能な形状に構成されている。作業者は、対応するフック部32に静電塗装ガン20のハンガー部23を引っ掛けることで、静電塗装ガン20をガンラック30に配置する。
【0015】
各静電塗装ガン20は、それぞれ接続ケーブル53を介して制御盤40に接続されている。制御盤40は、各静電塗装ガン20に対して駆動電力を供給する。なお、本実施形態において、駆動電力とは、各静電塗装ガン20から静電塗装に用いる高電圧を出力させるために必要な電力を意味する。制御盤40は、上位装置80に接続されている。上位装置80は、例えばコンベア91上を流れる被塗装物90を管理するものであり、被塗装物90の塗装色を指示する指示信号を、制御盤40に送信する。制御盤40は、指示信号を受信すると、その指示信号に対応した静電塗装ガン20に対して駆動電力を供給し、作業者のトリガー22の操作に基づく静電塗装を可能にする。
【0016】
次に、
図2も参照して、静電塗装ガン20及び制御盤40の具体的構成について説明する。なお、
図2は、制御盤40に1台の静電塗装ガン20が接続された図となっているが、実際は、1台の制御盤40には複数台の静電塗装ガン20が接続されている。静電塗装ガン20は、ガン本体21、トリガー22、ハンガー部23の他、塗料バルブ24、エアバルブ25、ノズル26、高電圧発生部27、高電圧出力部28、及び表示灯29などを有している。
【0017】
塗料バルブ24及びエアバルブ25は、トリガー22の引き操作によって開放される。塗料バルブ24は、塗料ホース51を介して塗料供給源としての塗料ポンプ54及び塗料タンク55に接続されている。塗料タンク55内の塗料は、塗料ポンプ54によって塗料ホース51を通り塗料バルブ24へ供給される。塗料ホース51は、電気絶縁性を有する例えば合成樹脂製のホースなどで構成されている。エアバルブ25は、エアホース52を介してコンプレッサ56に接続されている。コンプレッサ56で生じた圧縮エアは、エアホース52を通ってエアバルブ25へ供給される。
【0018】
ノズル26は、ガン本体21の先端部に設けられている。ノズル26の内部には、詳細は図示しないが、塗料供給口や、霧化エア孔及びパターン形成エア孔が設けられている。塗料バルブ24の出力側は、ノズル26の塗料供給口に接続されている。エアバルブ25の出力側は、ノズル26の霧化エア孔及びパターン形成エア孔に接続されている。トリガー22が引き操作されて塗料バルブ24及びエアバルブ25が解放されると、ノズル26には、塗料バルブ24を介して塗料が供給されるとともに、エアバルブ25を介して圧縮空気が供給される。ノズル26に供給された塗料は、霧化エア孔から吐出される圧縮空気によって微粒子化されるとともに、パターン形成エア孔から吐出される圧縮空気によって塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されて噴霧される。
【0019】
高電圧発生部27は、いわゆるカスケードと称され、入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態において、高電圧発生部27は、制御盤40から供給された駆動電力の電圧を5000倍程度に昇圧し、これにより高電圧を出力する。静電塗装ガン20と制御盤40とを接続する接続ケーブル53は、動力線531及び電流検出線532を含んでいる。動力線531は、静電塗装ガン20に対して駆動電力としての交流電圧を供給するためのものである。電流検出線532は、高電圧発生部27に流れる電流を検出するためのものである。接続ケーブル53は、その外周側が例えば電気絶縁性を有する保護管に覆われて保護されている。
【0020】
高電圧発生部27は、入力トランス271、倍電圧整流回路272、出力抵抗273を有している。入力トランス271は、制御盤40と倍電圧整流回路272との間を電気的に絶縁し、制御盤40から供給される交流電圧を倍電圧整流回路272へ出力する。倍電圧整流回路272は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。倍電圧整流回路272は、入力トランス271から入力された交流電圧を昇圧及び整流し、直流の高電圧に変換する。
【0021】
倍電圧整流回路272から出力された直流の高電圧は、出力抵抗273を介して高電圧出力部28に供給され、高電圧出力部28から、例えば-10kV~-100kV程度の直流の出力電圧として出力される。高電圧出力部28は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル26の近傍又はノズル26の内部に設けられている。そのため、ノズル26から噴霧された塗料の微粒子には、高電圧出力部28から出力される直流の出力電圧が印加される。
