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特許6989996熱硬化性樹脂組成物、硬化膜及び非水分散樹脂粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、硬化膜及び非水分散樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/06 20060101AFI20220104BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20220104BHJP
   C08F 20/26 20060101ALI20220104BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L101/06
C08K5/57
C08F20/26
C08F290/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021516175
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017385
(87)【国際公開番号】W WO2020218372
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/017284
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-119401(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069783(WO,A1)
【文献】特開平06-157618(JP,A)
【文献】特開2001-261715(JP,A)
【文献】特開平02-147675(JP,A)
【文献】特開2003-261733(JP,A)
【文献】特開平08-092503(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054136(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 20/26
C08F 290/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水分散樹脂粒子(A-1)を必須成分とする樹脂成分(A)を含有し、
樹脂成分(A)は、アルキルエステル基及び水酸基を有するものであり、更に、エステル交換触媒(B)を含有し、
メラミン樹脂、および、イソシアネート化合物を実質的に含有せず、
樹脂粒子(A-1)は、一部に2官能以上の単量体を使用することで、樹脂中に架橋構造を形成させた粒子である
ことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
非水分散樹脂粒子は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
:1~10
(式中、R1、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。)
【請求項3】
架橋構造は、酸/エポキシ反応によって形成したものである請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することによって得られたものであることを特徴とする硬化膜。
【請求項5】
アルキルエステル基を有する非水分散樹脂粒子であって、
アルキルエステル基は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格であり、
一部に2官能以上の単量体を使用することで、樹脂中に架橋構造を形成させた粒子である
ことを特徴とする非水分散樹脂粒子。
【化2】
:1~10
(式中、R1、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数1~4のアルキル基。)
【請求項6】
架橋構造は、酸/エポキシ反応によって形成したものである請求項5記載の非水分散樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、硬化膜及び非水分散樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や接着剤等の用途において、NAD(非水分散体)に代表される膜物性改質剤を使用することが広く知られている。これは、塗料や接着剤においては用途や目的に応じて要求される物性が多岐にわたり、単一の成分のみで充分な性能を得ることが困難となる場合があるためである。
【0003】
このような膜物性改質剤としては、NAD(非水分散体)、ブロック共重合体等を挙げることができる。更に、アクリル樹脂を基材樹脂とする塗料や接着剤において、ポリエステル樹脂を添加することも広く行われている。このようなポリエステル樹脂の添加も、膜物性を改質するために行われるものであり、膜物性改質剤の一つと考えることができる。
【0004】
これらのうち、NADは不溶性の樹脂粒子からなるコアの表面部に、分散安定剤としての機能を有するシェルを有するものである。このようなNADにおいてはコア部分には超高分子量のものや、3次元架橋させたものを導入する事が出来る。一般的に膜物性は、硬い膜にすると伸び率が下がり、柔らかくすると破断強度が落ちる。そこでNADのような3次元架橋した樹脂粒子を塗膜内に共存させることで破断強度と伸び率を低下させることなく、膜物性を向上させることができる。このような非水分散樹脂粒子は、有機溶媒に溶解するのではなく、分散した状態の樹脂である。このような樹脂は、弱溶剤を使用した塗料とすることができる点、粘性制御が容易であることから塗料のハイソリッド化を行うことができるという点等で優れた性能を有するため、塗料等の分野において、多く製造・使用されている。
【0005】
非水分散体は、一般的に、非水分散体粒子表面に反応性官能基を有するものとして、これを樹脂溶液・硬化剤溶液等と混合して硬化させることによって使用されることが多い。このような例として特許文献1~4等が公知である。
【0006】
このような非水分散体粒子を塗料等の硬化性樹脂組成物において使用する場合、マトリックス樹脂や硬化剤と併用した組成物とする試みが多く行われている。これによって、熱硬化後の樹脂において一般的に要求されるような強度、耐久性等の多くの物性において良好な性質が得られる。
【0007】
しかしながら、このような非水分散粒子を利用した熱硬化性樹脂組成物において、使用される熱硬化反応は、一般に、メラミン架橋、イソシアネート架橋等、あるいはカルボン酸とエポキシ基との反応であった。これらの硬化剤は、熱反応性が良好で、得られた硬化樹脂の性質が優れているため、広く一般的に使用されている。しかし、メラミン樹脂は、硬化反応時にホルムアルデヒドを発生するためシックハウス症候群の原因とされるため、近年は用途が制限される場合もある。さらに、メラミン樹脂は、耐酸性が充分ではないため、耐酸性の改善も求められている。
さらに、ポリイソシアネート化合物は、硬化反応が高いものの毒性があるために取扱いが容易ではないうえ、高価である。さらにカルボン酸とエポキシ基は貯蔵安定性の面で問題がある。
【0008】
非水樹脂分散体を使用した硬化性組成物において、各種アルキルエステル基を有する非水樹脂分散体を使用することは公知である(例えば、特許文献1,2等)。しかし、このアルキルエステル基の導入は、分散体粒子の物性を調整するために導入されたものであり、アルキルエステル基による硬化反応を期待するものではなかった。このため、これらの先行文献においては、メラミン樹脂やイソシアネート化合物等を併用することによって水酸基との硬化反応を生じさせている。
【0009】
更に、膜物性改質剤としてブロック共重合体やポリエステル樹脂を使用する場合であっても、これらは、メラミン樹脂やイソシアネート化合物と併用することが一般的であり、エステル交換反応によって架橋を行うことについては、検討されていない。
【0010】
また、粉体塗料の分野において、t-ブチルエステル基と水酸基とのエステル交換反応を硬化反応とすることが特許文献5に記載されている。しかし、この文献ではNADと樹脂との間の硬化反応においてエステル交換反応を生じさせることについては、開示していない。
【0011】
本発明者らは、特許文献6において、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物を開示した。しかし、特許文献6においては、NAD粒子を使用することについては、記載も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-40010号公報
【文献】特開2001-261715号公報
【文献】特開2015-168693号公報
【文献】特開平10-298256号公報
【文献】特開平9-59543号公報
【文献】特許第6398026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記に鑑み、硬化性が良好であり、各種の用途において使用することができ、エステル交換反応を硬化反応しており、物性が良好である熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、非水分散樹脂粒子(A-1)を必須成分とする樹脂成分(A)を含有し、樹脂成分(A)はアルキルエステル基及び水酸基を有するものであり、更に、エステル交換触媒(B)を含有し、
非水分散樹脂粒子は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格であり、
メラミン樹脂、および、イソシアネート化合物を実質的に含有せず、
樹脂粒子(A-1)は、一部に2官能以上の単量体を使用することで、樹脂中に架橋構造を形成させた粒子である
ことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0015】
上記非水分散樹脂粒子は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格であることが好ましい。
【0016】
【化1】
:1~10
(式中、R1、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0017】
本発明は、上記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することによって得られたものであることを特徴とする硬化膜でもある。
【0018】
本発明は、アルキルエステル基を有する非水分散樹脂粒子であって、 アルキルエステル基は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格であり、
メラミン樹脂、および、イソシアネート化合物を実質的に含有せず、
樹脂粒子(A-1)は、一部に2官能以上の単量体を使用することで、樹脂中に架橋構造を形成させた粒子である
ことを特徴とする非水分散樹脂粒子でもある。
【0019】
【化2】
:1~10
(式中、R1、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数1~4のアルキル基。)
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アルキルエステル基と水酸基とのエステル交換反応によって硬化させるものであって、更に、膜物性改質剤を使用することで、物性を改善し、優れた機能を有する熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。更に、高固形分(ハイソリッド化)で低VOCの樹脂組成物を得ることができる点でも好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、樹脂成分(A)を必須とするものであり、この樹脂成分(A)がアルキルエステル基及び水酸基を有するものであり、かつ、非水分散樹脂粒子、ブロック共重合体及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1の膜物性改質剤を含有する点に特徴を有するものである。
【0022】
すなわち、エステル交換反応を樹脂硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物において、非水分散樹脂粒子、ブロック共重合体及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1の成分を配合することによって、熱硬化性樹脂組成物の物性を改質することを特徴とするものである。上記膜物性改質剤は、アルキルエステル基及び/又は水酸基を有するものであることが好ましい。これらの官能基を有することによって、樹脂成分(A)が形成する架橋構造のなかに組み込まれることとなり、より優れた物性を有する硬化物を得ることができる。
【0023】
なお、本発明における樹脂成分(A)は、一部が上記膜物性改質剤(A-1)であり、更にその他の樹脂成分(A-2)を含有するものである。樹脂成分(A)は、全体としてアルキルエステル基と水酸基を有するものであるが、上記「その他の樹脂成分(A-2)」は、アルキルエステル基と水酸基の少なくとも一方の官能基を有するものであることが好ましい。上記「その他の樹脂成分(A-2)」が、アルキルエステル基と水酸基の両方を有さないものであると、「その他の樹脂成分(A-2)」が硬化反応に関与することがなくなり、硬化物において良好な物性が得られないためである。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、エステル交換反応を生じさせるためには、エステル交換触媒の添加が必須となる。従来の技術において、アルキルエステル基を有する非水分散樹脂粒子をマトリックス樹脂と併用した熱硬化性樹脂組成物は知られていた。しかし、これらの組成物においては、エステル交換触媒が併用されていないため、アルキルエステルと水酸基の間での架橋反応が充分に生じることがなかった。よって、上述した引用文献の各組成物においては、本発明のような架橋反応が生じていないものと推測される。
【0025】
以下、本発明において使用する各成分について、詳述する。
なお、以下の本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0026】
(非水分散樹脂粒子)
まず、膜物性改質剤(A-1)が非水分散樹脂粒子である場合について詳述する。
本発明において使用する非水分散樹脂粒子は、アルキルエステル基を有するものであることが好ましい。これによって、樹脂成分(A)において生じる架橋反応中に取り込まれて、硬化物の一部をなすものとなる。
更に、上記非水分散樹脂粒子は、水酸基を有するものであってもよい。水酸基を有するものも、同様に樹脂成分(A)において生じる架橋反応中に取り込まれて、硬化物の一部をなすものとなる。
これによって、物性を改質する機能を発揮するものである。
【0027】
非水分散樹脂粒子は、有機溶媒において溶解せず、粒子として分散した状態にある樹脂を意味する。このような形態を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、重合性不飽和単量体を使用して得られる重合体において、一部に2官能以上の単量体を使用することで、樹脂中に架橋構造を形成させた粒子等を挙げることができる。また、架橋構造を形成させる為に、多価イソシアネートやメラミン系架橋剤、酸/エポキシなどの架橋剤を使用しても良い。更に超高分子量のものを使用することもできる。
【0028】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0029】
アルキル基としては特に限定されず、メチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0030】
なお、本発明においては、非水分散樹脂粒子中のアルキルエステル基として、エステル交換反応を生じやすいものを使用することが好ましい。このような構造については、以下、(E-1)、(E-2)として詳述する。
【0031】
(E-1)
このような単量体としては例えば、下記一般式(2)で表されるような構造を有する化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化3】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基を表す。
は、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0033】
