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特許6990183キラルスピロビインダン骨格化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】キラルスピロビインダン骨格化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 13/62 20060101AFI20220127BHJP
   C07C 1/207 20060101ALI20220127BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20220127BHJP
   C07C 43/21 20060101ALI20220127BHJP
   C07C 45/62 20060101ALI20220127BHJP
   C07C 49/577 20060101ALI20220127BHJP
   C07F 9/6574 20060101ALI20220127BHJP
   C07B 55/00 20060101ALN20220127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C07C13/62 CSP
C07C1/207
C07C39/17
C07C43/21
C07C45/62
C07C49/577
C07F9/6574 A
C07B55/00 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018533768
(86)(22)【出願日】2016-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2016109383
(87)【国際公開番号】W WO2017107789
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2018-06-27
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】201510974151.1
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518221438
【氏名又は名称】浙江九洲薬業股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518220774
【氏名又は名称】中国科学院上海有機化学研究所
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF ORGANIC CHEMISTRY, CHINESE ACADEMY OF SCIENCE
【住所又は居所原語表記】No.345 Lingling Road, Xuhui Shanghai 200032 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】丁 奎嶺
(72)【発明者】
【氏名】曹 予曦
(72)【発明者】
【氏名】鄭 治堯
(72)【発明者】
【氏名】崇 慶雷
(72)【発明者】
【氏名】王 正
【合議体】
【審判長】村上 騎見高
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524398(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1342652(CN,A)
【文献】Tetrahedron:Asymmetry,2004年,15,3427-3431
【文献】Adv. Synth. Catal.,2010年,352,103-107
【文献】Acta Cryst.,2008年,E64,o455, supporting information sup-1-7
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2011年,133(14),5500-5507
【文献】(1S)-2,2’,3,3’-Tetrahydro-1,1’-spirobi[1H-indene]-7,7’-diol,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,2010年,1-4
【文献】CHEM. COMMUN.,2002年,480-481
【文献】Tetrahedron:Asymmetry,2003年,14,3219-3224
【文献】J. Org. Chem.,2004年,69,4648-4655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示されるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基1~C4アルコキシ基、アリール基又はヒドロキシ基である。
又は、R1、R4、R5及びR8はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基1~C4アルコキシ基、アリール基又はヒドロキシ基であり、R2及びR3はそれらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成し、且つ該芳香環は「R2及びR3に連結される分子骨格中の炭素原子が所在するベンゼン環」とは縮合環構造となり、R6及びR7はそれらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成し、且つ該芳香環は「R6及びR7に連結される分子骨格中の炭素原子が所在するベンゼン環」とは縮合環構造となる。
XはCY12 あり、n=0又は1である(ここで、Y1及びY2はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基又はアリール基ある。)。)
【請求項2】
前記R1とR8は同じであり、及び/又は、前記R2とR7は同じであり、及び/又は、前記R3とR6は同じであり、及び/又は、前記R4とR5は同じであり、及び/又は、前記n=0又はあることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基
である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C6アルキル基であり
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C4アルコキシ基である場合、前記C1~C4アルコキシ基はC1~C3アルコキシ基であり、
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にアリール基である場合、前記アリール基はC6~C20アリール基であり、
前記R2及びR3が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成する場合、前記芳香環はC6~C20芳香環であり、
前記R6及びR7が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成する場合、前記芳香環はC6~C20芳香環であり、
前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C4アルキル基であり
前記Y1及びY2がそれぞれ独立にアリール基である場合、前記アリール基はC6~C20アリール基であことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R1、R2、R3、R4 5 、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C6アルキル基である場合、前記C1~C6アルキル基はC1~C3アルキル基であり
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C3アルコキシ基である場合、前記C1~C3アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基であり、
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立に前記C6~C20アリー
ル基である場合、前記C6~C20アリール基はC6~C12アリール基であり、
前記R2及びR3が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して前記C6
~C20芳香環を構成する場合、前記C6~C20芳香環はC6~C12芳香環であり、
前記R6及びR7が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結してC6~C20芳香環を構成する場合、前記C6~C20芳香環はC6~C12芳香環であり、
前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC1~C4アルキル基である場合、前記C1~C4アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基又はtert-ブチル基であり
前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC6~C20アリール基である場合、前記C6~C20アリール基はC6~C12アリール基であることを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C3アルキル基である場合、前記C1~C3アルキル基はメチル基、エチル基又はプロピル基であり、
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立に前記C6~C12アリー
ル基である場合、前記C6~C12はフェニル基又はナフチル基であり、
前記R2及びR3が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して前記C6
~C12芳香環を構成する場合、前記C6~C12芳香環はベンゼン環又はナフタレン環であ
り、
前記R6及びR7が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結してC6~C12芳香環を構成する場合、前記C6~C12芳香環はベンゼン環又はナフタレン環であり、
前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC6~C12アリール基である場合、前記C6~C12アリール基はフェニル基又はナフチル基であることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記式Iで示されるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物は下記いずれかの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項7】
式I’で示されるホスホロアミダイトリガンド、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【化4】
(前記X、n、R1、R2、R3、R6、R7及びR8は請求項1~5のいずれかと同様であり、
前記R1’及びR2’はそれぞれ独立にC1~C10アルキル基又はC3~C10シクロアルキル基であり、又は、前記R1’及びR2’はそれらに連結されるN原子とともに連結してC2
~C10含窒素複素飽和環を構成する。)
【請求項8】
前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C3アルキル基であり、
前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC3~C10シクロアルキル基である場合、前記C3~C10シクロアルキル基はC3~C6シクロアルキル基であり、
前記R1’及びR2’が、それらに連結されるN原子とともに連結してC2~C10含窒素複
素飽和環を構成する場合、前記C2~C10含窒素複素飽和環はC3~C6含窒素複素飽和環
であることを特徴とする請求項7に記載の式I’で示されるホスホロアミダイトリガンド、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【請求項9】
前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC1~C3アルキル基である場合、前記C1~C3アルキル基はメチル基、エチル基又はプロピル基であり、
前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC3~C6シクロアルキル基である場合、前記C3
6シクロアルキル基はシクロプロピル基であり、
前記R1’及びR2’が、それらに連結されるN原子とともに連結してC3~C6含窒素複素飽和環を構成する場合、前記C3~C6含窒素複素飽和環はピラゾリジンであることを特徴とする請求項8に記載の式I’で示されるホスホロアミダイトリガンド、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【請求項10】
前記式I’で示されるホスホロアミダイトリガンドは下記いずれかの化合物であることを特徴とする請求項7に記載の式I’で示されるホスホロアミダイトリガンド、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【化5】
【請求項11】
溶媒中、イス酸である触媒の作用下、式IIIで示される化合物を分子内フリーデル・クラフツ反応させて、式Iで示される化合物を得るステップを含むことを特徴とする、式Iで示される化合物の製造方法。
【化6】
(前記X、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は請求項1~5のいずれかと
同様である。)
【請求項12】
記ルイス酸は塩化チタであり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法はさらに、前記溶媒と前記式IIIで示される化合物を混合して、0℃条件において、前記触媒を添加して1~100分間反応させ、15℃~40℃に自然昇温して1~20時間引き続き反応させるステップを含み、及び/又は、前記分子内フリーデル・クラフツ反応は、無水・無酸素条件において行われ、
及び/又は、前記分子内フリーデル・クラフツ反応は、保護性ガスの存在下において行われ、
及び/又は、前記式IIIで示される化合物と前記触媒のモル比は100:1~1:100であり、
及び/又は、前記分子内フリーデル・クラフツ反応の溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒及びスルホキシド系溶媒のうちの1種又は複数種であり、
及び/又は、前記式IIIで示される化合物と前記分子内フリーデル・クラフツ反応の溶媒とのモル体積比は0.02mol/L~0.2mol/Lであり、
及び/又は、前記分子内フリーデル・クラフツ反応の温度は-40℃~100℃であり、及び/又は、前記分子内フリーデル・クラフツ反応の時間は0.1~48時間であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記式Iで示される化合物の製造方法はさらに、溶媒中、触媒作用下、式IIで示される化合物を水素ガスと不斉水素化反応させて、前記式IIIで示される化合物を得るステプを含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の製造方法。
【化7】
