(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置及び電動アシスト車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20220104BHJP
B62M 6/50 20100101ALI20220104BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M6/50
B60T8/171
(21)【出願番号】P 2017107159
(22)【出願日】2017-05-30
【審査請求日】2020-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】保坂 康夫
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘三
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼岡 太一
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028970(JP,A)
【文献】特開2005-153864(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45 - 6/50
B62J 45/40 - 45/423
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アシスト車の走行状態に応じて、前記電動アシスト車のバッテリに対する回生を実施すべきか否かを判定する判定部と、
前記電動アシスト車の第1のブレーキセンサに応じて実施される回生より前に行われ
且つブレーキに関連してユーザの減速意図を表す第1の所定の準備動作、または、前記電動アシスト車のブレーキレバーが移動する前
に行われ且つブレーキに関連してユーザの減速意図を表す第2の所定の準備動作を検出し、且つ前記判定部が回生を実施すべきと判定した場合に、前記電動アシスト車のモータに対して回生制御を実施する回生制御部と、
を有するモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記第2の所定の準備動作が、前記ブレーキレバーが移動する前に前記電動アシスト車のブレーキレバーへの接触又は接近を検出するセンサからの信号に応じて検出される
請求項1記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記第1の所定の準備動作が、前記電動アシスト車のブレーキレバーを、前記電動アシスト車のハンドルグリップに対する第1の方向とは異なる第2の方向に動かす動作を検出する第2のブレーキセンサからの信号に応じて検出される
請求項1記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記第1のブレーキセンサに応じて実施される回生は、前記ブレーキレバーの操作量が第1の閾値以上であることを検出した場合に実施され、
前記第1の所定の準備動作は、前記第1の閾値より小さい第2の閾値以上である、前記ブレーキレバーの操作量に係る操作を検出する第2のブレーキセンサからの信号に応じて検出される
請求項1記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つ記載のモータ駆動制御装置を有する電動アシスト車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト車の回生制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車においても、回生制御を行うことで、モータで発電した電力でバッテリを充電して、商用電源を用いた一度の充電で走行可能な距離を伸ばすことができる。
【0003】
このような回生制御を実施する時期については、(A)ユーザの指示に従って実施される場合と、(B)走行状態に基づき自動的に実施する場合とが知られている。(A)の場合には、ユーザによる明示的な指示があるので、従来では、その指示に直接的に応答して回生制御が実施される。一方、(B)の場合、例えば加速度を利用して回生制御の実施時期を特定することになる。
【0004】
ここで(B)の場合に着目すると、加速度といった走行状態に基づき回生制御を実施してしまうと、ユーザの意図に反して、回生制御による制動力を働かせてしまう場合がある。例えば、下り坂を走行する場合、自然と加速度が増加するため自動的に回生制御を実施することになるが、ユーザは減速したくないと考えている場合もある。そうなると、違和感のある乗り味となってしまう。
【0005】
