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特許6990099二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20220104BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20220104BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220104BHJP
【FI】
B01D53/18 130
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/75
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017238030
(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公開番号】P2019103973
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】程塚 正敏
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】千葉 典子
(72)【発明者】
【氏名】北村 英夫
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0326140(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116252(US,A1)
【文献】特表2013-504422(JP,A)
【文献】特開2017-109884(JP,A)
【文献】特開2016-000381(JP,A)
【文献】特開平05-212238(JP,A)
【文献】特開昭62-129125(JP,A)
【文献】中国実用新案第205556590(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107469571(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
C01B 32/00-32/991
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させる第1充填層および第2充填層をそれぞれ含む第1塔および第2塔と、前記第1塔および前記第2塔の下方に設けられ、前記第1塔からの前記吸収液と、前記第2塔からの前記吸収液とを溜める液溜部とを備え、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を前記液溜部から排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液を排出する再生塔と、
を備え、
前記吸収塔は、
前記第1充填層および前記第2充填層より低い位置に設けられ、前記吸収塔内に前記処理対象ガスを導入するガス導入口と、
前記第1塔と前記第2塔との間に設けられ、かつ前記ガス導入口と前記第2塔との間に設けられ、前記処理対象ガスの前記第2塔への流入を阻止する阻止部であって、前記阻止部が、前記液溜部に溜まった前記吸収液に浸ることにより、前記第1塔と前記第2塔とが前記吸収液により液封された状態になることで、前記第1塔には前記処理対象ガスが流入し、前記第2塔への前記処理対象ガスの流入は阻止される、阻止部と、
前記第1塔を通過した前記処理対象ガスを前記第2塔に供給するガス供給路と、
を備える、
二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記第1塔から排出された第1ガス、前記第2塔から排出された第2ガス、および前記第1ガスと前記第2ガスとを合流させた第3ガスのうち少なくともいずれかの流量を測定する第1測定器と、
前記第1ガスまたは前記第2ガスの流量を調整する第1弁と、
前記第1測定器により測定された前記流量に基づいて前記第1弁を制御する制御部と、
を備える請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記第1塔に流入する第1吸収液、前記第2塔に流入する第2吸収液、および前記第1吸収液と前記第2吸収液とに分流する前の第3吸収液のうち少なくともいずれかの流量を測定する第2測定器と、
前記第1吸収液または前記第2吸収液の流量を調整する第2弁と、
前記第2測定器により測定された前記流量に基づいて前記第2弁を制御する制御部と、