【請求項14】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の触媒は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム及びパラジウムの遷移金属錯体のうちの1種又は複数種であり、前記金属錯体はキラル又はアキラルであり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の触媒と前記式IIで示される化合物とのモル比は0.0001~0.1であり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の溶媒はハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒及びスルホキシド系溶媒のうちの1種又は複数種であり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の溶媒と前記式IIで示される化合物との体積質量比は1ml/g~20ml/gであり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の水素ガスの圧力は1~100atmであり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の温度は-78~80℃であり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の時間は1~48時間であり、
及び/又は、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応終了後、後処理を行わずに、反応系をそのまま、前記フリーデル・クラフツ反応の溶媒、触媒及び前記式IIIで示される化合物と混合して、前記分子内フリーデル・クラフツ反応を行うことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記式Iで示される化合物の製造方法はさらに、溶媒中、式V、式VI及び式VIIで示される化合物を、下記のようにアルドール縮合反応させて、前記式IIで示される化合物を得るステップを含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の製造方法。
【化8】
【請求項16】
前記アルドール縮合反応は、アルカリ性条件において行われ、
及び/又は、前記アルドール縮合反応の溶媒はアルコール系溶媒と水の混合溶媒であり、及び/又は、前記アルドール縮合反応の溶媒と前記式VIで示される化合物との体積モル比は10000ml/mol~1ml/molであり、
及び/又は、前記アルドール縮合反応の温度は10~35℃であることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
アルカリ性条件において、溶媒中、式Iで示される化合物と式IVで示される化合物を
置換反応させて、式I’で示される化合物を得るステップを含むことを特徴とする、式I’で示される化合物の製造方法。
【化9】
(前記W1及びW2はそれぞれ独立にハロゲンであり、前記X、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R1’及びR2’は請求項7~10のいずれかと同様である。)
【請求項18】
前記式I’で示される化合物の製造方法はさらに、アルカリ性条件において、前記式Iで示される化合物を前記溶媒と混合して、-40~10℃に冷却させ、次に前記式IVで示される化合物と混合し、温度を10~35℃に上げてから、前記置換反応を行うステップを含み、
及び/又は、前記置換反応は、無水・無酸素条件において行われ、
及び/又は、前記置換反応は、保護性ガスの存在下において行われ、
及び/又は、前記アルカリ性条件は、反応をアルカリの作用下で行うことであり、
及び/又は、前記置換反応の溶媒は、エーテル系溶媒、ハロ置換アルカン系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒のうちの1種又は複数種であり、
及び/又は、前記置換反応において、前記式Iで示される化合物と前記溶媒とのモル体積比は0.05mol/L~0.5mol/Lであり、
及び/又は、前記置換反応において、前記式Iで示される化合物と式IVで示される化合物とのモル比は1:1.1~1:3であり、
及び/又は、前記置換反応の温度は0~35℃であり、
及び/又は、前記置換反応の時間は1~12時間であることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2015年12月22日に中国特許庁に提出された、出願番号201510974151.1、発明の名称「キラルスピロビインダン骨格化合物及びその製造方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容は引用により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、具体的に、キラルスピロビインダン骨格化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
キラル全炭素スピロ構造を有する化合物は特殊なキラル分子、すなわちキラルスピラン分子である。このようなスピラン分子構造において、スピロ炭素原子の化学結合が四面体配向の特徴を有し、その2つの環がそれぞれ2つの略垂直な平面に位置し、形成された剛性構造によりスピロ化合物における2つの環の回転が制限されるため、環に置換基がある場合は、軸方向キラリティが生じる。全炭素スピロ構造を有するスピラン化合物は、一部の生物活性化合物の重要な構造単位であり、天然生成物、たとえばヴェチゾン(β-vetivone)、アコレノン(acorenone B)、フレデリカマイシン(fredericamycin)等に広く存在している(文献R.Rios,Chem.Soc.Rev.2012,41,1060.参照)。また、スピラン分子中の2つの環がσ-結合により1つの4級炭素中心に連結されているため、キラルスピロ化合物は、剛性が高く、且つラセミ化が発生しにくいから、上記利点を有するスピラン骨格は、キラルリガンド骨格として好適であり、過去10年間余り、キラルリガンドの合成と不斉触媒への応用は大きな発展を遂げた。たとえば、近年、出現してきたキラルスピロビインダン骨格リガンドを代表としての複数の優れたキラルリガンドは、各種の不斉触媒反応において、従来のキラル骨格よりも優れた触媒効果及び立体化学制御効果を示し、現在の不斉触媒分野では「プリビレッジド構造」(privileged structures)のキラルリガンド(S.-F.Zhu,Q.-L.Zhou,in Privileged Chiral Ligands and Catalysts,Ed.:Q.-L.Zhou,Wiley-VCH,Weinheim,2011,pp.137-170.)と考えられる。しかしながら、従来のキラルスピラン分子の合成過程は、通常、非常に煩瑣であり(総合文献:[1]M.Sannigrahi,Tetrahedron 1999,55,9007;[2]R.Pradhan et al,Tetrahedron2006,62,779;[3]S.Kotha et al,Synthesis 2009,165;[4]V.A.D’yakonov et al,Chem.Rev.2014,114,5775.参照)、応用できる基質範囲が制限されるだけでなく、多数の場合にラセミ体しか得られない。光学的に純粋なスピラン骨格分子を得るには、一般的に、ラセミート又はジアステレオマーの分割過程が必要であり、高コストで且つ操作が煩瑣である上、環境汚染を引き起こすため、その実用性が大幅に制限されてしまう。従来、キラルスピロビインダンを骨格としたキラルリガンド及び触媒は、すでに百種類余りがあり、合成に使用されているキラル出発原料はいずれも光学的に純粋な(R)-又は(S)-1,1’-スピロビインダン-7,7’-ジフェノール又はその誘導体である([1]Zhou,Qilin;Fu,Yu;Xie,Jianhua;Wang,Lixin;Zhou,Hai.CN 1342652A;[2]Zhou,Qilin;Xie,Jianhua;Cheng,Xu;Fu,Yu;Wang,Lixin.CN 1439643A;[3]Zhou,Qilin;Duan,Haifeng;Shi,Wenjian;Wang,Lixin;Xie,Jianhua.CN 1760198A.[4]Zhou,Qilin;Hou,Guohua;Xie,Jianhua;Wang,Lixin.CN 1887893A;[5]Zhou,Qilin;Zhu,Shoufei;Li,Shen;Wang,Lixin;Song,Song.WO 2009129700A1;[6]Zhou,Qilin;Xie,Jianhua;Liu,Xiaoyan;Xie,Jianbo;Wang,Lixin.WO 2012065571A1;[7]林旭峰,趙彦彦,屈海軍,李雪健,CN 102516302A.)。今まで、このような光学的に純粋なキラルスピロビインダン骨格のキラル源である光学的に純粋な(R)-又は(S)-1,1’-スピロビインダン-7,7’-ジフェノール又はエステルは、例外なく、ジアステレオマー誘導物又はキラルインクルージョン結晶等のキラル分割方法により製造され(文献:[1]V.B.Birman et al,Tetrahedron-Asymmetry 1999,10,125;[2]J.H.Zhang et al,Tetrahedron-Asymmetry 2002,13,1363;[3]Z.Li et al,Tetrahedron-Asymmetry2004,15,665;[4]M.Venugopal et al,Tetrahedron-Asymmetry 2004,15,3427.参照)、分割過程が煩瑣で、操作が複雑で、大量のキラル分割試薬が使用され、且つ高コストで環境に優しくないという欠点が存在し、それによって、リガンドのコストを高め、量産が困難になるため、それらの応用が制限される。
【0004】
このように、不斉触媒効率が高く、キラル分割試薬の使用がなく、キラル分割ステップを必要とせず、方法がシンプルで、後処理が実施されやすく、低コストで環境に優しく、生成物の収率、生成物の光学純度及び化学純度が高い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物の製造方法、及び、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物リガンドを含む高触媒活性を有するキラル触媒の開発は、本分野において早急な解決の待たれる課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術によるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物の製造方法では、高価なキラル出発原料又はキラル分割試薬の使用や、キラル分割ステップが必要であり、ステップが煩瑣で、原料及びプロセスのコストが高く、経済的にも環境にも優しくないという欠陥、及び、従来技術では不斉水素化触媒の触媒効率が低い等の欠陥を克服して、キラルスピロビインダン骨格化合物及びその製造方法を提供することにある。本発明のキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物の製造方法は、キラル出発原料又はキラル分割試薬の使用がなく、キラル分割ステップを必要とせず、方法がシンプルで、後処理が実施されやすく、低コストで環境に優しく、生成物の収率、生成物光学純度及び化学純度が高い。本発明に係るキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物を用いて遷移金属触媒により製造された不斉反応の触媒は、触媒効果が顕著で、生成物収率が>99%、生成物のee値が>99%と高い。
【0006】
本発明の第1技術案
【0007】
本発明は、式Iで示されるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマーを提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基、C3~C10シクロアルキル基、C1~C4アルコキシ基、アリール基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はヒドロキシ基である。
又は、R1、R4、R5及びR8はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基、C3~C10シクロアルキル基、C1~C4アルコキシ基、アリール基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はヒドロキシ基であり、R2及びR3はそれらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成し、且つ該芳香環は「R2及びR3に連結される分子骨格中の炭素原子が所在するベンゼン環」とは縮合環構造となり、R6及びR7はそれらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成し、且つ該芳香環は「R6及びR7に連結される分子骨格中の炭素原子が所在するベンゼン環」とは縮合環構造となる。
XはCY12、NY1、O又はSであり、n=0~3である(ここで、Y1及びY2はそれぞれ独立に水素、C1~C10アルキル基、C3~C10シクロアルキル基、アリール基又はC1~C4アルコキシ基である。)。
且つ、前記式Iで示されるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物は式I-nで示される化合物ではない。)
【0010】
【化2】
【0011】
好ましくは、前記R1とR8は同じである。好ましくは、前記R2とR7は同じである。好ましくは、前記R3とR6は同じである。好ましくは、前記R4とR5は同じである。
【0012】
好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C6アルキル基である。好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C6アルキル基である場合、前記C1~C6アルキル基はC1~C3アルキル基である。好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C3アルキル基である場合、前記C1~C3アルキル基はメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0013】
好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC3~C10シクロアルキル基である場合、前記C3~C10シクロアルキル基はC3~C6シクロアルキル基である。好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC3~C6シクロアルキル基である場合、前記C3~C6シクロアルキル基はシクロプロピル基である。
【0014】
好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C4アルコキシ基である場合、前記C1~C4アルコキシ基はC1~C3アルコキシ基である。好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にC1~C3アルコキシ基である場合、前記C1~C3アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基である。
【0015】
好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がそれぞれ独立にアリール基である場合、前記アリール基はC6~C20アリール基である。好ましくは、前記C6~C20アリール基はC6~C12アリール基である。好ましくは、前記C6~C12アリール基はフェニル基又はナフチル基である。
【0016】
好ましくは、前記R2及びR3がそれらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成する場合、前記芳香環はC6~C20芳香環である。好ましくは、前記C6~C20芳香環はC6~C12芳香環である。好ましくは、前記C6~C12芳香環はベンゼン環又はナフタレン環である。
【0017】
好ましくは、前記R6及びR7が、それらに連結される分子骨格中の炭素原子とともに連結して芳香環を構成する場合、前記芳香環はC6~C20芳香環である。好ましくは、前記C6~C20芳香環はC6~C12芳香環である。好ましくは、前記C6~C12芳香環はベンゼン環又はナフタレン環である。
【0018】
好ましくは、前記n=0、1、2又は3である。
【0019】
好ましくは、前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C4アルキル基である。好ましくは、前記C1~C4アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基又はtert-ブチル基である。