また、(A)の場合、ユーザの指示に直接的に応じて回生制御が行われるが、必ずしも回生制御を実施するのに適切な時期に指示がなされるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-29414号公報
【文献】特許第5655989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の目的は、一側面としては、回生制御を実施することが好ましい時期でもユーザの意図に従って回生制御を実施できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータ駆動制御装置は、(A)電動アシスト車の走行状態に応じて、電動アシスト車のバッテリに対する回生を実施すべきか否かを判定する判定部と、(B)ユーザの減速意図を表す所定の動作を検出し、且つ判定部が回生を実施すべきと判定した場合に、電動アシスト車のモータに対して回生制御を実施する回生制御部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
一側面によれば、回生制御を実施することが好ましい時期でもユーザの意図に従って回生制御を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、電動アシスト自転車の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態において第2ブレーキセンサを説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態における第2ブレーキセンサを説明するための図である。
【
図4】
図4は、モータ駆動制御装置及びバッテリパックの機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、回生制御の実施判定を説明するための図である。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施の形態において、第1の方向にブレーキレバーを動かした場合の信号変化を表す図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施の形態において、第2の方向にブレーキレバーを動かした場合の信号変化を表す図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態における処理フローを示す図である。
【
図8B】
図8Bは、実施の形態における処理フローを示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態における第2ブレーキセンサを説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態において、第2ブレーキセンサによる接触検出を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態において、第2ブレーキセンサによる近接検出を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第4の実施の形態における第2ブレーキセンサを説明するための図である。
【
図13】
図13は、第5の実施の形態における第2ブレーキセンサを説明するための図である。
【
図14】
図14は、第5の実施の形態において、ブレーキレバー操作と信号変化の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の例をもって説明する。しかしながら、本発明の実施の形態の適用対象は、電動アシスト自転車だけに限定されず、人力に応じて移動する移動体(例えば、台車、車いす、昇降機など)の移動を補助するモータなどに対するモータ駆動制御装置についても適用可能である。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における電動アシスト車である電動アシスト自転車の一例を示す外観図である。この電動アシスト自転車1は、モータ駆動装置を搭載している。モータ駆動装置は、バッテリパック101と、モータ駆動制御装置102と、トルクセンサ103と、ペダル回転センサ104と、モータ105と、操作パネル106と、ブレーキセンサ107と、第2ブレーキセンサ108とを有する。
【0013】
また、電動アシスト自転車1は、前輪、後輪、前照灯、フリーホイール、変速機等も有している。
【0014】
バッテリパック101は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、他種の電池、例えばリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池などを含む。そして、バッテリパック101は、モータ駆動制御装置102を介してモータ105に対して電力を供給し、回生時にはモータ駆動制御装置102を介してモータ105からの回生電力によって充電も行う。