このような一般式(2)で表される化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等の公知の不飽和カルボン酸のアルキルエステル誘導体を挙げることができる。
【0034】
上記一般式(2)で表されるアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体として最も代表的なものは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらのなかでも、架橋の反応性という観点において、t-ブチル(メタ)アクリレート等の三級アルキルエステルが最も好ましい。
【0035】
t-ブチル(メタ)アクリレートは、三級アルキルのエステルであることから、エステル交換反応速度が速く、このため硬化反応が効率よく進行する。このため、一級アルキルエステルや二級アルキルエステルよりも架橋反応性に優れ、本発明の目的を達成するエステル基を供与する上で非常に好ましい原料である。
【0036】
(E-2)
上記アルキルエステル基を有する単量体は、重合性不飽和結合とエステル基が連結基を介して結合した化合物であってもよい。このような単量体は、
【0037】
【化4】
:1~10
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。)
の一般式で表されるものを使用することができる。
当該構造では、アクリル樹脂主鎖から連結基を介してアルキルエステル基が存在するものである。このような構造の好ましい点については、以下に詳述する。
【0038】
上記一般式(1)で表される構造としてより具体的には、例えば、
【0039】
【化5】
:1~10
(式中、R10は、H又はメチル基。
11は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
12は、炭素数50以下のアルキル基。)
で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
【0040】
上記R11の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましく、20以下であることがさらに好ましい。R11の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。さらに具体的には、R11の主鎖中には、アルキル基のほかにエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。また、原子数の下限を特に限定されるものではないが、原子数2以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましく、4以上であることが最も好ましい。
【0041】
このような、(メタ)アクリル酸とエステル基とをR11で表される連結基を介して結合した化合物は、特に、エステル交換の反応速度が速くなる傾向がある点で好ましい。反応速度が速くなるのは、側鎖構造が長鎖となり、その末端にエステル基が存在していると、エステル基が動きやすく、自由度が大きくなるため、水酸基とも接近しやすく、これによって反応が促進されると推測される。
【0042】
上記一般式(1)、(3)におけるR、R12は、1級、2級、3級のいずれであってもよい。すなわち、連結基R,R11を有する構造の場合、本来反応性が低いアルキルエステル基であっても、エステル交換反応を良好に生じさせることができる。したがって、1級、2級、3級のいずれのエステル基であっても、良好にエステル交換反応による架橋反応を進行させることができる。
【0043】
上記一般式(1)で表される構造としてさらに具体的には、例えば、下記一般式(4)で表される化合物等を挙げることができる。
【0044】
【化6】
(式中、R13は、炭素数1~50のアルキル基。
14は、主鎖の原子数が44以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
15は、H又はメチル基。
16は、炭素数50以下のアルキル基。
17は、H又はメチル基。
は、0又は1。
は、1又は2。)
【0045】
上記一般式(4)で表される化合物は、分子中に不飽和結合を有するマロン酸エステルやアセト酢酸エステル等の活性アニオンを生じる化合物と、アルキルエステル基を有する不飽和化合物との反応によって合成された化合物である。
【0046】
すなわち、マロン酸エステルやアセト酢酸エステルは、カルボキシ炭素に挟まれたメチレン基を有しており、このメチレン基はアニオン化されやすく、アニオン反応を容易に生じるものとして広く知られている。このようなマロン酸エステルやアセト酢酸エステルのアルキル基中に不飽和結合を有する化合物(例えば、マロン酸やアセト酢酸と、以下で「水酸基含有単量体」として詳述する水酸基を有する不飽和単量体とのエステル化合物)を、不飽和基を有するアルキルエステル化合物と反応させることによって、不飽和基とアルキルエステル基の両方を有する化合物を合成することができる。
【0047】
このような構造を有する化合物は、広く汎用される原料を用いてアルキルエステル基のみを容易に変更でき、結果、硬化反応性を容易に調整できる。また、活性メチレン基への反応率を変えることでも硬化反応性を調整できるという点で特に好ましいものである。
【0048】
上記反応で使用する「不飽和基を有するアルキルエステル化合物」として使用できる化合物は特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メチレンマロン酸アルキルエステル、不飽和基を有するラクトン化合物(例えば、γ-クロトノラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン)等を使用することができる。
【0049】
当該反応は、塩基性条件下で行うことができ、例えば、アルカリ金属塩のクラウンエーテル存在下での有機溶媒中での反応等によって行うことができる。
このような合成反応の一例を以下に示す。
【0050】
【化7】
【0051】
また、上記一般式(1)で表されるアルキルエステル化合物に対応したカルボン酸のエステル化によって得ることもできる。
すなわち、下記一般式(1-2)で表されるような化合物は、上記一般式(1)で表されるアルキルエステル化合物に対応したカルボン酸である。
【0052】
【化8】
:1~10
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOH]nで表される構造。
を表す
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。)
【0053】
上記一般式(1-2)で表される化合物として、公知の化合物が存在している。このような公知の化合物を通常のエステル化反応(例えば、目的とするアルキルエステルのアルキル基に対応したアルコールとの反応)を行うことによって、不飽和基含有エステル化合物とすることもできる。
【0054】
以上に例示した方法で合成することができる化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0055】
【化9】
式中、Rはアルキル基を表す。
【0056】
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0057】
(E-2-X)
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(31)で表される官能基及び不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0058】
【化10】
【0059】
n=0~20
61は、炭素数50以下のアルキル基。
63は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0060】
すなわち、一般式(1)で表される化合物において、COOR基が上記一般式(31)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0061】
上記一般式(31)で表されるエステル基は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を樹脂成分の一部又は全部として使用することで、従来以上に優れた硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0062】
(一般式(31)の構造について)
上記一般式(31)の構造は、α置換カルボン酸エステル骨格を基本とするものである。
一般式(31)において、nは0~20である。
nの下限は、1であることがより好ましい。nの上限は5であることがより好ましい。
更に、上記一般式(31)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0~5であることが好ましい。navの下限は、1であることがより好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。
【0063】
nは、0であってもよいが、0を超える値であるほうが、より反応性が高い熱硬化性樹脂組成物を得ることができる点で好ましい。
すなわち、nが1以上であるほうが、より低い温度での硬化を図ることができ、これによって本発明の効果をより好適に発揮することができる。
【0064】
上記一般式(31)において、R61としては炭素数50以下の任意のアルキル基を使用することができ、1級、2級、3級のいずれであってもよい。
【0065】
上記官能基(31)を有する化合物は、目的とする化合物の構造に対応したカルボン酸又はカルボン酸塩化合物に下記一般式(32)
【0066】
【化11】
【0067】
(Xは、ハロゲン、水酸基を表す)
の構造を有するカルボニル基のα位に活性基Xが導入されたエステル化合物を、反応させることで得ることができる。これを一般式で表すと以下のようになる。
【0068】
【化12】
【0069】
上記一般式において、一般式(33)で表される原料として使用することができる化合物は、上述した反応を生じることができるカルボン酸又はカルボン酸誘導体であれば任意のカルボン酸に対して行うことができる。カルボン酸誘導体としては、YがOM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。なお、重合体の単量体として使用する場合は、不飽和基を有する化合物を一般式(33)で表される化合物として使用することができる。
【0070】
上記一般式(32)で表される化合物としては、目的とする一般式(31)で表される構造に対応した骨格を有する化合物とすることができる。
【0071】
また、上記一般式(32)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではない。上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=0の化合物は、α位にXで表される活性基を有する化合物であり、各種αヒドロキシ酸、αハロゲン化カルボン酸を挙げることができる。具体的には、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸t-ブチル、2-クロロプロピオン酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0072】
上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=1以上の化合物については、以下にその製造方法の一例を示す。
なお、以下に示す内容は製造方法の一例であり、本発明においては以下の製造方法によって得られた化合物に限定されるものではない。
【0073】
例えば、α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体と、α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとの反応によって得ることができる。これを一般式で表すと、下記のようなものとなる。
【0074】
【化13】
【0075】
α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体としては、カルボン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、酸無水物、酸クロライド等を挙げることができる。上記一般式(34)であらわされる化合物として具体的には、クロロ酢酸ナトリウム等を使用することができる。
【0076】
α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとしては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、乳酸、等のα置換カルボン酸化合物のアルキルエステルを挙げることができる。上記アルキルエステルのアルキル基は特に限定されず、炭素数1~50のアルキル基であればよい。
このようなアルキル基は、1~3級のいずれであってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等を挙げることができる。
【0077】
上記反応においては、XとXとを別種のものとすることが好ましい。これらを別種の官能基として反応性が相違するものとし、Xが未反応で残存するよう官能基の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、Xがブロモ基、Xがクロロ基の組み合わせが特に好ましい。
【0078】
また、上記反応において2種の原料の混合比を調整することで,nの値を調整することができる。上記反応においては、一般に相違するnを有する複数種の化合物の混合物として得られる。上記一般式(31)で表される化学構造を有する化合物は精製することで、nが特定の値を有するもののみを使用してもよいし、nの値が相違する複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0079】
上記一般式(31)で表される化学構造は、上記一般式(32)で表される化合物を、各種カルボン酸化合物と反応させることで形成させることができる。したがって、「カルボン酸基を有する化合物」として、不飽和基を有するカルボン酸を使用すれば、上記一般式(31)で表される官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を得ることができる。
【0080】
具体的には例えば、上記一般式(32)で表される化合物を(メタ)アクリル酸と反応させると、下記一般式(36)で表される化合物が得られる。
【化14】
(式中、R61は、炭素数50以下のアルキル基。
62は、水素又はメチル基。
nは、1~20)
【0081】
上記一般式(36)で表される化合物におけるR61は、炭素数50以下であれば、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、1級又は2級であることがより好ましく、1級であることが最も好ましい。
【0082】
(E-2-Y)
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基、並びに、不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0083】
【化15】
【0084】
【化16】
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、R61は炭素数50以下のアルキル基。
64は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
【0085】
すなわち、一般式(1)で表される化合物において、COOR基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0086】
上記一般式(41)におけるR64基は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、またはベンゼン環、シクロへキシル環のような環状構造を含んでいてもよい(炭素鎖1~50)。なかでも、原料が安価であり、反応性において優れる点でエチレン基であることが特に好ましい。
【0087】
上記一般式(41)で表される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(43)で表される化合物を挙げることができる。
【0088】
【化17】

(式中、R61は炭素数50以下のアルキル基。
64は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基。
65は、水素又はメチル基。)
