IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

特許6990093アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム
<>
  • 特許-アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム 図1
  • 特許-アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム 図2
  • 特許-アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム 図3
  • 特許-アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム 図4
  • 特許-アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/12 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
H02M1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017219229
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019092286
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 敦之
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-140267(JP,A)
【文献】特開平6-113460(JP,A)
【文献】特開2003-70165(JP,A)
【文献】特開2012-205392(JP,A)
【文献】特開平11-341684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-1/44
H02M 7/42-7/98
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す前記高調波補償電流を算出する高調波補償部と、
前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、前記高調波補償部の算出した前記高調波補償電流が前記高調波補償部において許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定する条件判定部と、
前記高調波補償電流が前記高調波補償部において許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと前記条件判定部が判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善する力率補償部と、
を備えるアクティブフィルタ。
【請求項2】
アクティブフィルタに備えられる部品の劣化時期を判定する寿命判定部、
を備える請求項1に記載のアクティブフィルタ。
【請求項3】
前記劣化時期に基づいて前記部品の交換時期を報知する報知部、
を備える請求項に記載のアクティブフィルタ。
【請求項4】
コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す前記高調波補償電流を算出し、
前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、算出した前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定し、
前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善する、
アクティブフィルタによる制御方法。
【請求項5】
アクティブフィルタのコンピュータに、
コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す高調波補償電流を算出することと、
前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、算出した前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定することと、
前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータでは、高調波を含む電流が流れることが知られている。この高調波を含むリップル電流は、電力を供給する三相交流電源側の系統電力を変動させる可能性がある。そのため、系統電力が変動しないように、コンバータに流れる電流の高調波を打ち消す電流を生成するアクティブフィルタと呼ばれる装置が用いられる場合がある。
