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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/14 20060101AFI20220104BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220104BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220104BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09J175/14
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/08
H01L21/304 631
C08F290/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018525299
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2017024201
(87)【国際公開番号】W WO2018003981
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2016131266
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関谷 瑠璃子
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-301953(JP,A)
【文献】特開2006-117826(JP,A)
【文献】特開2011-140568(JP,A)
【文献】特開2011-153187(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069266(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037431(WO,A1)
【文献】特開2007-314715(JP,A)
【文献】特開2014-130853(JP,A)
【文献】特開2006-257200(JP,A)
【文献】特開2010-73811(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171221(WO,A1)
【文献】特開2016-204661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
C08F 283/01
C08F 290/00 - 290/14
C08F 299/00 - 299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有する、半導体製造用仮固定接着剤
(A)成分 数平均分子量が1000未満の単官能(メタ)アクリレート
(B)成分 数平均分子量が1000未満の多官能(メタ)アクリレート
(C)成分 ラジカル重合開始剤
(D)成分 離型性付与化合物
(E)成分 (B)成分を除く多官能ウレタン(メタ)アクリレート
【請求項2】
(E)成分の重量平均分子量が40000以下である請求項1に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項3】
(E)成分の含有量が(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して35~90質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項4】
(D)成分が、非ラジカル重合性化合物である請求項1~3のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項5】
(D)成分が、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、オレフィン系化合物から選択される1種以上である請求項1~4のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項6】
(D)成分のオレフィン系化合物が、ポリエチレン重合体、ポリプロピレン重合体、エチレン-プロピレン共重合体から選択される1種以上である請求項5に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項7】
(D)成分の含有量が(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部である請求項1~6のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項8】
(D)成分が常温において液状である、請求項1~7のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項9】
(A)成分が、アルキレンオキシド鎖を有するフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート、1個の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンから選択される1種以上である請求項1~8のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項10】
(B)成分が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される1種以上である請求項1~9のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項11】
(C)成分が、光ラジカル重合開始剤である請求項1~10のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項12】
(C)成分の含有量が、(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して、0.1~4質量部である請求項1~11のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項13】
更に、酸化防止剤を含有する請求項1~12のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤
【請求項14】
下記(A)~(E)成分を含有する、半導体製造用仮固定接着剤
(A)成分 数平均分子量が1000未満の単官能(メタ)アクリレート
(B)成分 数平均分子量が1000未満の多官能(メタ)アクリレート
(C)成分 ラジカル重合開始剤
(D)成分 常温において液状であり、かつ非ラジカル重合性である離型性付与化合物
(E)成分 (B)成分を除く重量平均分子量が40000以下である多官能ウレタン(メタ)アクリレート
【請求項15】
請求項1~14のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤を硬化して得られる硬化体。
【請求項16】
請求項1~14のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【請求項17】
請求項1~14のうちの1項に記載の半導体製造用仮固定接着剤を用いた薄型化ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれを多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(「裏面」ともいう)の研削によって薄型化し、更に裏面に電極形成を行う工程が必要である。従来、シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に裏面保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、電極形成工程や裏面での配線層形成工程を行うには適しない。