【0015】
トルクセンサ103は、クランク軸に取付けられたホイールに設けられており、運転者によるペダルの踏力を検出し、この検出結果をモータ駆動制御装置102に出力する。また、ペダル回転センサ104は、トルクセンサ103と同様に、クランク軸に取付けられたホイールに設けられており、回転に応じた信号をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0016】
モータ105は、例えば周知の三相直流ブラシレスモータであり、例えば電動アシスト自転車1の前輪に装着されている。モータ105は、前輪を回転させるとともに、前輪の回転に応じてローターが回転するように、ローターが前輪に連結されている。さらに、モータ105はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転情報(すなわちホール信号)をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0017】
モータ駆動制御装置102は、モータ105の回転センサ、ブレーキセンサ107、第2ブレーキセンサ108、トルクセンサ103及びペダル回転センサ104等からの信号に基づき所定の演算を行って、モータ105の駆動を制御し、モータ105による回生の制御も行う。
【0018】
操作パネル106は、例えばアシストの有無に関する指示入力(すなわち、電源スイッチのオン及びオフ)、アシスト有りの場合には希望アシスト比等の入力をユーザから受け付けて、当該指示入力等をモータ駆動制御装置102に出力する。また、操作パネル106は、モータ駆動制御装置102によって演算された結果である走行距離、走行時間、消費カロリー、回生電力量等のデータを表示する機能を有する場合もある。また、操作パネル106は、LED(Light Emitting Diode)などによる表示部を有している場合もある。これによって、例えばバッテリパック101の充電レベルや、オンオフの状態、希望アシスト比に対応するモードなどを運転者に提示する。
【0019】
ブレーキセンサ107は、運転者のブレーキ操作を検出して、ブレーキ操作に関する信号(例えば、ブレーキの有無を表す信号、又はブレーキレバーの操作量に応じた値を表す信号)をモータ駆動制御装置102に出力する。具体的には、磁石とリードスイッチを用いたセンサである。
【0020】
より詳しくは、ブレーキセンサ107は、例えば磁石と周知のリードスイッチとから構成されている。磁石は、ブレーキレバーを固定するとともにブレーキワイヤが送通される筐体内において、ブレーキレバーに連結されたブレーキワイヤに固定されている。そして、ブレーキレバーが手である程度引かれたときにリードスイッチをオン状態にするようになっている。また、リードスイッチは筐体内に固定されている。なお、ブレーキセンサ107は、このような方式に限定されるものではなく、光学的にブレーキレバーの操作を検出する方法、機械的なスイッチによりブレーキレバーの操作を検出する方法、電気抵抗の変動によりブレーキレバーの操作を検出する方法などであってもよい。
【0021】
第2ブレーキセンサ108は、ユーザの減速意図を表す所定の動作を検出するためのセンサである。また、第2ブレーキセンサ108は、ユーザによるブレーキ指示(より具体的には機械ブレーキの作動指示)の準備動作を検出するためのセンサでもある。本実施の形態に係る第2ブレーキセンサ108は、ユーザがブレーキ指示の準備動作として、ブレーキレバーに触れる動作を検出するためのセンサの一例として、ブレーキレバーをハンドルグリップに向けて移動させる第1の方向とは異なる第2の方向に軽く押す動作(軽く手をかける動作)を検出するためのセンサである。手をブレーキレバーに触れる又は近づける動作は、ユーザに減速意図があるとみなせるので、これを検出して回生制御の実施判定に用いるものである。
【0022】
より具体的には、
図2に示すように、ブレーキレバー122は、手が触れて軽く押されると、点線で表される初期状態Aから、第2の方向に押されて第2状態Bになる。第2状態Bになると、第1の方向にハンドルグリップ121(以下、簡略化してグリップ121とも呼ぶ)に引くことができるようになり、ブレーキセンサ107により、ブレーキレバー122の操作が検出されるようになる。
【0023】
本実施の形態では、第2ブレーキセンサ108は、初期状態Aから第2状態Bへの状態遷移を検出するセンサである。具体的には、磁石とリードスイッチを用いたセンサである。例えば、リードスイッチを筐体に固定して、磁石をブレーキレバー122に固定して、ブレーキレバー122が第2の方向にある程度動くとリードスイッチがオン状態になるように設置すればよい。
