(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具及び摩擦具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B43K29/02 D
B43K29/02 F
(21)【出願番号】P 2017088442
(22)【出願日】2017-04-27
【審査請求日】2020-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴宣
【審査官】渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193573(JP,A)
【文献】実公昭49-025396(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0050744(US,A1)
【文献】実開昭63-006886(JP,U)
【文献】特開平08-090981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00 - 31/00
B43L 1/00 - 12/02
B43L 15/00 - 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、熱変色性筆記具全体の重量より高く設定され
、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、熱変色性筆記具全体の重量より高く設定され
、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項3】
本体の端部に、熱変色性インキの像または筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該像または筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備えた摩擦具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、摩擦具全体の重量より高く設定され
、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることを特徴とする摩擦具。
【請求項4】
本体の端部に、熱変色性インキの像または筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該像または筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備えた摩擦具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、摩擦具全体の重量より高く設定され
、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることを特徴とする摩擦具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具、及び本体の端部に、熱変色性インキの像または筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該像または筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備えた摩擦具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性筆記具において、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管すると、摩擦部が常に外部に露出しているため、摩擦部が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することにより、摩擦部表面に塵や埃が付着し、摩擦部表面が汚れることがあり、その汚れた状態の摩擦部を用いて紙面を摩擦すると、紙面が汚れてしまう不具合があった。
前記不具合を解決するため、非使用時に摩擦部が汚れることを防止できる熱変色性筆記具が提案されている。
例えば、特許文献1には、筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、前記保護部材が、軸方向に移動可能に設けられるとともに弾発体により軸方向前方に常時付勢され、前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に移動してなることを特徴とする熱変色性筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1の熱変色性筆記具は、保護部材が軸方向に移動可能であり、摩擦操作時、本体を被筆記面に対して垂直にして使用する場合には、問題ないが、仮に、本体を被筆記面に対して垂直状態から傾けて使用する場合、保護部材が軸方向に円滑に摺動せず、円滑な摩擦操作ができないおそれがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、非使用時に摩擦部が汚れることを防止できるとともに、被筆記面に対して本体を垂直状態にしなくても円滑な摩擦操作が可能な熱変色性筆記具及び摩擦具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「前」とは摩擦部側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、熱変色性筆記具全体の重量より高く設定されることを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、熱変色性筆記具全体の重量より高く設定されることより、
非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを防止できるとともに、被筆記面に対して本体を垂直状態にしなくても円滑な摩擦操作が可能となる。尚、本発明で筒状の本体2は、例えば、一端にペン先を備え且つ内部に熱変色性インキを収容した軸筒が挙げられる。本発明で、保護部材4が摩擦部31の外周を包囲するとは、例えば、保護部材4が、摩擦部31の外周を完全に包囲する筒状体からなる構成、摩擦部31の外周の一部または大部分を包囲する半筒状体からなる構成、または摩擦部31の外周を包囲するよう間隔を置いて分散配置される複数の突出片からなる構成等が挙げられる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具において、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることにより、
製造上及び構造上容易に軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な保護部材を提供することが可能となる。
【0011】
本願の第3の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具において、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることを要件とする。
【0012】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることにより、