を備える請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記阻止部は、前記液溜部内に設けられた仕切板である、請求項1から3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記仕切板は、前記液溜部の底部から離されて設けられている、請求項4に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記仕切板は、前記液溜部の底部に接するように設けられており、かつ、前記吸収液が通過する開口部を有している、請求項4に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液を排出する再生塔と、
を備える二酸化炭素回収システムの運転方法であって、
前記吸収塔は、
第1充填層を含む第1塔と、
第2充填層を含む第2塔と、
前記第1塔および前記第2塔の下方に設けられた液溜部と、
前記第1充填層および前記第2充填層より低い位置に設けられ、前記吸収塔内に前記処理対象ガスを導入するガス導入口と、
前記第1塔と前記第2塔との間に設けられ、かつ前記ガス導入口と前記第2塔との間に設けられ、前記処理対象ガスの前記第2塔への流入を阻止する阻止部であって、前記阻止部が、前記液溜部に溜まった前記吸収液に浸ることにより、前記第1塔と前記第2塔とが前記吸収液により液封された状態になることで、前記第1塔には前記処理対象ガスが流入し、前記第2塔への前記処理対象ガスの流入は阻止される、阻止部と、
前記第1塔を通過した前記処理対象ガスを前記第2塔に供給するガス供給路と、
を備え、
前記第1塔の前記第1充填層および前記第2塔の前記第2充填層内で前記処理対象ガスと前記吸収液とを接触させ、
前記第1塔からの前記吸収液と、前記第2塔からの前記吸収液とを前記液溜部に溜め、
前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を前記液溜部から排出する、
ことを含む二酸化炭素回収システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)技術が注目されている。例えば、火力発電所、製鉄所、ごみ焼却所等で発生するプロセス排ガス(処理対象ガス)中の二酸化炭素を、吸収液により回収する二酸化炭素回収システムが検討されている。
二酸化炭素回収システムでは、処理対象ガス中の二酸化炭素を吸収塔にて吸収液に吸収させる。この際、二酸化炭素を吸収液に吸収させるためには、処理対象ガスと吸収液との接触時間を十分に確保する必要があり、そのためには十分な高さの吸収塔が必要である。
【0003】
しかしながら、建屋の問題や景観上の問題から高い吸収塔を建てることができない場合には、十分な高さの吸収塔を実現できないことが問題となる。この場合、同じ構成の吸収塔を複数建てることが必要となり、吸収塔等の建築コストの増加等が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-107203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、吸収塔の高さを適切に抑制することが可能な二酸化炭素回収システムおよびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させる第1塔および第2塔と、前記第1塔および前記第2塔の下方に設けられ、前記第1塔からの前記吸収液と、前記第2塔からの前記吸収液とを溜める液溜部とを備え、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を前記液溜部から排出する吸収塔を備える。前記システムはさらに、前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液を排出する再生塔を備える。
【発明の効果】
【0007】
各実施形態によれば、吸収塔の高さを適切に抑制することが可能な二酸化炭素回収システムおよびその運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態とその比較例の吸収塔等の構成を示す模式図である。
図3】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
図4】第2実施形態の変形例の吸収塔等の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図4では、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0011】
図1の二酸化炭素回収システムは、吸収塔1と、プロセス排ガスライン2と、リッチ液ポンプ3と、再生熱交換器4と、再生塔5と、リーン液ポンプ6と、リーン液冷却器7と、ガス冷却器8と、制御部11と、第1流量計12と、第2流量計13と、第1制御弁14と、第3流量計15と、第4流量計16と、第2制御弁17とを備えている。
【0012】