【0020】
好ましくは、前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC3~C10シクロアルキル基である場合、前記C3~C10シクロアルキル基はC3~C6シクロアルキル基である。好ましくは、前記C3~C6シクロアルキル基はシクロプロピル基である。
【0021】
好ましくは、前記Y1及びY2がそれぞれ独立にアリール基である場合、前記アリール基はC6~C20アリール基である。好ましくは、前記C6~C20アリール基はC6~C12アリール基である。好ましくは、前記C6~C12アリール基はフェニル基又はナフチル基である。
【0022】
好ましくは、前記Y1及びY2がそれぞれ独立にC1~C4アルコキシ基である場合、前記C1~C4アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基である。
【0023】
好ましくは、前記式Iで示されるキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物は下記いずれかの化合物である。
【0024】
【化3】
【0025】
本発明の第2技術案
【0026】
本発明はさらに、式I’で示されるホスホロアミダイトリガンド、またはそのエナンチオマー若しくはジアステレオマーを提供する。
【0027】
【化4】
【0028】
(前記X、n、R1、R2、R3、R6、R7及びR8は前記と同様である。
前記R1’及びR2’はそれぞれ独立にC1~C10アルキル基又はC3~C10シクロアルキル基であり、又は前記R1’及びR2’はそれらに連結されるN原子とともに連結してC2~C10含窒素複素飽和環を構成する。)
【0029】
好ましくは、前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C3アルキル基である。好ましくは、前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC1~C3アルキル基である場合、前記C1~C3アルキル基はメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0030】
好ましくは、前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC3~C10シクロアルキル基である場合、前記C3~C10シクロアルキル基はC3~C6シクロアルキル基である。好ましくは、前記R1’及びR2’がそれぞれ独立にC3~C6シクロアルキル基である場合、前記C3~C6シクロアルキル基はシクロプロピル基である。
【0031】
好ましくは、前記C2~C10含窒素複素飽和環はC3~C6含窒素複素飽和環である。好ましくは、前記C3~C6含窒素複素飽和環はピラゾリジンである。
【0032】
好ましくは、前記式I’で示されるホスホロアミダイトリガンドは下記いずれかの化合物である。
【0033】
【化5】
【0034】
本発明の第3技術案
【0035】
本発明はさらに、溶媒中、ブレンステッド酸又はルイス酸である触媒の作用下、式IIIで示される化合物を分子内フリーデル・クラフツ反応させて、式Iで示される化合物を得るステップを含む、式Iで示される化合物の製造方法を提供する。
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、前記X、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は前記と同様である。)
【0038】
好ましくは、前記ブレンステッド酸は、塩酸、リン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸及びリンタングステン酸のうちの1種又は複数種である。
【0039】
好ましくは、前記ルイス酸は、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム、三塩化アルミニウム、四塩化錫、三塩化鉄、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム及びトリフルオロメタンスルホン酸銅のうちの1種又は複数種である。
【0040】
より好ましくは、前記ルイス酸は四塩化チタンである。
【0041】
好ましくは、前記式Iで示される化合物の製造方法はさらに、前記溶媒と前記式IIIで示される化合物を混合して、0℃条件において、前記触媒を添加して1~100分間(好ましくは30分間)反応させ、15℃~40℃(好ましくは25℃)に自然昇温し、1~20時間(好ましくは5~6時間)引き続き反応させるステップを含む。
【0042】
前記触媒の添加は好ましくは滴下、より好ましくは緩慢滴下である。前記緩慢滴下の滴下速度は0.1mL/min~1.5mL/min(好ましくは0.5mL/min)である。
【0043】
前記0℃条件は、好ましくは氷浴冷却により実現される。
【0044】
好ましくは、前記引き続き反応させることは、撹拌しながら行われる。
【0045】
好ましくは、前記分子内フリーデル・クラフツ反応は、無水・無酸素条件において行われる。
【0046】
好ましくは、前記分子内フリーデル・クラフツ反応は、保護性ガスの存在下において行われる。前記保護性ガスは、本分野におけるこのような反応用の通常の保護性ガス、好ましくはアルゴンガス及び/又は窒素ガスである。
【0047】
好ましくは、前記式IIIで示される化合物と前記触媒のモル比は、100:1~1:100、より好ましくは2:1~1:10、たとえば1:4~1:1、また、たとえば1:2である。
【0048】
前記分子内フリーデル・クラフツ反応の溶媒は、本分野におけるこのような反応用の通常の溶媒であってもよい。好ましくは、前記分子内フリーデル・クラフツ反応の溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒及びスルホキシド系溶媒のうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記芳香族炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン及びキシレンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素及び1,2-ジクロロエタンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記エーテル系溶媒は、エチルエーテル及び/又はテトラヒドロフランである。好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール及び/又はエタノールである。好ましくは、前記アミド系溶媒はN,N-ジメチルホルムアミドである。好ましくは、前記スルホキシド系溶媒はジメチルスルホキシドである。
【0049】
好ましくは、前記式IIIで示される化合物と前記分子内フリーデル・クラフツ反応の溶媒とのモル体積比は、0.02mol/L~0.2mol/L、たとえば0.05mol/L又は0.1mol/Lである。
【0050】
前記分子内フリーデル・クラフツ反応の温度は、本分野におけるこのような反応の通常の温度であってもよく、好ましくは-40℃~100℃、より好ましくは0~40℃、最も好ましくは0~25℃、たとえば5℃、10℃又は25℃である。
【0051】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記分子内フリーデル・クラフツ反応の進行は、本分野の通常の測定方法(たとえばTLC、HPLC、GC又はNMR)により監視でき、一般的に、式IIIで示される化合物が消える時点を反応終点とする。前記分子内フリーデル・クラフツ反応の時間は、好ましくは0.1~48時間、より好ましくは1~24時間、たとえば0.5~12時間、また、たとえば2時間、4時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、8時間、10時間、12時間又は20時間である。
【0052】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記分子内フリーデル・クラフツ反応終了後、好ましくは、さらに後処理操作を含む。前記後処理方法及び条件は、本分野におけるこのような反応の後処理用の通常の方法及び条件であってもよく、好ましくは、反応をクエンチして、抽出、乾燥、濾過、濃縮する。前記クエンチすることは、好ましくは水でクエンチすることである。前記水の使用量については、好ましくはその体積は反応溶媒の体積の0.4~0.5倍である。前記抽出に使用される抽出剤は、好ましくはハロゲン化炭化水素系溶媒であり、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒は好ましくはジクロロメタンである。前記抽出は、1回抽出用の抽出剤の体積と反応溶媒との体積比は0.5~10である。前記抽出は、好ましくは3回行われる。前記乾燥に使用される乾燥剤は、好ましくは無水硫酸ナトリウムである。前記濃縮は、好ましくは減圧蒸留である。
【0053】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記分子内フリーデル・クラフツ反応終了後、好ましくは、さらにカラムクロマトグラフィーステップを含む。前記カラムクロマトグラフィーは、好ましくはシリカゲルカラムを用いて行われる。前記カラムクロマトグラフィーの溶離液は、好ましくは石油エーテルとエステル系溶媒との混合液である。前記石油エーテルとエステル系溶媒との混合液において、前記石油エーテルとエステル系溶媒との体積比は好ましくは1:100~100:1(より好ましくは50:1)である。前記エステル系溶媒は好ましくは酢酸エチルである。
【0054】
好ましくは、前記式Iで示される化合物の製造方法はさらに、溶媒中、触媒作用下、式IIで示される化合物を水素ガスと不斉水素化反応させて、前記式IIIで示される化合物を得るステップを含む。
【0055】
【化7】
【0056】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の触媒は、本分野におけるこのような反応用の通常の不斉水素化触媒であってもよく、好ましくはルテニウム、ロジウム、イリジウム及びパラジウムの遷移金属錯体のうちの1種又は複数種であり、前記金属錯体は、キラル又はアキラルであり、より好ましくはイリジウムのホスフィン-窒素リガンド錯体である。好ましくは、前記イリジウムのホスフィン-窒素リガンド錯体は、Irのキラルホスフィン-窒素リガンド錯体である。好ましくは、前記Irのキラルホスフィン-窒素リガンド錯体は、キラル一価イリジウム/ホスフィン-オキサゾリン錯体である。前記一価イリジウム/ホスフィン-オキサゾリン錯体は、好ましくは下記式で示されるIrI/(S)-tBu-PHOX、IrI/(R,S)-Bn-SpinPHOX及びIrI/(S,S)-Bn-SpinPHOX、並びに、それらのエナンチオマー及びジアステレオマーのうちの1種又は複数種である。
【0057】
【化8】
【0058】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の触媒と前記式IIで示される化合物とのモル比は、好ましくは0.0001~0.1、より好ましくは0.005~0.02、最も好ましくは0.01~0.02である。
【0059】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の溶媒は、本分野におけるこのような反応用の通常の的溶媒であってもよく、好ましくはハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒及びスルホキシド系溶媒のうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素及び1,2-ジクロロエタンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記芳香炭化水素系溶媒はベンゼン、トルエン及びキシレンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記エーテル系溶媒は、エチルエーテル及び/又はテトラヒドロフランである。好ましくは、前記アルコール系溶媒はメタノール及び/又はエタノールである。好ましくは、前記アミド系溶媒はN,N-ジメチルホルムアミドである。好ましくは、前記スルホキシド系溶媒はジメチルスルホキシドである。
【0060】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の溶媒と前記式IIで示される化合物との体積質量比は1ml/g~20ml/g、たとえば12.0ml/g~50ml/g、また、たとえば12.5ml/gである。
【0061】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の水素ガスの圧力は、本分野におけるこのような反応の通常の圧力であってもよく、好ましくは1~100atm、より好ましくは30~50atmである。
【0062】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の温度は、本分野におけるこのような反応用の通常の温度であってもよく、好ましくは-78~80℃、より好ましくは10~35℃である。
【0063】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応の進行は、本分野の通常の測定方法(たとえばTLC、HPLC、GC又はNMR)により監視でき、一般的に、式IIで示される化合物が消える時点を反応終点とする。前記不斉水素化反応の時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~12時間、また、たとえば6~8時間である。
【0064】
前記式Iで示される化合物の製造方法は、前記不斉水素化反応終了後、好ましくは、さらに後処理操作を含む。前記後処理の方法及び条件は、本分野におけるこのような反応の後処理用の通常の方法及び条件であってもよく、好ましくは、濃縮、カラムクロマトグラフィーである。前記濃縮は、好ましくは減圧蒸留である。前記カラムクロマトグラフィーは、好ましくはシリカゲルカラムを用いて行われる。前記カラムクロマトグラフィーの溶離剤は、好ましくは体積比1:100~100:1(たとえば20)の石油エーテルとエステル系溶媒との混合液である。好ましくは、前記エステル系溶媒は酢酸エチルである。
【0065】
好ましくは、前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記不斉水素化反応終了後、後処理を行わずに、反応系をそのまま、前記フリーデル・クラフツ反応の溶媒、触媒及び前記式IIIで示される化合物と混合して、前記分子内フリーデル・クラフツ反応を行う。
【0066】
好ましくは、前記式Iで示される化合物の製造方法は、さらに、溶媒中、式V、式VI及び式VIIで示される化合物を、下記のようにアルドール縮合反応させて、前記式IIで示される化合物を得るステップを含む。
【0067】
【化9】
【0068】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記アルドール縮合反応の方法及び条件は、いずれも本分野におけるこのような反応用の通常の方法及び条件であってもよく、好ましくは、本発明の条件は以下のとおりである。
【0069】
好ましくは、前記アルドール縮合反応は、アルカリ性条件において行われる。
【0070】
好ましくは、前記アルカリ性条件は、無機アルカリを添加することにより得られる。好ましくは、前記無機アルカリは前記と同様である。
【0071】
好ましくは、前記アルドール縮合反応の溶媒はアルコール系溶媒と水の混合溶媒である。好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール及びプロパノールのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アルコール系溶媒と水の混合溶媒において、アルコール系溶媒と水の体積比は1:1~1:10である。
【0072】
好ましくは、前記アルドール縮合反応の溶媒と前記式VIで示される化合物との体積モル比は10000ml/mol~1ml/molである。
