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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】特装車
(51)【国際特許分類】
   F16N 9/00 20060101AFI20220104BHJP
   B60P 3/14 20060101ALI20220104BHJP
   F16N 3/10 20060101ALI20220104BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20220104BHJP
   F16N 11/08 20060101ALI20220104BHJP
   F16N 13/22 20060101ALI20220104BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F16N9/00
B60P3/14 Z
F16N3/10
F16N7/38 D
F16N11/08
F16N13/22
F16N29/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014924
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019132342
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】入江 晃由
(72)【発明者】
【氏名】林 和也
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-224824(JP,A)
【文献】特開平06-280539(JP,A)
【文献】実開平02-018606(JP,U)
【文献】特開2016-124412(JP,A)
【文献】特開2015-055054(JP,A)
【文献】特開平05-195627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 1/00 -99/00
B60P 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの駆動部を有する所定の装置が車両のシャシフレームに搭載された特装車であって、
前記所定の装置は、
前記駆動部に給脂するための給脂手段と、
前記給脂手段で給脂される油脂を貯留する貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクは、
油脂を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体に設けられ、且つ前記給脂手段で給脂すべく、前記タンク本体内から油脂を吸い出す吸出部と、を備え、
前記タンク本体には、
前記タンク本体への油脂の最大貯留量を示す上限目盛りと、
前記上限目盛りよりも下方、且つ前記吸出部よりも上方に配置される下限目盛りと、が設けられ、
前記上限目盛りは、前記タンク本体に貯留されている油脂の液面が前記上限目盛りに対応する場所に位置している状態で車両が車両横転角度まで傾いたときに、前記タンク本体に貯留している油脂の液面が前記タンク本体の上縁以下となる場所に設けられている、
特装車。
【請求項2】
前記下限目盛りは、前記上限目盛りに対して1回分の油脂の補充量に相当する分だけ下方側に設けられる、
請求項1に記載の特装車。
【請求項3】
前記タンク本体は、上面に油脂を投入するための開口が形成され、
前記上限目盛り及び前記下限目盛りは、前記タンク本体の内面から突出する突起で構成される、
請求項1又は請求項2に記載の特装車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリス等の油脂を貯留するための貯留タンクを備えた特装車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の用途や目的のために車両に特別な装置を搭載した特装車が知られている。かかる特装車では、少なくとも一つの駆動部を有する所定の装置がシャシフレームに搭載されている。
【0003】
このような特装車には、前記所定の装置が、駆動部の駆動を滑らかにするために該駆動部に給脂する給脂手段と、給脂用の油脂を貯留するタンクと、を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
貯留タンクは、油脂を貯留するタンク本体と、タンク本体に設けられ且つ給脂手段を介してタンク本体内の油脂を吸い出すための吸出部とを備えており、タンク本体内の油脂が吸い出されて少なくなった場合に、タンク本体に新たな油脂を補充できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-59098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特装車にあっては、タンク内に油脂を貯留し過ぎてしまうと、特装車が走行中に左右に曲がった際の遠心力で油脂がタンク内でせり上がってこぼれてしまう虞がある。
