(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】チェーンソー
(51)【国際特許分類】
B27B 17/12 20060101AFI20220104BHJP
B23D 57/02 20060101ALI20220104BHJP
B23D 59/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B27B17/12
B23D57/02
B23D59/00
(21)【出願番号】P 2017199841
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】新山 拓磨
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-188632(JP,A)
【文献】特開2014-148117(JP,A)
【文献】特開2016-040454(JP,A)
【文献】特開2015-140014(JP,A)
【文献】米国特許第04644658(US,A)
【文献】実開平03-112577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 17/00 - 17/12
B23D 57/02
B23D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、
前記モータの回転に連動して前記ソーチェーンに潤滑油を供給するオイルポンプと、
前記モータおよび前記オイルポンプを収容する本体ハウジングを備えるチェーンソーであって、
前記ソーチェーンの回転駆動を制御するためのトリガスイッチが配置されており、前記本体ハウジングの上部に設けられたトップハンドルと、
前記オイルポンプにおける前記潤滑油の吐出量を調整する調整部材を含む吐出量調整機構をさらに備えており、
前記オイルポンプは、前記モータの前記回転に応じて、前記オイルポンプの内部空間に前記潤滑油を吸入するとともに、前記内部空間から前記潤滑油を排出するプランジャを備えており、
前記吐出量調整機構は、前記プランジャの前記内部空間における移動量を変化させることにより、前記潤滑油の前記吐出量を調整しており、
前記吐出量調整機構が、前記本体ハウジングの、前記チェーンソーを載置した時に外部に露出する面
であって、前記トップハンドルの左側、かつ、前記本体ハウジングの上面に配置されている、チェーンソー。
【請求項2】
前記オイルポンプが、前記モータの左側に配置されている、請求項
1のチェーンソー。
【請求項3】
前記本体ハウジングの左側に設けられたサイドハンドルをさらに備えており、
前記吐出量調整機構が、前記サイドハンドルの前側の端部よりも後方に配置されている、請求
項1または2のチェーンソー。
【請求項4】
前記調整部材が、前記本体ハウジングの内部に配置されており、
前記吐出量調整機構が、前記本体ハウジングに形成されており、前記調整部材を操作するための工具が通過可能な調整用開口をさらに含む、請求項1から
3の何れか一項のチェーンソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、チェーンソーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チェーンソーが開示されている。そのチェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、モータの回転に連動してソーチェーンに潤滑油を供給するオイルポンプと、モータおよびオイルポンプを収容する本体ハウジングを備えている。チェーンソーは、オイルポンプにおける潤滑油の吐出量を調整する調整部材を含む吐出量調整機構をさらに備えている。吐出量調整機構は、本体ハウジングに形成されており、調整部材を操作するための工具が通過可能な調整用開口をさらに含んでいる。調整用開口は、本体ハウジングの下面に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のチェーンソーでは、調整用開口が本体ハウジングの下面に配置されているので、潤滑油の吐出量を調整する際には、使用者はチェーンソーの下面側から工具を差し込んで調整部材を操作しなければならず、作業性に問題があった。本明細書では、潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書はチェーンソーを開示する。チェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、モータの回転に連動してソーチェーンに潤滑油を供給するオイルポンプと、モータおよびオイルポンプを収容する本体ハウジングを備えている。チェーンソーは、オイルポンプにおける潤滑油の吐出量を調整する調整部材を含む吐出量調整機構をさらに備えている。吐出量調整機構は、本体ハウジングの、チェーンソーを載置した時に外部に露出する面に配置されている。
【0006】
上記の構成によれば、吐出量調整機構が、本体ハウジングの、チェーンソーを載置した時に外部に露出する面に配置されているので、潤滑油の吐出量を調整する際に、使用者はチェーンソーを載置した状態で調整部材を操作することができる。潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】実施例のチェーンソー2について、サイドハンドル14および左側ハウジング10を外した状態の左側面図である。
【
図4】実施例のチェーンソー2の、モータ34近傍の横断面図である。
【
図5】実施例のチェーンソー2について、スプロケットカバー20を外した状態の右側面図である。
【
図6】実施例のチェーンソー2について、スプロケットカバー20、ガイドバー6、ブレーキカバー18を外した状態の右側面図である。
【
図7】実施例のチェーンソー2のオイルポンプ38の縦断面図である。
【
図8】実施例のチェーンソー2のオイルポンプ38の斜視図である。
【
図9】実施例のチェーンソー2のプランジャ88の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、モータへの印加電圧を制御するコントロールユニットと、モータおよびコントロールユニットを収容する本体ハウジングと、本体ハウジングに着脱可能に取り付けられたバッテリと、本体ハウジングの上部に設けられたトップハンドルを備えていてもよい。コントロールユニットは、バッテリの上方に配置されていてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを後方から見た時に、バッテリとコントロールユニットが重なり合っていなくてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、バッテリとコントロールユニットが少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、コントロールユニットとバッテリを互いに重なり合わないように前後方向にずらして配置する場合に比べて、本体ハウジングの前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0010】