【0073】
好ましくは、前記アルドール縮合反応の温度は10~35℃である。
【0074】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記アルドール縮合反応の進行は、本分野における通常の測定方法(たとえばTLC、HPLC、GC又はNMR)により監視でき、一般的に、式VIで示される化合物が消える時点を反応終点とする。前記置換反応の時間は、好ましくは1~12時間(たとえば10時間)である。
【0075】
前記式Iで示される化合物の製造方法において、前記アルドール縮合反応終了後、好ましくは、さらに後処理操作を含む。前記後処理の方法及び条件は、本分野におけるこのような反応の後処理用の通常の方法及び条件であってもよく、好ましくは、濾過、洗浄、乾燥である。前記濾過は、好ましくは吸引濾過である。前記洗浄には、好ましくは、まず水で洗浄し、次にアルコール系溶媒(たとえばエタノール)で洗浄する。
【0076】
本発明の第4技術案
【0077】
本発明はさらに、アルカリ性条件において、溶媒中、式Iで示される化合物と式IVで示される化合物を置換反応させて、式I’で示される化合物を得るステップを含む、式I’で示される化合物の製造方法を提供する。
【0078】
【化10】
【0079】
(前記W1及びW2はそれぞれ独立にハロゲンであり、前記X、n、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R1’及びR2’は前記と同様である。)
【0080】
好ましくは、前記置換反応において、前記ハロゲンは好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0081】
好ましくは、前記置換反応において、前記C1~C10アルキル基はC1~C6アルキル基であり、より好ましくはC1~C3アルキル基である。好ましくは、前記C1~C3アルキル基はメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0082】
前記置換反応の方法及び条件は、本分野における通常の方法及び条件であってもよく、本発明では、下記条件は好ましい。
【0083】
好ましくは、前記式I’で示される化合物の製造方法はさらに、アルカリ性条件において、前記式Iで示される化合物を前記溶媒と混合して、-40~10℃に冷却させ、次に前記式IVで示される化合物と混合し、温度を10~35℃に上げてから、前記置換反応を行うステップを含む。
【0084】
好ましくは、前記式IVで示される化合物と混合する方法は、前記式IVで示される化合物を反応系に添加することである。好ましくは、前記添加の方法は滴下である。前記滴下は、好ましくは、緩慢に行われる。
【0085】
好ましくは、前記置換反応は、撹拌しながら行われる。
【0086】
好ましくは、前記置換反応は、無水・無酸素条件において行われる。
【0087】
好ましくは、前記置換反応は、保護性ガスの存在下において行われる。好ましくは、前記保護性ガスは、アルゴンガス及び/又は窒素ガスである。
【0088】
好ましくは、前記アルカリ性条件は、反応をアルカリの作用下で行うことである。好ましくは、前記アルカリは、有機アルカリ及び/又は無機アルカリである。好ましくは、前記有機アルカリは、ピリジン類、イミダゾール類、ピラジン類、インドール類、プリン類、モルホリン類、ピペリジン類、ピペラジン類、第三級アミン類、アニリン類及びアミジン類の有機アルカリのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記第三級アミン類の有機アルカリは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン及びN,N-ジメチルベンジルアミンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アニリン類の有機アルカリはN,N-ジメチルアニリンである。好ましくは、前記ピリジン類の有機アルカリは、ピリジン、メチルピリジン、エチルメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン及び2-メチル-5-エチルピリジンのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記ピペリジン類の有機アルカリはN-メチルピペリジンである。好ましくは、前記モルホリン類の有機アルカリは、N-メチルモルホリンである。好ましくは、前記ピペラジン類の有機アルカリは1,4-エチレンピペラジン(DABCO)である。好ましくは、前記アミジン類の有機アルカリは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び/又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)である。好ましくは、前記無機アルカリはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩及び炭酸アンモニウムのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物は、水素化ナトリウム及び/又は水素化カリウムである。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-アルコキシド及びカリウムtert-アルコキシドのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属アミドは、アナトリウムアミド及び/又はジイソプロピルリチウムである。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸セシウムのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩は、炭酸水素カリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムである。好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩は酢酸ナトリウムである。
【0089】
好ましくは、前記置換反応の溶媒は、エーテル系溶媒、ハロ置換アルカン系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒のうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記エーテル系溶媒はテトラヒドロフランである。
【0090】
好ましくは、前記置換反応において、前記式Iで示される化合物と前記溶媒とのモル体積比は0.05mol/L~0.5mol/L、より好ましくは0.1mol/Lである。
【0091】
好ましくは、前記置換反応において、前記式Iで示される化合物と式IVで示される化合物とのモル比は1:1.1~1:3、より好ましくは1:1.1~1:1.3である。
【0092】
好ましくは、前記置換反応の温度は0~35℃、より好ましくは0~25℃である。
【0093】
前記式I’で示される化合物の製造方法において、前記置換反応の進行は、本分野における通常の測定方法(たとえばTLC、HPLC、GC又はNMR)によって監視でき、一般的に、式Iで示される化合物が消える時点を反応終点とする。前記置換反応の時間は好ましくは1~12時間である。
【0094】
前記式I’で示される化合物の製造方法において、前記置換反応終了後、好ましくは、さらに後処理操作を含む。前記後処理の方法及び条件は、本分野におけるこのような反応後処理用の通常の方法及び条件であってもよく、好ましくは、濃縮、カラムクロマトグラフィーである。前記濃縮は、好ましくは減圧蒸留である。前記カラムクロマトグラフィーは、好ましくはシリカゲルカラムを用いる。前記カラムクロマトグラフィーの溶離剤は、好ましくは体積比100:1~10:1(たとえば20)の石油エーテルと脂肪アミン系溶媒との混合液である。好ましくは、前記脂肪アミン系溶媒はトリエチルアミンである。
【0095】
本発明では、室温とは、環境温度が20~30℃であることを意味する。
【0096】
用語「アルキル基」とは、飽和直鎖又は分岐の炭化水素部分、たとえば-CH3又は-CH(CH32を表す。用語「アルコキシ基」とは、アルキル基とオキシ原子が連結された基、たとえば-OCH3、-OCH2CH3を表す。用語「シクロアルキル基」とは、飽和環状炭化水素基部分、たとえばシクロヘキシル基を表す。用語「アリール基」とは、1つ又は複数の芳香環を含む炭化水素基部分を表し、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ナフチリデン基、ピレニル基、アントリル基、フェナントレニル基が含まれるが、それらに制限されない。
【0097】
特に断らない限り、本明細書では、前記アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、及びアリール基は置換及び未置換のものをともに含む。アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基及びアリール基が有し得る置換基として、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C10シクロアルキル基、C3-C10シクロアルケニル基、C1-C6アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミノ基が含まれるが、これらに制限されない。
【0098】
本分野の常識に沿って、上記それぞれの好ましい条件を任意に組み合わせることができ、これにより本発明のそれぞれの好ましい態様が得られる。
【0099】
特記のない限り、本発明に使用されている試薬及び原料はすべて市販品として入手できる。
【発明の効果】
【0100】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0101】
1、本発明に係るキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物の製造方法は、キラル出発原料又はキラル分割試薬の使用がなく、キラル分割ステップを必要とせず、方法がシンプルで、後処理が実施されやすく、低コストで環境に優しく、生成物の収率、生成物の光学純度及び化学純度が高い。
【0102】
2、本発明に係るキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物を用いて製造された遷移金属錯体は、不斉水素化反応の触媒として、触媒効果が顕著で、生成物の収率が>99%、生成物のee値が>99%と高い。
【0103】
3、本発明に係るアルドール縮合反応による化合物IIの製造方法は、収率が>90%に達し、後処理がよりシンプルである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1図1は、実施例20で得られたキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-gのX線結晶回折分子構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、実施例にて本発明についてさらに説明するが、本発明は前記実施例の範囲に制限されるものではない。以下の実施例において具体的な条件が明示されていない実験方法は、通常の方法及び条件、又は商品の仕様書に従って選択すればよい。
【0106】
本発明では、本分野の常識により、antiとsynはシス/トランス異性体を区別するものであり、antiは一対のシス/トランス異性体化合物のうちトランス立体配置を有する化合物であり、synは一対のシス/トランス異性体化合物のうちシス立体配置を有する化合物である。
【0107】
本発明では、本分野の常識により、dr値はジアステレオマー同士のモル比である。たとえば、ジアステレオマーがシス/トランス異性体で、且つジアステレオマーのうちトランス立体配置化合物とシス立体配置化合物のモル量が大きい場合、dr値=anti/syn*100%であり、すなわちdr値は、ジアステレオマーのうちトランス立体配置化合物とシス立体配置化合物とのモル比であり、逆の場合にも同様である。
【0108】
本発明では、本分野の常識により、ee値はエナンチオマー過剰率を意味する。たとえば、一対のエナンチオマーがそれぞれR立体配置とS立体配置で、且つR立体配置化合物のモル量がS立体配置化合物より大きい場合、ee値=(R-S)/(R+S)*100%であり、すなわち2つの化合物のモル量の差値と2つの化合物の合計モル量との比であり、逆の場合にも同様である。
【0109】
以下の実施例では、特に断らない限り、収率は分離収率、すなわち、生成物を後処理で分離精製して得た収率を指し、後処理前の反応転化率ではない。
【0110】
以下の実施例では、特に断らない限り、tR(major)は主生成物のピーク出現時間、tR(minor)は副生成物のピーク出現時間であり、且つ副生成物は一般的に主生成物のシス/トランス立体配置のジアステレオマーである。
【0111】
以下の実施例では、特に断らない限り、IR(neat)は、純粋な生成物のサンプルの赤外検出を意味する。
【0112】
以下の実施例では、特に断らない限り、calcd.Forは化合物の質量分析データの計算値、Foundは質量分析データの実験値である。
【0113】
以下の実施例では、特に断らない限り、Chiralcel OD-H columnは日本ダイセル株式会社製の型番Chiralcel OD-Hのキラルカラムである。
【0114】
実施例1
下記式の反応経路で示されるように、化合物II-aの製造を例にして、本実施例で、本発明に記載のα,α’-ビス(アリーレン)ケトン化合物(一般式II)の典型的な製造方法を詳細に説明する。
【0115】
【化11】
【0116】
250-mLナス型フラスコに水酸化ナトリウム(1.6g、40mmol)、1/1(v/v)のエタノール/水溶液(100mL)を加えて、室温で撹拌して溶解した後、シクロヘキサノン(1.03mL、10mmol)とベンズアルデヒド(2.2mL、22mmol)を順次加えて、室温で10時間撹拌した。反応系から大量の黄色固体を析出させて、吸引濾過し、得られた固体を大量の水(4×100mL)で洗浄して、少量のエタノール(10mL)で洗浄し、乾燥させて黄色粉末状の固体生成物II-aを得た(収率85%)。
【0117】
II-a:M.P.115-117℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.80(s,2H),7.47-7.32(m,10H),2.95-2.91(m,4H),1.82-1.75(m,2H)ppm.13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.4,136.9,136.1,135.9,130.3,128.6,128.4,28.4,23.0ppm.
【0118】
実施例2
反応基質である式2aで示される化合物における置換基を変更する以外、実施例1と同様な製造方法によって、下記α,α’-ビス(アリーレン)ケトン類化合物II-a~II-mをそれぞれ製造した。
【0119】
【化12】
【0120】
式II-bで示される化合物の収率及び構造同定データ
黄色固体、92%.M.P.142-144℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.91(s,2H),7.26-7.18(m,8H),2.77-2.75(m,4H),2.34(s,6H),1.73-1.67(m,2H),13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.4,137.9,136.7,136.0,135.1,130.1,129.0,128.4,125.3,28.4,23.5,20.0.IR(neat)ν2932,1664,1590,1463,1400,1277,1240,1195,1165,1138,1018,996,968,929,860,814,783,759,736,721,607cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2223+:303.1743,Found:303.1747([M+H]+).