特許文献1には、関連する技術として、電流に余裕がある場合に、高調波の電流を補償するとともに、系統に接続される装置においてコンバータの負荷となるインバータにおける電圧に基づいて、その余剰の電流を用いて、系統に接続される装置の力率を改善するアクティブフィルタに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-140267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アクティブフィルタとして、系統に接続される装置においてコンバータの負荷となるインバータにおける電圧を検出できない場合にも、コンバータ電流における高調波を補償するアクティブフィルタの電流に余裕がある場合に、コンバータ電流における高調波の電流を補償するとともに、系統に接続される装置の力率を改善することのできる技術が求められている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することのできるアクティブフィルタ、アクティブフィルタによる制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アクティブフィルタは、コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す前記高調波補償電流を算出する高調波補償部と、前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、前記高調波補償部の算出した前記高調波補償電流が前記高調波補償部において許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定する条件判定部と、前記高調波補償電流が前記高調波補償部において許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと前記条件判定部が判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善する力率補償部と、を備える
【0008】
本発明の第の態様によれば、第1の態様におけるアクティブフィルタは、アクティブフィルタに備えられる部品の劣化時期を判定する寿命判定部、を備えるものであってもよい。
【0009】
本発明の第の態様によれば、第の態様におけるアクティブフィルタは、前記劣化時期に基づいて前記部品の交換時期を報知する報知部、を備えるものであってもよい。
【0010】
本発明の第の態様によれば、アクティブフィルタによる制御方法は、コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す前記高調波補償電流を算出し、前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、算出した前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定し、前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善する
【0011】
本発明の第の態様によれば、プログラムは、アクティブフィルタのコンピュータに、コンバータ電流は交流電力を直流電力に変換するコンバータと系統との間を流れる電流であり、高調波補償電流は前記コンバータと前記系統との間にアクティブフィルタの出力として供給される電流であり、前記コンバータ電流における高調波電流を打ち消す高調波補償電流を算出することと、前記高調波補償電流を生成する回路の温度を検出する温度センサの示す温度が定格温度以下であるか否かを判定し、前記温度が前記定格温度以下であると判定した場合、算出した前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定することと、前記高調波補償電流が前記アクティブフィルタにおいて許容される最大電流であって前記アクティブフィルタの流すことのできる最大電流よりも小さいと判定した場合、前記系統における系統電圧と前記コンバータ電流とに基づいて、力率を改善することと、を実行させる
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によるアクティブフィルタによれば、系統に接続される装置においてコンバータの負荷となるインバータにおける電圧を検出できない場合にも、コンバータ電流における高調波を補償するアクティブフィルタの電流に余裕がある場合に、コンバータ電流における高調波の電流を補償するとともに、系統に接続される装置の力率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるアクティブフィルタの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるモータ駆動装置の処理フローを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態によるアクティブフィルタの構成を示す図である。
図5】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態によるモータ駆動装置の構成について説明する。
本発明の第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、図1に示すように、三相交流電源10と、系統電圧検出部20と、コンバータ電流検出部30と、ノイズフィルタ40と、ダイオードモジュール50と、平滑コンデンサ60と、インテリジェントパワーモジュール70と、コンプレッサモータ80と、アクティブフィルタ90と、電流補正部100と、平滑リアクトル110と、を備える。モータ駆動装置1は、アクティブフィルタ90が電流補正部100を介してダイオードモジュール50へ流れるコンバータ電流の高調波電流の歪みを補償する際に、電流補正部100に流す電流に余裕がある場合、モータ駆動装置1の力率を改善する装置である。
【0015】
