(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】L-オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせて用いる筋肉喪失の治療および予防
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20220104BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220104BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220104BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220104BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220104BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/192
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P1/16
A61P7/00
(21)【出願番号】P 2018508683
(86)(22)【出願日】2016-08-16
(86)【国際出願番号】 US2016047211
(87)【国際公開番号】W WO2017031131
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-08-13
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506164729
【氏名又は名称】オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,クリストファー,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ルソー,フランク
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542935(JP,A)
【文献】特表2012-529523(JP,A)
【文献】特表2008-521784(JP,A)
【文献】国際公開第2007/077995(WO,A1)
【文献】Medical Hypotheses, 2007, 69, 5, 1064-1069,2007年
【文献】PNAS, Vol.110, No.45, p.18162-18167, 2013
【文献】Am J Physiol Endocrinol Metab, 303: E983-E993, 2012
【文献】World J Gastroenterol 2014 June 21; 20(23): 7286-7297
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 21/00
A61P 43/00
A61P 1/00
A61P 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせて含み、
肝疾患を有する対象における筋肉喪失の状態を治療し、それによって筋肉喪失の状態を軽減するための医薬組成物。
【請求項2】
筋肉喪失の状態を治療することが、筋肉喪失の状態に罹患していると同定された対象に対してであり、場合によって前記対象が肝移植を受けている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせて含む、
肝疾患を有する対象における筋肉喪失の状態を予防するための医薬組成物。
【請求項4】
筋肉喪失の状態を予防することが、筋肉喪失の状態を発現するリスクがあると同定された対象に対してであり、場合によって前記対象が肝移植を受けようとしている、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象が、筋肉重量、筋肉周囲長、除脂肪筋肉、体重、アンモニアレベル、1つもしくは複数の肝酵素の機能(複数可)、脂肪量、除脂肪量、脳含水量、自発運動量、タンパク質合成速度、また
はそれらのいずれかの組合せを決定することによって同定される、請求項2または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記1つもしくは複数の肝酵素がアルブミン、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼまたはそれらのいずれかの組合せを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記脳含水量が前頭皮質含水量である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状が骨格筋喪失または筋肉量低下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記筋肉喪失の状態が加齢、疾患、損傷、不活動またはそれらのいずれかの組合せにより引き起こされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記筋肉喪失の状態がサルコペニア、筋委縮、悪液質、筋ジストロフィーまたはそれらのいずれかの組合せである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記
肝疾患が慢性肝疾患
であり、場合によって前記慢性肝疾患が肝硬変である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記筋肉喪失の状態の治療または予防が、血中アンモニアを減少させること、筋代謝を直接改善すること、またはそれらの組合せによって達成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つの薬学的に許容される別個の塩を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
フェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの前記少なくとも1つが、フェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記オルニチンが、遊離の単量体アミノ酸またはその生理学的に許容される塩である、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記オルニチンおよびフェニルアセテートが、オルニチンフェニル酢酸である、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
経口、静脈内、腹腔内、胃内または血管内投与用である、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
静脈内投与用または経口投与用である、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)に従って、2015年8月18日に出願した米国仮特許出願第62/206466号明細書の優先権を主張するものである。この関連出願の内容は、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
本出願は、薬化学、生化学および薬の分野に関する。一態様は、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせて用いる筋肉喪失の治療および/または予防に関する。
【背景技術】
【0003】
筋肉の喪失は、筋肉の量および質の低下をしばしば特徴とする。慢性肝疾患を有する患者では、臨床転帰に影響を及ぼす合併症をもたらし得る多くの代謝障害が起こる。例えば、慢性肝疾患を有する患者における筋肉の喪失は、機能的能力の低下をもたらし、肝移植後の生存、生活の質および転帰に有害な影響を及ぼし得る。
【0004】
筋肉喪失に対する様々な予防、治療および管理戦略が症状の重症度に応じて現在利用可能である。筋肉喪失を治療または予防するためのさらなる療法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
筋肉喪失の状態を治療する方法を本明細書に開示する。いくつかの実施形態では、方法は、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせてそれを必要とする対象に投与し、それにより、状態を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、筋肉喪失の状態に罹患している対象を同定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、肝移植を受けている。
【0006】
筋肉喪失の状態を予防する方法も本明細書に開示する。いくつかの実施形態では、方法は、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせてそれを必要とする対象に投与し、それにより、状態を予防することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、筋肉喪失の状態を発現するリスクがある対象を同定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、肝移植を受けようとしている。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、筋肉重量、筋周囲長、除脂肪筋肉、体重、アンモニアレベル、1つもしくは複数の肝酵素の機能(複数可)、脂肪量、除脂肪量、脳含水量、自発運動量、タンパク質合成速度または対象のそれらのいずれかの組合せを決定することをさらに含む。1つもしくは複数の肝酵素は、例えば、アルブミン、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼまたはそれらのいずれかの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、脳含水量は、前頭皮質含水量である。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状は、骨格筋喪失である。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状は、筋肉量低下である。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態は、加齢、疾患、損傷、無活動またはそれらのいずれかの組合せにより引き起こされる。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態は、サルコペニア、筋委縮、悪液質、筋ジストロフィーまたはそれらのいずれかの組合せである。いくつかの実施形態では、対象は、慢性肝疾患に罹患している。いくつかの実施形態では、慢性肝疾患は、肝硬変である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法における状態の治療および/または予防は、血中アンモニアを減少させること、筋代謝を直接改善すること、またはそれらの組合せによって達成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つの薬学的に許容される別個の塩を対象に投与する。いくつかの実施形態では、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムとして投与する。いくつかの実施形態では、オルニチンを遊離の単量体アミノ酸またはその生理学的に許容される塩として投与する。いくつかの実施形態では、オルニチンおよびフェニルアセテートをオルニチンフェニル酢酸として投与する。
