(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】音声提供装置及び音声提供方法
(51)【国際特許分類】
G10K 15/02 20060101AFI20220104BHJP
G06F 13/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G10K15/02
G06F13/00 510G
(21)【出願番号】P 2017096272
(22)【出願日】2017-05-15
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】早渕 功紀
(72)【発明者】
【氏名】多田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】安良岡 直希
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 和哉
(72)【発明者】
【氏名】原 博一
(72)【発明者】
【氏名】柿下 正尋
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016694(JP,A)
【文献】特開2005-086707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/02
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収音位置に関連付けられた収音データを取得する第1取得手段と、
ユーザの位置と当該ユーザが向いている方向とを取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段によって取得された収音データと、当該収音データに関連付けられた位置と前記第2取得手段によって取得された位置及び方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを提供する提供手段であって、前記収音データの音声によって表される内容の一部を隠蔽した状態で提供する提供手段と
を備えることを特徴とする収音データ提供装置。
【請求項2】
収音位置に関連付けられた収音データを取得する第1取得ステップと、
ユーザの位置と当該ユーザが向いている方向とを取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップによって取得された収音データと、当該収音データに関連付けられた位置と前記第2取得ステップによって取得された位置及び方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを提供する提供ステップであって、前記収音データの音声によって表される内容の一部を隠蔽した状態で提供する提供ステップと
を備えることを特徴とする収音データ提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収音された音声をユーザに提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザに対してそのユーザの位置に応じた情報を提供する技術が知られている。例えば特許文献1には、施設や商店の広告を配信する際に、その施設や商店と移動端末との距離に応じて、配信する情報を切り替えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ユーザの位置及び方向と収音された音声とを関連付けた情報提供の仕組みを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、収音位置に関連付けられた収音データを取得する第1取得手段と、ユーザの位置と当該ユーザが向いている方向とを取得する第2取得手段と、前記第1取得手段によって取得された収音データと、当該収音データに関連付けられた位置と前記第2取得手段によって取得された位置及び方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを提供する提供手段であって、前記収音データの音声によって表される内容の一部を隠蔽した状態で提供する提供手段とを備えることを特徴とする収音データ提供装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、収音位置に関連付けられた収音データを取得する第1取得ステップと、ユーザの位置と当該ユーザが向いている方向とを取得する第2取得ステップと、前記第1取得ステップによって取得された収音データと、当該収音データに関連付けられた位置と前記第2取得ステップによって取得された位置及び方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを提供する提供ステップであって、前記収音データの音声によって表される内容の一部を隠蔽した状態で提供する提供ステップとを備えることを特徴とする収音データ提供方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザの位置及び方向と収音された音声とを関連付けた情報提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る音声提供システムの全体構成を示す図である。