【0003】
そこで、半導体基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着剤を介して接合することによって、裏面研削、裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際に設ける接着剤層である。この接着剤層には、基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要であり、また最後に薄型化ウエハを支持体から簡便に剥離できることも必要である。
【0004】
接着剤の必要特性としては、塗布に適した粘度、シリコンを薄化する際に研削・研磨に耐えうるせん断接着力、絶縁膜形成工程やはんだリフロー工程に耐えうる耐熱性、薄型化やレジスト工程に耐えうる耐薬品性、ウエハを支持体から簡便に剥離できる易剥離性、易洗浄性が挙げられる。
【0005】
接着剤とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着剤に高強度の光を照射し、接着剤層を分解することによって支持体から接着剤層を剥離する技術(特許文献1)や、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザ等の高価な装置が必要であり、かつ、基板1枚あたりの処理時間が長くなる等の問題があった。また後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であるため、適用できる技術範囲が狭かった。
【0006】
1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性である接着体の解体方法が開示されている(特許文献3)。しかし、この従来技術に係る剥離方法にはエネルギーの強いエキシマ光を使用する必要があり、実施する上で設備などの要求が高い問題があった。
【0007】
フッ素化合物を添加したアクリル系接着剤が開示されている(特許文献4~5)。しかし、特許文献4~5は、離型性付与化合物について記載がない。特許文献4~5は、フッ素化合物がラジカル重合性モノマー又はオリゴマーに限定されており、非ラジカル重合性のフッ素化合物並びに特定の分子量を有する(メタ)アクリレートについて記載がない。
【0008】
1種以上のアクリルモノマーと、重合開始剤と、フッ素系界面活性剤と、を含有し、大気中での表面張力が28mN/m以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献6)。しかし、分子量に関する記載はない。
【0009】
加熱処理により接着力が低下し、接着性成分に反応性アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂を含む接着剤組成物が開示されている(特許文献7)。しかし、熱剥離の方法が有機系熱膨張粒子によるものであり、光硬化性樹脂を使用する記載はない。
【0010】
重剥離化を抑制しつつ、剥離力を容易に制御することができ、フッ素系モノマーを構成成分に含むアクリルポリマーを含む剥離材組成物が開示されている(特許文献8)。しかし、特許文献8は、加熱後の剥離力に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-64040号公報
【文献】特開2006-328104号公報
【文献】国際公開第2011/158654号
【文献】特開2014-130853号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0084459号明細書
【文献】特開2015-54929号公報
【文献】特開2003-171648号公報
【文献】特開2016-79238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、例えば、耐熱性、接着性、剥離性といった課題を解決するために色々検討した結果、完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、以下を提供する。
【0014】
(1)下記(A)~(E)成分を含有する組成物。
(A)成分 数平均分子量が1000未満の単官能(メタ)アクリレート
(B)成分 数平均分子量が1000未満の多官能(メタ)アクリレート
(C)成分 ラジカル重合開始剤
(D)成分 離型性付与化合物
(E)成分 多官能ウレタン(メタ)アクリレート
【0015】
(2)(E)成分の重量平均分子量が40000以下である(1)に記載の組成物。
【0016】
(3)(E)成分の含有量が(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して35~90質量部であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の組成物。
【0017】
(4)(D)成分が、非ラジカル重合性化合物である(1)~(3)のうちの1項に記載の組成物。
【0018】
(5)(D)成分が、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、オレフィン系化合物から選択される1種以上である(1)~(4)のうちの1項に記載の組成物。
【0019】
(6)(D)成分のオレフィン系化合物が、ポリエチレン重合体、ポリプロピレン重合体、エチレン-プロピレン共重合体から選択される1種以上である(5)に記載の組成物。
【0020】
(7)(D)成分の含有量が(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部である(1)~(6)のうちの1項に記載の組成物。
【0021】
(8)(D)成分が常温において液状である、(1)~(7)のうちの1項に記載の組成物。
【0022】
(9)(A)成分が、アルキレンオキシド鎖を有するフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート、1個の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンから選択される1種以上である(1)~(8)のうちの1項に記載の組成物。
【0023】
(10)(B)成分が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される1種以上である(1)~(9)のうちの1項に記載の組成物。
【0024】
(11)(C)成分が、光ラジカル重合開始剤である(1)~(10)のうちの1項に記載の組成物。
【0025】
(12)(C)成分の含有量が、(A)、(B)、及び(E)成分の合計100質量部に対して、0.1~4質量部である(1)~(11)のうちの1項に記載の組成物。
【0026】
(13)更に、酸化防止剤を含有する(1)~(12)のうちの1項に記載の組成物。
【0027】
(14)下記(A)~(E)成分を含有する組成物。
(A)成分 数平均分子量が1000未満の単官能(メタ)アクリレート
(B)成分 数平均分子量が1000未満の多官能(メタ)アクリレート
(C)成分 ラジカル重合開始剤
(D)成分 常温において液状であり、かつ非ラジカル重合性である離型性付与化合物
(E)成分 重量平均分子量が40000以下である多官能ウレタン(メタ)アクリレート
【0028】