1つまたはそれ以上の実施形態において、本体ハウジングの、トップハンドルの後方の端部が本体ハウジングに接続する箇所の近傍に、ハンドレストが形成されていてもよい。コントロールユニットは、ハンドレストの内部に配置されていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、本体ハウジングの、トップハンドルの後方の端部が本体ハウジングに接続する箇所の近傍に、ハンドレストを形成することで、使用者の利便性を向上することができる。また、上記の構成によれば、本体ハウジングのハンドレストの内部の空間にコントロールユニットを配置することで、ハンドレストの内部の空間を有効に活用することができ、本体ハウジングの寸法をより小型化することができる。
【0012】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを後方から見た時に、トップハンドルとバッテリが重なり合っていなくてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、トップハンドルとバッテリが少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、本体ハウジングの内部の、トップハンドルとバッテリの間の空間にコントロールユニットが配置されることになる。上記の構成によれば、トップハンドルとバッテリを互いに重なり合わないように前後方向にずらして配置する場合に比べて、本体ハウジングの前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、バッテリは、本体ハウジングに対して左右方向にスライドさせて着脱可能であってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、バッテリを、本体ハウジングに対して前後方向にスライドさせて着脱可能とした場合に比べて、本体ハウジングの前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、モータへの印加電圧を制御するコントロールユニットと、モータおよびコントロールユニットを収容する本体ハウジングと、本体ハウジングに着脱可能に取り付けられたバッテリと、本体ハウジングの上部に設けられたトップハンドルを備えていてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、モータとバッテリが重なり合っていなくてもよく、かつモータとコントロールユニットが重なり合っていなくてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを後方から見た時に、モータとバッテリが少なくとも部分的に重なり合っていてもよく、かつモータとコントロールユニットが少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0017】
モータを搭載したチェーンソーにおいては、多くの場合、モータは、その出力シャフトがチェーンソーの左右方向に沿うように配置される。この場合、本体ハウジングの内部において、モータの上方や下方にバッテリやコントロールユニットが配置されると、本体ハウジングの上下方向の寸法が大きくなってしまう。上記の構成によれば、本体ハウジングの内部において、モータの上方や下方にバッテリやコントロールユニットが配置されてないので、本体ハウジングの上下方向の寸法をより小型化することができる。また、上記の構成によれば、チェーンソーを後方から見た時に、モータとバッテリが少なくとも部分的に重なり合っており、かつモータとコントロールユニットが少なくとも部分的に重なり合っているので、本体ハウジングの左右方向の寸法も小型化することができる。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、バッテリとコントロールユニットが、モータよりも後方に配置されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、ガイドバーから離れた位置である本体ハウジングの後方でバッテリの着脱が可能となり、使用者のバッテリ着脱作業を容易なものとすることができる。また、上記の構成によれば、バッテリとコントロールユニットの両方がモータよりも後方に配置されているので、本体ハウジングの前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、バッテリの左右方向の中心線からバッテリの左右方向の幅の1.2倍の範囲内に、モータが配置されていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、チェーンソーの左右方向に関して、バッテリとモータを大きくオフセットして配置する場合に比べて、本体ハウジングの左右方向の寸法をより小型化することができる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させるモータと、モータの回転に連動してソーチェーンに潤滑油を供給するオイルポンプと、モータおよびオイルポンプを収容する本体ハウジングを備えていてもよい。チェーンソーは、オイルポンプにおける潤滑油の吐出量を調整する調整部材を含む吐出量調整機構をさらに備えていてもよい。吐出量調整機構は、本体ハウジングの、チェーンソーを載置した時に外部に露出する面に配置されていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、吐出量調整機構が、本体ハウジングの、チェーンソーを載置した時に外部に露出する面に配置されているので、潤滑油の吐出量を調整する際に、使用者はチェーンソーを載置した状態で調整部材を操作することができる。潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことができる。
【0024】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、本体ハウジングの上部に設けられたトップハンドルをさらに備えていてもよい。吐出量調整機構は、トップハンドルの左側に配置されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、潤滑油の吐出量を調整する際に、使用者は右手でトップハンドルを把持してチェーンソーを保持した状態でも、左手で調整部材を操作することができる。潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことができる。
【0026】
1つまたはそれ以上の実施形態において、オイルポンプは、モータの左側に配置されていてもよい。
【0027】
