(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】メッセンジャーリボ核酸薬物の治療投与のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7115 20060101AFI20220127BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220127BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220127BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20220127BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/28 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/23 20060101ALI20220127BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20220127BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20220127BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20220127BHJP
C07K 14/57 20060101ALI20220127BHJP
C07K 14/525 20060101ALI20220127BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220127BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220127BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220127BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220127BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220127BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61K31/7115
C12N15/113 ZNA
C12N15/11
C07K14/52
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/19
C12N15/24
C12N15/28
C12N15/23
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/078
C07K14/57
C07K14/525
C07K14/54
A61P37/06
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K9/127
A61K47/22
(21)【出願番号】P 2018517329
(86)(22)【出願日】2016-10-05
(86)【国際出願番号】 US2016055582
(87)【国際公開番号】W WO2017062513
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-04
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホッジ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボルティー, ティルタ
(72)【発明者】
【氏名】ベシン, ギレス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, ルチ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/081507(WO,A1)
【文献】特表2013-500704(JP,A)
【文献】特表2015-501844(JP,A)
【文献】特表2014-523411(JP,A)
【文献】特表2008-541737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K, C12N, C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ポリペプチドの、ヒト被験体への反復投与後における、全身性の抗薬物抗体(ADA)応答を低減または阻害するための組成物であって、LNP内に封入された、治療用ポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)を含み、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNA内のすべてのウラシルヌクレオ塩基が、修飾されたウラシルヌクレオ塩基で置き換えられており;
前記被験体における、前記治療用ポリペプチドに対する全身性のADA応答を低減または阻害するように、前記組成物が、前記被験体へと、第1の用量で静脈内投与され、前記組成物が、前記被験体へと、第2の用量で静脈内投与されることを特徴とし、前記ADA応答の低減または阻害が、治療用ポリペプチドに対するIgG抗体応答の低減または阻害を含む、
組成物。
【請求項2】
治療用ポリペプチドの、ヒト被験体への反復投与後における、全身性の抗薬物抗体(ADA)応答を低減または阻害するための組成物であって、
LNP内に封入された、治療用ポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)を含み、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNA内のすべてのウラシルヌクレオ塩基が、修飾されたウラシルヌクレオ塩基で置き換えられており;前記組成物が、前記被験体へと、第1の用量で静脈内投与されることを特徴とし、
前記被験体に由来する試料中のIgG抗薬物抗体のレベルが検出され;
前記試料中のIgG抗薬物抗体の前記レベルが低下したら、前記被験体における、前記治療用ポリペプチドに対する全身性のADA応答を低減または阻害するように、前記組成物が、前記被験体へと、第2の用量で静脈内投与されることを特徴とする、
組成物。
【請求項3】
前記mmRNAが、5’UTR、前記治療用ポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、(i)前記少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)前記少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)前記少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含む3’UTR、ならびに連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、請求項
1または
2に記載の組成物。
【請求項4】
前記mmRNA内のすべてのシトシンヌクレオ塩基が、修飾されたシトシンで置き換えられている、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記mmRNAが、1-メチルシュードウリジン(m
1ψ)、5-メトキシウリジン(mo
5U)、5-メチルシチジン(m
5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む、請求項
1または
2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記mmRNAが、配列番号3に示される配列を含む、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含む、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記mmRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記mmRNAが、miR-142-3p結合部位と、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記mmRNAが、配列番号26に示される配列を含む、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含む、請求項
1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記mmRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126マイクロRNA結合部位である、請求項
1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記mmRNAが、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
mmRNA構築物が、miR-126結合部位およびmiR-142-3p結合部位を含む、請求項
1から
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
mmRNA構築物が、3つのmiR-142-3p結合部位を含む、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
mmRNA構築物が、3つのmiR-126結合部位を含む、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/237,462号、2016年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/317,268号、2016年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/317,271号、2016年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/317,366号、2016年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/338385号、2016年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/338,386号、2016年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/338,388号、および2016年6月14日に出願された米国仮特許出願第62/350,149号の利益を主張する。上記参照特許出願の全体の内容は、本明細書に参照による組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
組換え抗体、サイトカイン、および増殖因子などの生物学的薬剤は、多種多様な疾患の処置において有効であることが示されており、今や、FDAは、多数のこのような薬剤を、ヒトにおける使用のために承認している(総説については、Kinch, M.S.(2015年)、Drug Discov. Today、20巻:393~398頁を参照されたい)。FDAにより承認された生物学的薬剤の圧倒的大部分は、タンパク質ベースの薬剤である。より近年になって、メッセンジャーRNAベースの薬剤が、破壊的な治療モダリティーとして開発されている。感染性疾患ワクチンおよび腫瘍ワクチンの両方を含む、有効なmRNAベースのワクチンについては、いくつかの例が報告されている(それぞれの総説については、Marc M.A.ら(2015年)、Expert Opin Drug Deliv. Sep、12巻:1~15頁;およびSahin, U.ら(2014年)、Nature Reviews Drug Discovery、13巻:759~780頁を参照されたい)。より近年には、mRNAベースの薬剤の使用が、例えば、目的の治療用タンパク質をコードするmRNA構築物を使用する治療目的で追求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Marc M.A.ら(2015年)、Expert Opin Drug Deliv. Sep、12巻:1~15頁
【文献】びSahin, U.ら(2014年)、Nature Reviews Drug Discovery、13巻:759~780頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、mRNAベースの治療剤など、被験体におけるmRNAベースの薬剤の使用のための、新たな手法および方法、特に、被験体におけるmRNAベースの薬剤の安全性および/または治療効能に関して、有利な特性をもたらす方法が必要とされている。
本発明は、被験体へと投与されるmRNAベースの薬剤を伴う使用のための方法であって、in vivoにおける、mRNAベースの薬剤の使用に有利な特色をもたらす方法を提供する。今や、驚くべきことに、非ヒト霊長動物への、目的のタンパク質をコードする、mRNAベースの薬剤の投与は、動物における、望ましくない免疫応答の発達をもたらしうるが、この場合、動物において、mRNAによりコードされるタンパク質に対する抗体が検出されうることが発見されている。動物には、タンパク質治療薬ではなく、mRNA構築物を投与したので、これは、予測されない結果であり、in vivoにおける標的組織内の、目的のタンパク質の局所的産生が、コードされるタンパク質生成物に対する応答をもたらすことも予測されなかった。非ヒト霊長動物において観察された応答はまた、他の関与性の動物モデル系においても研究されており、当技術分野で認知される抗薬物抗体(ADA)応答であって、組換えタンパク質治療薬の分野、および低分子治療薬の分野のいずれにおいてもなお見られるADA応答に類似する。古典的な抗薬物抗体(ADA)応答は、例えば、それに対して方向づけられた抗体を発生させうる、組換えタンパク質治療薬の全身投与に対する応答であると一般に理解されている点で、当業者には、用語法の認識可能な区別は明らかである。mRNA治療薬の分野では、本明細書で記載される動物研究において観察される抗体応答は、mRNAベースの薬物自体に対する応答ではない。逆に、抗体応答は、mRNA薬によりコードされるタンパク質生成物に対する応答である。当業者は、このような現象を、抗タンパク質抗体(APA)と称しうるが、薬理学的に類似する効果のために、本出願では、抗薬物抗体(ADA)について当技術分野で認知されている用語法を活用する。
【0005】
注目すべきことに、今や、mRNA構築物への、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞および/または内皮細胞の免疫細胞内で)発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miR)結合部位の組入れが、in vivoにおけるADA応答の劇的な阻害を結果としてもたらすこともまた、発見されている。したがって、本開示は、抗薬物抗体応答を低減または阻害するための方法であって、目的のタンパク質を、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、脾臓細胞、例えば、脾臓の骨髄系細胞、および/または内皮細胞など、末梢リンパ系器官の免疫細胞内で)発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miR)結合部位を含むメッセンジャーRNA(mRNA)によりコードする方法を提示する。例示的な態様では、本開示は、抗薬物抗体応答を低減または阻害するための方法であって、目的のタンパク質を、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むメッセンジャーRNA(mRNA)、例えば、修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)によりコードし、mRNA、例えば、mmRNAが、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、脾臓細胞、例えば、脾臓の骨髄系細胞、および/または内皮細胞など、末梢リンパ系器官の免疫細胞内で)発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miR)結合部位をさらに含む方法を提示する。本開示の方法では、被験体に、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、目的のポリペプチドをコードし、少なくとも1つの免疫細胞発現miRに対する結合部位を含むmRNA、例えば、mmRNAを投与する。例示的な実施形態では、miR結合部位は、免疫細胞内(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞の免疫細胞内)で、夥多に、または優先的に発現するmiRに対するものである。例示的な実施形態では、miR結合部位を、目的のタンパク質をコードするmRNA、例えば、mmRNAの非翻訳領域(UTR)内(例えば、3’UTR内、5’UTR内、または3’UTR内および5’UTR内の両方)に組み入れる。こうして、本開示の方法では、抗薬物抗体応答を、目的のタンパク質のアミノ酸配列を変更する必要性を伴わずに、少なくとも1つのmiR結合部位の組入れによる翻訳の抑圧に由来する、可能な成分を伴うmRNAによる転写後調節を介して低減または阻害する。
【0006】
一実施形態では、免疫細胞内で発現する少なくとも1つのmiRは、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である。別の実施形態では、免疫細胞内で発現する少なくとも1つのmiRは、miR-126-3p結合部位などのmiR-126マイクロRNA結合部位である。したがって、本開示は、被験体における抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)、例えば、修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、mRNA、例えば、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および/または少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。一実施形態では、miR-142-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号3に示される配列を含む。一実施形態では、miR-126結合部位は、miR-126-3p結合部位である。一実施形態では、miR-126-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号26に示される配列を含む。
【0007】
他の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む。本明細書では、番号で言及されるmiRは、同じpre-miRNAの対向するアームに由来する、2つの成熟マイクロRNAの一方(例えば、3pマイクロRNAまたは5pマイクロRNA)を指す場合がある。本明細書では、番号で言及される全てのmiRは、配列1つ当たり3pアームおよび5pアームの両方を含むことを意図する。
【0008】
別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含む。多様な実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、1つ~4つ、1つ、2つ、3つ、または4つのmiR結合部位を含む。これらのmiR結合部位は、miR-142(miR-142-3pおよびmiR-142-5pを含む)、miR-146(miR-146-3pおよびmiR-146-5pを含む)、miR-155、miR-126(miR-126-3pおよびmiR-126-5pを含む)、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、およびこれらの組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに対するものでありうる。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-142-3pに対するものである。多様な実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-142-3p、およびmiR-155、miR-142-3p、およびmiR-146、またはmiR-142-3pおよびmiR-126(例えば、miR-126-3p)に対する結合部位を含む。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-126(例えば、miR-126-3p)に対するものである。多様な実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126、およびmiR-155、miR-126、およびmiR-146、またはmiR-126およびmiR-142に対する結合部位を含む。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-142-3p結合部位およびmiR-126結合部位を含む。
【0009】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。多様な実施形態では、3’UTRは、免疫細胞内で発現する、好ましくは免疫細胞内(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞の免疫細胞内)で、夥多に、または優先的に発現するmiRに対する、1つ~4つ、少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つのマイクロRNA結合部位を含む。他の実施形態では、3’UTRは、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位、または免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、1つのmiR結合部位は、miR-142-3pに対するものである。別の実施形態では、3’UTRは、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位、または免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、1つのmiR結合部位は、miR-126に対するものである。一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3p結合部位および/またはmiR-126結合部位)は、終止コドンの後の、3’UTRの1~100ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3p結合部位および/またはmiR-126結合部位)は、終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)は、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置される。
【0010】
別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、コード領域に対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む。
【0011】
別の実施形態では、化学修飾mRNA、例えば、mmRNAを、全修飾する。他の実施形態では、化学修飾mRNA、例えば、mmRNAは、本明細書でさらに記載される、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む。
【0012】
一部の実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(ψ)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2-チオウリジン(s2U)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、5-メトキシウリジン(mo5U)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、5-メトキシウリジン(mo5U)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2’-O-メチルウリジンを含む。一部の実施形態では、mRNAは、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。
【0013】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、または2’-O-メチルウリジンである。一部の実施形態では、本開示のmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0014】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、またはα-チオアデノシンである。一部の実施形態では、本開示のmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0015】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、リポソームである。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む。一実施形態では、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質は、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである。
【0016】
一実施形態では、目的のポリペプチドは、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である。本明細書では、目的のポリペプチドのさらなる例について記載する。
【0017】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入により投与する。別の実施形態では、注入は、静脈内注入である。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入により、少なくとも4週間にわたり投与する。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、腫瘍内投与する。本明細書では、適する投与量レジメンについてさらに記載する。
【0018】
別の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNA、例えば修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および/または少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法を提示する。
【0019】
別の態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNA、例えば修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の抗薬物抗体のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の抗薬物抗体のレベルが低下したら、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法を提示する。
【0020】
別の態様では、本開示は、被験体における薬物関連毒性を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)、例えば、修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性を低減または阻害するように、mRNA、例えば、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における血球数の減少(血球減少症)である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における自己免疫である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における補体媒介作用である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における造血の減少である。他の実施形態では、薬物関連毒性は、例えば、腎毒性または肝毒性でありうる。
【0021】
加えて、今やさらに、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、脾臓細胞、例えば、脾臓の骨髄系細胞、および/または内皮細胞など、末梢リンパ系器官の免疫細胞内で)発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であって、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位などの結合部位の、mRNAへの組入れが、mRNAが投与される被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化、サイトカインの分泌)を低減または阻害することも発見されている。さらに、この少なくとも1つのmiR結合部位の、mRNAへの組入れが、mRNAが投与される、脂質を含む化合物または組成物の、血中クリアランスの加速化(ABC)を、低減または阻害しうることも発見されている。さらに、この少なくとも1つのmiR結合部位の、mRNAへの組入れは、形質細胞様樹状細胞(pDC)の成長および/もしくは活性化を低減もしくは阻害することも可能であり、かつ/または、B細胞による、mRNAが投与される、脂質を含む化合物または組成物に対するIgMの産生であって、例えば、B細胞による、脂質を含む化合物または組成物のリン脂質成分(例えば、ホスファチジルコリン)に対するIgMの産生など、IgMの産生も低減もしくは阻害しうる。
【0022】
したがって、一態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするRNA、例えば、mRNAを投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するための方法であって、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、脾臓細胞、例えば、脾臓の骨髄系細胞、および/または内皮細胞など、末梢リンパ系器官の免疫細胞内で)発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であり、miR-126マイクロRNA結合部位および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位などの結合部位を含む、目的のポリペプチドをコードするRNA、例えば、mRNA、例えば、化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含む方法を提示する。別の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするRNA、例えば、mRNAを投与された被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するための方法であって、被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、被験体へと、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、脾臓細胞、例えば、脾臓の骨髄系細胞、および/または内皮細胞など、末梢リンパ系器官の免疫細胞内で)発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であり、miR-126マイクロRNA結合部位および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位などの結合部位を含む、目的のポリペプチドをコードするRNA、例えば、mRNA、例えば、化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含む方法を提示する。RNAは、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、化学修飾mRNA(本明細書では、mmRNAと称する)などのmRNAでありうる。mmRNAは、全修飾する(すなわち、mmRNA内の、特定の種類の、全てのヌクレオチドまたはヌクレオ塩基を修飾する)こともでき、部分修飾することもできる(すなわち、mRNA内の、特定の種類の、ヌクレオチドまたはヌクレオ塩基の一部を修飾するか、または修飾ヌクレオ塩基および非修飾ヌクレオ塩基の連なりを含有するキメラmRNAとしうる)。
【0023】
一実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害および/またはサイトカイン産生を、対照RNA、例えば、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であって、miR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位などの結合部位を欠くmRNA、例えば、mmRNAの投与と比較して決定する。一実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも10%減少させる。別の実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも25%減少させる。さらに別の実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも50%減少させる。さらに別の実施形態では、免疫細胞の活性化を、mRNAによりコードされる、目的のポリペプチド(例えば、治療用タンパク質)の発現の、対応する減少を伴わずに減少させる。
【0024】
一実施形態では、免疫細胞の活性化は、リンパ球の活性化である。一実施形態では、リンパ球の活性化は、B細胞の活性化である。一実施形態では、B細胞の活性化を、CD19+CD86+CD69+B細胞の頻度により決定する。別の実施形態では、B細胞の活性化を、例えば、血清中または全脾臓細胞によるサイトカインの分泌により決定する。一実施形態では、B細胞の活性化を、例えば、血清中または全脾臓細胞による、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌により決定する。一実施形態では、B細胞の活性化を、例えば、血清中または全脾臓細胞による、IL-6の分泌により決定する。一実施形態では、サイトカイン産生の低減または阻害を、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生の低減または阻害により決定する。別の実施形態では、サイトカイン産生の低減または阻害を、インターロイキン6(IL-6)の産生の低減または阻害により決定する。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法を提示する。
【0027】
一部の実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。
【0028】
さらなる実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。
【0029】
一部の実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。
【0030】
さらなる実施形態では、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、LNPは、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない。一部の実施形態では、IgM分子は、ポリエチレングリコール(PEG)を認識する。
【0031】
一部の実施形態では、血中クリアランスの加速化の低減または阻害を、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する。さらなる実施形態では、血中クリアランスの加速化を、化学修飾mRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する低下または阻害を伴わずに低減または阻害する。
【0032】
一部の実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、2週間未満である。他の実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、1週間未満である。
【0033】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であって、miR-126(例えば、miR-126-3p)マイクロRNA結合部位、またはmiR-142(例えば、miR-142-3p)マイクロRNA結合部位などの結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つの結合部位(例えば、miR-142-3p結合部位および/またはmiR-126-3p結合部位)は、終止コドンの後の、3’UTRの1~100ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であって、miR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位などの結合部位は、終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位であって、miR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位などの結合部位は、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つの結合部位(例えば、miR-142-3p結合部位および/またはmiR-126-3p結合部位)は、3’UTR内のどこか(例えば、終止コドンの後の、最初の100ヌクレオチド後方)に配置される。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、オープンリーディングフレームに対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む。
【0034】
多様な実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、1つ~4つ、1つ、2つ、3つ、または4つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの少なくとも1つは、miR-126結合部位である。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、この場合、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つは、miR-126結合部位である。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126(例えば、miR-126-3p)結合部位およびmiR-142(例えば、miR-142-3p)結合部位を含む。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも3つのマイクロRNA結合部位を含み、この場合、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つは、miR-126結合部位である。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126結合部位、miR-142(例えば、miR_142-3p)結合部位、ならびにmiR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるmiRに対する、第3のマイクロRNA結合部位を含む。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126結合部位、miR-142(例えば、miR-142-3p)結合部位、およびmiR-155結合部位を含む。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも4つのマイクロRNA結合部位を含む。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、miR-126結合部位、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、およびmiR-155結合部位を含む。本明細書では、番号で言及されるmiRは、同じpre-miRNAの対向するアームに由来する、2つの成熟マイクロRNAの一方(例えば、3pマイクロRNAまたは5pマイクロRNA)を指す場合がある。本明細書では、番号で言及される全てのmiRは、配列1つ当たり3pアームおよび5pアームの両方を含むことを意図する。
【0035】
一実施形態では、miR-126-3p結合部位は、配列番号26に示される配列を含む。
【0036】
一実施形態では、miR-142-3p結合部位は、配列番号3に示される配列を含む。
【0037】
一実施形態では、miR-155結合部位は、配列番号35に示される配列を含む。
【0038】
一部の実施形態では、マイクロRNA結合部位は、骨髄系細胞内で発現するマイクロRNAに結合する。他の実施形態では、マイクロRNA結合部位は、形質細胞様樹状細胞内で発現するマイクロRNAに結合する。さらに他の実施形態では、マイクロRNA結合部位は、マクロファージ内で発現するマイクロRNAに結合する。
【0039】
別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、特定の化学修飾のために全修飾する。本明細書では、適する化学修飾の種類についてさらに記載する。他の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、1もしくは複数の修飾ヌクレオチド、または本明細書でさらに記載されるヌクレオ塩基を含む。
【0040】
一部の実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(ψ)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2-チオウリジン(s2U)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、5-メトキシウリジン(mo5U)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、5-メトキシウリジン(mo5U)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、2’-O-メチルウリジンを含む。一部の実施形態では、mRNAは、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)を含む。一部の実施形態では、mRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。
【0041】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、または2’-O-メチルウリジンである。一部の実施形態では、本開示のmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0042】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、またはα-チオアデノシンである。一部の実施形態では、本開示のmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0043】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、リポソームである。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む。一実施形態では、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質は、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである。
【0044】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、目的のポリペプチドをコードする。多様な実施形態では、目的のポリペプチドは、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である。本明細書では、目的のポリペプチドのさらなる例について記載する。
【0045】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入により投与する。別の実施形態では、注入は、静脈内注入である。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入により、少なくとも4週間にわたり投与する。別の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、腫瘍内投与する。本明細書では、適する投与量レジメンについてさらに記載する。
【0046】
別の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化)および/または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNA、例えば、修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、miR-126マイクロRNA結合部位、および/または少なくとも1つのmiR-142マイクロRNA結合部位など、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化、および/または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法を提示する。
【0047】
別の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を、被験体へと反復投与した後における、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化)、および/または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNA、例えば、修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、miR-126マイクロRNA結合部位、および/または少なくとも1つのmiR-142マイクロRNA結合部位など、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、少なくとも1つの結合部位を含み、
mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の免疫細胞の活性化のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の免疫細胞の活性化のレベルが低下したら、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化、および/または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法を提示する。
【0048】
さらに別の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも2つの異なるマイクロRNA(miR)結合部位を含み、マイクロRNAが、造血系免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する細胞内で発現するmiR結合部位を含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。一部の態様では、造血系免疫細胞は、T細胞、B細胞、またはNK細胞などのリンパ系細胞である。一部の態様では、造血系免疫細胞は、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、樹状細胞、巨核球、または血小板などの骨髄系細胞である。一部の態様では、造血系免疫細胞は、造血前駆細胞である。一部の態様では、TLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する細胞は、内皮細胞である。
【0049】
本開示の一部の態様では、mmRNAは、少なくとも2つの異なるマイクロRNA結合部位を含み、マイクロRNAは、同じ目的の細胞型内または異なる目的の細胞型内で夥多である。一部の態様では マイクロRNAは、複数の目的の細胞型内で夥多である。
【0050】
一部の態様では、本開示は、造血系免疫細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位と、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位とを含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0051】
一部の態様では、本開示は、B細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位と、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位とを含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0052】
一部の態様では、本開示は、形質細胞様樹状細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位と、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位とを含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0053】
本開示の一部の態様では、mmRNAは、第1のマイクロRNA結合部位の複数のコピー(2つ、3つ、4つのコピー)と、第2のマイクロRNA結合部位の少なくとも1つのコピーとを含む。一部の態様では、mmRNAは、第1のマイクロRNA結合部位の2つのコピーと、第2のマイクロRNA結合部位の1つのコピーとを含む。
【0054】
一部の態様では、本開示は、例えば、同じマイクロRNAの3pアームおよび5pアームに対する、マイクロRNA結合部位など、同じマイクロRNAに対する、第1のマイクロRNA結合部位および第2のマイクロRNA結合部位を含むmmRNAを提示する。
