IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建物のバルコニー構造 図1
  • 特許-建物のバルコニー構造 図2
  • 特許-建物のバルコニー構造 図3
  • 特許-建物のバルコニー構造 図4
  • 特許-建物のバルコニー構造 図5
  • 特許-建物のバルコニー構造 図6
  • 特許-建物のバルコニー構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】建物のバルコニー構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E04B1/00 501M
E04B1/00 501B
E04B1/00 501J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017160334
(22)【出願日】2017-08-23
(65)【公開番号】P2019039176
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 智紀
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-102803(JP,U)
【文献】特開2011-012535(JP,A)
【文献】特開平06-248706(JP,A)
【文献】実開平05-092320(JP,U)
【文献】米国特許第04263757(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と天井大梁と床大梁とからなる躯体を有する複数の建物ユニットを備え、少なくともいずれかの前記建物ユニットが離し置きされて構築される建物に適用され、その建物に設けられるキャンチ式のバルコニーの構造であって、
建物上階部の前記建物ユニットとして、所定の離間部を挟んで並べて設けられる第1建物ユニットと第2建物ユニットとを有し、それら第1建物ユニット及び第2建物ユニットに跨がるようにして前記バルコニーが設けられており、
前記バルコニーは、前記第1建物ユニットの躯体に対して固定される第1バルコニーユニットと、前記第2建物ユニットの躯体に対して固定される第2バルコニーユニットとを有しており、それら各バルコニーユニットの間であって、かつ前記離間部の外側となる位置において、前記各バルコニーユニットに対して中間部材が連結されることで構築されており、
前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットはそれぞれ、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記躯体に固定され該躯体から張り出して設けられる張出フレームと、その張出フレーム上に固定される床面材とを有し、
前記中間部材は、中間床面材を有し、
前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットの前記各張出フレームに、前記中間床面材における各バルコニーユニットの横並び方向の両端が載置された状態で、前記中間床面材が前記各張出フレームに固定されていることを特徴とする建物のバルコニー構造。
【請求項2】
前記張出フレームは、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記柱に固定される張出梁を有しており、
前記第1バルコニーユニットにおいて前記離間部に隣合う前記柱に固定される前記張出梁と、前記第2バルコニーユニットにおいて前記離間部に隣合う前記柱に固定される前記張出梁とに載置された状態で、前記中間床面材が固定されている請求項に記載の建物のバルコニー構造。
【請求項3】
前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記躯体には、前記張出フレームの建物ユニット側端部を支持する支持部が設けられており、
前記張出フレームが前記支持部により支持された状態で、前記各バルコニーユニットが固定されている請求項又はに記載の建物のバルコニー構造。
【請求項4】
前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットはそれぞれ、前記張出フレームに固定される壁パネルを有し、
前記中間部材は、中間壁パネルを有し、
