(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】動物患者用検査提案システム、動物患者用検査提案端末、動物患者用検査提案プログラム及び動物患者用検査提案方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20220104BHJP
【FI】
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2021533748
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012788
【審査請求日】2021-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018457(JP,A)
【文献】特開2008-009589(JP,A)
【文献】特開2016-024542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記
動物患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用検査提案システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記検査データベースは、更に流行性疾患又は季節性疾患に関する情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含んでいる、
動物患者用検査提案システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の動物患者用検査提案システムであって、
表示した前記検査候補の前記ユーザによる選択操作に基づいて前記評価値を更新する評価値更新手段を更に備える、
動物患者用検査提案システム。
【請求項4】
請求項3に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記評価値更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用検査提案システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用検査提案システム。
【請求項6】
携行可能な動物患者用検査提案端末であって、
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記
動物患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段を備える、
動物患者用検査提案端末。
【請求項7】
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記
動物患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段として、タッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用検査提案端末を機能させる、
動物患者用検査提案プログラム。
【請求項8】
コンピュータによる動物患者用検査提案方法であって、
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納するステップと、
前記動物患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出するステップと、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示するステップと、を含む、動物患者用検査提案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物患者固有の検査提案を行う動物患者用検査提案システム、動物患者用検査提案端末及び動物患者用検査提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人の患者の診察情報を電子化処理するためのソリューション(所謂、電子カルテシステム)として様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、病院や診療所等の医療機関及び介護施設並びに患者自宅等における受付、予診、診察、診療報酬計算、及び会計までの一連の業務を支援する方法が開示されている。
【0004】
一方、このような電子カルテシステムは、その扱いが不慣れな者にとっては作業を行うにあたって余計に時間がかかる場合がある。そこで、このような電子カルテシステムの入力作業を軽減する技術が提案されている。
【0005】
特許文献2及び特許分文献3に記載の技術もこのような電子カルテシステムに関するものであり、入力しようとしている内容を予め予測して表示することにより入力作業の負荷を低減するための技術である。
【0006】
また、特許文献4には、複数の患者の中から特定の疾患に対して比較的高い発症リスクを有する患者群を抽出して推定する技術が開示され、特許文献5には、既往歴とバイタルデータから異常(診断)を推定する技術が開示されている。いずれの技術も、入力された情報に基づいて何らかの推定を表示するという点で作業者の入力不可を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-191389号公報