【0010】
いくつかの実施形態では、投与は、経口、静脈内、腹腔内、胃内または血管内投与である。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与である。いくつかの実施形態では、投与は、経口投与である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例4で述べる試験に用いたshamおよびBDLラットをどのようにして作製したかの略図である。
【
図2-1】
図2A及び2Bは、shamおよびBDLラットの筋肉重量、および筋周囲長を示す図である。
【
図2-2】
図2Cは、shamおよびBDLラットの除脂肪筋肉を示す図である。
【
図3-1】
図3A及び3Bは、すべての4実験群(sham、BDL、sham-OPおよびBDL-OP群を含む)における体重およびアンモニアレベルを示す図である。
【
図3-2】
図3C及び3Dは、すべての4実験群(sham、BDL、sham-OPおよびBDL-OP群を含む)における肝酵素機能および脂肪量を示す図である。
【
図3-3】
図3E及び3Fは、すべての4実験群(sham、BDL、sham-OPおよびBDL-OP群を含む)における除脂肪量および前頭皮質含水量を示す図である。
【
図3-4】
図3G及び3Hは、すべての4実験群(sham、BDL、sham-OPおよびBDL-OP群を含む)における自発運動量および筋タンパク質合成比速度(FSR)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、その一部をなす、添付図面に言及する。発明を実施するための形態、図面および特許請求の範囲に記載する例示的実施形態は、限定的であることを意味しない。ここに示す内容の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、また他の変更を行うことができる。本明細書で一般的に述べる、本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置し、置換し、組み合わせ、設計することができ、それらのすべてが明示的に企図され、本開示の一部とすることは、容易に理解されよう。
【0013】
定義
本明細書で用いているように、「対象」は、治療、観察または実験の目的である動物を意味する。「動物」は、冷および温血脊椎動物ならびに魚、貝などの非脊椎動物、爬虫類、とりわけ哺乳動物を含む。「哺乳動物」は、制限なく、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、チンパンジーおよび類人猿などの霊長類、とりわけヒトを含む。
【0014】
本明細書で用いているように、「患者」は、特定の疾患もしくは障害を治癒させること、またはその影響を少なくとも改善すること、または疾患もしくは障害が最初に起こることを予防することを試みるために、医師(すなわち、アロパシー医学の医師もしくはオステオパシー医療の医師)または獣医師などの、医療専門家によって治療されている対象を意味する。
【0015】
本明細書で用いているように、「投与」または「投与すること」は、薬学的に活性な成分の用量を脊椎動物に与える方法を意味する。
【0016】
本明細書で用いているように、「用量」は、有効成分(例えば、オルニチンおよびフェニルアセテート、またはオルニチンおよびフェニルブチレート)の総量を意味する。
【0017】
本明細書で用いているように、「単位用量」は、患者に1回に投与される治療薬の量を意味する。
【0018】
本明細書で用いているように、「一日投与量」は、患者に1日に投与される治療薬の総量を意味する。
【0019】
本明細書で用いているように、「治療有効量」または「薬学的有効量」は、治療効果を有する、治療薬の量を意味する。治療に有用である薬学的に活性な成分の用量は、治療有効量である。したがって、本明細書で用いているように、治療有効量は、臨床試験結果および/またはモデル動物試験により判断された所望の治療効果をもたらす治療薬の量を意味する。
【0020】
本明細書で用いているように、「治療効果」は、疾患または障害の1つまたは複数の症状をある程度まで軽減する。例えば、治療効果は、対象によって伝達される主観的な不快感の減少(例えば、自己記入式患者質問票に記録された不快感の減少)により観察することができる。
【0021】
「治療する」、「治療」または「治療すること」は、本明細書で用いているように予防および/または治療の目的のために化合物または医薬組成物を対象に投与することを意味する。「予防処置」という用語は、疾患または状態の症状をまだ示さないが、特定の疾患もしくは状態にかかり易い、またはそうでなければそのリスクがある対象を処置し、処置により患者が疾患または状態を発現する可能性が低くなることを意味する。「治療処置」という用語は、疾患または状態に既に罹患している対象に処置を施すことを意味する。
【0022】
「フェニルアセテート」という用語は、本明細書で用いているように、以下の化学構造
【0023】
【化1】
を有するフェニル酢酸の陰イオン形を意味する。
【0024】
「L-オルニチンフェニル酢酸」という用語は、本明細書で用いているように、L-オルニチン陽イオンおよびフェニル酢酸陰イオンからなる化合物を意味する。それは、以下の化学構造
【0025】
【0026】
「フェニルブチレート」という用語は、本明細書で用いているように、以下の化学構造
【0027】
【化3】
を有するフェニル酪酸の陰イオン形を意味する。
【0028】
「L-オルニチンフェニル酪酸」という用語は、本明細書で用いているように、L-オルニチン陽イオンおよびフェニル酪酸陰イオンからなる化合物を意味する。それは、以下の化学構造
【0029】
【0030】
略語
BDL=胆管結紮
OP=オルニチンフェニル酢酸
【0031】
筋肉喪失
筋肉喪失は、筋肉の量および質の低下の状態である。筋肉喪失の非限定的な症状は、筋肉量の低下もしくは減少、除脂肪筋肉の喪失もしくは減少、筋肉重量の低下もしくは減少、筋周囲長の低下もしくは減少、脂肪量の低下もしくは減少、除脂肪量の低下もしくは減少、筋肉機能の喪失もしくは減少、筋力の喪失もしくは減少、可動性の喪失もしくは減少、体重低下、筋タンパク質合成比速度(FSR)の低下、またはそれらのいずれかの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状は、筋肉量低下または骨格筋喪失である。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状は、体重減少である。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状は、除脂肪量の低下もしくは減少、筋周囲長の低下もしくは減少または筋タンパク質合成比速度(FSR)の低下である。筋肉喪失の様々な原因が存在する。例えば、筋肉喪失は、加齢、疾患(例えば、がんおよび肝疾患)、無活動、損傷(例えば、肝移植)またはそれらのいずれかの組合せにより引き起こされ得る。
【0032】
筋肉喪失の原因のいくつかの非限定的な例は、加齢(例えば、脳からシグナルを筋肉に送って、運動を開始することに関与する神経細胞の加齢に関連する減少);成長ホルモン、テストステロンおよびインスリン様増殖因子を含むが、これらに限定されない、いくつかのホルモンの濃度の低下;タンパク質を合成する身体の能力の低下;筋肉量を維持するためのカロリーおよび/またはタンパク質の不十分な摂取;ならびにそれらのいずれかの組合せを含む。いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態は、サルコペニア、筋委縮、悪液質、筋ジストロフィー、筋肉消耗またはそれらのいずれかの組合せである。サルコペニアを有する患者では、患者は、機能的能力の低下をもたらし、肝移植後の生存、生活の質および転帰に有害な影響を及ぼす、筋肉の量および質の低下を示す。サルコペニアを有する肝硬変患者は、より高いアンモニアレベルを有する。特定の理論に拘束されることなく、サルコペニアと高アンモニア血症との間の関係は、以下のように双方向性であると考えられる:(1)肝硬変において、サルコペニアが、筋肉によりアンモニアを減少させる対象の能力を低下させる可能性があり、かつ(2)アンモニアの毒性作用がおそらく筋肉に影響を及ぼす。
【0033】