【0007】
また、タンク内の油脂が少なくなり過ぎると、吸出部から油脂を吸い出せなくなって給脂できなくなる虞もある。
【0008】
そこで、本発明は、車両走行中にこぼれない程度に油脂を貯留することができるとともに、給脂できなくなる前に油脂を補充すべきことが確実に把握できる特装車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特装車は、少なくとも一つの駆動部を有する所定の装置が車両のシャシフレームに搭載された特装車であって、前記所定の装置は、前記駆動部に給脂するための給脂手段と、前記給脂手段で給脂される油脂を貯留する貯留タンクと、を備え、前記貯留タンクは、油脂を貯留するタンク本体と、前記タンク本体に設けられ、且つ前記給脂手段で給脂すべく、前記タンク本体内から油脂を吸い出す吸出部と、を備え、前記タンク本体には、車両が車両横転角度まで傾いたときに、前記タンク本体に貯留している油脂の液面が前記タンク本体の上縁以下となる場所に位置する上限目盛りと、前記上限目盛りよりも下方、且つ前記吸出部よりも上方に配置される下限目盛りと、が設けられる。
【0010】
上記構成の特装車によれば、車両が車両横転角度まで傾いたときに、タンク本体に貯留している油脂の液面がタンク本体の上縁以下となる場所に位置する上限目盛りが配置されているため、該上限目盛りを上限としてタンク本体に油脂を貯留することで、車両が左右に曲がる際の遠心力によるタンク本体からの油脂のこぼれを防止できる。
【0011】
また、下限目盛りは、上限目盛りよりも下方、且つ吸出部よりも上方に配置されているため、該下限目盛りをタンク本体に油脂を補充するタイミングの目安にすることで、吸出部から油脂を吸い出せなくなる前に油脂の補充をすべきことを把握できる。
【0012】
本発明の特装車において、前記下限目盛りは、前記上限目盛りに対して1回分の油脂の補充量に相当する分だけ下方側に設けられていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、下限目盛りを目安にしてタンク本体への油脂の補充を行うことにより、上限目盛りを超えず且つ十分な量の油脂をタンク本体内に補充することができる。
【0014】
また、本発明の特装車において、前記タンク本体は、上面に油脂を投入するための開口が形成され、前記上限目盛り及び前記下限目盛りは、前記タンク本体の内面から突出する突起で構成されていてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、タンク本体上面の開口から該タンク本体内を覗き込んだ時に、油脂の油面と、上限目盛り、下限目盛りとの位置関係、すなわち、油脂の残量を把握し易くなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の特装車は、車両走行中にこぼれない程度に油脂を貯留することができるとともに、給脂できなくなる前に油脂を補充すべきことが確実に把握できる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る特装車の側面図である。
図2図2は、同実施形態に係る特装車の平面図である。
図3図3は、同実施形態に係る特装車の要部拡大図である。
図4図4は、同実施形態に係る特装車の貯留タンクを車幅方向における外側から見た図である。
図5図5は、同実施形態に係る特装車の貯留タンクを前後方向における前方側から見た図である。
図6図6は、図4のVI-VI線での断面図である。
図7図7は、同実施形態に係る特装車のタンク本体の平面図である。
図8図8は、同実施形態に係る特装車の上限目盛りの形成位置の設定の仕方の説明図である。
図9図9は、同実施形態に係る特装車の給油手段の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる特装車について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る特装車は、所定の用途や目的のために車両に特別な装置が搭載されたものである。なお、本実施形態に係る特装車とは、コンクリートポンプ車のことである。
【0019】
本実施形態に係る特装車は、図1、及び図2に示すように、シャシフレーム2と、該シャシフレーム2に搭載され、且つ少なくとも一つの駆動部30を有する所定の装置3と、を備えている。
【0020】
本実施形態では、特装車1の前後に対応する方向を前後方向、特装車1の車幅に対応する方向を車幅方向、特装車1の上下に対応する方向を上下方向、と称することとする。
【0021】