【文献】特開2004-213678号公報
【文献】特開2017-162037号公報
【文献】特開2019-86839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、診察の対象が人ではなく動物である場合、その動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なる場合があり、それらを反映した新規な電子カルテシステムの提供が期待される。
【0009】
そこで、本発明は、このような獣医療の分野において、簡易で精度が高く且つ当該医療分野特有の課題を解決することのできる電子カルテシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、動物患者のための複数の検査候補を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、対応する前記検査候補の夫々に関連付けられた評価値に基づいて検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補を所定の順序でユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用検査提案システムが得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる電子カルテシステムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態による動物患者用検査提案システムが実行される動物病院端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態による動物患者用検査提案システムの機能ブロック図である。
【
図4】検査データベースに含まれる問診情報に関するデータセット(テーブル)例である。
【
図5】検査データベースに含まれる身体所見情報に関するデータセット(テーブル)例である
【
図6】検査データベースに含まれる現病歴情報に関するデータセット(テーブル)例である
【
図7】検査データベースに含まれる診断履歴情報に関するデータセット(テーブル)例である
【
図8】検査データベースに含まれる流行性疾患に関するデータセット(テーブル)例である
【
図10】本発明の検査データベースの評価値の更新方法を示す概念図である。
【
図11】本発明の電子カルテシステムの表示例を示す図である。
【
図12】
図11の表示において検査候補がレコメンドされた状態の画面例である。
【
図13】
図11表示において検査の登録を受け付けている状態の画面例である。
【
図14】
図13に続く、登録された検査が表示された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本発明の必須の構成要素であるとは限らない。
【0014】
[項目1]
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用検査提案システム。
[項目2]
項目1に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記検査データベースは、更に流行性疾患又は季節性疾患に関する情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含んでいる、
動物患者用検査提案システム。
[項目3]
項目1又は項目2に記載の動物患者用検査提案システムであって、
表示した前記検査候補の前記ユーザによる選択操作に基づいて前記評価値を更新する評価値更新手段を更に備える、
動物患者用検査提案システム。
[項目4]
項目3に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記評価値更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用検査提案システム。
[項目5]
項目3又は項目4に記載の動物患者用検査提案システムであって、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用検査提案システム。
[項目6]
携行可能な動物患者用検査提案端末であって、
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段を備える、
動物患者用検査提案端末。
[項目7]
問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、前記動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、
前記患者データベースに基づいて前記検査データベースを参照し、前記評価値に基づいて前記検査候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段として、タッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用検査提案端末を機能させる、
動物患者用検査提案プログラム。
【0015】
<概略>