筋肉喪失は、基礎状態(例えば、肝障害)の症状または結果であり得る。したがって、対象は、1つまたは複数の状態に関連する筋肉喪失を有し得る。いくつかの実施形態では、筋肉喪失は、肝疾患に関連する。肝疾患の非限定的な例は、肝内性胆汁うっ滞(アラジール症候群、胆汁性肝硬変)、脂肪肝(アルコール性脂肪肝、レイ症候群)、肝静脈血栓症、肝レンズ核変性、肝腫大、肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)、肝硬変(アルコール性、胆汁性および実験的)、アルコール性肝疾患(脂肪肝、肝炎、硬変)、寄生性(肝エキノコックス症、肝姪症、アメーバ性肝膿瘍)、黄疸(溶血性、肝細胞性および胆汁うっ滞性)、胆汁うっ滞、門脈高圧症、肝腫脹、腹水、肝炎(アルコール性肝炎、動物肝炎、慢性肝炎(自己免疫、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、薬物性)、中毒性肝炎、ウイルス性ヒト肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ウィルソン病、肉芽腫性肝炎、二次性胆汁性肝硬変、肝性脳症、静脈瘤、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝細胞腺腫、血管腫、胆石、肝不全(肝性脳症、急性肝不全)、ならびに肝臓新生物(血管筋脂肪腫、石灰化肝転移、嚢胞性肝転移、上皮腫瘍、線維層板型肝細胞がん、限局性結節性過形成、肝腺腫、肝胆嚢胞腺腫、肝芽腫、肝細胞癌腫、肝細胞がん、肝がん、肝血管内皮腫、間葉性過誤腫、肝の間葉性腫瘍、結節性再生性過形成、良性肝腫瘍(肝嚢胞[単純嚢胞、多嚢胞肝、肝胆嚢胞腺腫、総胆管嚢胞]、間葉性腫瘍[間葉性過誤腫、乳児血管内皮腫、血管腫、肝紫斑病、脂肪腫、炎症性偽腫瘍、種々雑多のもの]、上皮腫瘍[胆管上皮(胆管過誤腫、胆管腺腫)、肝細胞(腺腫、限局性結節性過形成、結節性再生性過形成)]、悪性肝腫瘍[肝細胞性、肝芽腫、肝細胞癌腫、胆管細胞、胆管がん、嚢胞腺がん、血管の腫瘍、血管肉腫、カポシ肉腫、血管内皮腫、他の腫瘍、胚肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、癌肉腫、奇形腫、類癌腫、扁平上皮がん、原発性リンパ腫])、肝紫斑病、骨髄肝性ポルフィリン症、肝性(急性間欠性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症)、ツェルウェーガー症候群)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、筋肉喪失は、慢性肝疾患、例えば、肝炎または肝硬変に関連する。例えば、筋肉の量および質の低下を特徴とする筋肉量の低下は、肝硬変に罹患している患者に高頻度で認められる。肝硬変は、臨床転帰に影響を及ぼす合併症をもたらす多くの代謝異常を特徴とする。場合によっては、筋肉量の低下は、肝移植後の生存、生活の質および転帰に有害な影響を及ぼす機能的能力の低下をもたらす。高アンモニア血症は、肝硬変の主要な合併症であり得る。特定の理論に拘束されることなく、アンモニアの毒性作用が筋肉に影響を及ぼす、例えば、筋肉喪失をもたらし得ると考えられる。筋肉喪失の状態は、肝疾患(例えば、慢性肝疾患)に関連し得るが、必ずしもそうではない。
【0035】
筋肉喪失は、様々な通常の方法、例えば、超音波などの技術により筋肉サイズ(例えば、大腿直筋の周囲)を測定すること、電気インピーダンス筋運動記録法(EIM)を用いて電流に対する筋肉抵抗を測定すること、体重の変化を測定すること、筋肉量を測定すること、除脂肪量もしくは脂肪量を測定すること、自発運動量を測定すること、骨格筋線維数を測定すること、筋肉断面積(CSA)を測定すること、筋肉におけるタンパク質の合成比(fractional synthesis of protein)(FSR)(例えば、D2Oを用いた)を測定すること、除脂肪体重(LBM)を追跡すること、またはそれらのいずれかの組合せにより判定することができる。いくつかの実施形態では、筋肉喪失は、対象の除脂肪体重(LBM)を経時的に追跡することによって測定することができる。
【0036】
筋肉喪失の治療および予防
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、オルニチンをフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと組み合わせてそれを必要とする対象に同時投与することにより筋肉喪失の状態を治療または予防する方法を含む。いくつかのそのような実施形態は、治療処置を含み、いくつかの実施形態は、予防処置を含む。
【0037】
それを必要とする対象は、筋肉喪失の状態に罹患している患者または筋肉喪失の状態を発現すると疑われるもしくは発現するリスクがある対象であり得る。対象は、肝疾患(例えば、急性肝不全または急性肝代償不全)の症状を有し得るまたは有し得ない。いくつかの実施形態では、対象は、高アンモニア血症を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、高アンモニア血症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、肝性脳症(HE)を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、HEを有する。いくつかの実施形態では、対象は、肝疾患を有するが、肝疾患の重大な症状を示さない。
【0038】
本明細書で開示する方法は、筋肉喪失の状態に罹患している対象または筋肉喪失の状態を発現すると疑われるもしくは発現するリスクがある対象を同定すること;ならびにオルニチンをフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと組み合わせて対象に同時投与することも含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、対象における筋肉喪失の状態の存在または対象における筋肉喪失の状態を発現するリスク/可能性についての知識を得ることと、オルニチンをフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと組み合わせて対象に同時投与することとを含む。
【0039】
筋肉喪失の変化、例えば、筋肉喪失の低減または加速は、例えば、筋肉量の低下を検出すること、体重の変化を検出すること、除脂肪筋肉量および/もしくは脂肪量の変化を検出すること、自発運動量の変化を判定すること、筋線維数の変化を検出すること、筋肉断面積の変化を検出すること、または対象のそれらのいずれかの組合せにより検出することができる。
【0040】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、オルニチンをフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと組み合わせてそれを必要とする対象に同時投与することによって筋肉喪失の状態を治療または予防する方法を提供する。いくつかの実施形態は、オルニチンをフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと組み合わせて投与する前に筋肉喪失の状態(例えば、サルコペニア、筋委縮、悪液質または筋ジストロフィー)を有するまたは発現するリスクがある対象を同定することを含み得る。
【0041】
「同時投与」とは、2つまたはそれよりも多くの薬剤をいつまたはどのようにして実際に投与するかを問わず、それらを患者の血流中に同時に見出すことができることを意味する。一実施形態では、薬剤を同時に投与する。1つのそのような実施形態では、併用投与は、薬剤を単一剤形に混ぜ合わせることによって達成される。他の実施形態では、薬剤を連続して投与する。一実施形態では、薬剤を経口などの、同じ経路により投与する。他の実施形態では、1つを経口投与し、もう1つをi.v.投与するなどの、異なる経路により投与する。
【0042】
いくつかの実施形態では、同時投与は、血中アンモニアレベルを低下させるために有用であり、これは、筋肉喪失を治療するまたはその可能性を低下させる。いくつかの実施形態では、組合せ薬の投与により、肝硬変などの既存の慢性肝疾患を有する患者における筋肉喪失が低減または予防される。したがって、いくつかの実施形態では、筋肉喪失の状態も有する、慢性肝疾患を有する患者に組合せ薬を投与する。
【0043】
特定の理論に拘束されることなく、いくつかの実施形態では、オルニチンとフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートとの同時投与(例えば、オルニチンフェニル酢酸(OP))は、筋肉代謝に対する効果により門脈高圧症の状態を予防または軽減する。いくつかの実施形態では、筋肉代謝を低下させることは、筋肉喪失の状態の治療または予防となる。いくつかの実施形態では、オルニチンとフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートとの同時投与(例えば、オルニチンフェニル酢酸(OP))は、肝硬変患者における血中アンモニアを低下させ、筋肉量低下を軽減する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、筋肉量の低下(除脂肪筋肉量の低下を含むが、これらに限定されない)を予防または低減することができる。例えば、方法および組成物は、筋肉量低下(除脂肪筋肉量の低下を含むが、これらに限定されない)が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、筋肉量低下の速度は、治療を受けているまたは受けた患者において治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、患者における筋肉量低下の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終筋肉量低下(除脂肪筋肉量の最終低下を含むが、これらに限定されない)を減少させ得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋肉量低下は、治療を受けない患者における最終筋肉量低下の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋肉量低下は、治療を受けない患者における最終筋肉量低下の1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、筋肉重量の低下を予防または減少させることができる。例えば、方法および組成物は、筋肉重量低下が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における筋肉重量低下の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における筋肉重量の低下の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終筋肉重量低下を減少し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋肉重量低下は、治療を受けない患者における最終筋肉重量低下の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋肉重量低下は、治療を受けない患者における最終筋肉重量低下の、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、筋周囲長の低下を予防または減少させることができる。