所定の装置3は、油脂を貯留する貯留タンク4と、貯留タンク4内の油脂を駆動部30に給脂するための給脂手段5(図9参照)と、を備えている。
【0022】
本実施形態において、駆動部30とは、図3に示すように、コンクリートを圧送する圧送構造300と、ホッパH内でコンクリートを撹拌する撹拌部301のことである。
【0023】
圧送構造300は、ホッパH内のコンクリートの吸引及び吐出を行うコンクリートシリンダ300aと、該コンクリートシリンダ300aから吐出されたコンクリートを流通させるための揺動管300bと、を有する。
【0024】
撹拌部301は、ホッパH内に設けられた軸受けと、該軸受けに対して回転可能に設けられている回転軸301aと、該回転軸301aに設けられたブレード(図示しない)と、を有する。
【0025】
貯留タンク4は、図4に示すように、油脂を貯留するためのタンク本体40であって、上方に(より具体的には上面に)油脂を投入するための開口が形成されたタンク本体40と、タンク本体40内の油脂を吸い出すための吸出部41と、タンク本体40の開口を開閉する開閉蓋42と、該開閉蓋42をタンク本体40に連結する連結構造43(図5参照)と、該開閉蓋42でタンク本体40の開口を閉じた状態を維持するためのロック構造44と、前記タンク本体40に設けられるとともに、タンク本体40の外部の構造に固定される固定部45と、を備えている。
【0026】
本実施形態に係るタンク本体40は、底板部400と、該底板部400の外周縁部全周に立設された周壁部401と、該周壁部401の上端から内側に向かって延出する延出辺部402(図6参照)と、を有する。そのため、タンク本体40では、車両が傾いた際に周壁部401の内面に沿って昇る油脂が延出辺部402に当たり、これにより、タンク本体40内の上縁部からの油脂の漏れを抑制できる。
【0027】
周壁部401は、図5に示すように、車幅方向における内方側に向けて配置される内側壁部401Aと、車幅方向における外方側に向けて配置される外側壁部401Bと、前後方向における前方側に向けて配置される前側壁部401Cと、前後方向における後方側に向けて配置される後側壁部401D(図7参照)と、を有する。
【0028】
なお、本実施形態では、底板部400が矩形状(平面視において矩形状)に形成されており、内側壁部401Aが車幅方向における内方側の一辺に連設され、外側壁部401Bは、車幅方向における外方側の一辺に連設され、前側壁部401Cは、前後方向における前方側の一辺に連設され、後側壁部401Dは、前後方向における後方側の一辺に連設されている。
【0029】
延出辺部402は、図7に示すように、周壁部401の上端全周から内側(タンク本体40の開口内側)に向かって水平に延びており、平面視においては環状となっている。
【0030】
タンク本体40には、図6に示すように、内部に貯留している油脂の量(油脂の油面)の確認の目安とする目盛り403が形成されている。
【0031】
また、タンク本体40には、目盛り403として、油脂の最大貯留量(タンク本体40内での油脂の油面の高さの上限)を示す上限目盛り403aと、油脂を補充するタイミングを知らせる下限目盛り403bと、が形成されている。
【0032】
上限目盛り403aは、車幅方向におけるタンク本体40の内側(本実施形態では、内側壁部401Aの内面)に形成されている。また、上限目盛り403aは、内側壁部401Aの内面から内側に向けて突出した突起で構成されている。また、上限目盛り403aの突出量は、延出辺部402の延出量よりも大きい(図7参照)。このため、タンク本体40内を上方から覗き込んだ時に上限目盛り403aが延出辺部402に隠れにくくなり、上限目盛り403aが見易くなる。
【0033】
さらに、上限目盛り403aは、特装車1が車両横転角度まで傾いたときに、タンク本体40に貯留している油脂の液面がタンク本体40の上縁以下となる貯留量を示すように構成されている。
【0034】
より具体的に説明すると、上限目盛り403aは、タンク本体40が車両横転角度まで傾いた状態において、周壁部401の傾倒方向後方側(すなわち、内側壁部401A)に形成されており、且つ周壁部401の傾倒方向前方側(すなわち、外側壁部401B)の上端縁部に対して水平方向で対向する場所に位置している。
【0035】
タンク本体40が傾いていない状態を基準として説明すると、図8に示すように、上限目盛り403aは、車幅方向における内側の周壁部401(内側壁部401A)に形成されており、且つ車幅方向における外側の周壁部401(外側壁部401B)の上端縁を通る仮想水平線L1を基準として車両横転角度分だけ下方側に傾斜した仮想傾斜線L2の線上に位置している。
【0036】
この仮想傾斜線L2とは、特装車1が車両横転角度まで傾いた状態における、タンク本体40内の油脂の油面の位置に対応する仮想線である。
【0037】
