(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20220104BHJP
【FI】
F16H57/04 P
(21)【出願番号】P 2017249299
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】室井 裕佐
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-112161(JP,A)
【文献】特開2007-224959(JP,A)
【文献】特開2010-213453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が貯留されるケースと、
下部が前記潤滑油に浸漬されて前記ケース内に軸回転可能に収容された回転部材と、
前記回転部材の少なくとも前記下部の軸方向端面との間に間隙を介在させて配置されたプレート部材と、を備え、
前記プレート部材の一部に、板厚が他の部分よりも大きい容量部が設けられ、
前記プレート部材は、前記回転部材の回転に伴って変位可能であり、
前記容量部は、前記回転部材の非回転時に前記潤滑油に浸漬され、前記回転部材の回転
に伴って生じる前記潤滑油の流動により前記回転部材の回転方向に沿って回動することによって前記潤滑油の油面よりも上方に位置する、動力伝達装置。
【請求項2】
前記プレート部材が、前記回転部材と同軸上で軸回転可能である、請求項
1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記容量部が、前記プレート部材の回転方向の先端側に設けられている、請求項
1又は2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記容量部が、前記プレート部材のうちの前記回転部材に対向する面とは逆の面に設けられている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記容量部の比重が、前記潤滑油の比重よりも大きい、請求項1~
4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記プレート部材の最大変位位置を規定するストッパを備える、請求項1~
5のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記プレート部材が、バッフルプレートである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、変速機やデファレンシャル装置等の回転部材を有する動力伝達装置が搭載されている。動力伝達装置では、例えば回転部材を支持する軸受部材の潤滑性を確保するために、動力伝達装置のケース内に潤滑油が貯留されている。動力伝達装置においては、車両の燃費や電力消費率の低減のために、スピンロス(駆動損失)を低減することが求められている。かかるスピンロスを低減するためには、潤滑油の引き摺りトルクを低減することが有効である。このため、回転部材の周囲にバッフルプレートを設けたり、潤滑油の油面を低下させたりすることで、回転部材にかかる潤滑油の撹拌抵抗を低下させている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リングギヤの回転動作に起因して、コンバータケースの潤滑油をデファレンシャル装置に導入し潤滑する車両変速装置の潤滑構造であって、リングギヤを覆うように配置され、コンバータケース内の潤滑油の油面からリングギヤを離設可能なバッフルプレートを有する潤滑構造が開示されている。特許文献1において、バッフルプレートは、リングギヤとの間隔を一定に支持する支持手段を備えることにより、リングギヤがコンバータケース内の潤滑油を掻き上げる際、必要以上に潤滑油を掻き上げることなく、リングギヤにかかる撹拌抵抗を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、リングギヤ等の回転部材の回転軸を支持する軸受部材には、摺動部分の潤滑性を確保するために潤滑油が供給される。車両を長時間停止させた後に再始動するときや、極低速走行時においても摺動部分の潤滑性を確保できるように、潤滑油の油面の高さは、少なくとも軸受部材の下端の位置よりも上に設定される必要がある。つまり、潤滑油の油面の高さは、動力伝達装置のレイアウトから決定され、自由に下げることができないようになっている。