(15)(1)~(14)のうちの1項に記載の組成物からなる半導体製造用樹脂組成物。
【0029】
(16)(1)~(14)のうちの1項に記載の組成物からなる接着剤。
【0030】
(17)(1)~(14)のうちの1項に記載の組成物を硬化して得られる硬化体。
【0031】
(18)(1)~(14)のうちの1項に記載の組成物からなる半導体製造用仮固定接着剤。
【0032】
(19)(18)に記載の半導体製造用仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【0033】
(20)(18)に記載の半導体製造用仮固定接着剤を用いた薄型化ウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、例えば、耐熱性、接着性、剥離性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書においては、別段の断わりが無いかぎりは、数値範囲はその上限と下限の値を含むものである。
【0036】
以下本発明を説明する。多官能(メタ)アクリレートとは、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。単官能(メタ)アクリレートとは、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。
【0037】
(A)単官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は1000未満であり、900以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が最も好ましい。単官能(メタ)アクリレートとしては、モノマーが好ましい。
【0038】
重量平均分子量や数平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム等を使用し、下記条件で、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求める。
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー社製「TSK-GEL MULTIPOREHXL-M」 7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)、サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm2
検出器:RI検出器
【0039】
(A)の中では、(A-1)アルキレンオキシド鎖を有するフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(A-2)直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、(A-3)脂環式アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート、(A-4)1個の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンから選択される1種以上が好ましい。
【0040】
(A-1)アルキレンオキシド鎖を有するフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、下記式(1)の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
【化1】
【0042】
1は水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R2は、炭素数2~3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のエチレン基がより好ましい。R3は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、炭素数9のノニル基が最も好ましい。nは1~15が好ましく、1~3がより好ましく、1が最も好ましい。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用できる。
【0043】
3がノニル基である(メタ)アクリレートとしては、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
(A-2)直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、下記式(2)の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0045】
式(2) CH2=CR5-COO-R4
(R4とR5はアルキル基。)
【0046】
4は、炭素数4~22のアルキル基が好ましく、炭素数8~20のアルキル基がより好ましく、炭素数10~18のアルキル基が最も好ましく、炭素数12~18のアルキル基が更に好ましく、炭素数18のアルキル基が尚更好ましい。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用できる。R5は水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0047】
炭素数4~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコデシル(メタ)アクリレート等の、直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましく、イソステアリル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0048】
(A-3)脂環式アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、耐熱性の点で、1-アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
(A-4)1個の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有するポリオルガノシロキサンである。上記シリコーンのベースポリマーとなるシリコーンは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであればよく、例えば、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。これらの中では、ジメチルシリコーンが好ましい。(メタ)アクリロイル基の導入位置は、特に限定されず、主鎖の片末端(片末端型)に有していてもよいし、側鎖(側鎖型)に有していてもよい。これらの中では、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0050】
(A)単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部中、9~65質量部が好ましく、9~60質量部がより好ましく、13~50質量部がより好ましく、16~45質量部が最も好ましい。9質量部以上であれば硬化収縮が小さく、65質量部以下であれば、耐熱性及び剥離性が低下するおそれがない。
【0051】
(B)多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は1000未満であり、900以下が好ましく、800以下がより好ましく、700以下が最も好ましい。(B)多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