【0121】
式II-cで示される化合物の収率及び構造同定データ
黄色固体、収率85%、M.P.83-85℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.77(s,2H),7.31-7.24(m,6H),7.16-7.14(m,2H),2.94-2.91(m,4H),2.38(s,6H),1.80-1.74(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ109.3,137.9,137.0,136.0,135.9,131.1,129.4,128.2,127.4,28.5,23.0,21.4.IR(neat)ν2939,1659,1597,1490,1428,1276,1227,1180,1162,1143,1072,1050,971,946,885,835,786,758,737,717,690,616cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2223+:303.1743,Found:303.1751([M+H]+).
【0122】
式II-dで示される化合物の収率及び構造同定データ
黄色固体、収率90%.M.P.179-181℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.78(s,2H),7.38(d,J=8.0Hz,4H),7.21(d,J=8.4Hz,4H),2.92(t,J=6Hz,4H),2.38(s,6H),1.81-1.75(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.4,138.8,136.8,135.4,133.1,130.4,129.1,28.5,23.0,21.4.IR(neat)ν2938,2915,1660,1598,1564,1507,1311,1266,1197,1154,1139,1016,958,935,867,817,757,729,706,660cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2223+:303.1743,Found:303.1749([M+H]+).
【0123】
式II-eで示される化合物の収率及び構造同定データ
黄色固体、収率95%、1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.76(s,2H),7.32(t,J=8.0Hz,2H),7.06(d,J=7.6Hz,2H),6.99(s,2H),6.89(dd,J=8,2.4Hz,2H),3.83(s,6H),2.94-2.91(m,4H),1.81-1.75(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.3,159.4,137.2,136.8,136.4,129.3,122.8,115.7,114.2,55.2,28.4,22.9,IR(neat)ν2934,2834,1690,1601,1571,1491,1445,1426,1316,1270,1220,1185,1162,1094,1045,993,947,921,883,868,822,769,751,674,626cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C22233 +:335.1642,Found:335.1646([M+H]+).
【0124】
式II-fで示される化合物の収率及び構造同定データ
黄色固体、収率90%、M.P.167-169℃、1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.76(s,2H),7.44(d,J=8.8Hz,4H),6.92(d,J=8.8Hz,4H),3.82(s,6H),2.89(t,J=5.2Hz,4H),1.83-1.75(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.0,159.8,136.4,134.2,132.1,128.6,113.8,55.2,28.4,22.9.IR(neat)ν2939,2829,1657,1591,1553,1505,1451,1416,1313,1301,1276,1247,1182,1159,1138,1112,1022,965,948,868,832,809,754,731,663cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C22233 +:335.1642,Found:335.1647([M+H]+).
【0125】
式II-gで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0126】
黄色固体、収率75%、M.P.186-188℃、1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.98-7.95(m,4H),δ7.88-7.83(m,6H),δ7.60-7.58(m,2H),δ7.52-7.50(m,4H),13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.3,137.1,136.4,133.5,133.1,133.0,130.2,128.4,127.9,127.7,127.6,126.8,126.4,28.6,23.0.IR(neat)ν3050,2961,2932,2847,2451,1950,1665,1605,1576,1500,1451,1432,1371,1349,1332,1309,1282,1269,1239,1178,1164,1139,1124,1064,1015,987,968,946,921,893,882,860,820,773,750,728,655,640,630,611cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C2822+374.1665found 374.1673[M+].
【0127】
式II-hで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0128】
黄色固体、収率95%、M.P.165-166℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.79(s,2H),7.50(d,J=8.8Hz,2H),6.84(d,J=2.8Hz,2H),6.75(dd,J=8.4,2.8Hz,2H),3.80(s,3H),2.76(t,J=5.6Hz,4H),1.79-1.72(m,2H),13C NMR(100MHz,CDCl3)δ189.3,158.2,137.4,136.7,136.2,133.3,116.3,115.4,115.1,55.4,28.2,22.9.IR(neat)ν3071,3000,2961,2941,2872,2847,2829,1656,1590,1566,1462,1438,1398,1299,1280,1263,1238,1193,1165,1145,1111,1041,1017,995,858,825,813,750,733,694,606cm-1;EI-MS(70eV),m/z=492([M]+),411,331,317,301,289,274,166,128,115,102;calcd.for C2220Br23:C,53.68;H,4.10%;Found:C,53.67;H,4.08%.
【0129】
式II-iで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0130】
黄色固体(Yellow powder)、収率75%、M.P.160-162℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.76(s,2H),7.12-7.10(m,2H),7.02(s,2H),6.90(d,J=8.4Hz,2H),3.91(d,J=1Hz,12H),2.94(t,J=5.2Hz,4H),1.85-1.81(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ189.9,149.5,148.5,136.7,134.4,128.8,123.8,113.6,110.7,55.8,55.8,28.4,22.9.IR(neat)ν2940,2838,1652,1595,1511,1446,1420,1331,1246,1138,1067,1017,991,935,920,908,865,849,806,759,719,611cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C24275 +:395.1853,Found:395.1860([M+H]+).
【0131】
式II-jで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0132】
黄色固体、収率90%、M.P.142-144℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.88(s,2H),7.13-7.04(m,6H),2.76(m,4H),2.33(s,6H),2.29(s,6H),1.72-1.70(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.4,136.6,136.1,134.9,134.8,134.7,130.0,129.5,129.1,28.4,23.5,21.0,19.6.IR(neat)ν2931,1669,1613,1588,1488,1433,1310,1275,1230,1166,1137,1034,928,904,810,780,751,719cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2427+:331.2056,Found:331.2063([M+H]+).
【0133】
式II-kで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0134】
黄色固体、収率85%、M.P.75-77℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.85(s,2H),7.12(d,J=8.8,2H),6.79-6.78(m,4H),3.78(s,6H),2.76(t,J=4.8Hz,4H),2.25(s,6H),1.73-1.69(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.2,157.1,136.8,136.0,135.9,130.9,129.9,114.7,113.4,55.3,28.4,23.4,19.0.IR(neat)ν2919,2834,1663,1605,1582,1491,1466,1444,1411,1282,1250,1235,1211,1159,1138,1116,1038,992,950,912,884,859,819,803,749,731,706cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C24273 +:363.1955,Found:363.1961([M+H]+).
【0135】
式II-lで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0136】
黄色固体、収率92%、M.P.145-147℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.93(s,2H),6.88-6.85(m,6H),3.80(s,6H),3.79(s,6H),2.85(t,J=5.2Hz,4H),1.77-1.74(m,2H),13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.4,152.7,136.8,132.3,125.8,116.3,114.3,111.5,56.0,55.8,28.7,23.4.IR(neat)ν2945,2832,1663,1600,1491,1462,1414,1280,1249,1218,1180,1155,1141,1036,991,934,864,809,754,732,718,698cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C24275 +:395.1853,Found:395.1849([M+H]+).
【0137】
式II-mで示される化合物の収率及び構造同定データ
【0138】
黄色固体、収率85%、M.P.180-182℃,1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.92(s,2H),7.08(d,J=8.8Hz,2H),6.69(d,J=8.4Hz,2H),3.90-3.89(m,18H),2.85-2.82(m,4H),1.77-1.75(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ190.1,154.2,153.4,142.1,135.7,131.8,125.1,123.0,106.5,61.4,60.8,55.9,28.8,23.4.IR(neat)ν2938,1660,1587,1490,1456,1410,1264,1204,1160,1137,1090,1041,1017,967,943,921,879,861,820,732,698,651cm-1
【0139】
実施例3
【0140】
【化13】
【0141】
アルゴンガス雰囲気下、水素化フラスコ(150-mL)を無水・無酸素条件下で処理した後、実施例2で製造された化合物II-h(6.0g、12.2mmol)、触媒IrI/(S)-tBu-PHOX(0.061mmol)、及び無水ジクロロメタン(75mL)を投入した。グローブボックスにおいて水素化フラスコをオートクレーブに移して、水素ガスを3回置換した後、水素ガスを30atmになるまで導入して、室温で6~8時間反応させた。ヒュームフードにおいて残留水素ガスを慎重に排出して、反応釜を開き、溶媒を減圧除去して、混合物をサンプリングして1H NMRにより測定した結果、II-hの転化率は>99%、生成物III-hのシス-トランス比率(d.r.=anti/syn)は>95:5であった。余剰混合物から溶媒を減圧除去して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル20:1)、無色油状液体III-hを得た。
【0142】
得られた化合物III-hは、無色油状液体で、収率が92%、ee値が>99%、[α]D 20=-18.79(c 1.0、CHCl3)であった。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーにより測定されるものであり、キラルカラムは日本ダイセル株式会社製の型番Chiralcel AS-Hのキラルカラム(移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度 室温.;移動相流速:0.5mL/min;紫外線-可視光検出、検出波長λ=230nm);化合物III-hの保持時間tR(major)=17.49min、化合物III-hのシス立体配置異性体の保持時間tR(minor)=19.31minである。
【0143】
化合物III-hの構造同定データ:1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.38(d,J=8.4Hz,2H),6.72(d,J=3.2Hz,2H),6.61(dd,J=8.8,2.8Hz,2H),3.73(s,3H),3.18(dd,J=13.6,3.0Hz,2H),2.97-2.90(m,2H),2.72(dd,J=14.0,8.4Hz,2H),1.96-1.88(m,2H),1.83-1.77(m,2H),1.70-1.62(m,2H),13C NMR(100MHz,CDCl3)δ213.7,158.6,139.9,133.2,116.9,114.9,113.5,55.3,48.9,36.4,32.2,20.6,IR(純粋なサンプル)ν2992,2959,2920,2854,2834,1571,1466,1457,1437,1315,1286,1271,1256,1174,1102,1079,1035,967,800,607cm-1;EI-MS(70eV),m/z:496([M]+),415,336,215,199,187,137,121,91,77;HRMS-EI(m/z):計算値C22243Br2 +:494.0092,実測値:494.0096([M]+).