このような制限下においても、回転部材の回転による潤滑油の引き摺りトルクを低減することができれば、さらに動力伝達装置のスピンロスを低減することができる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、回転部材の非回転時あるいは極低速回転時において回転部材を回転可能に支持する軸受部材の潤滑性を確保しつつ、回転部材の回転時のスピンロスを低減可能な、新規かつ改良された動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、潤滑油が貯留されるケースと、下部が潤滑油に浸漬されてケース内に軸回転可能に収容された回転部材と、回転部材の少なくとも下部の軸方向端面との間に間隙を介在させて配置されたプレート部材と、を備え、プレート部材の一部に、板厚が他の部分よりも大きい容量部が設けられ、プレート部材は、回転部材の回転に伴って変位可能であり、容量部は、回転部材の非回転時に潤滑油に浸漬され、回転部材の回転に伴って生じる潤滑油の流動により回転部材の回転方向に沿って回動することによって潤滑油の油面よりも上方に位置する、動力伝達装置が提供される。
【0009】
プレート部材が、回転部材と同軸上で軸回転可能であってもよい。
【0010】
容量部が、プレート部材の回転方向の先端側に設けられていてもよい。
【0011】
容量部が、プレート部材のうちの回転部材に対向する面とは逆の面に設けられていてもよい。
【0012】
容量部の比重が、潤滑油の比重よりも大きくてもよい。
【0013】
プレート部材の最大変位位置を規定するストッパを備えてもよい。
【0014】
プレート部材が、バッフルプレートであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、回転部材の非回転時あるいは極低速回転時において回転部材を回転可能に支持する軸受部材の潤滑性を確保しつつ、回転部材の回転時のスピンロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の構成を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係る動力伝達装置の構成を示す断面図である。
【
図3】同実施形態に係る動力伝達装置に備えられたバッフルプレートを示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る動力伝達装置に備えられたバッフルプレートを示す平面図である。
【
図5】バッフルプレートの動作を示す説明図である。
【
図6】バッフルプレートの最大変位位置を規定する構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.動力伝達装置の全体構成例>
図1及び
図2は、本実施形態に係る動力伝達装置10の構成を示す説明図である。
図1は、動力伝達装置10を、回転部材20の回転軸線Xに沿って見た模式図であり、
図2は、
図1のI-I断面を矢印方向に見た模式図である。
図1及び
図2は、動力伝達装置10の非作動状態、つまり、回転部材20が回転駆動していない状態を示している。
【0019】
動力伝達装置10は、ケース11と、回転部材20と、バッフルプレート30とを備えている。回転部材20は、ケース11の内部に収容されて、ケース11に対して回転自在に支持されている。回転部材20は、回転軸線Xの両側に延びる軸部21a,21bを有している。それぞれの軸部21a,21bは、軸受部材23a,23bによって、ケース11に支持されている。これにより、回転部材20が、ケース11に対して回転自在に支持されている。
【0020】
動力伝達装置10は、例えば車両の左右の前輪に駆動力を分配するフロントデファレンシャル装置であってよい。この場合、回転部材20は、ケース(デフケース)11の内部で図示しないドライブピニオンギヤに噛み合うリングギヤに相当する。ドライブピニオンギヤには、図示しないドライブシャフトが一体的に形成されており、エンジンの動力が推進軸を介してドライブシャフトに伝達されるとドライブピニオンギヤが回転し、これに伴ってリングギヤが回転させられる。ドライブピニオンギヤは、例えば、図示しない軸受部材によって、ケース11に対して回転自在に支持されている。
【0021】
なお、本発明を適用可能な動力伝達装置10は、フロントデファレンシャル装置に限られず、センターデファレンシャル装置であってもよく、リアデファレンシャル装置であってもよい。あるいは、動力伝達装置10は、回転部材としてのプーリを備えた無段変速機構(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0022】
