(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】レンズアセンブリ用の紫外線遮断コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 183/08 20060101AFI20220127BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220127BHJP
C09D 5/32 20060101ALI20220127BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220127BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D5/00 Z
C09D5/32
C09D7/61
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2019533112
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 US2017065525
(87)【国際公開番号】W WO2018118471
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ファディーヴ,アンドレイ ゲナディエヴィッチ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123116(JP,A)
【文献】特表2003-531924(JP,A)
【文献】特開2007-009079(JP,A)
【文献】特開2010-111793(JP,A)
【文献】特開2007-084605(JP,A)
【文献】特開2009-256563(JP,A)
【文献】特開2010-202731(JP,A)
【文献】特開2012-144630(JP,A)
【文献】国際公開第2008/007779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C08G 77/00- 77/62
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線遮断コーティングの水性配合物であって、
15質量%以上65質量%以下の水、
30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および
5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマー、
を含む水性配合物。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択され、
前記アミノアルキルシルセスキオキサンが、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノエチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せからなる群より選択さ
れる、請求項1記載の水性配合物。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、1.5nm以上120nm以下の平均粒径を有する、請求項1または2記載の水性配合物。
【請求項4】
紫外線遮断コーティングを調製する方法であって、
15質量%以上65質量%以下の水、
30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および
5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマー、
を混合することによって、請求項1から3いずれか1項記載の水性配合物を形成する工程;
前記水性配合物を基体に施す工程;および
前記基体に施された水性配合物を硬化させる工程;
を有してなる方法。
【請求項5】
前記水性配合物が、100℃以上150℃以下の温度
で硬化される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
光学機器であって、
筐体;
前記筐体内に位置する少なくとも1つのレンズ素子;
前記少なくとも1つのレンズ素子の少なくとも一部と前記筐体との間に位置する注封材料;および
前記少なくとも1つのレンズ素子と前記注封材料との間に位置する紫外線遮断コーティング;
を備え、
前記紫外線遮断コーティングは、30質量%以上90質量%以下の金属酸化物粒子および10質量%以上70質量%以下のシルセスキオキサンを含む、光学機器。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、請求項6記載の光学機器。
【請求項8】
前記紫外線遮断コーティングが、10質量%以上25質量%以下のシルセスキオキサンおよび40質量%以上60質量%以下の金属酸化物粒子を含む、請求項6または7記載の光学機器。
【請求項9】
前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、5%以下の透過率を有する、請求項6から8いずれか項記載の光学機器。
【請求項10】
前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、1%以下の透過率を有する、請求項6から9いずれか1項記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/437414号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、紫外線遮断コーティングに関し、より詳しくは、レンズアセンブリ内のレンズ素子に容易に施せる紫外線遮断コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
接着剤を使用して材料を互いに結合する必要があり、硬化後に接着剤が揮発性有機材料を放出することが望ましくない用途が数多くある。硬化後に揮発性有機材料を放出する過程は、しばしば、ガス放出(outgassing)またはオフガス生成(offgassing)と呼ばれる。ガス放出された化合物は、光学面上で凝縮し、光の透過に悪影響を与え得る。
【0004】
多くの接着剤またはレンズ注封用途について、熱膨張係数が異なる材料(基体)を互いに結合する必要がある。これらの用途において、その接着剤または注封材料は、温度が変化するときに2つの異なる基体の伸縮を可能にし、それでも、2つの基体の互いの接着を維持しなければならない。これには、軟質で、低モジュラスの、低Tgのゴム類材料を使用する必要がある。軟質で柔軟なゴム状固体に硬化し、それでも、硬化後にガス放出の少ない材料を配合することは、非常に難しい。このことは、硬化した材料が、優れた熱安定性、酸化安定性、および加水分解安定性も有さなければならない場合、特に当てはまる。
【0005】
注封材料の上記基準を満たす材料には、時間の経過と共に劣化する傾向がある。特に、注封材料は、一般に、高分子から形成されており、時間の経過と共に、注封材料中の高分子結合が分解し、オリゴマーを形成し、そのオリゴマーは、高分子注封材料の有益な性質を持たないことが分かっている。高分子注封材料のこの分解は、レンズアセンブリにおいて、特にリソグラフィー装置におけるレンズアセンブリにおいて著しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、高分子注封材料の分解を防ぐ材料が依然として必要とされている。特に、リソグラフィー装置におけるレンズアセンブリなどのレンズ素子に容易に施せる高分子注封材料の分解を防ぐ材料が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施の形態によれば、紫外線遮断コーティングの水性配合物は、15質量%以上65質量%以下の水、30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを含む。