【0055】
本開示の一部の態様は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも2つの異なるマイクロRNA(miR)結合部位を含み、マイクロRNAが、miR-126、miR-142、miR-144、miR-146、miR-150、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、およびmiR-26aからなる群から選択され、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。一部の態様では、マイクロRNAは、miR126-3p、miR-142-3p、miR-142-5p、およびmiR-155からなる群から選択される。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、配列番号26に明示されるものなどのmiR-126結合部位である。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、配列番号3に明示されるものなどのmiR-142結合部位である。
【0056】
さらに他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも2つの異なるマイクロRNA(miR)結合部位を含み、1つのマイクロRNA結合部位が、miR-126結合部位であり、第2のマイクロRNA結合部位が、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるマイクロRNAに対するものであり、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0057】
他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、miR-126-3p結合部位と、miR-142-3p結合部位とを含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。一部の態様では mmRNAは、5’UTR内または3’UTR内に、配列番号26に明示される単一のmiR-126-3p結合部位と、配列番号3に明示される単一のmiR-142-3p結合部位とを含む。一部の態様では、mmRNAは、それぞれ、配列番号3および配列番号51に明示されるものなど、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-5p結合部位とを含む。
【0058】
さらに他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも3つの異なるマイクロRNA結合部位を含み、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126結合部位であり、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0059】
一部の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも3つの異なるマイクロRNA結合部位を含み、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-142結合部位であり、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。
【0060】
さらに他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3pと、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるマイクロRNAに対する第3のマイクロRNA結合部位とを含み、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むmmRNAを提示する。一部の態様では、mmRNAは、少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-155結合部位(例えば、配列表に明示される155-5p結合部位)とを含む。一部の態様では、mmRNAは、少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-5p結合部位と、少なくとも1つのmiR-155結合部位とを含む。
【0061】
先行する態様および関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含み、マイクロRNA結合部位を、mmRNAの5’UTR内、3’UTR内、または5’UTR内および3’UTR内の両方に配置したmmRNAを提示する。一部の態様では、マイクロRNA結合部位を、mmRNAの3’UTR内に配置する。一部の態様では、マイクロRNA結合部位を、mmRNAの5’UTR内に配置する。一部の態様では、マイクロRNA結合部位を、mmRNAの5’UTR内および3’UTR内の両方に配置する。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、mmRNAのコード領域の終止コドンと直に隣接する3’UTR内に配置する。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、mmRNAのコード領域の終止コドンの70~80塩基下流の3’UTR内に配置する。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、mmRNAのコード領域の開始コドンに直に先行する5’UTR内に配置する。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、mmRNAのコード領域の開始コドンに15~20ヌクレオチド先行する5’UTR内に配置する。一部の態様では、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、mmRNAのコード領域の開始コドンに70~80ヌクレオチド先行する5’UTR内に配置する。
【0062】
一部の態様では、本開示は、5’UTR内、3’UTR内、またはこれらの両方の中に、互いと直に隣接して位置するか、または5ヌクレオチド未満、5~10、10~15、もしくは15~20ヌクレオチドのスペーサーを伴って位置する、同じマイクロRNA結合部位または異なるマイクロRNA結合部位の複数のコピーを含むmmRNAを提示する。一部の態様では、mmRNAは、3’UTR内に配置される、同じマイクロRNA結合部位の複数のコピーを含み、この場合、第1のマイクロRNA結合部位は、終止コドンと直に隣接して位置し、第2のマイクロRNA結合部位および第3のマイクロRNA結合部位は、第1のマイクロRNA結合部位の30~40塩基下流に位置する。一部の態様では、mmRNAは、3’UTR内に配置される、第1のマイクロRNA結合部位の2つのコピーと、第2のマイクロRNA結合部位の1つのコピーとを含み、この場合、第1のマイクロRNA結合部位の第1のコピーは、終止コドンと直に隣接して位置し、第2のマイクロRNA結合部位は、第1のマイクロRNA結合部位の第1のコピーの30~40塩基下流に位置し、第1のマイクロRNA結合部位の第2のコピーは、第2のマイクロRNA結合部位の30~40塩基下流に位置する。
【0063】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、mmRNAが全修飾された修飾mRNAを提示する。
【0064】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、2-チオウリジン(s2U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メトキシウリジン(mo5U)および5-メチルシチジン(m5C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)、N6-メチルアデノシン(m6A)、またはN6-メチルアデノシン(m6A)および5-メチルシチジン(m5C)を含むmmRNAを提示する。
【0065】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含むmmRNAを提示する。
【0066】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含むmmRNAを提示する。
【0067】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、目的のポリペプチドをコードするmmRNAであって、目的のポリペプチドが、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質であるmmRNAを提示する。
【0068】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、本明細書で記載される修飾mRNAを含む脂質ナノ粒子を提示する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、リポソームを含む。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む。一部の態様では、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質は、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである。
【0069】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、本明細書で記載される、mmRNAまたは脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物を提示する。
【0070】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、それを必要とする被験体における、抗薬物抗体応答の低減もしくは阻害、または薬物関連毒性の阻害における使用のための、本明細書で記載される、mmRNA、脂質ナノ粒子、または医薬組成物を提示する。
【0071】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、それを必要とする被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化の低減もしくは阻害、または望ましくないサイトカインの産生の低減もしくは阻害における使用のための、本明細書で記載される、mmRNA、脂質ナノ粒子、または医薬組成物を提示する。
【0072】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、それを必要とする被験体における、血中クリアランスの加速化の低減または阻害における使用のための、本明細書で記載される、mmRNA、脂質ナノ粒子、または医薬組成物を提示する。
【0073】
前出の態様または関連する態様のうちのいずれかでは、本開示は、それを必要とする被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生の低減または阻害における使用のための、本明細書で記載される、mmRNA、脂質ナノ粒子、または医薬組成物を提示する。
【0074】
本開示の多様な実施形態についての詳細を、下記の記載に明示する。本開示の他の特色、目的、および利点は、記載および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体における抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、前記被験体における、前記目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目2)
前記mmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記mmRNAを、毎週1回の注入により投与する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記mmRNAが、5’UTR、前記目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、(i)前記少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)前記少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)前記少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含む3’UTR、ならびに連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記mmRNAが、コード領域に対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記mmRNAを、全修飾する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記mmRNAが、シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2-チオウリジン(s
2
U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、N6-メチルアデノシン(m
6
A)、またはN6-メチルアデノシン(m
6
A)および5-メチルシチジン(m
5
C)を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記mmRNAが、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記mmRNAが、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メチルシチジン(m
5
C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記目的のポリペプチドが、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
脂質ナノ粒子が、リポソームである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記カチオン性脂質および/またはイオン化脂質が、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記mmRNAが、配列番号3に示される配列を含む、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記mmRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記mmRNAが、miR-142-3p結合部位と、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記mmRNAが、配列番号26に示される配列を含む、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記mmRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126マイクロRNA結合部位である、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記mmRNAが、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
mmRNA構築物が、miR-126結合部位およびmiR-142-3p結合部位を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
mmRNA構築物が、3つのmiR-142-3p結合部位を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
mmRNA構築物が、3つのmiR-126結合部位を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記目的のポリペプチドをコードする、前記コドン最適化オープンリーディングフレームが、終止コドンを含み、前記(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を、前記終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置する、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記目的のポリペプチドをコードする、前記コドン最適化オープンリーディングフレームが、終止コドンを含み、前記(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を、前記終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置する、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を、前記mmRNA構築物の5’UTR内に配置する、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
前記被験体における、前記目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目27)
目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、
(i)前記被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであって、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)前記被験体に由来する試料中の抗薬物抗体のレベルを検出するステップと;
(iii)前記試料中の抗薬物抗体の前記レベルが低下したら、前記被験体における、前記目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目28)
被験体における薬物関連毒性を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、前記被験体における、前記目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性を低減または阻害するように、前記mmRNAが、(i)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位;(ii)少なくとも1つのmiR-126結合部位;または(iii)少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位および少なくとも1つのmiR-126結合部位を含み、前記mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目29)
目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、前記目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、前記被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目30)
望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害を、前記少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害が、リンパ球の活性化の低減または阻害である、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記リンパ球の活性化の低減または阻害が、B細胞の活性化の低減または阻害である、項目31に記載の方法。
(項目33)
B細胞の活性化の低減または阻害を、CD19
+
CD86
+
CD69
+
B細胞の頻度により決定する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害が、サイトカイン産生の低減または阻害を引き起こす、項目29から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
免疫細胞の活性化を、前記化学修飾mRNAによりコードされる、前記目的のポリペプチドの発現の、対応する減少を伴わずに減少させる、項目29から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、前記目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、前記被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目37)
望ましくないサイトカインの産生の低減または阻害を、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、前記少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記サイトカインの産生の低減または阻害が、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生の低減または阻害である、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記サイトカインの産生の低減または阻害が、インターロイキン6(IL-6)の産生の低減または阻害である、項目36に記載の方法。
(項目40)
サイトカインの産生を、前記化学修飾mRNAによりコードされる、前記目的のポリペプチドの発現の、対応する減少を伴わずに減少させる、項目36から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記化学修飾mRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する、項目29から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記化学修飾mRNAを、毎週1回の注入により投与する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記化学修飾mRNAが、5’UTR、前記目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、前記少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、項目29から42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記化学修飾mRNAが、前記オープンリーディングフレームに対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記mRNAを、全修飾する、項目29から44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記mRNAが、シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2-チオウリジン(s
2
U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、N6-メチルアデノシン(m
6
A)、またはN6-メチルアデノシン(m
6
A)および5-メチルシチジン(m
5
C)を含む、項目29から45のいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記mRNAが、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含む、項目29から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記mRNAが、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メチルシチジン(m
5
C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む、項目29から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記マイクロRNA結合部位が、骨髄系細胞内で発現するマイクロRNAに結合する、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記マイクロRNA結合部位が、形質細胞様樹状細胞内で発現するマイクロRNAに結合する、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記マイクロRNA結合部位が、マクロファージ内で発現するマイクロRNAに結合する、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-126マイクロRNA結合部位である、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記miR-126マイクロRNA結合部位が、配列番号26に示される配列を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-142マイクロRNA結合部位である、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記miR-142マイクロRNA結合部位が、配列番号3に示される配列を含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-155マイクロRNA結合部位である、項目29から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記miR-155マイクロRNA結合部位が、配列番号35に示される配列を含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記目的のポリペプチドが、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である、項目29から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記化学修飾mRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含む、項目29から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126マイクロRNA結合部位である、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記化学修飾mRNAが、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記化学修飾mRNAが、miR-126結合部位およびmiR-142結合部位を含む、項目60に記載の方法。
(項目63)
前記脂質ナノ粒子が、リポソームである、項目41に記載の方法。
(項目64)
前記脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む、項目41に記載の方法。
(項目65)
前記カチオン性脂質および/またはイオン化脂質が、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである、項目64に記載の方法。
(項目66)
目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
前記被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目67)
目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の、被験体への反復投与後の前記被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、
(i)前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、
前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)前記被験体に由来する試料中の免疫細胞の活性化のレベルを検出するステップと;
(iii)前記試料中の免疫細胞の活性化の前記レベルが低下したら、前記被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目68)
前記望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害が、B細胞の活性化の低減または阻害である、項目66または67に記載の方法。
(項目69)
前記望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害が、サイトカインの産生の低減または阻害を引き起こす、項目66または67に記載の方法。
(項目70)
脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、前記目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の前記被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目71)
脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、ステップと;
前記被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目72)
脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、前記目的のポリペプチドをコードするmRNAが、B細胞を活性化させず、かつ/または前記LNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない、項目70から71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
血中クリアランスの加速化の低減または阻害を、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、前記少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する、項目70から72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
血中クリアランスの加速化を、前記化学修飾mRNAによりコードされる、前記目的のポリペプチドの発現の、対応する低下または阻害を伴わずに低減または阻害する、項目70から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
2回にわたる連続投与の間の間隔が、2週間未満である、項目70から74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
2回にわたる連続投与の間の間隔が、1週間未満である、項目75に記載の方法。
(項目77)
脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、前記目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の前記被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、方法。
(項目78)
脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、前記被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、前記化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、前記化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
前記被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、前記被験体へと、LNP内に封入された前記化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法。
(項目79)
前記化学修飾mRNAが、5’UTR、前記目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、前記少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、項目70から78のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記化学修飾mRNAが、前記オープンリーディングフレームに対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記mRNAを、全修飾する、項目70から80のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記mRNAが、シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2-チオウリジン(s
2
U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、N6-メチルアデノシン(m
6
A)、またはN6-メチルアデノシン(m
6
A)および5-メチルシチジン(m
5
C)を含む、項目70から81のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記mRNAが、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含む、項目70から82のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
前記mRNAが、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メチルシチジン(m
5
C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む、項目70から83のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
前記マイクロRNA結合部位が、骨髄系細胞内で発現するマイクロRNAに結合する、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目86)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-142マイクロRNA結合部位である、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
前記miR-142マイクロRNA結合部位が、配列番号3に示される配列を含む、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記マイクロRNA結合部位が、形質細胞様樹状細胞内で発現するマイクロRNAに結合する、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-126マイクロRNA結合部位である、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目90)
前記miR-126マイクロRNA結合部位が、配列番号26に示される配列を含む、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記マイクロRNA結合部位が、マクロファージ内で発現するマイクロRNAに結合する、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目92)
前記マイクロRNA結合部位が、miR-155マイクロRNA結合部位である、項目70から84のいずれか一項に記載の方法。
(項目93)
前記miR-155マイクロRNA結合部位が、配列番号35に示される配列を含む、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記目的のポリペプチドが、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である、項目70から93のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
前記化学修飾mRNAが、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含む、項目70から94のいずれか一項に記載の方法。
(項目96)
前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126マイクロRNA結合部位である、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記化学修飾mRNAが、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記化学修飾mRNAが、miR-126結合部位およびmiR-142結合部位を含む、項目96に記載の方法。
(項目99)
前記脂質ナノ粒子が、リポソームである、項目70から98のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記脂質ナノ粒子が、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む、項目70から98のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記カチオン性脂質および/またはイオン化脂質が、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである、項目100に記載の方法。
(項目102)
目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、前記mmRNAが、少なくとも2つの異なるマイクロRNA(miR)結合部位を含み、前記マイクロRNAが、造血系免疫細胞内で、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現し、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する細胞内で発現され、前記mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、mmRNA。
(項目103)
前記造血系免疫細胞が、T細胞、B細胞、またはNK細胞などのリンパ系細胞である、項目102に記載のmmRNA。
(項目104)
前記造血系免疫細胞が、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、樹状細胞、巨核球、または血小板などの骨髄系細胞である、項目102に記載のmmRNA。
(項目105)
前記造血系免疫細胞が、造血前駆細胞である、項目102に記載のmmRNA。
(項目106)
前記TLR7および/もしくはTLR8を発現し、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する細胞が、内皮細胞である、項目102に記載のmmRNA。
(項目107)
前記マイクロRNAが、同じ目的の細胞型内または異なる目的の細胞型内で夥多である、項目102から106のいずれか一項に記載のmmRNA。
(項目108)
前記マイクロRNAが、複数の目的の細胞型内で夥多である、項目102から106のいずれか一項に記載のmmRNA。
(項目109)
前記mmRNAが、造血系免疫細胞内で夥多なマイクロRNAの少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位および、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位を含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目110)
前記mmRNAが、B細胞内で夥多なマイクロRNAの少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位と、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目111)
前記mmRNAが、形質細胞様樹状細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第1のマイクロRNA結合部位と、内皮細胞内で夥多なマイクロRNAの、少なくとも1つの第2のマイクロRNA結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目112)
第1のマイクロRNA結合部位の複数のコピーと、第2のマイクロRNA結合部位の少なくとも1つのコピーとを含む、項目102から111のいずれか一項に記載のmmRNA。
(項目113)
前記第1のマイクロRNA結合部位の2つのコピーを含む、項目112に記載のmmRNA。
(項目114)
同じマイクロRNAの第1のマイクロRNA結合部位および第2のマイクロRNA結合部位を含む、項目102から111のいずれか一項に記載のmmRNA。
(項目115)
前記マイクロRNA結合部位が、同じマイクロRNAの3pアームおよび5pアームのものである、項目114に記載のmmRNA。
(項目116)
前記マイクロRNAが、miR-126、miR-142、miR-144、miR-146、miR-150、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、およびmiR-26aからなる群から選択される、項目102に記載のmmRNA。
(項目117)
前記マイクロRNAが、miR126-3p、miR-142-3p、miR-142-5p、およびmiR-155からなる群から選択される、項目102に記載のmmRNA。
(項目118)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位が、miR-126結合部位である、項目102に記載のmmRNA。
(項目119)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位が、miR-142結合部位である、項目102に記載のmmRNA。
(項目120)
1つのマイクロRNA結合部位が、miR-126結合部位であり、前記第2のマイクロRNA結合部位が、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるマイクロRNAに対するものである、項目102に記載のmmRNA。
(項目121)
少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目122)
少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-5p結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目123)
少なくとも3つの異なるマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-126結合部位である、項目102に記載のmmRNA。
(項目124)
少なくとも3つの異なるマイクロRNA結合部位を含み、前記マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つが、miR-142結合部位である、項目102に記載のmmRNA。
(項目125)
少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3pと、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるマイクロRNAに対する第3のマイクロRNA結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目126)
少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-155結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目127)
少なくとも1つのmiR-126-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-142-5p結合部位と、少なくとも1つのmiR-155結合部位とを含む、項目102に記載のmmRNA。
(項目128)
前記マイクロRNA結合部位を、前記mmRNAの前記5’UTR内、3’UTR内、または前記5’UTR内および3’UTR内の両方に配置した、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目129)
前記マイクロRNA結合部位を、前記mmRNAの前記3’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目130)
前記マイクロRNA結合部位を、前記mmRNAの前記5’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目131)
前記マイクロRNA結合部位を、前記mmRNAの前記5’UTR内および3’UTR内の両方に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目132)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、前記mmRNAのコード領域の終止コドンと直に隣接する前記3’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目133)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、前記mmRNAのコード領域の終止コドンの70~80塩基下流の前記3’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目134)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、前記mmRNAのコード領域の開始コドンに直に先行する前記5’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目135)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、前記mmRNAのコード領域の開始コドンに15~20ヌクレオチド先行する前記5’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目136)
少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、前記mmRNAのコード領域の開始コドンに70~80ヌクレオチド先行する前記5’UTR内に配置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目137)
互いと直に隣接するか、または5ヌクレオチド未満、5~10、10~15、もしくは15~20ヌクレオチドのスペーサーを伴って位置する、同じマイクロRNA結合部位の複数のコピーを含む、項目128に記載のmmRNA。
(項目138)
前記3’UTR内に配置された、同じマイクロRNA結合部位の複数のコピーを含み、前記第1のマイクロRNA結合部位が、終止コドンと直に隣接して位置し、前記第2のマイクロRNA結合部位および第3のマイクロRNA結合部位が、前記第1のマイクロRNA結合部位の30~40塩基下流に位置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目139)
前記3’UTR内に配置された、第1のマイクロRNA結合部位の2つのコピーと、第2のマイクロRNA結合部位の1つのコピーとを含み、前記第1のマイクロRNA結合部位の前記第1のコピーが、終止コドンと直に隣接して位置し、前記第2のマイクロRNA結合部位が、前記第1のマイクロRNA結合部位の前記第1のコピーの30~40塩基下流に位置し、前記第1のマイクロRNA結合部位の前記第2のコピーが、前記第2のマイクロRNA結合部位の30~40塩基下流に位置する、項目128に記載のmmRNA。
(項目140)
前記mmRNAが全修飾された、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目141)
シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2-チオウリジン(s
2
U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)および5-メチルシチジン(m
5
C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m
5
C)、N6-メチルアデノシン(m
6
A)、またはN6-メチルアデノシン(m
6
A)および5-メチルシチジン(m
5
C)を含む、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目142)
シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含む、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目143)
1-メチルシュードウリジン(m
1
ψ)、5-メトキシウリジン(mo
5
U)、5-メチルシチジン(m
5
C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目144)
前記目的のポリペプチドが、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である、先行する項目のいずれかに記載のmmRNA。
(項目145)
先行する項目のいずれかに記載のmmRNAを含む、脂質ナノ粒子。
(項目146)
リポソームを含む、項目145に記載の脂質ナノ粒子。
(項目147)
カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む、項目145に記載の脂質ナノ粒子。
(項目148)
前記カチオン性脂質および/またはイオン化脂質が、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである、項目147に記載の脂質ナノ粒子。
(項目149)
項目102から144のいずれか一項に記載のmmRNA、または項目145から148のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物。
(項目150)