ケース11の内部には、動力伝達装置10を潤滑する潤滑油が貯留されている。
図1及び
図2において、潤滑油の油面は破線Oで示されている。潤滑油の油面Oは、動力伝達装置10の非作動状態において、軸受部材23a,23bの少なくとも下端が潤滑油に浸漬される高さに設定されている。回転部材20の下部は潤滑油に浸漬され、回転部材20の回転時には、回転部材20により潤滑油が掻き上げられる。これにより、回転部材20の外面に潤滑油が供給され、回転部材20と他の部材との接触部分が潤滑される。
【0023】
バッフルプレート30は、回転部材20の下部を覆い、回転部材20にかかる潤滑油の撹拌抵抗を低減する。本実施形態に係るバッフルプレート30は、全体として扇形の容器を構成しており、回転部材20の回転に伴って掻き上げられた潤滑油を収容可能になっている。バッフルプレート30は、回転部材20の回転軸線Xの両側に延びる軸筒部33a,33bを有している。それぞれの軸筒部33a,33bは、軸受部材35a,35bによって、ケース11に対して回転自在に支持されている。バッフルプレート30と回転部材20とは、互いに独立して同一の回転軸線X上で軸回転自在に支持されている。
【0024】
<2.バッフルプレート>
以下、本実施形態に係る動力伝達装置10に備えられたバッフルプレート30の構成を詳細に説明する。
図3及び
図4は、バッフルプレート30を示す説明図である。
図3は、バッフルプレート30の斜視図であり、
図4は、
図3のバッフルプレート30を上方から見た平面図である。
【0025】
本実施形態に係るバッフルプレート30は、本発明のプレート部材に相当する。バッフルプレート30は、回転部材20の両端面側にそれぞれ配置される扇形の側面部31a,31bと、回転部材20の外周部に配置されて二つの側面部31a,31bを連結する周面部32と、それぞれの側面部31a,31bからさらに外側に延びる軸筒部33a,33bとを有している。バッフルプレート30は、例えば樹脂材料により成形された成形体であってもよく、金属板を接合して形成された構造体であってもよい。
【0026】
なお、本実施形態に係るバッフルプレート30は、二つの側面部31a,31bが円弧状の周面部32により連結されて扇形の容器として構成されているが、周面部に、一つ又は複数の開口が設けられていてもよい。
【0027】
軸筒部33a,33bは、軸受部材35a,35b(
図2を参照)によって支持される部分であって、バッフルプレート30の回転軸としても機能する。これにより、バッフルプレート30は、ケース11に対して回転自在に支持される。このとき、バッフルプレート30は、回転抵抗が比較的小さい状態で、軸受部材35a,35bによって支持される。
【0028】
バッフルプレート30の一端部には、板厚が他の部分よりも大きくされた容量部34a,34bが設けられている。本実施形態では、扇形の側面部31a,31bの一端部に容量部34a,34bが設けられている。容量部34a,34bが設けられる端部は、回転部材20の回転方向に沿う先端側の端部に相当する。図示した容量部34a,34bは、円形の平面形状を有しており、側面部31a,31bのうち、回転部材20に対向する面とは逆の面に設けられている。容量部34a,34bは、側面部31a,31bと一体成形されていてもよく、側面部31a,31bとは別に形成した容量部34a,34bが側面部31a,31bに接合されていてもよい。
【0029】
バッフルプレート30の一端部に容量部34a,34bが設けられていることにより、動力伝達装置10の非作動状態においては、容量部34a,34bの自重で、容量部34a,34bが設けられた端部側が下方に移動し、容量部34a,34bの少なくとも一部が潤滑油中に浸漬した状態となる(
図1を参照)。これにより潤滑油の油面Oは上昇する。潤滑油の油面Oは、容量部34a,34bが潤滑油中に浸漬した状態で、回転部材20を支持する軸受部材23a,23bの下端が潤滑油に浸漬する高さ位置となるように設定される。
【0030】
図5は、動力伝達装置10が作動し、回転部材20が回転駆動している状態を示す説明図である。回転部材20は、図示の反時計回りの方向に回転している。このとき、バッフルプレート30内の潤滑油が回転部材20に連れ回され、この潤滑油の流動によりバッフルプレート30が引き摺られることによって、バッフルプレート30が反時計回りの方向に回動する。そうすると、バッフルプレート30の一端部に設けられた容量部34a,34bが潤滑油の油面Oより上方に移動し、潤滑油の油面Oが低下する。