例えば、方法および組成物は、筋周囲長低下が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における筋周囲長低下の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における筋周囲長低下の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終筋周囲長低下を減少し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋周囲長低下は、治療を受けない患者における最終筋周囲長低下の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋周囲長低下は、治療を受けない患者における最終筋周囲長低下の、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、筋力の喪失を予防または減少させることができる。例えば、方法および組成物は、筋力の喪失が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における筋力喪失の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における筋力喪失の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終筋力喪失を減少し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋力喪失は、治療を受けない患者における最終筋力喪失の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終筋力喪失は、治療を受けない患者における最終筋力喪失の、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、可動性喪失を予防または減少させることができる。例えば、方法および組成物は、可動性喪失が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における可動性喪失の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における可動性喪失速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終可動性喪失を減少し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終可動性喪失は、治療を受けない患者における最終可動性喪失の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終可動性喪失は、治療を受けない患者における最終可動性喪失の、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、体重低下を予防または減少させることができる。例えば、方法および組成物は、体重低下が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における体重低下の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における体重低下の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。他の例として、方法および組成物は、最終体重低下を減少し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終体重低下は、治療を受けない患者における最終体重低下の最大で、または最大で約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における最終体重低下は、治療を受けない患者における最終体重低下の、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物は、筋肉タンパク質FSRの減少を予防または筋肉タンパク質FSRの低下の速度を減少させることができる。例えば、方法および組成物は、筋肉タンパク質FSRの減少が起こることを予防し得る。いくつかの実施形態では、治療を受けているまたは受けた患者における筋肉タンパク質FSRの低下の速度は、治療を受けない患者と比較して少なくとも、または少なくとも約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下する。いくつかの実施形態では、方法および組成物は、治療を受けているまたは受けた患者における筋肉タンパク質FSRの低下の速度を、治療を受けない患者と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは約、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲、低下させる。
【0051】
塩
いくつかの実施形態では、オルニチンおよびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートを薬学的に許容される塩として投与する。「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物の生物学的有効性および特性を保持し、医薬品に用いるのに生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない塩を意味する。多くの場合、本明細書で開示する化合物は、アミノおよび/もしくはカルボキシル基またはそれと類似の基の存在により酸および/または塩基塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸により形成され得る。塩を得ることができる無機酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。塩を得ることができる有機酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む。薬学的に許容される塩は、無機および有機塩基を用いて形成させることもできる。塩を得ることができる無機塩基は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどを含む塩基を含み、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩がとりわけ好ましい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する化合物の無機塩基による処理は、Li+、Na+、K+、Mg2+およびCa2+などのような無機陽イオンを含む塩形を得るための、化合物からの活性な水素の喪失をもたらす。塩を得ることができる有機塩基は、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的にはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンなどを含む。多くのそのような塩は、1987年9月11日に公開された国際公開第87/05297号パンフレット(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、当技術分野で公知である。
【0052】
いくつかの実施形態では、オルニチンをオルニチンHCl塩として投与する。いくつかの実施形態では、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートをそれらのナトリウム塩として投与する。いくつかの実施形態では、オルニチンおよびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートを互いの塩(例えば、オルニチンフェニル酢酸)として投与する。
【0053】
医薬組成物および投与方法
オルニチン(例えば、L-オルニチン)およびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートは、別個にまたは単一剤形で投与することができる。一実施形態では、組合せ薬をオルニチンフェニル酢酸塩としてまたはオルニチンフェニル酢酸塩の溶液として投与する。
【0054】
フェニルアセテート(またはフェニル酢酸塩)およびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせたオルニチンの異なる形態の組成物が、それら全体が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0119554号明細書および第2010/0280119号明細書に記載された。いくつかの実施形態では、オルニチンおよびフェニルアセテートが、オルニチンフェニル酢酸またはその生理学的に許容される塩として存在し、かつ/または投与される。いくつかの実施形態では、オルニチンが、遊離単量体アミノ酸またはその生理学的に許容される塩として存在し、かつ/または投与される。いくつかの実施形態では、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つが、フェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムとして存在し、かつ/または投与される。いくつかの実施形態では、オルニチンの生理学的に許容される塩ならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つの生理学的に許容される塩を対象に投与する。
【0055】