前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットの前記各壁パネルに対して前記中間壁パネルが固定されている請求項乃至のいずれか1項に記載の建物のバルコニー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のバルコニー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニットを組み合わせてなるユニット式建物において、建物ユニットどうしを水平方向に互いに離間させて配置した構造(すなわち、建物ユニットを離し置きした構造)を用いたものが知られている。例えば特許文献1には、複数階建てのユニット式建物において、下階建物ユニットの少なくとも一部を傾斜屋根の両端位置を基準として左右に離隔配置し、これらの左右に離隔配置される下階建物ユニットの間において傾斜屋根の勾配に対応して形成される隙間をジョイント部材で閉塞する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-159582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように建物ユニットを離し置きして構築されるユニット式建物では、複数の建物ユニットの組み合わせより建物本体が構築される場合においてその建物プランの多様化が可能となっている。すなわち、建物ユニット間の離し置き寸法を調整することで、規格化された建物ユニットの組み合わせだけでなく、離し置き部分も含めて建物の大きさを設定することができ、ひいてはユーザのニーズに細かく対応できるものとなっている。
【0005】
また、こうして建物ユニットが離し置き配置される建物ユニットにおいて、建物の屋外側にバルコニーを取り付けるプランが考えられる。この場合特に、互いに離し置きされた2つの建物ユニットに、それら各建物ユニットに跨がるようにしてバルコニーを取り付けるプランが考えられる。しかしながら、現状では、互いに離し置きされた建物ユニットに対してバルコニーを取り付けることに関して、その実用化技術が存在しておらず、実用化技術の構築が望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物ユニットが離し置きされて構築される建物において離し置き部分を跨ぐバルコニーを好適に設けることができる建物のバルコニー構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
第1の発明は、
柱(11)と天井大梁(12)と床大梁(13)とからなる躯体を有する複数の建物ユニット(10)を備え、少なくともいずれかの前記建物ユニットが離し置きされて構築される建物に適用され、その建物に設けられるキャンチ式のバルコニー(30)の構造であって、
建物上階部の前記建物ユニットとして、所定の離間部(23)を挟んで並べて設けられる第1建物ユニット(10A)と第2建物ユニット(10B)とを有し、それら第1建物ユニット及び第2建物ユニットに跨がるようにして前記バルコニーが設けられており、
前記バルコニーは、前記第1建物ユニットの躯体に対して固定される第1バルコニーユニット(31)と、前記第2建物ユニットの躯体に対して固定される第2バルコニーユニット(32)とを有しており、それら各バルコニーユニットの間であって、かつ前記離間部の外側となる位置において、前記各バルコニーユニットに対して中間部材(33)が連結されることで構築されていることを特徴とする。
【0009】
建物ユニットが離し置きされて構築される建物において、第1建物ユニットの躯体に対して第1バルコニーユニットを固定するとともに、第2建物ユニットの躯体に対して第2バルコニーユニットを固定し、それら第1バルコニーユニット及び第2バルコニーユニットに中間部材を連結することで、バルコニーを構築するようにした。この場合、各バルコニーユニットが建物ユニットの躯体に固定されているため、各バルコニーユニットについて強固な固定が可能になり、さらに各バルコニーユニットに連結した状態で、離間部(ユニット離し置き部分)に対応する中間部材が設けられているため、その中間部材の構造強度を確保できるものとなっている。その結果、建物ユニットが離し置きされて構築される建物において離し置き部分を跨ぐバルコニーを好適に設けることが可能になっている。
【0010】
第2の発明は、前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットはそれぞれ、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記躯体に固定され該躯体から張り出して設けられる張出フレーム(41,51)と、その張出フレーム上に固定される床面材(42,52)とを有し、前記中間部材は、中間床面材(34)を有し、前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットの前記各張出フレームに、各バルコニーユニットの横並び方向の両端が載置された状態で、前記中間床面材が固定されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、建物ユニットの躯体に対して固定される各バルコニーユニットの張出フレームを利用して、中間床面材が固定されている。この場合、中間部材での構造強度を確保しつつ、簡易な構成にて中間床面材の取り付けが可能となっている。