【0031】
これにより、潤滑油への回転部材20の浸漬量が減少し、回転部材20にかかる潤滑油の引き摺りトルクを低減することができる。したがって、動力伝達装置10のスピンロスを低減することができる。この状態においても、潤滑油は回転部材20により掻き上げられて軸受部材23a,23bの摺動部分に供給されるため、当該摺動部分の潤滑性は確保される。
【0032】
少なくとも容量部34a,34bの比重は、潤滑油の比重よりも大きいことが好ましい。容量部34a,34bの比重が潤滑油の比重に比べて大きいことにより、回転部材20の非回転状態において容量部34a,34bを確実に下方に移動させて潤滑油中に浸漬させることができる。これにより、潤滑油の油面Oが上昇し、軸受部材23a,23bの少なくとも下端を潤滑油に浸漬させることができる。
【0033】
容量部34a,34bの体積が大きいほど、容量部34a,34bが潤滑油の油面Oよりも上方に移動したときの潤滑油の油面Oの低下度合いが大きくなって、回転部材20にかかる潤滑油の引き摺りトルクの低減効果を大きくすることができる。ただし、容量部34a,34bの比重が比較的大きい場合、容量部34a,34bの体積を大きくすると、バッフルプレート30の回転抵抗が大きくなって、容量部34a,34bを潤滑油の油面Oより上方に移動させにくくなるおそれがある。このため、容量部34a,34bの体積は、低下させ得る潤滑油の油面Oの落差や、回転部材20の回転に伴って連れ回される潤滑油に引き摺られて回動するバッフルプレート30の回転抵抗等を考慮して適切に設定することが好ましい。
【0034】
容量部34a,34bの平面形状は円形状に限られず、矩形状であってもよいし、その他の異形状であってもよい。また、本実施形態では、容量部34a,34bは、側面部31a,31bにおける、回転部材20に対向する面とは逆の面に設けられていたが、容量部34a,34bを設ける位置は当該位置に限られない。容量部34a,34bは、側面部31a,31bにおける回転部材20に対向する面に設けられていてもよく、周面部32の外面又は内面に設けられていてもよい。
【0035】
ただし、容量部34a,34bが、側面部31a,31b又は周面部32における回転部材20に対向する面に設けられている場合、容量部34a,34bと回転部材20との距離が近くなって、スピンロスが大きくなる場合がある。このため、容量部34a,34bは、側面部31a,31b又は周面部32における回転部材20に対向する面とは逆の面に設けられることが好ましい。
【0036】
また、動力伝達装置10は、回転部材20の回転に伴うバッフルプレート30の最大変位位置を規定するストッパを備えてもよい。回転部材20の回転に伴って、バッフルプレート30は、容量部34a,34bが潤滑油の油面Oよりも上方に位置するまで回動することで油面Oを低下させることができ、容量部34a,34bがそれ以上に上方に移動しても油面Oを低下させる効果には影響しない。その一方で、例えば潤滑油の粘度が大きい低温条件等、何らかの条件下で潤滑油の引き摺りが大きい場合には、回転部材20の回転につられてバッフルプレート30が一回転し、容量部34a,34bが元の位置に戻るおそれがある。このため、バッフルプレート30の最大変位位置を規定することで、回転部材20の回転中に安定的に油面Oを低下させることができる。
【0037】
図6は、バッフルプレート30の最大変位位置を規定するための構成例を示す説明図である。
図6に示した例において、容量部34a,34bが設けられたバッフルプレート30の一端部に、バッフルプレート30の周面部32から外方に向けて突出する張出部37が設けられている。また、ケース11には、バッフルプレート30の張出部37が当接可能な位置にストッパ部13が設けられている。このため、回転部材20の回転に伴ってバッフルプレート30が回動したときに、バッフルプレート30の張出部37がケース11のストッパ部13に当接し、それ以上のバッフルプレート30の回動が制限される。
【0038】
張出部37がストッパ部13に当接するバッフルプレート30の最大変位位置において、容量部34a,34bは潤滑油の油面Oよりも上方に位置するようになっている。したがって、回転部材20の回転状態では潤滑油への回転部材20の浸漬量が減少し、回転部材20にかかる潤滑油の引き摺りトルクを低減することができる。一方、バッフルプレート30が一回転して容量部34a,34bが元の位置に戻ることがないため、回転部材20の回転中に安定的に油面Oを低下させることができる。