【0024】
図3に、ハンドルグリップ121及びブレーキレバー122の先端の動きを模式的に示した図を示す。上でも述べたように、ブレーキレバー122に触れて軽く押すと、ブレーキレバー122の先端は、初期状態Aの位置から第2の方向に移動して第2状態Bの位置へ移動する。第2ブレーキセンサ108は、このようなブレーキレバー122への接触を含む操作を検出する。その後、ユーザは、ブレーキレバー122を通常どおりグリップ121に向けた第1の方向に引くブレーキレバー操作を行うことになる。
【0025】
図4に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置102及びバッテリパック101の構成例を示す。
図4では、バッテリパック101とモータ駆動制御装置102とが接続された状態を示しており、モータ駆動制御装置102には、モータ105と、トルクセンサ103と、ペダル回転センサ104と、操作パネル106と、ブレーキセンサ107と、第2ブレーキセンサ108とが接続されている。
【0026】
本実施の形態に係るバッテリパック101は、BMS(Battery Management System)と呼ばれるバッテリ管理システム1010と、電池セル1015とを有している。バッテリ管理システム1010は、接続部a乃至cを介してモータ駆動制御装置102と接続されており、モータ駆動制御装置102における制御システム1022と接続部bを介して通信可能になっている。接続部a及びcは放電及び充電用の接続部である。
【0027】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置102は、FET(Field Effect Transistor)S11乃至S16を含むブリッジ回路と、FET_S17と、モータ駆動制御部1023と、制御システム1022とを有する。なお、FETもスイッチの一種である。
【0028】
モータ駆動制御部1023は、制御システム1022からの指示に応じて、FET_S11乃至S17のスイッチングを制御する。例えば、モータ105を力行駆動又は回生駆動する場合には、バッテリパック101に接続部aを介して接続されているFET_S17をオンにして、所定のパターンでFET_S11乃至S16をオン又はオフさせる。
【0029】
制御システム1022は、制御部221を有する。制御部221は、専用の回路で実装される場合もあるが、例えば所定のプログラムを実行するマイクロプロセッサ2221と、当該所定のプログラムを記録したり、処理途中のデータを格納するメモリ2222(RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを含む)とを有する場合もある。すなわち、マイクロプロセッサ2221が、所定のプログラムを実行することで制御機能が実現される。
【0030】
次に、
図5に、制御部221における本実施の形態に係る機能ブロック構成を示す。本実施の形態に係る制御部221は、検出部2301と、自動回生判定部2302と、回生制御部2303とを有する。
【0031】
検出部2301は、第2ブレーキセンサ108からの入力に基づきブレーキ指示の準備動作がなされたことを検出して、「自動回生許可」を回生制御部2303に出力する。なお、検出部2301の出力は、「自動回生許可」を出力している状態を「自動回生許可=ON」と表すものとし、「自動回生許可」を出力していない状態を「自動回生許可=OFF」と表すものとする。
【0032】
自動回生判定部2302は、従来と同様に走行状態(例えば、モータ105から出力されるホール信号から算出される車速、加速度など、ペダル回転センサ104から出力される信号から算出されるペダル回転速度など)に基づき、回生制御を行うことが好ましいことを表す「自動回生」を回生制御部2303に指示する。なお、自動回生判定部2302の出力は、「自動回生」を指示している状態を「自動回生=ON」と表すものとし、「自動回生」を指示していない状態を「自動回生=OFF」と表すものとする。
【0033】
回生制御部2303は、検出部2301及び自動回生判定部2302からの出力と、ブレーキセンサ107からの入力と、走行状態の情報とに基づき、回生制御の実施の有無と、実施する場合には回生量について決定して、モータ駆動制御部1023に指示する処理を実行する。なお、回生量について決定する処理については、本実施の形態の主要部ではないので詳細な説明は省略する。
【0034】
本実施の形態では、回生制御部2303は、ブレーキセンサ107からのブレーキレバー操作入力に応じて回生制御の実施の有無を判定することとは別に、検出部2301及び自動回生判定部2302からの出力に基づき回生制御の実施の有無を判定する。より具体的な基本動作を