吸収塔1は、第1塔1aと、第2塔1bと、液溜部(スチル部)1cと、第1充填層1dと、第2充填層1eとを備えている。第1塔1aと第2塔1bは、互いに横方向に並んで設けられている。すなわち、第1塔1aと第2塔1bは、下部に設けられる単一の液留部1cを共通のものとして共有し、この液留部1cに対して並列に配置されている。液溜部1cは、第1塔1aと第2塔1bの下方に設けられている。第1充填層1dは第1塔1a内に設けられ、第2充填層1eは第2塔1b内に設けられている。再生塔5は、充填層5aと、充填層5aの下方に設けられた液溜部(スチル部)5bとを備えている。
【0013】
吸収塔1は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。吸収塔1では、二酸化炭素を吸収するための吸収液(リーン液)が第1導入口A1および第2導入口A2から導入され、二酸化炭素を含むプロセス排ガスがガス導入口G3から導入される。第1導入口A1は第1充填層1dの上方に設けられ、第2導入口A2は第2充填層1eの上方に設けられている。ガス導入口G3は、第1充填層1dや第2充填層1eより低い位置に設けられている。
【0014】
吸収塔1は、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させ、プロセス排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。具体的には、ガス導入口G3からのプロセス排ガスの一部が、第1塔1aに供給され、第1充填層1d内で第1導入口A1からの吸収液と接触する。また、ガス導入口G3からのプロセス排ガスの別の一部が、第2塔1bに供給され、第2充填層1e内で第2導入口A2からの吸収液と接触する。第1充填層1dを通過した吸収液と、第2充填層1eを通過した吸収液は、液溜部1cに落下する。
【0015】
その結果、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が、液溜部1cに溜まり、吸収液排出口A3から排出される。一方、二酸化炭素が除去されたプロセス排ガスを含有する吸収塔排出ガスが、第1排出口G1および第2排出口G2から排出される。第1排出口G1は第1充填層1dの上方に設けられ、第2排出口G2は第2充填層1eの上方に設けられている。吸収液排出口A3は、液溜部1cの底部に設けられている。
【0016】
本実施形態の第1塔1aは、1つの充填層(第1充填層1d)を備えているが、代わりに複数の充填層を備えていてもよいし、1つ以上のその他の反応部(例えばトレイ)を備えていてもよい。これは、第2塔1bでも同様である。
【0017】
プロセス排ガスは、プロセス排ガスライン2を介して供給され、ガス導入口G3から吸収塔1内に導入される。プロセス排ガスは、処理対象ガスの一例であり、例えば火力発電所等の発電所、製鉄所等の工場、ごみ焼却所等の設備から供給される。
【0018】
吸収液の例は、1種類以上のアミンを含有するアミン系水溶液である。アミンの例は、モノエタノールアミン(monoethanolamin)や、ジエタノールアミン(diethanolamin)である。吸収液は、その他の種類のアミンを含有していてもよい。
【0019】
吸収塔1から排出された吸収液は、リッチ液ポンプ3により、再生熱交換器4を介して再生塔5へ移送される。この際、吸収塔1から再生塔5へ向かう吸収液は、再生熱交換器4における熱交換により加熱される。符号L1は、吸収塔1から再生塔5へ向かう吸収液の流路を示している。
【0020】
再生塔5は、導入された吸収液を加熱することにより、吸収液から大部分の二酸化炭素を蒸気と共に放散させて、吸収液から二酸化炭素を分離する。再生塔5は、不図示のリボイラを備えており、リボイラに供給された高温蒸気と吸収液との熱交換を行うことにより吸収液を加熱する。再生塔5は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。再生塔5内に導入された吸収液は、充填層5aを通過して、液溜部5bに落下する。
【0021】
その結果、二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)が、液溜部5bに溜まり、再生塔5の底部から排出される。一方、放散された二酸化炭素と蒸気とを含有する再生塔排出ガスが、再生塔5の頂部から排出される。再生塔排出ガスはその後、ガス冷却器8により冷却される。これにより、再生塔排出ガス中の蒸気が凝縮し、二酸化炭素と凝縮水とに分離される。凝縮水は、吸収液に由来するアミン成分を含有しており、再生塔5へ戻される。
【0022】
本実施形態の再生塔5は、1つの充填層(充填層5a)を備えているが、代わりに複数の充填層を備えていてもよいし、1つ以上のその他の反応部(例えばトレイ)を備えていてもよい。また、再生塔5は、タンク内で吸収液を加熱して二酸化炭素を放散させるフラッシュドラム(フラッシュタンク)を備えていてもよい。
【0023】
再生塔5から排出された吸収液は、リーン液ポンプ6により、再生熱交換器4とリーン液冷却器7とを介して吸収塔1へ戻される。この際、再生塔5から吸収塔1へ向かう吸収液は、再生熱交換器4における熱交換と、リーン液冷却器7における冷却作用により冷却される。符号L2は、再生塔5から吸収塔1へ向かう吸収液の流路を示している。