【0089】
上記一般式(43)で表されるエステル化合物のうち、下記一般式(45)で表されるエステル化合物がより好ましい。
【0090】
【化18】
【0091】
上記一般式(41)で表される官能基を有するエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、アルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物に対して、エポキシ化合物を反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0092】
【化19】
【0093】
上記反応において、使用するアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、例えば、下記反応のような、酸無水物とアルコールとの反応で製造することができる。
【0094】
【化20】
【0095】
上記一般式(52)で表される反応における原料である酸無水物としては特に限定されず、例えば、環状構造を持つコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、安息香酸無水物、イタコン酸無水物等の各種二塩基酸の無水物を使用することができる。上記一般式(51)で表される反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0096】
なお、上記一般式(51)で表される合成方法において使用されるアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、上記一般式(52)の方法で得られたものに限定されず、その他の方法で得られたものであっても差し支えない。
【0097】
上記一般式(51)で表される合成方法においては、エポキシ化合物を必須成分として使用する。上記エポキシ化合物は、不飽和二重結合及びエポキシ基を有するものであれば、特に限定されず、任意のものを使用することができる。
【0098】
上述した反応で使用することができるエポキシ化合物としては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0099】
例えば、エピクロルヒドリンを使用すれば、これをフェノール化合物、カルボン酸化合物、水酸基含有化合物等と反応させることで、種々の骨格を有する化合物に対してエポキシ基を導入することができる。このような任意のエポキシ化合物に対して、上述した反応を行うことで、上述した一般式(41)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。このような反応の一般式を以下に示す。
【0100】
【化21】
【0101】
上記カルボキシル基及び不飽和基を有するヒドロキシカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0102】
更に、上述したエポキシ化合物は、環状エポキシ化合物であってもよい。
すなわち、環状エポキシ化合物をエポキシ化合物として使用した場合、下記反応によって、一般式(52)で表される構造を有する化合物を得ることができる。
【0103】
【化22】
【0104】
上述した一般式に使用することができる脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
【0105】
上述した下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される化合物、並びに、不飽和基を有する化合物の具体的なものとしては、以下の一般式で表される化合物などを挙げることができる。
【0106】
【化23】
【0107】
以上に例示した方法で合成することができる一般式(1)で表される化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0108】
【化24】
(上記一般式中、R61は、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0109】
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0110】
このようなアルキルエステル基を有するアクリル単量体の1種又は2種以上を、公知の任意の非水分散樹脂粒子の製造方法において、樹脂原料の一部として使用することによって、本発明で使用する特に好適な非水分散樹脂粒子とすることができる。
【0111】
このような非水分散樹脂粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、(くし型の)マクロモノマーを製造し、これをその他のモノマーと共重合させ、その重合に際して、架橋構造を形成させる単量体を併用することによって、製造する方法等を挙げることができる。
【0112】
マクロモノマーの製造方法は特に限定されるものではないが、カルボキシル基を含有する重合体に、エポキシ基と重合性不飽和基を有する化合物を反応させる方法や、下記一般式のように水酸基を含有する重合体や連鎖移動剤などで末端に水酸基を導入した重合体に、イソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物を反応させる方法がある。また、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマーを使用する方法などがある。(工程1)
【0113】
【化25】
【0114】
マクロモノマーを不飽和重合性単量体と併用する重合反応を行う(工程2)。
工程2において、工程2の結果物が溶解しづらい貧溶媒中で反応することによってNADを得ることができる。
更に、工程2の結果物が可溶な溶媒中で、モノマー組成などを調整し反応することで、くし型のポリマーとすることもできる。そのようなくし型のポリマーにおいても、カルボキシル基を導入しておけば、当該ポリマーとエポキシ基と重合性不飽和基を有する化合物と反応させることによって、くし型マクロモノマーを得ることが出来る。また水酸基を導入しておけば、当該ポリマーと上記イソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物を反応させることによって、くし型マクロモノマーを得ることができる(工程3)。
更に、この工程3で得られたくし型マクロモノマーを、不飽和基含有単量体と反応させることによって、NADを得ることができる(工程4)。
この工程2及び/又は工程4における重合反応に際して、2以上の重合性不飽和基を有する単量体、もしくはエポキシ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体を併用することが好ましい。これによって、架橋鎖を形成し、樹脂の溶媒への溶解能を低下させることによって、より好適なNADとすることができる。
【0115】
すなわち、上記工程1,2によってNADを得ることも、工程1,2,3,4によってNADを得ることもできるが、これらのうち、1,2,3,4の工程で得られたNADがより好ましい。
【0116】
上述した反応は、イソシアネート基-水酸基の反応を不飽和結合の重合と組み合わせるものであるが、同様の反応をエポキシ基-カルボキシル基の反応を不飽和結合の重合と組み合わせるものとすることもできる。
すなわち、カルボキシル基を有する樹脂に対して、不飽和基及びエポキシ基の双方を有する化合物を反応させることによって、不飽和基を有する重合体を得て、当該不飽和基の重合反応を行うことで、樹脂中に網目構造を導入する工程を有するものであってもよい。この場合の反応は、使用する単量体をエポキシ基含有単量体とカルボキシル基含有単量体の組み合わせとする以外は、上述した工程1~工程4と同様の方法で行うことができる。
このような方法による場合は、上述したイソシアネートと水酸基との反応と組み合わせて使用するものであってもよいし、カルボキシル基を有する単量体及びエポキシ基を有する単量体の反応のみを網目構造を形成するための反応としてもよい。
【0117】
このような反応を行うに際して、工程1~工程4のすべて又はいずれかの工程において、アルキルエステル基を有する不飽和重合性単量体を使用することが好ましい。
また、アルキルエステル基としては、エステル交換反応を容易に生じるものであることが必要である。このようなアルキルエステル基としては、上述したように、
(1)三級アルキルエステル基
(2)上述した一般式(1)(3)で表されるような長鎖の側鎖を有するエステル基
のいずれかであることが好ましい。
なかでも、(2)の長鎖の側鎖を有するエステル基であることが好ましい。更に、長鎖の側鎖を有する三級アルキルエステル基という、(1)(2)のいずれにも該当する単量体であってもよいし、(1)の単量体と(2)の単量体を併用するものであってもよい。
【0118】
上述した方法でNADを製造する場合、その製造において上記(E-1)(E-2)で表されるアルキルエステル基を有する単量体を原料全量のうち、1~50重量%の割合で使用することが好ましい。またコアの外側にアルキルエステル基を持つと、熱硬化時にNADの他の成分と反応するのでより好ましい。
【0119】
上述した方法でNADを製造する場合、その製造方法においては、上述したアルキルエステル基を有する単量体に加えて、(H)水酸基含有単量体、(I)イソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物、(J)2以上の重合性不飽和基を有する単量体もしくはエポキシ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体を使用することが必要とされる。また、NADとして有機溶媒中に分散する性能を高める目的で、(K)長鎖脂肪族の側鎖を有する単量体も使用することができる。更には、その他の不飽和官能基含有単量体を併用するものであってもよい。
ただし、NADとして上記の方法にこだわる必要は無く、コア部分が3次元架橋していなくても良い。また、分散剤・分散安定剤がコア部分と反応していなくてもよく、粒子が安定に存在してれば問題ない。
これらの単量体として使用することができるものを以下に例示する。
【0120】
(H)水酸基含有単量体
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分などである。
【0121】
また、上述したような水酸基を有する非水分散樹脂粒子は、上述した(H)水酸基含有単量体の使用量を調製して、過剰なものとしたり、上述した方法における最後の段階である工程4において水酸基含有単量体を使用する等の方法によって、得ることができる。
【0122】
(I)イソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物
下記一般式(6)で表される化合物等を挙げることができる。
【0123】
【化26】
(式中、R22は、炭素数1~20の炭化水素基。
23は、H又はメチル基)
【0124】
より具体的には、昭和電工株式会社カレンズAOI(登録商標)との商品名で販売されている2-イソシアナトエチルアクリラート等を挙げることができる。
【0125】
(J)2以上の重合性不飽和基を有する単量体
(J)2以上の重合性不飽和基を有する単量体は、上記製造方法の工程(2)及び/又は工程(3)において使用されることが好ましい。このような単量体を一部に使用することで分子内に架橋鎖が適度に形成され、樹脂の溶媒への溶解性を低下させる効果を有する。
【0126】
2以上の重合性不飽和基を有する単量体としては、例えば、以下に例示したものを使用することができる。
【0127】
(2以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)
このようなモノマーは、好ましくは分子量180~800の比較的低分子量であり、(メタ)アクリロイル基を2以上有するような任意の化合物を使用することができる。このような化合物としては、非常に多くの種類のものが公知であるが、本願においてはこれらの任意のものを使用することができる。また、これらの2種以上を併用して使用することもできる。これらの具体的なものを以下に例示する。
【0128】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0129】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0130】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0131】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0132】
エポキシ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体
アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0133】
(K)長鎖脂肪族の側鎖を有する単量体
炭素数12~16の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー〔例えば、共栄社化学(株)商品名のライトエステルL-7(アルキル(炭素数12~13)メタクリレート)、ライトエステルL(n-ラウリルメタクリレート)、日油(株)商品名のブレンマーLMA(n-ラウリルメタクリレート)、ブレンマーSLMA-S又はSH(アルキル(炭素数12~13個)のメタクリレート)、ブレンマーCMA(セチルメタクリレート)、ブレンマーLA(ラウリルアクリレート)、ブレンマーCA(セチルアクリレート)等を挙げることができる。
【0134】
更に、上述した工程(1)~(3)よりなるNADの製造方法においては、その他の単量体を併用するものであってもよい。
【0135】
上記その他のエチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;ビスコート3F、同3MF、同8F、同8MF(以上いずれも大阪有機化学社製、商品名)、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フッ化ビニルなどの含フッ素ビニル系単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルメタクリルアミドなどの含窒素ビニル系単量体;ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート; アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナトエチルメタクリレート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアナト基含有重合性不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0136】
上記有機溶媒は、重合される重合性不飽和モノマーは溶解するが、該重合性不飽和モノマーから形成される重合体は実質的に溶解しないものであることが好ましく、極性の小さいものが好ましく、例えば、VM&Pナフサ、ミネラルスピリット、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、ソルベントナフサなどの比較的溶解力の小さい脂肪族系又は芳香族系炭化水素類;n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソノナン、n-デカン、n-ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂環式炭化水素類などが用いられる。必要に応じて、極性溶剤であるエステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系などの溶剤を少量の割合で併用することもできる。
【0137】
上記方法における工程(1)~工程(4)において、重合性不飽和単量体を使用した重合は、重合開始剤を配合して、重合温度を30~150℃、好ましくは50~110℃とし、重合時間を通常2~10時間程度とすることが好ましい。
【0138】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化カプロイル、t-ブチルパーオクトエート、過酸化ジアセチルなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチルα,α´-アゾイソブチレートなどのアゾ系開始剤;ジイソプロピルペルオキシジカルボネートなどのジアルキルペルオキシジカルボネート;及びレドックス開始剤などを挙げることができる。重合開始剤の濃度は、重合性不飽和単量体に対して0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の範囲内であることが好適である。