【0008】
別の実施の形態において、紫外線遮断コーティングを調製する方法は、15質量%以上65質量%以下の水、30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを混合することによって、水性配合物を形成する工程を有してなる。この水性配合物は基体に施され、その基体に施された水性配合物は硬化される。
【0009】
さらに別の実施の形態において、光学機器は、筐体;その筐体内に位置する少なくとも1つのレンズ素子;その少なくとも1つのレンズ素子の少なくとも一部と筐体との間に位置する注封材料;および少なくとも1つのレンズ素子と注封材料との間に位置する紫外線遮断コーティングを備える。その紫外線遮断コーティングは、30質量%以上90質量%以下の金属酸化物粒子および10質量%以上70質量%以下のシルセスキオキサンを含む。
【0010】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0011】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。その添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ここに開示され記載された実施の形態による光学機器のレンズアセンブリの概略図
【
図2】ここに開示され記載された実施の形態による光学機器の第2のレンズアセンブリの概略図
【
図3】ここに開示され記載された実施の形態による光学機器のレンズ積層体の概略図
【
図4A】ここに開示され記載された実施の形態による、CuOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図4B】ここに開示され記載された実施の形態による、CuOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図4C】ここに開示され記載された実施の形態による、CuOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図4D】ここに開示され記載された実施の形態による、CuOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図5A】ここに開示され記載された実施の形態による、Fe
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図5B】ここに開示され記載された実施の形態による、Fe
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図5C】ここに開示され記載された実施の形態による、Fe
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図5D】ここに開示され記載された実施の形態による、Fe
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図6A】ここに開示され記載された実施の形態による、Mn
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図6B】ここに開示され記載された実施の形態による、Mn
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図6C】ここに開示され記載された実施の形態による、Mn
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図6D】ここに開示され記載された実施の形態による、Mn
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図7A】ここに開示され記載された実施の形態による、CeO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図7B】ここに開示され記載された実施の形態による、CeO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図7C】ここに開示され記載された実施の形態による、CeO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図7D】ここに開示され記載された実施の形態による、CeO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図8A】ここに開示され記載された実施の形態による、NiOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図8B】ここに開示され記載された実施の形態による、NiOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図8C】ここに開示され記載された実施の形態による、NiOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図8D】ここに開示され記載された実施の形態による、NiOを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図9A】ここに開示され記載された実施の形態による、ZrO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図9B】ここに開示され記載された実施の形態による、ZrO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図9C】ここに開示され記載された実施の形態による、ZrO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図9D】ここに開示され記載された実施の形態による、ZrO
2を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図10A】ここに開示され記載された実施の形態による、Nb
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図10B】ここに開示され記載された実施の形態による、Nb
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図10C】ここに開示され記載された実施の形態による、Nb
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図10D】ここに開示され記載された実施の形態による、Nb
2O
3を含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図11A】アミノプロピルシルセスキオキサンを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図11B】アミノプロピルシルセスキオキサンを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図11C】アミノプロピルシルセスキオキサンを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【