抗薬物抗体応答の低減もしくは阻害、または薬物関連毒性の阻害を必要とする被験体における、抗薬物抗体応答の低減もしくは阻害、または薬物関連毒性の阻害における使用のための、項目102から144のいずれか一項に記載のmmRNA、項目145から148のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、または項目149に記載の医薬組成物。
(項目151)
望ましくない免疫細胞の活性化の低減もしくは阻害、または望ましくないサイトカインの産生の低減もしくは阻害を必要とする被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化の低減もしくは阻害、または望ましくないサイトカインの産生の低減もしくは阻害における使用のための、項目102から144のいずれか一項に記載のmmRNA、項目145から148のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、または項目149に記載の医薬組成物。
(項目152)
血中クリアランスの加速化の低減または阻害を必要とする被験体における、血中クリアランスの加速化の低減または阻害における使用のための、項目102から144のいずれか一項に記載のmmRNA、項目145から148のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、または項目149に記載の医薬組成物。
(項目153)
ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生の低減または阻害を必要とする被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生の低減または阻害における使用のための、項目102から144のいずれか一項に記載のmmRNA、項目145から148のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、または項目149に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】
図1は、表示の用量の、hEPOをコードする(しかし、miR結合部位を欠く)mmRNA、または陽性対照としての組換えhEPOタンパク質で処置されたカニクイザルにおける、ヒトエリスロポエチン(hEPO)タンパク質のレベルであって、表示の処置日における注入の6時間後におけるレベルを示す棒グラフである。
【0076】
【
図2】
図2は、3’UTR内にmiR部位の挿入を伴わないmRNA構築物、および3’UTR内にmiR部位を挿入したmRNA構築物についての概略図である。
【0077】
【
図3】
図3は、PBS、またはhEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位を、構築物の3’UTR内に欠くかもしくは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで処置されたカニクイザルにおける抗hEPO抗体レベルを比較するグラフである。抗薬物抗体(ADA)応答について陽性の動物が指し示される。
【0078】
【
図4】
図4A~Cは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.05mg/kgのmmRNAで処置されたマウスにおけるタンパク質の発現レベル(
図4A)、B細胞の頻度(
図4B)、および活性化B細胞の頻度(
図4C)を示すグラフである。
【0079】
【
図5】
図5A~Bは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kg(
図5A)または1mg/kg(
図5B)のmmRNAの単回投与で処置されたマウスについて、タンパク質の発現レベルを示すグラフである。
【0080】
【
図6】
図6A~Bは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kg(
図6A)または1mg/kg(
図6B)のmmRNAの2回の投与で処置されたマウスについて、タンパク質の発現レベルを示すグラフである。
【0081】
【
図7】
図7は、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、表示の用量(0.2mg/kg、または1mg/kg)のmmRNAの単回投与で処置されたマウスの、B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0082】
【
図8】
図8は、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、表示の用量(0.2mg/kg、または1mg/kg)のmmRNAの単回投与で処置されたマウスの、活性化B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0083】
【
図9】
図9は、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、表示の投与量(0.2mg/kg、または1mg/kg)のmmRNAの2回の投与で処置されたマウスの、B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0084】
【
図10】
図10は、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、表示の投与量(0.2mg/kg、または1mg/kg)のmmRNAの2回の投与で処置されたマウスの、活性化B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0085】
【
図11】
図11A~Bは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kg(
図11A)または1mg/kg(
図11B)のmmRNAの単回投与で処置されたマウスにおけるIL-6レベルを示すグラフである。
【0086】
【
図12】
図12A~Bは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kg(
図12A)または1mg/kg(
図12B)のmmRNAの2回の投与で処置されたマウスにおけるIL-6レベルを示すグラフである。
【0087】
【
図13】
図13A~Cは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAの2回の投与で処置されたマウスにおける、IL-6レベル(
図13A)、TNF-αレベル(
図13B)、およびIFN-γレベル(
図13C)を示すグラフである。
【0088】
【
図14】
図14A~Cは、hEPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、1mg/kgのmmRNAの2回の投与で処置されたマウスにおける、IL-6レベル(
図14A)、TNF-αレベル(
図14B)、およびIFN-γレベル(
図14C)を示すグラフである。
【0089】
【
図15】
図15A~Bは、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、1週間(
図15A)または2週間(
図15B)にわたり処置されたマウスにおける全身の発光により測定される、ルシフェラーゼ(Luc)の発現レベルを示すグラフである。
【0090】
【
図16】
図16は、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスにおける全B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0091】
【
図17】
図17は、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスにおける活性化B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0092】
【
図18A-B】
図18A~Cは、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスにおいて分泌される、IL-6レベル(
図18A)、TNF-αレベル(
図18B)、およびIFN-γレベル(
図18C)を示すグラフである。
【
図18C】
図18A~Cは、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスにおいて分泌される、IL-6レベル(
図18A)、TNF-αレベル(
図18B)、およびIFN-γレベル(
図18C)を示すグラフである。
【0093】
【
図19】
図19A~Bは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、1週間(
図19A)または2週間(
図19B)にわたり処置されたマウスの、血清中のEPOの発現レベルを示すグラフである。
【0094】
【
図20】
図20は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、1週間にわたり処置されたマウスにおける全B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0095】
【
図21】
図21は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、1週間にわたり処置されたマウスにおける活性化B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0096】
【
図22】
図22は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、2週間にわたり処置されたマウスにおける全B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0097】
【
図23】
図23は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、2週間にわたり処置されたマウスにおける活性化B細胞の頻度を示すグラフを提示する。
【0098】
【
図24A】
図24A~Cは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、2週間にわたり処置されたマウスにおいて分泌される、IL-6レベル(
図24A)、TNF-αレベル(
図24B)、およびIFN-γレベル(
図24C)を示すグラフである。
【
図24B】
図24A~Cは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、2週間にわたり処置されたマウスにおいて分泌される、IL-6レベル(
図24A)、TNF-αレベル(
図24B)、およびIFN-γレベル(
図24C)を示すグラフである。
【
図24C】
図24A~Cは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、またはこれらの複数のコピーもしくは組合せを欠くか、または含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、2週間にわたり処置されたマウスにおいて分泌される、IL-6レベル(
図24A)、TNF-αレベル(
図24B)、およびIFN-γレベル(
図24C)を示すグラフである。
【0099】
【
図25】
図25A~Bは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142結合部位、miR-126結合部位またはmiR-142、およびmiR-126結合部位を欠くか、または含有するmmRNAで処置されたマウスにおける脾臓CD19
+B細胞中のCD27
+CD19
+B細胞の百分率(
図25A)およびCD27
+CD19
+B細胞内のCD27の発現レベル(
図25B)を示すグラフである。
【0100】
【
図26】
図26A~Bは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142結合部位、miR-126結合部位またはmiR-142、およびmiR-126結合部位を欠くか、または含有するmmRNAで処置されたマウスにおける脾臓細胞中の全CD11c
+細胞の頻度(
図26A)および活性化樹状細胞(CD11c
+CD70
+CD86
+細胞)の百分率(
図26B)を示すグラフである。
【0101】
【
図27】
図27は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142結合部位、miR-126結合部位またはmiR-142、およびmiR-126結合部位を欠くか、または含有するmmRNAで処置されたマウスから単離された形質細胞様樹状細胞(pDC)の存在下における、ナイーブB細胞の成長レベルを示すグラフを提示する。
【0102】
【
図28A-B】
図28A~Cは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142結合部位、miR-126結合部位またはmiR-142、およびmiR-126結合部位を欠くか、または含有する、2回の投与(
図28A)、3回の投与(
図28B)、または4回の投与(
図28C)のmmRNAで処置されたマウスにおける、血清抗PEG IgM抗体のレベルを示すグラフである。
【
図28C】
図28A~Cは、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142結合部位、miR-126結合部位またはmiR-142、およびmiR-126結合部位を欠くか、または含有する、2回の投与(
図28A)、3回の投与(
図28B)、または4回の投与(
図28C)のmmRNAで処置されたマウスにおける、血清抗PEG IgM抗体のレベルを示すグラフである。
【0103】
【
図29】
図29は、EPOをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、6週間にわたり処置されたマウスの、血清中のEPOの発現レベルを示すグラフを提示する。
【0104】
【
図30】
図30は、LucをコードするmmRNAであって、miR-142-3p結合部位、miR-126結合部位、またはmiR-142-3pおよびmiR-126結合部位の両方を、構築物の3’UTR内に欠くかまたは含有する、0.2mg/kgのmmRNAで、5週間にわたり処置されたマウスの、血清中のルシフェラーゼ(Luc)の発現レベルを示すグラフを提示する。
【0105】
【
図31】
図31A~Dは、7.5ng(
図31A)、15ng(
図31B)、50ng(
図31C)または100ng(
図31D)の用量の、LNP内の、Luc mRNA構築物と、eGFP mRNA構築物との等モル混合物であって、mRNA構築物が、認識可能なmiR部位を含有しない(対照)か、1X miR-122結合部位もしくは3X miR-122結合部位を含有するか、またはeGFP配列およびLuc配列と類似する配列を伴う推定mRNA(対照)を含有する、等モル混合物をトランスフェクトされた初代肝細胞内の、eGFPの発現レベルを示すグラフである。
【0106】
【
図32】
図32A~Dは、7.5ng(
図32A)、15ng(
図32B)、50ng(
図32C)または100ng(
図32D)の用量の、認識可能なmiR部位を含有しない(対照)か、1X miR-122結合部位もしくは3X miR-122結合部位を含有するか、またはカスパーゼ様配列を伴う推定mRNAであって、開始コドンを伴わない推定mRNA(対照)を含有する、カスパーゼmRNA構築物をトランスフェクトされた初代肝細胞の、コンフルエント相パーセント(カスパーゼ媒介毒性の尺度としての)を示すグラフである。
【0107】
【
図33】
図33は、認識可能なmiR部位を含有しない(対照)か、1X miR-142-3p結合部位を含有するか、または3X miR-142-3p結合部位を含有するmRNA構築物を投与されたカニクイザルにおける、hEPOの発現レベルを示すグラフを提示する。
【0108】
【
図34】
図34は、認識可能なmiR部位を含有しない(対照)か、3’UTR内のmiR-142-3p結合部位(1Xまたは3X)、5’UTR内のmiR-142-3p結合部位(P1、P2またはP3に挿入された)、または3’UTR内および5’UTR内の両方におけるmiR-142-3p結合部位を含有するmRNA構築物をトランスフェクトされたRAW264.7細胞内の、eGFPの発現レベルを示す棒グラフを提示する。
【0109】
【
図35】
図35は、認識可能なmiR部位を含有しない(対照)か、3’UTR内のmiR-122結合部位(1Xまたは3X)、5’UTR内のmiR-122結合部位(P1、P2またはP3に挿入された)、または3’UTR内および5’UTR内の両方におけるmiR-122結合部位を含有するmRNA構築物をトランスフェクトされた初代肝細胞内の、hEPOの発現レベルを示す棒グラフを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0110】
タンパク質ベースの治療薬の臨床的使用と関連する1つの課題は、患者の免疫系が治療剤に対する抗体を発生させる、望ましくない抗薬物抗体(ADA)応答の発達である(総説については、例えば、Subramanyam, M.(2006年)、J. Immunotoxicol.、3巻:151~156頁;De Groot, A.S.およびScott, D.W.(2007年)、Trends Immunol.、28巻:482~490頁;Nechansky, A.およびKircheis, R.(2010年)、Expert Opin. Drug. Discov.、5巻:1067~1079頁を参照されたい)。ADA応答の発達は、組換え抗体による生物学的薬剤および抗体以外の生物学的薬剤のいずれについても報告されている(例えば、Brickelmaier, M.ら(1999年)、J. Immunol.、Methods、227巻:121~135頁;Ruf, P.ら(2010年)、Br. J. Clin. Pharmacol.、69巻:617~625頁;Lundkvist, M.ら(2013年)、Mult. Scler.、19巻:757~764頁を参照されたい)。ADA応答は、治療剤の効果に干渉するかまたはこれを中和し、これにより、薬物動態および効能に影響を及ぼしうる。中和抗体(NAB)は一般に、中和しない結合抗体(BAB)より重要であるが、いずれも、臨床的帰結をもたらしうる。
【0111】
さらに、アレルギー反応、補体の活性化、および他の有害事象も、ADAの発達と関連し、これにより、薬物の安全性に影響を及ぼすことが多い。したがって、ADAは、生物学的薬剤を、長期にわたる処置のために使用する能力における重要な因子である。
【0112】
修飾mRNA、例えば、mRNA(mmRNA)の、治療剤としての使用は、タンパク質ベースの治療薬に対する、魅力的な代替法をもたらす。mRNA治療薬は、タンパク質ベースの治療技術を上回る、例えば、コードされるタンパク質特徴に対する忠実度(タンパク質は、身体自身の翻訳装置により産生されるため)、高感度で微調整可能な薬物動態プロファイル(タンパク質発現は、一過性とすることが可能であることから、一部の治療法では、薬物動態および投与を良好に制御するのに好適でありうる)、優れた安全性プロファイル(多様なワクチン臨床試験において明らかにされている)、核への移動を必要としない細胞質内の機能性であって、mRNA投与のほぼ直後において、タンパク質翻訳を結果としてもたらすことから、ゲノムへの組入れの危険性を排するほか、製造の容易さであり、例えば、mRNAを、多様で一般的な、in vitro過程、例えば、生物を必要としない、in vitroにおける転写反応により産生する容易さももたらす機能性を含む、いくつかの利点をもたらす。さらに、mRNAは、例えば、ワクチン適用において、セルフアジュバンティング特性を有するようにデザインすることもでき、例えば、治療適用において、免疫原性の活性化を回避するようにデザインすることもできる。しかし今や、特に、mRNAの投与が、コードされるタンパク質の、免疫細胞内、例えば、脾臓内の発現を、直接的または間接的にもたらす場合に、目的のタンパク質をコードするmRNAの投与はまた、mRNAによりコードされるタンパク質に対する抗薬物抗体応答の発達ももたらしうることが発見されている。しかし、驚くべきことに、免疫細胞内(例えば、末梢リンパ系器官の免疫細胞内および/または脾細胞内)で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miRNA)結合部位の、目的のタンパク質をコードするmRNA(mRNA)への組込みが、mRNAを、被験体に投与する場合における、目的のタンパク質に対する抗薬物抗体応答を低減しうることも裏付けられている。
【0113】
したがって、本開示は、特に、脾臓など、免疫系組織内の転写後調節により、目的のタンパク質に対する抗薬物抗体(ADA)応答を低減または阻害するための方法を提示する。本開示はまた、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miRNA)結合部位の、目的のタンパク質をコードするmRNA(例えば、mmRNA)への組込みにより、被験体における薬物関連毒性を低減する方法も提示する。本開示の方法で使用される好ましいマイクロRNA結合部位は、免疫細胞内(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞の免疫細胞内)で、夥多に、または優先的に発現するmiRに結合するマイクロRNA結合部位である。特に好ましいマイクロRNA結合部位は、miR-142-3pに対するものである。別の特に好ましいマイクロRNA結合部位は、miR-126に対するものである。
【0114】
実施例1で記載される通り、カニクイザルに、ヒトエリスロポエチン(hEPO)をコードするmmRNA構築物を投与するin vivo研究は、動物におけるhEPOレベルが、時間経過にわたり低下するという観察をもたらした。さらに、網状赤血球減少症および骨髄における造血の低減もまた観察された。これらの結果は、動物において抗薬物抗体が発生する可能性を示唆し、これは、血清についてのELISA解析により確認された。いかなる形でも理論に束縛されないが、研究において使用されるmRNA送達系(脂質ナノ粒子であるLNPを使用する)による先行見聞は、mRNAが、主に、肝臓に分布するが、また、脾臓にも分布し、したがって、この分布は、mRNAによりコードされる、制作されるタンパク質に対する免疫の強化をもたらしうることを裏付けた。ここでもまた、理論または機構に束縛されないが、脾臓内でなされる、コードされるタンパク質(血流を介する直接的な送達による、脾臓へのLNP分布に基づき送達されるか、または特化した抗原提示細胞を介して間接的に送達された)の発現は、適切なエピトープ(すなわち、目的のタンパク質に由来する)の、T細胞への提示を介する、T細胞依存性の抗体産生をもたらしうる可能性がある。
【0115】
これに取り組むため、実施例2で記載される通り、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA(miRNA)結合部位(例えば、miR-142-3pに対する、少なくとも1つの結合部位)を含む、さらなるmRNA構築物をデザインした。in vivoにおける、miR含有mRNA構築物の投与は、レシピエント動物におけるADA応答の発達の著明な低減をもたらした。
【0116】
当技術分野におけるタンパク質ベースの治療薬の臨床的使用と関連する別の課題は、治療用タンパク質に対する、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化)の発達であって、免疫媒介性副作用をもたらす発現である。しかし、今や、例えば、目的のタンパク質をコードするmRNAの投与であって、特に、mRNAの投与が、コードされるタンパク質の、免疫細胞、例えば、脾細胞内の発現を直接的にまたは間接的にもたらす場合の投与はまた、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、サイトカインの産生を含む、B細胞の活性化)の発達ももたらしうることが発見されている。しかし、驚くべきことに、末梢リンパ系組織内および/または内皮細胞内で発現するマイクロRNA(miRNA)に対する、少なくとも1つの結合部位、特に、少なくとも1つのmiR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位の、mRNA(mRNA)への組込みが、mRNAを、被験体へと投与した場合における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害しうることも裏付けられている。したがって、本開示は、mRNAベースの治療剤を使用する場合に、望ましくない免疫細胞の活性化を、特に、末梢リンパ系器官または脾臓など、免疫系組織内の転写後調節により、低減または阻害する組成物および方法を提示する。
【0117】
実施例3で記載される実験は、miR-126結合部位もしくはmiR-142(例えば、miR-142-3p)結合部位、または2つの部位の組合せの、目的のタンパク質をコードするmRNA構築物への組込みが、構築物を投与された動物において、miR結合部位を欠く構築物で処置された動物と比較して、活性化B細胞の頻度の低減、ならびにサイトカイン(IL-6、TNF-α、IFN-γ)産生のレベルの低減をもたらすことを裏付けた。miR-126結合部位単独の効果は、miR-142結合部位単独の効果より強力であり、2つの部位を組合せで使用した場合に、最も強い効果が見られた。B細胞の活性化の頻度およびサイトカインの産生は、抗体応答を含む、in vivoにおける、初期の免疫応答の惹起についての指標である。こうして、これらの結果は、miR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れ(単独の、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた)が、レシピエント動物における、コードされるタンパク質に対するADA応答の発達の低減をもたらしうることを指し示す。
【0118】
いかなる形でも理論に束縛されないが、miR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れは、miR-126の発現パターンに基づき、1または複数の可能な機構による免疫細胞の活性化の低減または阻害をもたらしうる。マイクロRNA-126は、形質細胞様樹状細胞(pDC)内で、高度かつ選択的に発現し、これらの細胞の、成熟、生存、およびエフェクター機能を調節することが公知である(Agudo, J.ら(2014年)、Nat. Immunol.、15巻:54~62頁;Cella, M.およびTrinchieri, G.(2014年)、Nat. Immunol.、15巻:8~9頁)。形質細胞様樹状細胞は、末梢血単核細胞のうちの0.1%未満、および全脾臓細胞のうちの0.4~0.6%を占め、活性化すると、樹状細胞へと分化し、インターフェロンを産生し、生得的免疫と後天的免疫との間の連結として用いられるほか、抗原提示においても役割を果たしうる(pDCについての総説には、例えば、Jegalian, A.G.ら(2009年)、Adv. Anat. Pathol.、16巻:392~404頁;Reizis, B.ら(2011年)、Annu. Rev. Immunol.、29巻:163~183頁;Tel, J.ら(2012年)、Cancer Immunol. Immunotherap.、61巻:1279~1288頁を参照されたい)。さらに、pDCはまた、B細胞の活性化および分化の促進、ならびにサイトカイン産生の刺激にも関与する(例えば、Douag, I.ら(2009年)、J. Immunol.、182巻:1991~2001頁;Ding, C.ら(2009年)、J. Immunol.、183巻:7140~7149頁;Gujer, C.ら(2011年)、J. Leukoc. Biol.、89巻:811~821頁を参照されたい)。したがって、miR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れにより観察される、B細胞の活性化頻度の低減、およびサイトカイン産生の低減は、例えば、pDCの抗原提示機能が阻害され、かつ/またはpDCが、外来核酸に対して、有効な応答をもたらすことができず、かつ/またはpDCの成熟および生存が阻害され、これにより、B細胞の活性化の促進の低減、およびサイトカイン産生の低減がもたらされ、次いで、これらの効果の全体的な結果が、in vivoにおける、mRNA構築物によりコードされるタンパク質に対するADA応答の低減となることから生じうる。
【0119】
加えて、miR-126は、内皮細胞内で発現することも公知である(例えば、Fish, J.E.ら(2008年)、Dev. Cell.、15巻:272~284頁;Wang, S.ら(2008年)、Dev. Cell.、15巻:261~271頁を参照されたい)。したがって、miR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れの効果は、内皮細胞内のmiR-126の存在度と関連しうる。こうして、miR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れは、in vivoの内皮細胞内でコードされるタンパク質の発現の低減をもたらしうる結果として、内皮細胞による抗原提示の低減をもたらすことから、B細胞の活性化の頻度およびサイトカインの産生の共時的な低減をもたらす結果として、in vivoにおいてコードされるタンパク質に対するADA応答の低減をもたらす。
【0120】
実施例6で裏付けられる通り、miR-142および/またはmiR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れは、CD11c+樹状細胞の総頻度の低減、ならびにCD11c+脾臓細胞集団内の、活性化樹状細胞(CD11c+CD70+CD86+細胞)の頻度の低減をもたらす。これに対し、miR-142および/またはmiR-126結合部位の、mRNA構築物への組入れは、脾臓CD19+B細胞中の、CD27+CD19+B細胞の頻度にも影響を及ぼさず、CD27+CD19+B細胞集団内のCD27の発現レベルにも影響を及ぼさなかった。さらに、miR結合部位含有構築物で処置されたマウスから単離されたpDCと共にインキュベートしたところ、miR結合部位を欠くmRNA構築物による処置と比較して、ナイーブB細胞の成長も低減された。したがって、この実験のデータは、提起される機構であって、miR結合部位の1つまたは組合せを含む修飾mRNA構築物で処置されたマウスにおける、B細胞の活性化の阻害およびサイトカインの産生の阻害が、pDCの頻度および/または活性化の減少から生じ、これにより、B細胞刺激の減少であり、CD70-CD27間相互作用の減少または樹状細胞によるサイトカイン分泌の低減からも同様に生じる低下をもたらすという機構を裏書きする。
【0121】
脂質ナノ粒子(LNP)など、脂質を含む化合物および組成物の使用であって、治療剤、例えば、修飾mRNAを送達する使用に関しては、2回目および後続の投与時において、薬剤が、血液から急速にクリアランスされる、別個の課題(すなわち、血中クリアランスの加速化(ABC))も存在する。機構は、脂質を含む化合物または組成物(例えば、LNP)の、B細胞、特に、B1a細胞による認識であって、ホスファチジルコリンなどの脂質成分の、CD36および/またはTLRによる認識を介する認識を含む。活性化B1a細胞は、IgM、特に、ABCに寄与しうる(例えば、急性相応答型機構を介して)、天然IgMを分泌する。脂質を含む化合物または組成物(例えば、LNP)のリン脂質成分(例えば、DSPC)はまた、例えば、循環中の血小板も活性化させうる。活性化血小板は、凝集してマクロファージに結合し、これは、後に、炎症性サイトカインを放出し、脾臓へと遊走しうる。脂質を含む化合物または組成物(例えば、LNP)の、脾臓への封鎖は、ほぼ投与の直後に起こる。
【0122】
ABCは、少なくとも部分的に、B細胞、具体的には、B1a細胞により媒介されることが発見されている。これらのB細胞は通常、各々に対するアフィニティーは比較的低度であるが、様々な抗原に結合することが可能なことを意味する、多重反応性である天然IgM抗体の分泌の一因となる。薬剤の第1の用量の実施時に、B1a細胞は、薬剤に結合し、活性化し、これにより、ホスファチジルコリンなどの薬剤に結合する天然IgMを分泌する。次いで、脂質を含む化合物または組成物の、2回目または後続の投与は、循環IgMによりターゲティングされ、急速にクリアランスされる。本明細書でB2細胞またはCD19(+)B細胞と称する、従来のB細胞もまた、ABCに関与している。具体的には、従来のB細胞は、IgM応答を最初に惹起し、続いて、メモリー応答と共時的な、IgG応答を惹起することも可能である。従来のB細胞は、投与された薬剤およびポリエチレングリコール(PEG)に対して反応し、ABCを媒介するIgM(および、最終的に、IgG)に寄与する。この課題に対するかつての解決策は、LNP組成物を投与された被験体における免疫応答を抑制することに焦点を当てていた。特に、共投薬レジメン(例えば、抗ヒスタミン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、コルチコステロイドなど)が、免疫系を抑制するのに使用されている。しかし今や、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(例えば、miR-126、miR-142、miR-155、およびこれらの組合せ)に対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位の、修飾mRNA構築物への組込みが、脂質を含む化合物または修飾mRNAを含む組成物を、被験体へと投与する場合に、ABCを低減または阻害しうることが発見されている。具体的には、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位の、修飾mRNAへの組込みは、形質細胞様樹状細胞の成長および/もしくは活性化を、低減もしくは阻害する場合もあり、かつ/または抗PEG IgMの産生を低減もしくは阻害する場合もあることが発見されている。例えば、実施例7で裏付けられる通り、少なくとも1つのmiR結合部位の、mRNA構築物への組入れは、脂質を含む化合物またはmRNA構築物を含む組成物を投与されたマウスにおいて、血清抗PEG IgM抗体レベルの減少をもたらす。
【0123】
本明細書で記載される、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位の、脂質を含む化合物または組成物により送達される、修飾mRNA構築物への組入れが、ABCの低減または阻害をもたらす、複数の可能な機構が存在する。一実施形態では、miRNA結合部位の作用機構は、構築物内のmiRNA結合部位が、結合部位に結合するマイクロRNA「を吸い上げる」、マイクロRNA「スポンジ」である。このマイクロRNAは、それらを調節するのにそれほど/全く利用可能でなくなるので、これは、特異的マイクロRNAの天然標的に対する調節解除をもたらしうる。この筋書は、マイクロRNAのノックダウン/ノックアウト効果を模倣する。マイクロRNAの天然標的の適正な調節が、細胞が有効な免疫細胞として作用する能力に必要な例では、このマイクロRNAスポンジ型効果は、細胞が免疫応答をもたらすことを不可能とする。また、マイクロRNAによる内因性標的の調節解除が、細胞のホメオスタシス(例えば、カルシウムシグナル伝達)を破壊することから、ストレス応答(例えば、フォールディングされなかったタンパク質の応答)をもたらす可能性もある。代替的に、マイクロRNA結合部位の、mRNAへの組入れが、このmRNAの、特異的なマイクロRNA保有細胞型内の発現を抑制する可能性もある。また、マイクロRNA結合部位の組入れが、TLR7などのセンサーが、それを認識する前に、mRNAの分解をもたらす可能性もある。後者の2つの機構は、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)により媒介される、免疫細胞内で発現するマイクロRNA(miR)に対する、1または複数の結合部位を含むmRNAの切断に依存する。また、これらの機構が、いずれも協同的に作用して、miRにより媒介され、観察される、本明細書で記載される作用をもたらす可能性もある。
【0124】
関与する機構に関わらず、本明細書で記載される、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位の、mRNA構築物への組入れの結果としてもたらされる影響は、脂質を含む化合物または組成物を認識する免疫細胞(例えば、pDC、B細胞(例えば、循環B細胞)、マクロファージ)が、活性化せず、したがって、B細胞(例えば、脾臓B細胞)を活性化させるように、脾臓へと遊走しないことである。加えて、サイトカインの産生(例えば、IL-6)も、低減または阻害され、これにより、さらに免疫細胞の活性化が防止される。B細胞の活性化の低減または阻害は、天然のIgM(例えば、B1a細胞による)、IgM、およびIgGの低減または阻害を結果としてもたらす。これらの分子の産生は、ABCに不可欠であり、したがって、それらの産生の低減または阻害は、ABC全体を低減または阻害する。
【0125】
したがって、本開示は、脂質を含む化合物または組成物であって、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNAを含む化合物または組成物を使用する場合に、ABCを低減または阻害するための方法を提示する。
【0126】
本開示の多様な態様について、下記の小節でさらに記載する。
【0127】
mRNA
本開示は、目的のポリペプチドをコードし、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位)を含む、単離RNA、特に、mRNA、例えば、化学修飾mRNAを提示する。他の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位)を含むが、必ずしも、目的のポリペプチドをコードしないRNA、例えば、化学修飾RNAを提示する。後者のRNAはまた、mRNAの他の典型的な特色(下記に記載するmRNAの特色など)を欠く場合もあるが、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位を含みうる。
【0128】
RNAは、天然のRNAの場合もあり、非自然発生のRNAの場合もあり、例えば、mRNAでありうる。mRNAは、下記で記載される、1または複数の修飾ヌクレオ塩基、修飾ヌクレオシド、または修飾ヌクレオチドを含み、この場合は、「化学修飾mRNA」と称する場合があるが、本明細書ではまた、「修飾mRNA」または「mmRNA」とも称する。本明細書で記載される「ヌクレオシド」とは、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書ではまた、「ヌクレオ塩基」とも称する)と組み合わせた、糖分子(例えば、五炭糖またはリボース)またはその誘導体を含有する化合物と規定される。本明細書で記載される「ヌクレオチド」とは、リン酸基を含むヌクレオシドと規定される。
【0129】
mRNAは、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、および/またはコード領域(例えば、オープンリーディングフレーム)を含みうる。mRNAは、数百(例えば、200、300、400、500、600、700、800、または900)または数千(例えば、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000)の塩基対を含む、任意の適する数の塩基対を含みうる。任意の数(例えば、全て、一部、またはゼロ)のヌクレオ塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドは、カノニカル分子種の類似体の場合もあり、置換されている場合もあり、修飾されている場合もあり、これら以外の形で非自然発生の場合もある。ある特定の実施形態では、特定のヌクレオチド型またはヌクレオ塩基型の全てが修飾されうる。
【0130】
一実施形態では、mRNAは、オープンリーディングフレーム(コード領域)の5’末端に配置される、第1のフランキング領域と、オープンリーディングフレーム(コード領域)の3’末端に配置される、第2のフランキング領域とを含み、この場合、第1のフランキング領域は、5’非翻訳領域(5’UTR)を含み、第2のフランキング領域は、3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。一実施形態では、mRNAの5’UTRと、3’UTRとは、同じ分子種から導出されない。一実施形態では、mRNAの5’UTRおよび/または3’UTRは、ベータ-グロビンから導出されない。一実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAのコード領域に対して異種性である。別の実施形態では、3’非翻訳領域は、mRNAのコード領域に対して異種性である。さらに別の実施形態では、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域は、mRNAのコード領域に対して異種性である。さらに別の実施形態では、mRNAは、少なくとも2つの終止コドンを含む。
【0131】
mRNA構築物における使用に適する5’UTRの配列の非限定的な例を、配列番号53に示す。mRNA構築物における使用に適する3’UTRの配列の非限定的な例を、配列番号30に示す。当技術分野では、mRNA構築物における使用に適する、他の適する5’UTRおよび3’UTRも周知である。
【0132】
例えば、適する5’UTRは、β-グロビン遺伝子(例えば、Karikoら(2008年)、Mol. Therap.、16巻:1833~40頁;US8,278,063、US9,012,219を参照されたい)、α-グロビン遺伝子(例えば、US9,012,219を参照されたい)、ヒトチトクロームb-245αポリペプチド遺伝子(CYBA)(例えば、Feriziら(2015年)、Lab. Chip.、23巻:1456~1464頁を参照されたい)、ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ遺伝子(HSD17B4)(例えば、Thessら(2015年)、Mol. Therap.、23巻:1456~1464頁;WO2015/024667を参照されたい)、TOP遺伝子(例えば、WO2015/101414、WO2015/101415、WO2015/062738、WO2015/024667、WO2015/024667を参照されたい)、リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子(例えば、WO2015/101414、WO2015/101415、WO2015/062738を参照されたい)、およびATP51遺伝子(例えば、WO2015/024667を参照されたい)に由来する5’UTR、ならびにタバコエッチウイルス(TEV)(例えば、Katalinら(2012年)、Mol. Therap.、20巻:948~953頁;US8,278,063、US9,012,219を参照されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)(例えば、Andriesら(2015年)、J. Control Release、217巻:337~344頁を参照されたい)、およびCMV即初期1(IE1)遺伝子(例えば、US20140206753、WO2014/089486、WO2013/185069、WO2014/144196、WO2014/152659、WO2014/152940、WO2014/152774、WO2014/153052を参照されたい)に由来する5’UTRを含む、ウイルス性5’UTRを含む。合成5’UTRについては記載されており、また、使用にも適する(例えば、MandalおよびRossi(2013年)、Nat. Protocol、5巻:68~82頁を参照されたい)。
【0133】
加えて、例えば、適する3’UTRは、β-グロビン遺伝子(例えば、Karikoら(2008年)、Mol. Therap.、16巻:1833~40頁;US8,278,063;US9,012,219;WO2007/036366、US2011/0065103、WO2011/015347、WO2012/072096、WO2013/143555、WO2014/071963を参照されたい)、α-グロビン遺伝子(例えば、US9,012,219;WO2015/101414、WO2015/101415、WO2015024667を参照されたい)、ヒトチトクロームb-245αポリペプチド遺伝子(CYBA)(例えば、Feriziら(2015年)、Lab. Chip.、23巻:1456~1464頁を参照されたい)、アルブミン遺伝子(例えば、Thessら(2015年)、Mol. Therap.、23巻:1456~1464頁を参照されたい)、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子(例えば、US20140206753、WO2013/185069、WO2014/089486、WO2014/144196、WO2014/152659、WO2014152940、WO2014/152774、WO2014/153052を参照されたい)、リボソームrps9タンパク質遺伝子(例えば、WO2015/101414を参照されたい)、FIG4遺伝子(例えば、WO2015/101415を参照されたい)、ヒトアルブミン7遺伝子(例えば、WO2015/101415、WO2015/101414、WO2015/06273、WO2015/024667、WO2105/062737を参照されたい)に由来する3’UTR、ならびにベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)(例えば、Andriesら(2015年)、J. Control Release、217巻:337~344頁を参照されたい)に由来する3’UTRを含む、ウイルス性3’UTRを含む。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるmRNAは、5’キャップ構造、鎖終結ヌクレオチド、Kozak配列(Kozakコンセンサス配列としてもまた公知である)、ステムループ、ポリA配列、および/またはポリアデニル化シグナルを含みうる。他の実施形態では、mRNAは、ポリA配列および/またはポリアデニル化シグナルを欠き、mRNAを安定化させるための代替的な構造を含有する。
【0135】
5’キャップ構造または5’キャップ分子種とは、リンカーにより接続された、2つのヌクレオシド部分を含む化合物であり、自然発生のキャップ、非自然発生のキャップもしくはキャップ類似体、または抗リバースキャップ類似体(ARCA)から選択することができる。キャップ分子種は、1または複数の修飾ヌクレオシドおよび/またはリンカー部分を含みうる。例えば、天然mRNAキャップは、グアニンヌクレオチドと、それらの5’位において三リン酸連結により接続された、7つの位置においてメチル化されたグアニン(G)ヌクレオチド、例えば、一般にm7GpppGと書く、m7G(5’)ppp(5’)Gとを含みうる。キャップ分子種はまた、抗リバースキャップ類似体でもありうる。可能なキャップ分子種の非限定的なリストは、m7GpppG、m7Gpppm7G、m73’dGpppG、m2
7,O3’GpppG、m2
7,O3’GppppG、m2
7,O2’GppppG、m7Gpppm7G、m73’dGpppG、m2
7,O3’GpppG、m2
7,O3’GppppG、およびm2
7,O2’GppppGを含む。多様な実施形態では、mRNAは、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチルグアノシン、2’フルオログアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシン、2-アミノグアノシン、LNAグアノシン、および2-アジドグアノシンからなる群から選択される5’末端キャップを含みうる。一実施形態では、5’末端キャップは、Cap1である。
【0136】
mRNAは、代わりに、または加えて、鎖終結ヌクレオシドを含みうる。例えば、鎖終結ヌクレオシドは、それらの糖基の2’位および/または3’位で脱酸素化されたヌクレオシドを含みうる。このような分子種は、3’-デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’-デオキシウリジン、3’-デオキシシトシン、3’-デオキシグアノシン、3’-デオキシチミン、ならびに2’,3’-ジデオキシアデノシン、2’,3’-ジデオキシウリジン、2’,3’-ジデオキシシトシン、2’,3’-ジデオキシグアノシン、および2’,3’-ジデオキシチミンなどの2’,3’-ジデオキシヌクレオシドを含みうる。一部の実施形態では、例えば、3’末端における、鎖終結ヌクレオチドの、mRNAへの組込みは、例えば、国際特許公開第WO2013/103659号において記載されている、mRNAの安定化を結果としてもたらしうる。
【0137】
mRNAは、代わりに、または加えて、ヒストンステムループなどのステムループを含みうる。ステムループは、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多いヌクレオチド塩基対を含みうる。例えば、ステムループは、4、5、6、7、または8ヌクレオチド塩基対を含みうる。ステムループは、mRNAの任意の領域内に配置されうる。例えば、ステムループは、非翻訳領域(5’非翻訳領域または3’非翻訳領域)内に配置される場合もあり、コード領域内に配置される場合もあり、ポリA配列内またはポリAテール内に配置される場合もあり、これらの前に配置される場合もあり、これらの後に配置される場合もある。一部の実施形態では、ステムループは、翻訳の開始、翻訳の効率、および/または転写の終結など、mRNAの1または複数の機能に影響を及ぼしうる。
【0138】
mRNAは、代わりに、または加えて、ポリA配列および/またはポリアデニル化シグナルを含みうる。ポリA配列は、完全に、またはほぼ、アデニンヌクレオチドまたはその類似体もしくは誘導体から構成されうる。ポリA配列は、mRNAの3’非翻訳領域に隣接して配置されるテールでありうる。一部の実施形態では、ポリA配列は、mRNAの核からの移出、翻訳、および/または安定性に影響を及ぼしうる。
【0139】
一部の実施形態では、mRNAは、第1のコード領域および第2のコード領域を、第1のコード領域と、第2のコード領域との間で内部における翻訳の開始を可能とする、内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む介在配列、または2Aペプチドなどの自己切断ペプチドをコードする介在配列と共に含む、バイシストロニックのmRNAである。IRES配列および2Aペプチドは典型的に、同じベクターからの、複数のタンパク質発現を増強するのに使用される。当技術分野では、様々なIRES配列が公知かつ利用可能であり、例えば、脳心筋炎ウイルスIRESを含むIRES配列を使用することができる。
【0140】