仮に、オイルポンプがモータの右側に配置されている場合、吐出量調整機構をトップハンドルの左側に配置すると、吐出量調整機構を複雑な構造とする必要がある。上記の構成によれば、オイルポンプがモータの左側に配置されており、かつ吐出量調整機構がトップハンドルの左側に配置されているので、吐出量調整機構を簡素な構造とすることができる。
【0028】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、本体ハウジングの左側に設けられたサイドハンドルをさらに備えていてもよい。吐出量調整機構は、サイドハンドルの前側の端部よりも後方に配置されていてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、使用者が調整部材を操作する際に、サイドハンドルが邪魔になることがない。潤滑油の吐出量を調整する作業をより容易に行なうことができる。
【0030】
1つまたはそれ以上の実施形態において、吐出量調整機構は、本体ハウジングの上面に配置されていてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、使用者は、身体を屈めたり、チェーンソーを目線の高さまで持ち上げることなく、調整部材を視認することができる。このため、使用者は、調整部材を操作する作業をより容易に行なうことができる。
【0032】
1つまたはそれ以上の実施形態において、調整部材は、本体ハウジングの内部に配置されていてもよい。吐出量調整機構は、本体ハウジングに形成されており、調整部材を操作するための工具が通過可能な調整用開口をさらに含んでいてもよい。
【0033】
上記の構成によれば、調整部材が本体ハウジングの内部に配置されているので、調整部材が誤って操作されることを防止することができる。
【0034】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、ガイドバーの周りでソーチェーンを回転させる原動機と、原動機の回転をソーチェーンに伝達するスプロケットと、原動機を収容する本体ハウジングと、スプロケットを覆うスプロケットカバーと、本体ハウジングの上方に設けられたトップハンドルを備えていてもよい。チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、トップハンドルの右側端面からガイドバーの中心線までの距離の、トップハンドルの右側端面からスプロケットカバーの右側端面までの距離に対する比率が、0.3以下であってもよい。
【0035】
上記の構成によれば、トップハンドルとガイドバーが、左右方向に比較的近接して配置されているので、使用者がトップハンドルを把持した時に、ソーチェーンによる切断位置を直感的に把握しやすくすることができる。また、上記の構成によれば、チェーンソーの左右方向に関して、ガイドバーの重心が、トップハンドルに近い位置となり、チェーンソーの重心に近い位置となる。このため、異なる種類のガイドバーを取り付けた場合であっても、チェーンソーの左右方向に関して、チェーンソーの重心の位置が変化することを抑制することができる。
【0036】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーを載置した状態で、チェーンソーを上方から見た時に、トップハンドルの左右方向の中心線からトップハンドルの左右方向の幅の2倍の範囲内に、チェーンソーの重心が配置されていてもよい。
【0037】
上記の構成によれば、使用者が右手でトップハンドルを把持してチェーンソーを保持した時に、チェーンソーが左右に傾斜しにくくなる。チェーンソーを用いた切断作業の作業性を向上することができる。
【0038】
1つまたはそれ以上の実施形態において、原動機はモータであってもよい。
【0039】
モータはエンジン等の他の原動機に比べて、構造がシンプルであるので、チェーンソーを設計する際に、重心の位置を特定しやすく、かつ本体ハウジングの内部における取り付け位置を調整しやすい。上記の構成によれば、ガイドバーの重量とモータの重量のバランスを取ることで、チェーンソーの左右方向に関して、チェーンソーの重心をトップハンドルの近傍に配置することができる。
【0040】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーは、本体ハウジングに着脱可能に取り付けられたバッテリをさらに備えていてもよい。
【0041】
電源コードにより電力を供給する場合とは異なり、バッテリにより電力を供給する場合、本体ハウジングに取り付けられたバッテリを、チェーンソーの重心位置を調整するための重量物として用いることができる。上記の構成によれば、ガイドバーの重量と、モータの重量と、バッテリの重量のバランスを取ることで、チェーンソーの左右方向に関して、チェーンソーの重心をトップハンドルの近傍に配置することができる。
【0042】
(実施例)
図1に示すように、本実施例のチェーンソー2は、本体4と、ガイドバー6と、ソーチェーン8を備えている。ガイドバー6は、本体4から前方に向けて突出するように本体4に取り付けられた、細長い板状の部材である。ソーチェーン8は、相互に連結された複数のカッタを備えており、ガイドバー6の周縁に沿って取り付けられている。本体4には、バッテリBが取り付けられている。チェーンソー2は、バッテリBから供給される電力によって、ソーチェーン8をガイドバー6の周縁に沿って回転駆動することで、木材等の被切断物を切断する。なお、以下の説明では、チェーンソー2を地面等の載置面P(
図2参照)に載置した時に、載置面Pに直交する方向を、チェーンソー2の上下方向といい、載置面Pにガイドバー6の長手方向を投影した方向を、チェーンソー2の前後方向といい、チェーンソー2の上下方向および前後方向に直交する方向を、チェーンソー2の左右方向という。なお、
図1以外の図面では、図示の明瞭化のために、ソーチェーン8の図示を省略している。
【0043】
図1、
図2に示すように、本体4は、左側ハウジング10と、右側ハウジング12と、サイドハンドル14と、ハンドガード16と、ブレーキカバー18と、スプロケットカバー20を備えている。左側ハウジング10と右側ハウジング12によって、本体ハウジング22と、トップハンドル24が形成されている。左側ハウジング10は、本体ハウジング22とトップハンドル24の左半面の外形形状を形成しており、右側ハウジング12は、本体ハウジング22とトップハンドル24の右半面の外形形状を形成している。
【0044】
本体ハウジング22は、本体4の前後方向に長手方向を有する略直方体形状の前側本体ハウジング22aと、前側本体ハウジング22aの後方上部から後方に向けて伸びる後側本体ハウジング22bを備えている。後側本体ハウジング22bの下面には、バッテリBを左右方向にスライドさせることでバッテリBを着脱可能なバッテリ取り付け部22cが形成されている。
図2に示すように、チェーンソー2にバッテリBが取り付けられた状態で、チェーンソー2を載置面Pに載置した場合、前側本体ハウジング22aの下面が載置面Pに当接するとともに、バッテリBの下面も載置面Pに当接する。