本明細書で開示するように、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑化剤、懸濁化剤、フィルム形成物質、コーティング助剤またはそれらの組合せを含む医薬組成物として投与するために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、薬学的に許容される担体または希釈剤とともに投与するために製剤化する。オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、製薬分野で常用されている薬学的に許容される標準的担体(複数可)および/または賦形剤(複数可)を含む医薬として製剤化することができる。製剤の正確な性質は、所望の投与経路を含むいくつかの因子に依存する。一般的に、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、経口、静脈内、胃内、血管内または腹腔内投与用に製剤化する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Remington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)に開示されているような、標準的な医薬製剤技術を用いることができる。
【0056】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。通常の媒体または薬剤が有効成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が予期される。さらに、当技術分野で一般的に使用されているような様々な佐剤を含めることができる。医薬組成物に様々な成分を含めることについて考慮すべき事柄は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Pressに記載されている。
【0057】
薬学的に許容される担体またはその成分としての機能を果たし得る物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースおよびその誘導体;粉末状トラガント;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムなどの固体滑沢剤;硫酸カルシウム;落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ脂などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;アルギン酸;TWEENSなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色料;着香料;打錠剤;安定化剤;抗酸化剤;保存剤;発熱物質不含有水;等張食塩液;ならびにリン酸緩衝溶液である。
【0058】
対象化合物とともに使用される薬学的に許容される担体の選択は、化合物を投与する手段によって基本的に決定される。
【0059】
本明細書で述べる組成物は、好ましくは単位剤形で供給される。本明細書で用いているように、「単位剤形」は、医療業務規範に従って、1回の投与で、動物、好ましくは哺乳動物対象への投与に適する量の化合物を含む組成物である。しかし、単一または単位剤形の調製は、剤形が1日1回または治療コース当たり1回投与されることを意味しない。そのような剤形は、1日1回、2回、3回またはそれよりも多くの回数投与することが企図され、一定の期間(例えば、約30分から約2~6時間)にわたる注入として投与するか、または持続注入として投与することができ、単回投与は特に除外されないが、治療の過程で複数回投与することができる。当業者は、製剤が治療の全コースを具体的に企図するものではなく、そのような決定は、製剤の分野ではなく治療の分野の当業者に委ねられることを認識する。
【0060】
上述の有用な組成物は、様々な投与経路用、例えば、経口、鼻、直腸、局所(経皮を含む)、眼、大脳内、頭蓋内、くも膜下、動脈内、静脈内、筋肉内または他の非経口投与経路用の様々な適切な形態のいずれかであり得る。当業者は、経口および鼻用組成物は、吸入により投与され、利用可能な方法を用いて製造される組成物を含むことを十分に理解する。所望の特定の投与経路によって、当技術分野で周知の様々な薬学的に許容される担体を用いることができる。薬学的に許容される担体は、例えば、固体または液体増量剤、希釈剤、ヒドロトロピー、界面活性剤および封入物質を含む。化合物の阻害活性を実質的に妨げない、任意選択の薬学的に活性な物質を含めることができる。化合物とともに用いる担体の量は、化合物の単位用量当たりの投与のための実際的な量の物質を供給するのに十分である。本明細書で述べる方法に有用な剤形を製造するための技術および組成物は、すべてが参照により本明細書に組み込まれる、以下の参考文献に記載されている:Modern Pharmaceutics, 4th Ed., Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, editors, 2002)、Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1989)、およびAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 8th Edition (2004)。
【0061】
錠剤、カプセル剤および顆粒剤のような固体の形態を含む、様々な経口剤形を使用することができる。錠剤は、適切な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、着香料、流動誘導剤(flow-inducing agents)および溶融助剤を含む、圧縮錠剤摩砕物、腸溶、糖衣、フィルムコーティングまたは多重圧縮錠剤であり得る。液体経口剤形は、適切な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、溶融助剤、着色料および着香料を含む、非発泡顆粒剤から復元された水剤、乳剤、懸濁剤、液剤および/または懸濁剤、ならびに発泡顆粒剤から復元された発泡製剤を含む。
【0062】
経口投与用の単位剤形の調製に適する薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知である。錠剤は一般的に、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロースなどの不活性希釈剤;デンプン、ゼラチンおよびスクロースなどの結合剤;デンプン、アルギン酸およびクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの滑沢剤のような、通常の薬学的に適合性の佐剤を含む。二酸化ケイ素などの滑剤は、粉末混合物の流動特性を改善するために用いることができる。FD&C色素などの着色料は、外観のために加えることができる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミントおよび果実着香料などの、甘味料および着香料は、咀しゃく錠用の有用な佐剤である。カプセル剤は、一般的に上で開示した1つまたは複数の固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、決定的でない、味、費用および貯蔵安定性のような二次的考慮に依存するものであり、当業者によって容易に行うことができる。
【0063】
経口組成物は、液剤、乳剤、懸濁剤なども含む。そのような組成物の調製に適する薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知である。シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤用の担体の一般的な成分は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトールおよび水を含む。懸濁剤については、一般的な懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガントおよびアルギン酸ナトリウムを含み、一般的な湿潤剤は、レシチンおよびポリソルベート80を含み、一般的な保存剤は、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムを含む。経口液体組成物は、上で開示した甘味料、着香料および着色料などの1つまたは複数の成分も含み得る。
【0064】
対象化合物の全身送達を達成するために有用な他の組成物は、舌下、口腔および鼻剤形を含む。そのような組成物は、一般的に、スクロース、ソルビトールおよびマンニトールなどの1つまたは複数の可溶性増量物質;ならびにアラビアゴム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤を含む。上で開示した滑剤、滑沢剤、甘味料、着色料、抗酸化剤および着色料も含めることができる。
【0065】
局所使用のために、本明細書で開示した化合物を含むクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、液剤または懸濁剤などを用いる。局所製剤は、一般的に医薬担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、保存システムおよび皮膚軟化剤で構成され得る。
【0066】
静脈内投与のために、本明細書で述べた化合物および組成物は、生理食塩水またはデキストロース溶液などの、薬学的に許容される希釈剤に溶解または分散させることができる。所望のpHを達成するために、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HClおよびクエン酸を含むが、これらに限定されない、適切な賦形剤を含めることができる。様々な実施形態では、最終組成物のpHは、2~8、または好ましくは4~7の範囲にある。抗酸化賦形剤は、重亜硫酸ナトリウム、アセトン-重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド-スルホキシル酸ナトリウム(sodium formaldehyde, sulfoxylate)、チオ尿素およびEDTAを含み得る。最終静脈内組成物に見出される適切な賦形剤の他の非限定的な例は、リン酸ナトリウムまたはカリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチンならびにデキストロース、マンニトールおよびデキストランなどの炭水化物を含み得る。さらなる許容される賦形剤は、両方がそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる、Powell, et al., Compendium of Excipients for Parenteral Formulations, PDA J Pharm Sci and Tech 1998, 52 238-311およびNema et al., Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions, PDA J Pharm Sci and Tech 2011, 65 287-332に記載されている。静菌または静真菌溶液を得るために、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾールおよびクロロブタノールを含むが、これらに限定されない、抗菌剤も含めることができる。