本発明の実施の形態による動物患者用検査提案システム(以下「提案システム」という。)は、特に、動物病院内において獣医師等の獣医療従事者その他の作業者又は動物患者の飼い主等(以下「獣医師等」と包括して呼ぶ。)によって操作可能な携帯端末による操作を受け付けるように構成されている。
【0016】
提案システムは、主として、動物病院において行われる検査、診断、対応(処置、投薬、処方)の大きく3つのステップを同一システム上で処理することを可能とするためのものであり、本実施の形態においては、特に適切な検査をレコメンドする機能を説明する。
【0017】
提案システムは、特に、来院前後に取得される情報を含む動物患者に関する情報である動物患者情報が格納された動物患者データベースと、当該動物病院内で受けることが可能な検査情報が格納された検査データベースが利用可能に構成されている。本発明による提案システムは、動物患者情報と検査情報とを参照し当該動物患者にとって最適な少なくとも一の検査候補を抽出してユーザに提供することを主たる目的としている。
【0018】
<構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る提案システムが実行される動物病院端末300の機能ブロック図である。この提案システムは、一又は複数の動物病院端末のディスプレイ等を介して表示される。
【0019】
動物病院端末300は、動物病院が管理し、上述したユーザが利用する、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置であるが、スマートフォンや携帯電話、PDA等により構成しても良い。特に、院内において簡易に携行可能であることや、動物患者等の毛等が触れる環境を考慮すると、所謂タブレット端末であることが好ましい。
【0020】
また、衛生面の観点からも、音声認識機能によって入力操作が可能とされていることがなお好ましい。この場合、当該音声認識機能にあっては、特に獣医療分野における専門用語や略語等の認識に特化されていることが好ましい。
【0021】
なお、本実施の形態による提案システムは、動物病院端末300のみでその機能が完結するものを説明するが、一部の機能をサーバ装置又は動物患者の飼い主の端末において実行することとしてもよい。この場合、動物病院端末300において実行されるプログラムの一部を、サーバ端末又は飼い主の端末にインストールすることで、提案システム全体を論理的に構成及び実行することとしてもよい。
【0022】
<動物病院端末300のハードウェア構成>
図1に示されるように、動物病院端末300は、通信部310と、表示操作部320と、記憶部330と、制御部340とを備えている。なお、当該構成は一例であり、その他の構成を備えていてもよい。
【0023】
通信部310は、ネットワークを介して他の端末と通信を行うための通信インタフェースであり、種々の通信プロトコルを採用することが可能である。
【0024】
表示操作部320は、ユーザが指示を入力し、制御部340からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、動物病院端末300がタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部320は、記憶部330に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である動物病院端末300により実行される。
【0025】
記憶部330は、各種制御処理や制御部340内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAMやROM、その他ストレージ等から構成される。また、記憶部330は、他の端末との通信内容を一時的に記憶する。
【0026】
制御部340は、記憶部330に記憶されているプログラムを実行することにより、動物病院端末300の全体の動作を制御するものであり、CPUやGPU等から構成される。
【0027】
<検査レコメンドモジュールの機能ブロック>
図2は、本実施の形態による提案システムにおける検査レコメンドモジュール200を示す機能ブロック図である。検査レコメンドモジュール200は入力又は取得された所定の情報から当該動物患者にとって受けるべき最適な検査をレコメンドする機能を構成するものであり、具体的には
図2における記憶手段、抽出手段及び表示手段とが一体となって機能するモジュールである。
【0028】
図示されるように、検査レコメンドモジュール200は、動物患者データベース204と、検査データベース206を含む記憶手段202を有している。なお、記憶手段202には、提案システムを構成する他の情報が格納されていてもよい。
【0029】
動物患者データベース204は、本実施の形態による提案システムが管理している動物患者情報の現在及び過去の情報を格納している。動物患者データベース204に格納されている動物患者情報には、当該動物病院のみならずグループ経営やグループ管理がされている他の動物病院の動物患者の情報が含まれていてもよい。
【0030】
一方、検査データベース206は、動物患者に実施することが可能な検査候補と、それに関連付けられた評価値とが含まれている。
【0031】