図11D】アミノプロピルシルセスキオキサンを含む紫外線遮断コーティングを通る、190nmから800nmの波長を有する光の透過率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、紫外線遮断コーティング、紫外線遮断コーティングを施す方法、および紫外線遮断コーティングを備えた機器の実施の形態を詳しく参照し、その実施の形態が添付図面に示されている。できるときはいつでも、同じまたは同様の部分を称するために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。
【0014】
先に述べたように、レンズアセンブリに使用される注封材料に関する問題は、時間の経過による注封材料の劣化である。高分子注封材料は、紫外線などの短波長エネルギーへの暴露の際に劣化を受けやすいであろうと考えられる。詳しくは、注封材料の基準を満たす材料の多くは高分子であり、紫外線などの短波長エネルギーへの継続的な暴露により、これらの高分子における結合が分解し得、これにより、時間の経過と共にオリゴマーが形成される。例えば、その材料は、レンズアセンブリがリソグラフィー過程に使用されるときの通常の作動条件下で徐々に劣化する。その劣化は、レンズ素子内で散乱する紫外線によって生じると考えられている。
【0015】
紫外線により生じるこの劣化に対処するために、ここに開示された実施の形態は、レンズアセンブリ内で生じる紫外線が注封材料に達するのを遮断するためにレンズ素子と注封材料との間に施されるものなど、レンズアセンブリ内に容易に施せる紫外線遮断コーティングを提供する。この目的を満たすために、ここに開示された紫外線遮断コーティングの組成は、注意深く決定され、上記目的を念頭に置いてバランスが取られる。例えば、266nm以下の波長など、UV帯域幅内の波長でのフォトンのエネルギーは、4.66eV以上である。しかしながら、C-C結合のエネルギーは、3.60eVから3.69eVである。それゆえ、そのような短波長エネルギーに暴露されたどの有機系コーティングも劣化する。したがって、実施の形態において、そのコーティング材料は、本来は無機であろう。それに加え、いくつかの実施の形態において、そのコーティング材料は、紫外線を反射するよりむしろ、それを遮断することができ、これにより、レンズアセンブリ内の紫外線の散乱が低下する。実施の形態において、紫外線を遮断する紫外線遮断コーティングを形成するために、水性配合物に金属酸化物が添加され、これにより、水性コーティング配合物の利益が与えられる。
【0016】
紫外線遮断コーティングの上記性質および構成に加え、レンズ素子へのコーティングの堆積に要求される精度およびレンズ面の清浄度も、考慮すべきである。これらの様相に鑑みて、紫外線遮断コーティングの実施の形態は、湿式化学を使用して形成される。これにより、大気圧および大気温度でコーティングが施される。対照的に、従来の紫外線遮断コーティングは、金属酸化物のゾルゲル材料から作られ、ここで、そのゾルゲルは、水分反応性金属酸化物前駆体およびしばしば制御するのが難しい一連の複雑な加水分解および縮合反応を使用して形成される(Kaneko等、2012年)。金属酸化物前駆体を低ガス放出性の金属酸化物に完全に転化するために、300℃超の高温が必要なので、これらの従来のコーティングの性質および反応性のために、作業するのが難しくなる。敏感な光学成分を汚染なく高温に暴露するのが決してささいではないだけでなく、コーティングと基体との熱膨張の不一致により、コーティングの剥離および亀裂の形成がもたらされ得る。
【0017】
高分子注封材料をレンズ素子内に生じる散乱紫外線から保護するために、紫外線を遮断するための水性化学および金属酸化物を使用することにより、実施の形態の紫外線遮断コーティングは、レンズ素子に、そしてそのレンズ素子と注封材料との間に容易かつ正確に施されるであろう。
【0018】
実施の形態において、前記コーティング配合物は、水と、アミノアルキルおよびシラノール官能基を含有するシルセスキオキサンオリゴマーとを含む。いくつかの実施の形態において、そのコーティング配合物は、例えば、メタノールなどのアルコール、または水とアルコールの混合物と、アミノアルキルおよびシラノール官能基を含有するシルセスキオキサンオリゴマーとを含む。ここに用いられているように、アミノアルキルシルセスキオキサンおよび下記に記載されたアミノアルキルシルセスキオキサンの全ての部分集合は、アミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを称する。それゆえ、ここに用いられているように、「アミノアルキルシルセスキオキサン」およびアミノアルキルシルセスキオキサンの任意の部分集合は、「アミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマー」と同義である。いくつかの実施の形態において、そのアミノアルキルシルセスキオキサンは、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せから選択される。実施の形態において、より小さいアミノアルキル官能基が使用される。硬化したコーティングにおいて、これらのより小さいアミノアルキル官能基はまだ、紫外線の下で、または強力な酸化剤、例えば、オゾンの存在下で、劣化を受け得る。より小さい基の劣化は、コーティングにおけるより小さい質量損失およびその後、より小さい応力をもたらす。コーティングにおける応力の蓄積は、亀裂の発生をもたらし、コーティングの剥離を生じ得る。アミノアルキル官能基に加え、前記シルセスキオキサンは、他の有機基、例えば、メチル、ビニル、ヒドリド、エポキシプロピル、メタクリルオキシプロピルなどを含有し得る。シラノール基は、アルコキシ、アセトキシなどの加水分解可能な基、またはハロゲンにより、部分的にまたは完全に置換され得る。さらに他の実施の形態において、そのアミノアルキルシルセスキオキサンは、アミノプロピルシルセスキオキサンである。アミノアルキルシルセスキオキサンは、一般に、水中によく分散され得、紫外線遮断コーティング配合物を、ゾルゲル系の複雑さを要求しない水性配合物にし、その配合物は、有機溶媒の使用を必要としない。どの特定の理論によっても束縛されないが、アミノアルキルシルセスキオキサンにおけるアミノ基は、水中でイオン化されており、それにより、そのアミノアルキルシルセスキオキサンが正に帯電される。同様の(正の)電荷を有することによって、個々のアミノアルキルシルセスキオキサンは、互いに反発し、水性配合物中で均一に分散すると考えられる。
【0019】
実施の形態において、前記アミノアルキルシルセスキオキサンは、前記水性配合物の10質量%以上35質量%以下、前記水性配合物の15質量%以上35質量%以下、前記水性配合物の20質量%以上35質量%以下、前記水性配合物の25質量%以上35質量%以下、または前記水性配合物の30質量%以上35質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、前記水性配合物の5質量%以上35質量%以下を占める。他の実施の形態において、そのアミノアルキルシルセスキオキサンは、前記水性配合物の5質量%以上25質量%以下、前記水性配合物の5質量%以上20質量%以下、前記水性配合物の5質量%以上15質量%以下、または前記水性配合物の5質量%以上10質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、前記水性配合物の5質量%以上30質量%以下を占める。したがって、実施の形態において、その水性配合物は、10質量%以上30質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサン、15質量%以上25質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサン、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンを含むことがある。