【0144】
実施例4
アルゴンガス雰囲気下、水素化フラスコ(150-mL)を無水・無酸素条件下で処理した後、実施例2で製造された化合物II-h(0.1g、0.2mmol)、触媒A(0.002mmol)、及び無水ジクロロメタン(5mL)を投入した。グローブボックスにおいて水素化フラスコをオートクレーブに移して、水素ガスを3回置換した後、水素ガスを導入して、室温で12時間反応させた。ヒュームフードにおいて残留水素ガスを慎重に排出して、反応釜を開き、溶媒を減圧除去して、混合物をサンプリングして1H NMRにより、II-hの転化率と生成物III-hのシス-トランス比率(d.r.=anti/syn)を測定した。余剰混合物から溶媒を減圧除去して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル20:1)、無色油状液体III-hを得て、生成物のee値とdr値はいずれも実施例3におけるキラル高速液体クロマトグラフィー方法によって測定された。触媒の種類と水素ガス圧力、生成物収率、dr値及びee値は表1に示される。
【0145】
【表1】
【0146】
表1中の触媒Aの各化合物の構造は以下のとおりである。
【0147】
【化14】
【0148】
表1から分かるように、上記複数種の異なるキラルイリジウム(I)/ホスフィン-オキサゾリン錯体を触媒として用いたところ、触媒効果は近く、いずれも優れたdr値(anti/syn≧19:1)と99%のeeで、対応した不斉水素化生成物III-hを得た。生成物の収率には僅かな差異があり、その中でも、IrI/(S)-tBu-PHOXの統合効果が最適で、30atm水素ガス圧力、室温で12時間反応させたところ、>19:1のdr値、99%のee及び93%の分離収率で、III-hは得られた。
【0149】
実施例5
【0150】
【化15】
【0151】
上式で示されるように、実施例2で製造された化合物II-a~II-mをそれぞれ水素化基質、1.0%のホスフィン-オキサゾリンリガンドイリジウム錯体IrI/(S)-tBu-PHOXを触媒(百分率は触媒のモル量が化合物IIのモル量に占める百分率である)として、水素化基質を変更して、水素ガス圧力を30atm、反応時間を8時間に変更する以外、実施例3と同様な実験方法によって、反応を行い、下記水素化生成物III-a~III-mを得た。これら生成物のdr値を測定した結果、いずれもanti/syn>19:1であった。
【0152】
水素化生成物III-a~III-mに関連する収率及び構造分析キャラクタリゼーションデータ
【0153】
【化16】
【0154】
白色固体、収率90%.>99%ee、[α]D 20=-56.5(c 1.00、CHCl3)。生成物のee値はキラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=2:98、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=13.22min;tR(minor)=20.22min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.28-7.11(m,10H),3.10(dd,J=13.6,5.6Hz,2H),2.80-2.75(m,2H),2.60(dd,J=13.6,9.2Hz,2H),1.90-1.84(m,2H),1.77-1.71(m,2H),1.63-1.57(m,2H)ppm.13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.7,139.6,129.0,128.4,126.2,50.7,36.2,31.8,20.3ppm.
【0155】
【化17】
【0156】
無色液体、収率94%.>99%ee、[α]D 20=-38.0(c 0.97、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-Hcolumn;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=9.52min;tR(minor)=11.27min.The absolute configuration was assigned by analogy.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.08-6.99(m,8H),3.08(dd,J=14.0,5.2Hz,2H),2.73-2.71(m,2H),2.56(dd,J=13.6,9.2Hz,2H),2.26(s,6H),1.87-1.82(m,2H),1.71-1.68(m,2H),1.59-1.55(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ 214.0,137.5,135.8,130.1,129.5,126.1,125.5,49.0,33.1,31.6,20.3,19.2.IR(neat)ν3016,2929,2860,2349,2323,1703,1604,1492,1454,1379,1270,1143,1120,1031,941,919,898,867,833,741,671,665cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2230NO+:324.2322,Found:324.2321([M+NH4+).
【0157】
【化18】
【0158】
無色液体、収率82%、>99%ee、[α]D 20=-56.3(c 1.02、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-Hcolumn;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=9.20min;tR(minor)=12.30min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.15-7.11(m,2H),6.99-6.89(m,6H),3.05(dd,J=14.0,6.0Hz,2H),2.75-2.72(m,2H),2.54(dd,J=13.2,8.8Hz,2H),2.29(s,6H),1.87-1.82(m,2H),1.70-1.67(m,2H),1.57-1.54(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.5,139.4,137.7,129.6,128.1,126.7,125.8,50.5,35.9,31.6,21.2,20.1.IR(neat)ν2925,2859,1705,1608,1488,1446,1377,1117,1037,921,852,782,766,743,699cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C2226+306.1978found 306.1988[M+].
【0159】
【化19】
【0160】
白色固体、収率90%、>99%ee、M.P.71-73℃、[α]D 20=-46.2(c 1.10、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=9.45min;tR(minor)=11.26min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.08(d,J=8.0Hz,4H),7.01(d,J=7.6Hz,4H),3.05(dd,J=13.6,5.6Hz 2H),2.76-2.72(m,2H),2.56(dd,J=13.6,9.2Hz,2H),2.32(s,6H),1.90-1.85(m,2H),1.74-1.71(m,2H),1.60-1.55(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ215.0,136.5,135.6,129.1,128.9,50.8,35.7,31.8,21.0,20.3.IR(neat)ν3007,2928,2854,1902,1695,1516,1441,1344,1320,1286,1258,1231,1150,1091,1022,943,921,904,868,798,772,752,708,644,613cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2230NO+:324.2322,Found:324.2319([M+NH4+).
【0161】
【化20】
【0162】
無色液体、収率97%、>99%ee、[α]D 20=-48.2(c 1.01、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=14.19min;tR(minor)=19.48min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.16(t,J=7.6Hz,2H),6.74-6.69(m,6H),3.75(s,6H),3.06(dd,J=13.6,5.2Hz,2H),2.76-2.73(m,2H),2.56(dd,J=13.6,9.2Hz,2H),1.88-1.84(m,2H),1.72-1.69(m,2H),1.61-1.54(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.4,159.4,141.0,129.2,121.2,114.6,111.2,54.9,50.4,36.0,31.6,20.1.IR(neat)ν2930,1703,1583,1488,1453,1257,1152,1118,1041,853,780,747cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C22263 +338.1876found338.1876.
【0163】
【化21】
【0164】
白色固体、収率95%、>99%ee、M.P.68-70℃.[α]D 20=-30.6(c 1.03、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=230nm;tR(major)=16.16min;tR(minor)=20.49min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.03(d,J=8.4Hz,4H),6.80(d,J=8.4Hz,4H),3.74(s,6H),3.04(dd,J=14,6.4Hz,2H),2.75-2.72(m,2H),2.55(dd,J=13.6,8.4Hz,2H),1.89-1.83(m,2H),1.73-1.70(m,2H),1.60-1.55(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.3,157.6,131.2,129.5,113.4,54.7,50.6,35.0,31.6,20.0.IR(neat)ν2936,2860,2838,1888,1692,1610,1583,1509,1457,1440,1420,1359,1342,1321,1300,1279,1243,1231,1174,1136,1114,1099,1074,1028,959,916,893,871,846,831,810,776,759,736,708,683,623cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2230NO3 +:335.2220,Found:335.2216([M+NH4+).
【0165】
【化22】
【0166】
白色固体、収率95%、>99%ee、M.P.108-110℃.[α]D 20=-0.1(c 1.2、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=12.98min;tR(minor)=15.58min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.73-7.71(m,2H),7.65(d,J=8.4Hz,4H),7.49(s,2H),7.39-7.34(m,4H),7.19(dd,J=8.0,1.2Hz,2H),3.21(dd,J=14.0,6.0Hz,2H),2.86-2.82(m,2H),2.69(dd,J=13.6,8.8Hz,2H),1.83-1.78(m,2H),1.63-1.60(m,2H),1.55-1.50(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.3,137.0,133.3,131.9,127.9,127.4,127.3,127.3,127.2,125.8,125.2,50.5,36.2,31.8,20.1.IR(neat)ν3055,2922,2858,2349,2323,1948,1703,1632,1600,1505,1470,1448,1358,1312,1274,1247,1211,1157,1123,1107,1083,1067,1015,989,974,949,921,900,876,861,826,817,773,742,687,671,665,650,622,610cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2830NO+:396.2322,Found:396.2320([M+H]+).
【0167】
【化23】
【0168】
無色油状液体、収率92%、>99%ee、[α]D 20=-18.79(c 1.0、CHCl3)。The enantiomeric excess was determined by HPLC on a Chiralcel AS-H column;(移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=230nm);tR(major)=17.49min;tR(minor)=19.31min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.38(d,J=8.4Hz,2H),6.72(d,J=3.2Hz,2H),6.61(dd,J=8.8,2.8Hz,2H),3.73(s,6H),3.18(dd,J=13.6,6.0Hz,2H),2.97-2.90(m,2H),2.72(dd,J=14.0,8.4Hz,2H),1.96-1.88(m,2H),1.83-1.77(m,2H),1.70-1.62(m,2H)ppm;13C NMR(100MHz,CDCl3)δ213.7,158.6,139.9,133.2,116.9,114.9,113.5,55.3,48.9,36.4,32.2,20.6ppm;EI-MS(70eV),m/z:496([M]+),415,336,215,199,187,137,121,91,77;HRMS-EI(m/z):calcd.for C22243Br2 +:494.0087,found:494.0096([M]+).
【0169】
【化24】
【0170】
白色固体、収率95%、>99%ee、M.P.102-104℃、[α]D 20=-44.1(c 1.10、CHCl3)、>99%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=26.73min;tR(minor)=34.04min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.58-6.45(m,6H),3.65(s,12H),2.88(dd,J=13.6,6.4Hz,2H),2.61-2.58(m,2H),2.39(dd,J=13.6,8.4Hz,2H),1.75-1.70(m,2H),1.60-1.57(m,2H),1.46-1.41(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.0,148.1,146.7,131.4,120.2,111.5,110.4,55.0,55.0,50.2,35.2,31.4,19.7.IR(neat)ν2996,2920,2847,2349,1604,1495,1463,1451,1406,1330,1295,1278,1260,1242,1207,1184,1116,1077,1063,1024,996,943,880,853,786,768,732,701,671,665,609cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C24305 +398.2088found 398.2099[M+].
【0171】
【化25】
【0172】
白色固体、収率95%、>99%ee、M.P.103-105℃、[α]D 20=-30.5(c 1.10、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=5:95、温度、室温。移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=8.03min;tR(minor)=8.94min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.20-7.06(m,6H),3.26(dd,J=14,4.8Hz,2H),2.93-2.91(m,2H), 2.74(dd,J=14,9.6Hz 2H),2.45(s,6H),2.43(s,6H),2.09-2.05(m,2H),1.93-1.90(m,2H),1.83-1.76(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.2,137.5,134.8,132.7,130.3,130.1,126.8,49.2,33.2,31.6,20.7,20.4,18.8.IR(neat)ν3002,2929,2852,2349,1894,1698,1615,1503,1455,1370,1339,1297,1261,1244,1235,1178,1157,1143,1121,1094,1075,1051,1032,949,921,895,855,810,709,671,664,615cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2434NO+:352.2635Found:352.2634([M+NH4+).
【0173】
【化26】
【0174】
黄色固体、収率90%、M.P.88-90℃、[α]D 20=-41.9(c 1.10、CHCl3)、99%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=12.17min;tR(minor)=13.82min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.04(d,J=8.0Hz,2H),6.67-6.64(m,2H),3.74(s,6H),3.06(dd,J=13.6,4.4Hz,2H),2.76-2.73(m,2H),2.57(dd,J=13.6,9.6Hz,2H),2.22(s,6H),1.91-1.87(m,2H),1.76-1.73(m,2H),1.64-1.59(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.5,157.5,138.9,131.0,128.0,115.6,111.0,55.0,49.1,33.5,31.6,20.4,18.5.IR(neat)ν2998,2957,2925,2849,2834,2349,2323,2073,1694,1607,1580,1499,1442,1382,1361,1338,1307,1289,1273,1249,1215,1204,1160,1121,1096,1056,1030,996,973,930,895,870,853,833,816,802,757,725,715,691,671,665,652,613cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C24303 +366.2189found 366.2197.