抽出手段208は、患者データベース204に基づいて前記検査データベース206を参照し、対応する検査候補の夫々に関連付けられた評価値に基づいて検査候補を抽出する。抽出された検査候補は、例えば、タッチパネル等の表示手段を介してユーザに表示され、選択操作を受ける。
【0032】
表示手段210は、
図1における表示操作部320の一部を構成するものであり、本実施の形態においてはタッチパネルが採用されている。表示手段210は、抽出された検査候補をユーザに対して表示する。なお、本実施の形態におけるシステムは、例えば、動物病院内における手術室や検査室等様々な場所において利用される可能性があることから、ユーザに対するレコメンド情報やその他の通知の提供方法としては視覚的な表示ではなく音声や警告音等の聴覚的な提供方法としてもよい。この場合、音声等の提示は、視覚的な提示と同時にはまたは別に行うこととしてもよい。
【0033】
評価値更新手段212は、他の端末における他のユーザによる選択操作に基づいても記評価値を更新する。
【0034】
<動物患者データベースの詳細>
動物患者データベース204に含まれる各動物患者情報は、例えば、
図3に示されるような情報が含まれている。本実施の形態における動物患者データベース204は、動物患者に動物患者IDと飼い主IDとが関連付けて管理される。ここで、同一の飼い主IDに対して複数の動物患者IDが関連付けられることも起こり得る。
【0035】
動物患者毎のカルテデータは、受診日毎に管理される。例えば、動物患者ID1000で識別されるユーザの電子カルテデータとして、名前、性別、種別、サイズ等の動物患者基本情報502、問診情報503、身体所見情報504、現病歴情報505、検査履歴情報506、診断履歴情報507、処置履歴情報508、投薬履歴情報509、処方履歴情報510、メモ512、及び動物患者の動画/画像等の情報513が含まれる。ここで、動物患者基本情報502、問診情報503及びペットの動画/画像等の情報513の入力内容は、携帯端末から受信されたデータで構成されていてもよい。一方、身体所見情報等それ以外の動物患者情報は動物病院端末300から受信されたデータで構成することができ、また、獣医師等の担当者が、動物患者の飼い主から取得した情報に基づいて動物病院端末300に入力することで受信されたデータで構成することができる。
【0036】
特に、上述した動物患者基本情報502は、当該動物患者が該当する動物種情報を含んでいる。動物種情報の例としては、イヌ、キツネ、タヌキ、フェネック、ネコ、ハムスター、モルモット、ハツカネズミ、シマリス、タイワンリス、プレーリードッグ、モモンガ、ウサギ、サル、ミニブタ、フェレット、スカンク、ロバ、ウマ(ミニチュアホース、ファラベラ)、九官鳥、ジュウシマツ、セキセイインコ、オカメインコ、ワカケホンセイインコ、文鳥、鳩、ミズガメ、リクガメ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、ワニ、カエル、サンショウウオ、金魚、錦鯉、熱帯魚、エビ、カブトムシ、クワガタムシ、スズムシ、水生昆虫、カマキリ、クモ、サソリ、サソリモドキ、ウデムシ、ヒヨケムシ、ムカデ、ヤスデなどが例示されるがこの限りではない。更に、イヌにおいても、犬種(犬の品種)等の下位概念が存在し得る。
【0037】
問診情報503は、飼い主から取得する主観的な情報(主訴)である。例えば、「ご飯をあまり食べていない」「足に擦り傷ができている」「太ってきた」「元気がない」「鼻水が出ている」等であり、飼い主が所有する動物を見たときに観察される症状である。問診情報503は、動物病院に来院した際に問診表や問診用端末等を利用して飼い主から取得することとしてもよいし、飼い主が所有する携帯端末等で事前に入力してもらい取得することとしてもよい。
【0038】
身体所見情報504は、動物病院等において獣医師等が調べることができ、客観的な数値で表せる身体情報である。例えば「体重」「体温」「心拍」「呼吸数」等であり、以下に説明する現病歴情報505とともに必要な検査を抽出するために必要な情報である。
【0039】
現病歴情報505は、獣医師等が聴取した主観的な情報である。現病歴情報505は、上述した問診情報503と同一になる場合も多いが、例えば「喉が赤い」というように飼い主だけでは実際に確認するのが困難な項目も含まれている。また、問診情報503では「血尿が出ている」という情報が取得されたとしても、獣医師等によって診察したところ「肛門から出血している」という現病歴が聴取されることもある。
【0040】
検査履歴情報506は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた検査の履歴を含んでいる。検査履歴には、過去の通院において受けたことのある検査や、検診において受けたことのある検査などを含めることができる。その際に、検査に対する反応(嫌がったかどうか等、検査自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。当該情報は、検査をレコメンドする際の重要な指標になり得るからである。検査候補は、炎症検査、生化学検査、心機能検査、内分泌機能検査、アレルギー検査、感染症検査、微生物検査、形態学的検査と言ったように目的別にカテゴリ化されていてもよいし、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、細胞診検査、内視鏡検査(胃カメラ、直腸鏡)、CT検査(画像検査)、病理検査のように検査の特性に応じてカテゴリ化されていることとしてもよい。