【0045】
図1に示すように、トップハンドル24は、前側本体ハウジング22aの前方上面から上方に向けて突出する略角柱形状の支持部24aと、支持部24aの後方上部から後方に向けて伸びており、下方に湾曲して、後側本体ハウジング22bの上面に接続する、断面が略円形状の把持部24bを備えている。支持部24aの上面には、凹部24cが形成されている。凹部24cの内部には、使用者がチェーンソー2の電源のオン・オフを切替操作する電源スイッチ26と、チェーンソー2の電源のオン・オフの状態を表示する電源ランプ28が配置されている。把持部24bの前方下面には、使用者がソーチェーン8の回転駆動を操作するためのトリガスイッチ30が配置されている。把持部24bの上部には、使用者によるトリガスイッチ30の操作を許可する状態と禁止する状態の間で切り替わるトリガロックレバー32が配置されている。
【0046】
サイドハンドル14は、トップハンドル24の支持部24aの上方後方左面と、前側本体ハウジング22aの下方後方左面の間を接続する略U字形状の外形形状を有している。サイドハンドル14の断面形状は、略円形状である。使用者は、チェーンソー2を使用する際に、右手でトップハンドル24を把持し、左手でサイドハンドル14を把持して、チェーンソー2を保持する。この状態から、使用者がトップハンドル24のトリガロックレバー32を右手の掌で押し下げると、使用者によるトリガスイッチ30の操作が許可された状態となり、使用者がトリガスイッチ30を右手の人差し指で押し上げることで、ソーチェーン8が回転駆動される。なお、後側本体ハウジング22bの上面、すなわち本体ハウジング22にトップハンドル24の把持部24bが接続する箇所には、使用者が手を置くことができるハンドレスト22dが形成されている。
【0047】
図3に示すように、前側本体ハウジング22aの内部には、モータ34と、オイルタンク36と、オイルポンプ38が配置されている。また、後側本体ハウジング22bの内部には、コントロールユニット40が配置されている。オイルタンク36は、モータ34およびオイルポンプ38よりも前方に配置されている。
【0048】
図4に示すように、モータ34は、アウタロータ型のDCブラシレスモータである。モータ34は、コイル42が巻回されたステータ44と、ステータ44の外側に配置されたロータ46と、ロータ46に嵌合された冷却ファン48と、ステータ44およびロータ46の中央を貫通するように配置されており、冷却ファン48に嵌合された出力シャフト50を備えている。ステータ44は、本体ハウジング22に対して固定されている。ステータ44のコイル42は、コントロールユニット40(
図2参照)に接続されている。コントロールユニット40は、スイッチング素子を備えるインバータ回路と、それぞれのスイッチング素子の動作を制御する制御回路を内蔵しており、コイル42に印加する電圧を制御することによって、モータ34の動作を制御する。出力シャフト50は、チェーンソー2の左右方向に沿って配置されており、ベアリング52,54を介して本体ハウジング22に回転可能に支持されている。ベアリング52は、ステータ44よりも右側に配置されており、ベアリング54は、ステータ44および冷却ファン48よりも左側に配置されている。出力シャフト50の右側の端部近傍には、スプロケット56と、ブレーキベース58が固定されている。スプロケット56およびブレーキベース58は、ベアリング52よりも右側に配置されている。ブレーキベース58には、ブレーキドラム60が嵌合している。
【0049】
図5に示すように、スプロケット56は、右側ハウジング12の外側に露出している。スプロケット56には、ガイドバー6からソーチェーン8(
図1参照)が架け渡される。モータ34が駆動すると、出力シャフト50とともにスプロケット56が回転し、これによってソーチェーン8がスプロケット56とガイドバー6の周りを回転する。
【0050】
ガイドバー6は、内側ガイドプレート61と、外側ガイドプレート62に挟持された状態で、右側ハウジング12に固定されている。内側ガイドプレート61は、上端近傍と下端近傍が内側(チェーンソー2の左側)に湾曲した形状を有している。外側ガイドプレート62は、上端近傍と下端近傍が外側(チェーンソー2の右側)に湾曲した形状を有している。ガイドバー6には、ガイドバー6の長手方向に沿う長孔6aが形成されている。ガイドバー6は、長孔6aを貫通する支持ピン64および支持ボルト66を介して、本体ハウジング22に支持されている。
図2に示すように、支持ボルト66には、スプロケットカバー20および外側ガイドプレート62の外側から締結されたナット68が取り付けられる。使用者は、ナット68を緩めた状態で、長孔6aに沿ってガイドバー6をスライドさせることで、ガイドバー6とスプロケット56の距離を変化させて、ソーチェーン8の張り具合を調整することができる。
【0051】
図5に示すように、ガイドバー6には、係合爪65と係合する係合孔67が形成されている。
図6に示すように、係合爪65は、回転直動変換機構69を介して調整ネジ70に連結している。回転直動変換機構69は、調整ネジ70の回転運動を、係合爪65の長孔6aに沿った方向の直線運動に変換する。
図5に示すように、調整ネジ70は、長孔6aの内周面に接することなく長孔6aを貫通している。使用者が、調整ネジ70を回転させると、係合爪65がガイドバー6の長孔6aに沿った方向で移動して、ガイドバー6が長孔6aに沿った方向にスライドする。
【0052】
図2に示すように、スプロケット56、内側ガイドプレート61、外側ガイドプレート62、支持ピン64は、スプロケットカバー20によって覆われている。スプロケットカバー20には、凹部20aが形成されている。
図4に示すように、凹部20aには、支持ボルト66が貫通する締結用開口20bと、調整ネジ70に外部からアクセスするための調整用開口20cが形成されている。ナット68は、凹部20aの外側から、支持ボルト66に締結されている。使用者は、スプロケットカバー20を取り付けた状態で、ナット68を締めたり緩めたりすることができる。また、使用者は、スプロケットカバー20を取り付けた状態で、調整用開口20cを介して調整ネジ70を回転させて、ソーチェーン8の張り具合を調整することができる。
【0053】
図6に示すように、ハンドガード16は、リンク機構72を介して、ブレーキシュー74と連結されている。ハンドガード16は、チェーンソー2の左右方向に沿った揺動軸周りに揺動可能である。ブレーキシュー74は、ブレーキドラム60の周囲を囲うように配置されている。リンク機構72は、ハンドガード16が前方に向けて倒された時に、ブレーキシュー74を縮径させ、ハンドガード16が後方に向けて起こされた時に、ブレーキシュー74を拡径させる。ブレーキシュー74が縮径すると、ブレーキシュー74の内周面とブレーキドラム60の外周面が当接して、両者の間の摩擦力によって出力シャフト50の回転が制動される。
【0054】