【
図2】音声提供システムにおけるユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】音声提供システムにおけるサーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】サーバ装置が記憶しているエリア管理テーブルの一例を示す図である。
【
図5】音声提供システムにおける各装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】音声提供システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図7】ユーザの位置及び方向と、収音された音声が対応付けられたエリアとの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である音声提供システムの全体構成を示す図である。この音声提供システムでは、ユーザの位置を基準としてそのユーザの顔が向いている方向(つまりユーザの視線方向)に存在する場所で収音された音声がそのユーザに提供される。ユーザは提供される音声を聴くことで、自身の向いている方向にどのような音声が存在しているか、つまり自身が向いている方向の延長上にある場所がどのような場所であるかを、その場所で収音された音声のイメージで把握することができる。
【0018】
図1に示すように、音声提供システムは、ユーザに音声を提供するサーバ装置100と、ユーザが使用するユーザ端末200と、複数の収音装置300とを備える。サーバ装置100とユーザ端末200、サーバ装置100と収音装置300は、それぞれネットワーク900を介して通信可能に接続されている。収音装置300は、例えばコンサート会場、イベント会場、遊園地、ゲームセンタ、商業店舗又は街頭などの様々な場所に設置されており、その場所において収音を行う。収音された音声はサーバ装置100を介してユーザ端末200に送信される。ネットワーク900は、単独の通信ネットワークに限らず、通信方式が異なる複数の通信ネットワークを相互接続したものであってもよく、例えばインターネットや移動通信網等の有線又は無線の通信ネットワークである。
図1には、サーバ装置100及びユーザ端末200を1つずつ示し、収音装置300を3つ示しているが、これらの数は
図1の例示に限定されない。
【0019】
図2は、ユーザ端末200のハードウェア構成を示すブロック図である。ユーザ端末200は、例えばスマートホンやタブレット或いは各種のウェアラブル端末などの通信可能なコンピュータである。ユーザ端末200は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置とROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの記憶装置とを備えた制御部21と、例えばアンテナや通信回路を含みネットワーク900を介して通信を行う通信部22と、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの記憶部23と、例えばスピーカ又はイヤホン用端子やアンプなどを含み、収音された音声を示す収音データを再生して音声出力を行う再生部24と、例えば方位センサやジャイロセンサなどを含みユーザ端末200が向いている方向(ここではユーザ端末200の向きをユーザが向いている方向とみなす)を検出する方向検出部25と、例えばGPS(Global Positioning System)によって測位を行う測位部26と、例えばキーやタッチセンサなどの操作子が設けられた操作部及び例えば液晶パネルや液晶駆動回路などの表示部を含むUI(User Interface)部27とを備えている。
【0020】
図3は、サーバ装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ装置100は例えばサーバマシンなどのコンピュータであり、制御部11と、通信部12と、記憶部13とを備えている。制御部11は、CPU等の演算装置と、ROM及びRAMなどの記憶装置とを備えている。CPUは、RAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部13に記憶されたプログラムを実行することによって、サーバ装置100の各部の動作を制御する。通信部12はネットワーク900に接続されており、ネットワーク900を介して通信を行う。記憶部13は、例えばハードディスク等の記憶装置であり、制御部11が用いるデータ群やプログラム群を記憶している。例えば記憶部13は、収音装置300により音声が収音される場所(エリア)に関する情報が記述されたエリア管理テーブルを記憶している。
【0021】
図4に示すように、エリア管理テーブルにおいては、各エリアに設置された収音装置300を識別する識別情報である収音装置IDと、そのエリアの位置を示す位置情報と、そのエリアにおいて収音された音声を示す収音データを識別する識別情報である収音データIDとが対応付けられている。各エリアは或る程度の広がりを持っているため、エリアの位置はそのエリア全体の位置を示している。