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、自己切断ペプチドをコードする配列を含みうる。自己切断ペプチドは、2Aペプチドでありうるがこれらに限定されない。当技術分野では、様々な2Aペプチドが公知かつ利用可能であり、例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、A型ウマ鼻炎ウイルス2Aペプチド、Thosea asignaウイルス2Aペプチド、および1型ブタテッショウウイルス2Aペプチドを含む2Aペプチドを使用することができる。2Aペプチドは、リボソームスキッピングにより、1つの転写物から、2つのタンパク質を発生させるのに、通常のペプチド結合が、2Aペプチド配列において損なわれる結果として、1つの翻訳事象から、2つの不連続タンパク質が産生されるように、いくつかのウイルスにより使用されている。非限定的な例として、2Aペプチドは、タンパク質配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号4)、その断片または変異体を有しうる。一実施形態では、2Aペプチドは、最後のグリシンと、最後のプロリンとの間で切断する。別の非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、タンパク質配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号4)、その断片または変異体を有する2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含みうる。2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一例は、GGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT(配列番号5)である。例示的な一実施形態では、2Aペプチドは、以下の配列:5’-TCCGGACTCAGATCCGGGGATCTCAAAATTGTCGCTCCTGTCAAACAAACTCTTAACTTTGATTTACTCAAACTGGCTGGGGATGTAGAAAGCAATCCAGGTCCACTC-3’(配列番号6)によりコードされる。2Aペプチドのポリヌクレオチド配列は、本明細書で記載される方法および/または当技術分野で公知の方法により、修飾またはコドン最適化することができる。
【0141】
一実施形態では、この配列を使用して、2つまたはそれよりも多い、目的のポリペプチドのコード領域を分離することができる。非限定的な例として、2Aペプチドをコードする配列は、第1のコード領域Aと、第2のコード領域Bとの間にありうる(A-2Apep-B)。2Aペプチドの存在は、1つの長いタンパク質の、タンパク質A、タンパク質B、および2Aペプチドへの切断を結果としてもたらす。タンパク質Aと、タンパク質Bとは、同じペプチドの場合もあり、異なるペプチドの場合もあり、目的のポリペプチドの場合もある。
【0142】
修飾mRNA
一部の実施形態では、本開示のmRNAは、1または複数の修飾ヌクレオ塩基、修飾ヌクレオシド、または修飾ヌクレオチド(「化学修飾mRNA」と称するが、本明細書ではまた、「修飾mRNA」または「mmRNA」とも称する)を含む。一部の実施形態では、修飾mRNAは、基準の非修飾mRNAと比較した、安定性の増強、細胞内貯留、翻訳の増強、および/または、mRNAが導入される細胞の生得的免疫応答の実質的な誘導の欠如を含む有用な特性を有しうる。したがって、修飾mRNAの使用は、タンパク質産生の効率、核酸の細胞内貯留を増強しうるほか、免疫原性の低減ももたらしうる。
【0143】
一部の実施形態では、mRNAは、1または複数の(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つの)異なる修飾ヌクレオ塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、mRNAは、1または複数の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれよりも多い)異なる修飾ヌクレオ塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、修飾mRNAは、mmRNAが導入される細胞内の分解を、対応する非修飾mRNAと比べて低減している可能性がある。
【0144】
一実施形態では、mRNAは、少なくとも1つのヌクレオシド(またはヌクレオチド)修飾を含む。別の実施形態では、mRNAは、A、G、U、またはCであるリボヌクレオシドの化学構造と比較した、少なくとも1つの修飾を含む。さらに別の実施形態では、mRNAは、
(a)連結ヌクレオシドの第1の領域であって、目的のポリペプチドをコードする第1の領域と;
(b)5’非翻訳領域(5’UTR)と、少なくとも1つの5’末端キャップとを含む、前記第1の領域と比べて5’側に配置される、第1のフランキング領域と;
(c)3’非翻訳領域(3’UTR)と、連結ヌクレオシドの3’テーリング配列とを含む、前記第1の領域と比べて3’側に配置される、第2のフランキング領域であって、
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドを含む第2のフランキング領域と
を含む単離ポリヌクレオチドである。
【0145】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾ウラシルである。修飾ウラシルを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、シュードウリジン(ψ)、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザウリジン、6-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオウリジン(s2U)、4-チオウリジン(s4U)、4-チオシュードウリジン、2-チオシュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン(ho5U)、5-アミノアリルウリジン、5-ハロウリジン(例えば、5-ヨードウリジンまたは5-ブロモウリジン)、3-メチルウリジン(m3U)、5-メトキシウリジン(mo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチルウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチルシュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチルウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチルウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチルウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチルウリジン(mnm5U)、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチルウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルシュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン(τm5U)、1-タウリノメチルシュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオシュードウリジン、5-メチルウリジン(m5U、すなわち、ヌクレオ塩基であるデオキシチミンを有する)、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メチル-2-チオウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオシュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、3-メチルシュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン(m5D)、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン(inm5s2U)、α-チオウリジン、2’-O-メチルウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチルウリジン(m5Um)、2’-O-メチルシュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチルウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチルウリジン(m3Um)、および5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン(inm5Um)、1-チオウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラウリジン、2’-Fウリジン、2’-OH-アラウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)]ウリジンを含む。
【0146】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾シトシンである。修飾シトシンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、5-アザシチジン、6-アザシチジン、シュードイソシチジン、3-メチルシチジン(m3C)、N4-アセチルシチジン(ac4C)、5-ホルミルシチジン(f5C)、N4-メチルシチジン(m4C)、5-メチルシチジン(m5C)、5-ハロシチジン(例えば、5-ヨードシチジン)、5-ヒドロキシメチルシチジン(hm5C)、1-メチルシュードイソシチジン、ピロロシチジン、ピロロシュードイソシチジン、2-チオシチジン(s2C)、2-チオ-5-メチルシチジン、4-チオシュードイソシチジン、4-チオ-1-メチルシュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザシュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザシュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザゼブラリン、5-メチルゼブラリン、5-アザ-2-チオゼブラリン、2-チオゼブラリン、2-メトキシシチジン、2-メトキシ-5-メチルシチジン、4-メトキシシュードイソシチジン、4-メトキシ-1-メチルシュードイソシチジン、リシジン(k2C)、α-チオシチジン、2’-O-メチルシチジン(Cm)、5,2’-O-ジメチルシチジン(m5Cm)、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン(ac4Cm)、N4,2’-O-ジメチルシチジン(m4Cm)、5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン(f5Cm)、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン(m4
2Cm)、1-チオシチジン、2’-F-アラシチジン、2’-F-シチジン、および2’-OH-アラシチジンを含む。
【0147】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾アデニンである。修飾アデニンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、α-チオアデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-ハロプリン(例えば、2-アミノ-6-クロロプリン)、6-ハロプリン(例えば、6-クロロプリン)、2-アミノ-6-メチルプリン、8-アジドアデノシン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン(m1A)、2-メチルアデニン(m2A)、N6-メチルアデノシン(m6A)、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン(ms2m6A)、N6-イソペンテニルアデノシン(i6A)、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン(ms2i6A)、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(io6A)、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(ms2io6A)、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン(g6A)、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン(t6A)、N6-メチルN6-トレオニルカルバモイルアデノシン(m6t6A)、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン(ms2g6A)、N6,N6-ジメチルアデノシン(m6
2A)、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン(hn6A)、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン(ms2hn6A)、N6-アセチルアデノシン(ac6A)、7-メチルアデニン、2-メチルチオアデニン、2-メトキシアデニン、α-チオアデノシン、2’-O-メチルアデノシン(Am)、N6,2’-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン(m6
2Am)、1,2’-O-ジメチルアデノシン(m1Am)、2’-O-リボシルアデノシン(リン酸)(Ar(p))、2-アミノ-N6-メチルプリン、1-チオアデノシン、8-アジドアデノシン、2’-F-アラアデノシン、2’-F-アデノシン、2’-OH-アラアデノシン、およびN6-(19-アミノ-ペンタオキサノンアデシル)-アデノシンを含む。
【0148】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾グアニンである。修飾グアニンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、α-チオグアノシン、イノシン(I)、1-メチルイノシン(m1I)、ワイオシン(imG)、メチルワイオシン(mimG)、4-デメチルワイオシン(imG-14)、イソワイオシン(imG2)、ワイブトシン(yW)、ペルオキシワイブトシン(o2yW)、ヒドロキシワイブトシン(OhyW)、未修飾ヒドロキシワイブトシン(OhyW*)、7-デアザグアノシン、クエオシン(Q)、エポキシクエオシン(oQ)、ガラクトシルクエオシン(galQ)、マンノシルクエオシン(manQ)、7-シアノ-7-デアザグアノシン(preQ0)、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン(preQ1)、アルカエオシン(G+)、7-デアザ-8-アザグアノシン、6-チオグアノシン、6-チオ-7-デアザグアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザグアノシン、7-メチルグアノシン(m7G)、6-チオ-7-メチルグアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシグアノシン、1-メチルグアノシン(m1G)、N2-メチルグアノシン(m2G)、N2,N2-ジメチルグアノシン(m2
2G)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-ジメチルグアノシン(m2,2,7G)、8-オキソグアノシン、7-メチル-8-オキソグアノシン、1-メチル-6-チオグアノシン、N2-メチル-6-チオグアノシン、N2,N2-ジメチル-6-チオグアノシン、α-チオグアノシン、2’-O-メチルグアノシン(Gm)、N2-メチル-2’-O-メチルグアノシン(m2Gm)、N2,N2-ジメチル-2’-O-メチルグアノシン(m2
2Gm)、1-メチル-2’-O-メチルグアノシン(m1Gm)、N2,7-ジメチル-2’-O-メチルグアノシン(m2,7Gm)、2’-O-メチルイノシン(Im)、1,2’-O-ジメチルイノシン(m1Im)、2’-O-リボシルグアノシン(リン酸)(Gr(p))、1-チオグアノシン、O6-メチルグアノシン、2’-F-アラグアノシン、および2’-F-グアノシンを含む。
【0149】
一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0150】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、または2’-O-メチルウリジンである。一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0151】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾シトシンである。修飾シトシンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、N4-アセチルシチジン(ac4C)、5-メチルシチジン(m5C)、5-ハロシチジン(例えば、5-ヨードシチジン)、5-ヒドロキシメチルシチジン(hm5C)、1-メチルシュードイソシチジン、2-チオシチジン(s2C)、2-チオ-5-メチルシチジンを含む。一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0152】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾アデニンである。修飾アデニンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、7-デアザアデニン、1-メチルアデノシン(m1A)、2-メチルアデニン(m2A)、N6-メチルアデノシン(m6A)を含む。一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0153】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、修飾グアニンである。修飾グアニンを有する、例示的なヌクレオ塩基およびヌクレオシドは、イノシン(I)、1-メチルイノシン(m1I)、ワイオシン(imG)、メチルワイオシン(mimG)、7-デアザグアノシン、7-シアノ-7-デアザグアノシン(preQ0)、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン(preQ1)、7-メチルグアノシン(m7G)、1-メチルグアノシン(m1G)、8-オキソグアノシン、7-メチル-8-オキソグアノシンを含む。一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0154】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオ塩基は、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、またはα-チオアデノシンである。一部の実施形態では、本開示のmmRNAは、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの1または複数の組合せ(例えば、前述の修飾ヌクレオ塩基のうちの、2つ、3つ、または4つの組合せ)を含む。
【0155】
一部の実施形態では、mmRNAは、シュードウリジン(ψ)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、2-チオウリジン(s2U)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、5-メトキシウリジン(mo5U)を含む。一部の実施形態では、RNAは、例えば、5-メトキシウリジン(mo5U)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、2’-O-メチルウリジンを含む。一部の実施形態では、mmRNAは、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、N6-メチルアデノシン(m6A)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。
【0156】
ある特定の実施形態では、本開示のmmRNAを、特定の修飾について、一様に修飾する(すなわち、全修飾する、配列全体にわたり修飾する)。例えば、mmRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)または5-メチルシチジン(m5C)で一様に修飾しうるが、これは、mmRNA配列内の、全てのウリジン残基またはシトシン残基を、それぞれ、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)または5-メチルシチジン(m5C)で置きかえることを意味する。同様に、本開示のmmRNAは、配列内に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について、上記で明示した残基などの修飾残基で置きかえることにより、一様に修飾することができる。
【0157】
一部の実施形態では、本開示のmRNAを、コード領域(例えば、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム)内で修飾することができる。他の実施形態では、mRNAを、コード領域以外の領域内で修飾することができる。例えば、一部の実施形態では、それらの一方または両方が、独立に、1または複数の異なるヌクレオシド修飾を含有しうる、5’-UTRおよび/または3’-UTRを提供する。このような実施形態では、ヌクレオシド修飾はまた、コード領域内にも存在しうる。
【0158】
本開示のmmRNA内に存在しうる、ヌクレオシド修飾およびこれらの組合せの例は、PCT特許出願公開第WO2012045075号、同第WO2014081507号、同第WO2014093924号、同第WO2014164253号、および同第WO2014159813号において記載されている、ヌクレオシド修飾およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0159】
本開示のmmRNAは、糖、ヌクレオ塩基、および/またはヌクレオシド間連結に対する修飾の組合せを含みうる。これらの組合せは、本明細書で記載される、任意の1または複数の修飾を含みうる。
【0160】
修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオシドの組合せの例を、下記の表1および表2に提示する。これらの修飾ヌクレオチドの組合せを使用して、本開示のmmRNAを形成することができる。ある特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドで、本開示のmmRNAの天然ヌクレオチドを、部分的に置換することもでき、完全に置換することもできる。非限定的な例として、天然ヌクレオチドであるウリジンを、本明細書で記載される修飾ヌクレオシドで置換することができる。別の非限定的な例では、天然ヌクレオチドであるウリジンを、本明細書で開示される修飾ヌクレオシドのうちの少なくとも1つで、部分的に(例えば、天然ウリジンのうちの、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99.9%)置換することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0161】
本開示に従い、本開示のポリヌクレオチドを、表1または表2の修飾の組合せまたは単一の修飾を含むように合成してもよい。
【0162】
単一の修飾を列挙する場合、列挙されるヌクレオシドまたはヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオシドである、これらのA、U、G、またはCの100パーセントを表す。百分率を列挙する場合、これらの百分率は、存在するA、U、G、またはCの三リン酸の総量のうちの、ヌクレオ塩基である、これらの特定のA、U、G、またはCの三リン酸の百分率を表す。例えば、組合せ:25%の5-アミノアリルCTP+75%のCTP/25%の5-メトキシUTP+75%のUTPは、シトシン三リン酸のうちの25%が、5-アミノアリルCTPであるが、シトシンのうちの75%は、CTPである一方、ウラシルのうちの25%が、5-メトキシUTPであるが、ウラシルのうちの75%は、UTPであるポリヌクレオチドを指す。修飾UTPが列挙されない場合、自然発生のATP、UTP、GTP、および/またはCTPを、ポリヌクレオチド内で見出されるヌクレオチド部位の100%において使用する。この例では、GTPヌクレオチドおよびATPヌクレオチドの全てを、非修飾とする。
【0163】
本開示のmRNAまたはその領域は、最適化されたコドンでありうる。当技術分野では、コドン最適化法が公知であり、様々な目的:適正なフォールディングを確保するように、宿主生物におけるコドン頻度とマッチさせる目的、mRNAの安定性を増大させるかもしくは二次構造を低減するように、GC含量にバイアスをかける目的、遺伝子の構築または発現を損ないうる、タンデムリピートコドンもしくは塩基の連なりを最小化する目的、転写制御領域および翻訳制御領域をカスタマイズする目的、タンパク質のトラフィッキング配列を挿入もしくは除去する目的、コードされるタンパク質内の翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加する目的、タンパク質ドメインを付加、除去、またはシャッフルする目的、制限部位を挿入もしくは欠失させる目的、リボソーム結合部位およびmRNA分解部位を修飾する目的、翻訳速度を調整して、タンパク質の多様なドメインが適正にフォールディングすることを可能とする目的、またはポリヌクレオチド内の問題の二次構造を低減するかもしくは消失させる目的で有用でありうる。当技術分野では、コドン最適化のツール、アルゴリズム、およびサービスが公知であり、非限定的な例は、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park、CA)、および/または特許権のある方法によるサービスを含む。一実施形態では、例えば、哺乳動物細胞内の発現を最適化するか、またはmRNAの安定性を増強するように、最適化アルゴリズムを使用して、mRNA配列を最適化する。
【0164】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド配列のうちのいずれかに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0165】
本開示のmRNAは、当技術分野で利用可能な手段であって、in vitro転写(IVT)および合成法を含むがこれらに限定されない手段により産生することができる。酵素(IVT)法、固相法、液相法、組合せ合成法、小領域合成法、およびライゲーション法を活用することができる。一実施形態では、IVTによる酵素的合成法を使用して、mRNAを制作する。当技術分野では、IVTによりポリヌクレオチドを制作する方法が公知であり、それらの内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、国際出願第PCT/US2013/30062号において記載されている。したがって、本開示はまた、本明細書で記載されるmRNAを、in vitroにおいて転写するのに使用しうる、ポリヌクレオチド、例えば、DNA、構築物、およびベクターも含む。
【0166】
非天然の修飾ヌクレオ塩基は、ポリヌクレオチド、例えば、mRNAへと、合成時に導入することもでき、合成後に導入することもできる。ある特定の実施形態では、修飾は、ヌクレオシド間連結上の場合もあり、プリンまたはピリミジン塩基の場合もあり、糖の場合もある。特定の実施形態では、修飾は、ポリヌクレオチド鎖の末端に導入することもでき、ポリヌクレオチド鎖内の他の場所に導入することもでき、化学合成により導入することもでき、ポリメラーゼ酵素より導入することもできる。修飾核酸およびそれらの合成の例については、PCT出願第PCT/US2012/058519号において開示されている。修飾ポリヌクレオチドの合成についてはまた、VermaおよびEckstein、Annual Review of Biochemistry、76巻、99~134頁(1998年)においても記載されている。
【0167】
酵素的ライゲーション法または化学的ライゲーション法を使用して、ポリヌクレオチドまたはそれらの領域を、ターゲティング剤または送達剤、蛍光標識、液体、ナノ粒子など、異なる機能的部分とコンジュゲートさせることができる。ポリヌクレオチドおよび修飾ポリヌクレオチドのコンジュゲートについては、Goodchild、Bioconjugate Chemistry、1巻(3号)、165~187頁(1990年)において総説されている。
【0168】
免疫細胞内で発現するmiRに対する、マイクロRNA結合部位
マイクロRNA(またはmiRNA)とは、19~25ヌクレオチド長(一般に19~23ヌクレオチド長であり、最も典型的には、22ヌクレオチド長)の非コードRNAであって、核酸分子の3’UTRに結合し、核酸分子の安定性を低減するか、または翻訳を阻害することにより、翻訳後において遺伝子発現を下方調節する非コードRNAである。本開示のmRNAは、1もしくは複数のマイクロRNA標的配列もしくはマイクロRNA標的部位、マイクロRNA結合性配列もしくはマイクロRNA結合部位、マイクロRNA配列と相補的な配列、またはマイクロRNAシード領域もしくはマイクロRNAシード配列と相補的な配列を含みうる。このような配列は、それらの内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国公開第US2005/0261218号および米国公開第US2005/0059005号において教示されている、マイクロRNAなど、任意の公知のマイクロRNAに対応しうる。マイクロRNA配列は、「シード」領域または「シード」配列、すなわち、成熟マイクロRNAの2~8位の領域内の配列であって、miRNAの標的配列に対する、完壁なワトソン-クリック型相補性を有する配列を含む。マイクロRNAのシード領域またはシード配列の塩基は、標的配列と完全な相補性を有する。マイクロRNAは、RNA転写物の領域から酵素的に導出され、自身に折り返されて、pre-miRNA(前駆体miRNA)と称することが多い短鎖ヘアピン構造を形成する。pre-miRNAは典型的に、その3’末端において、2ヌクレオチドの突出を有し、3’ヒドロキシル基および5’リン酸基を有する。この前駆体mRNAは、核内でプロセシングされ、その後、細胞質へと輸送され、そこで、DICER(RNアーゼIII酵素)によりさらにプロセシングされ、約22ヌクレオチドの成熟マイクロRNAを形成する。次いで、成熟マイクロRNAは、リボ核粒子へと組み込まれて、遺伝子サイレンシングを媒介するRNA誘導性サイレンシング複合体である、RISCを形成する。当技術分野で認識されている、成熟miRNAのための命名法は典型的に、成熟miRNAが導出されるpre-miRNAアームを指示するものであり、「5p」とは、マイクロRNAが、pre-miRNAヘアピンの5プライムアームに由来することを意味し、「3p」とは、マイクロRNAが、pre-miRNAヘアピンの3プライム末端に由来することを意味する。本明細書では、番号で言及されるmiRは、同じpre-miRNAの対向するアームに由来する、2つの成熟マイクロRNAの一方(例えば、3pマイクロRNAまたは5pマイクロRNA)を指す場合がある。本明細書で言及される全てのmiRは、3pまたは5pの呼称により特に、指定されない限り、配列ごとに、3pアームおよび5pアームの両方を含むことを意図する。
【0169】
一部の実施形態では、本開示のmRNAは、1または複数のマイクロRNA(miRNA)結合部位を含みうる。本明細書で使用される「マイクロRNA(miRNA)結合部位」という用語は、miRNAと相互作用するか、会合するか、またはこれに結合するように、miRNAの全てまたは領域に対する十分な相補性を有するポリヌクレオチド内、例えば、DNA内またはRNA転写物内の配列を指す。例示的な実施形態では、miRNA結合部位を、mRNA内、例えば、mRNAの5’UTR内および/または3’UTR内に組み入れる。miRに対して十分な相補性を有するmiR結合部位の配列とは、miRにより媒介されるmRNAの調節、例えば、miRにより媒介される、mRNAの翻訳の抑圧または分解を容易とするのに十分な相補性の程度を指す。本開示の例示的な態様では、miRに対して十分な相補性を有するmiR結合部位の配列とは、miRにより媒介されるmRNAの分解、例えば、miRによりガイドされる、mRNAのRISC媒介切断を容易とするのに十分な相補性の程度を指す。miR結合部位は、例えば、19~25ヌクレオチド長のmiR配列、19~23ヌクレオチド長のmiR、最も典型的には、22ヌクレオチド長のmiR配列に対する相補性を有しうる。miR結合部位は、miRの一部だけ、例えば、自然発生のmiRより1、2、3、または4ヌクレオチド短い一部に相補的でありうる。所望の調節が、mRNAの分解である場合は、十全または完全な相補性(例えば、自然発生のmiRの全てまたは著明な部分にわたり、十全に相補的であるかまたは完全に相補的であること)が好ましい。一部の実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と相補性(例えば、部分的または完全な相補性)を有する配列を含む。特定の実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と完全な相補性を有する配列を含む。一部の実施形態では、miRNA結合部位は、miRNA配列と相補性(例えば、部分的または完全な相補性)を有する配列を含む。特定の実施形態では、miRNA結合部位は、miRNA配列と完全な相補性を有する配列を含む。一部の実施形態では、miRNA結合部位は、1、2、または3ヌクレオチドの置換、末端の付加、および/またはトランケーションを除き、miRNA配列と完全な相補性を有する。
【0170】
1または複数のmiR結合性配列を、様々な異なる目的のうちの1または複数のために、本開示のmRNA内に組み込むことができる。例えば、1または複数のmiRNA結合部位の、本開示のmRNAへの組込みは、問題のmiRNAが、ターゲティング可能である(例えば、標的細胞内または標的組織内で発現する)という条件で、分子を、分解または翻訳の低減のためにターゲティングしうる。一部の実施形態では、1または複数のmiRNA結合部位の、本開示のmRNAへの組込みは、核酸分子の送達時における、オフ標的作用の危険性を低減する場合もあり、かつ/またはmRNAによりコードされるポリペプチドの発現の組織特異的調節を可能とする場合もある。さらに他の実施形態では、1または複数のmiRNA結合部位の、本開示のmRNAへの組込みは、in vivoの核酸送達時における免疫応答をモジュレートしうる。さらなる実施形態では、1または複数のmiRNA結合部位の、本開示のmRNAへの組込みは、本明細書で記載される、脂質を含む化合物および組成物の、血中クリアランスの加速化(ABC)もモジュレートしうる。
【0171】
代表的なmiRNAは、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞など、造血系の免疫細胞、ならびに内皮細胞および血小板など、TLR7/TLR8を発現させることが公知であり、かつ/またはサイトカインを分泌することが可能な細胞内の発現および存在度に基づき選択した。したがって、対応するmiR部位の、mRNAへの組込みが、特異的細胞型内の、mRNAの不安定化および/またはこれらのmRNAの翻訳の抑制をもたらしうるように、miRNAのセットは、これらの細胞の免疫原性の部分的な一因となりうるmiRを含んだ。非限定的な代表例は、造血細胞の多くに特異的な、miR-142、miR-144、miR-150、miR-155、およびmiR-223;B細胞内で発現する、miR-142、miR150、miR-16、およびmiR-223;造血前駆細胞内で発現する、miR-223、miR-451、miR-26a、miR-16;ならびに形質細胞様樹状細胞内、血小板内、および内皮細胞内で発現する、miR-126を含む。組織によるmiRの発現のさらなる議論については、例えば、Teruel-Montoya, R.ら(2014年)、PLoS One、9巻:e102259頁;Landgraf, P.ら(2007年)、Cell、129巻:1401~1414頁;Bissels, U.ら(2009年)、RNA、15巻:2375~2384頁を参照されたい。証拠立てられる通り、任意の1つのmiR部位の、3’UTR内および/または5’UTR内への組込みは、目的の複数の細胞型内で、このような効果を媒介しうる(例えば、miR-142は、B細胞内および樹状細胞内のいずれでも夥多である)。
【0172】
複数のmiRを伴う同じ細胞型をターゲティングし、3pアームおよび5pアームの各々に対する結合部位を組み込むことは、これらのいずれもが夥多である(例えば、造血幹細胞内では、miR-142-3pおよびmiR142-5pのいずれも夥多である)場合、有益である。こうして、例えば、ある特定の実施形態では、mRNA構築物は、2つまたはそれよりも多い(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多い)miR結合部位であって、(i)miR-142、miR-144、miR-150、miR-155およびmiR-223(多くの造血細胞内で発現する)からなる群;または(ii)miR-142、miR150、miR-16およびmiR-223(B細胞内で発現する)からなる群;またはmiR-223、miR-451、miR-26a、miR-16(造血前駆細胞内で発現する)からなる群に由来するmiR結合部位を含有する。
【0173】
また、複数の、目的の細胞型を、同時にターゲティングするように、多様なmiRを組み合わせる(例えば、造血系の多くの細胞および内皮細胞をターゲティングするように、miR-142とmiR-126とを組み合わせる)ことも有益である。こうして、例えば、ある特定の実施形態では、mRNA構築物は、2つまたはそれよりも多い(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多い)miR結合部位であって、(i)miRのうちの少なくとも1つが、造血系の細胞(例えば、miR-142、miR-144、miR-150、miR-155、またはmiR-223)をターゲティングし、miRのうちの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板、または内皮細胞(例えば、miR-126)をターゲティングするか;または(ii)miRのうちの少なくとも1つが、B細胞(例えば、miR-142、miR150、miR-16、またはmiR-223)をターゲティングし、miRのうちの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板、または内皮細胞(例えば、miR-126)をターゲティングするか;または(iii)miRのうちの少なくとも1つが、造血前駆細胞(例えば、miR-223、miR-451、miR-26a、またはmiR-16)をターゲティングし、miRのうちの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板、または内皮細胞(例えば、miR-126)をターゲティングするか;または(iv)miRのうちの少なくとも1つが、造血系の細胞(例えば、miR-142、miR-144、miR-150、miR-155、またはmiR-223)をターゲティングし、miRのうちの少なくとも1つが、B細胞(例えば、miR-142、miR150、miR-16、またはmiR-223)をターゲティングし、miRのうちの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板、もしくは内皮細胞(例えば、miR-126)をターゲティングするmiR結合部位;あるいはmiR結合部位の前出の4つのクラス(すなわち、造血系をターゲティングするmiR結合部位、B細胞をターゲティングするmiR結合部位、造血前駆細胞をターゲティングするmiR結合部位、および/または形質細胞様樹状細胞/血小板/内皮細胞をターゲティングするmiR結合部位)の、他の任意の可能な組合せを含有する。
【0174】
したがって、一実施形態では、免疫応答をモジュレートするように、mRNAは、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞および/または内皮細胞の免疫細胞内で)発現する、1または複数のmiRに結合する、1または複数のmiR結合性配列を含みうる。今や、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞および/または内皮細胞の免疫細胞内で)発現する、1または複数のmiRの、mRNAへの組込みは、免疫細胞の活性化(例えば、活性化B細胞の頻度により測定される、B細胞の活性化)、および/またはサイトカインの産生(例えば、IL-6、IFN-γおよび/またはTNFαの産生)を低減または阻害することが発見されている。今やさらに、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞および/または内皮細胞の免疫細胞内で)発現する、1または複数のmiRの、mRNAへの組込みは、mRNAによりコードされる目的のタンパク質に対する、抗薬物抗体(ADA)応答を低減または阻害しうることも発見されている。
【0175】
別の実施形態では、脂質を含む化合物または組成物に送達されるmRNAの、血中クリアランスの加速化をモジュレートするように、mRNAは、従来の免疫細胞内、またはTLR7および/もしくはTLR8を発現させ、炎症促進性のサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌する任意の細胞内で(例えば、末梢リンパ系器官および/または脾細胞および/または内皮細胞の免疫細胞内で)発現する、1または複数のmiRに結合する、1または複数のmiR結合性配列を含みうる。今や、mRNAへの、1または複数のmiR結合部位の組込みは、脂質を含む化合物または組成物であって、mRNAの送達における使用のための化合物または組成物の、血中クリアランスの加速化(ABC)を低減または阻害することが発見されている。今やさらに、1または複数のmiR結合部位の、mRNAへの組込みは、抗PEG抗IgMの血清レベルを低減し(例えば、B細胞による、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgMの急速な産生を低減または阻害し)、かつ/または、脂質を含む化合物または組成物であって、mRNAを含む化合物または組成物の投与後における、形質細胞様樹状細胞の成長および/もしくは活性化を低減もしくは阻害することも発見されている。
【0176】
このようなmiR配列は、任意の公知の、免疫細胞内で発現するマイクロRNAであって、それらの内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国公開第US2005/0261218号および米国公開第US2005/0059005号において教示されているマイクロRNAを含むがこれらに限定されないマイクロRNAに対応しうる。免疫細胞内で発現するmiRの非限定的な例は、脾臓細胞内、骨髄系細胞内、樹状細胞内、形質細胞様樹状細胞内、B細胞内、T細胞内、および/またはマクロファージ内で発現するmiRを含む。例えば、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27は、骨髄系細胞内で発現し、miR-155は、樹状細胞内、B細胞内、およびT細胞内で発現し、miR-146は、TLRにより刺激されると、マクロファージ内で上方調節され、miR-126は、形質細胞様樹状細胞内で発現する。ある特定の実施形態では、miRは、免疫細胞内で、夥多に、または優先的に発現する。例えば、miR-142(miR-142-3pおよび/またはmiR-142-5p)、miR-126(miR-126-3pおよび/またはmiR-126-5p)、miR-146(miR-146-3pおよび/またはmiR-146-5p)、およびmiR-155(miR-155-3pおよび/またはmiR155-5p)は、免疫細胞内で、夥多に発現する。当技術分野では、これらのマイクロRNA配列が公知であるので、当業者は、これらのマイクロRNAが、ワトソン-クリック型相補性に基づき結合する結合性配列または標的配列をたやすくデザインすることができる。
【0177】
したがって、多様な実施形態では、mRNAは、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択されるmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含む。多様な実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、1つ~4つ、1つ、2つ、3つ、または4つのmiR結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、3つのmiR結合部位を含む。これらのmiR結合部位は、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、およびこれらの組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに対するものでありうる。一実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現する、同じmiR結合部位の、2つまたはそれよりも多い(例えば、2つ、3つ、4つの)コピー、例えば、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27からなるmiRの群から選択されるmiR結合部位の、2つまたはそれよりも多いコピーを含む。
【0178】
例えば、一実施形態では、mRNAは、同じmiR結合部位の3つのコピーを含む。実施例8で記載する通り、ある特定の実施形態では、同じmiR結合部位の3つのコピーの使用は、単一のmiR結合部位の使用と比較して、有益な特性を呈示しうる。3つのmiR結合部位を含有する3’UTRの配列の非限定的な例を、配列番号38(3つのmiR-142-3p結合部位)、配列番号40(3つのmiR-142-5p結合部位)、および配列番号54(3つのmiR-122結合部位)に示す。
【0179】
別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現する、少なくとも2つの異なるmiR結合部位の、2つまたはそれよりも多い(例えば、2つ、3つ、4つの)コピーを含む。2つまたはそれよりも多い、異なるmiR結合部位を含有する3’UTRの配列の非限定的な例を、配列番号33(1つのmiR-142-3p結合部位、および1つのmiR-126-3p結合部位)、配列番号47(1つのmiR-142-3p結合部位、および1つのmiR-122-5p結合部位)、配列番号41(2つのmiR-142-5p結合部位、および1つのmiR-142-3p結合部位)、および配列番号44(2つのmiR-155-5p結合部位、および1つのmiR-142-3p結合部位)に示す。
【0180】
別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-142-3pに対するものである。多様な実施形態では、mRNAは、miR-142-3pおよびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)、miR-142-3pおよびmiR-146(miR-146-3またはmiR-146-5p)、またはmiR-142-3pおよびmiR-126(miR-126-3pまたはmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0181】
別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-126-3pに対するものである。多様な実施形態では、mRNAは、miR-126-3pおよびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)、miR-126-3pおよびmiR-146(miR-146-3pまたはmiR-146-5p)、またはmiR-126-3pおよびmiR-142(miR-142-3pまたはmiR-142-5p)に対する結合部位を含む。
【0182】
別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-142-5pに対するものである。多様な実施形態では、mRNAは、miR-142-5pおよびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)、miR-142-5pおよびmiR-146(miR-146-3またはmiR-146-5p)、またはmiR-142-5pおよびmiR-126(miR-126-3pまたはmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0183】
さらに別の実施形態では、mRNAは、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも2つのmiR結合部位を含み、この場合、miR結合部位のうちの1つは、miR-155-5pに対するものである。多様な実施形態では、mRNAは、miR-155-5pおよびmiR-142(miR-142-3pまたはmiR-142-5p)、miR-155-5pおよびmiR-146(miR-146-3またはmiR-146-5p)、またはmiR-155-5pおよびmiR-126(miR-126-3pまたはmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0184】
例示的な実施形態では、1または複数のmiR結合部位は、mRNAが、所望の特性を有するように、3’UTR内に位置し、5’UTR内に位置し、3’UTR内および5’UTR内のいずれにも位置する。miR結合部位は、mRNA構築物内のコード領域の終止コドンの直後(または構築物内に、終止コドンの複数のコピーが存在する場合、最後の終止コドンの直後)の3’UTR内に位置する場合もあり、miR結合部位は、終止コドンのさらに下流に位置する場合もあるが、この場合、終止コドンとmiR結合部位との間には、3’UTR塩基が存在する。例えば、3’UTR内の、miRのための、可能な挿入部位の、3つの非限定的な例を、配列番号48、49、および50に示すが、これは、miR-142-3p部位を、それぞれ、3’UTR内の、3つの異なる可能な挿入部位のうちの1つの中に挿入した3’UTR配列を示す。さらに、1または複数のmiR結合部位は、5’UTR内の、1または複数の可能な挿入部位に位置しうる。例えば、5’UTR内の、miRのための、可能な挿入部位の、3つの非限定的な例を、さらに実施例9に記載し、配列番号55、56、および57に示すが、これは、miR-142-3p部位を、それぞれ、5’UTR内の、3つの異なる可能な挿入部位のうちの1つの中に挿入した5’UTR配列を示す。加えて、配列番号58、59、および60は、miR-122部位を、それぞれ、5’UTR内の、3つの異なる可能な挿入部位のうちの1つの中に挿入した5’UTR配列も示す。