(B)多官能(メタ)アクリレートは、(E)成分の多官能ウレタン(メタ)アクリレートを除くことが好ましい。
【0053】
2官能(メタ)アクリレートとしては、1、3-アダマンチルジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
3官能(メタ)アクリレートとしては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0055】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
これらの中では、1、3-アダマンチルジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートから選択される1種以上が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される1種以上がより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選択される1種以上が最も好ましい。
【0057】
(B)多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部中、1~30質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましく、4~15質量部が最も好ましい。1質量部以上であれば耐熱性が低下するおそれがなく、30質量部以下であれば硬化収縮が小さい。
【0058】
(C)ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、耐熱性及び低アウトガス性の点で、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルからなる群のうちの1種以上が好ましく、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンから選択される1種以上が好ましく、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドから選択される1種以上がより好ましく、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが最も好ましい。
【0059】
(C)ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性、低アウトガス性、耐熱性の点で、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部に対して、0.1~4質量部が好ましく、0.5~4質量部がより好ましく、0.7~2.5質量部がより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.1質量部以上だと十分な硬化性が得られ、4質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が優れる。
【0060】
(D)離型性付与化合物とは、例えば、離型性を付与する化合物をいう。特定の実施形態においては、(D)成分は常温で液状であるか、または非ラジカル重合性化合物であることが好ましく、さらに好ましくは常温で液状でありかつ非ラジカル重合性化合物であってよい。なお常温とは、JIS 8703:1983に定義される温度であり、20±15℃の範囲を指す。(D)成分がスピンコート時に塗り斑ができないような性質を持つ(例えば常温で液状であるなど)ことにより、組成物の透明性を高めることができ、UV硬化を適切に行うことができ、かつ組成物を塗布する際の表面平滑性を高めることができる。(D)離型性付与化合物としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物及びオレフィン系化合物から選択される1種以上が好ましく、フッ素系化合物とシリコーン系化合物がより好ましく、フッ素系化合物とシリコーン系化合物を併用することが最も好ましい。
【0061】
(D-1)フッ素系化合物とは、フッ素を有する化合物をいう。フッ素系化合物としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系高分子等が挙げられる。これらの中では、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤が好ましい。パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系オリゴマー(例えばDIC社製「F-553」)、パーフルオロアルキル基を有する非ラジカル重合性化合物のフッ素化合物(例えば、3M社製「FC-4430」及び「FC-4432」、AGCセイミケミカル社製「S-386」)から選択される1種以上が好ましく、パーフルオロアルキル基を有する非ラジカル重合性化合物のフッ素化合物がより好ましい。パーフルオロアルキル基を有する非ラジカル重合性化合物のフッ素化合物の中では、パーフルオロアルキルスルホン酸及び/又はその塩(例えば、3M社製「FC-4430」)が好ましい。
【0062】
(D-2)非ラジカル重合性化合物であるシリコーン系化合物としては、シロキサン化合物が好ましい。非ラジカル重合性化合物としては、非変性シリコーンオイル(非変性ポリジメチルシロキサン等、例えば、信越化学社製「KF-96-100cs」、「KF-96-1000cs」、「KF-96H-10000cs」)、非ラジカル重合性の官能基で変性した非反応性変性シリコーン(例えば、信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイル「X-22-2516」(ポリエーテル・長鎖アルキル・アラルキル変性タイプ)、「X-22-4515」、信越化学社製フロロアルキル変性シリコーンオイル「FL-100-1000cs」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製ポリエーテル変性シリコーンオイル「TSF4446」、「TSF4460」、「TSF4450」、「TSF4452」)から選択される1種以上が好ましく、非ラジカル重合性の官能基で変性した非反応性変性シリコーンがより好ましい。非ラジカル重合性の官能基で変性した非反応性変性シリコーンの中では、ポリエーテル変性シリコーンオイルから選択される1種以上が好ましい。シリコーン系化合物としては、20~20,000mm2/sの粘度を有する化合物を使用できる。
【0063】
(D-3)非ラジカル重合性オレフィン系化合物としては数平均分子量が1000~10000のものが好ましい。非ラジカル重合性オレフィン系化合物の中では、ポリエチレン重合体、ポリプロピレン重合体、エチレン-プロピレン共重合体から選択される1種以上が好ましく、エチレン-プロピレン共重合体がより好ましい。エチレン-プロピレン共重合体としては、三井化学社製「ルーカント HC-600」(粘度:14,000mPa・s)、三井化学社製「ルーカント HC-2000」(粘度:89,000mPa・s)等が挙げられる。エチレン-プロピレン共重合体の粘度は、1,000~100,000mPa・sが好ましい。
【0064】
(D)離型性付与化合物の含有量は、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましい。フッ素系化合物に関しては、0.01~2質量部がより好ましく、0.05~1質量部が最も好ましい。シリコーン系化合物とオレフィン系化合物に関しては、0.05~3質量部がより好ましい。0.01質量部以上だと剥離性が確保され、5質量部以下だと良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0065】