図3に示すオイルタンク36には、ソーチェーン8を潤滑するための潤滑油が貯留される。オイルタンク36には、オイルタンク36に潤滑油を補充するための補充用開口36a(
図4参照)に着脱可能なキャップ76が設けられている。
図1に示すように、オイルタンク36のキャップ76は、左側ハウジング10の外部に露出しており、前側本体ハウジング22aの前方下方左面に配置されている。なお、左側ハウジング10のキャップ76より前方には、外部からオイルタンク36の液位を視認可能な液位確認用開口78が形成されている。
【0055】
図3に示すオイルポンプ38は、モータ34の回転に連動して、導入管80を介してオイルタンク36の内部の潤滑油を吸い出すとともに、導出管82を介してガイドバー6に向けて潤滑油を送り出す。モータ34の出力シャフト50の左側端部近傍には、オイルポンプ38を駆動するためのウォームギア84が嵌合している。
図4に示すように、ウォームギア84は、ステータ44および冷却ファン48よりも左側であって、ベアリング54よりも右側に配置されている。
【0056】
図7に示すように、オイルポンプ38は、ブラケット86と、プランジャ88と、前側キャップ90と、後側キャップ92と、調整ピン94を備えている。ブラケット86の内部には、略円筒形状の前側内部空間96と、前側内部空間96と同軸であって前側内部空間96よりも大径の略円筒形状の後側内部空間98が形成されている。前側内部空間96の前方は、前側キャップ90によって封止されている。前側内部空間96の下方には、導入管80と連通する導入ポート100が形成されている。前側内部空間96の上方には、導出管82と連通する導出ポート102が形成されている。後側内部空間98の後方は、後側キャップ92によって封止されている。後側内部空間98の後方上方には、外部に連通する上側ポート104が形成されており、後側内部空間98の後方下方には、外部に連通する下側ポート106が形成されている。また、後側内部空間98の前方下方には、開口108が形成されている。
【0057】
調整ピン94は、上側ポート104、後側内部空間98、下側ポート106を貫通するように配置されている。
図8に示すように、調整ピン94の上端面には、工具溝94aが形成されている。調整ピン94は、上側ポート104の上方に配置されたコイルばね110によって、上方に向けて付勢されている。調整ピン94には、下側ポート106より下方で、位置決めピン112が挿通されている。位置決めピン112は、下側ポート106の周囲に形成された座面106aに当接している。座面106aは、調整ピン94の回転角度に応じて、位置決めピン112と当接する上下方向の位置が変化するように形成されている。
図7に示すように、調整ピン94には、突起部94bが形成されている。突起部94bは、後側内部空間98の内部に配置されている。突起部94bは、調整ピン94の軸線に関して、回転対称な形状を有している。
【0058】
図7、
図9に示すように、プランジャ88は、前側内部空間96に対応する略円筒形状の小径部114と、外面にねじが形成されたねじ部116と、後側内部空間98に対応する略円筒形状の大径部118を備えている。小径部114には、導入ポート100または導出ポート102を前側内部空間96に連通させるための切り欠き114aと、前側内部空間96を後側内部空間98から封止するためのシール120を収容するシール収容部114bが形成されている。ねじ部116のねじは、ウォームギア84と噛み合う形状に形成されている。大径部118の後端面118aは、プランジャ88の軸線に対して傾斜した平面を形成している。
【0059】
図7に示すように、プランジャ88は、小径部114が前側内部空間96から後側内部空間98にかけて配置され、ねじ部116および大径部118が後側内部空間98に配置されている。プランジャ88のねじ部116は、開口108を介して、ウォームギア84と噛み合っている。また、プランジャ88のねじ部116は、後側内部空間98において、コイルばね122によって後方に向けて付勢されている。プランジャ88の大径部118の後端面118aは、調整ピン94の突起部94bに当接している。
【0060】
オイルポンプ38の動作について説明する。モータ34の出力シャフト50が回転すると、ウォームギア84の回転に伴ってねじ部116が回転し、プランジャ88が軸線周りに回転する。プランジャ88の大径部118の後端面118aはプランジャ88の軸線に対して傾斜した平面を形成しているから、プランジャ88の回転に伴って、プランジャ88の大径部118の後端面118aが調整ピン94の突起部94bと当接する位置が変化し、プランジャ88は前後方向に進退する。オイルポンプ38では、プランジャ88が後退するタイミングで切り欠き114aが導入ポート100に対向して、導入ポート100から潤滑油を前側内部空間96に吸入するとともに、プランジャ88が前進するタイミングで切り欠き114aが導出ポート102に対向して、前側内部空間96から導出ポート102に潤滑油を排出する。
【0061】
オイルポンプ38において、使用者が工具溝94aに工具を差し込んで調整ピン94を回転させると、位置決めピン112が座面106aと当接する位置が変化し、調整ピン94の上下方向の位置が変化する。調整ピン94の上下方向の位置が変化すると、後側内部空間98における突起部94bの上下方向の位置が変化し、プランジャ88が前後方向に進退する際の移動量が変化する。例えば、上下方向に関して突起部94bがプランジャ88の軸線に近い位置にある場合、プランジャ88が前後方向に進退する際の移動量は小さくなる。逆に、上下方向に関して突起部94bがプランジャ88の軸線から遠い位置にある場合、プランジャ88が前後方向に進退する際の移動量は大きくなる。プランジャ88が前後方向に進退する際の移動量が変化すると、オイルタンク36からガイドバー6に供給する潤滑油の吐出量が変化する。すなわち、使用者は調整ピン94を回転させることで、オイルタンク36からガイドバー6に供給する潤滑油の吐出量を調整することができる。
【0062】
図10に示すように、本体ハウジング22の上面には、使用者が調整ピン94の工具溝94aに工具を差し込むことが可能な、調整用開口124が形成されている。チェーンソー2の左右方向に関して、調整用開口124は、トップハンドル24よりも左側に配置されている。チェーンソー2の前後方向に関して、調整用開口124は、サイドハンドル14のトップハンドル24への接続箇所と、サイドハンドル14の本体ハウジング22への接続箇所の間に配置されている。このような場所に調整用開口124を設けることによって、使用者が調整ピン94の工具溝94aに工具を差し込みやすくすることができ、潤滑油の吐出量を調整しやすくすることができる。本実施例のチェーンソー2では、調整ピン94と調整用開口124によって、吐出量調整機構126が構成されている。
【0063】