【0020】
前記アミノアルキルシルセスキオキサンに加え、水性紫外線遮断コーティング配合物の実施の形態は、紫外線を遮断する1種類以上の金属酸化物粒子も含む。その金属酸化物粒子は、CuO、Fe2O3、Mn2O3、CeO2、NiO、ZrO2、Nb2O3、およびその組合せから選択してよい。その金属酸化物粒子は、先に開示された水性配合物中に粒子として存在することがある。実施の形態において、前記コーティングの紫外線遮断能力は、多くの異なるサイズの粒子で達成できるので、その粒子はどのサイズを有してもよい。しかしながら、そのコーティングの加工性は、粒子サイズが大きくなり過ぎると、影響を受けるであろう。したがって、いくつかの実施の形態において、金属酸化物は、1.5nm以上120nm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の平均粒径を有する粒子など、ナノ粒子であることがある。実施の形態において、その金属酸化物粒子は、1.5nm以上120nm以下、5nm以上120nm以下、10nm以上120nm以下、15nm以上120nm以下、20nm以上120nm以下、25nm以上120nm以下、30nm以上120nm以下、35nm以上120nm以下、40nm以上120nm以下、45nm以上120nm以下、50nm以上120nm以下、55nm以上120nm以下、60nm以上120nm以下、65nm以上120nm以下、70nm以上120nm以下、75nm以上120nm以下、80nm以上120nm以下、85nm以上120nm以下、90nm以上120nm以下、または95nm以上120nm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の粒径を有することがある。他の実施の形態において、その金属酸化物粒子は、1.5nm以上11.5nm以下、1.5nm以上110nm以下、1.5nm以上105nm以下、1.5nm以上100nm以下、1.5nm以上95nm以下、1.5nm以上90nm以下、1.5nm以上85nm以下、1.5nm以上80nm以下、1.5nm以上75nm以下、1.5nm以上70nm以下、1.5nm以上65nm以下、1.5nm以上60nm以下、1.5nm以上55nm以下、1.5nm以上50nm以下、1.5nm以上45nm以下、1.5nm以上40nm以下、1.5nm以上35nm以下、1.5nm以上30nm以下、1.5nm以上25nm以下、1.5nm以上20nm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の粒径を有することがある。
【0021】
前記金属酸化物粒子は、実施の形態において、その金属酸化物が前記水性配合物の30質量%以上70質量%以下および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占めるような量でその水性配合物に加えられることがある。いくつかの実施の形態において、その金属酸化物は、前記水性配合物の35質量%以上70質量%以下、前記水性配合物の40質量%以上70質量%以下、前記水性配合物の45質量%以上70質量%以下、前記水性配合物の50質量%以上70質量%以下、前記水性配合物の55質量%以上70質量%以下、前記水性配合物の60質量%以上70質量%以下、または前記水性配合物の65質量%以上70質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占める。他の実施の形態において、その金属酸化物は、前記水性配合物の30質量%以上65質量%以下、前記水性配合物の30質量%以上60質量%以下、前記水性配合物の30質量%以上55質量%以下、前記水性配合物の30質量%以上50質量%以下、前記水性配合物の30質量%以上45質量%以下、前記水性配合物の30質量%以上40質量%以下、または前記水性配合物の30質量%以上35質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占める。
【0022】
前記水性配合物中のアミノアルキルシルセスキオキサンおよび金属酸化物粒子の総質量パーセントは、その水性配合物の成分として水が存在するように、100質量%未満、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲であるべきである。実施の形態において、水は、その水性配合物の15質量%以上65質量%以下を占める。いくつかの実施の形態において、水は、その水性配合物の20質量%以上60質量%以下、その水性配合物の25質量%以上55質量%以下、その水性配合物の30質量%以上50質量%以下、またはその水性配合物の35質量%以上45質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占める。
【0023】
1種類以上の金属酸化物、アミノアルキルシルセスキオキサン、および水の量は、紫外線遮断コーティングの所望の紫外線遮断特徴および物理的特徴に基づいて、バランスをとることができる。例えば、より多量の金属酸化物がより多くの紫外線を遮断するが、1種類以上の金属酸化物の量が多すぎると、紫外線遮断コーティングの水性配合物をレンズなどの基体に施すのが難しくなる。あるいは、1種類以上の金属酸化物の量が少なすぎると、紫外線遮断コーティングが紫外線を十分に遮断しなくなる。
【0024】
異なる金属酸化物は、異なる波長の光を遮断する傾向にある。したがって、特定の波長の光を遮断する紫外線遮断コーティングを生成するために、前記水性配合物に特定の金属酸化物を添加することができる。例えば、CuOは、概して、波長が約800nm未満の光を遮断し、Fe2O3は、概して、波長が約560nm未満の光を遮断し、Mn2O3は、概して、波長が約800nm未満の光を遮断し、CeO2は、概して、波長が約350nm未満の光を遮断し、NiOは、概して、波長が約800nm未満の光を遮断し、ZrO2は、概して、波長が約245nm未満の光を遮断し、Nb2O3は、概して、波長が約380nm未満の光を遮断する。それゆえ、様々な実施の形態において、特定の波長の光を選択的に遮断するために、水性配合物にこれらの金属酸化物粒子の内の1種類以上を添加することができる。非限定例として、波長が約350nm未満の光だけを遮断したい場合、水性配合物にCeO2を加えることができる。
【0025】
先に開示したように、異なる金属酸化物は異なる波長の光を遮断するので、金属酸化物粒子を含む紫外線遮断コーティングは、それが施される基体に異なる色を与えるであろう。この着色は、紫外線遮断コーティングの塗布の場所および品質を容易に決定できるように、紫外線遮断コーティングの塗布の目視観測が可能になるので、基体に紫外線遮断コーティングを施す場合に有用であり得る。実施の形態において、CuOは概して黒色を呈し、Fe2O3は概して赤またはオレンジ色を呈し、Mn2O3は概して黒色を呈し、CeO2は概して黄色または半透明色を呈し、NiOは概して灰または黒色を呈し、ZrO2は概して白色を呈し、Nb2O3は概して白色を呈する。したがって、実施の形態において、特定の金属酸化物粒子は、所望の色を有する紫外線遮断コーティングを配合するために、水性配合物に添加されることがある。
【0026】