(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレタン(メタ)アクリレートということもある)とは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。(E)成分の重量平均分子量は40000以下であるのが好ましく、300以上40000以下がより好ましく、500以上30000以下が最も好ましく、1000以上30000以下が更に好ましい。(E)成分がこのような重量平均分子量を有することにより、組成物の表面のタックを減らすかもしくは無くし、組成物の剥離性を高め、かつ組成物に耐熱性を与えることができる。
【0066】
(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、(B)成分の多官能(メタ)アクリレートを除くことが好ましい。(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートとは、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基と1個以上のウレタン結合を有する化合物が好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(以後、Xで表す)と有機ポリイソシアネート化合物(以後、Yで表す)と(メタ)アクリレート(以後、Zで表す)とを反応(例えば重縮合反応)する、またはYとZとを反応することにより得られる。ここで、(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸を包含する。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(X)と有機ポリイソシアネート化合物(Y)を反応させた後、残ったヒドロキシ基に(メタ)アクリロイル基を導入することにより得られる。
【0067】
ウレタン(メタ)アクリレートの製法は、例えば、特開平7-25957号公報、特開2002-173515号公報、特開平7-292048号公報、特開2000-351819号公報等に記載されている。
【0068】
ポリオール化合物としては、多価アルコールであれば如何なるものでも良く、例えばエリスリトール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ブチルエチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。ポリブタジエンポリオールとは、2個以上の水酸基を有するポリブタジエンをいい、例えば、両末端に水酸基を有するポリブタジエンをいう。水素化ポリブタジエンポリオールとは、2個以上の水酸基を有する水素化ポリブタジエンをいい、例えば、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエンをいう。
【0069】
ポリエーテルポリオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0070】
ポリエステルポリオールとしては、多価アルコール又はポリエーテルポリオールと、多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールの製造に使用する、多価アルコール又はポリエーテルポリオールとしては、前述の化合物が挙げられる。多塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等が挙げられる。
【0071】
有機ポリイソシアネート化合物(Y)としては、格別に限定される必要はないが、例えば、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが使用でき、中でもトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H-MDI)、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H-XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m-TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)等のポリイソシアネート又はこれらポリイソシアネートの三量体化合物、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が好適に用いられる。これらの中では、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H-XDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなる群のうちの1種以上が好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0072】
(メタ)アクリレート(Z)とは、(メタ)アクリロイル基を導入する化合物をいう。(メタ)アクリロイル基を導入する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4-ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群の1種以上が好ましい。
【0073】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートは、分子の末端又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、分子内にポリエステル構造を有する。ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、日本合成社製「UV-3000B」、共栄社化学製「UF-C02」等が挙げられる。
【0075】
ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートは、分子の末端又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、分子内にポリエーテル構造を有する。ポリエーテル構造を有する化合物としては、ポリエーテルポリオール化合物が挙げられる。ポリエーテルポリオール化合物としては、前述のポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールの中では、ポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの中では、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましい。ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、日本合成社製「UV-3700B」、根上工業社製「UN-6200」、根上工業社製「UN-6202」、共栄社化学製「UF-07DF」、新中村化学社製「UA-160TM」等が挙げられる。
【0076】
1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物(X)がポリブタジエンポリオールであるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートとしては、日本曹達社製「TE-2000」等が挙げられる。