なお、調整用開口124は、上記以外の場所に設けられていてもよい。例えば、調整用開口124は、本体ハウジング22の左側面に設けられていてもよい。あるいは、調整用開口124は、本体ハウジング22の右側面や、本体ハウジング22の前面または本体ハウジング22の後面に設けられていてもよい。調整用開口124が本体ハウジング22の上面や左側面、後面に設けられている場合、チェーンソー2による切断作業の際に飛散する粉塵が調整用開口124へ侵入することを抑制することができる。
【0064】
本実施例のチェーンソー2では、オイルポンプ38が、モータ34の左側に配置されている。このため、オイルポンプ38がモータ34の右側に配置されている場合に比べて、本体ハウジング22の内部において、モータ34の右側の空間に収容する部品を少なくすることができる。
【0065】
また、本実施例のチェーンソー2では、スプロケット56が、モータ34の出力シャフト50に、ギヤやクラッチ等の機構を介さずに直接的に連結されている。このため、スプロケット56が、モータ34の出力シャフト50に、ギヤやクラッチ等の機構を介して連結している場合に比べて、スプロケット56を、本体ハウジング22の中央寄りに配置することができる。
【0066】
図10に示すように、本実施例のチェーンソー2では、チェーンソー2を上方から平面視した時に、トップハンドル24の右側端面からガイドバー6の中心線までの距離をL1とし、ガイドバー6の中心線からスプロケットカバー20の右側端面までの距離をL2としたときに、L1/(L1+L2)≦0.3の関係となっている。このような構成によれば、チェーンソー2の左右方向に関して、トップハンドル24とガイドバー6が比較的近接して配置されているので、使用者が右手でトップハンドル24を把持した時に、ソーチェーン8による切断位置を直感的に把握しやすくすることができる。また、このような構成によれば、チェーンソー2の左右方向に関して、ガイドバー6の重心が、トップハンドル24に近い位置となり、チェーンソー2の重心Gに近い位置となる。このため、異なる種類のガイドバー6を取り付けた場合であっても、チェーンソー2の左右方向に関して、チェーンソー2の重心Gの位置が変化することを抑制することができる。なお、本実施例のチェーンソー2では、トップハンドル24の右側端面からスプロケットカバー20の右側端面までの距離L1+L2が、30mm以上確保されている。
【0067】
本実施例のチェーンソー2では、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、トップハンドル24の左右方向の中心線からトップハンドル24の左側端面までの距離L3を2倍した範囲(好ましくは1.5倍した範囲(より好ましくは1.2倍した範囲))から、トップハンドル24の左右方向の中心線からトップハンドル24の右側端面までの距離L4を2倍した範囲(好ましくは1.5倍した範囲(より好ましくは1.2倍した範囲))までの間に、チェーンソー2の重心Gが配置されている。このような構成とすることで、使用者が右手でトップハンドル24を把持してチェーンソー2を保持した時に、チェーンソー2が左右に傾斜しにくくなる。チェーンソー2を用いた切断作業の作業性を向上することができる。
【0068】
本実施例のチェーンソー2では、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、バッテリBの左右方向の中心線からバッテリBの左側端面までの距離L5を1.2倍した範囲(好ましくは1.1倍した場合(より好ましくは1倍した範囲))から、バッテリBの左右方向の中心線からバッテリBの右側端面までの距離L6を1.2倍した範囲(好ましくは1.1倍した場合(より好ましくは1倍した範囲))までの間に、本体ハウジング22、トップハンドル24およびガイドバー6が配置されており、本体ハウジング22内に収容されたモータ34、オイルタンク36、オイルポンプ38、コントロールユニット40等も、上記の範囲内に配置されている。このような構成とすることによって、本体ハウジング22の左右方向の寸法を小型化することができる。
【0069】
図2に示すように、本実施例のチェーンソー2では、チェーンソー2を載置面Pに載置した時に、前後方向および上下方向に関して、チェーンソー2の重心Gの位置が、トリガスイッチ30より後方のトップハンドル24の下面の最上部から鉛直下方に伸びる線から前後15°の範囲内(好ましくは前後10°の範囲内(より好ましくは前後5°の範囲内))に位置している。使用者がトップハンドル24を右手で把持してチェーンソー2を保持する際には、人差し指によってトリガスイッチ30を操作するため、中指Fをトリガスイッチ30より後方のトップハンドル24の下面の最上部にかけてチェーンソー2を保持することになる。本実施例のチェーンソー2では、前後方向および上下方向に関して、チェーンソー2の重心Gが上記の範囲内に位置しているので、中指Fをトリガスイッチ30より後方のトップハンドル24の下面の最上部にかけてチェーンソー2を保持する場合でも、チェーンソー2の前後方向のバランスを維持することができる。
【0070】
以上のように、一実施形態に係るチェーンソー2は、ガイドバー6の周りでソーチェーン8を回転させるモータ34と、モータ34への印加電圧を制御するコントロールユニット40と、モータ34およびコントロールユニット40を収容する本体ハウジング22と、本体ハウジング22に着脱可能に取り付けられたバッテリBと、本体ハウジング22の上部に設けられたトップハンドル24を備えている。
図3に示すように、コントロールユニット40は、バッテリBの上方に配置されている。チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を後方から見た時に、バッテリBとコントロールユニット40は重なり合っていない。チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、バッテリBとコントロールユニット40が少なくとも部分的に重なり合っている。上記の構成によれば、コントロールユニット40とバッテリBを互いに重なり合わないように前後方向にずらして配置する場合に比べて、本体ハウジング22の前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0071】
一実施形態に係るチェーンソー2では、本体ハウジング22の、トップハンドル24の後方の端部が本体ハウジング22に接続する箇所の近傍に、ハンドレスト22dが形成されている。コントロールユニット40は、ハンドレスト22dの内部に配置されている。上記の構成によれば、本体ハウジング22の、トップハンドル24の後方の端部が本体ハウジング22に接続する箇所の近傍に、ハンドレスト22dを形成することで、使用者の利便性を向上することができる。また、上記の構成によれば、本体ハウジング22のハンドレスト22dの内部の空間にコントロールユニット40を配置することで、ハンドレスト22dの内部の空間を有効に活用することができ、本体ハウジング22の寸法をより小型化することができる。
【0072】