【0185】
一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドンの後の、3’UTRの1~100ヌクレオチドの中に配置される。一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置される。他の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドンの直後の3’UTR内、または終止コドンの後の、3’UTRの15~20ヌクレオチドの中、または終止コドンの後の、3’UTRの70~80ヌクレオチドの中に配置される。他の実施形態では、3’UTRは、1つを超えるmiR結合部位(例えば、2つ~4つのmiR結合部位)を含み、この場合、各miR結合部位の間には、スペーサー領域(例えば、10~100、20~70、または30~50ヌクレオチドの長さの)が存在しうる。別の実施形態では、3’UTRは、miR結合部位の末端と、ポリAテールのヌクレオチドとの間のスペーサー領域を含む。例えば、10~100、20~70または30~50ヌクレオチドの長さのスペーサー領域は、miR結合部位の末端と、ポリAテールの始端との間にありうる。
【0186】
一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドンの前の(上流の)、5’UTRの1~100ヌクレオチドの中に配置される。一実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドンの前の(上流の)、5’UTRの10~50ヌクレオチドの中に配置される。別の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドンの前の(上流の)、5’UTRの少なくとも25ヌクレオチドの中に配置される。他の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドンの直前の5’UTR内、または開始コドンの前の、5’UTRの15~20ヌクレオチドの中、または開始コドンの前の、5’UTRの70~80ヌクレオチドの中に配置される。他の実施形態では、5’UTRは、1つを超えるmiR結合部位(例えば、2つ~4つのmiR結合部位)を含み、この場合、各miR結合部位の間には、スペーサー領域(例えば、10~100、20~70、または30~50ヌクレオチドの長さの)が存在しうる。
【0187】
一実施形態では、3’UTRは、1つを超える終止コドンを含み、この場合、少なくとも1つのmiR結合部位は、終止コドンの下流に位置する。例えば、3’UTRは、1つ、2つ、または3つの終止コドンを含みうる。使用しうる三重終止コドンの非限定的な例は、UGAUAAUAG、UGAUAGUAA、UAAUGAUAG、UGAUAAUAA、UGAUAGUAG、UAAUGAUGA、UAAUAGUAG、UGAUGAUGA、UAAUAAUAAおよびUAGUAGUAGを含む。3’UTR内には、例えば、1つ、2つ、3つ、または4つのmiR結合部位、例えば、miR-142-3p結合部位は、終止コドンと直に隣接して位置する場合もあり、最後の終止コドンの任意の数のヌクレオチド下流に位置する場合もある。3’UTRが、複数のmiR結合部位を含む場合、これらの結合部位が、構築物内で互いと直接隣り合わせで(すなわち、順々に)位置する場合もあり、代替的に、スペーサーヌクレオチドが、各結合部位の間に位置する場合もある。
【0188】
一実施形態では、3’UTRは、単一のmiR-142-3p結合部位が、第3の終止コドンの下流に配置される、3つの終止コドンを含む。3つの終止コドンと、最後の終止コドンの下流の、異なる位置に配置される単一のmiR-142-3p結合部位とを有する、3’UTRの配列の非限定的な例を、配列番号31および48~50に示す。
【0189】
一実施形態では、mmRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。多様な実施形態では、3’UTRは、免疫細胞内で発現する、好ましくは免疫細胞内で、夥多に、または優先的に発現するmiRに対する、1つ~4つ、少なくとも2つ、1つ、2つ、3つ、または4つのマイクロRNA結合部位を含む。
【0190】
一実施形態では、免疫細胞内で発現する少なくとも1つのmiRは、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である。一実施形態では、miR-142-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号3に示される配列を含む。一実施形態では、miR-142-3pマイクロRNA結合部位を含むmRNAの3’UTRは、配列番号2に示される配列を含む。
【0191】
一実施形態では、免疫細胞内で発現する少なくとも1つのmiRは、miR-126マイクロRNA結合部位である。一実施形態では、miR-126結合部位は、miR-126-3p結合部位である。一実施形態では、miR-126-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号26に示される配列を含む。一実施形態では、miR-126-3pマイクロRNA結合部位を含むmmRNAの3’UTRは、配列番号27に示される配列を含む。
【0192】
本開示のマイクロRNA結合部位が結合しうるmiRの、非限定的な例示的配列は、以下:miR-142-3p(配列番号8)、miR-142-5p(配列番号9)、miR-146-3p(配列番号10)、miR-146-5p(配列番号11)、miR-155-3p(配列番号12)、miR-155-5p(配列番号13)、miR-126-3p(配列番号14)、miR-126-5p(配列番号15)、miR-16-3p(配列番号16)、miR-16-5p(配列番号17)、miR-21-3p(配列番号18)、miR-21-5p(配列番号19)、miR-223-3p(配列番号20)、miR-223-5p(配列番号21)、miR-24-3p(配列番号22)、miR-24-5p(配列番号23)、miR-27-3p(配列番号24)、およびmiR-27-5p(配列番号25)を含む。当技術分野では、免疫細胞内で発現する(例えば、免疫細胞内で、夥多に、または優先的に発現する)、他の適するmiR配列が公知であり、例えば、University of ManchesterによるマイクロRNAデータベースである、miRBaseにおいて利用可能である。前述のmiRのうちのいずれかに結合する部位は、miRに対する、ワトソン-クリック型相補性、典型的に、miRに対する、100%の相補性に基づきデザインし、本明細書で記載される、本開示のmRNA構築物へと挿入することができる。
【0193】
さらに他の実施形態では、miRNA結合部位の、ポリペプチドをコードするmRNAへの組込みにより、本開示のポリペプチドの治療ウィンドウおよび/または示差的発現(例えば、組織特異的発現)を変更することができる。マイクロRNAが、mRNAを調節し、これにより、タンパク質の発現を調節することが公知である組織の例は、肝臓(例えば、miR-122)、筋肉(例えば、miR-133、miR-206、およびmiR-208)、内皮細胞(例えば、miR-17~92およびmiR-126)、骨髄系細胞(例えば、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27)、脂肪組織(例えば、let-7およびmiR-30c)、心臓(例えば、miR-1dおよびmiR-149)、腎臓(例えば、miR-192、miR-194、およびmiR-204)、および肺上皮細胞(例えば、let-7、miR-133、およびmiR-126)を含むがこれらに限定されない。したがって、多様な実施形態では、mRNAは、単独または組合せの、前述のmiRのうちのいずれかに対する、1または複数の結合部位を含み、これにより、コードされる目的のタンパク質の、組織における発現をモジュレートしうる。
【0194】
例えば、mRNAは、別の組織型内と比較して、1つの組織型内の発現が高度なmiRNAが結合する、1または複数のmiRNA結合部位を含みうる。別の例では、mRNAは、由来する組織が同じ非がん性細胞内と比較して、がん細胞内の発現が低度なmiRNAが結合する、1または複数のmiRNA結合部位を含みうる。低レベルの、このようなmiRNAを発現させるがん細胞内に存在する場合、mRNAによりコードされるポリペプチドは、発現の増大を示すことが典型的であろう。ポリペプチドが、アポトーシスを誘導することが可能である場合、これは、正常細胞と比較した、がん細胞の優先的な細胞殺滅を結果としてもたらしうる。
【0195】
例えば、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)は、正常肝細胞と比較して、低レベルのmiR-122を発現させることが典型的である。したがって、ポリペプチドをコードするmRNAであって、少なくとも1つのmiR-122結合部位(例えば、mRNAの3’-UTR内の)を含むmRNAは、正常肝細胞内では、比較的低レベルのポリペプチドを発現させ、肝がん細胞内では、比較的高レベルのポリペプチドを発現させることが典型的であろう。ポリペプチドが、アポトーシスを誘導することが可能である場合、これは、正常肝細胞と比較した、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)の優先的な細胞殺滅を引き起こしうる。
【0196】
したがって、組織による、コードされる目的のタンパク質の発現をモジュレートする、miR結合部位の、mRNAへの組込みの非限定的な例として、本開示のmRNAは、少なくとも1つのmiR-122結合部位を含みうる。例えば、本開示のmRNAは、miR-122シード配列と、部分的または完全に相補的な配列を含む、miR-122結合部位を含みうる。一部の実施形態では、miR-122シード配列は、miR-122のヌクレオチド2~7に対応しうる。一部の実施形態では、miR-122シード配列は、5’-GGAGUG-3’でありうる。一部の実施形態では、miR-122シード配列は、miR-122のヌクレオチド2~8でありうる。一部の実施形態では、miR-122シード配列は、5’-GGAGUGU-3’でありうる。一部の実施形態では、miR-122結合部位は、5’-UAUUUAGUGUGAUAAUGGCGUU-3’(配列番号45)もしくは5’-CAAACACCAUUGUCACACUCCA-3’(配列番号46)のヌクレオチド配列、またはこれらの相補体を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのmiR-122結合部位の、mRNAへの組入れは、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現であって、低レベルのmiR-122を発現させる、他の細胞型と比較した、正常肝細胞内の発現を減殺しうる。他の実施形態では、少なくとも1つのmiR-122結合部位の、mRNAへの組入れは、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現であって、正常肝細胞と比較した、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)内の発現の増大を可能としうる。
【0197】
さらに別の実施形態では、mRNA(例えば、その3’UTR)は、それにより、in vivoの核酸送達時における免疫の活性化(例えば、B細胞の活性化、サイトカインの産生、ADA応答)を低減または阻害するように、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのmiR結合部位を含むことが可能であり、組織による、コードされる目的のタンパク質の発現をモジュレートするための、少なくとも1つのmiR結合部位を含みうる。例えば、一実施形態では、mRNAは、それにより、正常肝細胞と比較した、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)内の、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現の増大を可能とするように、miR-122結合部位を含み、また、免疫細胞内で発現するmiRに対する、1または複数のmiR結合部位であって、例えば、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27からなる群から選択されるmiR結合部位も含む。
【0198】
別の実施形態では、mRNA(例えば、その3’UTR)は、それにより、例えば、B細胞による、例えば、PEGに対するIgMの産生を低減もしくは阻害し、かつ/またはpDCの成長および/もしくは活性化を低減もしくは阻害することにより、血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、少なくとも1つのmiR結合部位を含むことが可能であり、組織による、コードされる目的のタンパク質の発現をモジュレートするための、少なくとも1つのmiR結合部位を含みうる。例えば、一実施形態では、mRNAは、それにより、正常肝細胞と比較した、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)内の、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現の増大を可能とするように、miR-122結合部位を含み、また、1または複数のmiR結合部位であって、例えば、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27からなる群から選択されるmiR結合部位も含む。
【0199】
一実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位およびmiR-142-3p結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位およびmiR-142-5p結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位およびmiR-126-3p結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位およびmiR-155-5p結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位およびmiR-126-3p結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位、miR-142(miR-142-3pまたは142-5p)結合部位、およびmiR-126(miR-126-3pまたはmiR-126-5p)結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位、miR-142(miR-142-3pまたは142-5p)結合部位、およびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位、miR-126(miR-126-3pまたは126-5p)結合部位、およびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)結合部位を含む。さらに別の実施形態では、mRNAは、miR-122結合部位、miR-142(miR-142-3pまたはmiR-142-5p)結合部位、miR-126(miR-126-3pまたは126-5p)結合部位、およびmiR-155(miR-155-3pまたはmiR-155-5p)結合部位を含む。これらの実施形態のうちのいずれかでは、miR-122結合部位は、miR-122-5p結合部位でありうる。
【0200】
miR-142-3p結合部位およびmiR-122-5p結合部位の両方を含む、3’UTR配列の非限定的な例を、配列番号47に示す。配列番号47の3’UTRの構造は、その5’末端における3つの終止コドンと、これに直に後続する、単一のmiR-142-3p結合部位と、この下流に後続するスペーサーヌクレオチドと、次いで、単一のmiR-122-5p結合部位とを含む。miR結合部位(例えば、miR-142-3pと、miR-122-5pと)の間の距離は、大幅に変動させることができ、多数の異なる構築物が、2つのmiR結合部位の異なる配置について調べられているが、全ての構築物が機能的であった。ある特定の実施形態では、ヌクレオチドスペーサーが、RISCの、各結合部位への結合を可能とするのに十分な長さの、2つのmiR結合部位の間に位置する。一実施形態では、2つのmiR結合部位は、互いから約40塩基隔てて位置し、3’UTRの全長を、約100~110塩基とする。
【0201】
目的のタンパク質
本開示のmRNAは、目的のタンパク質、典型的に、被験体における使用のための治療的特性を有するタンパク質をコードしうる。目的のタンパク質は、mRNAによりコードされうる、本質的に任意のタンパク質でありうる。特に、目的のタンパク質は、被験体における抗薬物抗体(ADA)応答を誘発するなど、免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化)を刺激し、したがって、被験体における免疫細胞の活性化を低減または阻害すること(例えば、ADA応答を低減すること)が望ましいタンパク質でありうる。多様な実施形態では、目的のタンパク質は、例えば、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質でありうる。治療用タンパク質の非限定的な例は、例えば、血液因子(因子VIIIおよび因子VIIなど)、補体因子、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、およびMUT1を含む。サイトカインの非限定的な例は、例えば、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンホカインなどを含む。増殖因子の非限定的な例は、エリスロポエチン、EGF、PDGF、FGF、TGF、IGF、TNF、CSF、MCSF、GMCSFなどを含む。抗体の非限定的な例は、例えば、アダリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、イピリムマブ、トシリズマブ、カナキヌマブ、イトリズマブ、トラロキヌマブを含む。融合タンパク質の非限定的な例は、例えば、エタネルセプト、アバタセプト、およびバラタセプトを含む。
【0202】
一実施形態では、目的のタンパク質は、ヒトエリスロポエチンである。一実施形態では、mRNAは、ヒトエリスロポエチンをコードし、配列番号1に示される配列を有するmRNAなど、miR-142-3pに結合するマイクロRNA結合部位を含む。別の実施形態では、mRNAは、ヒトエリスロポエチンをコードし、配列番号28に示される配列を有するmRNAなど、miR-126に結合するマイクロRNA結合部位を含む。さらに別の実施形態では、mRNAは、ヒトエリスロポエチンをコードし、配列番号29に示される配列を有するmRNAなど、miR-142-3pに結合するマイクロRNA結合部位と、miR-126に結合するマイクロRNA結合部位とを含む。別の実施形態では、目的のタンパク質は、LDLR(コレステロールの阻害における使用のための)である。別の実施形態では、目的のタンパク質は、MUT1(メチルマロン酸血症(MMA)の処置における使用のための)である。さらに他の実施形態では、mmRNAによりコードされる目的のタンパク質は、上記で列挙した抗体を含むがこれらに限定されない治療用抗体である。
【0203】
ナノ粒子
本開示のmRNAは、例えば、被験体へと送達された場合に、それらを分解から保護するように、ナノ粒子内または他の送達ビヒクル内に製剤化することができる。例示的なナノ粒子については、Panyam, J.およびLabhasetwar, V.(2003年)、Adv. Drug Deliv. Rev.、55巻、329~347頁;ならびにPeer, D.ら(2007年)、Nature Nanotech.、2巻、751~760頁において記載されている。ある特定の実施形態では、本開示のRNA、例えば、mRNAを、ナノ粒子内に封入する。特定の実施形態では、ナノ粒子とは、1000nM未満であるかもしくはこれと等しいか、500nM未満であるかもしくはこれと等しいか、または100nM未満であるかもしくはこれと等しい、少なくとも1つの大きさ(例えば、直径)を有する粒子である。特定の実施形態では、ナノ粒子は、脂質を含む。脂質ナノ粒子は、リポソームおよびミセルを含むがこれらに限定されない。カチオン性脂質および/またはイオン化脂質、アニオン性脂質、中性脂質、両親媒性脂質、PEG化脂質、および/または構造的脂質を含む、多数の脂質のうちのいずれも存在しうる。このような脂質を、単独で使用することもでき、組合せで使用することもできる。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書で記載される、1または複数のRNA、例えば、mRNA、例えば、目的のポリペプチドをコードし、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含むmmRNAを含む。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるmRNAの脂質ナノ粒子製剤は、1または複数の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つの)カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含みうる。このようなカチオン性脂質は、3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]-N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザオクタトリアコンタン(KL25)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA)、(2R)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA(2R))、(2S)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA(2S));N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N-N-トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N-ジステアリール-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.Cl」);3-β-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(trifluoracetate)(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)を含むがこれらに限定されない。加えて、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(GIBCO/BRLから市販されている、DOTMAおよびDOPEを含む)、およびLIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO/BRLから市販されている、DOSPAおよびDOPEを含む)など、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質の、多数の市販の調製物も使用することができる。KL10、KL22、およびKL25については、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第8,691,750号において記載されている。特定の実施形態では、脂質は、DLin-MC3-DMAまたはDLin-KC2-DMAである。
【0205】
本開示の脂質ナノ粒子における使用に適するアニオン性脂質は、中性脂質へと接続された、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン(ethanoloamine)、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリールホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、および他のアニオン性修飾基を含むがこれらに限定されない。
【0206】
本開示の脂質ナノ粒子における使用に適する天然脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、およびセレブロシドを含むがこれらに限定されない。鎖長および飽和度を変動させる、様々なアシル鎖基を有する脂質が利用可能であるか、または周知の技法により単離もしくは合成することができる。加えて、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖との混合物を有する脂質も使用することができる。一部の実施形態では、本開示で使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、DPPC、POPC、または任意の類縁のホスファチジルコリンである。一部の実施形態では、中性脂質は、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、またはセリンおよびイノシトールなど、他のヘッド基を伴うリン脂質から構成されうる。
【0207】
一部の実施形態では、両親媒性脂質を、本開示のナノ粒子内に組み入れる。本開示のナノ粒子における使用に適する、例示的な両親媒性脂質は、スフィンゴ脂質、リン脂質、およびアミノ脂質を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、リン脂質は、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、およびスフィンゴミエリンからなる群から選択される。スフィンゴ脂質、糖スフィンゴ脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸など、他のリン非含有化合物もまた、使用することができる。加えて、このような両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールなど、他の脂質とたやすく混合することもできる。
【0208】
一部の実施形態では、本開示のナノ粒子の脂質成分は、1または複数のPEG化脂質を含みうる。PEG化脂質(PEG脂質またはPEG修飾脂質としてもまた公知である)とは、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。脂質成分は、1または複数のPEG化脂質を含みうる。PEG化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、およびPEG修飾ジアルキルグリセロールからなる、非限定的な群から選択することができる。例えば、PEG化脂質は、PEG-c-DOMG脂質、PEG-DMG脂質、PEG-DLPE脂質、PEG-DMPE脂質、PEG-DPPC脂質、またはPEG-DSPE脂質でありうる。
【0209】
本開示の脂質ナノ粒子は、1または複数の構造的脂質を含みうる。本開示の脂質ナノ粒子内に存在しうる、例示的で非限定的な構造的脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、またはアルファ-トコフェロールを含む。
【0210】
一部の実施形態では、本開示の1または複数のmRNAは、約1nm~約900nm、例えば、約1nm~約100nm、約1nm~約200nm、約1nm~約300nm、約1nm~約400nm、約1nm~約500nm、約1nm~約600nm、約1nm~約700nm、約1nm~800nm、約1nm~約900nmの直径を有する脂質ナノ粒子内に製剤化することができる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、約10nm~約300nm、約20nm~約200nm、約30nm~約100nm、または約40nm~約80nmの直径を有しうる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、約30nm~約300nm、約40nm~約200nm、約50nm~約150nm、約70~約110nm、または約80nm~約120nmの直径を有しうる。一実施形態では、mRNAは、約10~約20nm、約10~約30nm、約10~約40nm、約10~約50nm、約10~約60nm、約10~約70nm、約10~約80nm、約10~約90nm、約20~約30nm、約20~約40nm、約20~約50nm、約20~約60nm、約20~約70nm、約20~約80nm、約20~約90nm、約20~約100nm、約30~約40nm、約30~約50nm、約30~約60nm、約30~約70nm、約30~約80nm、約30~約90nm、約30~約100nm、約40~約50nm、約40~約60nm、約40~約70nm、約40~約80nm、約40~約90nm、約40~約100nm、約50~約60nm、約50~約70nm、約50~約80nm、約50~約90nm、約50~約100nm、約60~約70nm、約60~約80nm、約60~約90nm、約60~約100nm、約70~約80nm、約70~約90nm、約70~約100nm、約80~約90nm、約80~約100nm、および/または約90~約100nmなどであるがこれらに限定されない間の範囲を含む、約10~約100nmの直径を有する脂質ナノ粒子内に製剤化することができる。一実施形態では、mRNAは、間の範囲を含む、約30nm~約300nm、約40nm~約200nm、約50nm~約150nm、約70~約110nm、または約80nm~約120nmの直径を有する脂質ナノ粒子内に製剤化することができる。
【0211】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、100nmを超える、150nmを超える、200nmを超える、250nmを超える、300nmを超える、350nmを超える、400nmを超える、450nmを超える、500nmを超える、550nmを超える、600nmを超える、650nmを超える、700nmを超える、750nmを超える、800nmを超える、850nmを超える、900nmを超える、または950nmを超える直径を有しうる。
【0212】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子の粒子サイズは、増大させることもでき、かつ/または減少させることもできる。粒子サイズを変化させて、炎症などであるがこれらに限定されない、生物学的反応に対抗する一助とすることも可能であり、患者または被験体へと送達されるmRNAの生物学的効果を増大させることもできる。
【0213】
ある特定の実施形態では、細胞型および/または組織型に特異的なターゲティング部分を使用して、本開示のナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子をターゲティングすることが望ましい。一部の実施形態では、ターゲティング部分を使用して、ナノ粒子を、特定の細胞、組織、および/または器官へとターゲティングすることができる。特定の実施形態では、ナノ粒子は、本明細書で記載される、1または複数のmRNAと、ターゲティング部分とを含む。例示的で非限定的なターゲティング部分は、リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク質、ビタミン(例えば、リボフラビン)、および抗体(例えば、全長抗体、抗体断片(例えば、Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、またはF(ab’)2断片)、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体およびその断片、ヒト抗体およびその断片、モノクローナル抗体、ならびに多特異性抗体(例えば、二特異性抗体))を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ポリペプチドでありうる。ターゲティング部分は、全ポリペプチド(例えば、ペプチドまたはタンパク質)またはその断片を含みうる。ターゲティング部分は、ターゲティング部分が、標的、例えば、細胞表面受容体との相互作用に利用可能であるように、ナノ粒子の外部表面上に位置することが典型的である。当技術分野では、様々な、異なるターゲティング部分およびターゲティング法であって、例えば、Sapraら、Prog. Lipid Res.、42巻(5号):439~62頁、2003年;およびAbraら、J. Liposome Res.、12巻:1~3頁、2002年において記載されているターゲティング部分およびターゲティング法を含むターゲティング部分およびターゲティング法が公知であり、利用可能である。
【0214】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子(例えば、リポソーム)は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖など、親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含みうる(例えば、Allenら、Biochimica et Biophysica Acta、1237巻:99~108頁、1995年;DeFreesら、Journal of the American Chemistry Society、118巻:6101~6104頁、1996年;Blumeら、Biochimica et Biophysica Acta、1149巻:180~184頁、1993年;Klibanovら、Journal of Liposome Research、2巻:321~334頁、1992年;米国特許第5,013,556号;Zalipsky、Bioconjugate Chemistry、4巻:296~299頁、1993年;Zalipsky、FEBS Letters、353巻:71~74頁、1994年;Zalipsky、Stealth Liposomes、9章(LasicおよびMartin編)、CRC Press、Boca Raton Fla.、1995年を参照されたい)。1つの手法では、脂質ナノ粒子をターゲティングするためのターゲティング部分を、ナノ粒子を形成する脂質の極性ヘッド基へと連結する。別の手法では、ターゲティング部分を、親水性ポリマーコーティングを形成するPEG鎖の遠位末端へと接合させる(例えば、Klibanovら、Journal of Liposome Research、2巻:321~334頁、1992年;Kirpotinら、FEBS Letters、388巻:115~118頁、1996年を参照されたい)。
【0215】
1または複数のターゲティング部分をカップリングするための標準的な方法を使用することができる。例えば、ターゲティング部分、または脂質誘導体化ブレオマイシンなど、誘導体化親油性化合物を接合させるために活性化させうる、ホスファチジルエタノールアミンを使用することができる。例えば、プロテインAを組み込むリポソームを使用して、抗体ターゲティングリポソームを構築することができる(例えば、Renneisenら、J. Bio. Chem.、265巻:16337~16342頁、1990年およびLeonettiら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)、87巻:2448~2451頁、1990年を参照されたい)。抗体コンジュゲーションの他の例は、米国特許第6,027,726号において開示されている。ターゲティング部分の例はまた、新生物または腫瘍と関連する抗原を含む、細胞内構成要素に特異的である、他のポリペプチドも含みうる。ターゲティング部分として使用されるポリペプチドは、共有結合を介して、リポソームへと接合させることができる(例えば、Heath、Covalent Attachment of Proteins to Liposomes、149巻、Methods in Enzymology、111~119頁(Academic Press, Inc.、1987年)を参照されたい)。他のターゲティング法は、ビオチン-アビジン系を含む。
【0216】
一部の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、脂質ナノ粒子を、肝細胞、結腸細胞、上皮細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞、心臓細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑膜表層細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、および腫瘍細胞(原発性腫瘍細胞および転移性腫瘍細胞を含む)を含むがこれらに限定されない細胞へとターゲティングするターゲティング部分を含む。特定の実施形態では、ターゲティング部分は、脂質ナノ粒子を、肝細胞へとターゲティングする。他の実施形態では、ターゲティング部分は、脂質ナノ粒子を、結腸細胞へとターゲティングする。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、脂質ナノ粒子を、肝がん細胞(例えば、肝細胞癌細胞)または結腸直腸がん細胞(例えば、原発性腫瘍および転移性腫瘍)へとターゲティングする。
【0217】
医薬組成物
本開示は、本明細書で記載されるmRNAまたはナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む医薬組成物であって、1または複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせた医薬組成物を含む。特定の実施形態では、mRNAは、ナノ粒子内、例えば、脂質ナノ粒子内に存在する。特定の実施形態では、mRNAまたはナノ粒子は、医薬組成物中に存在する。多様な実施形態では、医薬組成物中に存在するmRNAを、ナノ粒子内、例えば、脂質ナノ粒子内に封入する。
【0218】
医薬組成物は任意選択で、1または複数のさらなる活性物質、例えば、治療的活性物質および/または予防的活性物質を含みうる。本開示の医薬組成物は、滅菌および/または発熱物質非含有でありうる。医薬薬剤の製剤化および/または製造における一般的な検討事項は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、21版、Lippincott Williams & Wilkins、2005年(参照によりその全体において本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。特定の実施形態では、医薬組成物は、mRNAおよび脂質ナノ粒子、またはこれらの複合体を含む。
【0219】
本明細書で記載される医薬組成物による製剤は、薬理学の技術分野で公知であるかまたは今後開発される任意の方法により調製することができる。一般に、このような調製法は、有効成分を、賦形剤および/または1もしくは複数の他のアクセサリー成分と会合させるステップと、次いで、必要および/または望ましい場合、生成物を、所望の単回投与または複数回投与の用量単位へと、分割、成形、および/またはパッケージングするステップとを含む。
【0220】
本開示に従う医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される被験体の識別、サイズ、および/または状態に応じて変動するが、組成物を投与する経路に応じてもさらに変動するであろう。例として、組成物は、0.1%~100%の間、例えば、0.5%~70%の間、1%~30%の間、5%~80%の間、または少なくとも80%(w/w)の有効成分を含みうる。一部の実施形態では、活性薬剤は、目的のタンパク質と、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位であって、miR-142-3p結合部位などのマイクロRNA結合部位とをコードするmRNAである。
【0221】
本開示のmRNAは、(1)安定性を増大させ;(2)細胞へのトランスフェクションを増大させ;(3)持続放出もしくは遅延放出(例えば、デポ製剤からの、mRNAの)を可能とし;(4)生体内分布を変更させ(例えば、mRNAを、特異的組織型または細胞型へとターゲティングする);(5)in vivoにおいて、mmRNAによりコードされるポリペプチドの翻訳を増大させ;かつ/または(6)in vivoにおける、mRNAによりコードされるポリペプチドの放出プロファイルを変更するように、1または複数の賦形剤を使用して製剤化することができる。任意の溶媒および全ての溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤など、従来の賦形剤に加えて、本開示の賦形剤は、限定せずに、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子(例えば、リポソームおよびミセル)、ポリマー、リポプレックス、コア-シェル型ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、炭水化物、mRNAをトランスフェクトされた細胞(例えば、被験体への移植のための)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣剤、およびこれらの組合せを含みうる。したがって、本開示の製剤は、各々が、併せて、mRNAの安定性を増大させ、細胞へのmRNAによるトランスフェクションを増大させ、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現を増大させ、かつ/またはmRNAによりコードされるポリペプチドの放出プロファイルを変更する量で、1または複数の賦形剤を含みうる。さらに、本開示のmRNAは、自己組織化核酸ナノ粒子を使用して製剤化することができる。
【0222】
当技術分野では、医薬組成物を製剤化するための多様な賦形剤と、組成物を調製するための技法とが公知である(参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、21版、A. R. Gennaro、Lippincott, Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2006年を参照されたい)。従来の賦形剤媒体の使用は、任意の従来の賦形剤媒体が、望ましくない任意の生物学的効果をもたらすか、または、他の有害な形で、医薬組成物の他の任意の成分と相互作用することなどにより、物質またはその誘導体と不適合でありうる場合を除き、本開示の範囲内にあると想定しうる。賦形剤は、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、薄膜形成剤またはコーティング、流動促進剤(流動増強剤)、滑沢剤、保存剤、印字インキ、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味剤、および水和水を含みうる。例示的な賦形剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、結晶質セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファデンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、滑石、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールを含むがこれらに限定されない。
【0223】
一部の実施形態では、本明細書で記載される製剤は、少なくとも1つの、薬学的に許容される塩を含みうる。本開示の製剤中に組入れうる、薬学的に許容される塩の例は、アミンなど、塩基性残基の、酸添加塩、アルカリ塩もしくはアルカリ土類金属塩、鉱酸塩、または有機酸塩;カルボン酸など、酸性残基の、アルカリ塩または有機塩などを含むがこれらに限定されない。代表的な酸添加塩は、酢酸塩(acetate, acetic acid)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate, benzene sulfonic acid)、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのほか、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むがこれらに限定されない、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンを含む。
【0224】
一部の実施形態では、本明細書で記載される製剤は、少なくとも1つの種類のポリヌクレオチドを含有しうる。非限定的な例として、製剤は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または5つを超える、本明細書で記載されるmRNAを含有しうる。
【0225】
例えば、非経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、および/またはエリキシル剤を含むがこれらに限定されない。有効成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される、不活性の希釈剤であって、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物など、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤などの希釈剤を含みうる。不活性の希釈剤のほか、経口組成物は、保湿剤、乳化剤、および/または懸濁剤などのアジュバントを含みうる。ある特定の実施形態では、非経口投与のために、組成物を、CREMAPHOR(登録商標)、アルコール、油、修飾油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはこれらの組合せなどの可溶化剤と混合する。
【0226】
注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性懸濁液または滅菌注射用油性懸濁液は、適する分散剤、保湿剤、および/または懸濁剤を使用して、公知の技術に従い製剤化することができる。滅菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、非毒性で非経口的に許容可能な希釈剤中および/または溶媒中の、滅菌注射用溶液、滅菌注射用懸濁液、および/または滅菌注射用エマルジョンでありうる。援用されうる、許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、U.S.P.によるリンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。従来、滅菌の固定油も、溶媒または懸濁媒体として援用されている。この目的では、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を援用することができる。注射剤の調製では、オレイン酸などの脂肪酸も使用することができる。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過により滅菌することもでき、かつ/または使用の前に、滅菌水中または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散させうる、滅菌固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことにより滅菌することもできる。
【0227】
一部の実施形態では、少なくとも1つの、本明細書で記載されるmRNAを含む医薬組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)へと投与する。本明細書では、ヒトへの投与に適する医薬組成物を主に被験体とする、医薬組成物についての記載が提示されるが、当業者には、このような組成物は一般に、他の任意の動物、例えば、非ヒト哺乳動物への投与に適することが理解されるであろう。多様な動物への投与に適するものとするために、ヒトへの投与に適する医薬組成物組成物の改変が十分に理解されており、獣医学の薬理技術分野の当業者は、存在する場合でも、規定の実験だけにより、このような改変をデザインおよび/または実施することができる。医薬組成物の投与が想定される被験体は、ヒトおよび/もしくは他の霊長動物;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラットなど、商業的に関与性の哺乳動物を含む哺乳動物;ならびに/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウなど、商業的に関与性の鳥類を含む鳥類を含むがこれらに限定されない。特定の実施形態では、被験体に、2つまたはそれよりも多い、本明細書で記載されるmRNA、例えば、第1の目的のポリペプチドをコードし、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む第1のmRNAと、第2の目的のポリペプチドをコードし、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む第2のmRNAとを施す。特定の実施形態では、第1のmmRNAと、第2のmmRNAとを、被験体へと、同時に、または異なる時点に、例えば、逐次的に施す。特定の実施形態では、第1のmRNAと、第2のmRNAとを、例えば、同じ細胞による両方のmRNAの取込みを容易とするために、被験体へと、同じ医薬組成物または製剤で施す。
【0228】
免疫細胞の活性化およびサイトカインの産生の阻害
本開示の方法は、少なくとも1つのmiR-126(例えば、miR-126-3p)結合部位および/またはmiR-142(例えば、miR-142-3p)結合部位の、mRNA構築物への組入れにより、mRNAベースの治療薬によりコードされる、目的のポリペプチド(例えば、治療剤)により刺激される、望ましくない免疫細胞の活性化および/またはサイトカインの産生など、mRNAベースの治療薬で処置される被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化、および/または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害を可能とする。一実施形態では、免疫細胞の活性化は、リンパ球の活性化である。一実施形態では、免疫細胞の活性化は、B細胞の活性化である。別の実施形態では、免疫細胞の活性化は、T細胞の活性化である。さらに他の実施形態では、免疫細胞の活性化は、マクロファージの活性化、樹状細胞の活性化、NK細胞の活性化、好塩基球の活性化、または好酸球の活性化である。
【0229】