【0022】
図5は、ユーザ端末200、サーバ装置100及び収音装置300の機能構成を示す図である。ユーザ端末200の検出部201は、ユーザの位置とそのユーザが向いている方向とを検出する。ユーザ端末200の通知部202は、検出部201によって検出されたユーザの位置とそのユーザが向いている方向とをサーバ装置100にネットワーク900経由で通知する。
【0023】
サーバ装置100の第1取得部101は、収音装置300において収音された音声を示す収音データをその収音装置300からネットワーク900経由で取得する。サーバ装置100の第2取得部102は、ユーザ端末200の通知部202から通知された、ユーザの位置とそのユーザが向いている方向とをネットワーク900経由で取得する。サーバ装置100の提供部103は、第1取得部101によって取得された収音データと、当該収音データに関連付けられたエリアの位置と第2取得部によって取得されたユーザの位置及びユーザの向いている方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを、ユーザ端末200に提供する。このパラメータは、例えば、ユーザの位置と上記エリアの位置との距離に応じた音量であり、且つ、ユーザの位置を基準としたユーザの向いている方向と収音データに関連付けられたエリアの位置との一致度に応じた音量で、収音データの放音処理を行うためのパラメータを含む。
【0024】
ユーザ端末200の再生部203は、サーバ装置100から提供された収音データを再生して音声を出力する。ユーザはユーザ端末200から再生される音声を聴く。
【0025】
上述したユーザ端末200の検出部201は
図2に示した方向検出部25及び測位部26によって実現され、通知部202は
図2に示した通信部22によって実現され、再生部203は
図2に示した再生部24によって実現される。サーバ装置100の第1取得部101及び第2取得部102は
図3に示した通信部12によって実現され、提供部103は
図3に示した制御部11及び通信部12によって実現される。
【0026】
[動作]
次に、
図6を参照して本実施形態の動作を説明する。まずユーザは、或る方向に対してユーザ端末200をかざして、その方向に存在するエリアで収音された音声を聴くことを指示する操作を行う。ここで、或る方向とは、例えばユーザから直接見えるコンサート会場などのエリアが存在する方向であってもよいし、また、ユーザからはエリアの具体的な外観や様子が直接見えない方向であるがなんとなくユーザ自身の気が向いた方向であってもよい。ユーザ端末200の検出部201はこの操作を受け付けると(ステップS11)、ユーザの位置とユーザが向いている方向とを検出する(ステップS12)。前述したように、ここでいうユーザの位置はユーザ端末200の位置であり、ユーザが向いている方向はユーザ端末200が向いているとき方向である。そして、通知部202は、ユーザの位置及びユーザが向いている方向を示すデータをサーバ装置100に通知する(ステップS13)。
【0027】
一方、サーバ装置100においては、収音装置300において収音された音声を示す収音データが例えばストリーム形式でサーバ装置100に送信されてくるので、サーバ装置100の第1取得部101は、その収音データをネットワーク900経由で取得し、収音装置ID及び収音データIDに関連付けて記憶部13に記憶している(ステップS14)。
【0028】
そして、サーバ装置100の第2取得部102は、ユーザ端末200の通知部202から通知された、ユーザの位置及びユーザが向いている方向を示すデータを取得する。提供部103は、エリア管理テーブルにおける各エリアの位置を参照し、取得されたユーザの位置を基準として取得された方向に存在するエリアを抽出する(ステップS15)。
【0029】
具体的な抽出方法を、
図7を用いて説明する。まず、ユーザが位置Pにおいて或る方向を向いているとき、その方向に存在するエリア群として、その方向を示す半直線Dを中心とした所定の角度の範囲(図においては半直線D1及び半直線D2に挟まれた範囲)と少なくとも一部が重なるエリア群、ここではエリアAR004,AR005,AR006,AR007,AR009が抽出される。次に、これらエリアAR004,AR005,AR006,AR007,AR009のうち、ユーザからの距離が閾値(L1とする)以下のエリアが抽出される。
図7では、ユーザからの距離L1の位置を曲線Lで示している。よって、ここでは、ユーザからの距離がL1を超えるエリアAR004が除外された、エリアAR005,AR006,AR007,AR009が抽出される。さらに、これらエリアAR005,AR006,AR007,AR009のうち、位置Pにおけるユーザの向いている方向を示す半直線Dに最も近いエリアが抽出される。各エリアと半直線Dとの間の距離は、例えば各エリアの縁部と半直線Dとの間の最短距離で特定してもよいし、例えば各エリアの中心位置と半直線Dとの間の距離で特定してもよい。ここでは各エリアの縁部と半直線Dとの間の最短距離(図に示したd5,d6,d7,d9であり、d4<d8<d9<d8とする)で特定するとして、これが最も小さいエリアAR005が抽出される。