三相交流電源10は、ダイオードモジュール50へ電力を供給する電源である。三相交流電源10は、位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧(R相、S相、T相)を出力する。三相交流電源10は、例えば、商用電源である。
【0016】
系統電圧検出部20は、三相交流電源10が出力するR相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、S相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、T相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線のそれぞれにおいて、電圧を検出する。
【0017】
コンバータ電流検出部30は、カレントトランス301aと、カレントトランス301bと、を備える。コンバータ電流検出部30は、コンバータ電流を検出するための検出部である。
カレントトランス301aは、三相交流電源10からノイズフィルタ40に供給されるR相の電流の大きさと向きを検出する。
カレントトランス301bは、三相交流電源10からノイズフィルタ40に供給されるT相の電流の大きさと向きを検出する。なお、R相の電流の位相は、R相の電圧の位相と同位相である。また、T相の電流の位相は、T相の電圧と同位相である。また、R相の電流、S相の電流、T相の電流の総和は、常にゼロである。そのため、S相の電流の大きさと向きは、R相の電流とT相の電流の検出結果から算出することができる。S相の位相は、S相の電圧の位相と同位相である。
【0018】
ノイズフィルタ40は、三相交流電源10の3つの配線に於いてノイズ成分となる数十[kHz]以上の高周波成分を除去する。
【0019】
ダイオードモジュール50は、R相の電流、S相の電流、T相の電流のそれぞれを整流し、直流電圧を生成する。ダイオードモジュール50は、例えば、三相ブリッジ回路である。
【0020】
平滑コンデンサ60は、ダイオードモジュール50が生成した直流電圧における高周波成分を除去する。
なお、上記のノイズフィルタ40、ダイオードモジュール50、及び、平滑コンデンサ60により三相交流電源10が出力する交流電圧を直流電圧に変換している。すなわち、ノイズフィルタ40、ダイオードモジュール50、及び、平滑コンデンサ60によりコンバータが構成されている。
【0021】
インテリジェントパワーモジュール70は、ダイオードモジュール50が生成した直流電圧からコンプレッサモータ80を駆動するための三相交流電圧を生成する。インテリジェントパワーモジュール70は、例えば、インバータである。
【0022】
アクティブフィルタ90は、系統電圧検出部20が検出した電圧とコンバータ電流検出部30が検出した電流とに基づいて、R相の電圧、S相の電圧、T相の電圧のそれぞれを正弦波になるように補正するための補正電流を特定し、特定した補正電流の大きさを示す指令電流値を電流補正部100に送信する機能部である。
具体的には、電流補正部100が端子である場合、アクティブフィルタ90は、補正信号としてR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流そのものを生成し、その補正信号を電流補正部100に供給する。
また、具体的には、電流補正部100が補正信号に応じた電流を新たに生成する場合、アクティブフィルタ90は、補正信号として例えばR相の配線、S相の配線、T相の配線における電圧と電流に基づいて、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を示す数ビットのデジタル信号を生成し、その補正信号を電流補正部100に送信する。R相の配線、S相の配線、T相の配線におけるインピーダンスは予めわかるため、アクティブフィルタ90は、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流がわかれば、その電流を示す数ビットのデジタル信号を生成することも可能である。
【0023】
また、アクティブフィルタ90は、電流補正部100の流すことのできる最大電流に比べて高調波電流を打ち消す電流が小さい場合、系統電圧検出部20が検出した電圧とコンバータ電流検出部30が検出した電流とに基づいて、力率を改善するように電流の位相を電圧の位相に近づける動作を行う。なお、アクティブフィルタ90は、高調波補償電流を生成する箇所(すなわち、電流補正部100が端子である場合には、アクティブフィルタ90、電流補正部100がアクティブフィルタ90からの制御信号に基づいて高調波補償電流を生成する場合には電流補正部100)における温度が定格温度を超えた場合、力率を改善する動作を停止する。
【0024】
電流補正部100は、アクティブフィルタ90からの指令電流値に基づいて、R相の配線、S相の配線、T相の配線に電流を流す。
具体的には、電流補正部100が端子である場合、電流補正部100は、アクティブフィルタ90からR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流そのものを受け、その受けた電流をR相の配線、S相の配線、T相の配線に流すことで、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す。