一実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害を、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位またはmiR-142マイクロRNA結合部位を欠く、mmRNAの対照投与と比較して決定する。多様な実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約5%~50%、約10%~50%、約15%~50%、約20%~50%、約25%~50%、約10%~80%、約10%~70%、約10%~60%、約20%~80%、約20%~70%、約20%~60%、約20%~40%、または約25%~75%減少させる。
【0230】
免疫細胞の活性化のレベルは、細胞表面活性化マーカーを発現させる細胞の検出により典型的に評価される、活性化免疫細胞集団の頻度、または免疫細胞の活性化を指し示す、1もしくは複数のサイトカインの産生レベルなど、当技術分野で確立された、免疫細胞の活性化を評価するための、本質的に任意の方法により査定することができる。一実施形態では、免疫細胞の活性化は、B細胞の活性化であり、この場合、B細胞の活性化のレベルを、脾臓のB細胞集団にわたる活性化B細胞の頻度など、活性化B細胞の頻度を測定することにより決定する。当技術分野では、B細胞の活性化を指し示すB細胞表面マーカーが周知である(例えば、Maddalay, R.ら(2010年)、FEBS Letters、584巻:4883~4894頁を参照されたい)。一実施形態では、B細胞の活性化を、CD19+CD86+CD69+B細胞の頻度により決定する。別の実施形態では、免疫細胞の活性化は、B細胞の活性化であり、この場合、B細胞の活性化のレベルを、例えば、処置される被験体の血清中の、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌など、サイトカインの分泌により決定する。一実施形態では、B細胞の活性化を、例えば、処置される被験体の血清中の、IL-6の分泌により決定する。他の実施形態では、低減または阻害される、望ましくないサイトカインの産生は、例えば、処置される被験体の血清中の、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生である。別の実施形態では、低減または阻害される、望ましくないサイトカインの産生は、インターロイキン6(IL-6)の産生である。
【0231】
一実施形態では、免疫細胞の活性化は、形質細胞様樹状細胞(pDC)の活性化であり、この場合、pDC活性化のレベルは、脾臓のpDC集団にわたる活性化pDCの頻度など、活性化pDCの頻度を測定することにより決定する。当技術分野では、活性化を指し示すpDC表面マーカーが周知である(例えば、Dzionek, A.ら(2002年)、Hum Immunol.、63巻(12号):1133~48頁を参照されたい)。一実施形態では、pDCの活性化を、CD11c+CD70+CD86+細胞の頻度により決定する。
【0232】
一実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化、および/または望ましくないサイトカインの産生を、mmRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する減少を伴わずに減少させる。こうして、本開示の方法は、被験体における治療剤の発現レベルに著明な影響を及ぼさずに、治療剤である、目的のポリペプチドをコードするmRNAで処置された被験体における、免疫細胞の活性化(例えば、B細胞の活性化、サイトカイン産生)を阻害または低減することを可能とする。
【0233】
本開示の方法で使用しうる、標準的な計量は、コードされるポリペプチド(タンパク質)のレベルまたは量であって、細胞、組織、または生物において産生されるレベルまたは量の、その発現が、細胞、組織、または生物において、化学修飾mRNAの投与またはこれとの接触の結果として誘発されるサイトカインの1または複数(またはパネル)のレベルまたは量に対する比の尺度である。本明細書では、このような比を、タンパク質:サイトカイン比または「PC」比と称する。PC比が大きいほど、化学修飾mRNA(測定されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド)は有効である。サイトカインによる、本開示の好ましいPC比は、1を超える、10を超える、100を超える、1000を超える、10,000を超える、またはそれよりも多いPC比でありうる。異なる構築物による修飾mRNAまたは非修飾構築物による修飾mRNAよりPC比が大きな修飾mRNAが好ましい。
【0234】
PC比は、mRNA内に存在する修飾パーセントにより、さらに適格化しうる。例えば、100%の修飾mRNAに照らして標準化したタンパク質産生であって、サイトカインの関数としてのタンパク質産生(または危険性)またはサイトカインプロファイルを決定することができる。
【0235】
一実施形態では、本開示は、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位を含む修飾mRNAのPC比を、miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位を伴わない同じ構築物のPC比と比較することにより、少なくとも1つのmiR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位を含む、任意の特定の修飾mRNAの相対的効能を、化学反応、サイトカイン、または修飾パーセントにわたり決定するための方法を提示する。
【0236】
一実施形態では、哺乳動物(例えば、ヒト)の血清中の、mmRNAによりコードされる目的のポリペプチドの発現レベルは、投与の少なくとも2時間後において、少なくとも50pg/mlでありうる。別の実施形態では、哺乳動物(例えば、ヒト)の血清中の、mmRNAによりコードされる目的のポリペプチドの発現レベルは、投与後少なくとも72時間にわたり、50pg/mlを上回るレベルを維持しうる。別の実施形態では、哺乳動物(例えば、ヒト)の血清中の、mmRNAによりコードされる目的のポリペプチドの発現レベルは、投与後少なくとも72時間にわたり、60pg/mlを上回るレベルを維持しうる。
【0237】
B1a細胞の阻害/血中クリアランスの加速化の阻害
脾臓は、以前からABCに関与しているが、ABCの一因となる正確な機構は、いまだ理解されていない。脾臓は、赤脾髄(赤血球に富む)、白脾髄(リンパ球に富む)、および辺縁帯(赤脾髄と白脾髄との間、および辺縁洞の外側に配置される)から構成される。脾臓に入った抗原は、辺縁帯内に保持され、辺縁帯では、抗原と、免疫エフェクター細胞(例えば、B細胞)との間の相互作用を可能とするように、血流が低減される(Harmら、Infect. Immuno.、64巻:4220~4225頁、1996年)。血中クリアランスの加速化における脾臓の役割は、重要であると考えられる。生体内分布データは、脂質を含む化合物または組成物(例えば、LNP)が、脾臓により取り込まれたことを裏付ける(データは示さない)。組織学的査定は、投与(例えば、IV投与)後、急速な、LNPの、辺縁帯への取込みを示す。脾臓内で、LNPは、脾臓B細胞と相互作用し、LNPに対する免疫応答の多様な要素に寄与しうる。例えば、LNPのある特定の成分(例えば、PEG成分)は、脾臓内のCD19+ B細胞と相互作用する結果として、結合、内部化、膜融合、および/またはこのような細胞の活性化をもたらす結果として、LNPの成分に特異的なIgG分子および/またはIgM分子の産生もたらすことから、例えば、LNPによる、2回目または後続の投与時における血中クリアランスの加速化をもたらしうる。
【0238】
驚くべきことに、本明細書ではまた、免疫系の特定の細胞、すなわち、pDCもまた、ABC現象に寄与することも裏付けられている。本明細書では、miR結合部位(例えば、miR-126結合部位)の組入れが、LNPに封入されたmRNA、例えば、修飾mRNAによりコードされるタンパク質に対する、望ましくない免疫応答(例えば、ADA)の低減をもたらしうることが裏付けられている。今や、驚くべきことに、miR結合部位、特に、miR-126結合部位の組入れが、mRNAを封入するLNPに対する、さらなる、望ましくない免疫応答の低減をもたらしうることも裏付けられている。miR-126(例えば、miR-126-3p)は、pDC内で高度に発現し、実際、pDCの活性化時に上方調節される。pDCは、核酸に応答して、B細胞の活性化を相乗作用的に増大させ、サイトカインの分泌および形質細胞の活性化を介して、活性化の他の形態を増大させる。さらに、「miR-126-3pが低度な」pDC(例えば、miR-126がノックダウンまたはノックアウトされたpDC)は、活性化が損なわれている(例えば、核酸に対する有効な免疫応答を発し、IFN-α/β分泌、IL-6分泌などをもたらすことができず、活性化時に、脾臓へと遊走できないことなど)。本明細書で裏付けられる通り、miR-126結合部位の、mRNAへの組入れは、数週間にわたる、LNPに封入されたmRNAの反復投与において、低度なB細胞の活性化および低血清IL-6を結果としてもたらす。タンパク質の発現は、同様の投与スケジュールにわたり維持される。驚くべきことに、抗PEG IgM応答は、数週間にわたる反復投与において、劇的に低下する。こうして、miR-126結合部位の、mRNA、特に、LNPに封入されたmRNAへの組入れの、予測されない有益性は、ABCの低減である。
【0239】
脾臓内、例えば、脾臓の辺縁帯内では、これらの鍵となる免疫細胞のうちのいくつかは、例えば、サイトカイン産生(例えば、IL-6)の結果として、直接的にまたは間接的に相互作用しうる。
【0240】
理論により束縛されることを望まずに、本開示は、辺縁帯内に存在する免疫細胞内で発現するmiRが、血中クリアランスの加速化に参与するという証拠を提示する。本開示のmRNAが、免疫細胞内で発現する、1または複数のmiRに結合する、1または複数のmiR結合部位を含む場合、目的のmiRは、下方調節される(例えば、アンタゴナイズされ、かつ/または分解される)。免疫細胞内で発現する、少なくとも1つのmiRに結合する、少なくとも1つのmiR結合部位の組入れは、脂質成分(例えば、PEG脂質)に結合することが可能なIgM分子の産生の減少であって、少なくとも1つのmiR結合部位を伴わないmRNAと比較した減少を結果としてもたらす。IgM分子の、血中クリアランスの加速化における公知の役割を踏まえると、免疫細胞内で発現するmiRに結合するmiR結合部位が、IgM分子の産生を阻害または低減する能力は、具体的には、脾臓の辺縁帯内の免疫細胞内で発現するmiRの、血中クリアランスの加速化における重要な役割を指し示す。
【0241】
本開示の方法は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害することを可能とし、方法は、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、この場合、反復投与後の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む。
【0242】
他の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与することであって、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、実施することと;被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与することとにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0243】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0244】
他の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、mRNAの後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0245】
さらなる実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、反復投与後の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0246】
さらなる実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与することであって、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、実施することと;被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与することであって、被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない、実施することとにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0247】
他の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0248】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、mRNAの後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0249】
一部の実施形態では、本開示は、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、反復投与後の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法を提示する。
【0250】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与することであって、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、実施することと;被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与することとにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する。
【0251】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する。
【0252】
他の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する。
【0253】
さらなる実施形態では、本開示は、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、反復投与後の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法を提示する。
【0254】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与することであって、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、実施することと;被験体においてB1a細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与することとにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する。
【0255】
他の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する。
【0256】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する。
【0257】
さらなる実施形態では、本開示は、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、反復投与後の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法を提示する。
【0258】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与することであって、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、実施することと;被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与することとにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する。
【0259】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する。
【0260】
一部の実施形態では、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与することであって、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む、投与することにより、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する。
【0261】
さらなる実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、B細胞を活性化させない。他の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、LNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない。
【0262】
一部の実施形態では、血中クリアランスの加速化の低減または阻害を、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する。他の実施形態では、化学修飾mRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する低下または阻害を伴わずに、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。
【0263】
さらなる実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、2週間未満である。一部の実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、1週間未満である。
【0264】
一部の実施形態では、IgM分子は、ポリエチレングリコール(PEG)を認識する。
【0265】
本開示の方法
一態様では、本開示は、被験体における抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3pおよび/またはmiR-126-3p)を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。上記で記載した通り、多様な実施形態では、mmRNAは、免疫細胞内で発現する1または複数のmiRに対する、例えば、2つまたはそれよりも多い、1つ~4つ、1つ、2つ、3つ、または4つの結合部位を含みうる。ある特定の実施形態では、mmRNAは、免疫細胞内で発現する少なくとも2つの異なるmiRに対する、少なくとも2つの結合部位を含む。例えば、mmRNAは、miR-142-3pに対する第1の結合部位と、免疫細胞内で発現する、異なるmiRであって、miR-155、miR-146(miR-146-3pおよび/またはmiR-146-5p)、またはmiR-126などのmiRに対する第2の結合部位とを含みうる。代替的に、mmRNAは、miR-126(例えば、miR-126-3p)に対する第1の結合部位と、免疫細胞内で発現する、異なるmiRであって、miR-142(mir-142-3pおよび/またはmiR-142-5p)、miR-155、またはmiR-146(miR-146-3pおよび/またはmiR-146-5p)などのmiRに対する第2の結合部位とを含みうる。一実施形態では、mmRNAは、miR-142-3pに対する第1の結合部位と、miR-126に対する第2の結合部位とを含む。
【0266】
関連する実施形態では、被験体に、mmRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を施すかまたは投与する。さらなる関連する実施形態では、被験体に、本開示の医薬組成物を施すかまたは投与する。特定の実施形態では、医薬組成物は、目的のポリペプチドをコードし、本明細書で記載される、少なくとも1つのmiR結合部位を含むmmRNAを含むか、またはmmRNAを含むナノ粒子を含む。特定の実施形態では、mmRNAは、ナノ粒子内、例えば、脂質ナノ粒子内に存在する。特定の実施形態では、mmRNAまたはナノ粒子は、医薬組成物中に存在する。
【0267】
一実施形態では、mmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する。一実施形態では、mmRNAを、毎週1回の注入(例えば、ポンプを介するものなどの静脈内注入)により投与する。一実施形態では、mmRNAを、毎週1回の注入により、少なくとも4週間にわたり投与する。
【0268】
別の実施形態では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つの結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法を提示する。
【0269】
別の態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)を含み、
mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の抗薬物抗体のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の抗薬物抗体のレベルが低下したら、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法を提示する。
【0270】
mmRNAが投与される被験体の脾臓内のmmRNAによりコードされる目的のタンパク質の発現を低減または阻害する本開示の方法の能力を踏まえ、本開示はさらに、mmRNAベースの治療薬の毒性を低減するための方法も提示する。したがって、別の態様では、本開示は、被験体における薬物関連毒性を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性を低減または阻害するように、mmRNAが、免疫細胞内で発現するmiRに対する、少なくとも1つの結合部位(例えば、miR-142-3pマイクロRNA結合部位および/またはmiR-126マイクロRNA結合部位)を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法を提示する。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における血球数の減少(血球減少症)である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における自己免疫である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における補体媒介作用である。一実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における造血の減少である。他の実施形態では、薬物関連毒性は、例えば、腎毒性または肝毒性でありうる。
【0271】
別の態様では、本開示は、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、RNA、例えば、mRNA(例えば、化学修飾mRNAまたはmmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、mRNA、例えば、化学修飾RNAまたはmmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位を含み、mRNA、例えば、化学修飾mRNAまたはmmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。別の態様では、本開示は、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、RNA、例えば、mRNA(例えば、化学修飾mRNAまたはmmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、mRNA、例えば、化学修飾mRNAまたはmmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位を含み、mRNA、例えば、化学修飾mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0272】
上記で記載した通り、多様な実施形態では、化学修飾mRNA(mmRNAと称する)は、免疫細胞内で発現する1または複数のmiRに対する、例えば、2つまたはそれよりも多い、1つ~4つ、1つ、2つ、3つ、または4つの結合部位を含みうる。ある特定の実施形態では、mmRNAは、免疫細胞内で発現する少なくとも2つの異なるmiRに対する、少なくとも2つの結合部位を含む。例えば、mmRNAは、miR-126に対する第1の結合部位と、免疫細胞内で発現する、異なるmiRであって、miR-142(miR-142-3pおよび/またはmiR-142-5p)、miR-155またはmiR-146(miR-146-3pおよび/またはmiR-146-5p)などのmiRに対する第2の結合部位とを含みうる。代替的に、mmRNAは、miR-142(miR-142-3pおよび/またはmiR-142-5p)に対する第1の結合部位と、免疫細胞内で発現する、異なるmiRであって、miR-126、miR-155またはmiR-146(miR-146-3pおよび/またはmiR-146-5p)などのmiRに対する第2の結合部位とを含みうる。一実施形態では、mmRNAは、miR-142-3pに対する第1の結合部位と、miR-126に対する第2の結合部位とを含む。
【0273】
ある特定の実施形態では、mRNAは、目的のポリペプチド(例えば、治療剤)をコードし、この場合、望ましくない免疫細胞の活性化が、目的のポリペプチドに応答して生じる。
【0274】
関連する実施形態では、被験体に、mRNA、例えば、mmRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を施すかまたは投与する。さらなる関連する実施形態では、被験体に、本開示の医薬組成物を施すかまたは投与する。特定の実施形態では、医薬組成物は、目的のポリペプチドをコードし、本明細書で記載される、少なくとも1つのmiR結合部位を含むmmRNAを含むか、またはmmRNAを含むナノ粒子を含む。特定の実施形態では、mmRNAは、ナノ粒子内、例えば、脂質ナノ粒子内に存在する。特定の実施形態では、mmRNAまたはナノ粒子は、医薬組成物中に存在する。
【0275】
一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入(例えば、ポンプを介するものなどの静脈内注入)により投与する。一実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAを、毎週1回の注入により、少なくとも4週間にわたり投与する。
【0276】
別の実施形態では、本開示は、メッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、リンパ球の活性化、B細胞の活性化)、または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、化学修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位を含み、mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化、または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法を提示する。
【0277】
ある特定の実施形態では、mRNAは、目的のポリペプチド(例えば、治療剤)をコードし、この場合、望ましくない免疫細胞の活性化および/または望ましくないサイトカインの産生が、目的のポリペプチドに応答して生じる。
【0278】
別の態様では、本開示は、メッセンジャーRNA(mRNA)を、被験体へと反復投与した後に、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化(例えば、リンパ球の活性化、B細胞の活性化)、または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば化学修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を、静脈内投与するステップであり、mRNA、例えば、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位、および/またはmiR-142マイクロRNA結合部位を含み、
mRNA、例えば、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の免疫細胞の活性化のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の免疫細胞の活性化のレベルが低下したら、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化、または望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmRNA、例えば、mmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法を提示する。
【0279】
ある特定の実施形態では、mRNA、例えば、mmRNAは、目的のポリペプチド(例えば、治療剤)をコードし、この場合、望ましくない免疫細胞の活性化または望ましくないサイトカインの産生が、目的のポリペプチドに応答して生じる。
【0280】
ADAアッセイ
ADAアッセイ(バイオアッセイ)を使用して、中和抗体(NAB)および非中和結合抗体(BAB)の両方についてアッセイすることができる。NABアッセイは、細胞ベースのアッセイ、例えば、細胞成長アッセイ、バイオマーカーアッセイ、遺伝子発現アッセイ、遺伝子レポーターアッセイ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイ、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイなど、ならびに非細胞ベースのアッセイ、例えば、競合的リガンド結合(CLBA)アッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、電気化学発光(ECL)、例えば、電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)、DELFIA(登録商標)(dissociation-enhanced lanthanide fluorescent immunoassay)、Gyros(登録商標)抗薬物抗体(ADA)イムノアッセイ、蛍光酵素イムノアッセイ(FEIA)、リストセチン誘導血小板凝集(RIPA)などの両方を含みうる。
【0281】
例示的な態様では、治療レジメンは、治療レジメンの前または治療レジメン中に、1または複数のADAアッセイを行うことを含みうる。例示的な実施形態では、ADAアッセイは、NABアッセイである。このような場合には、バイオアッセイは、生成物の作用機構と関連するものとし、それ以外のアッセイは、NABの、臨床薬理学に対する効果について有用ではないであろう。好ましい実施形態では、細胞ベースのNABを、本開示の治療レジメンの特色とする。細胞ベースの中和アッセイが実施可能/利用可能でない場合、競合リガンド結合アッセイまたは代替法が適する場合がある。しかし、これらを使用する場合、アッセイは、適切な形で、中和能/力を裏付けることが好ましい。
【0282】
ADA応答の直接的な測定に加えて、免疫細胞の活性化のレベルはまた、抗体応答の発達の尺度としても査定することができる。免疫細胞の活性化のレベルは、細胞表面活性化マーカーを発現させる細胞の検出により典型的に評価される、活性化免疫細胞集団の頻度、または免疫細胞の活性化を指し示す、1もしくは複数のサイトカインの産生レベルなど、当技術分野で確立された、免疫細胞の活性化を評価するための、本質的に任意の方法により査定することができる。一実施形態では、免疫細胞の活性化は、B細胞の活性化であり、この場合、B細胞の活性化のレベルを、脾臓のB細胞集団にわたる活性化B細胞の頻度など、活性化B細胞の頻度を測定することにより決定する。当技術分野では、B細胞の活性化を指し示すB細胞表面マーカーが周知である(例えば、Maddalay, R.ら(2010年)、FEBS Letters、584巻:4883~4894頁を参照されたい)。一実施形態では、B細胞の活性化を、CD19+CD86+CD69+B細胞の頻度により決定する。別の実施形態では、免疫細胞の活性化は、B細胞の活性化であり、この場合、B細胞の活性化のレベルを、例えば、処置される被験体の血清中の、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌など、サイトカインの分泌により決定する。一実施形態では、B細胞の活性化を、例えば、処置される被験体の血清中の、IL-6の分泌により決定する。他の実施形態では、低減または阻害される、望ましくないサイトカインの産生は、例えば、処置される被験体の血清中の、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生である。別の実施形態では、低減または阻害される、望ましくないサイトカインの産生は、インターロイキン6(IL-6)の産生である。
【0283】
医薬組成物の投与
本開示の、1または複数のRNA、例えば、mRNAを含む医薬組成物は、任意の適する経路により、被験体へと投与することができる。一部の実施形態では、本開示の組成物を、非経口経路(例えば、皮下注射法、皮内(intracutaneous)注射法、静脈内注射法、腹腔内注射法、筋内注射法、関節内注射法、動脈内注射法、滑膜内注射法、胸骨下(intrasternal)注射法、髄腔内注射法、病変内注射法、または頭蓋内注射法、ならびに任意の適する注入法)、経口経路、経皮経路または皮内(intradermal)経路、皮間経路、直腸内経路、膣内経路、局所経路(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/またはドロップ)、経粘膜経路、経鼻経路、口腔内経路、腸内経路、硝子体内経路、腫瘍内経路、舌下経路、鼻腔内経路を含む、様々な経路のうちの1または複数により;気管内点滴、気管支内点滴、および/または吸入により;経口スプレーおよび/もしくは経口粉末、経鼻スプレー、および/もしくは経鼻エアゾールとして、ならびに/または門脈カテーテルを介して投与する。一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与、筋内投与、皮内投与、動脈内投与、腫瘍内投与、皮下投与、または吸入により投与することができる。しかし、本開示は、薬物送達についての科学の起こりうる進歩を考慮して、任意の適切な経路による、本開示の組成物の送達を包摂する。一般に、最も適切な投与経路は、1または複数のmRNAを含む医薬組成物の性格(例えば、血流および消化管など、多様な体内環境におけるその安定性)、および患者の状態(例えば、患者が、特定の投与経路を忍容することが可能であるのかどうか)を含む、様々な因子に依存するであろう。一実施形態では、組成物を、非経口的に投与する。別の実施形態では、組成物を、静脈内投与する。別の実施形態では、組成物を、腫瘍内投与する。
【0284】
ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、所与の用量中、約0.0001mg/kg~約10mg/kg、約0.001mg/kg~約10mg/kg、約0.005mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約0.0001mg/kg~約5mg/kg、約0.001mg/kg~約5mg/kg、約0.005mg/kg~約5mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約0.0001mg/kg~約1mg/kg、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.005mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、または約0.1mg/kg~約1mg/kg(1mg/kgの用量は、被験体の体重1kg当たり、1mgのmRNAまたはナノ粒子をもたらす)を送達するのに十分な投与量レベルで投与することができる。特定の実施形態では、約0.005mg/kg~約5mg/kgの用量の、本開示のmRNAまたはナノ粒子を投与することができる。特定の実施形態では、約0.002mg/kg~約2mg/kgの用量の、本開示のmRNAまたはナノ粒子を投与することができる。特定の実施形態では、約0.02mg/kg~約0.2mg/kgの用量の、本開示のmRNAまたはナノ粒子を投与することができる。
【0285】
投与は、所望のmRNAレベル、発現、および/または効果(例えば、治療効果)を得るように、同じ量または異なる量で、毎日1回または複数回にわたり実施することができる。所望の投与量を、例えば、毎日3回、毎日2回、毎日1回、隔日、3日ごと、毎週、隔週、3週間ごと、または4週間ごとに送達することができる。ある特定の実施形態では、複数回にわたる投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれよりも多い回数にわたる投与)を使用して、所望の投与量を送達することができる。一部の実施形態では、単回投与は、例えば、手術の前もしくは後、または急性の疾患、障害、もしくは状態の場合に実施することができる。
【0286】
任意の特定の患者に特異的な、治療的に有効な用量レベル、予防的に有効な用量レベル、またはそれ以外の適切な用量レベルは、存在する場合、処置される障害の重症度および識別;援用される、1または複数のmRNA;援用される具体的組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康、性別、および摂食;援用される具体的な医薬組成物の、投与回数、投与経路、および排出速度;処置の持続期間;援用される具体的な医薬組成物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;および医療技術分野で周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存するであろう。
【0287】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、別の薬剤、例えば、別の治療剤、予防的薬剤、および/または診断的薬剤と組み合わせて投与することができる。「~と組み合わせた」とは、薬剤を同時に投与し、かつ/または送達のために併せて製剤化しなければならないことを含意するように意図するものではないが、これらの送達法も、本開示の範囲内にある。例えば、1または複数の異なるmRNAを含む、1または複数の組成物は、組み合わせて投与することができる。組成物は、1または複数の、他の所望の治療薬または医療手順と共時的に投与することもでき、これらの前に投与することもでき、これらに後続して投与することもできる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された、用量および/または時間スケジュールで投与する。一部の実施形態では、本開示は、それらのバイオアベイラビリティーを改善し、それらの代謝を低減および/もしくは修飾し、それらの排出を阻害し、かつ/またはそれらの体内の分布を改変する薬剤と組み合わせた、本開示の組成物、またはイメージング用組成物、診断用組成物、もしくは予防用組成物の送達を包摂する。
【0288】
本開示の組成物と組み合わせて投与しうる、例示的な治療剤は、細胞傷害剤、化学療法剤、および他の治療剤を含むがこれらに限定されない。細胞傷害剤は、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド、ラシェルマイシン、およびこれらの類似体を含みうる。放射性イオンもまた、治療剤として使用することができ、例えば、放射性ヨウ素、ストロンチウム、リン、パラジウム、セシウム、イリジウム、コバルト、イットリウム、サマリウム、およびプラセオジムを含みうる。他の治療剤は、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、および5-フルオロウラシル、およびデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロランブシル、ラシェルマイシン、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、およびシスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生剤(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン)、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、およびメイタンシノイド)を含みうる。
【0289】
組合せレジメンを援用する、治療(治療薬または手順)の特定の組合せは、所望の治療薬および/または手順、ならびに達成される所望の治療効果に対する適合性を考慮に入れる。また、援用される治療が、同じ障害に所望の効果を達成する場合もあり(例えば、がんを処置するために有用な組成物は、化学療法剤と共時的に投与しうる)、異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成する場合もあることも察知されるであろう。
【0290】
他の実施形態
本開示は、以下の実施形態に関する。
【0291】
一部の態様では、本開示は、被験体における抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0292】
他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0293】
なおさらなる態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含み、
mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の抗薬物抗体のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の抗薬物抗体のレベルが低下したら、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法に関する。
【0294】
一部の態様では、本開示は、被験体における薬物関連毒性を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性を低減または阻害するように、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0295】
他の態様では、本開示は、被験体における薬物関連毒性を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、被験体における、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性を低減または阻害するように、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0296】
前出の態様の一部の実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における血球数の減少(血球減少症)である。前出の態様の他の実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における自己免疫である。前出の態様のさらなる実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における補体媒介作用である。前出の態様の一部の実施形態では、目的のポリペプチドに対する薬物関連毒性は、被験体における造血の減少である。前出の態様の他の実施形態では、薬物関連毒性は、腎毒性または肝毒性である。
【0297】
一部の態様では、本開示は、被験体における抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を投与するステップを含み、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0298】
他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0299】
なおさらなる態様では、本開示は、目的のポリペプチドの、被験体への反復投与後における、抗薬物抗体応答を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、LNP内に封入された、目的のポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)の第1の用量を静脈内投与するステップであり、mmRNAが、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含み、
mmRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の抗薬物抗体のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の抗薬物抗体のレベルが低下したら、被験体における、目的のポリペプチドに対する抗薬物抗体応答を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入されたmmRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法に関する。
【0300】
一部の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0301】
前出の態様の一部の実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害を、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する。前出の態様の他の実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害は、リンパ球の活性化の低減または阻害である。
【0302】
前出の態様の一部の実施形態では、リンパ球の活性化の低減または阻害は、B細胞の活性化の低減または阻害である。前出の態様の他の実施形態では、B細胞の活性化の低減または阻害を、CD19+CD86+CD69+B細胞の頻度により決定する。
【0303】
前出の態様の一部の実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害は、サイトカイン産生の低減または阻害を引き起こす。前出の態様の一部の実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも10%減少させる。前出の態様のさらなる実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも25%減少させる。前出の態様の一部の実施形態では、免疫細胞の活性化を、少なくとも50%減少させる。前出の態様の他の実施形態では、免疫細胞の活性化を、化学修飾mRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する減少を伴わずに減少させる。
【0304】
一部の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0305】
他の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の、被験体への反復投与後の被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、
(i)被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、
化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;
(ii)被験体に由来する試料中の免疫細胞の活性化のレベルを検出するステップと;
(iii)試料中の免疫細胞の活性化のレベルが低下したら、被験体における、望ましくない免疫細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップと
を含む方法に関する。
【0306】
前出の態様の一部の実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害は、B細胞の活性化を低減または阻害する。前出の態様の一部の実施形態では、望ましくない免疫細胞の活性化の低減または阻害は、サイトカイン産生の低減または阻害を引き起こす。
【0307】
一部の態様では、本開示は、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、被験体における、望ましくないサイトカインの産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0308】
前出の態様の一部の実施形態では、望ましくないサイトカインの産生の低減または阻害を、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する。前出の態様の他の実施形態では、サイトカイン産生の低減または阻害は、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(IFN-γ)の産生の低減または阻害である。前出の態様の一部の実施形態では、サイトカイン産生の低減または阻害は、インターロイキン6(IL-6)の産生の低減または阻害である。
【0309】
前出の態様の一部の実施形態では、サイトカイン産生を、少なくとも10%減少させる。前出の態様の一部の実施形態では、サイトカイン産生を、少なくとも25%減少させる。前出の態様の一部の実施形態では、サイトカイン産生を、少なくとも50%減少させる。前出の態様の一部の実施形態では、サイトカイン産生を、化学修飾mRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する減少を伴わずに減少させる。
【0310】
なおさらなる態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0311】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0312】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0313】