【0067】
静脈内投与用の組成物は、投与直前に滅菌水、生理食塩水または水中デキストロースなどの適切な希釈剤で復元する1つまたは複数の固体の形態で介護者に供給することができる。他の実施形態では、組成物は、非経口投与することができる状態の溶液で供給される。さらなる他の実施形態では、組成物は、投与前にさらに希釈する溶液で供給される。本明細書で述べた化合物および他の薬剤の組合せを投与することを含む実施形態では、組合せを介護者に混合物として供給することができ、または介護者が投与前に2つの薬剤を混合することができ、または2つの薬剤を別個に投与することができる。
【0068】
非ヒト動物試験において、可能な製剤の適用をより高い用量レベルで開始し、所望の効果がもはや得られなくなるまでまたは有害な副作用が消失するまで用量を減少させる。用量は、所望の効果および治療指標によって、広く及び得る。一般的に、用量は、約0.1mg/kg~4000mg/kg体重、好ましくは約80mg/kg~1600mg/kg体重であり得る。あるいは、当業者により理解されるように、用量は、患者の表面積に基づいて計算することができる。
【0069】
治療される状態の重症度および反応性によって、投与は、徐放性組成物の単回投与であってもよく、治療のコースは、数日から数週間または治癒がもたらされるまでもしくは疾患状態の低減が達成されるまで継続される。投与される組成物の量は、もちろん、治療を受ける対象、苦痛の重症度、投与方法、処方医師の判断を含む多くの因子に依存する。本明細書で開示した化合物または化合物の組合せは、1日当たり0.1mg/kg~4000mg/kg患者の体重の用量で、経口でまたは注射により投与することができる。成人向けの用量範囲は、一般的に1g~100g/日である。錠剤または個別の単位で供給される他の剤形は、そのような用量でまたは例えば、1g~60g(例えば、約5g~20g、約10g~50g、約20g~40g、または約25g~35g)を含む複数の同じ単位として有効である量の本明細書で開示した化合物または化合物の組合せを好都合に含み得る。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医の責任である。しかし、用いられる用量は、患者の年齢および性、治療する正確な障害およびその重症度を含む多くの因子に依存する。また、投与経路は、状態およびその重症度によって異なり得る。オルニチンの、またはフェニルアセテートもしくはフェニルブチレートの一般的な用量は、そのようなパラメーターによって、体重1kg当たり0.02g~1.25g、例えば、体重1kg当たり0.1g~0.5gであり得る。いくつかの実施形態では、オルニチンの、またはフェニルアセテートもしくはフェニルブチレートの用量は、1g~100g、例えば、10g~80g、15g~60g、20g~40g、または25g~35gであり得る。いくつかの実施形態では、オルニチンおよびフェニルアセテート/フェニルブチレートは、10:1~10:1、例えば、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、2:1~1:2、または約1:1の重量比で投与することができる。医師は、個々の対象向けのオルニチンの、およびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートの必要な用量を決定することができる。
【0070】
本明細書で開示した化合物または化合物の組合せの医薬組成物の正確な処方、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Fingl et al. 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics,"を参照、特に1章を参照)。一般的に、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.1~約4000mg/kg患者の体重であり得る。用量は、患者の必要に応じて、1日または複数の日数の経過中に投与される1回量または一連の2回もしくはそれよりも多くの回数分量であり得る。化合物のヒト用量が少なくとも何らかの状態について確立された場合、本開示は、それらの同じ用量を、または確立されたヒト用量の約0.1%~約5000%、より好ましくは約25%~約1000%を使用する。ヒト用量が確立されていない場合、新たに発見された医薬組成物の場合と同様に、適切なヒト用量は、ED50もしくはID50値から、または動物における毒性試験および有効性試験により適格とされた、in vitroもしくはin vivo試験から得られた他の適切な値から推測することができる。
【0071】
主治医は、毒性または臓器機能不全のため、投与をどのようにして、またいつ終わらせ、中断し、または調節するかを知っているであろう、ということを注意すべきである。逆に、主治医は、臨床的反応が十分でない(毒性を除く)場合には、治療をより高いレベルに調節することも知っているであろう。目的の障害の管理における投与量の大きさは、治療する状態の重症度および投与経路によって異なる。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価法により一部、評価することができる。さらに、用量およびおそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重および反応によっても異なる。上で述べたものと同等のプログラムを獣医学に用いることができる。
【0072】
正確な用量は、薬物ごとに決定されるが、大部分の場合、用量に関するある程度の一般化を行うことができる。薬学的に許容される塩の投与の場合、用量は、遊離塩基として計算することができる。いくつかの実施形態では、組成物を1日1~4回投与する。あるいは本明細書で開示した化合物または化合物の組合せの組成物は、好ましくは1日最大100gの各有効成分の用量で持続静脈内注入により投与することができる。当業者により理解されるように、特定の状況では、特に侵襲的疾患または感染を効果的かつ積極的に治療するために上述の好ましい用量範囲を超える、またはさらにはるかに超える量の本明細書で開示した化合物を投与することが必要であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示した化合物または化合物の組合せは、継続的療法の期間、例えば、1週間もしくはそれよりも多くの週、または数カ月間もしくは数年間にわたり投与する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した化合物(複数可)または化合物の組合せの投与計画は、ある期間にわたり投与するものであり、その期間は、例えば、少なくとも約1週間から少なくとも約4週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約8週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約12週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約16週間まで、またはより長い期間であり得る。本明細書で開示した化合物(複数可)または化合物の組合せの投与計画は、1日3回、1日2回、連日、隔日、週3回、隔週、月3回、月1回、実質的に継続的にまたは継続的に投与することができる。
(実施例)
【0074】
本出願の実施形態は、本開示の範囲を限定することが全く意図されていない、以下の実施例においてさらに詳細に開示される。
【実施例1】
【0075】
BDLラットにおけるin vivo効果
慢性肝疾患(CLD)は、6週間の胆管結紮(BDL)の後にラットにおいて誘発した。次の4つの実験群を試験した:1)Sham;2)BDL;3)Sham+OP;および4)BDL+OP。BDL後1週目に、ラットにOP(1g/kg)を5週間にわたり毎日経口投与した(強制経口投与)。体重、脂肪および除脂肪量(EchoMRI)、血中アンモニア、脳浮腫(比重法)、筋肉におけるタンパク質の合成比(FSR)(D2Oを用いた)および自発運動量(昼間/夜間)を測定した。
【0076】
6週間の実験の終了時に、BDLラットは、Sham手術対照と比較して血中アンモニアの4倍の増加を示した。この増加は、OP投与BDLラットにおいて40%低下した。BDLラットは、Sham手術対照と比較して低い体重を得た(360.2g±13.6対476.8g±10.38の体重;p<0.001)。これは、除脂肪量のより低い増加およびより低い筋肉FSRを伴っていた。OP投与BDLラットは、体重の有意な増加(429.6g±117.9;p<0.001対BDL)と有意なより高い除脂肪量(BDL+OPにおける303.1g±10.7対BDLにおける264.4g±10.5、p<0.01)を示した。脂肪量は、投与および非投与BDL群間で不変のままであった。OP投与は、BDLラットにおける脳含水量を正常化した。対照的に、OP投与は、SHAM動物における筋肉FSRを低下させたが、BDLラットにおいては低下させなかった。BDLラットにおける自発運動量は、Sham手術対照と比較して低下したが、BDL+OPとSHAM+OPとの間に有意な変化は認められなかった。
【0077】
これらの結果は、OPの経口製剤の、有効なアンモニア低下効果、ならびに脳浮腫の発現および筋肉量低下に対する保護効果を実証するものである。さらに、これらのデータは、筋肉喪失の治療(予防を含む)におけるオルニチンフェニル酢酸の使用を支持している。
【実施例2】
【0078】
ラットにおけるサルコペニアの治療