また、具体的には、電流補正部100が補正信号に応じた電流を新たに生成する場合、アクティブフィルタ90からR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を示す数ビットのデジタル信号を受信する。そして、電流補正部100は、受信したデジタル信号が示すR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を生成し、生成した電流をR相の配線、S相の配線、T相の配線に供給する。
これにより、三相交流電源10の出力、すなわち、モータ駆動装置1の最上流部において、歪みの少ない正弦波波形の電流が実現される。
なお、図1では、電流補正部100と系統電圧検出部20は、R相の配線、S相の配線、T相の配線において同一箇所に一部共通の構成を有している。
【0025】
電流補正部100が端子である場合には、アクティブフィルタ90に温度センサ150が設けられている。また、電流補正部100がアクティブフィルタ90からの制御信号に基づいて高調波補償電流を生成する場合には電流補正部100に温度センサ150が設けられている。
【0026】
平滑リアクトル110は、平滑コンデンサ60とダイオードモジュール50の間に設けられる。平滑リアクトル110は、コンバータに入力されるコンバータ電流の通電期間の電流を一定に保つ。
なお、コンバータ電流の通電期間の電流が許容範囲内で一定に保たれれば、平滑リアクトル110は無くてもよい。
【0027】
アクティブフィルタ90は、所定の時間間隔ごとにR相、S相、T相のうちの1つに対応するコンバータ電流のみの高調波信号を打ち消す機能を有する。具体的には、アクティブフィルタ90は、図2に示すように、切替部901と、高調波補償部902と、条件判定部903と、力率補償部904と、記憶部905と、を備える。
【0028】
切替部901は、電源系統における三相交流電源10に接続されるR相、S相、T相の3つの配線における3つの異なる電圧の位相に基づいて、電圧の位相の所定の範囲ごとに、制御対象とする相を切り替える。
【0029】
高調波補償部902は、コンバータ電流における高調波電流を打ち消す電流(以下、「高調波補償電流」と記載)を算出する。高調波補償部902は、電流補正部100を介して、コンバータ電流における高調波を補償する。
条件判定部903は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定する。
力率補償部904は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいと条件判定部903が判定した場合、系統電圧検出部20が検出した電圧とコンバータ電流検出部30が検出した電流とに基づいて、力率を改善するように電流の位相を電圧の位相に近づける動作を行う。
具体的には、電流補正部100が端子の場合には、力率補償部904は、電流補正部100の流すことのできる最大電流から高調波補償電流を減算した電流値を算出し、算出した電流値をコンバータ電流検出部30が検出した電流に重畳させることによってその電流の位相を系統電圧検出部20が検出した電圧の位相に近づける電流を生成する。また、電流補正部100が制御信号に基づいて電流を流す場合には、力率補償部904は、電流補正部100の流すことのできる最大電流から高調波補償電流を減算した電流値を算出する。力率補償部904は、算出した電流値をコンバータ電流検出部30が検出した電流に重畳させることによってその電流の位相を系統電圧検出部20が検出した電圧の位相に近づける制御信号を生成して、生成した制御信号を電流補正部100に出力する。
記憶部905は、アクティブフィルタ90が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部905は、高調波補償部902が高調波補償電流を算出するための算出式を記憶する。また、記憶部905は、電流補正部100の流すことのできる最大電流の値を記憶する。
【0030】
三相交流電源10は、第1端子、第2端子、第3端子を備える。
系統電圧検出部20は、第1端子、第2端子、第3端子を備える。
コンバータ電流検出部30のカレントトランス301a、カレントトランス301bのそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
ノイズフィルタ40は、第1入力端子、第2入力端子、第3入力端子、第1出力端子、第2出力端子を備える。
ダイオードモジュール50は、第1入力端子、第2入力端子、第1出力端子、第2出力端子を備える。
平滑コンデンサ60は、第1端子、第2端子を備える。
インテリジェントパワーモジュール70は、第1入力端子、第2入力端子、第1出力端子、第2出力端子、第3出力端子を備える。
コンプレッサモータ80は、第1端子、第2端子、第3端子を備える。
アクティブフィルタ90は、第1端子a1、第2端子a2、第3端子a3、第4端子b1、第5端子b2を備える。
平滑リアクトル110は、第1端子、第2端子を備える。
【0031】
三相交流電源10の第1端子は、系統電圧検出部20の第1端子、コンバータ電流検出部30のカレントトランス301aの第1端子、アクティブフィルタ90の第1端子a1のそれぞれに接続される。三相交流電源10の第2端子は、系統電圧検出部20の第2端子、ノイズフィルタ40の第2入力端子、アクティブフィルタ90の第2端子a2のそれぞれに接続される。三相交流電源10の第3端子は、系統電圧検出部20の第3端子、コンバータ電流検出部30のカレントトランス301bの第1端子、アクティブフィルタ90の第3端子a3のそれぞれに接続される。