なお、上限目盛り403aは、例えば、車両横転角度θを30°~35°の間で設定したうえで、上下方向における形成位置が設定されていればよい。また、車両横転角度θを30°とした場合は、車幅方向におけるタンク本体40の内幅をAとすると、上下方向でのタンク本体40の上端から上限目盛り403aまでの距離(すなわち、上下方向での上限目盛り403aの形成位置)は、下式(1)で表される。

【数1】
【0038】
下限目盛り403bも、図6に示すように、車幅方向におけるタンク本体40の内側(本実施形態では、内側壁部401Aの内面)に形成されている。また、下限目盛り403bは、内側壁部401Aの内面から内側に向けて突出した突起で構成されている。
【0039】
下限目盛り403bは、上限目盛り403aよりも下方側(底板部400側)であり、且つ前記吸出部41(より具体的には、吸出部41の後述する流入口部410の開口)よりも上方側(タンク本体40の開口側)に形成されている。また、下限目盛り403bは、上限目盛り403aに対して1回分の油脂の補充量に相当する分だけ下方側(底板部400側)に設けられている。
【0040】
吸出部41は、図4に示すように、タンク本体40内の油脂が流入する流入口部410と、該流入口部410に流入した油脂をタンク本体40外に吐出する吐出口部411と、を有する。
【0041】
流入口部410は、底板部400の内面側に配置され、吐出口部411は底板部400の外面側に配置されている。
【0042】
流入口部410には、図5に示すように、油脂が流入する開口410aが形成されている。また、開口410aは、上下方向に対して直交する方向に向かって開口するように形成されている。
【0043】
吐出口部411には、油脂の流路となる配管等が接続される。
【0044】
開閉蓋42は、タンク本体40上に被せる蓋本体部420と、蓋本体部420とタンク本体40との間の隙間を塞ぐシール部材421と、蓋本体部420の外面上に設けられたハンドル422と、を有する。
【0045】
蓋本体部420は、前記タンク本体40の上端面全体を覆う天板部420aと、該天板部420aの外周全周から垂下する環状の枠部420bと、を有する。
【0046】
本実施形態に係る天板部420aは、矩形状であり、且つ蓋本体部420がタンク本体40上に被せられた状態において外周縁部が全周に亘ってタンク本体40の上端面よりも外側に位置するように形成されている。
【0047】
シール部材421は、弾性を有する材料(例えば、ゴム等)で構成されている。また、シール部材421は、天板部420aの裏面に取り付けられており、タンク本体40の開口410aが開閉蓋42によって閉じられている状態においては、タンク本体40の上端面、すなわち、延出辺部402全体に密接するように構成されている。
【0048】
ハンドル422は、枠部420bに設けられており、作業者が把持可能な構造となっている。また、本実施形態では、ハンドル422が枠部420bのうちの車幅方向における外方側に設けられている。
【0049】
連結構造43は、タンク本体40及び開閉蓋42の何れか一方(本実施形態では、タンク本体40)に固定される連結用ベース部430と、該連結用ベース部430に対して回転可能に取り付けられ且つタンク本体40及び開閉蓋42の何れか他方(本実施形態では、開閉蓋42)に固定される回転連結部431とを有する。なお、連結構造43は、例えば、ヒンジ等で構成されていればよい。
【0050】
ロック構造44は、タンク本体40及び開閉蓋42の何れか一方(本実施形態では、タンク本体40)に固定されるロック用ベース部440と、該ロック用ベース部440に掛止可能であり且つタンク本体40及び開閉蓋42の何れか他方(本実施形態では、開閉蓋42)に固定される掛止部441とを有する。
【0051】
固定部45は、タンク本体40の外面に形成されている。本実施形態に係る固定部45は、周壁部401を構成する前側壁部401Cの外面に固定されている前側固定部450と、周壁部401を構成する後側壁部401Dの外面に固定されている後側固定部451とを備えている。
【0052】
すなわち、本実施形態に係るタンク本体40は、前後方向における前側と後ろ側とがシャシフレーム2等の外部の構造に固定されるように構成されている。
【0053】
給脂手段5は、図9に示すように、貯留タンク4内の油脂を駆動部30に供給するための給油路50を有する
【0054】
給油路50には、貯留タンク4内の油脂を各駆動部30(本実施形態では、コンクリートシリンダ300aや、揺動管300b、回転軸301a、軸受け)に分配するための分配弁51が設置されており、また、吸出部41、分配弁51、各駆動部30が、それぞれチューブや、パイプ等の管状部材で流体的に接続されている。
【0055】
なお、本実施形態に係る給油路50には、2つの分配弁51が設置されている。また、2つの分配弁51のうちの一方は、貯留タンク4内の油脂をコンクリートシリンダ300aに分配する第一の分配弁510であり、貯留タンク4内の油脂を揺動管300b(揺動管300bと外部の構造との摺動部分)、軸受けと回転軸301aとの間に分配する第二の分配弁511である。