【0041】
診断履歴情報507は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた診断の履歴を含んでいる。過去に罹患した具体的な疾患名や怪我等の情報を含めることができる。診断履歴には、過去の通院において疑われた診断に関する情報を含めてもよい。
【0042】
処置履歴情報508及び投薬履歴情報509は、当該動物患者が過去に受けた処置履歴/投薬履歴情報を含んでいる。この場合においても、当該対応に対する反応(嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。項目としては、肛門腺処置、爪切処置、足裏処置、耳処置、毛抜き、眼科処置、歯科処置、エリザベスカラー・腹帯など、鍼灸処置、留置、便出し、抜糸、消毒、酸素処置、催吐処置、緊急蘇生処置、水抜き、強制給餌、洗浄、圧排、マッサージ、マイクロチップ、トリミング、カテーテル、リハビリ、手術、麻酔、入院、注射、輸血、点滴、検査、放射線治療、各種ドック、介護、衛生処置、シャンプー、しつけ、サプリメント、おやつ、避妊、去勢、ノミダニ駆除、狂犬病薬、ワクチン、フード、内用薬、点耳薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬(軟膏・クリーム)、外用薬(消毒薬・スプレー)、外用薬、フィラリア予防などが例示できるがこの限りではない。
【0043】
処方履歴情報510は、当該動物患者が過去に処方された薬剤等の情報を含んでいる。この場合、自宅にて処方された薬剤を服用できたか否か、嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報をユーザの携帯端末を介して取得することとしてもよい。
【0044】
<検査データベースの詳細>
図4に示されるように、検査情報データベース206は、
図4に例示されるようなデータセット(テーブル)を持っている。データセットは、上述した動物患者情報に含まれる情報(問診情報、現病歴情報、身体所見情報等々)に関連付けられた一以上の検査名(検査候補)との対が含まれている。
【0045】
図示されるように、
図4の問診情報のデータセットには、問診情報(下痢、嘔吐・・・等)に対して検討すべき一以上の検査候補(便検査、血液検査・・・等)とそれぞれの検査を行うことの確からしさとしての評価値とが関連付けられて保持されている。
【0046】
また、
図5の身体所見情報のデータセットには、身体所見情報(体温≧40度・・・等)に対して検討すべき一以上の検査候補(レントゲン検査・・・等)とそれぞれの検査を行うことの確からしさとしての評価値とが関連付けられて保持されている。
【0047】
図6の現病歴情報データセットには、現病歴情報(下痢、嘔吐・・・等)に対して検討すべき一以上の検査候補(便検査、血液検査・・・等)とそれぞれの検査を行うことの確からしさとしての評価値とが関連付けられて保持されている。
【0048】
図7の診断履歴情報データセットには、診断履歴情報(膵炎、胃炎・・・等)に対して検討すべき一以上の検査候補(CPL検査、血液検査・・・等)とそれぞれの検査を行うことの確からしさとしての評価値とが関連付けられて保持されている。
【0049】
図8の流行性疾患データセットには、流行性疾患(パルボウイルス・・・等)又は季節性疾患の少なくともいずれかに対して検討すべき一以上の検査候補(便検査・・・等)と、それぞれの検査を行うことの確からしさとしての評価値が保持されている。
【0050】
図示されたデータセットは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、診断履歴情報、流行性疾患情報又は季節性疾患情に関するものであったが、検査履歴情報、処置履歴情報、投薬履歴情報、処方履歴情報報に関するものも用意されている。この場合、各項目に対応する検査候補とその検査を行うことの確からしさとしての評価値が関連付けられていればよい。
【0051】
このほかに、検査データベース206は、当該動物病院固有の情報として、動物病院の設備情報又は備品等に関する施設情報を含んでいてもよい。施設情報は、そもそも当該検査がこの病院で受けることができるのかどうかの判断に利用される。これにより、例えば、ある検査を行うための検査機器がないにもかかわらず、その検査がレコメンドされることがなくなる。なお、この場合、例えば、ネットワークで接続された他の病院において完備していればその旨を情報として関連付けることとしてもよい。これにより、当該医院では受けることができない検査であっても、当該他の特定の病院で検査を受けることができる旨をアドバイスすることが可能になる。
【0052】
また、検査候補は、複数の検査、例えば、血液検査とレントゲン検査等を組み合わせて行うことが多い場合には、その組み合わせを一つの検査候補として記憶していてもよい。
【0053】
<処理のフロー>
図9は、検査レコメンドモジュールの処理の流れを説明するフローチャートの一例である。検査レコメンドモジュールは、動物患者データベースから動物患者情報を読み込み(S101)、問診情報、身体所見情報、現病歴情報等を取得する(S102)。その後、検査データベースを参照して(S103)、対応する検査候補を抽出する(S104)。