なおさらなる態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、mRNAの後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0314】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない方法に関する。
【0315】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップであり、被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しないステップとを含む方法に関する。
【0316】
なおさらなる態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない方法に関する。
【0317】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、mRNAの後続の投与の実施時の被験体における血中クリアランスの加速化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含み、LNPが、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない方法に関する。
【0318】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0319】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0320】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0321】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、ポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgM分子の産生を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、PEGを認識するIgM分子の産生を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0322】
なおさらなる態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0323】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0324】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0325】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、B1a細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0326】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を反復投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、反復投与後の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0327】
なおさらなる態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された化学修飾mRNAの第1の用量を、静脈内投与するステップであり、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含むステップと;被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、被験体へと、LNP内に封入された化学修飾mRNAの第2の用量を、静脈内投与するステップとを含む方法に関する。
【0328】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)の複数回の投与を実施された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、1回または複数回の後続の投与の実施時の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0329】
他の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を投与された被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害する方法であって、被験体へと、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードする化学修飾mRNAを投与するステップを含み、後続のmRNAの投与の実施時の被験体における、形質細胞様樹状細胞の活性化を低減または阻害するように、化学修飾mRNAが、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含み、化学修飾mRNAが、1または複数の修飾ヌクレオ塩基を含む方法に関する。
【0330】
前出の態様の一部の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、B細胞を活性化させず、かつ/またはLNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない。前出の態様の一部の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、B細胞を活性化させない。前出の態様の一部の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、目的のポリペプチドをコードするmRNAは、LNPに結合することが可能なIgM分子の産生を誘導しない。
【0331】
前出の態様の一部の実施形態では、血中クリアランスの加速化の低減または阻害を、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入された、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を欠く化学修飾mRNAの対照投与と比較して決定する。前出の態様の一部の実施形態では、化学修飾mRNAによりコードされる、目的のポリペプチドの発現の、対応する低下または阻害を伴わずに、血中クリアランスの加速化を低減または阻害する。前出の態様の一部の実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、2週間未満である。前出の態様の一部の実施形態では、2回にわたる連続投与の間の間隔は、1週間未満である。
【0332】
前出の態様の一部の実施形態では、IgM分子は、ポリエチレングリコール(PEG)を認識する。
【0333】
前出の態様のうちのいずれかでは、本明細書で記載されるmmRNAを、脂質ナノ粒子内に封入して、静脈内投与する。前出の態様のうちのいずれかでは、本明細書で記載されるmmRNAを、毎週1回の注入により投与する。
【0334】
前出の態様のうちのいずれかでは、本明細書で記載されるmmRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるmmRNAは、コード領域に対して異種性である、5’UTRおよび3’UTRを含む。一部の実施形態では、本明細書で記載されるmmRNAを全修飾する。一部の実施形態では、本明細書で記載されるmmRNAを、特定の化学修飾のために全修飾する。
【0335】
前出の態様のうちのいずれかでは、本明細書で記載されるmmRNAは、シュードウリジン(ψ)、シュードウリジン(ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)および5-メチルシチジン(m5C)、2-チオウリジン(s2U)、2-チオウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メトキシウリジン(mo5U)および5-メチルシチジン(m5C)、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン(m5C)、N6-メチルアデノシン(m6A)、またはN6-メチルアデノシン(m6A)および5-メチルシチジン(m5C)を含む。
【0336】
前出の態様のうちのいずれかでは、本明細書で記載されるmmRNAは、シュードウリジン(ψ)、N1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザシュードウリジン、2-チオ-1-メチルシュードウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオジヒドロシュードウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオシュードウリジン、4-メトキシシュードウリジン、4-チオ-1-メチルシュードウリジン、4-チオシュードウリジン、5-アザウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン、もしくは2’-O-メチルウリジン、またはこれらの組合せを含む。
【0337】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるmmRNAは、1-メチルシュードウリジン(m1ψ)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、シュードウリジン(ψ)、α-チオグアノシン、もしくはα-チオアデノシン、またはこれらの組合せを含む。
【0338】
前出の態様のうちのいずれかでは、目的のポリペプチドは、治療用タンパク質、サイトカイン、増殖因子、抗体、または融合タンパク質である。
【0339】
前出の態様のうちのいずれかでは、脂質ナノ粒子は、リポソームである。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質を含む。一部の実施形態では、カチオン性脂質および/またはイオン化脂質は、DLin-KC2-DMAまたはDLin-MC3-DMAである。
【0340】
前出の態様のうちのいずれかでは、mmRNAは、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、この場合、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つは、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である。前出の態様のうちのいずれかでは、mmRNAは、miR-142-3p結合部位と、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む。
【0341】
前出の態様のうちのいずれかでは、化学修飾mRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。
【0342】
前出の態様のうちのいずれかでは、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの1~100ヌクレオチドの中に配置する。一部の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置する。
【0343】
前出の態様のうちのいずれかでは、化学修飾mRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、免疫細胞内で発現するマイクロRNAに対する、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。
【0344】
前出の態様のうちのいずれかでは、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置する。一部の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのmiR-142-3pマイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置する。
【0345】
前出の態様のうちのいずれかでは、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの30~50ヌクレオチドの中に配置する。一部の実施形態では、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を、終止コドンの後の、3’UTRの少なくとも50ヌクレオチドの中に配置する。
【0346】
前出の態様のうちのいずれかでは、mmRNAは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードする、コドン最適化オープンリーディングフレーム、少なくとも1つのmiR-126マイクロRNA結合部位を含む3’UTR、および連結されるヌクレオシドの3’テーリング領域を含む。
【0347】
前出の態様のうちのいずれかでは、mmRNAは、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含む。一部の実施形態では、mmRNAは、少なくとも2つのマイクロRNA結合部位を含み、この場合、マイクロRNA結合部位のうちの少なくとも1つは、miR-126マイクロRNA結合部位である。一部の実施形態では、mmRNAは、miR-126結合部位と、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-146-3p、miR-146-5p、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、およびmiR-27からなる群から選択される、miRに対する第2のマイクロRNA結合部位とを含む。一部の実施形態では、化学修飾mRNAは、miR-126結合部位およびmiR-142結合部位を含む。一部の実施形態では、mmRNA構築物は、miR-126結合部位およびmiR-142-3p結合部位を含む。
【0348】
前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、miR-142-3p結合部位である。一部の実施形態では、miR-142-3p結合部位は、配列番号3に示される配列を含む。
【0349】
前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、miR-126マイクロRNA結合部位である。一部の実施形態では、miR-126結合部位は、配列番号26に示される配列を含む。
【0350】
前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、miR-155マイクロRNA結合部位である。一部の実施形態では、miR-155結合部位は、配列番号35に示される配列を含む。
【0351】
前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、骨髄系細胞内で発現するマイクロRNAに結合する。前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、形質細胞様樹状細胞内で発現するマイクロRNAに結合する。前出の態様のうちのいずれかでは、マイクロRNA結合部位は、マクロファージ内で発現するマイクロRNAに結合する。
【0352】
定義
血中クリアランスの加速化(ABC):本明細書で使用される「血中クリアランスの加速化」または「ABC」は、ある特定の、外因的に投与される薬剤が、2回目およびその後の投与において、血液から急速にクリアランスされる現象を指す。
【0353】
~を投与すること:本明細書で使用される「~を投与すること」とは、組成物を、被験体または患者へと送達する方法を指す。投与法は、送達を、体内の特異的領域または系へとターゲティングする(例えば、特異的に送達する)ように選択することができる。例えば、投与は、非経口投与(例えば、皮下注射法、皮内(intracutaneous)注射法、静脈内注射法、腹腔内注射法、筋内注射法、関節内注射法、動脈内注射法、滑膜内注射法、胸骨下注射法、髄腔内注射法、病変内注射法、または頭蓋内注射法、ならびに任意の適する注入法)、経口投与、経皮投与または皮内(intradermal)投与、皮間投与、直腸内投与、膣内投与、局所投与(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/またはドロップ)、経粘膜投与、経鼻投与、口腔内投与、腸内投与、硝子体内投与、腫瘍内投与、舌下投与、鼻腔内投与;気管内点滴、気管支内点滴、および/または吸入による投与;経口スプレーおよび/もしくは経口粉末、経鼻スプレー、および/もしくは経鼻エアゾールとしての投与、ならびに/または門脈カテーテルを介する投与でありうる。
【0354】
抗薬物抗体:本明細書で使用される「抗薬物抗体」または「ADA」という用語は、被験体において存在する治療用タンパク質に対して、被験体において発生する抗体を指す。当技術分野では、古典的な抗薬物抗体(ADA)応答は、組換え治療用タンパク質の、被験体への全身投与から生じると理解される。さらに、mRNA治療薬に関して本明細書で使用されるADA応答とは、本明細書で記載される動物研究において観察される抗体応答も包摂することが意図され、この場合、mRNA治療薬によりコードされる治療用タンパク質に結合する抗体(すなわち、mRNA薬によりコードされるタンパク質に対して発生する抗体)が発生した。mRNA薬によりコードされる治療用タンパク質に対する、このような抗体応答もまた、抗タンパク質抗体(APA)応答と称し、本明細書では、この用語法も、ADA応答と互換的に使用することができる。
【0355】
アポトーシス:本明細書で使用される「アポトーシス」とは、プログラムされた事象の継起が細胞死をもたらす、細胞死の形態を指す。アポトーシスの顕徴は、形状の変化、細胞の収縮、カスパーゼの活性化、核および細胞質の凝縮、ならびに細胞膜のトポロジーの変更を含む。生化学的にアポトーシス性の細胞は、細胞内カルシウム濃度の増大、染色体DNAの断片化、および新規の細胞表面成分の発現により特徴付けられる。特定の実施形態では、アポトーシスを経る細胞は、ミトコンドリア外膜の透過化(MOMP)を経る場合がある。
【0356】
およそ、約:目的の、1または複数の値へと適用される場合に、本明細書で使用される「およそ」または「約」は、言明された基準値に近似の値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、そうでないことが言明されるか、または文脈からそうでないことが明らかでない限りにおいて(このような数が、可能な値の100%を超える場合を除き)、言明された基準値に対して、いずれかの向き(基準値を超える向きまたは基準値未満の向き)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはこれ未満に収まる値の範囲を指す。
【0357】
結合抗体(BAB):本明細書で使用される「結合抗体」または「BAB」とは、治療用タンパク質など、標的抗原に結合する、すなわち、これと相互作用することが可能な抗体を指す。結合抗体という用語は、中和抗体(すなわち、標的抗原に結合し、抗原の機能的活性を阻害する抗体)および非中和抗体(すなわち、標的抗原に結合するが、抗原の機能的活性を阻害しない抗体)を包摂することを意図する。
【0358】
がん:本明細書で使用される「がん」とは、細胞増殖の異常および/または調節不能を伴う状態である。がんという用語は、良性がんおよび悪性がんを包摂する。例示的で非限定的ながんは、副腎皮質がん、進行がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、脳腫瘍、脳がん、乳がん、小児がん、原発不明がん、キャッスルマン病、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ユーイングファミリーの腫瘍、眼がん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間葉系腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎細胞癌、喉頭下咽頭がん、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺カルチノイド腫瘍、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、筋異形成症候群、鼻腔副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔がんおよび口腔咽頭がん、口腔肉腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、成人軟組織内の肉腫、皮膚の基底細胞がんおよび扁平上皮がん、黒色腫、小腸がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびにがん処置により引き起こされる続発がんを含む。特定の実施形態では、がんは、肝がん(例えば、肝細胞癌)または結腸直腸がんである。他の実施形態では、がんは、血液ベースのがんまたは造血がんである。
【0359】
コンジュゲートさせた:2つまたはそれよりも多い部分との関連で使用される場合に本明細書で使用される「コンジュゲートさせた」という用語は、部分が物理的に会合するか、あるいは直接的に、または連結剤として用いられる、1もしくは複数のさらなる部分を介して、互いと接続されて、構造が使用される条件下、例えば、生理学的条件下で、部分が依然として物理的に会合しているように、十分に安定的な構造を形成することを意味する。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多い部分を、直接的な共有結合的化学的結合によりコンジュゲートさせることができる。他の実施形態では、2つまたはそれよりも多い部分を、イオン結合または水素結合によりコンジュゲートさせることができる。
【0360】
~を接触させること:本明細書で使用される「~を接触させること」という用語は、2つまたはそれよりも多い実体の間の物理的接続を確立することを意味する。例えば、細胞を、mRNAまたは脂質ナノ粒子組成物と接触させることとは、細胞と、mRNAまたは脂質ナノ粒子とに、物理的接続を共有させることを意味する。生物学的技術分野では、in vivo、in vitro、およびex vivoのいずれにおいても、細胞を、外部の実体と接触させる方法が周知である。本開示の例示的な実施形態では、哺乳動物の細胞を、組成物(例えば、本開示の単離mRNA、ナノ粒子、または医薬組成物)と接触させるステップを、in vivoで実施する。例えば、生物(例えば、哺乳動物)内に配置されうる脂質ナノ粒子組成物と、細胞(例えば、哺乳動物細胞)とを接触させることは、任意の適する投与経路(例えば、生物への非経口投与であって、静脈内投与、筋内投与、皮内投与、および皮下投与を含む非経口投与)により実施することができる。in vitroに存在する細胞では、組成物(例えば、脂質ナノ粒子または単離mRNA)と、細胞とは、例えば、組成物を、細胞の培養培地へと添加することにより接触させることができ、トランスフェクションを伴うか、これを結果としてもたらしうる。さらに、1つを超える細胞に、ナノ粒子組成物を接触させることもできる。
【0361】
薬物関連毒性:本明細書で使用される「薬物関連毒性」または単なる「毒性」という用語は、被験体における、mRNAによりコードされる治療用タンパク質の発現から生じうる、望ましくないin vivo作用であって、例えば、コードされる治療用タンパク質に結合する(そして、潜在的に中和する)抗体の発生など、コードされる治療用タンパク質に対して刺激される免疫応答の結果として生じうる、望ましくないin vivo作用を指す。したがって、「薬物関連毒性」という用語は、コードされた治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答から生じる、in vivoにおける有害作用であって、血液学的作用(例えば、血液毒性)、腎作用、自己免疫作用、肝作用などを含むがこれらに限定されない有害作用を包摂することを意図する。
【0362】
~を封入する:本明細書で使用される「~を封入する」という用語は、囲い込むか、取り囲むか、または包み込むことを意味する。一部の実施形態では、化合物、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)、または他の組成物を、十全に封入することもでき、部分的に封入することもでき、実質的に封入することもできる。例えば、一部の実施形態では、本開示のmRNAを、脂質ナノ粒子、例えば、リポソーム内に封入することができる。
【0363】
有効量:本明細書で使用される、薬剤の「有効量」という用語は、有益または所望の結果、例えば、臨床的結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、適用される文脈に依存する。例えば、がんを処置する薬剤を投与する文脈では、薬剤の有効量は、例えば、本明細書で規定される通り、薬剤の投与を伴わずに得られる応答と比較して、がんの処置を達成するのに十分な量である。一部の実施形態では、治療有効量とは、送達される薬剤(例えば、核酸、治療剤、診断剤、または予防剤)の量であって、感染、疾患、障害、および/もしくは状態を患うか、またはこれらを受けやすい被験体へと投与する場合に、感染、疾患、障害、および/または状態を、処置し、これらの症状を改善し、これらを診断し、防止し、かつ/またはこれらの発症を遅延させるのに十分な量である。
【0364】
発現:本明細書で使用される核酸配列の「発現」とは、以下の事象:(1)RNA鋳型の、DNA配列からの産生(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる);(3)RNAの、ポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;および(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾のうちの1または複数を指す。
【0365】
同一性:本明細書で使用される「同一性」という用語は、ポリマー分子の間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)の間および/またはポリペプチド分子の間の、全体的な類縁性を指す。例えば、2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、最適な比較を目的として、2つの配列をアライメントすることにより実施することができる(例えば、最適なアライメントのために、第1の核酸配列および第2の核酸配列の一方または両方に、ギャップを導入することができ、同一でない配列は、比較を目的として無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較を目的としてアライメントされる配列の長さは、基準配列の長さの、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じヌクレオチドにより占有されていれば、分子は、この位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列により共有される、同一な位置の数の関数である。2つの配列の間の配列の比較、および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、Computational Molecular Biology、Lesk, A. M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith, D. W.編、Academic Press、New York、1993年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje, G.、Academic Press、1987年;Computer Analysis of Sequence Data、I部、Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;ならびにSequence Analysis Primer、Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M Stockton Press、New York、1991年において記載されている方法などの方法を使用して決定することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用する、ALIGNプログラム(version 2.0)へと組み込まれた、MeyersおよびMiller(CABIOS、1989年、4巻:11~17頁)のアルゴリズムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは代替的に、NWSgapdna.CMP行列を使用する、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して決定することもできる。配列の間の同一性パーセントを決定するのに一般に援用される方法は、参照により本明細書に組み込まれる、Carillo, H.およびLipman, D.、SIAM J Applied Math.、48巻:1073頁(1988年)において開示されている方法を含むがこれらに限定されない。同一性を決定するための技法は、一般に利用可能なコンピュータプログラムにおいてコード化されている。2つの配列の間の相同性を決定する、例示的なコンピュータソフトウェアは、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Research、12巻(1号):387頁、1984年)BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S. F.ら、J. Molec. Biol.、215巻、403頁、1990年)を含むがこれらに限定されない。
【0366】
断片:本明細書で使用される「断片」とは、部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離されるか、または組換えDNA法により得られた、全長タンパク質を消化することにより得られるポリペプチドを含みうる。
【0367】
血液毒性:本明細書で使用される「血液毒性」という用語は、造血系において生じる毒性学的事象(例えば、薬物関連毒性から生じる)であって、血球減少症(例えば、網状赤血球減少症、血小板減少症、好中球減少症)、造血の減少、および貧血を含むがこれらに限定されない事象を指す。機構に限定されることを意図するものではないが、被験体における血液毒性は、被験体へと投与されるmRNAによりコードされる治療用タンパク質に対する免疫応答の発達であって、例えば、治療用タンパク質に対して抗体が発生する結果としての免疫応答の発達から生じる場合があり、したがって、血液毒性は、薬物関連毒性のサブセットでありうる。
【0368】
異種:本明細書で使用される「異種」とは、配列(例えば、アミノ酸配列、またはアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド)が通常、所与のポリペプチド内またはポリヌクレオチド内に存在しないことを指し示す。例えば、1つのタンパク質のドメインまたはモチーフに対応するアミノ酸配列は、第2のタンパク質に対して異種性でありうる。
【0369】
疎水性アミノ酸:本明細書で使用される「疎水性アミノ酸」とは、非帯電の非極性側鎖を有するアミノ酸である。自然発生の疎水性アミノ酸の例は、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、およびトリプトファン(Trp)である。
【0370】
単離された:本明細書で使用される「単離された」という用語は、それが会合していた(天然であれ、実験の設定下であれ)成分の少なくとも一部から分離された物質または実体を指す。単離物質は、それらが会合していた物質との関連で、変動するレベルの純度を有しうる。単離物質および/または単離実体は、それらが初期に会合していた他の成分のうちの少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれよりも多くから分離することができる。一部の実施形態では、単離薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%を超えて、または約99%を超えて純粋である。本明細書で使用される通り、物質は、他の成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。
【0371】
リポソーム:本明細書で使用される「リポソーム」とは、水性の内部を囲い込む、脂質含有膜を含む構造を意味する。リポソームは、1または複数の脂質膜を有しうる。リポソームは、単層型リポソーム(当技術分野ではまた、単層リポソームとしても公知である)および多層型リポソーム(当技術分野ではまた、多層リポソームとしても公知である)を含む。
【0372】
転移:本明細書で使用される「転移」という用語は、がんが、原発腫瘍として最初に生じた場所から、体内の遠隔の位置へと拡散する過程を意味する。この過程の結果として生じる続発腫瘍を、「転移」と称することができる。
【0373】
mRNA:本明細書で使用される「mRNA」とは、メッセンジャーリボ核酸を指す。mRNAは、天然の場合もあり、非自然発生の場合もある。例えば、mRNAは、1または複数のヌクレオ塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、またはリンカーなど、修飾構成要素および/または非自然発生の構成要素を含みうる。mRNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステムループ、ポリA配列、および/またはポリアデニル化シグナルを含みうる。mRNAは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有しうる。mRNAの翻訳、例えば、in vivoにおける、哺乳動物細胞内の、mRNAの翻訳は、ポリペプチドを産生しうる。従来、mRNA分子の塩基構成要素は、少なくとも1つのコード領域、5’-非翻訳領域(5’UTR)、3’UTR、5’キャップ、およびポリA配列を含む。
【0374】
マイクロRNA(miRNA):本明細書で使用される「マイクロRNA(miRNA)」とは、遺伝子発現の転写後調節(例えば、mRNAの切断、そのポリAテールの短縮によるmRNAの不安定化、および/またはリボソームによる、mRNAの、ポリペプチドへの翻訳の効率に対する干渉などの、RNAサイレンシングによって)において機能しうる、小型の非コードRNA分子である。成熟miRNAは典型的に、約22~23ヌクレオチド長である。
【0375】
マイクロRNA(miRNA)(miR)結合部位:本明細書で使用される「マイクロRNA(miRNA)(miR)結合部位」とは、miRNA(miR)標的部位もしくはmiRNA(miR)認識部位、またはmiRNA(miR)が結合または会合する任意のヌクレオチド配列を指す。一部の実施形態では、miRNA(miR)結合部位とは、miRNA(miR)結合の少なくとも「シード」領域が結合する、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)のヌクレオチド位置またはヌクレオチド領域を表す。「結合」は、従来のワトソン-クリック型ハイブリダイゼーション規則に従う場合もあり、miRNAの、マイクロRNA部位における標的配列、またはこれに隣接する標的配列との、任意の安定的な会合を反映する場合もあることを理解されたい。miRNA(miR)結合部位に言及する場合のmiRNA(miR)配列とは、miRNA結合部位に結合するmiRNAと相補性(例えば、部分的、実質的、または完全な(または十全な)相補性)を有すると理解されるものとする。miRNA(miR)結合部位は、miRNA(miR)が、その対応するmRNAに対して、翻訳の制御および/または転写物安定性の制御を及ぼす場合にそうである通り、miRNA(miR)、例えば、内因性miRNA(miR)に部分的に相補的でありうる。代替的に、miRNA(miR)結合部位は、miRNA(miR)が、その対応するmRNAに対して、転写後制御および/または翻訳の制御を及ぼす場合にそうである通り、miRNA(miR)、例えば、内因性miRNA(miR)に十全に相補的(完全に相補的)でありうる。本開示の好ましい態様では、miRNA(miR)結合部位は、miRNA(miR)、例えば、内因性miRNA(miR)に十全に相補的であり、対応するmiRが発現する、例えば、内因的に発現する、in vivoの細胞内および/または組織内の、前記miRNA(miR)を含むmRNAの切断を引き起こしうる。
【0376】
miRNAシード:本明細書で使用されるmiRNAの「シード」領域とは、成熟miRNAの2~8位の領域内の配列であって、典型的に、miRNA結合部位に対する完壁なワトソン-クリック型相補性を有する配列を指す。miRNAシードは、成熟miRNAの2~8位または2~7位を含みうる。一部の実施形態では、miRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2~8)を含むことが可能であり、この場合、対応するmiRNA結合部位内のシード相補性部位には、miRNAの1位と対面するアデニン(A)がフランキングする。一部の実施形態では、miRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2~7)を含むことが可能であり、この場合、対応するmiRNA結合部位内のシード相補性部位には、miRNAの1位と対面するアデニン(A)がフランキングする。miRNA結合部位に言及する場合のmiRNAシード配列とは、miRNA結合部位に結合するmiRNAのシード配列と相補性(例えば、部分的、実質的、または完全な(または十全な)相補性)を有すると理解されるものとする。
【0377】
修飾された:本明細書で使用される「修飾された」とは、本開示の分子状態または構造の変化を指す。分子は、化学的修飾、構造的修飾、および機能的修飾を含む多くの方式で修飾することができる。一実施形態では、本開示のmRNA分子は、例えば、天然リボヌクレオチドであるA、U、G、およびCに関する場合の通り、非天然ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの導入により修飾する。キャップ構造など、非カノニカルのヌクレオチドも、リボヌクレオチドであるA、C、G、Uの化学的構造とは異なるが、「修飾された」と考えられる。
【0378】
ナノ粒子:本明細書で使用される「ナノ粒子」とは、約1000nm未満のスケールで、任意の1つの構造特色を有する粒子であって、同じ材料のバルク試料と比較して、新規の特性を呈示する粒子を指す。規定では、ナノ粒子は、約500nm未満、約200nm未満、または約100nmのスケールで、任意の1つの構造特色を有する。規定ではまた、ナノ粒子は、約50nm~約500nm、約50nm~約200nm、または約70~約120nmのスケールでも、任意の1つの構造特色を有する。例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約1~1000nmのオーダーの、1または複数の大きさを有する粒子である。他の例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約10~500nmのオーダーの、1または複数の大きさを有する粒子である。他の例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約50~200nmのオーダーの、1または複数の大きさを有する粒子である。球形のナノ粒子は、例えば、約50~100または70~120ナノメートルの間の直径を有するであろう。ナノ粒子は、その輸送および特性に関し、単位として挙動することが最も多い。ナノ粒子を、対応するバルク材料から差別化する新規の特性は典型的に、1000nmを下回るサイズスケール、または約100nmのサイズで発達するが、ナノ粒子は、例えば、楕円状粒子、管状粒子などでは、より大きなサイズでもありうることが注目される。大半の分子のサイズは、上記の概形に当てはまるが、個々の分子は通例、ナノ粒子とは称さない。
【0379】
中和抗体(NAB):本明細書で使用される「中和抗体」または「NAB」は、標的抗原(治療用タンパク質など)に結合し(すなわち、これと相互作用し)、抗原の少なくとも1つの機能的活性を阻害することが可能な抗体を指す。中和抗体の、その標的抗原への結合は、抗原の少なくとも1つの機能的活性の部分的阻害を引き起こす場合もあり、抗原の少なくとも1つの機能的活性の完全な阻害を引き起こす場合もある。ある特定の場合には、中和抗体の、その標的抗原への結合は、標的抗原の全ての機能的活性の、部分的阻害を引き起こす場合もあり、完全な阻害を引き起こす場合もある。
【0380】
核酸:本明細書で使用される「核酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、ヌクレオチドのポリマーを含む、任意の化合物および/または物質を包摂する。これらのポリマーは、ポリヌクレオチドと称することが多い。本開示の例示的な核酸またはポリヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA-RNAハイブリッド体、RNAi誘導剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒性DNA、三重螺旋形成を誘導するRNA、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(β-D-リボ立体配置を有するLNA、α-L-リボ立体配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2’-アミノLNA、および2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-α-LNAを含むLNA)、またはこれらのハイブリッド体を含むがこれらに限定されない。
【0381】
患者:本明細書で使用される「患者」とは、処置を求めるかまたは必要としうる被験体、処置を要請する被験体、処置を受けつつある被験体、処置を受ける被験体、または特定の疾患または状態について訓練された従事者によるケア下にある被験体を指す。特定の実施形態では、患者は、ヒト患者である。
【0382】
薬学的に許容される:本明細書では、「薬学的に許容される」という語句を、健全な医療判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適し、妥当な有益性/危険性比に見合う、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように援用する。
【0383】
薬学的に許容される賦形剤:本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、本明細書で記載される化合物以外の(例えば、活性化合物を懸濁または溶解させることが可能なビヒクル)で、患者において、実質的に非毒性および非炎症性である特性を有する任意の成分を指す。賦形剤は、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、薄膜形成剤またはコーティング、香味剤、芳香剤、流動促進剤(流動増強剤)、滑沢剤、保存剤、印字インキ、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味剤、および水和水を含みうる。例示的な賦形剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、結晶質セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファデンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、滑石、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールを含むがこれらに限定されない。
【0384】
薬学的に許容される塩:本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」とは、開示される化合物の誘導体であって、親化合物を、既存の酸部分または塩基部分を、その塩形態へと転換することにより(例えば、遊離塩基基を、適する有機酸と反応させることにより)修飾した誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例は、アミンなど、塩基性残基の、鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸など、酸性残基の、アルカリ塩または有機塩などを含むがこれらに限定されない。代表的な酸添加塩は、酢酸塩(acetate, acetic acid)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate, benzene sulfonic acid)、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのほか、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むがこれらに限定されない、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンを含む。本開示の薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の、従来の非毒性塩を含む。本開示の薬学的に許容される塩を、従来の化学的方法により、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形態または遊離塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中の、化学量論量の、適切な塩基または酸と反応させることにより調製することができ、一般に、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適する塩のリストは、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年、1418頁、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、P.H. StahlおよびC.G. Wermuth(編)、Wiley-VCH、2008年;ならびにBergeら、Journal of Pharmaceutical Science、66巻、1~19頁(1977年)において見出される。
【0385】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」または「目的のポリペプチド」という用語は、典型的に、天然で(例えば、単離または精製された)産生される場合もあり、合成により産生することもできるペプチド結合により接続された、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0386】
被験体:本明細書で使用される「被験体」という用語は、本開示に従う組成物を、例えば、実験、診断、予防、および/または治療の目的で投与しうる、任意の生物を指す。典型的な被験体は、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物)および/または植物を含む。一部の実施形態では、被験体は、患者でありうる。
【0387】
実質的に:本明細書で使用される「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の、全てまたはほぼ全ての広がりまたは程度を呈示する定性的条件を指す。生物学的技術分野の当業者は、生物学的現象および化学的現象が、仮にそうなるとしても、完結に至り、かつ/もしくは完全性へと進行するか、または絶対的な結果を達成もしくは回避することはまれであることを理解するであろう。したがって、本明細書では、「実質的に」という用語を、多くの生物学的現象および化学的現象に固有の完全性の潜在的欠如を捕捉するのに使用する。
【0388】
~を患うこと:疾患、障害、および/または状態「を患う」個体は、疾患、障害、および/または状態の1または複数の症状を伴うか、またはこれらを提示すると診断されている。
【0389】
ターゲティング部分:本明細書で使用される「ターゲティング部分」とは、ナノ粒子を、特定の細胞型、組織型、および/または器官型へとターゲティングしうる、化合物または薬剤である。
【0390】
治療剤:「治療剤」という用語は、被験体へと投与されると、治療的、診断的、および/もしくは予防的効果を及ぼし、かつ/または所望の生物学的効果および/もしくは薬理学的効果を誘発する、任意の薬剤を指す。
【0391】
トランスフェクション:本明細書で使用される「トランスフェクション」という用語は、分子種(例えば、mRNAなどのポリヌクレオチド)を、細胞へと導入する方法を指す。
【0392】
~を処置すること:本明細書で使用される「~を処置すること」という用語は、特定の感染、疾患、障害、および/または状態を、部分的もしくは完全に緩和し、軽快させ、改善し、和らげ、これらの発症を遅延させ、これらの進行を阻害し、これらの重症度を低減し、かつ/またはこれらの1もしくは複数の症状もしくは特色の発生率を低減することを指す。例えば、がん「を処置すること」とは、腫瘍の生存、増殖、および/または拡大を阻害することを指す場合がある。処置は、疾患、障害、および/または状態と関連する病態を発症する危険性を減少させる目的で、疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を呈示しない被験体、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは状態の早期の徴候だけを呈示する被験体へと投与することができる。
【0393】
~を防止すること:本明細書で使用される「~を防止すること」という用語は、特定の感染、疾患、障害、および/または状態の、1または複数の症状または特色の発症を、部分的または完全に阻害することを指す。
【0394】
腫瘍:本明細書で使用される「腫瘍」とは、良性であれ、悪性であれ、組織の異常な増殖である。
【0395】
非修飾:本明細書で使用される「非修飾」とは、任意の方式で変化させる前の、任意の物質、化合物、または分子を指す。非修飾とは、生体分子の野生型またはナイーブ形態を指す場合もあるが、常にそうであるわけではない。分子は、各修飾分子を、後続の修飾のための、「非修飾」の出発分子として用いうる、一連の修飾を経る場合もある。
【0396】
同等物および範囲
当業者は、規定の実験だけを使用して、本明細書で記載される本開示に従う具体的な実施形態の多くの同等物を認識または確認することが可能であろう。本開示の範囲は、以下の記載に限定されることを意図するものではなく、付属の特許請求の範囲で明示される通りである。
【0397】