【0032】
コンバータ電流検出部30のカレントトランス301aの第2端子は、ノイズフィルタ40の第1入力端子に接続される。コンバータ電流検出部30のカレントトランス301bの第2端子は、ノイズフィルタ40の第3入力端子に接続される。コンバータ電流検出部30のカレントトランス301aが検出する電流値は、アクティブフィルタ90の第4端子b1に伝えられる。コンバータ電流検出部30のカレントトランス301bが検出する電流値は、アクティブフィルタ90の第5端子b2に伝えられる。
【0033】
ノイズフィルタ40の第1出力端子は、ダイオードモジュール50の第1入力端子に接続される。ノイズフィルタ40の第2出力端子は、ダイオードモジュール50の第2入力端子に接続される。
【0034】
ダイオードモジュール50の第1出力端子は、平滑リアクトル110の第1端子に接続される。ダイオードモジュール50の第2出力端子は、平滑コンデンサ60の第2端子、インテリジェントパワーモジュール70の第2入力端子のそれぞれに接続される。
【0035】
平滑コンデンサ60の第1端子は、インテリジェントパワーモジュール70の第1入力端子、平滑リアクトル110の第1端子のそれぞれに接続される。
インテリジェントパワーモジュール70の第1出力端子は、コンプレッサモータ80の第1端子に接続される。インテリジェントパワーモジュール70の第2出力端子は、コンプレッサモータ80の第2端子に接続される。インテリジェントパワーモジュール70の第3出力端子は、コンプレッサモータ80の第3端子に接続される。
【0036】
次に、アクティブフィルタ90を備えるモータ駆動装置1の処理について説明する。
ここでは、図3に示すモータ駆動装置1の処理フローについて説明する。
【0037】
系統電圧検出部20は、三相交流電源10が出力するR相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、S相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、T相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線のそれぞれにおいて、電圧を検出する。
系統電圧検出部20は、検出した電圧を示す電圧信号を切替部901に送信する。
【0038】
切替部901は、系統電圧検出部20から電圧信号を受信する。
切替部901は、受信した電圧信号が示す電圧値から電圧の位相を特定する(ステップS1)。例えば、切替部901は、R相の電圧のゼロクロス点を示す時刻を位相の基準である0度とする。なお、切替部901は、R相ではなくS相またはT相の電圧のゼロクロス点を示す時刻を位相の基準としてもよい。
【0039】
切替部901は、電圧の1周期を6つの範囲に分けて、制御対象とする相を切り替える。
切替部901は、位相の基準と、6つのそれぞれの位相の範囲と、その位相の範囲における制御対象とする相とを含む制御対象情報を高調波補償部902、条件判定部903、力率補償部904のそれぞれに送信する。
【0040】
高調波補償部902は、系統電圧検出部20が検出した電圧の値とコンバータ電流検出部30が検出した電流の値を記憶部905が記憶する算出式に代入して高調波補償電流を算出する(ステップS2)。そして、高調波補償部902は、電流補正部100を介してコンバータ電流における高調波を補償する(ステップS3)。
【0041】
条件判定部903は、温度センサ150の示す温度が定格温度以下であるか否かを判定する(ステップS4)。
条件判定部903は、温度センサ150の示す温度が定格温度以下でないと判定した場合(ステップS4においてNO)、ステップS1の処理に戻す。
条件判定部903は、温度センサ150の示す温度が定格温度以下であると判定した場合(ステップS4においてYES)、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定する(ステップS5)。
【0042】
条件判定部903は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流以上であると判定した場合(ステップS5においてNO)、ステップS1の処理に戻す。
条件判定部903は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいと判定した場合(ステップS5においてYES)、電流補正部100の流すことのできる最大電流から高調波補償電流を減じた差電流の値を力率補償部904に出力する。
【0043】
力率補償部904は、条件判定部903から差電流の値を受ける。力率補償部904は、受けた値が示す差電流を用いて、力率を改善するように電流の位相を電圧の位相に近づける動作を行う(ステップS6)。そして、力率補償部904は、ステップS1の処理に戻す。
【0044】
なお、電流補正部100が端子である場合には、アクティブフィルタ90のみをアクティブフィルタと呼ぶものであってもよい。また、電流補正部100がアクティブフィルタ90からの制御信号に応じて電流を流す場合には、電流補正部100とアクティブフィルタ90との両方を含むものをアクティブフィルタと呼ぶものであってもよい。
【0045】
以上、本発明の第1の実施形態によるアクティブフィルタ90を備えるモータ駆動装置1について説明した。