【0030】
次に、提供部103は、抽出したエリアAR005に対応する収音データを選択する(ステップS16)。具体的には、提供部103は、エリア管理テーブルを参照し、抽出したエリアの位置に対応付けられた収音装置ID及び収音データIDを特定し、その収音装置IDの収音装置300から取得した収音データIDの収音データを選択する。
【0031】
さらに、提供部103は、収音データに関連付けられたエリアの位置とユーザの位置及び方向との関係に応じてその収音データの放音処理を行うためのパラメータ、ここでは収音データの音量を指定するパラメータを生成する(ステップS17)。具体的には、提供部103は、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離を算出し、音量パラメータをその距離に応じた値に設定し、これを基準パラメータとする。ここでは例えば、提供部103は、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離が大きいと音量を小さくし、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離が小さいと音量を大きくした基準パラメータを設定する。次に、提供部103は、その基準パラメータの値を、ユーザの位置を基準とした方向と収音データに関連付けられたエリアの位置との一致度に応じて増減させる。例えば
図7の例では、提供部103は、前述した半直線DとエリアAR005の縁部との間の最短距離d5を両者の一致度とみなし、この最短距離d5が大きいと音量を小さくし、最短距離d5が小さいと音量を大きくする。
【0032】
提供部103は、パラメータを設定した収音データをネットワーク900経由でユーザ端末200に送信する(ステップS18)。
【0033】
ユーザ端末200の再生部203は、提供部103から送信されてくる収音データを取得し、この収音データに設定されているパラメータに従い音声再生を行う(ステップS19)。これにより、ユーザは自身が向いている方向にどのようなものがあるかを音声のイメージで知ることができ、さらに、音量の大小によって、自身からそのエリアまでの距離やそのエリアと自身が向いている方向との一致度を感覚的に知ることができる。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、ユーザの位置及び方向と収音された音声とを関連付けた新たな情報提供の仕組みを実現することができる。また、ユーザは、自身が向いた方向に存在するエリアで収音された音声を聴くことによって、自身の向いている方向にどのような音声が存在するか、つまり自身が向いている方向の延長上に存在する場所がどのような場所であるかを音声のイメージで把握することができる。
【0035】
[変形例]
上述した実施形態は次のような変形が可能である。また、以下の変形例を互いに組み合わせて実施してもよい。
[変形例1]
提供部103は、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離を算出し、その距離に応じた基準パラメータを、ユーザの位置を基準とした方向と収音データに関連付けられたエリアの位置との一致度に応じて増減させることで、パラメータを決めればよい。従って実施形態で説明した例以外に、提供部103は、
図7において、ユーザの向いている方向を示す半直線Dを中心とした所定の角度の範囲(半直線D1及び半直線D2に挟まれた範囲)と、各エリアとが重なる領域の大きさに基づいて収音データの音量を制御するようにしてもよい。例えば、提供部103は、収音データに含まれる音量パラメータについて、上記の重なる領域が大きいと音量を大きくし、重なる領域が小さいと音量を小さくするという設定を行う。ここでいう、重なる領域の大きさは、その重なる領域の面積の絶対値であってもよいし、そのエリア全体の面積を分母として重なる領域の面積を分子とした分数の値であってもよい。
さらに、提供部103は、収音データの音量のみならず、収音データの音色やエフェクトなど、要するにエリア及びユーザの位置関係に基づいて、収音データにおける音響的なパラメータを変化させる音響処理を施すようにしてもよい。例えば提供部103は、エリア及びユーザ間の距離に応じてイコライザで低音域を低減させたり(例えば距離が遠いと低い音の成分のみ小さくするなど)とか、エリア及びユーザ間の距離に応じてディレイやリバーブといったエフェクトの強度を異ならせる(例えば距離が遠いとリバーブの強度を高くするなど)ようにしてもよい。
以上のように、提供部103は、収音データに関連付けられた位置とユーザの位置及び方向との関係に応じてその収音データの放音処理を行うためのパラメータをユーザ端末200に提供する。
【0036】
[変形例2]
サーバ装置100の第2取得部102は、ユーザ端末200に提供される収音データに関する条件を取得し、提供部103は、第2取得部102により取得された条件が満たされる収音データをユーザ端末200に提供するようにしてもよい。ここでいう条件とは、例えば以下のようなものである。