【0012】
第3の発明は、前記張出フレームは、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記柱に固定される張出梁(44,54)を有しており、前記第1バルコニーユニットにおいて前記離間部に隣合う前記柱に固定される前記張出梁と、前記第2バルコニーユニットにおいて前記離間部に隣合う前記柱に固定される前記張出梁とに載置された状態で、前記中間床面材が固定されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、各バルコニーユニットにおいて離間部の隣の柱寄りの張出梁に載置された状態で中間床面材が固定されている。この場合、横並びの2つのバルコニーユニットの間において、各建物ユニットの間の離間距離に対して張出梁どうしの離間距離が極力小さくなるようにしつつ、中間床面材が取り付けられるようになっている。
【0014】
第4の発明は、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記躯体には、前記張出フレームの建物ユニット側端部を支持する支持部(28)が設けられており、前記張出フレームが前記支持部により支持された状態で、前記各バルコニーユニットが固定されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、建物ユニットにバルコニー支持用の支持部を予め設けておくことで、建物の施工現場では、張出フレームを含む各バルコニーユニットを、建物ユニットの支持部を用いて、簡易に取り付けることが可能となる。例えば、建物ユニットとバルコニーユニットとをそれぞれ個別に施工現場に搬送する場合において、その施工現場において簡易に建物ユニットに対してバルコニーユニットを取り付けることが可能となる。
【0016】
第5の発明は、前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットはそれぞれ、前記張出フレームに固定される壁パネル(43,53)を有し、前記中間部材は、中間壁パネル(35)を有し、前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットの前記各壁パネルに対して前記中間壁パネルが固定されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、各バルコニーユニットの壁パネルを利用して、中間壁パネルが固定されている。したがって、中間部材において中間壁パネルを簡易に取り付けることが可能となっている。
【0018】
第6の発明は、前記第1バルコニーユニット及び前記第2バルコニーユニットはそれぞれ、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットの前記躯体に固定され該躯体から張り出して設けられる張出フレーム(41,51)と、その張出フレーム上に固定される床面材(42,52)と、前記張出フレームに固定される壁パネル(43,53)とを有し、前記中間部材は、中間床面材(34)と中間壁パネル(35)とを有し、前記各バルコニーユニットの前記張出フレームは、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットにおいてバルコニー側の各2本の前記柱に固定される張出梁(44,54)を有し、前記各バルコニーユニットの前記壁パネルは、前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットにおいて前記離間部とは逆側の前記柱に沿って前記張出梁から上方に延び、かつ当該柱に対して固定される側壁部(48a,58a)を有していることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、離間部を挟んで第1建物ユニット及び第2建物ユニットが横並びに配置される建物において、それら各建物ユニットの離間部とは逆側の端部どうしの間に、一体にバルコニーが構築される。この場合、各建物ユニットにおいてバルコニー側の各2本の柱を利用することで、第1建物ユニット及び第2建物ユニットの横並び方向において一側面を全て含む範囲でバルコニーを好適に設けることができる。
【0020】
また、上記構成では、第1建物ユニット及び第2建物ユニットにおいて離間部とは逆側の柱に沿って張出梁から上方に延びる側壁部が設けられ、その側壁部が建物ユニットの柱に対して固定されている。したがって、建物ユニットの柱を利用してバルコニー張出方向に延びる側壁部を好適に固定しつつ、離し置きタイプのユニット式建物において広域にバルコニーを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】建物本体の構成を示す斜視図。