【0077】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、2官能ウレタン(メタ)アクリレート、3官能ウレタン(メタ)アクリレート、4官能ウレタン(メタ)アクリレート、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。例えば、多官能ウレタン(メタ)アクリレートとは(メタ)アクリル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートをいい、2官能ウレタン(メタ)アクリレートとは(メタ)アクリル基を2個有するウレタン(メタ)アクリレートをいい、6官能ウレタン(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル基を6個有するウレタン(メタ)アクリレートをいい、10官能ウレタン(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル基を10個有するウレタン(メタ)アクリレートをいう。
【0078】
これらの中では、2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートからなる群の1種以上が好ましく、2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレートと4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの中では、2官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの中では、6~10官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、6官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、10官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレートからなる群の1種以上がより好ましい。
【0079】
2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートを併用する場合、その含有比率は、2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、2~3官能の多官能ウレタン(メタ)アクリレート:4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート=20~95:80~5が好ましく、50~90:50~10がより好ましく、65~85:35~15が最も好ましい。
【0080】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、根上工業社製ポリエステル系ウレタンアクリレート「UN-7700」、ポリエーテル系ウレタンアクリレート「UN-6200」、「UN-6202」、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート「UN-900PEP」、「UN-9200A」、共栄社化学製ウレタンアクリレート「UF-07DF」、「UF-C012」、新中村化学社製ポリエーテル系ウレタンアクリレート「UA-160TM」)、6官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、根上工業社製ウレタンアクリレート「UN-3320HA」)、10官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、新中村化学社製ウレタンアクリレート「U-10PA」)等が挙げられる。
【0081】
(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部中、35~90質量部が好ましく、40~85質量部がより好ましく、45~80質量部が更に好ましい。35質量部以上であればタック性がなくなり、90質量部以下であれば粘度が高くなりすぎてハンドリング性が低下するおそれがない。
【0082】
本発明の組成物は、高温に暴露されたあとの剥離性を維持するために、酸化防止剤を使用できる。酸化防止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5-ジターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジターシャリーブチル-p-ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール及び4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジターシャリーブチルフェノール等が挙げられる。これらの中では、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジターシャリーブチルフェノールが好ましい。
【0083】
酸化防止剤の含有量は、(A)、(B)、及び(E)の合計100質量部に対して、0.001~3質量部が好ましい。0.001質量部以上だと高温に暴露されたあとの剥離性の維持が確保され、3質量部以下だと良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0084】
本発明の組成物は、耐熱性を確保するため、分子量を小さくすることにつながる成分(チオール化合物など)を含まないことが好ましい。
【0085】
本発明の組成物は、接着剤として使用できる。本発明の接着剤は、仮固定用接着剤として使用できる。
【0086】
本発明の組成物を用いて基材同士を接着する際は、可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいてエネルギー量が1~10000mJ/cm2の範囲になるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm2以上であると十分な接着性が得られ、10000mJ/cm2以下であると生産性が優れ、ラジカル重合開始剤(特に、光ラジカル重合開始剤)からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生も抑制される。生産性、接着性、アウトガス性、易剥離性の点で、2000~7000mJ/cm2の範囲であることがより好ましい。
【0087】
本発明の組成物により接着される基材には、特に制限はないものの、少なくとも一方の基材は半導体が好ましい。半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等が挙げられる。半導体の中では、シリコンが好ましい。半導体の中では、ウエハが好ましい。
【0088】
本発明の組成物により接着される基材には、特に制限はないものの、少なくとも一方の基材は光を透過する透明基材が好ましい。透明基材としては、水晶、ガラス、石英、フッ化カルシウム等の無機基材、プラスチック等の有機基材等が挙げられる。これらの中では、汎用性があり、大きい効果が得られる点で、ガラス、石英から選択される1種以上が好ましい。
【0089】
本発明の組成物は一実施形態において、光硬化型であり、その硬化体は優れた耐熱性及び剥離性を有することができる。本発明の組成物の硬化体は一実施形態において、高温で暴露されてもアウトガス量が少なく、剥離も容易であることから種々の光学部品や光学デバイス、電子部品の接合、封止、コーティングに好適である。例として仮固定剤、接着剤、保護シート、低複屈折性光学フィルム、層間応力緩和剤等に用いることができ、特に半導体製造プロセス、SAWデバイス加工プロセス、LED加工プロセスのように耐溶剤性、耐熱性、接着力等の多岐にわたる耐久性が必要とされる用途に適している。