図6を用いて説明する。
【0035】
図6(a)は、自動回生判定部2302の出力の時間変化を表しており、走行状態から時刻t1までは「自動回生=OFF」であり、時刻t1から時刻t2まで「自動回生=ON」となったとする。一方、
図6(b)は、検出部2301の出力の時間変化を表しており、時刻t3までは「自動回生許可=OFF」であり、時刻t3から時刻t4まで「自動回生許可=ON」となったとする。
図6(c)は、回生制御部2303が回生制御を実施する期間を表しており、「自動回生=ON」及び「自動回生許可=ON」となった期間である、時刻t3から時刻t2まで回生制御を実施する。
【0036】
すなわち、走行状態からして「自動回生=ON」となっても、第2ブレーキセンサ108からの出力によりユーザからの減速意図を表す動作が検出されなければ、回生制御は行われない。また、第2ブレーキセンサ108からの出力によりユーザからの減速意図を表す動作が検出されていても、自動回生判定部2302からの出力が回生制御を行うことが好ましいことを表す「自動回生=ON」となっていなければ、自動的に回生制御を実施することはない。なお、本実施の形態では、ユーザが、さらにブレーキレバー122を第1の方向に引く操作をすると、回生制御部2303は、その操作に応じて、回生制御を実施する。但し、これはユーザからの直接的な指示に応じた回生制御であり、「自動回生許可=ON」と「自動回生=ON」とが検出されたことに応じた回生制御とは異なる。
【0037】
本実施の形態を
図7A及び7Bを用いてより詳細に説明する。
図7Aの縦軸は、ブレーキセンサ107からの入力に基づく回生制御の有無(ここでは「ブレーキ回生=ON又はOFF」)を表し、横軸は第1の方向の手の動き又は第1の方向のブレーキレバー操作量を表している。同様に、
図7Bの縦軸は、自動回生許可=ON又はOFFを表しており、横軸は第2の方向の手の動き又は第2の方向のブレーキレバー操作量を表している。
【0038】
本実施の形態では、
図7Bに示すように、手がブレーキレバー122に接触していない状態から、手がブレーキレバー122に触れて手の重みがブレーキレバー122にかけられると、ブレーキレバー122が第2の方向に動きはじめ、このブレーキレバー122の動きを第2ブレーキセンサ108が検出して検出信号を制御システム1022に出力する。よって、検出部2301は、このような検出信号に応じて出力を「自動回生許可=ON」にする。なお、「自動回生許可=ON」は、第2の方向におけるブレーキレバー可動域と同じ区間で出力されるような例を示したが、第2の方向においてある程度のブレーキレバー操作量が検出されると、すなわち第2の方向におけるブレーキレバー操作量が閾値th2を超えると「自動回生許可=ON」にするような構成であっても良い。なお、ブレーキの遊び域は、機械ブレーキが作用しない領域を表している。
【0039】
本実施の形態では、走行状態からして回生制御を実施すべき状態であっても、「自動回生許可=ON」となるような、ユーザによるブレーキ指示の準備動作が検出されなければ、回生制御は行われないが、ユーザによるブレーキ指示の準備動作が検出されれば、ユーザの減速意図があるものとして、回生制御を実施する。ブレーキレバー122が第1の方向に動かされていても「自動回生許可=ON」は継続される。
【0040】
一方、本実施の形態では、
図7Aに示すように、ブレーキレバー122に手が接触していない状態から、手がブレーキレバー122に触れてブレーキレバー122が第2の方向に動き終わった後、第1の方向におけるブレーキレバー122の操作量が閾値th1を超えると、回生制御部2303は、「ブレーキ回生=ON」として回生制御を実施する。このように、ブレーキの遊び域だけではなく、ブレーキパッドが車輪に接触した後の状態である機械ブレーキ域でも、「ブレーキ回生=ON」となる。
【0041】
【0042】
まず、回生制御部2303は、検出部2301が第2ブレーキセンサ108からの入力に基づき「自動回生許可=ON」を出力しているか否かを判定する(ステップS101)。「自動回生許可=ON」となっていない場合には、例えば所定時間待機する。
【0043】
一方、「自動回生許可=ON」となっていると判定した場合、回生制御部2303は、自動回生判定部2302が走行状態に基づき「自動回生=ON」を出力しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0044】
「自動回生=ON」となっていると判定した場合、回生制御部2303は、回生制御を実施する(ステップS107)。その後処理は、端子Aを介して
図8Bの処理に移行する。
【0045】