【0022】
倍電圧整流回路272は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正または負のいずれかに設定することができる。本実施形態の場合、倍電圧整流回路272の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。したがって、微粒子化された塗料は負の高電圧に帯電される。
【0023】
表示灯29は、ガン本体21において、制御盤40の電源部42と高電圧発生部27との間に設けられている。表示灯29は、例えばLEDや電球等の光源で構成されており、電源部42からの電力供給を受けて動作する。表示灯29は、作業者がガン本体21を手に持ったときにその作業者から視認可能な位置に設けられている。例えば、表示灯29は、ガン本体21においてノズル26とは反対側に設けられている。
【0024】
本実施形態の場合、表示灯29は、例えば2つのLED素子291、292を1つのケース内にパッケージして構成されている。2つのLED素子291、292は、互いに逆極となるように並列に配置されている。表示灯29の一方の極は、2つの電力線531のうちの一方に接続され、表示灯29の他方の極は、抵抗293を介して2つの電力線531のうちの他方に接続されている。
【0025】
静電塗装ガン20を用いて静電塗装を行う際、制御盤40は、高電圧発生部27に対して、駆動電力として例えば2Vから20V程度の任意の電圧でかつ周波数が20kHz程度の交流パルス電圧を印加する。すると、その交流パルス電圧が表示灯29にも印加され、これにより表示灯29の各LED素子291、292が交互に発光する。このとき、LED素子291、292の発光の切り替わりは、作業者が認識できない程早く行われる。そのため、作業者には、表示灯29が点滅ではなく点灯しているように見える。
【0026】
図2に示すように、制御盤40は、電流検出部41、電源部42、制御部43、エアフロースイッチ44、及び操作パネル45を有している。電流検出部41は、電流検出線533を介して、高電圧発生部27に接続されている。電流検出部41は、高電圧発生部27に流れる電流の大きさを検出し、その検出結果を制御部43に与える。
【0027】
操作パネル45は、複数のスイッチ類451及び表示器452を有している。作業者は、スイッチ類451を操作することで、各種設定を行う。また、表示器452には、設定内容や現在の動作状況等が表示される。また、制御盤40は、図示しないブザーなどの報知器を有していてもよい。
【0028】
電源部42は、動力線531を介して、高電圧発生部27に接続されている。電源部42は、詳細は図示しないが、スイッチング素子や出力トランス、直流電源部、及び発振回路を有している。電源部42は、高電圧発生部27に対して、駆動電圧として例えば2Vから20V程度の任意の電圧でかつ周波数が20kHz程度の交流パルス電圧を供給する。
【0029】
制御部43は、図示しないCPUや、ROM、RAMなど有したマイクロコンピュータにより構成されている。制御部43は、電源部42の出力を制御することで、静電塗装ガン20の高電圧発生部27から出力される出力電圧の値や、その出力電圧の出力及び停止を制御することができる。
【0030】
エアフロースイッチ44は、エアバルブ25とコンプレッサ56とを接続するエアホース52の途中部分に設けられている。エアフロースイッチ44は、エアホース52にエアが流れると動作して制御部43へ信号を出力する。その際にエアフロースイッチ44が出力する信号は、トリガー検出信号と称される。
【0031】
制御部43は、正常動作時つまり高電圧発生部27に過電流異常が生じていない場合、エアフロースイッチ44からトリガー検出信号が入力されると、電源部42から駆動電力としての交流パルス電圧を出力させる。これにより、高電圧発生部27から静電塗装用の高圧の出力電圧が出力するとともに、電源部42から供給される交流パルス電圧を受けて表示灯29が点灯する。
【0032】
つまり、電源部42から高電圧発生部27に駆動電力が供給され、これにより高電圧発生部27から高電圧が出力されると、その高電圧発生部27からの高電圧の出力に連動して表示灯29が点灯する。したがって、表示灯29が点灯している状態は、その静電塗装ガン20が現在塗装のために使用されている状態、すなわち高電圧に帯電させた塗料を吐出している最中であること意味する。本実施形態では、静電塗装のための駆動電力を受けて表示灯29が点灯している状態を、使用中表示と称する。