【0056】
本実施形態に係る特装車1の構成は以上の通りである。続いて、本実施形態に係る特装車1への油脂の補充作業、及び特装車1が傾いた際の貯留タンク4内の油脂の様子について説明する。
【0057】
貯留タンク4(タンク本体40)に油脂を供給する際、作業者は、開閉蓋42を開いてタンク本体40内の油脂の残量を確認する。
【0058】
より具体的に説明すると、作業者は、外側壁部401Bの正面側から開閉蓋42を開き、上方からタンク本体40内を覗きこむ。そして、タンク本体40内の油脂の油面の位置に基づいて油脂の残量を把握する。
【0059】
油脂の油面が上限目盛り403aに対応する場所、若しくは上限目盛り403aと下限目盛の間に位置している場合は、油脂の補充が必要でないことを把握することができる。
【0060】
そして、油脂の油面が下限目盛り403bに対応する場所に到達している場合は、1回分の油脂の補充量に相当する分量の油脂が使用されたことを把握することができる。また、油脂の油面が下限目盛り403bに対応する場所に到達している状態でタンク本体40に油脂を補充する場合は、1回の作業で補充する分量の全ての油脂をタンク本体40に充填すると、タンク本体40の油脂の貯留量が最大量、若しくは略最大量となる。
【0061】
さらに、特装車1は、タンク本体40の油脂の貯留量が最大量である状態で横転角度に対応する角度まで傾くと、タンク本体40も傾くこととなるが、タンク本体40内の油脂の油面は、タンク本体40内の上縁部以下、より具体的には、傾倒方向前方側の外側壁部401Bの上縁部以下に留まるため、タンク本体40内の油脂がこぼれないようになっている。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る特装車1によれば、タンク本体40への油脂の最大貯留量を示す上限目盛が、車両が車両横転角度まで傾いたときに、前記タンク本体40に貯留している油脂の液面が前記タンク本体40の上縁以下となる貯留量を示す場所に位置しているため、上限目盛り403aを上限としてタンク本体40に油脂を貯留することにより、車両が左右に曲がる際の遠心力等の原因によるタンク本体40からの油脂のこぼれを防止できる。なお、本実施形態では、特装車1の横転方向によらず(すなわち、タンク本体40が外側壁部401Bを傾倒方向前方側として傾くか、内側壁部401Aを傾倒方向前方側として傾くかによらず)タンク本体40からの油脂のこぼれを防止できる。
【0063】
また、下限目盛り403bが上限目盛り403aよりも下方、且つ吸出部41よりも上方に配置されているため、該下限目盛り403bをタンク本体40に油脂を補充するタイミングの目安にすることで、吸出部41から油脂を吸い出せなくなる前に油脂の補充をすべきことを把握できる。
【0064】
従って、本実施形態に係る特装車1は、車両走行中にこぼれない程度に油脂を貯留することができるとともに、給脂できなくなる前に油脂を補充すべきことが確実に把握できる、という優れた効果を奏し得る。
【0065】
さらに、本実施形態においては、タンク本体40が車両横転角度まで傾いた状態において周壁部401の傾倒方向後方側(内側壁部401A)に上限目盛り403aが形成されており、且つ該上限目盛り403aが周壁部401の傾倒方向前方側(外側壁部401B)の上縁部に対して水平方向で対応する位置に形成されているため、特装車1が車両横転角度まで傾いた際にタンク本体40から油脂がこぼれない範囲内でのタンク本体40の貯留許容量(最大貯留量)を最大限に確保することができる。
【0066】
また、上限目盛り403a、及び下限目盛は、タンク本体40内面から突出する突起で構成されているため、タンク本体40の開口410aから該タンク本体40内を覗き込んだ時に、油脂の油面と、上限目盛り403a、下限目盛り403bとの位置関係、すなわち、油脂の残量を把握し易くなる。
【0067】
特に、本実施形態では、開閉蓋42を開いた際に、作業者の正面に位置する内側壁部401Aの内面に対して上限目盛り403a及び下限目盛が形成されているため、作業者が上限目盛り403a及び下限目盛を視認し易くなっている。
【0068】
そして、本実施形態に係る特装車1では、下限目盛り403bが上限目盛り403aに対して1回分の油脂の補充量に相当する分だけ下方側に設けられていているため、下限目盛り403bを目安にしてタンク本体40への油脂の補充を行うことにより、上限目盛り403aを超えず且つ十分な量の油脂をタンク本体40内に補充することができるようになっている。
【0069】
なお、本発明に係る特装車1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