【0054】
図9を再度参照して上記検査候補を抽出するまでの処理を詳細に説明する。例えば、来院したユーザから問診情報として「下痢」という情報が取得された場合、
図4より、便検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査が検討すべき検査候補として挙げられる。その後、獣医師等の診察により現病歴を聴取したところ、同様に「下痢」と判断された際にも、
図6より、便検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査が検討すべき検査候補として挙げられる。この場合、問診情報と現病歴情報との便検査それぞれの評価値が90であり合算すると最も高い評価値を構成することから、便検査が検査候補として優先的に提案される。一方、当該動物患者の診断履歴情報を参照したところ、過去に「膵炎」と診断されていた場合、
図7より、CPL検査、血液検査の評価値が考慮され、検討すべき検査候補としてこれらの検査の優先度が上がる。
【0055】
検査候補を抽出する方法は、評価値を単純に合算することとしてもよいが、検査候補を検討する際により重要視すべき情報については所定の重みづけをした上で合算等の演算を行うこととしてもよい。例えば、上述した例において過去に「膵炎」と診断されていた場合、膵炎が再発したかどうかの判断に必要な検査(
図7におけるCPL検査等)の提案の優先度を上げることができる。このような場合、抽出の方法として、各情報を参照して得られるそれぞれの評価値に所定の係数(重みづけ)を乗じることとすればよい。即ち、
図4~
図8のそれぞれから得られる評価値(以下、それぞれ評価値(a)~評価値(e)とする)にそれぞれ適切な係数を乗じることとすればよい。例えば、各評価値を合算してより高い評価値に対応する検査候補から優先的に提案する場合。以下のようにα~δが任意の係数として乗じられた数式として表現することができる。
評価値(a)×α+評価値(b)×β・・・・評価値(d)×δ・・・
【0056】
このように、複数の検査候補を提案することにより、検査名称等の入力作業を省力化できると共に、検討すべき検査候補から検査候補の漏れを防止できる。特に、経験年数が多い者や実績が高いと評価された者(「ベテラン獣医師等」と呼ぶ)と、経験年数が少ない者や実績が高くないと評価された者(「新人獣医師等」と呼ぶ)の間における、判断スキルの偏りを是正し、標準化することができる。
【0057】
抽出された検査候補はディスプレイに表示される(S105)。この際、評価値がより高い検査候補ほど上位に表示することとしてもよい。表示した検査候補のうち、ユーザから選択を受け付けることにより処理は終了する(S106)。
【0058】
本実施の形態において、候補抽出部(一時候補抽出部)は、複数の検査候補を抽出することとしてもよい。この場合、例えば、いずれの検査が好ましいかどうかを特定の指標(数値やランク等)と共に表示することとして、優先度に関する情報をも提供することとしてもよい。
【0059】
<評価値の更新>
図2に示されるように、評価値更新手段212は、上述した検査データベース206に含まれる評価値を、検査候補のユーザによる選択操作の事実に基づいて変更・更新することとしてもよい。これによりレコメンド機能の正確性を向上させることができる。
【0060】
また、評価値更新手段212は、他の端末(同一病院内の別の端末であるか、同一システムに接続された他の病院内の端末であるかを問わない)における他のユーザによる選択操作に基づいても評価値を変更・更新することとしてもよい。
【0061】
評価値の更新方法は、種々の方法により行うことができる。もっとも簡便な考え方としては、本システムを利用して同一事例において実際に選択され実施された検査候補について評価値を増加させる方法が考えられる。一方、提案されたものの選択されず実施もされなかった検査候補については評価値を変動させない又は減少させればよい。
【0062】
上述したベテラン獣医師等や新人獣医師等に所定の指標(経験年数等)を関連付けて利用して記憶しておき、ベテラン獣医師等による選択操作による評価値の増減に当該指標に応じた重みづけをすることとしてもよい。
【0063】
本実施の形態における評価値更新手段212は、評価値自体の更新のみならず、上述した検査候補の抽出の際に評価値に付与する重みづけ(α~δ)や、選択操作の主体を示す指標(経験年数)もまた更新の対象とする。
【0064】
より具体的に説明すると、
図10に示されるように、例えば、診察時における現病歴の聴取の際に「下痢」と認定した場合、本システムの現病歴情報データセットTab1の現病歴情報「下痢」に対応する「便検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査」がレコメンド候補として特定される。
【0065】
この時、それぞれ(同一動物種の)別の事案の診察をしていた獣医師A及び獣医師Bの端末においては、共に、候補として「便検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査」が表示される(Tab2a、Tab2b)。なお、本実施の形態においては、図示される評価値自体の表示は行われないが、場合によっては評価値又はこれに代わる確信度を表す尺度を併せて表示することとしてもよい。これにより、どの程度必須の検査なのかを定量的に伝えることが可能となる。