製造上及び構造上、より容易に軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な保護部材を提供することが可能となる。また保護部材自体の耐久性も向上する。
【0013】
本願の第4の発明は、本体の端部に、熱変色性インキの像または筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該像または筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備えた摩擦具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、摩擦具全体の重量より高く設定されることを要件とする。
【0014】
前記第4の発明の摩擦具1は、本体の端部に、熱変色性インキの像または筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該像または筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備えた摩擦具であって、
前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、
前記保護部材自体が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられ、
前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、
前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化してなり、
前記保護部材自体の軸方向の弾発力が、摩擦具全体の重量より高く設定されることより、
非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを防止できるとともに、被筆記面に対して本体を垂直状態にしなくても円滑な摩擦操作が可能となる。尚、本発明で筒状の本体2は、例えば、軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップが挙げられる。本発明で、保護部材4が摩擦部31の外周を包囲するとは、例えば、保護部材4が、摩擦部31の外周を完全に包囲する筒状体からなる構成、摩擦部31の外周の一部または大部分を包囲する半筒状体からなる構成、または摩擦部31の外周を包囲するよう間隔を置いて分散配置される複数の突出片からなる構成等が挙げられる。
【0015】
本願の第5の発明は、前記第4の発明の摩擦具において、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることを要件とする。
【0016】
前記第5の発明の摩擦具1は、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な蛇腹状側壁を備えることにより、
製造上及び構造上容易に軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な保護部材を提供することが可能となる。
【0017】
本願の第6の発明は、前記第4の発明の摩擦具において、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることを要件とする。
【0018】
前記第6の発明の摩擦具1は、前記保護部材が軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能なコイルスプリングからなることにより、
製造上及び構造上、より容易に軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能な保護部材を提供することが可能となる。また保護部材自体の耐久性も向上する。
【0019】
本発明において、前記摩擦部31を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部31を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料である。
【0020】
本発明において、前記保護部材4を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。または、オレフィン系樹脂が好ましく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。前記保護部材4を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱変色性筆記具及び摩擦具は、非使用時に摩擦部が汚れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1の摩擦部非使用時の要部縦断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1の摩擦部使用時の要部縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態2の摩擦部非使用時の要部縦断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態2の摩擦部使用時の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態1]
図1又は
図2に本発明の実施の形態1を示す。
【0024】
・本体
本体2は、円筒状の内部材21と、該内部材21の前端部外周面に固着される円筒状の外部材22とからなる。本体2の内部材21及び外部材22は、合成樹脂または金属により形成される。本体2は、例えば、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を一端に備えた軸筒、あるいは軸筒に備えた部材、軸筒のペン先側に着脱自在のキャップ、または摩擦具が挙げられる。本体2が軸筒の場合、軸筒の反ペン先側の端部に摩擦部31が設けられる。本体2がキャップの場合、キャップの閉鎖側端部に摩擦部31が設けられる。
【0025】
・内部材
内部材21は、前端部に、小径部21aと該小径部21aより後方に連設される大径部21bと、該大径部21bと小径部21aとの間に形成される肩部21cとを備える。内部材21の小径部21aの前端部には、取付孔21dが設けられる。取付孔21dの内周面には、内向突起が形成される。
【0026】
・外部材
外部材22は、内部材21の大径部21bの外周面に嵌着され且つ小径部21aの外周面を包囲する。外部材22の前端部内面には、環状突起22aが形成される。
【0027】
・摩擦部材
筒状の本体2の一端に、低摩耗性の弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂)からなる摩擦部材3が固着される。摩擦部材3は、外部に露出する大径の前部と、本体2の取付孔21d(内部材21の取付孔21d)に嵌着される小径の後部とからなる。摩擦部材3の後部が取付孔21dに嵌入される。摩擦部材3の後部の外周面には、外向突起が形成され、該外向突起が、摩擦部材3の後部を取付孔21dに嵌入した際、取付孔21d内周面の内向突起と乗り越え係合される。大径の前部の頂部には凸曲面状の摩擦部31が形成される。
