(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】配管用カバー
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2019025423
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】512138356
【氏名又は名称】有限会社宮尻製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】宮尻 輝美
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145989(JP,A)
【文献】実開昭63-115990(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00 - 58/18
F16L 59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材によって被覆された配管の屈曲部に取り付けられて前記屈曲部を覆う合成樹脂製のカバーであって、
前記屈曲部の屈曲内側に位置される雄側延出部と雌側延出部とを留め合わせることでエルボ状になるように構成されていると共に、
前記雌側延出部に、
前記雄側延出部を挿通可能とする
トンネル状をなす挿通路を、前記雌側延出部の内面側に付設された挿通路形成板によって前記雌側延出部の前記内面とこの挿通路形成板との間に備えさせており、
前記雌側延出部の端末側に位置される前記挿通路の入り口に、前記挿通路への前記雄側延出部の任意の挿通位置で前記雄側延出部に多段状に形成された雄側係合爪のいずれか一つに係合される雌側係合爪を、前記挿通路形成板の一部によって形成させる
と共に、
前記挿通路の幅が、前記挿通路の出口側に近づくに連れて漸減するようにしてなる、配管用カバー。
【請求項2】
前記挿通路の出口に、前記雄側係合爪のいずれか一つに係合される雌側係合爪を、前記挿通路形成板の一部によって形成させてなる、請求項1に記載の配管用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断熱材によって被覆された配管における前記断熱材の外面を覆うように前記配管に取り付けられるカバーのうち、前記配管の屈曲部に取り付けられて前記屈曲部を覆う配管用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材によって被覆された配管、典型的には、空調や温調用の配管における屈曲部に取り付けられて前記屈曲部を覆うカバーとして、特許文献1及び2に示されるものがある。
【0003】
特許文献1及び2のものは、エルボーカバーの屈曲内側において左右に分離されている。この分離箇所の一方には係合孔が形成され、他方には、この係合孔に挿し込まれて係合される舌片が形成されており、配管の屈曲部にエルボーカバーをかぶせた状態から係合孔に舌片を挿入・係合させることで、配管の屈曲部を外装するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭61-173894号公報
【文献】実開昭63-115990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配管の屈曲部の外径は、配管を被覆する断熱材の厚さにより変化するところ、特許文献1及び2のものにあっては、前記係合孔への舌片の挿入・係合位置が可変可能であることから、この変化に追随可能である。しかし、係合孔への舌片の挿入量にかかわらずエルボーカバーの屈曲内側において舌片を露出させてしまうものであった。
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の配管の屈曲部に対するカバーによる前記屈曲部の化粧がより効果的なものとなるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、配管用カバーを、断熱材によって被覆された配管の屈曲部に取り付けられて前記屈曲部を覆う合成樹脂製のカバーであって、
前記屈曲部の屈曲内側に位置される雄側延出部と雌側延出部とを留め合わせることでエルボ状になるように構成されていると共に、