図2】建物ユニットを示す斜視図。
図3】各バルコニーユニット及び中間部材の構成を示す斜視図。
図4】建物ユニットに対する張出フレームの取り付け状態を示す平面図。
図5】バルコニーをその長手方向に沿って切断して示す縦断面図。
図6】バルコニーの施工手順を説明するための図。
図7】建物ユニットに対するバルコニーの取り付けパターンを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、鉄骨ラーメンユニット工法にて構築されたユニット式建物を具体化するものとしており、そのユニット式建物は、複数の建物ユニットを用いて構成されている。なお、各建物ユニットは、工場にてあらかじめ製造され、その後、建築現場にトラック等により運搬されるものとなっている。本実施形態では特に、建物ユニットを水平方向に互いに離間させて配置した構造を有する離し置きタイプのユニット式建物を構築するものとしている。図1には、離し置きタイプの建物において、複数の建物ユニット10からなる建物本体20と、その建物本体20に設けられるキャンチ式のバルコニー30とを示す。なお、図1に示す建物本体20の建物ユニット10は、建物の一部及び全部のいずれであってもよい。
【0023】
はじめに、建物ユニット10の構成を説明する。図2に示すように、建物ユニット10は、その四隅に配設される4本の柱11と、各柱11の上端部及び下端部にそれぞれ連結される各4本の天井大梁12及び床大梁13とを備えている。そして、それら柱11、天井大梁12及び床大梁13を躯体として、直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱11は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁12及び床大梁13は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。
【0024】
建物ユニット10の長辺部(桁部)の相対する天井大梁12の間には、所定間隔で複数の天井小梁15が架け渡されて固定されている。同じく建物ユニット10の長辺部(桁部)の相対する床大梁13の間には、所定間隔で複数の床小梁16が架け渡されて固定されている。天井小梁15及び床小梁16は、それぞれ同一の間隔でかつ短辺側(妻側)の天井大梁12及び床大梁13に水平に設けられている。例えば、天井小梁15はリップ溝形鋼よりなり、床小梁16は角形鋼よりなる。天井小梁15によって天井面材17が支持され、床小梁16によって床面材18が支持されている。
【0025】
また、図1に示すように、建物本体20は、建物下階部である一階部分21と、建物上階部である二階部分22とを有している。図1では、一階部分21及び二階部分22としてそれぞれ2つずつの建物ユニット10が示されており、その各階2つずつの建物ユニット10が互いに離間して配置されている。すなわち、水平方向に並ぶ各建物ユニット10の間には離間部23が設けられている。
【0026】
なお、建物ユニット10には、ユニット製造工場で床面材や天井面材、壁面材が必要に応じて予め取り付けられており、その状態で建物ユニット10が施工現場に搬送されるとともに、所定位置に順次据え置かれるが、図1では便宜上、建物ユニット10として骨組みだけを示している(後述の図6も同様)。
【0027】
離間部23において隣合う建物ユニット間の寸法、すなわちユニット離間寸法は、例えば数10cm~2m程度である。その離間寸法は、例えばメータモジュールに応じた寸法にて定められるとよい。
【0028】
離間部23には、床面材24、天井面材25、壁面材26が取り付けられている。これら床面材24、天井面材25、壁面材26の取り付けについて簡単に説明すると、例えば離間部23を挟んで配置される各建物ユニット10において、隣合う床大梁13及び天井大梁12に対して床面材24、天井面材25が固定されている。また、隣合う柱11の上端部どうし、及び下端部どうしを繋ぐ繋ぎ梁27が取り付けられており、その上下の繋ぎ梁27に対して壁面材26が固定されている。なお、離間部23を挟んで配置される各建物ユニット10において、天井大梁12の間には、建物ユニット10の天井小梁15と同じ向きに小梁が設けられていてもよく、また、床大梁13の間には、建物ユニット10の床小梁16と同じ向きに小梁が設けられていてもよい。
【0029】
そして、二階部分22に、隣合う2つの建物ユニット10に跨がるようにしてバルコニー30が取り付けられている。二階部分22の2つの建物ユニット10の一方を第1建物ユニット10A、他方を第2建物ユニット10Bとすると、バルコニー30は、第1建物ユニット10A、離間部23、第2建物ユニット10Bがこの順序で水平方向に並ぶ状態で、各建物ユニット10A,10Bの幅方向全域にわたって設けられている。