【0024】
以下、吸収塔1やその周辺の機器について詳細に説明する。
【0025】
上述のように、吸収塔1は、第1塔1aと第2塔1bとを備え、同じ液溜部1c(スチル部)を第1塔1aと第2塔1bとが共有している。吸収塔1内に導入されたプロセス排ガスは、第1塔1aと第2塔1bとに分配されて供給される。本実施形態の第1塔1aと第2塔1bは、上下方向(重力方向)に延伸しており、横方向(水平方向)に互いに隣接している。
【0026】
吸収塔1に吸収液を供給する流路L2は、リーン液冷却器7の下流で、第1導入口A1に向かう第1流路と、第2導入口A2に向かう第2流路とに分流している。第1流量計12は、分流前の流路L2に設けられており、この流路L2を流れる吸収液の流量を測定する。第2流量計13は、第1流路に設けられており、第1流路を流れる吸収液の流量を測定する。第1制御弁14は、第1流路に設けられており、第1流路を流れる吸収液の流量を調整するために使用される。第1制御弁14の例は、流量調節弁である。
【0027】
吸収塔1は、第1塔1aからの吸収塔排出ガス用の第1配管と、第2塔1bからの吸収塔排出ガス用の第2配管とに接続されており、第1配管と第2配管は1本の配管に合流している。第3流量計15は、第2配管に設けられており、第2配管を流れる吸収塔排出ガスの流量を測定する。第4流量計16は、合流後の配管に設けられており、この配管を流れる吸収塔排出ガスの流量を測定する。第2制御弁17は、第2配管に設けられており、第2配管を流れる吸収塔排出ガスの流量を調整するために使用される。第2制御弁17の例は、流量調節弁である。
【0028】
第1塔1aへの排ガス供給量と、第2塔1bへの排ガス供給量は、第2制御弁17により制御可能である。排ガス供給量とは、単位時間あたりに供給されるプロセス排ガスの量である。例えば、第2制御弁17の開度を小さくすると、第1塔1aへの排ガス供給量が増加し、第2塔1bへの排ガス供給量が減少する。制御部11は、第3流量計15により測定された流量と、第4流量計16により測定された流量とに基づいて、第2制御弁17の開度を調整することで、第1塔1aへの排ガス供給量と、第2塔1bへの排ガス供給量との比を制御することができる。本実施形態の制御部11は、この比が1対1になるように動作する。
【0029】
なお、第3流量計15と第4流量計16のいずれか一方は、第1配管に設けられていてもよい。また、第2制御弁17は、第1配管に設けられていてもよい。これらの場合にも上記の比を制御することが可能である。
【0030】
第1塔1aへの吸収液供給量と、第2塔1bへの吸収液供給量は、第1制御弁14により制御可能である。吸収液供給量とは、単位時間あたりに供給される吸収液(リーン液)の量である。例えば、第1制御弁14の開度を大きくすると、第1塔1aへの吸収液供給量が増加し、第2塔1bへの吸収液供給量が減少する。制御部11は、第1流量計12により測定された流量と、第2流量計13により測定された流量とに基づいて、第1制御弁14の開度を調整することで、第1塔1aへの吸収液供給量と、第2塔1bへの吸収液供給量との比を制御することができる。本実施形態の制御部11は、この比が1対1になるように動作する。
【0031】
なお、第1流量計12と第2流量計13のいずれか一方は、第2流路に設けられていてもよい。また、第1制御弁14は、第2流路に設けられていてもよい。これらの場合にも上記の比を制御することが可能である。
【0032】
以上のように、本実施形態の吸収塔1は、第1塔1aと第2塔1bという2つの塔を備えている。これにより、吸収塔が1つの塔のみを備える場合に比べて、吸収塔1の高さを低く抑えることができる。
【0033】
さらに、本実施形態の第1塔1aと第2塔1bは、液溜部1cを共有している。これにより、二酸化炭素回収システムに2つの吸収塔を設ける場合に比べて、必要な機器の点数を減らすことができ、建築コストを削減することができる。
【0034】
この詳細を、図2を参照して説明する。図2は、第1実施形態とその比較例の吸収塔等の構成を示す模式図である。
【0035】
図2(a)は、比較例の二酸化炭素回収システムを構成する第1吸収塔21と、第1プロセス排ガスライン22と、第1リッチ液ポンプ23と、第2吸収塔24と、第2プロセス排ガスライン25と、第2リッチ液ポンプ26とを示している。第1吸収塔21は、第1充填層21aと第1液溜部21bとを備えている。第2吸収塔24は、第2充填層24aと第2液溜部24bとを備えている。
【0036】
図2(b)は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムを構成する吸収塔1と、プロセス排ガスライン2と、リッチ液ポンプ3とを示している。吸収塔1は、第1塔1aと、第2塔1bと、液溜部1cと、第1充填層1dと、第2充填層1eとを備えている。
【0037】