前記雌側延出部に、
前記雄側延出部を挿通可能とするトンネル状をなす挿通路を、前記雌側延出部の内面側に付設された挿通路形成板によって前記雌側延出部の前記内面とこの挿通路形成板との間に備えさせており、
前記雌側延出部の端末側に位置される前記挿通路の入り口に、前記挿通路への前記雄側延出部の任意の挿通位置で前記雄側延出部に多段状に形成された雄側係合爪のいずれか一つに係合される雌側係合爪を、前記挿通路形成板の一部によって形成させると共に、
前記挿通路の幅が、前記挿通路の出口側に近づくに連れて漸減するようにしてなる、ものとした。
【0008】
配管の屈曲部の外径は、配管を被覆する断熱材の厚さにより変化する。かかる配管用カバーによれば、前記挿通路への雄側延出部の挿し込み量、すなわち、複数の雄側係合爪のうちの前記雌側係合爪に係合される雄側係合爪を変えることで、エルボ状をなす配管用カバーの径を前記屈曲部の外径に一定の範囲で適合させることができる。雄側延出部と雌側延出部とは、雌側延出部の内面側に形成された挿通路に雄側延出部を挿通することで留め合わされることから、雄側延出部は雌側延出部によって覆い隠される。これにより、前記屈曲部において、前記断熱材を配管用カバーによって効果的に化粧できる。
【0010】
また、前記挿通路の出口に、前記雄側係合爪のいずれか一つに係合される雌側係合爪を、前記挿通路形成板の一部によって形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、この種の配管の屈曲部に対するカバーによる前記屈曲部の化粧をより効果的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる配管用カバーの斜視構成図であり、配管の屈曲部に取り付ける直前の状態を示している。
【
図2】
図2は、前記配管用カバーを配管の屈曲部に取り付けた状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、前記配管用カバーの側面構成図である。
【
図5】
図5は、前記配管用カバーの要部斜視構成図である。
【
図6】
図6は、前記配管用カバーの要部断面構成図である。
【
図7】
図7は、前記配管用カバーの断面構成図であり、雄側延出部を雌側延出部に係合させた様子を示している。
【
図8】
図8は、前記配管用カバーの要部斜視構成図であり、雄側延出部を雌側延出部に係合させた状態を示している。
【
図9】
図7は、前記配管用カバーの要部断面構成図であり、雄側延出部を雌側延出部に係合させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図9に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる配管用カバーCは、断熱材Iによって被覆された配管Pにおける前記断熱材Iの外面を覆うように前記配管Pに取り付けられるカバーC、C’のうち、前記配管Pの屈曲部Paに取り付けられて前記屈曲部Paを覆うものである。
【0014】
すなわち、この実施の形態にかかる配管用カバーCは、
図1及び
図2に示されるように、配管Pのストレート部Pbを覆う配管用カバーC’と一緒に、断熱材Iによって被覆された配管Pの外面を覆うものである。
【0015】
かかる配管用カバーCは、典型的には、難燃性の合成樹脂製のシートを加工することで構成される。
【0016】
また、かかる配管用カバーCは、前記配管Pへの取付状態において、エルボ状をなすように構成されている。すなわち、かかる配管用カバーCは、前記取付状態において、側面視L字状の管状を呈し、仮想の円の円弧の一部に沿うように湾曲した外周部分1と、外周部分1の内側に位置される内周部分2と、両者間に位置して前記配管Pの屈曲部Paの側部を覆う左右の中間部分3とを有する。
【0017】
また、かかる配管用カバーCは、前記取付状態において前記屈曲部Paの屈曲内側Pdに位置される内周部分2において、左右に分離されている。そして、分離された内周部分2の一方が雄側延出部4となり、分離された内周部分2の他方が雌側延出部5となっている。そして、かかる雄側延出部4と雌側延出部5とを留め合わせることでエルボ状になるように構成されている。
【0018】