【0033】
また、制御部43は、電源部42からの出力を制御して、表示灯29を使用中表示とは異なる態様で動作させることにより、予告表示も表示することができる。予告表示は、例えば表示灯29が点滅している状態であり、その静電塗装ガン20が次の塗装つまり次の被塗装物90を塗装する際に使用するものである旨を示す表示である。この場合、制御部43は、電源部42から出力される交流パルス電圧の周期を制御することにより、表示灯29の点灯及び点滅を制御することができる。
【0034】
すなわち、制御部43は、電源部42から出力する交流パルス電圧の周期を、高電圧発生部27を動作させるための駆動電力つまり、高電圧発生部27から高電圧を出力させる際に必要な交流パルス電圧よりも遅くすることで、表示灯29を点滅させることができる。このように、表示灯29は、その点灯状態を変化させることによって、例えば
図3に示すように、作業者に対し、その静電塗装ガン20が現在使用中であるか次に使用されるものであるかの情報を提示することができる。この場合、制御部43は、電源部42から出力する交流パルス電圧を例えば2V未満の値に設定し、駆動電力の電圧よりも低い電圧で表示灯29を点滅動作させる。
【0035】
制御部43は、上位装置80と通信可能に接続されている。上位装置80は、制御部43に対して、次の被塗装物90の塗装色を指示する指示信号を送信する。制御部43は、上位装置80から指示信号を受信すると、その指示信号に基づいて、制御盤40に接続された各静電塗装ガン20のうち次に塗装する塗料の色に対応した一の静電塗装ガン20を特定する。そして、制御部43は、各静電塗装ガン20のうち特定した一の静電塗装ガン20の表示灯29を点滅させることで、次に使用する予定の静電塗装ガン20に予告表示を表示させる。
【0036】
なお、現在使用している静電塗装ガン20と次に使用する予定の静電塗装ガン20とが同一である場合、本実施形態では、制御部43は、予告表示よりも使用中表示を優先させる。すなわち、上位装置80から受信した指示信号に基づいて特定した一の静電塗装ガン20が、現在使用中の静電塗装ガン20である場合、制御部43は、その使用中の静電塗装ガン20について、作業者のトリガー22が継続している間は表示灯29を使用中表示として点灯させる。そして、制御部43は、作業者のトリガー22の操作が解除されてその塗装作業が終わった後に、予告表示として表示灯29を点滅させる。
【0037】
ちなみに、表示灯29が消灯している状態は、その静電塗装ガン20が現在使用されておらず、かつ、次の塗装でも使用される予定が無いことを意味する。本実施形態において、表示灯29の点灯、点滅、及び消灯は、作業者の視覚による認識を基準としている。すなわち、例えば表示灯29の点灯状態には、作業者が点滅であると認識できない程高速で表示灯29を点滅させている状態も含まれる。
【0038】
このように、本実施形態の静電塗装装置10は、複数の静電塗装ガン20と、制御盤40と、を備える。静電塗装ガン20は、作業者の操作に応じて予め設定された色の塗料を高電圧に帯電させて吐出することができる。静電塗装ガン20は、高電圧発生部27と、表示灯29と、を有する。高電圧発生部27は、制御盤40から供給された駆動電力の電圧を昇圧して高電圧を発生させる。表示灯29は、制御盤40と高電圧発生部27との間に設けられ、制御盤40から供給される駆動電力を受けて動作することで、当該静電塗装ガン20が現在使用中である旨を示す使用中表示を表示する。そして、制御盤40は、複数の静電塗装ガン20のうち次に塗装する塗料の色に対応した一の静電塗装ガン20については、当該静電塗装ガン20が次に使用予定である旨を示す予告表示として使用中表示とは異なる態様で表示灯29を動作させる。
【0039】
この静電塗装装置10によれば、作業者は、ガンラック30に掛かっている複数の静電塗装ガン20の中から、予告表示が表示されている静電塗装ガン20、つまり表示灯29が点滅している静電塗装ガン20を選択し、次の塗装作業に使用することができる。そのため、次に使用する静電塗装ガン20を適切に選択することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、表示灯29は、静電塗装ガン20に設けられている。そのため、作業者は、仮に間違った静電塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、その手に取った静電塗装ガン20の表示灯29の表示状態を見ることで、つまり自己の手元にある静電塗装ガン20の表示灯29が点滅しているか否かを見ることで、手に取った静電塗装ガン20が正しいものであるかどうかを容易に把握することができる。そのため、作業者は、仮に間違った静電塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、塗装前の段階で気付き易くなり、その結果、塗装色の間違いをより確実に抑制することができる。