【0090】
本発明の組成物の硬化体は、耐熱性の点で、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、最も好ましくは250℃以下で使用できる。本発明の組成物の硬化体は、剥離性の点で、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは150℃以上、尚更好ましくは200℃以上で使用できる。本発明の組成物で接着した接着体は、高いせん断接着力を有するため薄化工程等に耐えることができ、絶縁膜形成等の加熱工程を経た後には容易に剥離できる。本発明の組成物で接着した接着体は、特に、薄型化ウエハを製造する際に好適である。
【0091】
更に本発明では一実施形態において、接着剤により基材を接着した接着体に外力を加えることにより剥離することができる。例えば、シート、ワイヤー、ブレード等を差し込むことにより剥離できる。
【実施例
【0092】
以下、実験例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
(実験例)
特記しない限り、23℃、湿度50%で、実験した。表1~4に示す組成の硬化性樹脂組成物を調製し、評価した。
【0094】
実験例に記載の硬化性樹脂組成物中の各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0095】
(A)数平均分子量が1000未満の単官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
(A-1)ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製「M-111」、構造は式(1)において、R1は水素原子であり、R2は、エチレン基であり、R3はノニル基であり、nは1である)
(A-2)イソステアリルアクリレート(大阪有機社製「ISTA」)
(A-3)1-アダマンチルメタクリレート(大阪有機社製「ADMA」)
【0096】
(B)数平均分子量が1000未満の多官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
(B-1)トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学社製「TMPTM」)
(B-2)トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製「A-DCP」)
(B-3)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
(B-4)ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート
【0097】
(C)ラジカル重合開始剤として、以下の化合物(光ラジカル重合開始剤)を選択した。
(C-1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製「Irgacure651」、以下「I-651」と略す)
(C-2)2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(BASF社製「Irgacure379」、以下「I-379」と略す)
(C-3)ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure819」、以下「I-819」と略す)
【0098】
(D)離型性付与化合物として、以下の化合物を選択した。
(D-1)パーフルオロアルキル基含有オリゴマー(3M社製「FC-4430」、2-[N-ペルフルオロブチルスルホニル-N-メチルアミノ]エチル=アクリレート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=モノアクリレート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=ジアクリレートの共重合物)
(D-2)含フッ素オリゴマー(DIC社製「F-553」、パーフルオロアルキル基を含む)
(D-3)長鎖アルキル・アラルキル・ポリエーテル変性オルガノシロキサン(信越化学社製「X-22-2516」粘度:70mm2/s)
(D-4)ポリエーテル変性オルガノシロキサン(信越化学社製「X-22-4515」粘度:4,000mm2/s)
(D-5)ポリエーテル変性オルガノシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製ポリエーテル変性シリコーンオイル「TSF4446」粘度:1,400mm2/s)
(D-6)エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製「ルーカント HC-600」粘度:14,000mPa・s、数平均分子量2700、以下「HC-600」と略す)
(D-7)エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製「ルーカント HC-2000」粘度:89,000mPa・s、数平均分子量7700、以下「HC-2000」と略す)
【0099】
(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして以下の化合物を選択した。
(E-1)ウレタンアクリレートA(重量平均分子量が1500である多官能アクリレートとイソシアネートの縮合反応物である多官能ウレタンアクリレート。多官能アクリレートは、ペンタエリスリトールトリアクリレートである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。6官能である。)
(E-2)ウレタンアクリレートB(重量平均分子量が1000である多官能アクリレートとイソシアネートの縮合反応物である多官能ウレタンアクリレート。多官能ウレタンアクリレートは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。10官能である。)
(E-3)ウレタンアクリレートC(重量平均分子量が6000であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物は、ポリプロピレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-4)ウレタンアクリレートD(重量平均分子量が11000であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物は、ポリプロピレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-5)ウレタンアクリレートE(重量平均分子量が5200であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はテトラメチレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-6)ウレタンアクリレートF(重量平均分子量が8500であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はテトラメチレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-7)ウレタンアクリレートG(重量平均分子量が25000であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はテトラメチレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-8)ウレタンメタクリレートH(重量平均分子量が13000であるポリエステル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物は1,4-ブタンジオール及びエチレンジオールと、アジピン酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールである。有機ポリイソシアネート化合物はTDIである。メタアクリレートは2-ヒドロキシエチルメタクリレートである。2官能である。)