一方、「自動回生=ON」となっていないと判定した場合には、回生制御部2303は、所定のブレーキレバー操作が実施されているか、すなわち上で述べたようにブレーキセンサ107からのブレーキレバー122の操作量が閾値th1以上となっているか否かを判定する(ステップS105)。所定のブレーキレバー操作が実施されていると判定した場合、処理はステップS107に移行する。一方、所定のブレーキレバー操作が実施されていないと判定した場合には、処理はステップS101に移行する。
【0046】
このように、上で述べた2つのケースのいずれかに該当すると判断されると、回生制御が開始される。
【0047】
回生制御が開始された後は端子A以降の処理であり、
図8Bの処理に移行する。回生制御部2303は、上で述べた所定のブレーキレバー操作が行われているのか否かを判断する(ステップS109)。所定のブレーキレバー操作が行われていると判定した場合には、処理は端子Bを介してステップS107に戻る。
【0048】
一方、所定のブレーキレバー操作が行われていないと判定した場合、回生制御部2303は、自動回生判定部2302が走行状態に基づき「自動回生=ON」を出力しているか否かを判定する(ステップS111)。「自動回生=ON」を出力していると判定した場合には、回生制御部2303は、検出部2301が第2ブレーキセンサ108からの出力に基づき「自動回生許可=ON」を出力しているか否かを判定する(ステップS113)。
【0049】
「自動回生許可=ON」を出力していると判定した場合には、処理は端子Bを介してステップS107に戻る。一方、「自動回生許可=ON」を出力していないと判定した場合には、回生制御部2303は、回生制御を停止する(ステップS115)。また、「自動回生=ON」を出力していないと判定した場合も同様に、処理はステップS115に移行する。
【0050】
以上のような処理を、電源断となるような処理終了になるまで端子Cを介して繰り返す(ステップS117)。
【0051】
このような処理を実行することで、回生制御を実施することが好ましい時期でもユーザの意図に従って回生制御を実施すべきか否かを決定できるようになる。
【0052】
特に、本実施の形態のように、例えばブレーキレバー122へ手をかける動作を検出することで、ユーザのブレーキ指示の準備動作を把握でき、ユーザの減速意図が検出できるので、当該ユーザの減速意図に従って走行状態に基づく自動回生が有効化されるようになる。
【0053】
なお、上で述べた例では、検出部2301を設ける例を示したが、第2ブレーキセンサ108からの入力が、
図7Bに示すような「自動回生許可=ON」と同じような信号であれば、検出部2301を設けずとも良い。
【0054】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、ブレーキレバー122へ手をかけて、ブレーキレバー122が第2の方向に動くことを検出することで、走行状態に基づく回生制御を有効化していた。しかし、ユーザのブレーキ指示の準備動作は、他の方法で検出しても良い。
【0055】
本実施の形態では、例えば第2ブレーキセンサ108として接触センサを用いる。但し、第2の方向へのブレーキレバー122の移動は検出しない。例えば、
図9に示すように、接触センサをブレーキレバー122の手が触れる部分に設ける。接触センサは、手が触れたことを検出して、当該検出を表す信号を、制御システム1022に出力する。
【0056】
このような接触センサを用いる場合には、
図7Bとは異なり、
図10に示すような「自動回生許可」の出力態様となる。すなわち、手がブレーキレバー122に触れるまでは、「自動回生許可=OFF」となっているが、手がブレーキレバー122に触れると、検出部2301は、接触センサからの検出を表す信号に応じて、「自動回生許可=ON」を出力するようになる。これは、ブレーキの遊び域及びブレーキレバーの可動域で継続される。
【0057】
このような場合にも、
図8AのステップS101及び
図8BのステップS113においても、
図10で示したようなタイミングで「自動回生許可=ON」が出力されるので、それに応じて回生制御の実施の可否を判断することになる。
【0058】
[実施の形態3]
図9において、接触センサではなく、代わりに近接センサを、第2ブレーキセンサ108として採用しても良い。本実施の形態では、ブレーキ指示の準備動作として、手をブレーキレバー122へ近付けることを検出するものである。
【0059】
このような近接センサを用いる場合には、
図10とは異なり、
図11に示すような「自動回生許可」の出力態様となる。すなわち、手がブレーキレバー122に設けられた近接センサの検出範囲に入る前であれば、「自動回生許可=OFF」となっているが、手が近接センサの検出範囲に入ると、検出部2301は、近接センサからの検出を表す信号に応じて、「自動回生許可=ON」を出力するようになる。これは、ブレーキの遊び域及びブレーキレバーの可動域で継続される。