【0037】
例えば、条件は、ユーザの位置と収音データに関連付けられたエリアの位置との間の距離に関する条件であってもよい。この場合、提供部103は、ユーザによって指定された距離の範囲(例えばユーザ自身の位置から300m以内等)を取得し、ユーザの位置を基準としたユーザが向いている方向に存在するエリアに応じた収音データ群のうち、取得した距離の範囲にあるエリアに応じた収音データを選択する。具体的には、ユーザは
図6のステップS11において又は予め、自身の位置とエリアとの位置との間の距離の範囲を、例えば0m~300mといった具合に指定しておく。提供部103は、ステップS15において、抽出したエリア群のうち、上記の範囲に収まるエリアを特定し、そのエリアで収音された収音データを選択する。
【0038】
また、条件は、収音データが収音された時期に関する条件であってもよい。この場合、提供部103は、ユーザによって指定された時期の範囲(例えば過去1週間から過去2週間の間)を取得し、ユーザの位置を基準としたユーザが向いている方向に存在するエリアに応じた収音データ群のうち、取得した時期の範囲において収音された収音データを選択する。具体的には、ユーザは
図6のステップS11において又は予め時期の範囲を、例えば過去1週間から過去2週間の間といった具合に指定しておく。提供部103は、ステップS16において、上記の時期の範囲に収まる収音データを選択する。
【0039】
また、条件は、収音データによって示される音声のジャンルに関する条件であってもよい。音声のジャンルとは、例えばロック、ポップス、クラシック等の楽曲のジャンルであってもよいし、楽しい、悲しい、静か、賑やかなどの音声から受ける感情のジャンルであってもよい。収音データによって示される音声のジャンルは、例えば提供部103がその音声を解析して決めてもよいし、或いは、各エリアで収音された音声のジャンルを予め決めておいてもよい。この場合、サーバ装置100の記憶部113は、ユーザに関する情報が記述されたユーザ管理テーブルを記憶する。このユーザ管理テーブルにおいては、各ユーザを識別する識別情報であるユーザIDと、そのユーザの属性群(例えばユーザの性別、年齢、興味など)とが対応付けられている。ユーザの属性群はそのユーザによって事前に登録又は申告されたものである。提供部103は、ユーザの属性と収音データによって示される音声のジャンルとの関連度に応じた音量の音声をユーザに提供するようにしてもよい。例えば、提供部103は、収音データに含まれる音量パラメータについて、関連度が大きいと音量を大きくし、関連度が小さいと音量を小さくするという設定を行う。
ここにおいても、ユーザとエリアとの位置関係に応じて音響処理を施したのと同様に、提供部103は、ユーザの属性と音声のジャンルとの関連度に応じた音響処理を施した音声をユーザに提供するようにしてもよい。つまり、例えばユーザの属性と音声のジャンルとの関連度に応じてイコライザで低音域を低減させたり(例えば関連度が小さいと低い音の成分のみ小さくするなど)とか、ユーザの属性と音声のジャンルとの関連度に応じてディレイやリバーブといったエフェクトの強度を異ならせる(例えば関連度が小さいとリバーブの強度を高くするなど)ようにしてもよい。
【0040】
[変形例3]
提供部103は、収音データの一部の音声によって表される内容を隠蔽した状態でユーザ端末200に提供するようにしてもよい。例えば公共の場所において収音された音声には個人情報やプライバシーに関する情報が含まれることがあるので、例えば収音時の音声を加工したり、収音された音声に別の音声を重畳することで、収音された音声によって表される内容を隠蔽するようにしてもよい。
【0041】
[変形例4]
実施形態においては、個々のユーザが使用するユーザ端末200に収音データを送信することでそのユーザに音声を提供していたが、例えば各エリア内又はその近傍に設置されたスピーカ等の放音装置によってユーザに音声を提供してもよい。具体的には、第2取得部102は、例えば各所に配置された撮像装置と画像処理装置とで実現される。画像処理装置は、撮像装置によって撮像されたユーザの画像を解析し、その画像処理装置自身とユーザとの位置関係からユーザの位置を推定し、さらに、ユーザの顔の向きを画像認識により推定して、ユーザが該当するエリアのほうを向いているか否かを判断する。提供部103は、各エリア又はその近傍に設置されたスピーカ等の放音装置によって実現され、ユーザが該当するエリアのほうを向いていると判断されると音声を放音する。この場合、提供部103を実現する放音装置として指向性スピーカ等を用いることで、主に対象とするユーザに対してのみ音声を提供することが望ましい。
これにより、本発明に係る音声提供装置が商業店舗の店頭に設置され、店外のユーザがその商業店舗の方を見たときにそのユーザに対して商業店舗において収音された音声を放音することが可能となる。ユーザは、自身が向いた方向に存在する商業店舗において収音された、その商業店舗に特徴的な音声を聴くことによって、その商業店舗の特徴を把握することができるし、商業店舗の運営者は集客効果を期待することができる。