【0030】
次に、バルコニー30の構成について説明する。バルコニー30は、第1建物ユニット10Aの躯体に対して固定される第1バルコニーユニット31と、第2建物ユニット10Bの躯体に対して固定される第2バルコニーユニット32とを有し、それら各バルコニーユニット31,32に中間部材33が連結されることで構築されている。中間部材33は、各バルコニーユニット31,32の間であって、かつ離間部23の外側となる位置に設けられている。
【0031】
図3は、各バルコニーユニット31,32及び中間部材33の構成を示す斜視図である。図3は、建物本体20側から見た斜視図であり、手前側に第1バルコニーユニット31を示し、奥側に第2バルコニーユニット32を示している。
【0032】
第1バルコニーユニット31は、第1建物ユニット10Aの躯体に固定される張出フレーム41と、その張出フレーム41の上に固定される床面材42と、張出フレーム41及び床面材42の外縁に沿って設けられる横断面L字状の壁パネル43とを有している。また、第2バルコニーユニット32は、第2建物ユニット10Bの躯体に固定される張出フレーム51と、その張出フレーム51の上に固定される床面材52と、張出フレーム51及び床面材52の外縁に沿って設けられる横断面L字状の壁パネル53とを有している。
【0033】
そして、各バルコニーユニット31,32の間に、中間部材33として、中間床面材34と中間壁パネル35とが取り付けられるようになっている。
【0034】
図4は、各建物ユニット10A,10Bに対する張出フレーム41,51の取り付け状態を示す平面図であり、図5は、バルコニー30をその長手方向に沿って切断して示す縦断面図である。
【0035】
第1バルコニーユニット31において、張出フレーム41は、その長手方向(建物ユニット10A,10Bの横並び方向)の長さとして第1建物ユニット10Aの側面と略同じ長さを有している。張出フレーム41は、一方の端部が第1建物ユニット10Aに固定され屋外側へ向けて延びる複数の張出梁44と、それら各張出梁44の他方の端部に連結される連結梁45とを備えている。張出梁44には、第1建物ユニット10Aにおいてバルコニー30側の各2本の柱11に固定されるものが含まれている。これら張出梁44及び連結梁45は、断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部が横を向くように配置されている。連結梁45は、各張出梁44のうち柱11に固定された一対の張出梁44を繋ぐように設けられている。張出梁44及び連結梁45は、例えば溶接により連結された一体物として構成されている。
【0036】
第1建物ユニット10Aの柱11及び床大梁13には、バルコニー支持用の支持部材28が溶接等により取り付けられている。そして、その支持部材28に対して各張出梁44がボルト等の固定具で固定されることにより、各張出梁44が片持ち状態で支持されている。つまり、支持部材28により、張出フレーム41の建物ユニット側端部が支持されるようになっている。
【0037】
床面材42は、張出フレーム41の上に載置された状態で、その張出フレーム41に固定されている(図5参照)。
【0038】
壁パネル43は、平面視で略L字状の壁面材46と、その片側(裏面側)に設けられた角形鋼よりなる複数の支柱47とを有している。支柱47は、その下端が張出フレーム41に固定されており、支柱47により壁面材46が支持されている。壁パネル43は、バルコニー30の張出方向に延びる側壁部48aと、建物ユニット10A,10Bの横並び方向に延びる前壁部48bとを有している。このうち、側壁部48aは、第1建物ユニット10Aにおいて離間部23とは逆側の柱11に沿って張出梁44から上方に延び、かつ当該柱11に対して固定されるものとなっている。
【0039】
また、第2バルコニーユニット32においても同様の構成を有している。すなわち、張出フレーム51は、一方の端部が第2建物ユニット10Bに固定され屋外側へ向けて延びる複数の張出梁54と、それら各張出梁54の他方の端部に連結される連結梁55とを備えている。張出梁54は、第2建物ユニット10Bの柱11及び床大梁13に取り付けられた支持部材28により、片持ち状態で支持されている。また、床面材52は、張出フレーム51の上に載置された状態で、その張出フレーム51に固定されている(図5参照)。壁パネル53は、平面視で略L字状の壁面材56と、その裏面側に設けられた角形鋼よりなる複数の支柱57とを有している。支柱57は、その下端が張出フレーム51に固定されており、支柱57により壁面材56が支持されている。壁パネル53は、バルコニー30の張出方向に延びる側壁部58aと、建物ユニット10A,10Bの横並び方向に延びる前壁部58bとを有している。
【0040】