【0175】
【化27】
【0176】
無色油状液体、収率89%、[α]D 20=-15.9(c 1.15、CHCl3)、>99%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=20.94min;tR(minor)=23.53min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.76-6.69(m,6H),3.75(s,6H),3.72(s,6H),3.11(dd,J=13.2,5.6Hz,2H),2.90-2.88(m,2H),2.62(dd,J=13.2,9.2Hz,2H),1.87-1.83(m,2H),2.73(m,2H),1.60-1.57(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.8,152.9,151.5,129.0,116.8,110.8,110.7,55.3,55.1,48.8,32.3,30.9,20.2.IR(neat)ν2931,2833,1702,1590,1497,1463,1426,1282,1219,1179,1158,1127,1045,1024,934,854,800,733,712cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2434NO5 +:416.2429,Found:416.2431([M+NH4+).
【0177】
【化28】
【0178】
無色油状液体、収率94%、>99%ee、[α]D 20=-8.7(c 1.00、CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AS-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン(v/v)=10:90、温度、室温.;移動相流速、0.5mL/min;紫外線-可視光検出、波長λ=220nm;tR(major)=15.51min;tR(minor)=16.71min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.64(d,J=8.4Hz,2H),6.45(d,J=8.4Hz,2H),3.77(s,6H),3.74(s,6H),3.70(s,6H),2.91(dd,J=13.6,6.4Hz,2H),2.73-2.70(m,2H),2.47(dd,J=13.2,8Hz,2H),1.78-1.74(m,2H),1.66-1.63(m,2H),1.50-1.46(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.6,151.7,151.5,141.6,125.0,124.1,106.5,60.2,60.1,55.3,49.4,32.1,30.0,20.1.IR(neat)ν2932,2854,1703,1601,1493,1464,1416,1274,1257,1233,1199,1163,1094,1039,1015,950,904,854,795,752,682,665cm-1
【0179】
実施例6
アルゴンガス雰囲気下、50-mLシュレンク管(Schlenk管)に化合物III-h(ee、>99%、247mg、0.5mmol)と無水ジクロロメタン(10mL)を投入して、溶液を氷浴中0℃に冷却させて、緩慢に触媒(本実施例では、触媒はTiCl4である)(0.11mL、1.0mmol)を加えて、0℃で30分間撹拌後、緩慢に室温に昇温して、5時間撹拌し続け、TLCにより検反応終了と検出されると、5mLの水を加えて反応をクエンチさせた。反応混合物をジクロロメタン(5mL×3)で3回抽出して、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、乾燥剤を濾過除去し、濾液から溶媒を減圧除去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=50:1)、白色固体(1S,2S,2’S)-I-hを得て、生成物のee値を、キラルHPLCにより測定した[Chiralcel OD-H column;移動相、イソプロパノール/ノルマルヘキサン=0:100、温度、室温.;移動相流速、0.8mL/min;紫外線-可視光検出波長λ=230nm;tR(major)=15.80min;tR(minor)=23.00min.]。
【0180】
実施例7(比較例1)
【0181】
【化29】
【0182】
表2に示されるように、基質化合物III-hの使用量(本実施例では、0.2mmol)、触媒の種類と使用量、溶媒の種類と使用量(本実施例では、溶媒の使用量はいずれも2.0mLである)、反応温度を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表2に示す。表2中、モル当量は、触媒のモル量の化合物III-hのモル量に対する倍数である。表2中、溶媒の欄において、「-」は無溶媒を意味する。表2中、ee値の欄において、「-」は測定不可を意味する。
【0183】
本実施例では、反応時間はいずれも12hであった。
【0184】
【表2】
【0185】
表2のデータから明らかなように、ポリリン酸(PPA)又はメタンスルホン酸を使用した場合、加熱条件においては反応は順調に進行して、72%、70%の収率で環化生成物をそれぞれ得たが、残念ながら、生成物は光学活性(表2中の番号1行目と2行目に記載のee値データ)がなく、それは化合物III-hがこのようなプロトン酸の環境においてラセミ化されることによると考えられる。リンタングステン酸H3[W12PO40]を使用してトルエンにおいて還流させた場合、反応の収率が25%と低く、同様に完全にラセミ化された環化生成物I-hが得られた。触媒としてキラルリン酸(CPA)又はキラルリン酸及び4A分子篩(CPA/4A MS)を使用した場合は、対応した環化生成物は得られなかった。
【0186】
本実施例における触媒はいずれも一般的なブロンステッド(Bronsted)タイプのプロトン酸であるから、Bronstedタイプのプロトン酸は化合物III-hの立体選択的環化の触媒として不適である。
【0187】
本発明では、キラルリン酸(CPA)の構造は下記式で示される。
【0188】
【化30】
【0189】
実施例8(比較例2)
表3に示されるように、基質化合物III-hの使用量(本実施例では0.2mmol)、触媒の種類と使用量、溶媒の種類と使用量(本実施例では、溶媒の使用量はいずれも2.0mLである)、反応温度を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表3に示す。表3中、モル当量は、化合物III-hのモル量に対する触媒のモル量の倍数である。表3中、ee値の欄において、「-」は測定不可を意味する。
【0190】
本実施例では、反応時間はいずれも12hであった。
【0191】
【化31】
【0192】
【表3】
【0193】
実施例9
表4に示されるように、基質化合物III-hの使用量(本実施例では0.2mmol)、触媒の種類と使用量、溶媒の種類と使用量(本実施例では、溶媒の使用量はいずれも2.0mLである)、反応温度を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表4に示す。表4中、モル当量は、触媒のモル量の化合物III-hのモル量に対する倍数である。
【0194】
本実施例では、反応時間は12hであった。
【0195】
【化32】
【0196】
【表4】
【0197】
表3と表4から分かるように、表3中の一連のルイス酸(Lewis酸)性金属塩は、いずれも環化反応に対し促進作用がなく、対応生成物は得られなかった。それに対して、表4中の強Lewis酸であるTiCl4の作用下、反応は順調に進行して、51%の収率で(1S,2S,2’S)-I-hは得られ、且つ原料の光学純度は略保持されており、(1S,2S,2’S)-I-hのee値は99%と高かった。
【0198】
実施例10
【0199】
【化33】
【0200】
基質化合物III-hの使用量(本実施例では、0.2mmol)、触媒の種類と使用量(本実施例では、触媒はTiCl4、触媒の使用量は0.4mmolである)、溶媒の種類と使用量(本実施例では、溶媒はいずれもジクロロメタン、使用量はいずれも2.0mLである)、及び表5に示されるように、反応温度、反応時間を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表5に示す。
【0201】
【表5】
【0202】
表5から分かるように、ジクロロメタンにおいてTiCl4により触媒されたIII-h不斉脱水環化反応について、温度25℃~40℃において2時間反応させた場合、生成物の収率は適度であり、生成物のee値は99%であった。10℃で8時間反応させた場合、生成物の収率は72%に向上し、生成物のee値は>99%に向上した。温度を5℃まで更に下げて、12時間反応させた場合、生成物の収率は略同じであり、生成物のee値も維持されている。さらに温度を0℃まで下げた場合、反応系はクリーンになるが、活性が低下し、反応時間を20時間に延長させても、収率が62%と低い。反応温度を初期の0℃から室温まで緩慢に回復させた場合、副反応は効果的に抑制され、84%の収率及び>99%のeeで環化生成物I-hは得られた。
【0203】
実施例11
【0204】
【化34】
【0205】
基質化合物III-hの使用量(本実施例では、0.2mmol)、触媒の種類と使用量(本実施例では、触媒はTiCl4、触媒使用量は0.4mmolである)、溶媒の使用量(本実施例では、溶媒使用量はいずれも2.0mLである)、及び表6に示されるように、溶媒の種類、反応温度、反応時間を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表6に示す。
【0206】
【表6】
【0207】
表6から分かるように、溶媒の相違は、この環化反応の生成物収率に大きな影響を与えた。1,2-ジクロロエタン(DCE)及びクロロホルム(CHCl3)を溶媒とする場合、反応生成物の収率はそれぞれ52%、65%に低下したが、エナンチオ選択性は>99%eeに保持された。トルエンを溶媒とする場合、反応速度が低く、反応系が複雑になり、生成物の収率は56%に低下したが、依然としてee値>99%の生成物が得られた。従って、ジクロロメタンは最も好ましい反応溶媒であった。
【0208】
実施例12
【0209】
【化35】
【0210】
基質化合物III-hの使用量(本実施例では、0.2mmol)、触媒の種類と使用量(本実施例では、触媒はTiCl4である)、溶媒の種類(本実施例では、溶媒はいずれもジクロロメタンである)、及び表7に示されるように触媒の使用量、基質濃度(すなわち基質化合物III-hと溶媒とのモル体積(mol/L)比)、反応時間を変更する以外、実施例6と同様な方法によって実験を行い、収率とee値を表7に示す。表7中、モル当量は、触媒のモル量の基質化合物III-hのモル量に対する倍数である。
【0211】
【表7】
【0212】
表7から分かるように、0℃から室温まで緩慢に回復させた温度条件において、基質の濃度及びTiCl4の使用量の変化は、反応活性に一定の影響を与えるが、生成物の光学純度への影響が小さかった(>99%ee)。基質濃度を0.2Mに上げた場合、副反応は多くなり、反応収率は75%に低下した。基質濃度を0.05Mに下げた場合、副反応はほぼ抑制されて、生成物I-hの収率は93%に向上した。それは、低反応物濃度が分子内の環化反応に有利であることを示している。基質濃度を0.02Mに更に下げた場合、反応速度は低くなった。TiCl4の使用量も生成物の収率に影響を与えた。TiCl4の使用量を2eq.から4eq.にあげると、収率は顕著に低下した。TiCl4の使用量を1eq.に下げると、基質は完全まで転化されず、収率は81%に低下した。
【0213】
実施例13
【0214】
【化36】
【0215】
アルゴンガス雰囲気下、Schlenk管(50mL)を無水・無酸素条件で処理して、光学的に純粋な化合物III-h(>99%ee)(247mg、0.5mmol)と無水ジクロロメタン(10mL)を投入して、0℃に冷却させて、TiCl4(0.11mL、1.0mmol)を緩慢に滴下し、0℃で30分間反応させた後、室温に緩慢に回復させて、5時間撹拌し続け、5mLの水を加えて反応をクエンチさせ、ジクロロメタン(5mL×3)で3回抽出して、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、乾燥剤を濾過除去し、濾液から溶媒を減圧除去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=50:1)、白色固体I-h(220mg、93%)を得て、生成物のee値はHPLCにより測定された。
【0216】
実施例14
【0217】
【化37】
【0218】
実施例5で得られた化合物III-a(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-aは2モル当量のTiCl4(化合物III-aのモル当量に対する)の作用により分子内不斉環化反応を行って、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-aを得た。
【0219】
生成物化合物I-aの性状及び構造同定データ:無色液体、収率83%、96%ee、[α]D 20=131.1(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel OD-H column;eluent,2-propanol/hexane 5:95;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=210nm;tR(minor)=8.52min;tR(major)=9.97min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.31-7.06(m,6H),δ6.76(d,J=7.6Hz,2H),δ3.10(dd,J=15.6,7.2Hz,2H),δ2.75(dd,J=15.2,5.6Hz,2H),δ2.62-2.55(m 2H),δ1.61-1.49(m,4H),δ1.43-1.37(m,2H)ppm.13C NMR(100MHz,CDCl3)δ149.0,142.8,126.5,126.3,124.9,123.1,61.0,43.6,36.1,27.4,19.6ppm.IR(neat)ν3065,3017,2922,2847,2661,2310,1944,1905,1600,1474,1456,1260,1025,934,880,800,747,727,706,661,635cm-1.HRMS-EI(m/z)calcd.for C2020 +260.1560,found 260.1568[M+].