【0139】
本発明で使用する非水分散樹脂粒子において、上記アルキルエステル基の含有量は、特に限定されず、例えば、1~80wt%の割合で導入されるものであることが好ましい。このような割合で導入することで、良好な硬化性能を得ることができる点で好ましい。
【0140】
(ブロック共重合体)
本発明においては、膜物性改質剤として、ブロック共重合体を使用するものであってもよい。
ブロック共重合体は、性質の違う2つ以上のポリマーを持つことから硬化時の膜物性を変えるという性質において優れるものであって、これを一部に使用することで本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用して得られた硬化物の物性を改善することができる。例えば、ABAのブロック共重合とした場合、Aは架橋性(反応性)があるがBは反応性を持たなくする(またその逆も可能である)またBの部分も非常に硬い樹脂設計にしたり、柔らかい樹脂に設計することも可能である。また、分子量、極性、硬化性、機能性を持たせることも可能となる。量的に多く配合する場合は膜物性改良剤となるが、少量の場合は添加剤としてレベリング性、消泡性、顔料分散剤など様々な形で利用ができる。
【0141】
本発明のブロック共重合体としては、重合性不飽和官能基を使用して得られる重合体であることが好ましい。ブロック重合体とは、特定の樹脂組成からなる構成単位A、別の樹脂組成からなる構成単位Bとした場合、Aからなる構造とBからなる構造とが交互に現れる樹脂構造をいう。これらの構造としては特に限定されず、任意のものを組み合わせて得ることができる。
【0142】
上述したブロック共重合体を得るための単量体として、上述した「アルキルエステル基を有する単量体」を使用して、ブロック共重合体も、エステル交換反応による樹脂の硬化に寄与するものとしてもよい。
【0143】
ブロック共重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、構成単位Aを構成する単量体の重合を行った後、リビングポリマーの状態で構成単位Bを構成する単量体を添加し、重合を行う。その後、リビングポリマーの状態で更に構成単位Aを構成する単量体を添加し、重合を行う、という工程を繰り返すことによって得ることができる。また、成長反応の速度の違いを利用してアクリレートを先に重合させてからメタクリレートを重合させる方法もある。
【0144】
また、ブロック共重合体においても、アルキルエステル基、水酸基を有するものとすることができる。
また、この場合、アルキルエステル基は、上述した
(1)三級アルキルエステル基
(2)上述した一般式(1)(3)で表されるような長鎖の側鎖を有するエステル基
のいずれかによって導入されるものであることが好ましい。
水酸基含有単量体としても、上述したものを使用することができる。更に、ブロック共重合体を構成する単量体としては、その他の上述した不飽和基含有単量体を併用するものとすることもできる。
【0145】
(ポリエステル樹脂)
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂を膜物性改質剤として配合するものであってもよい。ポリエステル樹脂を配合すると、ハイソリッド化や、膜物性改質できるという点で好ましいものである。ポリエステル樹脂は一般に柔らかく、硬化膜にした時に追従性が出てくる。特にPMCなど、硬化後に加工する場合は特に優位である。
【0146】
本発明において、膜物性改質剤として使用することができるポリエステル樹脂としては、以下のものを挙げることができる。
【0147】
ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコール成分との脱水縮合又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0148】
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0149】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0150】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0151】
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0152】
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0153】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0154】
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0155】
ポリエステル樹脂は、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150~約250℃で、約5~約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分との脱水縮合又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0156】
(その他の樹脂成分(A-2))
本発明においては、上述した膜物性改質剤(A-1)を樹脂組成物の一部として使用するものであるが、更にその他の樹脂成分(A-2)を含有するものである。
本発明においては、樹脂成分(A)がアルキルエステル基及び水酸基を有するものであることが必須である。そして、これらの官能基は、上述した膜物性改質剤(A-1)中に存在するものであっても、その他の樹脂成分(A-2)中に存在するものであっても差し支えない。より好ましくは、膜物性改質剤(A-1)、その他の樹脂成分(A-2)の両方において、これらの官能基が存在することが好ましい。このような状態のものとすることで、膜物性改質剤(A-1)とその他の樹脂成分(A-2)との間で反応が生じ、これらが一体化することでより良好な物性が得られるためであえる。
【0157】
膜物性改質剤(A-1)がNAD粒子である場合、上述したように、アルキルエステル基を有するものであることが好ましい。したがって、この場合は、その他の樹脂成分(A-2)は、少なくとも水酸基を含有する樹脂であることが好ましい。
【0158】
その他の樹脂成分(A-2)としては特に限定されず、塗料分野において、汎用される各種の水酸基含有樹脂を使用することができる。
使用することができる樹脂として、以下に樹脂を例示するが、樹脂はこれらに限定されるものではない。
【0159】
アクリルポリオール
アクリルポリオールは、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び上記(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a)を、公知の方法により共重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、等の重合方法を挙げることができる。
【0160】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、特に限定されないが、水酸基含有ビニル単量体を挙げることができる。このような水酸基含有ビニル単量体として特に代表的なものを以下に例示する。2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分などである。
【0161】
また、単量体としての水酸基含有単量体は、不飽和結合と近い位置(具体的には、水酸基と不飽和結合の間に原子数が2以下である)に水酸基を有するものではなく、原子数3以上50以下の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合には、水酸基が樹脂中で動きやすくなるため、エステル交換反応を生じやすいという点で好ましい。
【0162】
すなわち、水酸基含有単量体を原子数3以上50以下の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合、このものと、不飽和基含有エステル化合物に由来する構造との両方を有するものとすることで、低温硬化性能を得ることができるようになる。このような予想外の効果が得られるという点で、上述した水酸基含有単量体を使用することが好ましい。このような効果は、アルキルエステル基と水酸基の両方が樹脂中での自由度が高い状態になるため、エステル交換反応が生じやすくなることで得られると推測される。
【0163】
より具体的には、下記一般式(7)で表されるような構造を有する水酸基含有単量体を水酸基の一部又は全部に使用することが好ましい。
【0164】
【化27】
:1~10、
(式中、R31、R32、R33は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R34-[OH]m1で表される構造を表す。
34は、主鎖の原子数が3以上50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。)
【0165】
また、上記一般式(7)で表されるような化合物は、以下の一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸の誘導体であることが好ましい。
【0166】
【化28】
:1~10、
35は、H又はCH
36は、主鎖の原子数が3以上49以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。)
【0167】
このような主鎖の分子数3以上50以下の連結鎖を介して水酸基を有するものの具体例としては、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分等を挙げることができる。
【0168】
また、その他の樹脂成分(A-2)が、アルキルエステル基を有するものであっても差し支えない。この場合、アルキルエステル基は、上述した非水分散樹脂粒子において使用することができるとして例示した化合物に由来するものであることが好ましい。特に、エステル交換反応を生じやすい構成単位である、
(1)三級アルキルエステル基
(2)上述した一般式(1)(3)で表されるような長鎖の側鎖を有するエステル基
のいずれかによって導入されるものであることが好ましい。
【0169】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、下記モノマー(i)~(xix)等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0170】
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、等
【0171】
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:
イソボルニル(メタ)アクリレート等
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:
アダマンチル(メタ)アクリレート等
【0172】
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
【0173】
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
(ix)ビニル化合物:
N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
【0174】
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
【0175】
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:
アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
【0176】
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等
【0177】
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等
【0178】
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:
2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等
【0179】
(xviii)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:
4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等
【0180】
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数約4~約7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等
【0181】
本明細書において、「重合性不飽和基」は、ラジカル重合、またはイオン重合しうる不飽和基を意味する。上記重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0182】
アクリルポリオールを製造する際の水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)の割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.5~50重量%が好ましい。このような範囲内とすることで、適度な架橋反応を生じさせることができ、優れた塗膜物性を得ることができる。
上記下限は、1.0重量%であることがより好ましく、1.5重量%であることがさらに好ましい。上記上限は、40重量%であることがより好ましい。
【0183】
アクリルポリオールの水酸基価は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、1~200mgKOH/gであることが好ましい。上記下限は、2mgKOH/gであることがより好ましく、5mgKOH/gであることがさらに好ましい。上記上限は、180mgKOH/gであることがより好ましく、170mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0184】
このようなアクリルポリオールとしては、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては特に限定されず、例えば、DIC株式会社製のアクリディックA-801-P、A-817、A-837,A-848-RN、A-814,57-773、A-829、55-129、49-394-IM、A-875-55、A-870、A-871、A-859-B、52-668-BA、WZU―591、WXU-880、BL-616、CL-1000、CL-408等を挙げることができる。
【0185】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アクリルポリオール由来の水酸基数に対して、エステル化合物におけるエステル基は任意に配合できるが、1~200%(個数比)であることが好ましい。
【0186】
低分子量ポリオール
上記その他の樹脂成分(A-2)としては、上述したような樹脂に限られるものではなく、低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用することもできる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0187】
このような低分子量ポリオールを使用した熱硬化性樹脂組成物は、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。さらに低分子ポリオールは水溶性が強く、水系での硬化を目的とする場合は架橋剤として好適に使用できる。近年では環境問題が叫ばれており、VOCの低減を進める上では非常に重要な架橋剤として好適に使用ができる。
【0188】
上記その他の樹脂成分(A-2)としては、2以上のエステル基を有するエステル化合物を使用することもできる。上記エステル化合物としては特に限定されず、例えば、以下に例示したものを挙げることができる。
【0189】
活性メチレン基を有する化合物の誘導体として得られる化合物