【0060】
このような場合にも、
図8AのステップS101及び
図8BのステップS113においても、
図11で示したようなタイミングで「自動回生許可=ON」が出力されるので、それに応じて回生制御の実施の可否を判断することになる。
【0061】
[実施の形態4]
第3の実施の形態のような近接センサではなく、光センサを用いるようにしても良い。具体的には、
図12に示すように、ブレーキレバー122の根元に設けられた光センサからブレーキレバー122の先端方向へのセンサラインXよりブレーキレバー122側に手をブレーキレバー122方向に近付けると、光センサが手の接近を検出して、当該検出信号を制御システム1022に出力するようにしてもよい。この例でも、ブレーキ指示の準備動作として、手をブレーキレバー122に近付けることを検出するものである。
【0062】
この例でも、
図11に示すような「自動回生許可」の出力態様となる。すなわち、手がブレーキレバー122に設けられた光センサのセンサラインXより外側にあれば、「自動回生許可=OFF」となっているが、手がセンサラインXより内側に入ると、検出部2301は、近接センサからの検出を表す信号に応じて、「自動回生許可=ON」を出力するようになる。これは、ブレーキの遊び域及びブレーキレバーの可動域で継続される。
【0063】
このような場合にも、
図8AのステップS101及び
図8BのステップS113においても、
図11で示したようなタイミングで「自動回生許可=ON」が出力されるので、それに応じて回生制御の実施の可否を判断することになる。
【0064】
[実施の形態5]
さらに、
図13に模式的に示すように、ユーザがブレーキレバー122を引く動作の範囲を、位置Dからグリップ121への方向において一般的なブレーキレバー操作に係る第2区間と、当該ブレーキレバー操作の準備動作として位置Cから位置Dへの方向においてブレーキレバー122を引く動作に係る第1区間とに分けて、第1区間における動作を新たに検出するようにしても良い。この場合、第2区間用のブレーキセンサ107とは別に第1区間用の第2ブレーキセンサ108を採用する。第2ブレーキセンサ108は、ブレーキセンサ107と原理的には同じものである。
【0065】
このような場合には、ユーザにも第1区間と第2区間とを区別できるようにすることが好ましい。例えば、ブレーキレバー122につながれているバネのバネ定数を、第1区間のばね定数<第2区間のばね定数といったように、2種類にする。このようにすれば、ユーザが、ブレーキレバー122を引くときに、第1区間から第2区間に入ると堅くなり、さらにブレーキパッドが車輪に接触して機械ブレーキ域に入るとより堅くなる、というような感触で区別できるようになる。但し、第1区間において、ブレーキレバー122の自重や振動にて第2ブレーキセンサ108が検出信号を出力しないようなばね定数のバネを用いる。
【0066】
このような構成の場合には、
図7A及び7Bとは異なり、
図14に示すような「自動回生許可」の出力態様となる。
図14(a)は、手がブレーキレバー122に接触した後において、第1区間と第2区間の区分けがある点以外は、
図7Aと同じである。
図14(a)では、ブレーキセンサ107の検出結果によってブレーキレバー122の操作量が閾値th4以上であることが検出されると「ブレーキ回生=ON」となる。
【0067】
一方、
図14(b)では、第2ブレーキセンサ108からの検出結果によってブレーキレバー122の操作量が閾値th3以上であることが検出されると「自動回生許可=ON」が出力されるようになる。「自動回生許可=ON」は、閾値th3以上の第1区間だけではなく、第2区間の間も継続される。
【0068】
このような場合にも、
図8AのステップS101及び
図8BのステップS113においても、
図14で示したようなタイミングで「自動回生許可=ON」が出力されるので、それに応じて回生制御の実施の可否を判断することになる。
【0069】
本実施の形態では、ブレーキセンサ107及び第2ブレーキセンサ108を用いて、第1区間及び第2区間を区別する例を示したが、1つのブレーキセンサ107によってブレーキレバー122の操作量が連続的に検出できれば、当該操作量に基づき「自動回生許可=ON」「ブレーキ回生=ON」を生じさせるようにしても良い。
【0070】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものでは無い。例えば、第2ブレーキセンサ108については、上で述べたもの以外でも、上記の目的に即した他のセンサであっても良い。