【0028】
・出没孔,収容孔,段部
本体2の内部材21の小径部21a外周周面と外部材22内周面との間には、環状空間が形成される。前記環状空間が、環状突起22aの内側に形成され且つ軸方向前方に開口する出没孔23と、該出没孔23より後方に連設される大径の収容孔24とからなる。出没孔23と収容孔24との間には段部25が形成される。
【0029】
・保護部材
収容孔24の内部に、筒状の保護部材4が設けられ、保護部材4は、蛇腹状側壁41と、該蛇腹状側壁41の後端部外面より径方向外方に突出する凸部42とを備え、収容孔24内に凸部42が収容される。保護部材4の蛇腹状側壁41が、軸方向の弾発
力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられる。
摩擦部31の非使用時、保護部材4の頂部が摩擦部31の頂部よりも軸方向前方に突出し、
摩擦部31の使用時、被筆記面6と保護部材4の頂部との接触により、保護部材4が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化する。
保護部材4自体の軸方向の弾発力が、摩擦具1全体の重量より高く設定され、
蛇腹部41の頂部が、凸曲面状(R曲面状)に形成される。
また、保護部材4は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エラストマー等)により一体に形成され、保護部材4を、透明性を有する合成樹脂により形成することにより、摩擦操作時、摩擦部31を視認することできる。
【0030】
前記保護部材4は、前端に環状当接部44を備える。前記環状当接部44は、摩擦部31の使用時、常に被筆記面6と環状に当接している。即ち、前記環状当接部44は、摩擦部31の使用時、本体の軸線と被筆記面とが垂直状態、又は、本体の軸線と被筆記面とが垂直状態から傾けた状態において、被筆記面と環状の当接状態が維持される。また、前記環状当接部44は、その前端に複数の凸部を周状に分散配置した構成でもよい。その場合、前記環状当接部44(各々の凸部)が被筆記面6と略環状に当接される。
【0031】
・作用
本実施の形態1は、摩擦部31の非使用時、保護部材4の蛇腹状側壁41が摩擦部31を包囲し、蛇腹状側壁41の頂部が摩擦部31の頂部よりも前方に位置してなる。それにより、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、摩擦部31が汚れることを防止できる。
【0032】
本実施の形態1は、摩擦部31の使用時、被筆記面6と保護部材4の蛇腹状側壁41の頂部とが接触し、被筆記面6により保護部材4が後方に押圧され、摩擦部31を被筆記面6に押し当てて使用できる。それにより、摩擦操作前に、保護部材4を移動させる別の操作が不要となり、摩擦部31を迅速に使用できる。また、被筆記面6に対して本体2を垂直状態にしなくても円滑な摩擦操作が可能となる。
【0033】
[実施の形態2]
図3又は
図4に本発明の実施の形態2を示す。
【0034】
・本体
本体2は、円筒状の内部材21からなる。本体2の内部材21は、合成樹脂または金属により形成される。本体2は、例えば、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を一端に備えた軸筒、あるいは軸筒に備えた部材、軸筒のペン先側に着脱自在のキャップ、または摩擦具が挙げられる。本体2が軸筒の場合、軸筒の反ペン先側の端部に摩擦部31が設けられる。本体2がキャップの場合、キャップの閉鎖側端部に摩擦部31が設けられる。
【0035】
・内部材
内部材21は、前端部に、小径部21aと該小径部21aより後方に連設される大径部21bと、該大径部21bと小径部21aとの間に形成される肩部21cとを備える。内部材21の小径部21aの前端部には、取付孔21dが設けられる。取付孔21dの内周面には、内向突起が形成される。
【0036】
・摩擦部材
筒状の本体2の一端に、低摩耗性の弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂)からなる摩擦部材3が固着される。摩擦部材3は、外部に露出する大径の前部と、本体2の取付孔21d(内部材21の取付孔21d)に嵌着される小径の後部とからなる。摩擦部材3の後部が取付孔21dに嵌入される。摩擦部材3の後部の外周面には、外向突起が形成され、該外向突起が、摩擦部材3の後部を取付孔21dに嵌入した際、取付孔21d内周面の内向突起と乗り越え係合される。前記大径の前部の頂部には凸曲面状の摩擦部31が形成される。
【0037】
・保護部材
内部材21の小径部21aの外面に、保護部材4であるコイルスプリング43が嵌着される。保護部材4のコイルスプリング43が軸方向の弾発力を備えるとともに軸方向に伸縮可能且つ径方向外方に撓曲可能に設けられる。
摩擦部31の非使用時、保護部材4の頂部が摩擦部31の頂部よりも軸方向前方に突出し、
摩擦部31の使用時、被筆記面6と保護部材4の頂部との接触により、保護部材4が軸方向後方に圧縮変形するとともに、その圧縮変形量が被筆記面と本体との傾きにより自由に変化する。
保護部材4自体の軸方向の弾発力が、摩擦具1全体の重量より高く設定される。
また、保護部材4であるコイルスプリング43は、金属線材(例えば、ステンレス鋼製線材)を螺旋状(コイル状)に巻回された圧縮コイルスプリング、または合成樹脂により成形された圧縮コイルスプリングよりなる。保護部材4であるコイルスプリング43は、線材間を通して、摩擦操作時、外部より摩擦部31を視認することできる。
【0038】
前記保護部材4であるコイルスプリング43は、前端に密着巻部43aを備える。前記密着巻部43aの前端は、摩擦部31の使用時、常に被筆記面6と略環状に当接している。即ち、前記密着巻部43aは、摩擦部31の使用時、本体の軸線と被筆記面とが垂直状態、又は、本体の軸線と被筆記面とが垂直状態から傾けた状態において、被筆記面と略環状の当接状態が維持される。
【0039】
・作用
本実施の形態2は、摩擦部31の非使用時、保護部材4のコイルスプリング43が摩擦部31を包囲し、コイルスプリング43の頂部が摩擦部31の頂部よりも前方に位置してなる。それにより、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、摩擦部31が汚れることを防止できる。
【0040】
本実施の形態2は、摩擦部31の使用時、被筆記面6と保護部材4のコイルスプリング43の頂部とが接触し、被筆記面6により保護部材4が後方に押圧され、摩擦部31を被筆記面6に押し当てて使用できる。それにより、摩擦操作前に、保護部材4を移動させる別の操作が不要となり、摩擦部31を迅速に使用できる。また、被筆記面6に対して本体2を垂直状態にしなくても円滑な摩擦操作が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 熱変色性筆記具又は摩擦具
2 本体
21 内部材
21a 小径部
21b 大径部
21c 肩部
21d 取付孔
22 外部材
22a 環状突起
23 出没孔
24 収容孔
25 段部
3 摩擦部材
31 摩擦部
4 保護部材
41 蛇腹状側壁
42 凸部
43 コイルスプリング
43a 密着巻部
44 環状当接部
6 被筆記面