下記一般式(9)で表される活性メチレン基を有する化合物は、活性メチレン基の反応によって、各種化合物(例えば、ビニル基を有する化合物、ハロゲン基を有する化合物等)との反応によって、アルキルエステル基を有する化合物を得ることができる。このような反応によって得られた化合物も、本発明の化合物(A)として使用することができる。
【0190】
【化29】
(式中、R40は炭素数50以下の1~3級のアルキル基を表す。
Xは、OR40基又は炭素数5以下の炭化水素基を表す。なお1分子中に2のR40が存在する場合、これらのR40は同一であっても相違するものであってもよい。)
【0191】
上記R40はその構造を特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0192】
このような活性メチレン基を有する化合物として具体的には、マロン酸エステル及びアセト酢酸エステル等を挙げることができる。これらの化合物をビニル化合物やハロゲン基含有化合物に付加させて得られた化合物を使用することができる。以下、これらについてそれぞれ説明する。
【0193】
活性メチレン基を有する化合物とビニル基含有化合物との反応によって得られた化合物
活性メチレン基を有する化合物は、マイケル付加反応によって二重結合に付加することができる。このような活性メチレン基を有する化合物による一般的なマイケル付加反応を下記式で示す。
【0194】
【化30】
【0195】
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(10-1)で表される化合物を得ることもできる。
【0196】
【化31】
【0197】
このような反応によって得られた化合物は、一般式(10)で表される構造及び/又は一般式(10-1)で表される構造を有するものであり、これは2以上のアルキルエステル基を有する化合物であることから、本発明の目的において特に好適に使用することができる。
【0198】
特に、上記一般式のビニル化合物として、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を使用した場合は、
【0199】
【化32】
との反応を生じることとなる。
上記一般式中、R40は、炭素数50以下の1~3級のアルキル基を示す。
45は、水素又はメチル基を示す。
46は、特に限定されず、目的に応じて任意の官能基とすることができる。
【0200】
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(12)で表される化合物を得ることもできる。
【0201】
【化33】
【0202】
上記一般式(12)で表される化合物は、原料の配合において(メタ)アクリル酸エステルと活性メチレン化合物とのモル比を調製することによって得ることができる。更に、これらのモル比を調製することで、上記一般式(11)で表される化合物と上記一般式(12)で表される化合物との混合物として得ることもできる。
このような反応によって得られたエステル化合物は、
【0203】
【化34】
の構造で表される構成単位を分子中に有することとなる。
【0204】
上述した反応において、原料として、2以上の不飽和結合を有するアクリル酸誘導体を使用することで、上述した一般式で表される構造(13)及び/又は(14)で表される構造を分子中に2以上有するエステル化合物とすることもできる。
すなわち、当該官能基を有する、
【0205】
【化35】
の一般式で表される構造を有する化合物を本発明において好適に使用することができる。このような化合物は、エステル交換反応性が高く、多くのCOOR基を分子中に有するために良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
上記一般式におけるn,nは、2~12であることが最も好ましい。また、L,M,Cは、当該化合物の分子量が3000以下となるような構造であれば特に限定されえず、水酸基、エステル基、エーテル基、ウレタン基、アミド基等の任意の官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0206】
また、上記「活性メチレン基を有する化合物と、ビニル基との付加反応によって得られる化合物」は、一分子中に2以上の不飽和結合を有する化合物を原料とするものを使用し、上記一般式(15)で表される構造及び/又は一般式(16)で表される構造を一分子中に2以上有するものであってもよい。
【0207】
活性メチレン基を有する化合物エステルに由来する構造を有する化合物は、多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルまたはアセト酢酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。
具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を好適に使用することができる。
なかでも、マロン酸ジエチルにジメチロールトリシクロデカンジアクリレートをマイケル付加させたものは、粘度が低く、熱硬化性樹脂に配合することで全体の粘度が下げられる。このことは高固形分化(ハイソリッド化)を目指すという点で好ましい。
【0208】
このような化合物は、各種の2以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体を原料として、活性メチレン基を有する化合物とのマイケル付加反応を行うことで得られるものである。上記「1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体」としては特に限定されるものではないが、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0209】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0210】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0211】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0212】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0213】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0214】
活性メチレン基を有する化合物とハロゲン含有化合物との反応によって得られた化合物これによって得られた化合物もまた、本発明において好適に使用することができる。特に、エステル基のカルボニル炭素が直接ハロゲン化された化合物を挙げることができる。ハロゲンとしては特に限定されず、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。このような化合物としては、以下の一般式(17)で表される反応式によって得られる化合物を挙げることができる。
【0215】
【化36】
、Rは炭素数50以下の1級又は2級アルキル基(RとRは同一でも良い)、Xは炭素数5以下の炭化水素基又は-OR基、Yはハロゲン、nは1又は2
【0216】
上述したような化合物に該当する化合物の具体例を以下に示す。
【0217】
【化37】

【0218】
【化38】
式中Rは同一または異なるアルキル基を表す。nは1から10を表す。
【0219】
上記化合物は、架橋点となるアルキルエステルが分子中に2以上存在するものであることが好ましい。すなわち、分子中のアルキルエステル基の数が多いほど、硬化後の樹脂の架橋密度が高いものとなるため、硬化物の硬度が良好となり、優れた物性の硬化物が得られる点で好ましい。
上記アルキルエステルは、分子中に3以上あることがより好ましい。
【0220】
一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物
上述した一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物も本発明において使用することができる。
【0221】
一般式(31)で表される官能基については、詳細に上述した。このような官能基は、一般式(32)で表される化合物を、カルボン酸と反応させることによって形成される。したがって、各種の公知のポリカルボン酸を上述した一般式(32)で表される化合物と反応させると、上記一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物を得ることができる。さらに、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸と反応させると、水酸基及び一般式(32)を有する化合物となり、これもまた、エステル交換による硬化反応を行う熱硬化性樹脂組成物の成分として使用することができる。
【0222】
上記化合物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物において使用するには、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましく、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、カルボキシル基及び水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸等を使用することができる。
【0223】
各種のポリカルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このようなポリカルボン酸を公知の方法によって上述した一般式(32)で表される官能基に変換した化合物も本発明において使用することができる。
【0224】
このような化合物を一般式(32)で表される官能基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0225】
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0226】
上記ポリカルボン酸のカルボン酸基を上記一般式(31)で表される構造に置換した化合物は、分子量が10000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6000以下、4000以下、2000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0227】
なお、このような化合物の一例として、ポリカルボン酸としてクエン酸を使用して、上述した反応を行った場合の化合物の一般構造を以下に示す。
【0228】
【化39】
【0229】
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有する化合物
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、上述したような製造方法によって得ることができる。
このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物は、エステル交換反応を硬化反応とする樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
【0230】
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物における硬化性官能基として使用するものである。したがって、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有するものであってもよいし、上述した一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基で表される官能基に加えて、更に、水酸基等を有するものであってもよい。
【0231】
上述したように、各種エポキシ化合物に対して、一般式(51)で表される反応又は一般式(54)で表される反応を行うことによって、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を導入することができる。
したがって、公知のエポキシ化合物に対して、上記一般式(54)で表される反応を行うことで得られた化合物も、本発明において使用することができる。
このような反応に使用することができるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系多官能液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールの誘導体エポキシ樹脂、ナフタレン骨格又は脂環式骨格含有ノボラック系エポキシ樹脂等が挙げられ、オキシラン環がグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0232】
更に、上述したようにカルボン酸又はその誘導体に対して一般式(53)で表される反応を行うことによって、エポキシ化合物を得ることができる。
そして、当該エポキシ化合物に対して、上記一般式(51)で表される反応を行うことで、一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。
したがって、各種のポリカルボン酸やヒドロキシカルボン酸に対して上述した反応を行うことによって、このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物を得ることができる。
【0233】
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるポリカルボン酸としては、特に限定されず例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、上記一般式(31)の構造有する化合物を得る際の原料として記載した各種ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
更に、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸も挙げることができる。
【0234】
このような化合物の具定例として、例えば、以下に表すような構造を有する化合物を挙げることができる。
【0235】
【化40】
【0236】
(多官能カルボン酸のアルキルエステル化物)
多官能カルボン酸又はその誘導体と、アルコールの反応によって得られる化合物も上述のエステル化合物として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
【0237】
【化41】
【0238】
各種の多官能カルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このような多官能カルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。エステル化は、上述した炭素数50以下のアルキル基によるものとすることができる。
【0239】
このような化合物をエステル化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができる。
という点で好ましい。
【0240】
ここで使用する多官能カルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、上記一般式(31)の構造を有する化合物を得る際の原料として記載した各種ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。
【0241】
本発明においては、上述した2以上のアルキルエステル基を有する化合物を併用して使用するものであっても差し支えない。また、原料としてはこれらの化合物の酸無水物を使用しても良い。
【0242】
本発明においては、上述した多官能カルボン酸のアルキルエステル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコールとの脱水縮合等の公知の方法を適用することができる。また、多官能カルボン酸の誘導体をアルキルエステル化する方法も挙げることができる。
【0243】
上記エステル化合物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4,000以下、2,000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0244】
本発明のその他の樹脂成分(A-2)は、上述した化合物のうちから2以上を併用して使用するものであってもよい。
【0245】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その他の樹脂成分(A-2)由来の水酸基数に対して、非水分散樹脂粒子におけるエステル基は任意に配合できるが、1~200%(個数比)であることが好ましい。