この実施例は、L-オルニチンフェニル酢酸組合せ薬(OP)による治療がラットにおける加齢に関連する筋肉喪失を減少させるかどうかを判定するためのものである。
【0079】
Fisher 344×Brown Norway(FBN)ラットモデルは、アメリカ国立老化研究所(National Institute on Aging)(NIA)により加齢に関連する研究用に推奨された。場合によっては、ラットは、慢性肝疾患に罹患している。若年(例えば、5カ月)、中年(例えば、18カ月)および老年(例えば、36カ月)FBNハイブリッドラットにおける筋肉量、線維数および筋肉断面積(CSA)を測定した。例えば、加齢ラットの大腿四頭筋における有意な筋肉量低下、筋肉CSAの減少および筋線維喪失が予期される。
【0080】
OPは、若年、中年および老年FBNハイブリッドラットに例えば、経口により投与する。OPの投与は、中年および/または老年FBNハイブリッドラットにおける筋肉量低下を減少させるのに有効であることが予期される。
【実施例3】
【0081】
ラットにおける悪液質の治療
この実施例は、L-オルニチンフェニル酢酸組合せ薬(OP)による治療がラットにおける悪液質を治療するかどうかを判定するためのものである。
【0082】
悪液質のラットモデル、例えば、ApcMin/+ラットを用いる。場合によっては、ラットは、慢性肝疾患に罹患している。ApcMin/+ラットの筋肉量、線維数および筋肉断面積(CSA)を、OPを投与する前および後に測定する。OPの投与は、ApcMin/+ラットにおける筋肉量低下を減少させるのに有効であることが予期される。
【実施例4】
【0083】
肝硬変ラットにおける筋肉量低下の予防
この実施例で述べる試験では、6週胆管結紮(BDL)ラットモデルを用いた。動物モデルを作製するために、胆管結紮後に雄Sprague-Dawleyラット(200~225g)(Charles River、St-Constant、QC)における肝硬変を誘発した。BDLラットの特性は、黄疸、腹水、肝機能不全、脳浮腫、高アンモニア血症および潜在性HEである。
図2A~Cに示すように、BDLラットは、腓腹筋肉量の低下および周囲の減少も示した。
【0084】
前述のように、ラットをイソフルランにより麻酔し、解剖顕微鏡下で総胆管を結紮し、切除した。体重を一致させた、Sham手術対照ラットを同様に麻酔し、開腹術を実施し、胆管を単離した(Rose et al. Gastroenterology 117:640-644 (1999);Bosoi et al. Hepatology 53:1995-2002 (2011);Bosoi et al. Free Radic Biol Med 52:1228-1235 (2012))。ラットを制御された条件下(22℃、12時間:12時間明暗サイクル)に維持し、それらの飼料および水を自由に摂取させた。BDL手術の1週後に、ラットにオルニチンフェニル酢酸(OP;1g/kg)を強制経口投与により5週間にわたり毎日経口投与した。実験は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)のガイドラインに従って行った。以下の動物の4つの実験群を試験した:(1)sham、(2)BDL、(3)sham+OPおよび(4)BDL+OP。
【0085】
ラットの体重は、電子はかりを用いてBDL手術後6週間(5週間の治療を含む)にわたり毎日測定した。
図3Aに示すように、BDLラットは、sham手術対照と比較してより低い体重を得た(p<0.001)。6週目に、OP投与BDLラットは、体重の有意な増加を示した(P<0.05対BDLラット)。
【0086】
BDL手術の6週後に、ラットの血中アンモニアおよび肝酵素を測定した。SHAM、BDLおよびOPを投与したBDLにおける血漿アンモニア、アルブミン、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼレベルを常用の生化学技術を用いて測定した。アンモニアを測定するために、L-グルタル酸デヒドロゲナーゼの存在下でのα-ケトグルタル酸および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の反応に基づく市販キットを用いた。血中アンモニアに関する結果を
図3Bに示す。これは、アンモニアがBDLラットにおいてsham手術ラットと比較して4倍増加し、有意な増加がOP投与BDLラットに認められたことを示す(p<0.01対BDLラット)。肝酵素の結果を
図3Cに示す。
【0087】
除脂肪量および脂肪量に関する身体組成も、手術の6週後にin vivo走査および磁気共鳴撮像法(EchoMRI 100(登録商標)体組成計)により覚醒ラット(全身)において製造業者のプロトコールに従って評価した。組成解析用の機器は、異なる環境における水素プロトンスピンの緩和時間の差を利用することにより軟組織間のコントラストを作り出す。ラジオパルスがプロトンをスピンさせ、ラジオシグナルを放射し、これが受信され、解析される。これらのシグナルの振幅、持続時間および空間分布がスキャンされた物質の特性に関連付けられる。脂肪、筋肉組織および自由水間の高いコントラストがNixon et al. Obesity (Silver Spring) 18:1652-1659 (2010)に記載されているのと同様にデファインコンポーズド(define composed)ラジオパルスの適用によりさらに増強される。結果を
図3D(脂肪量)および
図3E(除脂肪量)に示す。
図3Eに示すように、BDLラットは、sham手術対照と比較して除脂肪量のより低い増加を示した。OP投与BDLラットは、有意により高い除脂肪量を示した(p<0.01対BDLラット)。
図3Dに示すように、脂肪量は、BDLラットにおいてsham手術対照と比較して減少し、投与および非投与BDL群の間で不変のままであった。
【0088】
動物の脳含水量は、Bosoi et al, 2012に以前に記載されたように、高感度密度測定技術を用いて測定した。手短に述べると、動物を屠殺した後、前頭皮質を4℃で新たに切開し、2mmの3片に切断した。組織片を密度勾配カラムに入れ、2分後に平衡点を記録した。カラムは、異なるケロセンおよびブロモベンゼン混合物で作られ、既知濃度のK
2SO
4溶液であらかじめ校正されていた。各ラットについて8つの試料測定を平均した。含水量は、Marmarou et al., J Neurosurg. 49(4):530-537 (1978)により記載された式により、組織の密度に基づいて計算した。脳浮腫の結果を
図3Fに示す。
図3Fに示すように、前頭皮質含水量は、BDLラットにおいて有意に増加し(p<0.05対SHAM)、OP治療後に正常化した。
【0089】
動物の自発運動量は、赤外線ビームコンピューター自動追跡システム(Accuscan)を用いて評価した。運動量を記録し始める前にラットをplexiglasケージに6時間個別に入れた。夜間(活動)および昼間(無活動)の期間中に移動した距離を24時間記録した。
図3Gに示すように、BDLラットにおける自発運動量は、sham手術対照と比較して減少した(p<0.05)が、SHAMおよびBDL OP投与ラットの間で有意な変化は認められなかった。
【0090】
タンパク質合成速度は、Zhang et al. Am J Physiol Endocrinol Metab 283:E753-764 (2002)およびDasarathy et al. J Hepatol 54:915-921 (2011)に記載されている修正フェニルアラニントレーサーパルス法を用いて、脳(前頭皮質)、心臓、腸、腎臓および肝臓を含む、切開し、ホモジナイズした筋肉および他の器官におけるタンパク質合成比速度および絶対タンパク質合成速度として定量化した。手短に述べると、ラットに低用量(0.5mg/100g体重)のL-[環-
2H
5]フェニルアラニンip、t=0分、L-[1-
13C]フェニルアラニンip、t=30分およびL-[15N]フェニルアラニンip、t=60分を投与した。t=65分でラットを屠殺し、血液および組織を採取した。タンパク質合成比の計算は、血漿中平均濃縮(3つの異なるフェニルアラニン同位体から作製した、曲線の曲線下面積計算からの)により割った、L-[環-
2H
5]フェニルアラニンの組織タンパク質試料における濃縮を用いて行った。血漿および組織加水分解物中のフェニルアラニンの濃縮は、Engelen et al. J Cyst Fibros 12:445-453 (2013)およびLuiking et al. Clin Sci 128:57-67 (2015)に記載されているように質量分析に連結した液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)により測定した。結果を
図3H(FSR:タンパク質合成比速度)に示す。
図3Hに示すように、BDLラットは、sham手術対照と比較してより低い筋肉FSRを示し、OP投与は、sham手術動物における筋肉FSRを低下させたが、BDLラットにおいては低下させなかった。
【0091】
統計解析では、データは平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表した。差の有意性は、対応のないt検定またはANOVAとそれに続くGraphPad Prism4(La Jolla、CA、USA)を用いたBonferroni事後検定により検定した。p<0.05の確率値は、統計的に有意であると見なした。
【0092】
この実施例から、経口OP製剤が、肝硬変を有するラットにおけるアンモニアを効率的に低下させ、筋肉量および機能を保存し、自発運動量を改善し、脳浮腫の発現から保護することがわかる。
【0093】
前述の実施形態の少なくとも一部において、実施形態に用いられる1つまたは複数の要素は、他の実施形態に交換可能な方法で用いることができる。ただし、そのような交換が技術的に実行可能でない場合を除く。特許請求の範囲に記載の内容の範囲から逸脱することなく、上述の方法および構造について様々な他の削除、追加および修正を行うことができることは、当業者により理解される。すべてのそのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって規定される内容の範囲内にあるものとする。
【0094】
本明細書における実質的にあらゆる複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または適用に適切であるように、複数から単数へ、および/または単数から複数に転換することができる。様々な単数/複数の置換は、明瞭にするために本明細書に明記することができる。