【0066】
獣医師Aが表示された検査候補から「便検査、血液検査」の2つを選択した場合、当該検査オーダー処理が開始される(図示せず)。ここで、獣医師Aはベテラン獣医師等であり、経験や実績も高いことが本システムに登録されている場合、獣医師Aが選択した「便検査、血液検査」はこのようなケースにおける選択肢としての優先度を上げてもよいという考え方から、これら2つの検査候補の評価値を+3だけ増加させるように評価値を更新する(Tab3a)。
【0067】
一方、獣医師Bも表示された検査候補から「便検査、血液検査」の2つを選択した場合、当該検査オーダー処理が開始される(図示せず)。ここで、獣医師Bは新人獣医師等であり、経験や実績の年数が浅いことが本システムに登録されている場合、獣医師Bが選択した「便検査、血液検査」はこのようなケースにおける選択肢としての優先度を上げてたとしても、ベテラン獣医師等によるときよりは増加量は少なくすることが好ましい。従って、これら2つの検査候補の評価値を+1だけ増加させるように評価値を更新する(Tab3b)。
【0068】
上述した説明において獣医師Aと獣医師Bとの違いは、ベテラン獣医師等か新人獣医師等かの違いであったが、例えば、診察対象の動物種の専門医かどうかによって評価値の更新の量を変えることとしてもよい。例えば、診察対象が所謂エキゾチックアニマル(犬又は猫以外の動物種)であり、
図10に例示される獣医師Aが犬の獣医師、獣医師Bがエキゾチックアニマル専門医であった場合、獣医師Bが選択した検査候補の方の評価値を上げることが好ましい。
【0069】
なお、本実施の形態においては、動物種に関連付けられたそれぞれのデータセット(
図4乃至
図8等、参照)が用意されており、動物患者情報に含まれる動物種に基づいて対応するデータセットが参照される。即ち、例えば、診察対象が犬の場合に参照すべきデータセットの内容・範囲と、診察対象がエキゾチックアニマルの場合に参照すべきデータセットの内容・範囲とは異なるものであってもよい。
【0070】
<表示例>
続いて、提案システムの表示例を説明する。
図11に示されるように、動物病院端末の画面は、対象とする動物患者毎に、少なくとも、受診日毎に生成された診療データを表示する診療データ表示領域400と、受診日を示す情報を表示する日付表示領域410で構成される。また、領域410には、動物患者の画像、動物患者の診療ステータス(診療中、検査中、診療終了、検査完了)等の情報を表示することができる。
【0071】
診療データ表示領域400には、問診情報(状況、出血、期間、食欲、体調、嘔吐の有無、下痢の有無等)、身体所見、病歴、検査、診断、処置&投薬、処方、メモ等の診療データがそれぞれ入力可能に表示される。また、後述するように、診療データに含まれる各々の項目について、情報を入力可能な領域が設けられ、獣医師等による入力によって診療データが更新される。
【0072】
図12に示されるように、問診、身体所見、病歴の入力が終わると、検査の領域に「糞便検査、パルボウィルス検査、血液検査、レントゲン検査、バリウム検査、ホルモン検査」と言った検査候補がレコメンドされ表示される。なお、表示のタイミングとしては、問診、身体所見、病歴の入力が終わる前に適宜レコメンド機能が実行されていてもよい。
【0073】
図13に示されるように、検査を入力することも可能である。この場合、「け」と入力すると「血液検査」というように検査の予測がされていてもよい。検査を確定すると
図14に示されるように、検査領域に選択した検査名が表示される。
【0074】
以上のようなユーザインターフェースを含む提案システムを提供することにより、動物病院の医師等の担当者は、診療データの入力とともに一元的な作業を行うことができる。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。これにより、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することができる。
【0075】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
200 検査レコメンドモジュール
202 記憶手段
204 動物患者データベース
206 検査データベース
208 抽出手段
210 表示手段
212 評価値更新手段
300 動物病院端末
【要約】
【課題】より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供すること。
【解決手段】本発明による動物患者用提案システムは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを二以上含む動物患者データベースと、動物患者データベースに含まれる各情報、当該各情報に対応して検討すべき検査候補、当該検査候補に関連付けられた評価値を含む検査データベースとが格納されている記憶手段、患者データベースに基づいて検査データベースを参照し、評価値に基づいて検査候補を抽出する抽出手段、抽出された前記検査候補をユーザに対して表示する表示手段を備える。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。
【選択図】
図5