【0042】
[変形例5]
提供部103は、ユーザ端末200に提供する収音データを選択するときに1つの収音データを選択するのではなく、複数のエリアに対応する複数の収音データを選択してもよい。例えば
図7の例の場合、エリアAR004,AR005,AR006,AR007,AR009のうち、ユーザからの距離が閾値(L1とする)以下のエリアであるエリアAR005,AR006,AR007,AR009に対応する収音データを全て選択してもよい。この場合、例えば、ユーザの位置と各エリアとの位置との間の距離に応じてそれぞれの音声の音量を制御してもよい。例えば、提供部103は、収音データに含まれる音量パラメータについて、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離が大きいと音量を小さくし、エリアの位置及びユーザの位置の間の距離が小さいと音量を大きくするという設定を行う。
【0043】
[変形例6]
提供部103は、ユーザの向いている方向が変化すると、その変化に応じて連続的に収音データを変えながら提供するようにしてもよい。例えばユーザが首を回して自身が向いている方向を変えると、それぞれの方向に存在するエリアに応じた収音データの収音データが連続的に変化しながら聞こえるようになる。また、ユーザの向いている方向の変化率に応じて収音データを提供するようにしてもよい。これにより、例えば、本発明に係る収音データ提供装置が商業店舗の店頭に設置され、店外のユーザがその商業店舗の方を見たあとにそのほかの商業店舗を見るなどユーザの向いている方向が変わったタイミングや、歩き始めて向く方向が変化したユーザに対して収音データを提供するようにしてもよい。
また、提供部103は、ユーザの位置が変化すると、その位置に応じて連続的に収音データを変えながら提供するようにしてもよい。例えばユーザが移動すると、その移動中のユーザの位置変化に応じた収音データが連続的に変化しながら聞こえるようになる。また、ユーザの向いている位置の変化率に応じて収音データを提供するようにしてもよい。
つまり、提供部103は、ユーザの位置又は方向の変化に応じて収音データを変化させて提供するようにしてもよい。
【0044】
[変形例7]
本発明における収音データは、ユーザに提供されるタイミングにおいてリアルタイムに収音された音を示すものに限らず、ユーザに提供されるタイミングよりも前に収音された音を示すものであってもよい。また、収音された音そのものではなく、収音された音に対してなんらかの音響処理が施されたデータ、つまり収音された音を用いて生成されたデータも、本発明における収音データという用語の意味に含まれる。
提供部103は、収音データに加えて、その収音データが収音されたエリアに関する音声以外のデータ(例えばエリアに関する情報を記述したテキストデータやそのエリアに関連する画像を表す画像データ)を提供してもよい。
【0045】
[変形例8]
上記実施形態の説明に用いた
図5のブロック図は機能単位のブロックを示している。これらの各機能ブロックは、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。従って、本発明に係る音声提供装置は、実施形態で説明したようにそれぞれの機能の全てを一体に備えた装置によっても実現可能であるし、それぞれの装置の機能を、さらに複数の装置に分散して実装したシステムであってもよい。また、上記実施形態で説明した処理の手順は、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。実施形態で説明した方法については、例示的な順序で各ステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0046】
本発明は、音声提供装置が行う情報処理方法といった形態でも実施が可能である。つまり、本発明は、収音位置に関連付けられた収音データを取得する第1取得ステップと、ユーザの位置と当該ユーザが向いている方向とを取得する第2取得ステップと、第1取得ステップにおいて取得された収音データと、当該収音データに関連付けられた位置と第2取得ステップにおいて取得された位置及び方向との関係に応じて当該収音データの放音処理を行うためのパラメータとを提供する提供ステップとを備えることを特徴とする収音データ提供方法を提供する。また、本発明は、音声提供装置置としてコンピュータを機能させるためのプログラムといった形態でも実施が可能である。かかるプログラムは、光ディスク等の記録媒体に記録した形態で提供されたり、インターネット等の通信網を介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
100・・・サーバ装置、11・・・制御部、12・・・通信部、13・・・記憶部、101・・・第1取得部、102・・・第2取得部、103・・・提供部、200・・・ユーザ端末、21・・・制御部、22・・・通信部、23・・・記憶部、24・・・再生部、25・・・方向検出部、26・・・測位部、27・・・UI部、201・・・検出部、202・・・通知部、203・・・再生部、300・・・収音装置、900・・・ネットワーク。