具体的には、配管用カバーCの雄側延出部4と雌側延出部5との間を拡げるように配管用カバーCを弾性変形させて、前記配管Pの屈曲部Paの屈曲外側Pcに前記外周部分1が接し、屈曲内側Pdに前記内周部分2が位置されるように、前記屈曲部Paに配管用カバーCをかぶせる。具体的には、前記屈曲部Paに前記のように配管用カバーCをかぶせた状態から、配管用カバーCの径を拡げる向きに配管用カバーCを弾性変形させて、雌側延出部5の後述する挿通路5bに雄側延出部4を挿し込めるように操作し、この後、配管用カバーCの径を狭めながらかかる挿通路5bに雄側延出部4を挿し込むことで雄側延出部4と雌側延出部5とが係合・留め合わされるようになっている。
【0019】
雄側延出部4は、前記内周部分2の一部となる基部4aと、この基部4aから延び出す舌片4cとから構成されている。基部4aは、前記屈曲部Paの側部を覆う配管用カバーCの中間部分3に続くように形成されており、端末4’に近づくに連れて幅を漸減させるように構成されている。舌片4cは基部4aの終端4bの幅よりも幅を小さくする帯状を呈し、一端を基部4aの終端4bの中央に一体化させてこの終端4bから延び出している。この舌片4cの他端が雄側延出部4の端末4’となっている。
【0020】
かかる雄側延出部4の内面4d(前記断熱材Iに接する側の面)に、雄側延出部4の延び出し方向において多段状をなすように複数の雄側係合爪4eが形成されている。図示の例では、細長い基板4fの一面に、この基板4fの幅方向に沿ったリブ状をなす雄側係合爪4eをこの基板4fの長さ方向において隣り合う雄側係合爪4eとの間に間隔を開けて複数形成させてなる合成樹脂製の係合爪構成部材4gを、雄側延出部4を構成する舌片4cの内面4dに止着させることで、雄側延出部4の内面4dに、雄側延出部4の延び出し方向において多段状をなすように複数の雄側係合爪4eを形成させている。図示の例では、係合爪構成部材4gは、前記舌片4cと実質的に等しい幅を持ち、舌片4cの内側においては、前記基板4fが舌片4cからはみ出さないように舌片4cに沿って止着されている。また、係合爪構成部材4gは、前記端末4’としての舌片4cの終端との間に間隔を開けた位置に基板4fの一方端を位置させると共に、基部6の終端4bに基板4fの他方端を位置させるように、雄側延出部4の内面4dに止着されている。かかる止着は典型的には、係合爪構成部材4gの基板4fの他面を雄側延出部4の内面4dに接着あるいは溶着してなす。図示の例ではまた、前記基板4fの一方端側において、前記端末4’としての舌片4cの終端がやや内側に折り曲げられており、このように形成された折り曲げ部4hによって雌側延出部5の後述の挿通路5bにその入り口側から舌片4cを差し込みやすくしている。
【0021】
前記雌側延出部5は、前記内周部分2の一部となる基部5aに、前記雄側延出部4の舌片4cを挿通可能とする挿通路5bを、前記雌側延出部5を構成する前記基部5aの内面5c側に付設された挿通路形成板5dによって前記雌側延出部5の前記基部5aの前記内面5cとこの挿通路形成板5dとの間に備えさせてなる。基部5aは、前記屈曲部Paの側部を覆う配管用カバーCの中間部分3に続くように形成されており、端末5’に近づくに連れて幅を漸減させるように構成されている。
【0022】
前記挿通路5bは、雌側延出部5の端末5’、つまり、前記基部5aの終端5e側に位置される入り口5fと、前記中間部分3側に位置される出口5gとを備えたトンネル状を呈している。
【0023】
図示の例では、前記挿通路形成板5dは、チャンネル状に成形した合成樹脂製のシートによって構成されている。前記挿通路形成板5dは、典型的には、配管用カバーCを構成する前記合成樹脂製のシートと同一の合成樹脂製シートから構成される。前記挿通路形成板5dは、中央部5hと、左右の耳部5iと、中央部5hと耳部5iとの間の段差部5jとを備えている。左右の耳部5iをそれぞれ前記雌側延出部5の内面5cとしての基部5aの内面に止着することで、前記雌側延出部5の内面5cとしての基部5aの内面と前記中央部5hとの間に前記挿通路5bを形成させるようになっている。かかる止着は典型的には溶着によってなされる。
【0024】