特許請求の範囲では、「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」などの冠詞は、反対のことが指し示されるか、またはそうでないことが文脈から明らかでない限りにおいて、1つまたは1つを超えるを意味する場合がある。反対のことが指し示されるか、またはそうでないことが文脈から明らかでない限りにおいて、群の1または複数のメンバーの間の「または」を含む、特許請求の範囲または記載は、群のメンバーのうちの1つ、1つを超えるメンバー、または全てが、所与の生成物または過程において存在するか、これにおいて援用されるか、または他の形でこれに関与性であれば満たされると考えられる。本開示は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の生成物または過程において存在するか、これにおいて援用されるか、または他の形でこれに関与性である実施形態を含む。本開示は、群のメンバーのうちの1つを超えるメンバーまたは全てが、所与の生成物または過程において存在するか、これにおいて援用されるか、または他の形でこれに関与性である実施形態を含む。
【0398】
「~を含むこと」という用語は、オープンであることを意図し、さらなる要素またはステップの包含を許容するが要請はしない。したがって、本明細書で、「~を含むこと」という用語を使用する場合、「~からなること」という用語もまた、包摂され、開示される。
【0399】
範囲を与える場合、端点を含む。さらに、そうでないことが指し示されるか、またはそうでないことが文脈および当業者の理解から明らかでない限りにおいて、範囲として表される値は、本開示の異なる実施形態で言明される範囲内の、文脈によりそうでないことが明確に指示されない限りにおいて、範囲の下限の単位の10分の1までの、任意の具体的な値または部分範囲を仮定しうることを理解されたい。
【0400】
全ての引用される情報源、例えば、参考文献、刊行物、データベース、データベース項目、および本明細書で引用される技術は、引用時に明示的に言明されない場合であってもなお、参照により本出願へと組み込まれる。引用される情報源の言明と本出願の言明とで齟齬が生じる場合は、本出願における言明を是とする。
【実施例】
【0401】
本開示は、以下の実施例を参照することにより、より十分に理解されるであろう。しかし、これらの実施例は、本開示の範囲を限定するとはみなされないものとする。本明細書で記載される実施例および実施形態は、例示だけを目的とするものであり、当業者には、それに照らした多様な改変または変化が示唆され、本出願の精神および権限内、ならびに付属の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。
【0402】
(実施例1)
hEPOをコードする修飾mRNAは、非ヒト霊長動物において、抗薬物抗体(ADA)応答を誘発する
本実施例では、ヒトエリスロポエチン(hEPO)をコードするが、miR結合部位を欠く修飾mRNA(mmRNA)を、4週間の研究において、カニクイザルへと投与して、動物におけるhEPOの発現について検討した。
【0403】
hEPOをコードするmmRNAを、50%のMC3、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、1.5%のPEG-DMGを含み、N:Pを約5.5とする(値は、モル%に基づく)、MC3脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化した。mmRNA構築物は、Cap 1である5’キャップ構造(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含有し、5-メチルシトシンおよび1-メチルシュードウリジンで全修飾され、140ヌクレオチドのポリAテールを含んだ。mmRNA構築物は、miR結合部位のいずれの挿入の存在も欠いた。miR結合部位のいずれの挿入も伴わない、このhEPOコード構築物のヌクレオチド配列を、配列番号7に示す(ポリAテールは示さない)。
【0404】
研究は、7つの動物群を含んだ。陰性対照群は、PBSで処置した。3つの処置群を、投与1回当たり0.02mg/kg、投与1回当たり0.1mg/kg、または投与1回当たり0.2mg/kgの、3つの異なる用量のhEPOコードmmRNA LNPのうちの1つで処置した。低用量を、ヒトEPOの治療有効曝露量の少なくとも2倍を達成するように選択する一方で、高用量は、治療有効用量の、少なくとも10倍のhEPO曝露レベルを達成するように選択した。陽性対照群は、用量を6000U/kgとする組換えhEPOタンパク質で処置した。他の2つの対照群は、非関与性のmmRNA(非翻訳mRNA形態)を含有するLNP、またはLNP単独で処置した。投与スケジュールは、IV注入による、毎週1回、連続4週間(のべ5回にわたる投与)であった。注入は、ポンプを介して60分間(IV)にわたった。4週間の投与期間に、4週間の回収査定期間(対照および高用量だけ)を後続させた。
【0405】
カニクイザルにおけるhEPOの発現レベルは、処置日の各々(1、8、15、22、および29日目)の、注入の6時間後において、ELISAにより測定した。結果を、
図1に示す。結果は、低用量のmmRNA(投与1回当たり0.02mg/kg)で処置されたカニクイザルが、治療有効レベルのhEPOを呈示し、これが、4週間にわたる研究を通して、ほぼ同じレベルで維持されたことを裏付ける。これに対し、中用量および高用量のmmRNA(投与1回当たり0.1mg/kgおよび投与1回当たり0.2mg/kg)で処置されたカニクイザルでは、EPOレベルは、研究の8~15日目の間から低下し、研究の持続期間にわたり、低レベルを維持した。網状赤血球数は、中用量および高用量のmmRNA(投与1回当たり0.1mg/kgおよび投与1回当たり0.2mg/kg)で処置された動物における、網状赤血球減少症の遷延を明らかにした。さらに、組織学的解析も、中用量または高用量のmmRNAで処置された動物の骨髄中の造血の減少を明らかにした。高用量のmmRNAで処置された動物における、網状赤血球減少症および造血の減少は、動物において、抗薬物抗体(ADA)応答が時間経過にわたり発達していることを示唆した。
【0406】
ヒトEPOに対するADA応答が存在したのかどうかを決定するために、動物に由来する血清に対して、ELISAを実施して、カニクイザル抗ヒトEPO抗体の存在を検出した。血液を、大腿部静脈穿刺により回収し、血清を、室温で回収し、少なくとも30分間にわたり凝固させた後で、低温(4℃)遠心分離機内、2700rpmで、10分間にわたり遠心分離にかけた。血清中で抗ヒトEPO IgGを検出するために、標準的なELISA法を使用した。試料は、二連で解析した。
【0407】
一連の陰性対照結果を使用して、それを上回るレベルが、アッセイにおける「陽性」結果を構成する、閾値レベルを確立した。陰性対照試料についての代表的な定量的ELISA結果であって、閾値レベルを設定するのに使用されたELISA結果を、下記の表3に示す。
【表3】
【0408】
研究において使用した、7つの異なる動物群についてのELISA結果を、下記の表4に示す。
【表4】
【0409】
結果は、最高用量のhEPOコードmmRNA(投与1回当たり0.2mg/kg)で処置されたカニクイザルの全て、および中レベルの用量(投与1回当たり0.1mg/kg)で処置されたカニクイザルのうちの50%が、ヒトEPOに対するADA応答を呈示したことを裏付ける。これは、予測外の知見であり、このために、本発明者らは、非ヒト霊長動物において、コードされるタンパク質に対するADA応答を低減しようと試みるのに、さらなるmmRNA構築物をデザインし、これらについて調べた。これらの研究の結果を、実施例2に記載する。
【0410】
(実施例2)
miR-142-3p結合部位の、mmRNAへの組込みは、コードされるタンパク質に対するADA応答を阻害する
本実施例では、miR-142-3p結合部位を、構築物の3’UTRへと組み込む、ヒトEPOコードmmRNA構築物を調製した。mmRNA構築物は、Cap 1である5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含み、5-メチルシトシンおよび1-メチルシュードウリジンで全修飾され、およそ140ヌクレオチドのポリAテールを含んだ。構築物の概略図を、
図2に示す。このヒトEPOコードmmRNAのヌクレオチド配列を、配列番号1(ポリAテールを伴わない)に示す。miR-142-3p結合部位を含む3’UTRのヌクレオチド配列を、配列番号2に示す。miR-142-3p結合部位のヌクレオチド配列を、配列番号3に示す。miR-142-3p結合部位の付加以外では、mmRNA構築物およびLNP調製物は、実施例1のものと同じであった。
【0411】
カニクイザルを、miR-142-3p結合部位を伴うhEPOコードmmRNAをLNP中に含む構築物で、用量を1日当たり0.2mg/kgとして処置した。この用量は、miR-142-3p結合部位を欠く構築物を使用して、hEPOに対するADA応答を誘発することが既に示されていた(実施例1を参照されたい)。実施例1で記載した通り、動物を、1、8、15、22、および29日目において処置する、4週間にわたる研究を行った。静脈内注入(60分間)は、上腕静脈または伏在静脈への、一時的なカテーテル留置を介して施した。
【0412】
hEPOに対するADA応答が、動物において誘発されたのかどうかを検討するために、実施例1で記載した通りに、動物に由来する血清に対して、ELISAを実施して、カニクイザル抗ヒトEPO抗体の存在を検出した。
【0413】
用量を0.2mg/kgとする処置についての、5つの時点の各々における、4匹の動物(1301、1302、1303、および1304)の結果を、下記の表5に示す。「陰性」または「陽性」としての試料の状態は、実施例1で記載した通り、陰性対照試料についての結果に基づき設定された閾値と比べて決定した。
【表5】
【0414】
結果は、処置されたサル(1303)4匹のうちの1匹だけが、hEPOに対するADA応答を呈示することを示した。したがって、miR-142-3p結合部位を、hEPOコードmmRNA構築物へと組み込んだところ、高用量(0.2mg/kg)の構築物で処置された動物のうちの25%だけが、コードされるタンパク質に対するADAを呈示した(表5)のに対し、miR-142-3p結合部位を欠く構築物を使用する、同じ用量による処置は、100%の動物が、コードされるタンパク質に対するADAを呈示する結果をもたらした(表4)。
【0415】
図3は、miR-142-3p結合部位を欠く0.2mg/kgのmRNA構築物で処置されたサルについてのELISA結果と、miR-142-3p結合部位を含有する0.2mg/kgのmRNA構築物で処置されたサルについてのELISA結果との比較を示し、動物における抗hEPO抗体のレベルを、時間経過にわたり示す。抗薬物抗体(ADA)応答を呈示する動物が指し示される。結果は、miR結合部位を欠く構築物で処置された動物では、miR結合部位を含有する構築物と比較して、著明に大きなADA応答が観察されたことを明確に裏付ける。
【0416】
カニクイザルにおける追跡研究でも、上記で記載したパイロット研究と全く同様の結果が観察された。miR-142-3p結合部位を欠くhEPOコードmmRNA構築物の投与は、100%の動物が、コードされるタンパク質に対するADAを呈示する結果をもたらしたが、miR-142-3p結合部位の、構築物への組込みは、50%の動物だけが、コードされるタンパク質に対するADAを呈示する結果をもたらした。3つのmiR-142-3p結合部位の、構築物への組込みが、効果の増強をもたらさなかったことから、単一のmiR-142-3p結合部位が、コードされるタンパク質に対するADAの低減に十分であることが裏付けられる。
【0417】
したがって、これらの結果は、miR-142-3p結合部位の、mmRNA構築物への組込みが、コードされるタンパク質に対するADA応答の低減または消失に有効であることを裏付ける。
【0418】
(実施例3)
miR-126結合部位またはmiR-142結合部位の、mmRNAへの組込みは、B細胞の活性化およびサイトカインの発現を阻害する
本実施例では、miR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、またはmiR-142-3p結合部位およびmiR-126-3p結合部位の両方を、構築物の3’UTRへと組み込む、ヒトEPOコードmmRNA構築物を調製した。mmRNA構築物を、マウスへと投与して、miR結合部位を組み込むことの、マウスにおける多様な免疫パラメータに対する効果を検討した。
【0419】
mmRNA構築物は、Cap 1である5’キャップ構造(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含有し、5-メチルシトシンおよび1-メチルシュードウリジンで全修飾され、140ヌクレオチドのポリAテールを含んだ。対照mmRNA構築物は、miR結合部位のいずれの挿入の存在も欠いた。miR結合部位のいずれの挿入も伴わない、この対照hEPOコード構築物のヌクレオチド配列を、配列番号7に示す(ポリAテールは示さない)。miR-142-3p結合部位を挿入したhEPOコード構築物のヌクレオチド配列を、配列番号1に示す(ポリAテールは示さない)。miR-126-3p部位を挿入したhEPOコード構築物のヌクレオチド配列を、配列番号28に示す(ポリAテールは示さない)。miR-142-3p部位、およびmiR-126-3p部位を挿入したhEPOコード構築物のヌクレオチド配列を、配列番号29に示す(ポリAテールは示さない)。例示的なmmRNA構築物の概略図を、
図2に示す。hEPOをコードするmmRNA構築物を、50%のMC3、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、1.5%のPEG-DMGを含み、N:Pを約5.5とする(値は、モル%に基づく)、MC3脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化した。
【0420】
初期研究では、マウス30匹ずつの群を、以下の処置群:(i)いずれのmiR結合部位も伴わないhEpo構築物;(ii)miR-142-3p結合部位を伴うhEpo構築物;(iii)miR-126-3p結合部位を伴うhEpo構築物;および(iv)miR-142-3p結合部位およびmiR-126-3p結合部位を伴うhEpo構築物へと割り当てた。mmRNAを、C57Bl/6マウスへと、0.05mg/kgの用量で、静脈内投与した。投与レジメンは、1、8、15、22、29、および36日目であった。各処置群について、群1つ当たり5匹ずつのマウスに、各投与日に、合計6回の投与を実施した。各群内でさらに25匹のマウスを、5匹ずつのマウスに、8、15、22、29、および36日目の投与の各々において1回ずつで、マウス1匹当たり合計1回ずつ投与するように、5つのサブセットに分けた。
【0421】
処置後、マウスを、(i)hEpo(ng/ml単位の)を測定することによる、mmRNA構築物からのタンパク質発現、(ii)脾臓CD19+細胞%を測定することによる、B細胞の頻度、および(iii)脾臓CD19+細胞中の、活性化CD19+細胞%を測定することによる、活性化B細胞の頻度について検討した。これらの3つのリードアウトの結果を、それぞれ、
図4A、B、およびCに示す。この初期研究からの結果は、単独または組合せの、miR-142-3p結合部位またはmiR-126結合部位の、mmRNA構築物への組入れにより、タンパク質の発現に感知可能な差違は見られなかったが、単独で、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた、miR-126-3p結合部位の組入れにより、わずかであるが、統計学的に有意な、B細胞の活性化の減少が観察されることを裏付けた。
【0422】
この初期観察についてさらに研究するために、mmRNA構築物について、高用量(最高の感度をもたらすように)で、かつ、群1つ当たりのマウスの数を増大させて(統計学的信頼性を増大させるように)調べるように、第2のセットの実験を行った。投与量レジメンは、1および8日目であった。群1つ当たり12匹ずつのマウスに、1日目に、0.2mg/kgまたは1mg/kgの、上記で記載した4つの異なるmmRNA構築物(hEpo;hEpo+miR-142-3p;hEPO+miR-126-3p;またはhEpo+miR-142-3p/miR-126-3p)であって、MC3 LNP中で製剤化したmmRNA構築物のうちの1つを、静脈内投与した。1日目における投与の6時間後に、Epo ELISAによるタンパク質レベルの発現についての解析のために、血清を回収した。また、1日目における投与の6時間後に、B細胞の解析のために、マウスのうちの6匹から、脾臓も採取した。8日目に、残りの群1つ当たり6匹ずつのマウスに再度投与した後、さらなる解析のために、投与の6時間後に、血清の回収および脾臓の採取を行った。
【0423】
タンパク質発現についての結果を、
図5A~B(1回の投与について、
図5Aにおける0.2mg/kg、または
図5Bにおける1mg/kg)、および
図6A~B(2回の投与について、
図6Aの0.2mg/kg、または
図6Bの1mg/kg)に示す。結果は、mmRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質の発現のレベルが、miR結合部位(miR-142-3p、miR-126-3p、またはこれらの両方)の、構築物への組入れの著明な影響を受けないことを裏付けた。タンパク質の発現は、研究の6週目まで、さらにモニタリングした。発現は、4週目までに低減され、5週目における発現は、ほぼベースラインまで低減された(データは示さない)。6週目に、対照群内のほぼ全てのマウスが、発現を欠いたのに対し、miR結合部位の、mRNA構築物(miR-142-3p、miR-126-3p、またはこれらの両方)への組入れは、著明な発現レベルを維持した(
図29)。
【0424】
単回投与による処置の、B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度についての結果を、それぞれ、
図7および8に示す。2回の投与による処置の、B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度についての結果を、それぞれ、
図9および10に示す。これらの結果は、全B細胞頻度は、miRの、mmRNA構築物への組入れの著明な影響を受けないが、B細胞の活性化が、miR-142-3p結合部位の存在下でわずかに減少し、miR-126-3p結合部位(単独の、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた)の存在により、著明に低減されることを示した。B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度を、研究の6週目まで毎週測定し、研究の経過を通して、同様の結果であって、全B細胞の頻度は、miR結合部位の組入れの著明な影響を受けないが、活性化B細胞の頻度は、単独のmiR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの存在により阻害される結果を観察した。
【0425】
1回の投与で処置されたマウスの、IL-6の発現についての結果を、
図11A~B(
図11Aの0.2mg/kg、および
図11Bの1mg/kg)に示し、2回の投与で処置されたマウスについての結果を、
図12A~B(
図12Aの0.2mg/kg、および
図12Bの1mg/kg)に示す。これらの結果は、IL-6の発現が、miR-142-3p結合部位の存在下で減少し、miR-126-3p結合部位(単独の、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた)の存在により、なおさらに低減されることを裏付ける。
【0426】
TNF-αおよびIFN-γのレベルならびにIL-6のレベルを測定することにより、サイトカインの発現もさらに検討した。0.2mg/kgの2回の投与で処置されたマウスの、これらの3つのサイトカインについての結果を、
図13A(IL-6)、13B(TNF-α)、および13C(IFN-γ)に示し、1mg/kgの2回の投与で処置されたマウスについての結果を、
図14A(IL-6)、14B(TNF-α)、および14C(IFN-γ)に示す。これらの結果は、3つのサイトカイン(IL-6、TNF-αおよびIFN-γ)全ての発現が、miR-142-3p結合部位の存在下で減少し、miR-126-3p結合部位(単独の、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた)の存在により、なおさらに低減されることを裏付ける。
【0427】
サイトカインの発現を、研究の6週目まで、毎週、さらにモニタリングしたところ、血清中の3つのサイトカインである、IL-6、IFN-γ、およびTNF-α全てのレベルが、単独のmiR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの、mRNA構築物内の存在により著明に阻害されることが裏付けられた。
【0428】
したがって、上記で記載した研究は、miR-126-3p結合部位、miR-142-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの、mRNA構築物への組込みが、mRNA構築物で処置された動物のin vivoにおいて、B細胞の活性化の頻度の低減、および異なる免疫刺激性サイトカインのパネル(IL-6、TNF-α、IFN-γ)の分泌の低減を結果としてもたらす一方で、処置された動物において、mRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質の発現に対して及ぼす影響が最小限であることを裏付ける。
【0429】
(実施例4)
miR-126結合部位および/またはmiR-142結合部位を、mmRNA構築物へと組み込む、さらなる研究
本実施例では、miR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、またはmiR-142-3p結合部位およびmiR-126-3p結合部位の両方を、構築物の3’UTRへと組み込む、ルシフェラーゼコードmmRNA構築物を調製した。mmRNA構築物を、マウスへと投与して、miR結合部位を組み込むことの、マウスにおける多様な免疫パラメータに対する効果を検討した。mmRNA構築物は、Cap 1である5’キャップ構造(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含有し、5-メチルシトシンおよび1-メチルシュードウリジンで全修飾され、100ヌクレオチドのポリAテールを含んだ。対照mmRNA構築物は、いずれの公知のmiR結合部位の存在も欠いた。ルシフェラーゼ (Luc)をコードするmmRNA構築物を、50%のMC3、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、1.5%のPEG-DMGを含み、N:Pを約5.5とする(値は、モル%に基づく)、MC3脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化した。
【0430】
初期研究では、マウス24匹ずつの群を、以下の処置群:(i)いずれのmiR結合部位も伴わないルシフェラーゼ(Luc)構築物(その配列を、配列番号30に示す);(ii)miR-142-3p結合部位を伴うLuc構築物(その配列を、配列番号31に示す);(iii)miR-126-3p結合部位を伴うLuc構築物(その配列を、配列番号32に示す);および(iv)miR-142-3p結合部位およびmiR-126-3p結合部位を伴うLuc構築物(その配列を、配列番号33に示す)へと割り当てた。mmRNAを、C57Bl/6マウスへと、0.2mg/kgの用量で、静脈内投与した。各群において、15匹のマウスを、1、8、15、22、29、および36日目に投与するように選択し、3匹のマウスには、22日目に1回だけ投与し、3匹のマウスには、36日目に1回だけ投与した。反復投与のために選択された15匹のマウスのうち、5匹ずつを、脾臓を回収するために、1日目における投与の6時間後、22日目における投与の6時間後、および36日目における投与の6時間後に屠殺した。
【0431】
処置後、マウスを、(i)全身の発光を測定することによる、mmRNA構築物からのルシフェラーゼの発現;(ii)脾臓CD19+細胞%を測定することによる、B細胞の頻度;(iii)脾臓CD19+細胞中の、活性化CD19+細胞%を測定することによる、活性化B細胞の頻度;および(iv)サイトカインの産生(IL-6、IFN-γ、TNF-α)について検討した。
【0432】
ルシフェラーゼの発現についての結果を、
図15Aおよび15Bに示す。
図15Aは、1週目(1回の投与)後の結果を示し、
図15Bは、2週目(または2回の投与)後の結果を示す。Lucのレベルは、実施例1で論じたhEPOレベルよりはるかに可変的であった。しかし、結果は、mmRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質(Luc)の発現のレベルが、miR結合部位(miR-142-3p、miR-126-3p、またはこれらの両方)の、構築物への組入れの著明な影響を受けないことを裏付けた。タンパク質の発現は、研究の6週目まで、さらにモニタリングした。ルシフェラーゼの発現は、6週間を通して、わずかな変化~無変化を示した。
図30は、5週目における発現を示す。
【0433】
B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度についての結果を、それぞれ、
図16および17に示す。示される結果は、1週目(1回の投与)のものである。これらの結果は、全B細胞頻度は、miR結合部位の、Luc mmRNA構築物への組入れの著明な影響を受けないが、活性化B細胞の頻度が、miR-142-3p結合部位の存在下でわずかに減少し、miR-126-3p結合部位(単独の、またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた)の存在により、著明に低減されることを示した。(i)本発明者らは、全B細胞集団内の活性化B細胞の百分率を測定し、(ii)B細胞頻度は、群間で変動しなかったので、活性化B細胞の頻度の低減は、CD19
+細胞の数の低減のためではなかった。B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度を、研究の6週目まで毎週測定し、研究の経過を通して、同様の結果であって、全B細胞の頻度は、miR結合部位の組入れの著明な影響を受けないが、活性化B細胞の頻度は、単独のmiR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの存在により阻害される結果を観察した。
【0434】
サイトカインの発現は、血清中の、IL-6、IFN-γ、およびTNF-αのレベルを測定することにより検討した。0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスの、これらの3つのサイトカインについての結果を、
図18A(IL-6)、18B(IFN-γ)、および18C(TNF-α)に示す。示される結果は、2週目についてのものであり、同様の結果は、1週目および3週目においても観察された。ここでもまた、Lucで処置された動物では、実施例1で記載した、hEPO処置された動物と比較して、サイトカインの発現の、より大きなばらつきが観察された。しかし、これらの結果は、少なくとも一部のサイトカインの発現が、単独または組合せの、miR-142-3p結合部位および/またはmiR-126-3p結合部位の存在下で減少する(IFN-γおよびTNF-αについて最も顕著に)ことを裏付ける。サイトカインの発現を、研究の6週目まで、さらにモニタリングしたところ、血清中の3つのサイトカインである、IL-6、IFN-γ、およびTNF-α全てのレベルが、単独のmiR-142-3p結合部位もしくはmiR-126-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの、mRNA構築物内の存在により著明に阻害されることが裏付けられた。
【0435】
したがって、上記で記載した研究は、miR-126-3p結合部位、miR-142-3p結合部位、または両方のmiR結合部位の組合せの、mRNA構築物への組込みが、mRNA構築物で処置された動物のin vivoにおいて、B細胞の活性化の頻度の低減、および異なる免疫刺激性サイトカインのパネル(TNF-α、IFN-γ)の分泌の低減を結果としてもたらす一方で、処置された動物において、mRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質の発現に対して及ぼす影響が最小限であることを裏付ける。
【0436】
(実施例5)
miR-142結合部位および/またはmiR-155結合部位を、mmRNA構築物へと組み込む、さらなる研究
本実施例では、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、もしくはこれらの組合せ、および/またはこれらの複数のコピーを、構築物の3’UTRへと組み込む、EPOコードmmRNA構築物を調製した。それへの結合部位の挿入をデザインしたmiR-155-5p配列は、以下:uuaaugcuaauugugauaggggu(配列番号34)の通りである。3’UTRへと挿入されるmiR-155-5p結合部位は、以下:ACCCCTATCACAATTAGCATTAA(配列番号35)の通りの配列を有する。
【0437】
mmRNA構築物を、マウスへと投与して、miR結合部位を組み込むことの、マウスにおける多様な免疫パラメータに対する効果を検討した。mmRNA構築物は、Cap 1である5’キャップ構造(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含有し、5-メチルシトシンおよび1-メチルシュードウリジンで全修飾され、100ヌクレオチドのポリAテールを含んだ。対照mmRNA構築物は、miR結合部位のいずれの挿入の存在も欠いた。EPOをコードするmmRNA構築物を、50%のMC3、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、1.5%のPEG-DMGを含み、N:Pを約5.5とする(値は、モル%に基づく)、MC3脂質ナノ粒子(LNP)へと製剤化した。
【0438】
この研究では、マウスを、以下の処置群:(i)いずれのmiR結合部位も伴わないEPO構築物(その配列を、配列番号36に示す);(ii)1つのmiR-142-3p結合部位を伴うEPO構築物(その配列を、配列番号37に示す);(iii)3つのmiR-142-3p結合部位を伴うEPO構築物(EPO_3X miR-142-3p)(その配列を、配列番号38に示す);(iv)1つのmiR-142-5p結合部位を伴うEPO構築物(その配列を、配列番号39に示す);(v)3つのmiR-142-5p結合部位を伴うEPO構築物(EPO_3X miR-142-5p)(その配列を、配列番号40に示す);(vi)2つのmiR-142-5p結合部位を伴うEPO構築物、および1つのmiR-142-3p結合部位(EPO_2X miR-142-5p_1X miR-142-3p)(その配列を、配列番号41に示す);(vii)1つのmiR-155-5p結合部位を伴うEPO構築物(その配列を、配列番号42に示す);(viii)3つのmiR-155-5p結合部位を伴うEPO構築物(EPO_3X miR-155)(その配列を、配列番号43に示す);(ix)2つのmiR-155-5p結合部位を伴うEPO構築物、および1つのmiR-142-3p結合部位(EPO_2X miR-155-5p_1X miR-142-3p)(その配列を、配列番号44に示す);ならびに(x)非翻訳対照配列を伴うLNP(「空」)のうちの1つへと割り当てた。mmRNAを、C57Bl/6マウスへと、0.2mg/kgの用量で、静脈内投与した。投与レジメンは、1および8日目であった。
【0439】
処置後、マウスを、(i)コードされたEPOレベル(ng/ml単位の)を測定することによる、mmRNA構築物からのタンパク質発現;(ii)脾臓CD19+細胞%を測定することによる、全B細胞の頻度;(iii)脾臓CD19+細胞中の、活性化CD19+細胞%を測定することによる、活性化B細胞の頻度;および(iv)サイトカインの産生(IL-6、IFN-γ、TNF-α)について検討した。
【0440】
EPOタンパク質発現についての結果を、
図19Aが、1週目における結果を示し、
図19Bが、2週目についての結果を示す、
図19A~Bに示す。結果は、mmRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質(EPO)の発現のレベルが、miR結合部位(miR-142-3p、miR-142-5p、miR-155-5p、もしくはこれらの複数のコピー、および/またはこれらの組合せ)の、構築物への組入れの著明な影響を受けないことを裏付けた。
【0441】
B細胞の頻度および活性化B細胞の頻度についての結果を、1週目については、それぞれ、
図20および21に示し、2週目については、それぞれ、
図22および23に示す。これらの結果は、全B細胞頻度は、miRの、EPO mmRNA構築物への組入れの著明な影響を受けないが、活性化B細胞の頻度は、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、もしくはこれらの複数のコピー、および/またはこれらの組合せの存在下で減少することを示した。
【0442】
サイトカインの発現は、血清中の、IL-6、TNF-α、およびIFN-γのレベルを測定することにより検討した。0.2mg/kgのmmRNAで処置されたマウスの、これらの3つのサイトカインについての結果を、
図24A(IL-6)、24B(TNF-α)、および24C(IFN-γ)に示す。示される結果は、2週目についてのものである。EPOで処置された動物では、サイトカインの発現のばらつきが観察された。しかし、これらの結果は、少なくとも一部のサイトカインの発現が、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、もしくはこれらの複数のコピー、および/またはこれらの組合せの存在下で減少することを裏付ける。
【0443】
したがって、上記で記載した研究は、miR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-155-5p結合部位、もしくはこれらの複数のコピー、および/またはこれらの組合せの、mRNA構築物への組込みが、mRNA構築物で処置された動物のin vivoにおいて、B細胞の活性化の頻度の低減、および異なる免疫刺激性サイトカインのパネルの分泌の低減を結果としてもたらす一方で、処置された動物において、mRNA構築物によりコードされる目的のタンパク質の発現に対して及ぼす影響が最小限であることを裏付ける。
【0444】
(実施例6)
miR結合部位の、特定の免疫細胞集団に対する効果
本実施例では、mRNA構築物への、免疫細胞内で発現するmiR結合部位(miR-142、miR-126、またはmiR-142+miR-126の両方)の組入れの、特定の免疫細胞集団の頻度および活性化に対する効果について検討する研究を実施した。Balb/cマウスを、上記の実施例3で記載した、EPOをコードするmRNA構築物であって、miR結合部位を欠くか、またはmiR-142-3p結合部位、miR-126-3p結合部位、もしくはmiR-142-3p結合部位およびmiR-126-3p結合部位の両方を含有する構築物で処置した。マウスを、1、8、および15日目において、MC3脂質ナノ粒子へと製剤化された、0.2mg/kgのmRNA構築物により、静脈内において処置した。
【0445】
第1の実験のセットは、miRが、CD27
+B細胞の頻度、またはこれらの細胞内のCD27発現のレベルに対して何らかの効果を及ぼすのかどうかについて検討した。結果を、
図25A~Bに示す。
図25Aは、脾臓CD19
+B細胞中の、CD27
+CD19
+B細胞の頻度を示し、CD27
+B細胞集団が、miR結合部位の、mRNA構築物への組入れの影響を受けなかったことを裏付ける。
図25Bは、CD27
+B細胞集団内の、CD27の発現レベルを示すが、また、同様に、この発現が、miR結合部位の、mRNA構築物への組入れの影響を受けなかったことも示す。こうして、この第1の実験のセットは、B細胞の活性化の阻害、および/またはサイトカインの産生の阻害における、miR結合部位の効果が、CD27
+CD19
+B細胞の頻度、またはこれらの細胞内のCD27発現のレベルに影響を及ぼす、miR結合部位から生じたのではないことを裏付けた。
【0446】
第2の実験のセットは、miRが、樹状細胞のマーカーとしてのCD11c
+細胞の頻度、および/または活性化樹状細胞(CD11c
+CD70
+CD86
+細胞)の頻度に対して何らかの効果を及ぼすのかどうかについて検討した。結果を、
図26A~Bに示す。
図26Aは、マウスに由来する脾臓細胞中の、CD11c
+細胞の百分率を示し、CD11c
+細胞の総頻度が、miR-142-3p結合部位、miR-126-3p結合部位、または両方の結合部位の、mRNA構築物への組入れにより阻害されたことを裏付ける。
図26Bは、CD11c
+脾臓細胞集団内の、活性化樹状細胞(CD11c
+CD70
+CD86
+細胞)の頻度を示すが、また、同様に、活性化樹状細胞の頻度が、miR結合部位の、mRNA構築物への組入れにより阻害されたことも示す。こうして、この第2の実験のセットは、miR結合部位の組入れが、樹状細胞の総頻度および活性化樹状細胞の頻度の両方を阻害し、これにより、miR結合部位の組入れが、どのようにして、B細胞の活性化の阻害およびサイトカインの産生の阻害をもたらすのかについての機構に、この細胞集団を関与させることを裏付けた。機構に限定されることを意図するものではないが、これらの結果は、マウスでは、活性化CD70
+樹状細胞のレベルの減少が、CD27
+B細胞との相互作用の減少をもたらし、これにより、B細胞の活性化の減少、およびサイトカインの産生の減少をもたらすことを示唆する。
【0447】
これについてさらに探索するために、第3の実験のセットを実施した。マウスに由来する形質細胞様樹状細胞(pDC)の能力であって、ナイーブB細胞の成長を刺激する能力について検討した。これらの実験のために、10μg/mlの抗IgMの存在下で、CFSEで標識されたナイーブB細胞2×10
5個を、hEPO mRNAまたはhEPO mRNA-miR142、hEPO mRNA-miR126またはhEPO mRNA-miR126+142を注射されたマウスの脾臓から精製されたpDC 4×10
4個と共にインキュベートした。5日間にわたる培養の後で、細胞を採取し、CFSEの発現について、フローサイトメトリーで解析した。pDCと共にインキュベートされたナイーブB細胞の成長のレベルを、
図27のグラフに示す。結果は、ナイーブB細胞の成長が、miR-142結合部位、miR-126結合部位、または両方の結合部位を含むmRNA構築物で処置されたマウスに由来するpDCの存在下では、低下することを裏付ける。これらの実験は、miR含有構築物で処置されたマウスにおいて、活性化pDCのレベルの減少が、B細胞の刺激の減少をもたらし、これにより、B細胞の活性化の阻害と、サイトカインの産生の阻害とをもたらす機構もさらに裏書きする。
【0448】
(実施例7)
miR結合部位の、IgMに対する効果
本実施例では、mRNA構築物への、免疫細胞内で発現するmiR結合部位(miR-142、miR-126、またはmiR-142+miR-126の両方)の組入れの、PEGに結合するIgM(抗PEG IgM)のレベルに対する効果について検討する研究を実施した。PEGは、mRNA構築物が封入されるLNPの成分であるので、マウスの血清中の、抗PEG IgMの存在は、LNP/mRNA組成物の血中クリアランスの加速化(ABC)に寄与する。
【0449】
マウスを、実施例2で記載した通り、ルシフェラーゼコードmRNA構築物で処置した。処置の2、3、および4回目の投与の後で、血清を、マウスから回収し、血清中の抗PEG IgMレベル(ng/ml単位の)を測定した。結果を、
図28A~Cのグラフに示す。
図28Aは、第2の用量後における抗PEG IgMレベルを示し、
図28Bは、3回目の投与後における抗PEG IgMレベルを示し、
図28Cは、4回目の投与後における抗PEG IgMレベルを示す。結果は、miR結合部位の組入れが、マウスにおける抗PEG IgMのレベルを著明に減少させたことを裏付ける。この効果は、第2の用量による処置の後で既に観察され、効果は、4回目の投与による処置を通して持続した。miR結合部位含有mRNA構築物で処置されたマウスにおける、抗PEG IgMのこの低減は、これらのマウスでは、少なくとも部分的に抗PEG IgMにより媒介されるABCが、低減されると予測されることを指し示す。
【0450】
(実施例8)
複数のmiR結合部位と対比した、単一のmiR結合部位の効果
本実施例では、mRNA構築物への、複数のmiR結合部位(例えば、3つのmiR結合部位を有する3X)と対比した、単一のmiR結合部位(1X)の組入れの効果について検討する研究を実施した。
【0451】
肝細胞内のmRNAの発現を調節することが公知である、miR-122について検討する、第1の研究のシリーズを実施した。3つのmiR-122結合部位と対比した、1つのmiR-122結合部位の組入れの、mRNA構築物によりコードされるタンパク質の発現に対する効果を決定するために、Lipofectamine 2000を使用して、初代肝細胞に、ルシフェラーゼmRNA構築物(Luc)および増強型緑色蛍光タンパク質mRNA構築物(eGFP)であって、各構築物の3’UTRが、(i)miR-122結合部位を欠く(対照)か;(ii)1つのmiR-122結合部位を含有するか;または(iii)3つのmiR-122結合部位を含有する、Luc構築物およびeGFP構築物を共トランスフェクトした。別の対照は、推定コード配列内に、ATGを伴わない、Luc様RNA配列およびeGFP様RNA配列のトランスフェクションを含んだ。これら4つのeGFP構築物のmRNA配列を、それぞれ、配列番号61~64に示す。これら4つのLuc構築物のmRNA配列を、それぞれ、配列番号65~68に示す。3つのmiR-122結合部位を含有する3’UTRの配列を、配列番号54に示す。
【0452】
細胞に、7.5ng、15ng、50ng、または100ngのmRNAをトランスフェクトした。緑色の総組入れ強度を、24時間にわたり経時的に測定した。結果を、
図31A~Dに示すが、これにより、低mRNA用量(それぞれ、
図31Aおよび31Bの、7.5ngおよび15ng)では、1X miR-122構築物および3X miR-122構築物のいずれもが、初代肝細胞内のeGFPの発現の著明な低減をもたらしたのに対し、高mRNA用量(それぞれ、
図31Cおよび31Dの、50ngおよび100ng)では、3X miR-122構築物が、1X ×miR-122構築物よりより強いeGFP発現の阻害を呈示し、高用量では、3X miR-122構築物が、時間経過にわたり、タンパク質発現のこの喪失を維持することが可能であったことが裏付けられる。また、ルシフェラーゼの発光についても、初代肝細胞内で検討したが、同様の結果:3X miR-122構築物が、特に、高mRNA用量において、タンパク質発現の高度なノックダウンをもたらすことを観察した。
【0453】
3つのmiR-122結合部位と対比した、1つのmiR-122結合部位の組入れの、mRNA構築物によりコードされるタンパク質の発現に対する効果について検討する、第2の実験のシリーズでは、Lipofectamine 2000を使用して、初代肝細胞に、カスパーゼをコードするmRNA構築物であって、その3’UTR内に、(i)miR-122結合部位(対照)を有さないか;(ii)1つのmiR-122結合部位を有するか;または(iii)3つのmiR-122結合部位を有するmRNA構築物をトランスフェクトした。別の対照は、推定コード配列内に、ATGを伴わない、カスパーゼ様RNA配列のトランスフェクションを含んだ。これら4つのカスパーゼ構築物のmRNA配列を、それぞれ、配列番号69~72に示す。カスパーゼ媒介毒性を、24時間にわたり経時的に測定した。結果を、
図32A~Dに示すが、これにより、低mRNA用量(
図32Aの7.5ng)では、1X miR-122構築物および3X miR-122構築物のいずれもが、カスパーゼ媒介毒性を阻害し、3X ×miR-122構築物が、毒性の阻害にはるかに強力な効果を及ぼすことが裏付けられる。さらに、高mRNA用量(それぞれ、
図32B、32C、および32Dの、15ng、50ngおよび100ng)では、3X miR-122構築物だけが、カスパーゼ媒介毒性を阻害することが可能であった。また、初代肝細胞に、MC3脂質ナノ粒子内のカスパーゼmRNA構築物をトランスフェクトする研究も実施したが、同様の結果:3X miR-122構築物によるカスパーゼ媒介毒性の緩和が、1X miR-122構築物によるカスパーゼ媒介毒性の緩和より、著明に強力であることを観察した。
【0454】
これらのin vitroにおける研究結果を、in vivoにおいて確認するために、Balb/cマウスに、0、1つ、または3つのmiR-122結合部位を含有するMC3ナノ粒子内のLuc mRNA構築物およびeGFP mRNA構築物(0.5mg/kg)を共投与した。肝臓内のeGFP蛍光について検討した結果は、1つのmiR-122結合部位の組入れが、肝臓内のeGFP発現のわずかなノックダウンをもたらすのに対し、3つのmiR-122結合部位の組入れは、肝臓内のeGFP発現の著明なノックダウンをもたらすことを示した。ルシフェラーゼの発現についても、同様の結果が観察され、1X 部位も、ルシフェラーゼの発現を低減するが、3X 部位は、タンパク質発現のより強いノックダウンをもたらした。
【0455】
第3の実験のシリーズでは、カニクイザルに、3’UTR内に、0、1つ、または3つのmiR-142-3p結合部位を含有するMC3ナノ粒子内のhEPO mRNA構築物(0.2mg/kg)を投与した。サルにおけるhEPOの発現レベル(ng/ml単位の)を、ELISAにより測定したが、その結果を、
図33に示す。結果は、3X miR-142-3p結合部位の、hEPO構築物への組入れが、0または1つのmiR-142-3p結合部位を伴う構築物と比較して、hEPOの、著明に低度の発現をもたらすことを示す。
【0456】
全体的に、上記で記載した研究は、少なくとも1つのmiR結合部位の、mRNA構築物への組入れの有益性と、3つのmiR結合部位の、構築物への組入れによる効果の増強とを裏付ける。
【0457】
(実施例9)
5’非翻訳領域(5’UTR)内のmiR結合部位の効果
本実施例では、mRNA構築物への、mRNA構築物の5’UTR内の、3つの異なる挿入部位のうちの1つの中のmiR結合部位の組入れの効果について検討する研究を実施した。使用される5’UTR配列を、下記に示す。
【0458】
GGGAAATAAGAG^AGAAAAGAAGAGTA^AGAAGAAATATA^AGAGCCACC(配列番号53)[配列中、3つの可能な挿入部位(P1、P2、P3)を、キャレット記号(^)で指し示す]。P1、P2、またはP3へと挿入されたmiR-142-3p結合部位を有する5’UTRの配列を、それぞれ、配列番号55~57に示す。P1、P2、またはP3へと挿入されたmiR-122結合部位を有する5’UTRの配列を、それぞれ、配列番号58~60に示す。
【0459】
第1の実験のシリーズでは、Lipofectamine 2000を使用して、増強型緑色蛍光タンパク質(eGFP)mRNA構築物を、RAW264.7マウスマクロファージ細胞へとトランスフェクトしたが、この場合、構築物は、3’UTR内の1X miR-142-3p結合部位または3X miR-142-3p結合部位を含有するか、または5’UTRのP1、P2、もしくはP3へと挿入されたmiR-142-3p結合部位を含有するか、または3’UTR内の単一のmiR-142-3p結合部位と組み合わせた、5’UTRのP1、P2、もしくはP3へと挿入されたmiR-142-3p結合部位を含有した。eGFP蛍光は、トランスフェクションの48時間後において測定した。結果を、
図34に示す。結果は、miR-142-3p結合部位を、P1、P2、またはP3に挿入した構築物であって、単独の、または3’UTR内のmiR-142-3p結合部位と組み合わせた構築物を含む被験構築物の全てが、細胞内のタンパク質の発現の著明な低減をもたらしたことを裏付ける。
【0460】
hEPOを、コードされるタンパク質として使用して、同様の構築物を制作し、RAW264.7細胞にトランスフェクトして、同様の実験を行った。hEPO構築物による結果は、eGFP構築物による結果と全く同様であり、miR結合部位を、P1、P2、またはP3に挿入した構築物であって、単独の、または3’UTR内のmiR結合部位と組み合わせた構築物を含む全ての被験構築物は、細胞内のタンパク質発現の著明な低減をもたらした。しかし、hEPO構築物では、P1、P2、およびP3における5’UTR構築物による阻害の程度は、eGFP構築物による阻害の程度(それぞれ、89%、96%、および98%)と比較して、わずかに低度(それぞれ、60%、73%、および93%)であった。
【0461】
第2の実験のシリーズでは、構築物が、3’UTR内の1X miR-122結合部位または3X miR-122結合部位を含有するか、または5’UTRのP1、P2、もしくはP3へと挿入されたmiR-122結合部位を含有するか、または3’UTR内の単一のmiR-122結合部位と組み合わせた、5’UTRのP1、P2、もしくはP3へと挿入されたmiR-122結合部位を含有したことを除き、上記で記載した構築物と同様のhEPO mRNA構築物を制作した。Lipofectamine 2000を使用して、mRNA構築物を、初代肝細胞へとトランスフェクトした。hEPO発現(ng/mL単位の)を、ELISAにより測定した結果を、
図35に示す。結果は、miR-122結合部位を、P1、P2、またはP3に挿入した構築物であって、単独の、または3’UTR内のmiR-122結合部位と組み合わせた構築物を含む被験構築物の全てが、細胞内のタンパク質の発現の著明な低減をもたらしたことを裏付ける。
【0462】
これらのin vitroにおける研究結果を、in vivoにおいて確認するために、Lipofectamine 2000を使用して、Balb/cマウスに、MC3ナノ粒子内のhEPO/miR-122mRNA構築物のパネルを投与するか、またはhEPO/miR-142-3p構築物のパネルを投与した。結果は、in vitroにおける観察と同様に、miR-122またはmiR-142-3p結合部位を、P1、P2、またはP3に挿入した構築物であって、単独の、または3’UTR内のmiR-122またはmiR-142-3p結合部位と組み合わせた構築物を含む被験構築物の全てが、マウスにおけるタンパク質の発現の著明な低減をもたらしたことを示した。
【0463】
全体的に、これらの研究は、少なくとも1つのmiR結合部位の、mRNA構築物の3’UTRもしくは5’UTRへの組入れ、またはmiR結合部位の組合せの、3’UTRおよび5’UTRの両方への組入れの有益性を裏付ける。
配列表の概要
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【配列表】