【0246】
(エステル交換触媒(B))
本発明の熱硬化型樹脂組成物は、エステル交換触媒(B)を含有するものである。すなわち、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得るために、エステル交換触媒(B)を配合する。
【0247】
上記エステル交換触媒(B)としては、エステル交換反応を活性化させることができるものとして公知の任意の化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸又はスルホン酸、ヘテロポリ酸などのような種々の酸性化合物;LiOH、KOH又はNaOH、アミン類、ホスフィン類などのような種々の塩基性化合物;PbO、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、酸化亜鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミナ、ジルコニウムアセチルアセトナート、酸化ジルコニウム、塩化鉄、塩化コバルト、塩化パラジウム、ジチオカルバミン酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、酸化チタン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、モノブチル錫オキサイドまたはモノブチル錫酸などのような種々の金属化合物;テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナートなどの4級アンモニウム塩等、テトラブチルホスホニウムブロミド、水酸化テトラブチルホスホニウムなどのホスホニウム塩等、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7などの強塩基等を挙げることができる。また、光や熱によって酸を発生させる光応答性触媒、熱潜在性触媒も使用することができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
本発明においては、上述したエステル交換触媒(B)から、2種以上を併用して使用するものであっても差し支えない。
【0248】
本発明においては、エステル交換触媒として金属化合物触媒を使用することが最も好ましい。当該金属化合物触媒は、金属種の選定や、その他の化合物との併用等によって、エステル交換反応性を得ることができる。更に、樹脂組成との組み合わせによって、適宜、必要な性能を得ることができる点で好ましい。
【0249】
上記金属化合物触媒は、亜鉛、スズ、チタン、アルミ、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物(B-1)であることが好ましい。このような化合物は、好適なエステル交換反応性を有する点で好ましい。これらの中でも、亜鉛、スズ、ジルコニウムが特に優れたエステル交換反応性を有する点で好ましいものである。
【0250】
上記金属化合物としては、アニオン成分として、金属アセチルアセトネートを使用すると、同種金属化合物よりも優れたエステル交換能が得られる傾向がある点で好ましい。例えば、亜鉛アセチルアセトネートやジルコニウムアセチルアセトネートは、特に好適に使用することができる。特に、ジルコニウムアセチルアセトネートは、極めて良好な触媒性能を発揮するものである。
【0251】
上記金属化合物を触媒として使用する場合、更に、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、スルホキシド化合物、ピリジン及びピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(B-2)を併用すると、触媒性能が向上する点でより好ましい。
これらの化合物を併用することで活性化された金属化合物を使用すると、上述した硬化開始温度及びゲル分率を得ることができる点で特に好ましいものである。
【0252】
このような効果が得られる作用は明らかではないが、金属化合物に化合物(B-2)が配位することで、触媒活性を向上させているものと推測される。したがって、化合物(B-2)としては、金属化合物に配位することができるような化合物を選択することが好ましい。
【0253】
上記有機リン化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィン化合物並びにこれらの種々のエステル、アミド及び塩を挙げることができる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのエステルであってよい。アミドは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのアミドであってよい。
【0254】
これらのなかでも、ホスホン酸エステル、リン酸アミド及び有機ホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが特に好ましい。これらの有機リン化合物を使用すると、エステル交換触媒機能が最も良好なものとなる。さらに具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、などの、有機ホスフィンオキシド化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(N,N-テトラメチレン)リン酸トリアミド等のリン酸アミド化合物、トリフェニルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド等の有機ホスフィンスルフィド化合物、等を好適に使用することができる。
【0255】
上記アルキル化尿素としては、特に限定されず、尿素、ジメチル尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。なお、ジメチルプロピレン尿素等のように、環状構造を有するものであってもよい。
【0256】
上記アルキル化チオ尿素としては、特に限定されず、ジメチルチオ尿素等を挙げることができる。
上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。
【0257】
上記ピリジン誘導体としては、キノリン、イソキノリン、ニコチン酸エステル等を挙げることができる。
【0258】
本発明のエステル交換触媒は、化合物(B-1)と化合物(B-2)とを(B-1):(B-2)=100:1~1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることがさらに好ましい
【0259】
上記化合物(B-1)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
上記化合物(B-2)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0260】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができることから、塩基性化合物を添加した熱硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
【0261】
すなわち、顔料分散剤等の添加剤としてアミン化合物が使用される場合がある。更に、塗料を水性化する場合は、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を導入し、これをアミン化合物等で中和して水溶化することが広く行われている。この場合、酸性触媒と併用することは困難であった。このことは、エステル交換触媒を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物の水性化の妨げとなる問題であった。本発明においては、塩基性条件下でも硬化させることができる。
【0262】
本発明においては、アルキルエステル基を限定されることはない。さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができることから、塩基性化合物を添加した熱硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
【0263】
すなわち、顔料分散剤等の添加剤としてアミン化合物が使用される場合がある。更に、塗料を水性化する場合は、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を導入し、これをアミン化合物等で中和して水溶化することが広く行われている。この場合、酸性触媒と併用することは困難であった。このことは、エステル交換触媒を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物の水性化の妨げとなる問題であった。本発明においては、塩基性条件下でも硬化させることができるため、水性化を図ることができる。
【0264】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を溶剤系塗料組成物として使用する場合であっても、多層塗膜のうちの一部の層として水性塗料を組み合わせて使用する場合がある。この場合、多層塗膜を同時に加熱硬化する場合、多層塗膜を形成するその他の層からアミンやアンモニア等が発生する場合がある。このような場合であっても、良好な硬化を行うことができるという点で好ましいものである。
【0265】
上記エステル交換触媒(B)の使用量は、膜物性改質剤(A-1)とその他の樹脂成分(A-2)との重量の合計に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。
【0266】
(配合割合)
上述した膜物性改質剤(A-1)とその他の樹脂成分(A-2)とは、(A-1):(A-2)=3:100~100:3の割合で混合することが好ましい。更に3:100~100:100することが好ましい。このような範囲で混合することによって、良好な性質を有する硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0267】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分に加えて、さらに、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0268】
但し、本発明においては上述したその他架橋剤は、むしろ使用しない方が好ましく、使用する場合であっても、その使用量は、30重量%以下であることが好ましい。すなわち、上述した架橋剤を使用すると、これによって、貯蔵安定性の低下や、ホルムアルデヒドによるシックハウス、イソシアネート化合物を使用したことによる価格の上昇等の問題を生じるおそれがある。本発明においては、これらの問題を生じることなく、安定して硬化性を確保することができ、優れた塗膜性能を得ることもできる。上記使用量は、25重量%以下がより好ましく、22重量%以下がさらに好ましい。これらを実質的に含有しないものであってもよい。なお、実質的に含有しないとは、他の架橋剤が主たる架橋を行い、膜物性を決めるものを意味して、単に補助的に使う場合はその範囲外を意味する。
【0269】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性塗料、熱硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。
【0270】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述の膜物性改質剤を含むものであるため、塗料の高固形分化(ハイソリッド化)を図ることができる点でも好ましい。塗料等の熱硬化性樹脂組成物の分野においては、塗装効率や排出溶媒量の低減という観点から、組成物中の固形成分の含有量を高めることが好まれている。この場合、固形分を増加させてもスプレー等の一般的な塗装方法に適用できるような粘性であることが好まれている。すなわち、高固形分化するために、低分子量にする必要があり、塗料物性が低下する原因になる。その物性を補うために、本発明のような膜物性調整剤を含むものであり、粘性が高くならず、膜物性を維持することが望まれる。
【0271】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上述の膜物性改質剤を配合すると、粘性を低く維持したままで高固形分化することができる点でも好ましい。具体的には、このような膜物性改質剤を使用することで、ハイソリッド化をすることができる。
【0272】
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0273】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、さらに好ましくは5重量%である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、さらに好ましくは300重量%である。
【0274】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0275】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0276】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0277】
上記熱硬化性塗料は、所望により、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0278】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0279】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0280】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0281】
上記熱硬化性塗料を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。自動車用塗料として使用する場合は、中塗り塗料、ベース塗料、クリヤー塗料等の任意の層の効果に用いることができる。
【0282】
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0283】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0284】
上記熱硬化性塗料の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
【0285】
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80~約180℃、より好ましくは約100~約170℃、そしてさらに好ましくは約120~約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10~約60分間、そしてより好ましくは約15~約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80~140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
【0286】
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。
一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
【0287】
本発明は、上述した熱硬化型樹脂組成物を硬化することによって形成されたことを特徴とする硬化膜でもある。
このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
【0288】
本発明は、アルキルエステル基を有する非水分散樹脂粒子であって、
アルキルエステル基は、少なくとも一部が下記一般式(1)で表される単量体に由来する骨格であることを特徴とする非水分散樹脂粒子でもある。
【0289】
【化42】
:1~10
(式中、R1、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造を表す
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0290】
当該非水分散樹脂は、膜物性改質剤(A-1)として詳述したとおりのものである。このような非水分散体は、新規のものである。更に、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物の配合成分として好適に使用することができるものである。