図示の例では、前記挿通路形成板5dの前記入り口5fを構成する端部は、雌側延出部5の端末5’としての前記基部5aの終端5eよりも中間部3側に位置し、この端部と端末5’との間に間隔5kが形成されている。図示の例では、この間隔5k部分が、雌側延出部5の端末5’としての前記基部5aの終端5eと実質的に平行な折り曲げ線によって頂部を形成させるように折り曲げられており、この頂部によって指掛け部5mを形成させている。図示の例では、この指掛け部5mを利用して、前記屈曲部Paに前記のように配管用カバーCをかぶせた状態から、配管用カバーCの径を拡げる向きに配管用カバーCを弾性変形させて、雌側延出部5の挿通路5bに雄側延出部4を挿し込めるようにする操作が行いやすくなっている。
【0025】
また、この実施の形態にあっては、前記挿通路5bの幅は、前記挿通路5bの出口5g側に近づくに連れて漸減するようになっている。図示の例では、挿通路形成板5dの左右の段差部5j間の距離が入り口5f側で最も広く、そこから出口5g側に近づくに連れて漸減するようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、挿通路5bに雄側延出部4の舌片4cを挿通し易く、また、挿通完了状態においては、挿通された舌片4cを挿通路5b内でガタつき少なく保持できるようになっている。
【0026】
また、この実施の形態にあっては、前記雌側延出部5の端末5’側に位置される前記挿通路5bの入り口5fに、前記挿通路5bへの前記雄側延出部4の任意の挿通位置で前記雄側延出部4に多段状に形成された雄側係合爪4eのいずれか一つに係合される雌側係合爪5nを、前記挿通路形成板5dの一部によって形成させている。
【0027】
図示の例では、前記挿通路形成板5dにおける入り口5f側の端部において、前記中央部5hの左右に切り込み5oを設けると共に、この中央部5hにおける左右の切り込み5o間に位置される部分を基部5aの内面側に向けて折り曲げて立ち上げることで前記雌側係合爪5nを形成させている。雌側係合爪5nの先端と雌側延出部5の内面5cとしての基部5aの内面との間の距離は前記雄側延出部4の舌片4cの厚さ、つまり、雄側延出部4の外面4iと雄側係合爪4eの先端との間の距離よりもやや小さくなっている。これにより、挿通路5bに雄側延出部4の舌片4cを雌側係合爪5n及び雄側係合爪4eの双方又はいずれか一方を弾性変形させながら挿し込み可能で、かつ、差し込みを止めた位置で雄側延出部4に多段状に形成された雄側係合爪4eのいずれか一つに雌側係合爪5nを、挿通路5bから舌片4cが抜け出さないように係合可能となっている。
【0028】
また、この実施の形態にあっては、前記挿通路5bの出口5gに、前記雄側係合爪4eのいずれか一つに係合される雌側係合爪5pを、前記挿通路形成板5dの一部によって形成させている。図示の例では、前記挿通路形成板5dにおける出口5g側の端部において、前記中央部5hを基部5aの内面側に向けて折り曲げて立ち上げるように変形させることで前記雌側係合爪5pを形成させている。この雌側係合爪5pの先端と雌側延出部5の内面5cとしての基部5aの内面との間の距離は前記雄側延出部4の舌片4cの前記厚さよりもやや小さくなっている。これにより、挿通路5bの出口5g側においても、この挿通路5bに挿通された雄側延出部4に多段状に形成された雄側係合爪4eのいずれか一つに雌側係合爪5pを係合させることができるようになっている。
【0029】
配管Pの屈曲部Paの外径は、配管Pを被覆する断熱材Iの厚さにより変化する。この実施の形態にかかる配管用カバーCによれば、前記挿通路5bへの雄側延出部4の挿し込み量、すなわち、複数の雄側係合爪4eのうちの前記雌側係合爪5nに係合される雄側係合爪4eを変えることで、エルボ状をなす配管用カバーCの径を前記屈曲部Paの外径に一定の範囲で適合させることができる。雄側延出部4と雌側延出部5とは、雌側延出部5の内面5c側に形成された挿通路5bに雄側延出部4を挿通することで留め合わされることから、雄側延出部4は雌側延出部5によって覆い隠される。これにより、前記屈曲部Paにおいて、前記断熱材Iを配管用カバーCによって効果的に化粧できる。
【0030】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0031】
I 断熱材
P 配管
Pa 屈曲部
Pd 屈曲内側
C カバー
4 雄側延出部
4e 雄側係合爪
5 雌側延出部
5’ 端末
5b 挿通路
5d 挿通路形成板
5f 入り口
5n 雌側係合爪