紫外線遮断コーティングにアミノアルキルシルセスキオキサンを使用すると、他の成分で与えられない恩恵が与えられる。例えば、アミノアルキルシルセスキオキサンは、硬化の際に、Si-O-Si結合を有する高分子構造を形成する。これにより、その高分子構造は、ガラスまたは高純度溶融シリカのレンズ素子などの基体と共有結合することができ、これにより、コーティングが良好に接着する。ヒドロキシル官能化シルセスキオキサンは、金属酸化物粒子の表面上のヒドロキシル基と相互作用/反応し、それゆえ、コーティング中の市販の金属酸化物粒子の均一な分布を促進する。
【0027】
実施の形態の紫外線遮断コーティングの追加の利点は、基体に施せる容易さである。この塗布の容易さの理由の1つは、紫外線遮断コーティングは、最初に水性配合物として形成され、塗布後に除去する必要のある、有機溶媒などの他の液体を配合物中に含まないことである。すなわち、実施の形態において、紫外線遮断コーティングの水性配合物は、アミノアルキルシルセスキオキサン、金属酸化物粒子、および水以外の成分を含まない。つまり、言い換えると、いくつかの実施の形態の紫外線遮断コーティングは、アミノアルキルシルセスキオキサン、水、および1種類以上の金属酸化物からなる、または代わりの実施の形態において、それらから実質的になる。
【0028】
上述したコーティング組成のために、紫外線遮断コーティングの水性配合物は、大気温度および大気圧で基体に容易に施されるであろう。例えば、その紫外線遮断コーティングの水性配合物は、以下に限られないが、例えば、吹き付け塗り、回転塗布、浸漬被覆、ブラシ/モップ塗り、印刷などの物理的堆積を含む従来の被覆方法によって、基体に施すことができる。他の被覆方法も使用してよい。
【0029】
先に加え、実施の形態の紫外線遮断コーティングは、最初に水性配合物であるので、その紫外線遮断コーティングは、大気圧および比較的低い温度で施される基体上で硬化させることができる。実施の形態において、その紫外線遮断コーティングの水性配合物は、100℃以上150℃以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の温度で硬化されることがある。いくつかの実施の形態において、紫外線遮断コーティングの水性配合物は、105℃以上150℃以下、110℃以上150℃以下、115℃以上150℃以下、120℃以上150℃以下、125℃以上150℃以下、130℃以上150℃以下、135℃以上150℃以下、140℃以上150℃以下、または145℃以上150℃以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の温度で硬化されることがある。他の実施の形態において、その紫外線遮断コーティングの水性配合物は、100℃以上145℃以下、100℃以上140℃以下、100℃以上135℃以下、100℃以上130℃以下、100℃以上125℃以下、100℃以上120℃以下、100℃以上115℃以下、100℃以上110℃以下、または100℃以上105℃以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の温度で硬化されることがある。その基体および/またはコーティングは、例えば、対流加熱、伝導加熱、および赤外線加熱など、どの適切な加熱過程によって、硬化温度に加熱されてもよい。いくつかの実施の形態において、その紫外線遮断コーティングは、硬化される前に乾燥される。
【0030】
前記紫外線遮断コーティングは、一旦硬化されると、シルセスキオキサンおよび金属酸化物粒子のみを含む。硬化の際に、シルセスキオキサンは、三次元の-Si-O-Si-構造を形成し、これは、紫外線による劣化を受けにくい。この耐劣化性は、有機系コーティングを上回る明白な利点を与え、レンズアセンブリにおける注封材料に適切な紫外線保護を与える。
【0031】
実施の形態において、前記シルセスキオキサンは、前記紫外線遮断コーティングの15質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの20質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの25質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの30質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの35質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの40質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの45質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの50質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの55質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの60質量%以上70質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの65質量%以上70質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上70質量%以下を占める。他の実施の形態において、前記アミノアルキルシルセスキオキサンは、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上60質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上55質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上50質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上45質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上40質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上35質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上30質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上25質量%以下、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上20質量%以下、または前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上15質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、前記紫外線遮断コーティングの10質量%以上65質量%以下を占める。したがって、実施の形態において、その紫外線遮断コーティングは、15質量%以上65質量%以下のシルセスキオキサン、20質量%以上60質量%以下のシルセスキオキサン、25質量%以上55質量%以下のシルセスキオキサン、30質量%以上50質量%以下のシルセスキオキサン、または35質量%以上45質量%以下のシルセスキオキサン、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、10質量%以上70質量%以下のシルセスキオキサンを含むことがある。
【0032】