一実施形態に係るチェーンソー2では、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を後方から見た時に、トップハンドル24とバッテリBは重なり合っていない。チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、トップハンドル24とバッテリBが少なくとも部分的に重なり合っている。上記の構成によれば、本体ハウジング22の内部の、トップハンドル24とバッテリBの間の空間にコントロールユニット40が配置されることになる。上記の構成によれば、トップハンドル24とバッテリBを互いに重なり合わないように前後方向にずらして配置する場合に比べて、本体ハウジング22の前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0073】
一実施形態に係るチェーンソー2では、バッテリBは、本体ハウジング22に対して左右方向にスライドさせて着脱可能である。上記の構成によれば、バッテリBを、本体ハウジング22に対して前後方向にスライドさせて着脱可能とした場合に比べて、本体ハウジング22の前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0074】
一実施形態に係るチェーンソー2は、ガイドバー6の周りでソーチェーン8を回転させるモータ34と、モータ34への印加電圧を制御するコントロールユニット40と、モータ34およびコントロールユニット40を収容する本体ハウジング22と、本体ハウジング22に着脱可能に取り付けられたバッテリBと、本体ハウジング22の上部に設けられたトップハンドル24を備えている。
図3に示すように、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、モータ34とバッテリBは重なり合っておらず、かつモータ34とコントロールユニット40は重なり合っていない。
図3、
図10に示すように、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を後方から見た時に、モータ34とバッテリBは少なくとも部分的に重なり合っており、かつモータ34とコントロールユニット40が少なくとも部分的に重なり合っている。モータ34を搭載したチェーンソー2においては、多くの場合、モータ34は、その出力シャフト50がチェーンソー2の左右方向に沿うように配置される。この場合、本体ハウジング22の内部において、モータ34の上方や下方にバッテリBやコントロールユニット40が配置されると、本体ハウジング22の上下方向の寸法が大きくなってしまう。上記の構成によれば、本体ハウジング22の内部において、モータ34の上方や下方にバッテリBやコントロールユニット40が配置されてないので、本体ハウジング22の上下方向の寸法をより小型化することができる。また、上記の構成によれば、チェーンソー2を後方から見た時に、モータ34とバッテリBが少なくとも部分的に重なり合っており、かつモータ34とコントロールユニット40が少なくとも部分的に重なり合っているので、本体ハウジング22の左右方向の寸法も小型化することができる。
【0075】
一実施形態に係るチェーンソー2では、バッテリBとコントロールユニット40が、モータ34よりも後方に配置されている。上記の構成によれば、ガイドバー6から離れた位置である本体ハウジング22の後方でバッテリBの着脱が可能となり、使用者のバッテリBの着脱作業を容易なものとすることができる。また、上記の構成によれば、バッテリBとコントロールユニット40の両方がモータ34よりも後方に配置されているので、本体ハウジング22の前後方向の寸法をより小型化することができる。
【0076】
一実施形態に係るチェーンソー2では、
図10に示すように、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、バッテリBの左右方向の中心線からバッテリBの左右方向の幅の1.2倍の範囲内に、モータ34が配置されている。上記の構成によれば、チェーンソー2の左右方向に関して、バッテリBとモータ34を大きくオフセットして配置する場合に比べて、本体ハウジング22の左右方向の寸法をより小型化することができる。
【0077】
一実施形態に係るチェーンソー2は、
図3に示すように、ガイドバー6の周りでソーチェーン8を回転させるモータ34と、モータ34の回転に連動してソーチェーン8に潤滑油を供給するオイルポンプ38と、モータ34およびオイルポンプ38を収容する本体ハウジング22を備えている。
図8に示すように、チェーンソー2は、オイルポンプ38における潤滑油の吐出量を調整する調整ピン94(調整部材の一例)を含む吐出量調整機構126を備えている。吐出量調整機構126は、本体ハウジング22の、チェーンソー2を載置した時に外部に露出する面に配置されている。上記の構成によれば、吐出量調整機構126が、本体ハウジング22の、チェーンソー2を載置した時に外部に露出する面に配置されているので、潤滑油の吐出量を調整する際に、使用者はチェーンソー2を載置した状態で調整ピン94を操作することができる。潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことができる。
【0078】
一実施形態に係るチェーンソー2は、本体ハウジング22の上部に設けられたトップハンドル24をさらに備えている。吐出量調整機構126は、トップハンドル24の左側に配置されている。上記の構成によれば、潤滑油の吐出量を調整する際に、使用者は右手でトップハンドル24を把持してチェーンソー2を保持した状態でも、左手で調整ピン94を操作することができる。潤滑油の吐出量を調整する作業を容易に行なうことができる。
【0079】
一実施形態に係るチェーンソー2では、オイルポンプ38は、モータ34の左側に配置されている。仮に、オイルポンプ38がモータ34の右側に配置されている場合、吐出量調整機構126をトップハンドル24の左側に配置すると、吐出量調整機構126を複雑な構成とする必要がある。上記の構成によれば、オイルポンプ38がモータ34の左側に配置されており、かつ吐出量調整機構126がトップハンドル24の左側に配置されているので、吐出量調整機構126を簡素な構造とすることができる。
【0080】
一実施形態に係るチェーンソー2は、本体ハウジング22の左側に設けられたサイドハンドル14をさらに備えている。吐出量調整機構126は、サイドハンドル14の前側の端部よりも後方に配置されている。上記の構成によれば、使用者が調整ピン94を操作する際に、サイドハンドル14が邪魔になることがない。潤滑油の吐出量を調整する作業をより容易に行なうことができる。
【0081】
一実施形態に係るチェーンソー2では、吐出量調整機構126は、本体ハウジング22の上面に配置されている。上記の構成によれば、使用者は、身体を屈めたり、チェーンソー2を目線の高さまで持ち上げることなく、調整ピン94を視認することができる。このため、使用者は、調整ピン94を操作する作業をより容易に行なうことができる。
【0082】