【実施例
【0291】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量部を表す。
【0292】
合成例1
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)150部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)150部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250) 150部、及び、スチレン50部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Aを得た。
【0293】
合成例2
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)240部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)105部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)110部、スチレン30部、及び、反応性乳化剤(第一工業製薬品:アクアロンKH-10)15部を混合した後、イオン交換水を200部混合しホモミキサーを用いて室温で1時間乳化を行い、モノマー乳化液を調整した。開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム15部と重亜硫酸ソーダ10部をイオン交換水に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにイオン交換水400部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下し重合を行った。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Bを得た。
【0294】
合成例3
エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート54部、t-ブチルアクリレート58部、炭酸カリウム38部、18-クラウン-6エーテル2部、及び、テトラヒドロフラン112部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーAを得た。
【0295】
合成例4
エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート54部、メチルアクリレート40部、炭酸カリウム38部、18-クラウン-6エーテル2部、及び、テトラヒドロフラン112部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーBを得た。
【0296】
合成例5
無水コハク酸180部、メタノール173部を4つ口フラスコに入れ60~70℃で無水コハク酸を溶解させる。NMRで無水コハク酸のピークが消えたことを確認し、60℃以上でメタノールを減圧除去し、コハク酸モノメチルを生成した。
コハク酸モノメチル190部、グリシジルメタクリレート205部、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、重合禁止剤を加え90℃で10時間以上反応させモノマーCを得た。
【0297】
合成例6
クロロ酢酸メチル90部、炭酸カリウム130部、ジメチルホルムアミド250部を混合し、混合液に対し、メタクリル酸78部を30~40℃で滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン8部を投入し、50℃で4時間撹拌した。反応終了後、水500部で水洗した。有機層にトルエン300部を投入し、水300部で4度水洗した。得られた有機層を減圧下蒸留し、モノマーDを得た。
【0298】
合成例7
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)150部、モノマーA150部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)150部、及び、スチレン50部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を110℃とした。滴下は2時間で行い、さらに110℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Cを得た。
【0299】
合成例8
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)150部、モノマーB150部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)150部、及び、スチレン50部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を110℃とした。滴下は2時間で行い、さらに110℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Dを得た。
【0300】
合成例9
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)150部、モノマーC150部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)150部、スチレン50部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を110℃とした。滴下は2時間で行い、さらに110℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Eを得た。
【0301】
合成例10
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)150部、モノマーD150部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)150部、スチレン50部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を110℃とした。滴下は2時間で行い、さらに110℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Fを得た。
【0302】
合成例11
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)250部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)175部、及び、スチレン75部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V-65)25部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)250部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Gを得た。
【0303】
合成例12
t-ブチルアクリレート24部、マロン酸ジ-t-ブチル40部、炭酸カリウム28部、18-クラウン-6エーテル1.5部、及び、テトラヒドロフラン64部を混合し、50℃で1時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Aを得た。
【0304】
合成例13
トリメチロールプロパントリアクリレート80部、マロン酸ジ-t-ブチル37部、炭酸カリウム56部、18-クラウン-6エーテル1.5部、及び、テトラヒドロフラン117部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Bを得た。
【0305】
合成例14
1、6-ヘキサンジオールジアクリレート31部、マロン酸ジメチル37部、炭酸カリウム42部、18-クラウン-6エーテル1.1部、及び、テトラヒドロフラン91部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Cを得た。
【0306】
合成例15
トリメチロールプロパントリアクリレート80部、マロン酸ジメチル23部、炭酸カリウム56部、18-クラウン-6エーテル1.5部、及び、テトラヒドロフラン117部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Dを得た。
【0307】
合成例16
ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)120部、n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)120部、ターシャリーブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルTB)60部、及び、2-メルカプトエタノール9部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル3部をトルエンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにトルエン300部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)18部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Aを得た。
【0308】
合成例17
ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)120部、n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)120部、モノマーA60部、及び、2-メルカプトエタノール9部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル3部をトルエンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにトルエン300部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)18部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Bを得た。
【0309】
合成例18
ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)120部、n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)120部、モノマーB60部、及び、2-メルカプトエタノール9部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル3部をトルエンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにトルエン 300部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)18部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Cを得た。
【0310】
合成例19
ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)40部、n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)40部、モノマーB 20部、ヒドロキシメタクリレート共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)20部、及び、α―メチルスチレンダイマー(日油株式会社品:ノフマーMSD)3部をモノマー混合液とし、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシオクトエート3部を芳香族系炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族系炭化水素(T-SOL100)100部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を4時間行った。マクロモノマー溶液Dを得た。
【0311】
合成例20
n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)120部、イソボルニルメタクリレード(共栄社化学(株)品:ライトエステルIB-X)120部、モノマーB60部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N))6部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル12部を酢酸ブチル30部に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン150部、酢酸ブチル120部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品カレンズAOI)7部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Eを得た。
【0312】
合成例21
n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)210部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)30部、モノマーC60部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル12部を酢酸ブチル30部に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン150部、酢酸ブチル120部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品カレンズAOI)7部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Fを得た。
【0313】
合成例22
n-ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルL)174部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)60部、モノマーD60部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N))6部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル12部を酢酸ブチル30部に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン150部、酢酸ブチル120部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品カレンズAOI)7部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Gを得た。
【0314】
合成例23
マクロモノマー溶液A60部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)35部、及び、2-ヒドロキシメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)5部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をトルエンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにトルエン100部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)5部、ジラウリン酸ジブチル錫0.1部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Hを得た。
【0315】
合成例24