図5に示すように、中間床面材34は、張出フレーム41,51の各張出梁44,54に対して固定されている。この場合、張出梁44の上面(詳しくは上側フランジの上面)には、床面材42と中間床面材34とが載置され、張出梁54の上面には、床面材52と中間床面材34とが載置されており、その載置状態で各床面材34,42,52がビス等により固定されている。つまり、各バルコニーユニット31,32では、中間部材33として中間床面材34が後付けされることを想定して、張出梁44,54の上面に、床面材42,52が載置されていない非載置部分が設けられており、その非載置部分に、中間床面材34が固定されるようになっている。
【0041】
図5に示す構成では、各バルコニーユニット31,32の張出フレーム41,51に、各バルコニーユニット31,32の横並び方向の両端が載置された状態で、中間床面材34が固定されている。また言い加えると、各バルコニーユニット31,32において離間部23に隣合う柱11にそれぞれ固定される張出梁44,54に載置された状態で、中間床面材34が固定されている。
【0042】
また、中間壁パネル35は、矩形状の壁面材36と、その裏面側において左右両端部に設けられた角形鋼よりなる複数の縦材37とを有している。中間壁パネル35は、縦材37が各壁パネル43,53の支柱47,57に固定されることで、両バルコニーユニット31,32に対してそれぞれ固定されている。
【0043】
次に、バルコニー30の施工手順について図6を用いて説明する。本実施形態では、建物施工現場に、建物ユニット10とバルコニーユニット31,32とをトラック等により別体で運搬することとしている。この場合、バルコニーユニット31,32は、図3に示す状態で予め各々製作されている。
【0044】
建物施工現場では、図6(a)に示すように、複数の建物ユニット10により建物本体20が構築される。この場合、既述のとおり各建物ユニット10が離し置きされ、離間部23に、床面材24、天井面材25、壁面材26が取り付けられる。
【0045】
その後、図6(b)に示すように、二階部分22の第1建物ユニット10Aに第1バルコニーユニット31が取り付けられ、さらにその後、図6(c)に示すように、第2建物ユニット10Bに第2バルコニーユニット32が取り付けられる。このとき、各建物ユニット10A,10Bには、柱11及び床大梁13にバルコニー支持用の支持部材28が予め取り付けられており、その支持部材28を用いて、張出フレーム41,51が各建物ユニット10A,10Bの躯体(柱11、床大梁13)に対して固定されることで、各バルコニーユニット31,32の取り付けが行われる。なおこのとき、建物ユニット10A,10Bの柱11に対する支柱47,57の固定が行われてもよい。
【0046】
その後、図6(d)に示すように、中間部材33の取り付けが行われる。このとき、張出フレーム41,51の各張出梁44,54に対して、中間床面材34が固定される。また、各壁パネル43,53の支柱47,57に対して、中間壁パネル35の縦材37が固定されることで、中間壁パネル35が固定される。これにより、図1に示す状態のバルコニー30が完成する。
【0047】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0048】
建物ユニット10が離し置きされて構築される建物において、第1建物ユニット10Aの躯体に対して第1バルコニーユニット31を固定するとともに、第2建物ユニット10Bの躯体に対して第2バルコニーユニット32を固定し、それら第1バルコニーユニット31及び第2バルコニーユニット32に中間部材33を連結することで、バルコニー30を構築するようにした。この場合、各バルコニーユニット31,32が建物ユニット10の躯体に固定されているため、各バルコニーユニット31,32について強固な固定が可能になり、さらに各バルコニーユニット31,32に連結した状態で、離間部23(ユニット離し置き部分)に対応する中間部材33が設けられているため、その中間部材33の構造強度を確保できるものとなっている。その結果、建物ユニット10が離し置きされて構築される建物において離し置き部分を跨ぐバルコニー30を好適に設けることが可能になっている。
【0049】
バルコニー30において、建物ユニット10A,10Bの躯体に対して固定される各バルコニーユニット31,32の張出フレーム41,51を利用して、中間床面材34を固定する構成とした。これにより、中間部材33での構造強度を確保しつつ、簡易な構成にて中間床面材34の取り付けが可能となっている。
【0050】
各バルコニーユニット31,32において離間部23の隣の柱寄りの張出梁44,54に載置された状態で、中間床面材34を固定する構成とした。この場合、横並びの2つのバルコニーユニット31,32の間において、各建物ユニット10A,10Bの間の離間距離に対して張出梁44,54どうしの離間距離が極力小さくなるようにしつつ、中間床面材34が取り付けられるようになっている。