一実施形態に係るチェーンソー2では、調整ピン94は、本体ハウジング22の内部に配置されている。吐出量調整機構126は、本体ハウジング22に形成されており、調整ピン94を操作するための工具が通過可能な調整用開口124をさらに含んでいる。上記の構成によれば、調整ピン94が本体ハウジング22の内部に配置されているので、調整ピン94が誤って操作されることを防止することができる。
【0083】
一実施形態に係るチェーンソー2は、ガイドバー6の周りでソーチェーン8を回転させるモータ34(原動機の一例)と、モータ34の回転をソーチェーン8に伝達するスプロケット56と、モータ34を収容する本体ハウジング22と、スプロケット56を覆うスプロケットカバー20と、本体ハウジング22の上方に設けられたトップハンドル24を備えている。
図10に示すように、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、トップハンドル24の右側端面からガイドバー6の中心線までの距離L1の、トップハンドル24の右側端面からスプロケットカバー20の右側端面までの距離L1+L2に対する比率が、0.3以下である。上記の構成によれば、トップハンドル24とガイドバー6が、左右方向に比較的近接して配置されているので、使用者がトップハンドル24を把持した時に、ソーチェーン8による切断位置を直感的に把握しやすくすることができる。また、上記の構成によれば、チェーンソー2の左右方向に関して、ガイドバー6の重心が、トップハンドル24に近い位置となり、チェーンソー2の重心Gに近い位置となる。このため、異なる種類のガイドバー6を取り付けた場合であっても、チェーンソー2の左右方向に関して、チェーンソー2の重心Gの位置が変化することを抑制することができる。
【0084】
一実施形態に係るチェーンソー2では、チェーンソー2を載置した状態で、チェーンソー2を上方から見た時に、トップハンドル24の左右方向の中心線からトップハンドル24の左右方向の幅の2倍の範囲内に、チェーンソー2の重心Gが配置されている。上記の構成によれば、使用者が右手でトップハンドル24を把持してチェーンソー2を保持した時に、チェーンソー2が左右に傾斜しにくくなる。チェーンソー2を用いた切断作業の作業性を向上することができる。
【0085】
一実施形態に係るチェーンソー2では、ガイドバー6の周りでソーチェーン8を回転させる原動機が、モータ34である。モータ34はエンジン等の他の原動機に比べて、構造がシンプルであるので、チェーンソー2を設計する際に、重心の位置を特定しやすく、かつ本体ハウジング22の内部における取り付け位置を調整しやすい。上記の構成によれば、ガイドバー6の重量とモータ34の重量のバランスを取ることで、チェーンソー2の左右方向に関して、チェーンソー2の重心Gをトップハンドル24の近傍に配置することができる。
【0086】
一実施形態に係るチェーンソー2は、本体ハウジング22に着脱可能に取り付けられたバッテリBをさらに備えている。電源コードにより電力を供給する場合とは異なり、バッテリBにより電力を供給する場合、本体ハウジング22に取り付けられたバッテリBを、チェーンソー2の重心位置を調整するための重量物として用いることができる。上記の構成によれば、ガイドバー6の重量と、モータ34の重量と、バッテリBの重量のバランスを取ることで、チェーンソー2の左右方向に関して、チェーンソー2の重心をトップハンドル24の近傍に配置することができる。
【0087】
なお、一実施形態に係るチェーンソー2では、本体ハウジング22のバッテリ取り付け部22cに、バッテリBを前後方向にスライドさせて着脱可能な構成としてもよい。
【0088】
一実施形態に係るチェーンソー2では、本体ハウジング22のバッテリ取り付け部22cを、本体ハウジング22の前面、後面、左側面、右側面または上面に設けてもよい。この場合、バッテリBの着脱の際にスライドさせる方向を、バッテリ取り付け部22cに沿った任意の方向、例えば上下方向、左右方向、または前後方向としてもよい。
【0089】
一実施形態に係るチェーンソー2では、吐出量調整機構126において、調整ピン94が調整用開口124を貫通して本体ハウジング22の外部に突出しており、工具溝94aが本体ハウジング22の外部に配置されていてもよい。あるいは、吐出量調整機構126が、本体ハウジング22の外部に露出したレバーまたはダイヤルを備えており、そのレバーまたはダイヤルが調整用開口124を介して調整ピン94と機械的に連結されていてもよい。
【0090】
一実施形態に係るチェーンソー2は、バッテリBを取り付けることなく、電源コードを介して電力を供給されてもよい。
【0091】
一実施形態に係るチェーンソー2は、スプロケット56を回転させる原動機として、モータ34の代わりに、エンジンを備えていてもよい。この場合、エンジンの駆動によって、スプロケット56に連結された出力シャフト50を回転させる構成としてもよい。
【0092】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0093】
2 :チェーンソー
4 :本体
6 :ガイドバー
6a :長孔
8 :ソーチェーン
10 :左側ハウジング
12 :右側ハウジング
14 :サイドハンドル
16 :ハンドガード
18 :ブレーキカバー
20 :スプロケットカバー
20a :凹部
20b :締結用開口
20c :調整用開口
22 :本体ハウジング
22a :前側本体ハウジング
22b :後側本体ハウジング
22c :バッテリ取り付け部
22d :ハンドレスト
24 :トップハンドル
24a :支持部
24b :把持部
24c :凹部
26 :電源スイッチ
28 :電源ランプ
30 :トリガスイッチ
32 :トリガロックレバー
34 :モータ
36 :オイルタンク
36a :補充用開口
38 :オイルポンプ
40 :コントロールユニット
42 :コイル
44 :ステータ
46 :ロータ
48 :冷却ファン
50 :出力シャフト
52 :ベアリング
54 :ベアリング
56 :スプロケット
58 :ブレーキベース
60 :ブレーキドラム
61 :内側ガイドプレート
62 :外側ガイドプレート
64 :支持ピン
65 :係合爪
66 :支持ボルト
67 :係合孔
68 :ナット
69 :回転直動変換機構
70 :調整ネジ
72 :リンク機構
74 :ブレーキシュー
76 :キャップ
78 :液位確認用開口
80 :導入管
82 :導出管
84 :ウォームギア
86 :ブラケット
88 :プランジャ
90 :前側キャップ
92 :後側キャップ
94 :調整ピン
94a :工具溝
94b :突起部
96 :前側内部空間
98 :後側内部空間
100 :導入ポート
102 :導出ポート
104 :上側ポート
106 :下側ポート
106a :座面
108 :開口
110 :コイルばね
112 :位置決めピン
114 :小径部
114a :切り欠き
114b :シール収容部
116 :ねじ部
118 :大径部
118a :後端面
120 :シール
122 :コイルばね
124 :調整用開口
126 :吐出量調整機構