(E-9)ウレタンアクリレートI(重量平均分子量が15000であるポリカーボネート系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はポリカーボネートジオールである。有機ポリイソシアネート化合物はIPDIである。アクリレートは2-ヒドロキシエチルアクリレートである。2官能である。)
(E-10)ウレタンメタクリレートJ(重量平均分子量が5000であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はポリプロピレングリコールである。有機ポリイソシアネートはTDIである。メタクリレートは2-ヒドロキシプロピルメタクリレートである。2官能である。
(E-11)ウレタンアクリレートK(重量平均分子量が38000であるポリエーテル系ウレタンアクリレート。ポリオール化合物はテトラメチレングリコールである。有機ポリイソシアネート化合物はH-XDIである。アクリレートは4-ヒドロキシブチルアクリレートである。2官能である。)
【0100】
酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジターシャリーブチルフェノール(BASF社製「IRGANOX565」、以下「IRGANOX565」と略す)
【0101】
硬化体の加熱質量減少率(表の「硬化体の1%加熱質量減少温度」):作製した樹脂組成物をPETフィルムに挟み込んだ。樹脂組成物を、ブラックライトにより、365nmの波長の積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、硬化体を作製した。得られた硬化体10mgを、ブルカー・エイエックスエス社製示差熱・熱質量同時測定装置「TG-DTA2000SA」により、窒素気流下、30℃から昇温速度は10℃/分で350℃まで昇温し、得られた硬化体加熱質量減少率を測定した。硬化体の1質量%加熱質量減少温度を示した。加熱質量減少率が1質量%となる温度が200℃以上であることが、半導体製造の高温プロセス適合性の点で、好ましい。
【0102】
引張剪断接着強さ(表の「接着強さ」):被着体としてシリコンウエハ試験片(25mm×75mm×厚さ0.725mm)とガラスウエハ試験片(25mm×75mm×厚さ0.7mm)を用いて、接着部位を25mm×20mmとして作製した樹脂組成物にて、2枚のスライドガラスを貼り合わせ、ブラックライトにより、365nmの波長の積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、引張剪断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、JIS K 6850に従い、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張剪断接着強さを測定した。
【0103】
剥離・解体試験(表の「剥離力」):作製した樹脂組成物にて、4インチシリコンウエハ(直径10mm×厚さ0.47mm)と4インチガラスウエハ(直径10mm×厚さ0.7mm)を貼り合わせ、ブラックライトにより、365nmの波長の積算光量5000mJ/cm2の条件にて硬化させ、剥離・解体試験片を作製した。樹脂組成物は貼り合わせ面の全面に塗布した。ブラックライトは、4インチガラスウエハ表面から照射した。得られた試験体の間にペットシート又はブレードを差し込み、続けてダイシングテープでポーラスチャックに試験体を、ガラスウエハ面を上にして真空吸着させた。ガラスウエハにチャックを吸着して上に引っ張り、シリコンウエハからガラスウエハが外れる時の剥離力を測定した。加熱後の剥離力評価用の試験片は、ブラックライト照射後の接着体を210℃1時間真空加熱処理して作成した試験片を、試験体とした。ブラックライト照射後(加熱前)の剥離力及び加熱後の剥離力を評価した。剥離力が小さい方が、剥離性に優れる。
【0104】
タック性(表の「タック性」):剥離・解体試験で剥離した樹脂組成物の硬化体の表面のタック性を評価した。タック性があるものを「あり」、ないものを「なし」とした。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
表1~4から、本発明の樹脂組成物は、接着性、耐熱性及び剥離性に優れることが分かる。(A)を用いないと、耐熱性を有さない。(B)を用いないと、耐熱性、剥離性を有さない。(D)を用いないと剥離性を有さない。(E)を用いないとタック性が大きくなり、剥離性を有さず、耐熱性も有さない(比較例)。
【0110】
本発明は、例えば、半導体製造用仮固定接着剤として使用した場合に、耐熱性と接着性を有する。
【0111】
本発明は(E)成分を使用することにより柔軟性を保持しつつ表面のタックを減らすので、ウエハが破損することなく、剥離速度を上げることができ、生産性向上が期待される。
【0112】
本発明は(E)成分を使用することにより、弾性率が向上し、接着剤がちぎれることなく剥離できるため、接着剤残渣がパーティクルとなりにくく、後の洗浄工程が簡略化できる。更に、従来は加熱により粘着力が増加する特徴があったため、剥離工程前に行われる絶縁膜形成工程等の加熱工程を経ることにより、粘着力が増加した結果、剥離性が低下する課題があった。本発明における樹脂組成物は、加熱前には高い接着性を有しており、加熱により接着性が低下するため、加熱後でも容易に剥離できる。即ち、本発明の樹脂組成物は、ウエハ加工時の破損等が減少すると共に、剥離時のウエハの破損も減少し、製品の品質向上に大きく寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
例えば、本発明は(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートの使用により、剥離性を向上する。本発明は(E)多官能ウレタン(メタ)アクリレートの使用により、表面のタックが小さいので剥離時間が短く、生産性を上げることができる。
【0114】
本発明の組成物は、種々の電子部品、光学部品や光学デバイスの製造において、紫外線又は可視光線を照射するだけで容易に強い接着性を発現するために、作業性、生産性に優れる。本発明の組成物の硬化体は、更に200℃という高温でもアウトガスの量が極めて少ない。そのため、本発明の組成物を用いて接着した種々の電子部品、光学部品、光学デバイスは、200℃を超えるような高温での蒸着処理や、高温での焼付塗装が施される場合でも、適用可能である。
【0115】
ICや抵抗、インダクタ等の電子部品以外に、イメージセンサ等の光学部品へも回路基板への表面実装が適用されつつある。その場合は高温のハンダリフローに通される。近年、特にハンダの鉛フリー化に伴い、ハンダリフローの温度条件も厳しくなってきている。このような生産工程において、光学部品や光学デバイスの品質を高めるために、又は、生産性や生産歩留まりを高めるために、組成物の使用箇所が高温加熱処理に十分に耐えることが要求される。本発明の組成物を使用して製造された光学部品や光学デバイスは、前記高温加熱処理に十分耐えることができるため、産業上大変有用である。