上記実施形態においては、特装車1がコンクリートポンプ車であることを前提に説明を行ったが、例えば、特装車1は、ミキサー車や、ごみ収集車等のコンクリートポンプ車以外のものであってもよい。
【0071】
上記実施形態において、所定の装置3は、駆動部30として圧送構造300や、撹拌部301を備えていたが、この構成に限定されない。例えば、所定の装置3の駆動部30は、油脂の供給を必要とする機器や装置であれば、圧送構造300や、撹拌部301以外のものであってもよい。
【0072】
上記実施形態において、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、タンク本体40の内面(周壁部401の内面)に位置していたが、この構成に限定されない。例えば、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、タンク本体40の外面(周壁部401の外面)に位置していてもよい。
【0073】
上記実施形態において、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、内側壁部401Aの内面に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、外側壁部401Bの内面や、前側壁部401Cの内面、後側壁部401Dの内面に形成されていてもよい。但し、上限目盛り403a及び下限目盛り403bの視認性を高めるうえでは、内側壁部401A、外側壁部401B、前側壁部401C、後ろ周壁部401のうち、内面が開閉蓋42を開く作業者の正面に位置するものに上限目盛り403a及び下限目盛り403bが形成されていることが好ましい。
【0074】
上記実施形態において、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、上下方向で縦並びとなるように形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、上限目盛り403aと下限目盛り403bとは、前後方向や左右方向で互いにずれた位置に形成されていてもよい。
【0075】
上記実施形態において、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、周壁部401の内面から突出した突起により構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、上限目盛り403a及び下限目盛り403bは、周壁部401の内面に印字されたマークや、周壁部401の内面に形成された溝等で構成されていてもよい。また、上限目盛り403aと下限目盛り403bとを別々の態様で形成することも可能である。
【0076】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、タンク本体40には、該タンク本体40の内部を外側から視認するための窓部が形成されていてもよい。また、この場合、窓部の付近にタンク本体40内の油脂の残量を確認できる目盛り403が形成されていてもよく、さらには、この目盛り403に上限目盛り403a及び下限目盛り403bを含める構成としてもよい。
【0077】
上記実施形態において、上限目盛り403aは、タンク本体40が車両横転角度まで傾いた状態において、傾倒方向前方側の周壁部401である外側壁部401B上端縁部に対して水平方向で対向する場所に位置していたが、この構成に限定されない。例えば、上限目盛り403aは、タンク本体40が車両横転角度まで傾いた状態において、傾倒方向前方側の周壁部401である外側壁部401B上端縁部に対して水平方向で対向する場所よりも底板部400側にずれた位置に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…特装車、2…シャシフレーム、3…所定の装置、4…貯留タンク、5…給脂手段、30…駆動部、40…タンク本体、41…吸出部、42…開閉蓋、43…連結構造、44…ロック構造、45…固定部、50…給油路、51…分配弁、300…圧送構造、300a…コンクリートシリンダ、300b…揺動管、301…撹拌部、301a…回転軸、400…底板部、401…周壁部、401A…内側壁部、401B…外側壁部、401C…前側壁部、401D…後側壁部、402…延出辺部、410…流入口部、410a…開口、411…吐出口部、420…蓋本体部、420a…天板部、420b…枠部、421…シール部材、422…ハンドル、430…連結用ベース部、431…回転連結部、440…ロック用ベース部、441…掛止部、450…前側固定部、451…後側固定部、510…分配弁、511…分配弁、H…ホッパ、L1…仮想水平線、L2…仮想傾斜線、θ…車両横転角度
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9