【0071】
また、
図4及び
図5のような機能ブロック構成は一例であって、複数の機能ブロックが1つに統合されたり、1つの機能ブロックが複数に分割されたりする場合もある。
【0072】
処理フローについても、処理結果が変わらない限り、処理を並列実施したり、順番を入れ替えたりしても良い。
【0073】
さらに、複数の実施の形態を組み合わせるような構成を採用しても良いし、1つの実施の形態について説明した事項を選択的に採用しても良い。
【0074】
なお、ブレーキセンサ107及び第2ブレーキセンサ108を片方のハンドルに設けている例を示したが、両方のハンドルに設けるようにしても良い。例えば、いずれかのハンドルのセンサから「自動回生許可=ON」が出力されるようになった場合に、処理を行うようにしても良いし、両方のハンドルのセンサでブレーキ指示の準備動作が検出された場合に「自動回生許可=ON」が出力されるようにしても良い。
【0075】
なお、「自動回生=ON」は、ユーザの指示によって強制的に設定される場合もある。例えば、省エネモードが設定された場合やアシスト弱モードなどである。さらに、第2ブレーキセンサ108ではなく、単純に所定のボタンをユーザが押すことによって「自動回生許可=ON」にするようにしても良い。
【0076】
検出部2301は、ブレーキレバー122の操作量を表す信号を受信する場合には、当該操作量が閾値以上となっているか否かを判定するようにしても良い。また、第2ブレーキセンサ108からの入力信号によっては、検出部2301を設けずとも良い。さらに、ブレーキセンサ107からの入力が操作量を表す場合には、回生制御部2303は、その操作量に応じて回生量を変化させるようにしても良い。
【0077】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0078】
本実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、(A)電動アシスト車の走行状態に応じて、電動アシスト車のバッテリに対する回生を実施すべきか否かを判定する判定部と、(B)ユーザの減速意図を表す所定の動作を検出し、且つ判定部が回生を実施すべきと判定した場合に、電動アシスト車のモータに対して回生制御を実施する回生制御部とを有する。
【0079】
このようにすれば、判定部によって走行状態によれば回生制御を実施することが好ましい時期であっても、ユーザの減速意図を表す所定の動作が検出されなければ、回生制御がなされず電動アシスト車は減速されず、ユーザの減速意図を表す所定の動作が検出されれば、その意図に従って回生制御がなされて電動アシスト車の減速もなされるようになる。
【0080】
なお、上で述べたユーザの減速意図を表す所定の動作が、ユーザによるブレーキ指示の所定の準備動作である場合もある。このようにすれば、ユーザが通常の運転にて自然と行う操作の中で、ユーザの減速意図を表す動作を検出できるようになるため、ユーザにわずらわしさを感じさせずにすむ。
【0081】
さらに、上で述べた所定の準備動作が、電動アシスト車のブレーキレバーへの接触又は接近を検出するセンサからの信号に応じて検出されるようにしても良い。ユーザによるブレーキ指示の準備動作として、ユーザの減速意図を容易に検出できるようになる。
【0082】
また、上で述べた所定の準備動作が、電動アシスト車のブレーキレバーを、電動アシスト車のハンドルグリップに対する第1の方向とは異なる第2の方向に動かす動作を検出するセンサからの信号に応じて検出されるようにしても良い。例えば、ブレーキレバーに手をかけることで第2の方向にブレーキレバーが動くようにすれば、ユーザの自然な動作の中で、ユーザによるブレーキ指示の準備動作として、ユーザの減速意図を表す動作が検出できるようになる。
【0083】
さらに、上で述べた回生制御部は、ブレーキレバーの操作量が第1の閾値以上であることを検出した場合にも、回生制御を実施するようにしても良い。このような場合、上で述べた所定の準備動作は、第1の閾値より小さい第2の閾値以上である、ブレーキレバーの操作量に係る操作により検出されるようにしても良い。このように、ブレーキレバーの操作によって回生制御を指示する場合には、回生制御の直接的な指示と認識されない操作量の範囲において、ユーザの減速意図を表す動作を検出するようにして判定部の判定を有効化するものである。
【0084】
このような構成は、実施の形態に述べられた事項に限定されるものではなく、実質的に同一の効果を奏する他の構成にて実施される場合もある。
【符号の説明】
【0085】
101 バッテリパック
102 モータ駆動制御装置
103 トルクセンサ
104 ペダル回転センサ
105 モータ
106 操作パネル
107 ブレーキセンサ
108 第2ブレーキセンサ