マクロモノマー溶液B60部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)35部、及び、2-ヒドロキシメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)5部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をトルエンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにトルエン100部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を85℃とした。滴下は2時間で行い、さらに85℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)5部、ジラウリン酸ジブチル錫0.1部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Iを得た。
【0316】
合成例25
マクロモノマー溶液C60部、メチルアクリレート50部、及び、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートHOA)4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)95部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)4部、ジラウリン酸ジブチル錫0.1部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Jを得た。
【0317】
合成例26
マクロモノマー溶液D60部、メチルアクリレート50部、及び、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートHOA)4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)95部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)4部、ジラウリン酸ジブチル錫0.1部を入れ60℃で4時間反応させ、マクロモノマー溶液Kを得た。
【0318】
合成例27
マクロモノマー溶液A30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Aを得た。
【0319】
合成例28
マクロモノマー溶液B30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Bを得た。
【0320】
合成例29
マクロモノマー溶液C30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Cを得た。
【0321】
合成例30
マクロモノマー溶液D30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Dを得た。
【0322】
合成例31
マクロモノマー溶液E22部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)2.4部、アクリル酸1.2部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに分散し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン75部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行った。反応後キシレン60部を加え、減圧蒸留にてヘプタンを60部留去した後、窒素封入を行った。n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)18部、モノマーB10部、スチレン3部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部、キシレン15部をモノマー混合液とし滴下した。この時の重合温度は80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Eを得た。
【0323】
合成例32
マクロモノマー溶液F22部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)2.4部、アクリル酸1.2部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに分散し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン75部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行った。反応後キシレン60部を加え、減圧蒸留にてヘプタンを60部留去した後、窒素封入を行った。n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)18部、モノマーC10部、スチレン3部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部、キシレン15部をモノマー混合液とし滴下した。この時の重合温度は80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Fを得た。
【0324】
合成例33
マクロモノマー溶液G22部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)2.4部、アクリル酸1.2部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに分散し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン75部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行った。反応後キシレン60部を加え、減圧蒸留にてヘプタンを 60部留去した後、窒素封入を行った。n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)18部、モノマーD10部、スチレン3部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部、キシレン15部をモノマー混合液とし滴下した。この時の重合温度は80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Gを得た。
【0325】
合成例34
マクロモノマー溶液H30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Hを得た。
【0326】
合成例35
マクロモノマー溶液I30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Iを得た。
【0327】
合成例36
マクロモノマー溶液J30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Jを得た。
【0328】
合成例37
マクロモノマー溶液K30部、メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)18部、2-ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA)12部、メチルアクリレート23部、スチレン6部、及び、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEG)0.4部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.7部をヘプタンに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにヘプタン60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、非水系分散体Kを得た。
【0329】
合成例38
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)160部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)100部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)100部、スチレン50部、テトラエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステル4EG)15部、及び、反応性乳化剤(第一工業製薬品:アクアロンKH-10)15部を混合した後、イオン交換水を200部混合しホモミキサーを用いて室温で1時間乳化を行い、モノマー乳化液を調整した。開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム15部と重亜硫酸ソーダ10部をイオン交換水に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにイオン交換水500部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下し重合を行った。この時の重合温度を80℃とした。滴下は2時間で行い、さらに80℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Hを得た。
【0330】
合成例39
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)90部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)90部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)90部、及び、スチレン30部をモノマー混合液とし、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシオクトエート15部を芳香族炭化水素(T-SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL100)500部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500部、及び、α―メチルスチレンダイマー(日油株式会社品:ノフマーMSD)67部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を2時間行った。
その後、イソブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルIB)400部とターシャリーブチルパーオキシオクトエート20部を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を2時間行った。さらにn-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)90部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)90部、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)90部、及び、スチレン30部をモノマー混合液とし、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシオクトエート15部を滴下した。この時の重合温度を130℃とした。滴下は2時間で行い、さらに130℃で熟成を2時間行い、ポリマー溶液Iを得た。
【0331】
合成例40
攪拌可能なフラスコにヘキサヒドロキシフタル酸無水物100部、アジピン酸200部、トリメチロールプロパン55部、及び、1,6,-ヘキサンジオール200部を混合し、200℃で5時間反応させた。この時反応中出てくる水は分留管にて取り除いた。その後、芳香族炭化水素(T-SOL100)110部、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート110部で希釈し、ポリマー溶液Jを得た。
【0332】
合成例41
2-エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEH)120部、ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)120部、n-ブチルアクリレート120部、モノマーA60部、ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品 ライトエステルHOA)60部、及び、スチレン120部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル18部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン300部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、さらに100℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)18部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、ポリマー溶液Kを得た。
【0333】
合成例42
2-エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルEH)120部、ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルS)120部、n-ブチルアクリレート120部、モノマーB60部、ヒドロキシアクリレート(共栄社化学(株)品 ライトエステルHOA)60部、及び、スチレン120部をモノマー混合液とし、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル18部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン300部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、さらに100℃で熟成を4時間行った。その後、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品:カレンズAOI)18部、ジラウリン酸ジブチル錫0.15部を入れ60℃で4時間反応させ、ポリマー溶液Lを得た。
【0334】
実施例1~26、比較例1~10
下記の表のように混合し、PETフィルム(100μm)にアプリケーターを用いて400μm(wet)で塗工し、150℃×30分焼き付けを行い、得られた膜の応力‐ひずみ曲線から破断応力及び伸び率の測定の評価を行った。また同様にゲル分率の測定を行った。なお、表中の各物性は、以下の方法によって測定したものである。
【0335】
ゲル分率は、実施例で得られた皮膜をソックスレーを用いてアセトン還流中で30分間溶解を行い、皮膜の残存重量%をゲル分率として測定した。
ゲル分率は0~40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40~60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。
ゲル分率は60~80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80~100%を性能が優れているものとして◎とした。
【0336】
破断応力は得られた膜の応力‐ひずみ試験より、破断した時の最大応力とした。
破断応力が 0~20 MPaSで判断したものを -とした。
破断応力が 20~30 MPaSで判断したものを +とした。
破断応力が 30< MPaSで判断したものを ++とした。
【0337】
伸び率は得られた膜の応力‐ひずみ試験より、破断した時の最大伸び率とした。
伸び率が <5% のものを - とした。
伸び率が 5~10%のものを + とした。
伸び率が 10~20%のものを ++ とした。
【0338】


【表1】
phs:フェノールスルホン酸


【0339】
【表2】
U-820:ジオクチル錫ジアセテート(ネオスタンU-820、日東化成(株)品)
Zn(acac):亜鉛アセチルアセトネート
【0340】
【表3】
【0341】
【表4】
【0342】
表1~4より、本発明の熱硬化性樹脂組成物は良好な硬化性能を有し、得られた硬化膜の破断強度及び伸び率は良好であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0343】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各種塗料組成物や接着剤組成物、粘着剤組成物として使用することができる。