本比較例では、第1吸収塔21と第2吸収塔24が分離しており、それぞれ第1液溜部21bと第2液溜部24bを備えている。そのため、第1液溜部21b用に第1リッチ液ポンプ23を設け、第2液溜部24b用に第2リッチ液ポンプ26を設ける必要がある。その結果、本実施形態より余計に液溜部やリッチ液ポンプを設けることで建築コストが増加してしまう。
【0038】
また、本比較例の第1および第2リッチ液ポンプ23、26は、二酸化炭素回収システムのリッチ液を2台のポンプで取り扱うため、本実施形態のリッチ液ポンプ3に比べて、小流量で高吐出圧のポンプとする必要がある。そのため、第1および第2リッチ液ポンプ23、26に要求される仕様を、安価な量産品のポンプで満足することが困難な場合があり、第1および第2リッチ液ポンプ23、26として高価な特注品を採用せざるを得ない場合がある。その結果、建築コストがさらに増加してしまう。
【0039】
一方、本実施形態では、第1塔1aと第2塔1bが液溜部1cやリッチ液ポンプ3を共有しているため、吸収塔1等の建築コストを削減することができる。また、本実施形態のリッチ液ポンプ3は、二酸化炭素回収システムのリッチ液を1台のポンプのみで取り扱うため、高流量で高吐出圧のポンプとすることができる。そのため、リッチ液ポンプ3に要求される仕様を、安価な量産品のポンプ等で満足することが可能となる。その結果、建築コストをさらに削減することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、第1塔1aと第2塔1bが液溜部1cを共有する構成により、吸収塔1の高さを適切に抑制することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態の吸収塔1はさらに、第1塔1aおよび第2塔1bと横方向に並んで設けられ、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させる1つ以上の第3塔を備えていてもよい。この場合、液溜部(スチル部)1cは、第1塔1a、第2塔1b、および第3塔の下方に設けられ、これらの塔からの吸収液を溜める。第3塔の構成は、第1塔1aや第2塔1bと同じ構成に設計可能である。
【0042】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0043】
本実施形態の吸収塔1は、図1に示す構成要素に加え、ガス供給路1fと、仕切板1gとを備えている。仕切板1gは、吸収塔1内でガス導入口G3と第2塔1bとの間に設けられており、プロセス排ガスの第2塔1bへの流入を阻止するように機能する。よって、ガス導入口G3からのプロセス排ガスは、第1塔1aに流入する。第1塔1aを通過したプロセス排ガスは、ガス供給路1fを介して第2塔1bへと供給される。ガス供給路1fは、第1充填層1dの上方に設けられた排出口G4と、第2充填層1eの下方に設けられた導入口G5とに接続されている。ガス供給路1fの例は、配管である。
【0044】
このように、本実施形態のプロセス排ガスは、第1塔1aと第2塔1bとを順番に流れる。よって、プロセス排ガスは、第1塔1a内で吸収液と接触した後に、第1塔1aから第2塔1bに供給され、第2塔1b内でも吸収液と接触する。これにより、プロセス排ガス内の二酸化炭素が吸収液に吸収される。
【0045】
本実施形態の第1塔1aおよび第2塔1bも、第1実施形態と同様に、液溜部1cを共有している。第1塔1aからの吸収液と、第2塔1bからの吸収液は、液溜部1cに落下し、液溜部1cに溜まる。
【0046】
仕切板1gは、液溜部1c内に設けられている。仕切板1gの上端は、第1塔1aと第2塔1bとの間の境界部の内壁に取り付けられている。仕切板1gの下端は液溜部1c内の吸収液の最低液位よりも下方まで延設され、仕切板1gの下端は液溜部1cに溜まった吸収液に浸っている。よって、第1塔1aと第2塔1bは、吸収液により液封された状態となる。
【0047】
その結果、ガス導入口G3から吸収塔1内に導入されたプロセス排ガスは、第1塔1aのみに供給される。第1塔1aに供給されたプロセス排ガスは、第1充填層1dを通過した後、第2充填層1eの下方に送られ、今度は第2塔1bのみに供給される。第2塔1bに供給されたプロセス排ガスは、第2充填層1eを通過した後、第2排出口G2から吸収塔排出ガスとして排出される。なお、本実施形態の吸収塔11は、第1排出口G1を備えていないことに留意されたい。
【0048】
一方、リーン液冷却器7を通過した吸収液(リーン液)は、分流された後、第1導入口A1から第1塔1a内に導入され、第2導入口A2から第2塔1b内に導入される。制御部11は、第1流量計12により測定された流量と、第2流量計13により測定された流量とに基づいて、第1制御弁14の開度を調整することで、第1塔1aへの吸収液供給量と、第2塔1bへの吸収液供給量との比を制御することができる。
【0049】