【0041】
更に、例えば清掃時等において、各静電塗装ガン20を同時にガンラック30から外した場合、その後、作業者の戻し間違いによって、各静電塗装ガン20がガンラック30上の正しい位置に戻されない可能性がある。すなわち、静電塗装ガン20を同時にガンラック30から外し、その後、各静電塗装ガン20をガンラック30に戻した場合に、各静電塗装ガン20の位置が入れ違ってしまうことがある。すると、銘板31に記載されている塗料の色と、実際に静電塗装ガン20から吐出される塗料の色とが異なってしまう。その結果、銘板31の記載を信じた作業者がそのまま静電塗装ガン20を使用すると、間違った色で被塗装物90を塗装してしまうことになる。
【0042】
一方、本実施形態によれば、表示灯29は、上述したように静電塗装ガン20に設けられている。このため、静電塗装ガン20を戻し間違えて銘板31に記載されている塗料の色と実際に静電塗装ガン20から吐出される塗料の色とが異なってしまい、その結果、銘板31の記載を信じた作業者が間違った静電塗装ガン20を手に取ってしまった場合であっても、手にした静電塗装ガン20の表示灯29が予告表示で表示されていなければ、つまり表示灯29が点滅していなければ、作業者は、その静電塗装ガン20が次に使用されるものでないものと容易に気付くことができる。その結果、本実施形態の静電塗装装置10によれば、塗装色の間違いをより確実に抑制することができる。
【0043】
また、制御盤40は、各静電塗装ガン20のうち作業者の操作を受けて塗料を吐出している一の静電塗装ガン20の表示灯29に、現在塗装中である旨を示す使用中表示を、予告表示とは異なる態様で表示させる。これによれば、作業者は、表示灯29に表示されている使用中表示を見ることで、例えば静電塗装ガン20から吐出されている塗料に高電圧が印加されていることを知ることができる。その結果、作業者は、より安全に配慮するようになり、作業の安全性が高まる。また、予告表示だけでなく使用中表示も表示灯29に表示させることにより、表示灯29の機能を有効活用することができる。つまり、表示灯29は、使用中表示を表示するための表示灯と、予告表示を表示するための表示灯と、を兼用している。これにより、予告表示と使用中表示を表示する表示灯をそれぞれ別に設けた場合に比べて、部品点数が削減でき、その結果、静電塗装ガン20の製造コストも低減することができる。
【0044】
ここで、予告表示は、作業者がトリガー22を操作していない状態、つまり作業者が塗装を行う意思が無い状態、換言すれば高電圧発生部27から高電圧を出力する意思がない状態のときに表示されるものである。そのため、予告表示をするために表示灯29を動作させる際に、駆動電力の電圧と同等の電圧つまり例えば2V~20V程度の電圧を電源部42から出力してしまうと、作業者が意図していない状態で高電圧発生部27から高電圧が発生してしまうことになり、安全性が低下する可能性がある。
【0045】
そこで、本実施形態において、制御盤40は、予告表示を表示させる際には駆動電力の電圧よりも低い電圧、例えば2V未満の電圧を電源部42から出力させて表示灯29を動作させる。これによれば、予告表示をするために表示灯29を動作させる際に、作業者の意図しないときに高電圧発生部27から高電圧が発生してしまうことが抑制でき、その結果、安全性の低下を抑制することができる。
【0046】
また、表示灯29は、使用中表示として点灯するとともに、制御盤40は、予告表示として、表示灯29を点滅させる。これによれば、使用中表示における点灯状態と、予告表示における点滅状態とは、明らかに動作態様が異なるため、作業者は、表示灯29の表示が使用中表示であるか予告表示であるかを、一見して把握し易くなる。その結果、使用者による静電塗装ガン20の取り間違いを更に効果的に抑制することができ、その結果、塗装色の間違いを更に確実に抑制することができる。
【0047】
なお、各実施形態は、上記したかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0048】
図面中、10は静電塗装装置、20は静電塗装ガン、27は高電圧発生部、29は表示灯、を示す。