【0095】
一般的に、本明細書およびとりわけ添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の主要部)で用いられる用語は、一般的に「オープン(open)」用語(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むがこれらに限定されない」と解釈すべきであり、「を有する」という用語は、「を少なくとも有する」と解釈すべきであり、「を含む(includes)」という用語は、「を含むがこれらに限定されない」と解釈すべきであるなど)であることを意図することは、当業者により理解される。特定の数の導入請求項の列挙が意図される場合、そのような意図は、請求項に明確に示し、そのような列挙が存在しない場合には、そのような意図は存在しないことは、当業者によりさらに理解される。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するために導入語句「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の使用を含み得る。しかし、そのような語句の使用は、同じ請求項が導入語句「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」ならびに「a」または「an」のような不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味すると解釈すべきである)を含む場合でさえも、不定冠詞「a」または「an」による請求項の列挙の導入が、そのような導入請求項の列挙を含む特定の請求項を1つのそのような列挙のみを含む実施形態に限定することを意味すると解釈すべきではない。同じことは、請求項の列挙を導入するために用いられる定冠詞の使用について当てはまる。さらに、特定の数の導入請求項の列挙が明示されている場合でさえ、当業者は、そのような列挙は少なくとも列挙された数を意味すると解釈すべきであることを認識する(例えば、他の修飾語句を伴わない「2つの列挙」という単なる列挙は、少なくとも2つの列挙、または2つもしくはそれよりも多くの列挙を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ、など」と類似の慣例用語が用いられる場合には、一般的にそのような構文は、当業者が当慣例用語を理解する意味で意図されている(例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、ならびに/またはA、BおよびCが一緒、などを含むが、これらに限定されないものである)。「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ、など」と類似の慣例用語が用いられる場合には、一般的にそのような構文は、当業者が当慣例用語を理解する意味で意図されている(例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、ならびに/またはA、BおよびCが一緒、などを含むが、これらに限定されないものである)。実際上あらゆる離接語および/または2つもしくはそれよりも多くの代替用語を表す語句は、明細書、特許請求の範囲または図面であるかどうかを問わず、用語の1つ、用語のいずれか、または両用語を含む可能性を企図するものと理解すべきであることは、当業者によりさらに理解される。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0096】
さらに、本開示の特徴または態様をマーカッシュグループにより記述する場合、当業者は、本開示がマーカッシュグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループによっても記述されることを認識する。
【0097】
当業者により理解されるように、ありとあらゆる目的のために、例えば、書面による記述を示すことに関して、本明細書で開示するすべての範囲は、ありとあらゆる可能な部分的範囲およびその部分的範囲の組合せも含む。任意の示された範囲は、十分に記述され、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、などに分解されることを可能にすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で述べた各範囲は、下部3分の1、中間部3分の1および上部3分の1、などに容易に分解することができる。また当業者により理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「を超える」、「未満」などのすべての語句は、記載された数を含み、その後、上述のような部分的範囲に分解することができる範囲を意味する。最後に、当業者により理解されるように、範囲は、それぞれの個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2または3個の物品を有する群を意味する。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4または5個の物品を有する群を意味する、などである。
【0098】
様々な態様および実施形態を本明細書で開示したが、他の態様および実施形態は、当業者には明らかである。本明細書で開示した様々な態様および実施形態は、例示の目的のためであって、限定的であることを意図するものではなく、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲により示されている。
【0099】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用したすべての参考文献、ならびにそれらがまだ組み込まれない程度に、本明細書で引用した参考文献は、それら全体が参照により組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料の1つまたは複数のものが、定義された用語、用語の使用法、記述された技術などを含むが、これらに限定されないものについて、本願と異なるまたは矛盾する場合には、本願が支配するものである。
なお、本発明は以下の態様をも含むものである。
<1> 筋肉喪失の状態を治療する方法であって、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせてそれを必要とする対象に投与し、それにより、前記状態を軽減することを含む、方法。
<2> 筋肉喪失の状態に罹患している対象を同定することをさらに含む、上記1に記載の方法。
<3> 前記対象が肝移植を受けている、上記2に記載の方法。
<4> 筋肉喪失の状態を予防する方法であって、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つと組み合わせてそれを必要とする対象に投与し、それにより、前記状態を予防することを含む、方法。
<5> 筋肉喪失の状態を発現するリスクがある対象を同定することをさらに含む、上記4に記載の方法。
<6> 前記対象が肝移植を受けようとしている、上記5に記載の方法。
<7> 筋肉重量、筋肉周囲長、除脂肪筋肉、体重、アンモニアレベル、1つもしくは複数の肝酵素の機能(複数可)、脂肪量、除脂肪量、脳含水量、自発運動量、タンパク質合成速度、または対象のそれらのいずれかの組合せを決定することをさらに含む、上記1から6のいずれかに記載の方法。
<8> 前記1つもしくは複数の肝酵素がアルブミン、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼまたはそれらのいずれかの組合せを含む、上記7に記載の方法。
<9> 前記脳含水量が前頭皮質含水量である、上記7に記載の方法。
<10> 前記筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状が骨格筋喪失である、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<11> 前記筋肉喪失の状態の少なくとも1つの症状が筋肉量低下である、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<12> 前記筋肉喪失の状態が加齢、疾患、損傷、不活動またはそれらのいずれかの組合せにより引き起こされる、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<13> 前記筋肉喪失の状態がサルコペニア、筋委縮、悪液質、筋ジストロフィーまたはそれらのいずれかの組合せである、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<14> 前記対象が慢性肝疾患に罹患している、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<15> 前記慢性肝疾患が肝硬変である、上記14に記載の方法。
<16> 前記状態の治療および予防が血中アンモニアを減少させること、筋代謝を直接改善すること、またはそれらの組合せによって達成される、上記1から15のいずれかに記載の方法。
<17> 前記オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの少なくとも1つの薬学的に許容される別個の塩を前記対象に投与する、上記1から16のいずれかに記載の方法。
<18> フェニルアセテートおよびフェニルブチレートのうちの前記少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、上記17に記載の方法。
<19> 前記オルニチンを遊離の単量体アミノ酸またはその生理学的に許容される塩として投与する、上記1から18のいずれかに記載の方法。
<20> 前記オルニチンおよびフェニルアセテートをオルニチンフェニル酢酸として投与する、上記1から16のいずれかに記載の方法。
<21> 前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内または血管内投与である、上記1から20のいずれかに記載の方法。
<22> 前記投与が静脈内投与である、上記1から20のいずれかに記載の方法。
<23> 前記投与が経口投与である、上記1から20のいずれかに記載の方法。