前記金属酸化物粒子は、実施の形態において、その金属酸化物が紫外線遮断コーティングの30質量%以上90質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占めるような量で紫外線遮断コーティングに加えられることがある。いくつかの実施の形態において、その金属酸化物は、その紫外線遮断コーティングの35質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの40質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの45質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの50質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの55質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの60質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの65質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの70質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの75質量%以上90質量%以下、その紫外線遮断コーティングの80質量%以上90質量%以下、またはその紫外線遮断コーティングの85質量%以上90質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占める。他の実施の形態において、その金属酸化物は、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上85質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上80質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上75質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上70質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上65質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上60質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上55質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上50質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上45質量%以下、その紫外線遮断コーティングの30質量%以上40質量%以下、またはその紫外線遮断コーティングの30質量%以上35質量%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を占める。
【0033】
実施の形態による紫外線遮断コーティングは、266nm以下の波長の光を、これらの波長の光が、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、または1.0%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、5.0%以下の透過率を有するように遮断する。いくつかの実施の形態において、その紫外線遮断コーティングは、266nm以下の波長の光を、これらの波長の光が、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.2%以下、0.1%以下、またさらには0.0%、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲など、0.9%以下の透過率を有するように遮断する。
【0034】
先に述べたように、前記紫外線遮断コーティングの水性配合物に加えられる金属酸化物の量は、光の遮断に影響し、これは、次に、その特定の金属酸化物により遮断される波長の光の透過率を減少させる。したがって、紫外線遮断コーティング中の金属酸化物の量を増加させると、266nm以下の波長の光の透過率が減少する。しかしながら、先に開示したように、その紫外線遮断コーティングに加える金属酸化物の量が多すぎると、紫外線遮断コーティングの加工性が低下するであろう。紫外線遮断コーティングにおける光の透過率を、そのコーティングに多くの金属酸化物を加えずに減少させる追加の方法は、基体に施される紫外線遮断コーティングの厚さを増加させることである。先に述べたように、実施の形態の紫外線遮断コーティングは、リソグラフィー装置などの、レンズアセンブリを備えた装置に使用されることがある。そのような装置において、レンズアセンブリにおける各レンズは、レンズ上に堆積され、そのレンズと装置の筐体との間に位置する注封材料を使用して、装置内で安定化される。実施の形態において、その注封材料は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンプロピレンゴム、およびその組合せから選択される官能化材料である、光または電子線硬化性材料成分であることがあり、その材料は、完全に水素化されているかまたは実質的に完全に水素化されており、炭素-炭素二重結合と三重結合がないかまたは実質的にない。いくつかの実施の形態において、その光または電子線硬化性材料成分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、マレイミド、チオアクリレート、チオメタクリレート、ビニルスルフィド、イタコネート、クロトネート、スチレンおよびN-ビニルアミド、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、オキセタン、エピスルフィド、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテル、およびその適合混合物および/または組合せから選択される少なくとも1つの重合性末端またはペンダント基により官能化されている。他の実施の形態において、その光または電子線硬化性材料成分は、アクリレート、メタクリレートおよびエポキシから選択される少なくとも1つの重合性末端またはペンダント基により官能化されている。そのような注封材料は、例えば、その内容がここに全て引用される、米国特許第7232595号明細書に開示されている。
【0035】
ここで、
図1~3を参照して、例示のレンズアセンブリ100を説明する。
図1において、101はステンレス鋼製レンズ筐体であり、103はレンズ素子であり、105はレンズ注封材料である。多くの注封材料が市販されており、当業者に公知である。レンズ素子103と注封材料105との間に、紫外線遮断コーティング109の薄層がある。同様に注封された3つのレンズ素子を積層して、レンズ素子を形成した(
図3に示されるように)。いくつかの実施の形態において、積層体における最後のレンズ素子200は、
図2に示されるように、レンズ素子の表面に施された注封材料107の層を有する。そのような実施の形態において、レンズ素子103と注封材料107との間に紫外線遮断コーティング111の層が施されることがある。最後のレンズ素子上の注封材料層107は、注封の前にレンズ素子に施した。次に、3つの注封されたレンズ層を、
図3に示されるように、積層体300に組み立てた。光源の方向(