【0051】
建物ユニット10A,10Bにバルコニー支持用の支持部材28を予め設けておき、その支持部材28を用いて各バルコニーユニット31,32を建物ユニット10A,10Bに取り付ける構成とした。これにより、各バルコニーユニット31,32を簡易に取り付けることが可能となる。この場合、現場施工での作業性の向上を図ることができる。
【0052】
バルコニー30において、各バルコニーユニット31,32の壁パネル43,53を利用して、中間壁パネル35を固定する構成とした。これにより、中間部材33において中間壁パネル35を簡易に取り付けることが可能となっている。
【0053】
各建物ユニット10A,10Bにおいて離間部23とは逆側の端部どうしの間に、一体にバルコニー30を構築する構成とした。この場合、各建物ユニット10A,10Bにおいてバルコニー30側の各2本の柱11を利用することで、各建物ユニット10A,10Bの横並び方向において一側面を全て含む範囲でバルコニー30を好適に設けることができる。
【0054】
また、各建物ユニット10A,10Bにおいて離間部23とは逆側の柱11に沿って張出梁44,54から上方に延びる側壁部48a,58aを設け、その側壁部48a,58aを建物ユニット10A,10Bの柱11に対して固定する構成とした。したがって、建物ユニット10A,10Bの柱11を利用してバルコニー張出方向に延びる側壁部48a,58aを好適に固定しつつ、離し置きタイプのユニット式建物において広域にバルコニー30を設けることができる。
【0055】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、左右2つの建物ユニット10に対してその幅方向全域にわたってバルコニー30を設けたが、これを変更してもよい。建物ユニット10に対するバルコニー30の他の取り付けパターンを図7に示す。なお、図7には、建物ユニット10の躯体に対する各バルコニーユニットの固定位置(詳しくは張出フレームの固定位置)を○印で示している。
【0057】
図7(a)に示す構成では、左右2つの建物ユニット10のうち一方の建物ユニット10に、ユニット幅と同じ幅で第1バルコニーユニット31が取り付けられているのに対し、他方の建物ユニット10には、ユニット幅よりも短い幅で第2バルコニーユニット32が取り付けられている。なお、図のX部においては、建物ユニット10に中間柱が設けられ、その中間柱に対してバルコニーユニット32の側壁部が固定されるとよい。
【0058】
図7(b)に示す構成では、左右2つの建物ユニット10の両方に対して、ユニット幅よりも短い幅でバルコニーユニット31,32が取り付けられている。
【0059】
図7(c)に示す構成では、左右3つの建物ユニット10に対してそれぞれバルコニーユニット61,62,63が取り付けられ、それら各バルコニーユニット61,62,63の間に中間部材33がそれぞれ設けられている。なお、左右両側の建物ユニット10に取り付けられるバルコニーユニットは、図7(a),(b)のようにユニット幅よりも短い幅のものであってもよい。各バルコニーユニット61,62,63は、既述のバルコニーユニット31,32と同様に張出フレームと床面材と壁パネルとを有するものであるが、そのうち中央のバルコニーユニット62は、壁パネルとして前壁部のみを有するものとなっている。
【0060】
・上記実施形態の建物では、建物ユニット10とバルコニーユニット31,32とを別体で施工現場に運搬し、施工現場で各建物ユニット10により建物本体20を構築した後に、建物ユニット10に対してバルコニーユニット31,32をそれぞれ取り付けるようにしたが、これを変更してもよい。例えば、ユニット製造工場において建物ユニット10に対してバルコニーユニット31,32を取り付け、その状態で施工現場に運搬するようにしてもよい。ただしこの場合、バルコニーユニット31,32を一体化した建物ユニット10が運搬の際の大きさ制限を満たしていることが条件となる。要するに、建物ユニットの据え付け前に、建物ユニットに対してバルコニーユニットを固定(連結)する構成であってもよい。
【0061】
・建物は3階建て以上の多層階ユニット式建物であってもよい。この場合、例えば建物上階部としての三階部分に、上記構成のバルコニー30を設ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…建物ユニット、11…柱、12…天井大梁、13…床大梁、28…支持部材、30…バルコニー、31…第1バルコニーユニット、32…第2バルコニーユニット、33…中間部材、34…中間床面材、35…中間壁パネル、41,51…張出フレーム、42,52…床面材、43,53…壁パネル、44,54…張出梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7