この際、制御部11は例えば、プロセス排ガス中のCO濃度が高い第1塔1aに吸収液を多く供給し、プロセス排ガス中のCO濃度が低い第2塔1bに吸収液を少なく供給するように、上記の比を制御してもよい。このように、制御部11は、第1塔1aおよび第2塔1bに好適な流量で吸収液を供給することができる。
【0050】
本実施形態の仕切板1gの下端は、液溜部1cの底部の内壁面から離されている。そのため、第1塔1aからの吸収液と、第2塔1bからの吸収液は、液溜部1c内で混ざることができる。よって、本実施形態の吸収塔1は、吸収液排出口A3から均一なCO濃度の吸収液(リッチ液)を排出することができる。なお、この吸収液のCO濃度をより均一にするために、吸収液を撹拌機やミニフローにより撹拌してもよいし、仕切板1gの吸収液接触面に多数の穴を設けておいてもよい。
【0051】
また、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、液溜部1c内の吸収液の液位を測定する液位計18を備えていてもよい。この場合、制御部は、液位計18により測定された液位に基づいて、第1制御弁14の開度の調整などにより、液溜部1c内の吸収液の液位を制御する。これにより、仕切板1gの下端が吸収液から露出することを防ぐことが可能となり、吸収液による液封を維持することが可能となる。
【0052】
図4は、第2実施形態の変形例の吸収塔等の構成を示す模式図である。
【0053】
図4(a)の吸収塔1は、仕切板1gを備えておらず、代わりに、第1塔1aと第2塔1bとの間の境界部1hが吸収液に浸っている。本変形例によれば、仕切板1gと同様の効果を境界部1hにより得ることが可能となる。
【0054】
図4(b)の吸収塔1では、仕切板1gの下端が、液溜部1cの底部の内壁面に接している。しかしながら、この仕切板1gは、吸収液が通過する開口部Hを有している。そのため、第1塔1aからの吸収液と、第2塔1bからの吸収液は、液溜部1c内で混ざることができる。なお、開口部Hは、液溜部1c内の吸収液の最低液位よりも下方に設けられ、ガス導入口G3から導入される二酸化炭素を含むプロセス排ガスが開口部Hを通じて第2吸収塔2a側に流通しないように構成される。
【0055】
図3の仕切板1g、図4(a)の境界部1h、および図4(b)の仕切板1gは、プロセス排ガスの第2塔1bへの流入を阻止する阻止部の例である。この阻止部は、図3図4(a)、および図4(b)と異なる構造で実現してもよい。
【0056】
以上のように、本実施形態の吸収塔1は、第1塔1aと第2塔1bという2つの塔を備え、第1塔1aと第2塔1bが液溜部1cを共有している。これにより、吸収塔1の高さを低く抑えつつ、吸収塔1等の建築コストを削減することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の吸収塔1は、プロセス排ガスの第2塔1bへの流入を阻止する仕切板1g(または境界部1h)を備えている。これにより、プロセス排ガスを第1塔1aと第2塔1bにより順番に処理することが可能となり、二酸化炭素の回収率を向上させることが可能となる。
【0058】
一方、第1実施形態によれば、シンプルな構造の吸収塔1により、吸収塔1の高さを低く抑えつつ、吸収塔1等の建築コストを削減することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態の吸収塔1はさらに、第1塔1aおよび第2塔1bと横方向に並んで設けられ、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させる1つ以上の第3塔を備えていてもよい。この場合、液溜部(スチル部)1cは、第1塔1a、第2塔1b、および第3塔の下方に設けられ、これらの塔からの吸収液を溜める。第3塔の構成は、第1塔1aや第2塔1bと同じ構成に設計可能である。
【0060】
また、第1塔1a、第2塔1b、および第3塔は、第2実施形態の第1塔1aと第2塔1bのようにすべて直列に配置してもよいし、第2実施形態の直列配置と第1実施形態の並列配置とが混在するように配置してもよい。
【0061】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0062】
1:吸収塔、1a:第1塔、1b:第2塔、1c:液溜部、
1d:第1充填層、1e:第2充填層、1f:ガス供給路、1g:仕切板、
1h、境界部、2:プロセス排ガスライン、3:リッチ液ポンプ、
4:再生熱交換器、5:再生塔、5a:充填層、5b:液溜部、
6:リーン液ポンプ、7:リーン液冷却器、8:ガス冷却器、
11:制御部、12:第1流量計、13:第2流量計、14:第1制御弁、
15:第3流量計、16:第4流量計、17:第2制御弁、18:液位計、
21:第1吸収塔、21a:第1充填層、21b:第1液溜部、
22:第1プロセス排ガスライン、23:第1リッチ液ポンプ、
24:第2吸収塔、24a:第2充填層、24b:第2液溜部、
25:第2プロセス排ガスライン、26:第2リッチ液ポンプ
図1
図2
図3
図4