本発明の第1の実施形態によるアクティブフィルタ90において、高調波補償部902は、高調波補償電流を算出する。条件判定部903は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいか否かを判定する。力率補償部904は、高調波補償部902の算出した高調波補償電流が電流補正部100の流すことのできる最大電流よりも小さいと条件判定部903が判定した場合、系統電圧検出部20が検出した電圧とコンバータ電流検出部30が検出した電流とに基づいて、力率を改善するように電流の位相を電圧の位相に近づける動作を行う。
こうすることで、アクティブフィルタ90は、力率を改善するための電流の有無を判定し、力率を改善するための電流がある場合にはその電流を用いて力率を改善することができる。その結果、アクティブフィルタ90によれば、系統に接続される装置においてコンバータの負荷となるインバータにおける電圧を検出できない場合にも、コンバータ電流における高調波を補償するアクティブフィルタの電流に余裕がある場合に、コンバータ電流における高調波の電流を補償するとともに、系統に接続される装置の力率を改善することができ、電源線などによって生じる損失を低減することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態によるモータ駆動装置について説明する。
本発明の第2の実施形態によるモータ駆動装置1は、本発明の第1の実施形態によるモータ駆動装置1と同様に、アクティブフィルタ90が電流補正部100を介してダイオードモジュール50へ流れるコンバータ電流の高調波電流の歪みを補償する際に、電流補正部100に流す電流に余裕がある場合、モータ駆動装置1の力率を改善する装置である。また、本発明の第2の実施形態によるモータ駆動装置1は、さらに、温度センサ150が備えられるアクティブフィルタ90または電流補正部100が備えるコンデンサなどの部品の交換時期を判定し、報知する装置である。
【0047】
本発明の第2の実施形態によるアクティブフィルタ90は、図4に示すように、切替部901と、高調波補償部902と、条件判定部903と、力率補償部904と、記憶部905と、さらに、寿命判定部906と、報知部907と、を備える。
【0048】
記憶部905は、第1の実施形態におけて記憶する情報に加え、さらに、温度センサ150が備えられるアクティブフィルタ90または電流補正部100が備える各部品の稼働時間と電流値とに基づいて算出される累積値のしきい値を記憶する。各部品の稼働時間とは、高温になるほど稼働時間を長く見積もる重み付けがされた時間である。累積値は、その重み付けされた後の稼働時間と電流センサによって検出された電流値との乗算によって算出された電流の累積値である。累積値のしきい値は、部品の交換時期を判定する基準となる値である。
寿命判定部906は、各部品に流れる電流の累積値を実測し、記憶部905が記憶する累積値のしきい値を超えた場合に部品が劣化したと判定する。
報知部907は、寿命判定部906が部品が劣化したと判定した場合に、部品の交換を報知する。
【0049】
以上、本発明の第2の実施形態によるアクティブフィルタ90を備えるモータ駆動装置1について説明した。
本発明の第2の実施形態によるアクティブフィルタ90において、寿命判定部906は、各部品に流れる電流の累積値を実測し、記憶部905が記憶する累積値のしきい値を超えた場合に部品が劣化したと判定する。報知部907は、寿命判定部906が部品が劣化したと判定した場合に、部品の交換を報知する。
こうすることで、モータ駆動装置1は、電流が流れ劣化しやすい部品の交換時期を適切に判断することができる。また、モータ駆動装置1は、その部品の交換を報知し、部品の交換を促すことができる。
【0050】
なお、本発明の別の実施形態では、アクティブフィルタ90が電流補正部100を備えるものであってもよい。
【0051】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0052】
本発明の実施形態について説明したが、上述のモータ駆動装置1、アクティブフィルタ90、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図5は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、図5に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述のモータ駆動装置1、アクティブフィルタ90、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0053】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0054】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・モータ駆動装置
10・・・三相交流電源
20・・・系統電圧検出部
30・・・コンバータ電流検出部
40・・・ノイズフィルタ
50・・・ダイオードモジュール
60・・・平滑コンデンサ
70・・・インテリジェントパワーモジュール
80・・・コンプレッサモータ
90・・・アクティブフィルタ
100・・・電流補正部
110・・・平滑リアクトル
301a、301b・・・カレントトランス
901・・・切替部
902・・・高調波補償部
903・・・条件判定部
904・・・力率補償部
905・・・記憶部
906・・・寿命判定部
907・・・報知部
図1
図2
図3
図4
図5