図3の矢印により示される)が、光源の経路に直接的に第3のレンズ素子上に注封材料層107を配置する。その光源は、紫外線を含み、レンズ素子103中に透過され、そこで、紫外線の一部が散乱され、注封材料105と107に透過される。従来のレンズアセンブリにおいて、紫外線により、注封材料105と107は、時間の経過と共に、継続的な使用により、劣化するであろう。しかしながら、レンズ素子103と注封材料105および107との間、並びに注封材料107上に、実施の形態の紫外線遮断コーティング109および111を配置することによって、その紫外線遮断コーティングが、紫外線(例えば、以下の範囲の内の1つの光:190から266nm、およびいくつかの実施の形態において、190nmから350nm、または190から300nm、または190nmから270nm、または270から300nm、または170nmから300nm)のほとんど(すなわち、95%以上、またさらには99%以上)が注封材料105と107に触れるのを防ぐ。いくつかの実施の形態において、紫外線遮断コーティングは、266nm以下、例えば、200nmと266nmの間、または190nmから266nm、または170nmから266nmの範囲の波長を有する光について、1%以下の透過率を有する。したがって、紫外線遮断コーティング109および111は、レンズ積層体300またはアセンブリ100内の注封材料105と107の有用寿命を長くする。
【0036】
第1の条項において、紫外線遮断コーティングの水性配合物は、15質量%以上65質量%以下の水、30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを含む。
【0037】
第2の条項は、前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、第1の条項の水性配合物を含む。
【0038】
第3の条項は、前記アミノアルキルシルセスキオキサンが、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノエチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せからなる群より選択される、第1および第2の条項の水性配合物を含む。
【0039】
第4の条項は、前記アミノアルキルシルセスキオキサンがアミノプロピルシルセスキオキサンである、第1から第3の条項の水性配合物を含む。
【0040】
第5の条項は、前記金属酸化物粒子が、1.5nm以上120nm以下の平均粒径を有する、第1から第4の条項の水性配合物を含む。
【0041】
第6の条項は、前記水性配合物が有機溶媒を含まない、第1から第5の条項の水性配合物を含む。
【0042】
第7の条項は、前記水性配合物が、40質量%以上60質量%以下の金属酸化物粒子を含む、第1から第6の条項の水性配合物を含む。
【0043】
第8の条項は、前記水性配合物が、5質量%以上20質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを含む、第1から第7の条項の水性配合物を含む。
【0044】
第9の条項は、紫外線遮断コーティングを調製する方法であって、15質量%以上65質量%以下の水、30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを混合することによって、水性配合物を形成する工程;その水性配合物を基体に施す工程;およびその基体に施された水性配合物を硬化させる工程を有してなる方法を含む。
【0045】
第10の条項は、その被覆溶液が、100℃以上150℃以下の温度で硬化される、第9の条項の方法を含む。
【0046】
第11の条項は、その被覆溶液が、100℃以上125℃以下の温度で硬化される、第9および第10の条項の方法を含む。
【0047】
第12の条項は、前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、第9から第11の条項の方法を含む。
【0048】
第13の条項は、前記アミノアルキルシルセスキオキサンが、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノエチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せからなる群より選択される、第9から第12の条項の方法を含む。
【0049】
第14の条項は、前記アミノアルキルシルセスキオキサンがアミノプロピルシルセスキオキサンである、第9から第13の条項の方法を含む。
【0050】
第15の条項は、光学機器であって、筐体;その筐体内に位置する少なくとも1つのレンズ素子;その少なくとも1つのレンズ素子の少なくとも一部と筐体との間に位置する注封材料;および少なくとも1つのレンズ素子と注封材料との間に位置する紫外線遮断コーティングを備え、その紫外線遮断コーティングは、30質量%以上90質量%以下の金属酸化物粒子および10質量%以上70質量%以下のシルセスキオキサンを含む、光学機器を含む。
【0051】
第16の条項は、前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、第15の条項の光学機器を含む。
【0052】
第17の条項は、前記紫外線遮断コーティングが10質量%以上25質量%以下のシルセスキオキサンを含む、第15から16の条項の光学機器を含む。
【0053】
第18の条項は、前記紫外線遮断コーティングが40質量%以上60質量%以下の金属酸化物粒子を含む、第15から17の条項の光学機器を含む。
【0054】
第19の条項は、前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、5%以下の透過率を有する、第15から18の条項の光学機器を含む。
【0055】
第20の条項は、前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、1%以下の透過率を有する、第15から19の条項の光学機器を含む。
【実施例】
【0056】
以下の実施例により、実施の形態をさらに明白にする。
【0057】
下記の表1に示されたように、アミノプロピルシルセスキオキサンオリゴマーおよび水を含む水性混合物を様々な金属酸化物の粒子と混合することによって、被覆配合物を製造した。
【0058】
【0059】
試料1~7を調製するために、Gelestにより製造されたアミノプロピルシルセスキオキサン(20質量%の水溶液)(カタログ番号WSA-9911)を、以下のようなAldrichから入手した金属酸化物粒子と混合した:CuO(カタログ番号544868)、Fe2O3(カタログ番号544884)、Mn2O3(カタログ番号377457)、CeO2(カタログ番号544841)、NiO(カタログ番号637130)、ZrO2(カタログ番号544760)、およびNb2O3(カタログ番号208515)。水性アミノプロピルシルセスキオキサンを、混合物が50質量%の水性アミノプロピルシルセスキオキサンおよび50質量%の金属酸化物粒子を含むように金属酸化物粒子と混合した。ピペットを使用して、数ミリリットルのWSA-9911を20mLのガラスバイアルに移し、次いで、その液体に乾燥した金属酸化物粒子を加え、均質な混合物が得られるまで、ステンレス鋼製スパチュラを使用して混合した。試料8は、どのような金属酸化物粒子も混合されていない水性アミノプロピルシルセスキオキサンであった。
【0060】
試料配合物の各々を、AdValue Technologyから得た2インチ×1インチ(約5cm×2.5cm)の高純度溶融シリカ(HPFS)スライド上にブラシで塗布した。次に、試料を周囲温度で続けて乾燥させ、次いで、PF30対流式オーブン(Carbolite)を使用して、15分間に亘り150℃で硬化させた。8種類の試料の各々について、2つのスライドを調製した(合計で16のスライド)。
【0061】