【0039】
バッフルプレート30の最大変位位置を規定するためのストッパの構成例は、
図6に示す例に限られない。回転部材20の回転に伴って回動するバッフルプレート30の一部が当接するストッパが、ケース11の一部あるいはケース11の内部に設けられていればよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る動力伝達装置10は、バッフルプレート30の一部に容量部34a,34bが設けられ、回転部材20の回転に伴って連れ回される潤滑油に引き摺られて回動するバッフルプレート30を備えている。かかるバッフルプレート30の容量部34a,34bは、回転部材20の非回転時には潤滑油に浸漬され、回転部材20の回転時にはバッフルプレート30の回動によって潤滑油の油面Oよりも上方に位置するようになっている。
【0041】
したがって、回転部材20の非回転時あるいは極低速で回転している間は、容量部34a,34bの浸漬により油面Oが上昇し、回転部材20を支持する軸受部材23a,23bの少なくとも下端を潤滑油に浸漬させることができる。一方、回転部材20の回転時には、容量部34a,34bが潤滑油の油面Oよりも上方に位置することで、容量部34a,34bの体積分油面Oを低下させて、潤滑油への回転部材20の浸漬量を減少させることができる。これにより、回転部材20にかかる潤滑油の撹拌抵抗が低減され、動力伝達装置10のスピンロスを低減することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10は、バッフルプレート30に容量部34a,34bが設けられ、バッフルプレート30が回転部材20と同軸上で軸回転可能に構成されている。このため、部品点数を大幅に増加させたり、電気的な制御を要せずに、回転部材20の軸受部材23a,23bの潤滑性を確保しつつ、動力伝達装置10のスピンロスを低減することができる。また、バッフルプレート30が回転部材20と同軸上で回動可能であるため、潤滑油の引き摺りトルクを比較的小さく抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10では、容量部34a,34bが、バッフルプレート30における回転部材20に対向する面とは逆の面に設けられている。このため、容量部34a,34bが回転部材20に近づきすぎることによる撹拌抵抗の増加を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10では、少なくとも容量部34a,34bの比重が潤滑油の比重よりも大きくてもよい。これにより、回転部材20の非回転時に、容量部34a,34bの自重で容量部34a,34bが潤滑油内に浸漬して、潤滑油の油面Oを確実に上昇させることができる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、上記実施形態では、容量部が設けられるプレート部材がバッフルプレートであったが、本発明はかかる例に限定されない。動力伝達装置は、バッフルプレートとは別に、回転部材の回転に伴って変位可能なプレート部材を備え、当該プレート部材に容量部が設けられていてもよい。かかる動力伝達装置によっても、回転部材の非回転時には容量部が潤滑油に浸漬されて油面が上昇する一方、回転部材の回転時には容量部が潤滑油の油面から上方に移動して油面を低下させることが可能になる。したがって、回転部材の軸受部材の潤滑性を確保しつつ、動力伝達装置のスピンロスを低減することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、容量部が設けられるバッフルプレートが、回転部材と同軸上で回動可能に構成されていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、回転部材20の回転に伴って上下動可能なプレート部材に容量部が設けられていてもよい。かかる動力伝達装置によっても、回転部材の非回転時には容量部が潤滑油に浸漬されて油面が上昇する一方、回転部材の回転時には容量部が潤滑油の油面から上方に移動して油面を低下させることが可能になる。
【符号の説明】
【0048】
10 動力伝達装置
11 ケース
13 ストッパ部
20 回転部材
23a,23b 軸受部材
30 バッフルプレート
31a,31b 側面部
32 周面部
34a,34b 容量部
35a,35b 軸受部材
37 張出部