図4A~11Dは、試料1~8の各々に関する光透過率の百分率(%T)を示しており、試料当たり2回の試験を行った。被覆試料の各々について、ThermoFisher Scientificにより製造されたGenesys 10S UV-Vis分光光度計を使用して、170nmから800nmの波長で%Tを測定した。
【0062】
表1に列挙された金属酸化物粒子を使用して、コーティングを配合した。どのような粒子も添加していないアミノプロピルシルセスキオキサン膜である、対照試料8に関する光透過率データが、
図11A~11Dに示されている。アミノプロピルシルセスキオキサン膜の光透過率(試料8;
図11A~11D)は、約240nmで急激に減少し、約210nmで0.2%までさらに低下する。この光吸収度は、材料中のアミノプロピル基の残留物によるものであり、これは、徐々に酸化し、シルセスキオキサンのSi-O-Si網目構造をそのままにしつつ、紫外線暴露の際に分解して、非凝縮性副生成物を生成する。このように、金属酸化物粒子を含有するコーティングに関する210nmを上回るどの吸収度も、金属酸化物粒子によるものであり、アミノプロピルシルセスキオキサンに起因するものではない。したがって、試料1のCuO、試料3のMn
2O
3、および試料5のNiOなどの黒色の金属酸化物粒子は、それぞれ、
図4A~4D、6A~6D、および8A~8Dに示されるような、測定波長の全範囲(すなわち、170nmから800nm)における完全な遮光を示す。試料2のFe
2O
3粒子を含有するコーティングは、
図5A~5Dに示されるように、約500nmまでの波長での完全な光吸収を示す。試料4のCeO
2および試料7のNb
2O
3を有するコーティングは、それぞれ、
図7A~7Dおよび10A~10Dに示されるように、それぞれ、約350nmまで、および約370nmまでの光を遮断した。試料6のZrO
2粒子を有するコーティングは、
図9A~9Dに示されるような、一桁までの光透過率の劇的な減少を示し、250nm未満の波長について、1%未満の%Tを示した。
【0063】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、それらが、付随の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入るという条件で、包含することが意図されている。
【0064】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0065】
実施形態1
紫外線遮断コーティングの水性配合物であって、
15質量%以上65質量%以下の水、
30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および
5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマー、
を含む水性配合物。
【0066】
実施形態2
前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、実施形態1に記載の水性配合物。
【0067】
実施形態3
前記アミノアルキルシルセスキオキサンが、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノエチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せからなる群より選択される、実施形態1または2に記載の水性配合物。
【0068】
実施形態4
前記アミノアルキルシルセスキオキサンがアミノプロピルシルセスキオキサンである、実施形態1に記載の水性配合物。
【0069】
実施形態5
前記金属酸化物粒子が、1.5nm以上120nm以下の平均粒径を有する、実施形態1から4いずれか1つに記載の水性配合物。
【0070】
実施形態6
前記水性配合物が有機溶媒を含まない、実施形態1から5いずれか1つに記載の水性配合物。
【0071】
実施形態7
前記水性配合物が、40質量%以上60質量%以下の金属酸化物粒子を含む、実施形態1から6いずれか1つに記載の水性配合物。
【0072】
実施形態8
前記水性配合物が、5質量%以上20質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマーを含む、実施形態1から7いずれか1つに記載の水性配合物。
【0073】
実施形態9
紫外線遮断コーティングを調製する方法であって、
15質量%以上65質量%以下の水、
30質量%以上70質量%以下の金属酸化物粒子、および
5質量%以上35質量%以下のアミノアルキルシルセスキオキサンオリゴマー、
を混合することによって、水性配合物を形成する工程;
前記水性配合物を基体に施す工程;および
前記基体に施された水性配合物を硬化させる工程;
を有してなる方法。
【0074】
実施形態10
前記水性配合物が、100℃と150℃の間の温度で硬化される、実施形態9に記載の方法。
【0075】
実施形態11
前記水性配合物が、100℃と125℃の間の温度で硬化される、実施形態9に記載の方法。
【0076】
実施形態12
前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、実施形態9から11いずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態13
前記アミノアルキルシルセスキオキサンが、アミノメチルシルセスキオキサン、アミノエチルシルセスキオキサン、アミノプロピルシルセスキオキサン、アミノブチルシルセスキオキサン、およびその組合せからなる群より選択される、実施形態9から12いずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態14
前記アミノアルキルシルセスキオキサンがアミノプロピルシルセスキオキサンである、実施形態9から12いずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態15
光学機器であって、
筐体;
前記筐体内に位置する少なくとも1つのレンズ素子;
前記少なくとも1つのレンズ素子の少なくとも一部と前記筐体との間に位置する注封材料;および
前記少なくとも1つのレンズ素子と前記注封材料との間に位置する紫外線遮断コーティング;
を備え、
前記紫外線遮断コーティングは、30質量%以上90質量%以下の金属酸化物粒子および10質量%以上70質量%以下のシルセスキオキサンを含む、光学機器。
【0080】
実施形態16
前記金属酸化物粒子が、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびその組合せからなる群より選択される、実施形態15に記載の光学機器。
【0081】
実施形態17
前記紫外線遮断コーティングが10質量%以上25質量%以下のシルセスキオキサンを含む、実施形態15または16に記載の光学機器。
【0082】
実施形態18
前記紫外線遮断コーティングが40質量%以上60質量%以下の金属酸化物粒子を含む、実施形態15から17いずれか1つに記載の光学機器。
【0083】
実施形態19
前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、5%以下の透過率を有する、実施形態15から18いずれか1つに記載の光学機器。
【0084】
実施形態20
前記紫外線遮断コーティングが、266nm以下の波長を有する光について、1%以下の透過率を有する、実施形態15から18いずれか1つに記載の光学機器。
【符号の説明】
【0085】
100 レンズアセンブリ
101 ステンレス鋼製レンズ筐体
103、200 レンズ素子
105、107 レンズ注封材料
109、111 紫外線遮断コーティング
300 レンズ積層体