【0220】
実施例15
【0221】
【化38】
【0222】
実施例5で得られた化合物III-b(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-bは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-bを得た。
【0223】
生成物化合物I-bの性状及び構造同定データ:白色固体、収率85%、>99%ee、M.P.151-153℃、[α]D 20=225.0(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PA-2 column;eluent,acetonitrile/water 80:20;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=9.54min;tR(minor)=10.21min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.01-6.98(m,4H),δ6.59-6.57(m,2H),δ3.01(dd,J=15.6,7.2Hz,2H),δ2.65(dd,J=15.6,5.6Hz,2H),δ2.57-2.54(m2H),δ2.31(s,6H),δ1.60-1.50(m,4H),δ1.43-1.36(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ148.9,141.4,134.1,127.4,126.5,120.4,61.3,43.3,34.7,27.6,19.7,19.1.IR(neat)ν3016,2921,2852,2834,1918,1856,1795,1595,1459,1446,1377,1319,1261,1210,1196,1158,1141,1094,1076,1032,953,930,896,871,790,779,756,727,711,668,645,619cm-1.HRMS-EI(m/z)calcd.for C2224 +288.1873,found 288.1874[M+].
【0224】
実施例16
【0225】
【化39】
【0226】
実施例5で得られた化合物III-c(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-cは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-cを得た。
【0227】
生成物の性状及び構造同定データ:無色液体(Cololess liquid)、収率75%、96%ee、[α]D 20=168.5(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PA-2column;eluent,acetonitrile/water 80:20;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=10.21min;tR(minor)=12.39min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.11(s,2H),6.89(d,J=8.0Hz,2H),6.65(d,J=8.0Hz,2H),3.04(dd,J=15.2,6.8Hz,2H),2.69(dd,J=15.2,6Hz,2H),2.55-2.52(m,2H),2.32(s,6H),1.57-1.48(m,4H),1.39-1.36(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ146.3,142.8,136.0,127.1,125.7,122.8,60.3,43.9,36.1,27.5,21.3,19.7.IR(neat)ν3004,2920,2847,1614,1485,1447,1377,1357,1299,1260,1217,1191,1136,1082,1037,956,930,879,810,799,756,708,680,668,626cm-1
【0228】
実施例17
【0229】
【化40】
【0230】
実施例5で得られた化合物III-d(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-dは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-dを得た。
【0231】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率70%、93%ee、M.P.102-104℃、[α]D 20=31.3(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PC-3 column;eluent,acetonitrile/water 60:40;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=230nm);tR(minor)=27.33min;tR(major)=29.00min)によって接続された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.19(d,J=7.6Hz,2H),6.98(d,J=7.6Hz,2H),6.57(s,2H),3.05(dd,J=15.6,7.2Hz,2H),2.69(dd,J=19.2,9.2Hz,2H),2.57-2.54(m,2H),2.23(s,6H),1.59-1.47(m,4H),1.41-1.35(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ149.2,139.7,135.8,127.3,124.6,123.8,60.8,43.9,35.8,27.5,21.4,19.7.IR(neat)ν3003,2919,2848,2350,1892,1756,1612,1488,1447,1377,1312,1260,1207,1137,1080,1022,948,930,879,847,810,796,727,706,632cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C2224 +288.1873found 288.1873[M+].
【0232】
実施例18
【0233】
【化41】
【0234】
実施例5で得られた化合物III-e(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-eは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-eを得た。
【0235】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率65%、97%ee、M.P.94-96℃、[α]D 20=138.1(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel OD-H column;eluent,2-propanol/hexane 2:98;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=220nm;tR(minor)=10.52min;tR(major)=11.62min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.85(s,2H),6.67-6.60(m,4H),3.76(s,6H),3.04(dd,J=15.6,7.2Hz,2H),2.69(dd,J=15.6,6.0Hz,2H),2.55-2.51(m,2H),1.58-1.46(m,4H),1.40-1.34(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ158.7,144.0,141.5,123.5,111.8,110.4,59.4,55.2,44.1,36.2.27.4,19.6.IR(neat)ν2919,2845,1605,1584,1484,1463,1308,1246,1219,1193,1142,1116,1033,913,839,799,750.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C22242 +320.1771found 320.1780[M+].
【0236】
実施例19
【0237】
【化42】
【0238】
実施例5で得られた化合物III-f(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-fは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-fを得た。
【0239】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率60%、79.9%ee、M.P.146℃、[α]D 20=67.3(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel OD-H column;eluent,2-propanol/hexane 2:98;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=220nm;tR(minor)=10.05min;tR(major)=16.65min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.24(d,J=8.0Hz,2H),6.76(dd,J=8.0,2.4Hz,2H),6.39(d,J=2.8Hz,2H),3.73(s,6H),3.07(dd,J=14.8,6.8Hz,2H),2.72(dd,J=15.2,6Hz,2H),2.62-2.59(m,2H),1.64-1.54(m,4H),1.46-1.43(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ158.7,150.3,134.6,125.4,111.9,109.0,61.4,55.2,44.1,35.3,27.5,19.6.IR(neat)ν2995,2927,2852,1605,1584,1482,1462,1327,1283,1273,1240,1228,1215,1199,1151,1141,1121,1086,1061,1032,930,866,845,823,808,768,755,704,672cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C22252 +:321.1849,Found:321.1851([M+H]+).
【0240】
実施例20
【0241】
【化43】
【0242】
実施例5で得られた化合物III-g(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-gは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-gを得た。
【0243】
生成物の性状及び構造同定データ:無色固体、収率57%、M.P.248-250℃、[α]D 20=-151.0(c 1.10,CHCl3),99%ee.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.82-7.79(m,4H),7.61(d,J=8.0Hz,2H),7.41-7.33(m,3H),7.31(s,1H),7.19(s,2H),3.33(dd,J=16,7.2Hz,2H),2.97(dd,J=15.6,6.4Hz,2H),2.78-2.75(m,2H),1.68-1.56(m,4H),1.46-1.42(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ148.5,142.1,133.2,133.0,127.8,127.3,125.1,124.9,123.1,121.5,60.4,43.8,35.6,27.3,19.6.HPLC[(column,Chiralcel PC-2;eluent,acetonitrile/water 60:40;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;detection,230nm light);tR(R)=125.33min;tR(S)=131.56min].IR(neat)ν3050,2952,2925,2902,2847,2349,2323,1951,1701,1634,1604,1498,1447,1432,1336,1289,1261,1208,1143,1096,1037,1018,951,930,886,868,801,750,671,665,623,614.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C2828 +360.1873found 360.1880[M+].
【0244】
キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-gのX線結晶回折分子構造図は図1で示される。
【0245】
実施例21
【0246】
【化44】
【0247】
実施例5で得られた化合物III-h(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法によって操作し、III-hは、2モル当量TiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-hを得た。
【0248】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率93%、M.P.192-193℃、[α]D 20=189.70(c 1.0,CHCl3)>99.6%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel OD-H column;eluent,2-propanol/hexane 0:100,temp,r.t.;flow rate,0.8mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=15.80min;tR(minor)=23.00min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.24(d,J=8.4Hz,2H),6.50(d,J=8.4Hz,2H),3.44(s,6H),3.09(dd,J=15.6,7.6Hz,2H),2.92-2.88(m,2H),2.73(dd,J=15.6,6.4Hz,2H),1.56-1.51(m,4H),1.46-1.44(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ156.25,145.89,136.70,130.30,111.47,111.09,64.30,55.49,41.92,39.46,26.18,17.88.
【0249】
実施例22
【0250】
【化45】
【0251】
実施例5で得られた化合物III-i(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-iは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-iを得た。
【0252】
生成物の性状及び構造同定データ:無色液体、収率45%、96%ee、[α]D 20=81.3(c 1.10,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PC-3 column;eluent,acetonitrile/water 70:30;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-visdetection,λ=230nm;tR(major)=6.34min;tR(minor)=6.97min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.85(s,2H),6.31(s,2H),3.88(s,6H),3.72(s,6H),3.03(dd,J=15.2,7.2Hz,2H),2.67(dd,J=15.2,6Hz,2H),2.54-2.51(m,2H),1.59-1.49(m,4H),1.41-1.37(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ147.9,147.8,140.8,133.8,108.0,106.3,60.9,55.8,55.8,44.3,36.0,27.5,19.5.IR(neat)ν3001,2933,2857,2834,1702,1607,1590,1513,1463,1451,1417,1337,1258,1235,1192,1155,1140,1026,944,854,805,749,665,638cm-1.HRMS-EI(m/z)M+calcd.for C24284 +380.1982found 380.1985[M+].
【0253】
実施例23
【0254】
【化46】
【0255】
実施例5で得られた化合物III-j(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-jは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-jを得た。
【0256】
生成物の性状及び構造同定データ:無色固体(Colorless solid)、収率80%、99%ee、M.P.128-130℃、[α]D 20=90.0(c 1.00,CHCl3)。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PC-1column;eluent,acetonitrile/water 80:20;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=16.66min;tR(minor)=17.67min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.92(d,J=7.2Hz,2H),6.80(d,J=7.2Hz,2H),2.95-2.81(m,4H),2.66-2.61(m,2H),2.25(s,6H),1.86-1.79(m,2H),1.70(s,6H),1.66-1.53(m,4H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ146.5,142.2,131.6,131.2,128.9,127.4,63.8,43.0,34.9,20.0,18.9,17.9,14.6.IR(neat)ν2921,2847,1488,1448,1217,1039,879,807,753,667cm-1.HRMS-EI(m/z)M+ calcd.for C2428 +316.2186,found 316.2187[M+].
【0257】
実施例24
【0258】
【化47】
【0259】
実施例5で得られた化合物III-k(99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-kは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-kを得た。
【0260】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率78%、M.P.73-75℃、[α]D 20=109.7(c 1.05、CHCl3),94%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PC-1 column;eluent,acetonitrile/water 80:20;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=13.17min;tR(minor)=15.42min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.94(d,J=8.4Hz,2H),6.57(d,J=8.4Hz),3.41(s,6H),3.04(dd,J=15.2,7.6Hz,2H),2.97-2.94(m,2H),2.64(dd,J=14.8,6.0Hz,2H),2.25(s,6H),1.60-1.55(m,2H),1.49-1.45(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ155.4,145.1,135.4,127.9,126.1,110.2,62.3,55.9,42.4,36.8,26.9,18.5,18.4.IR(neat)ν2919,2848,1977,1602,1490,1463,1437,1378,1313,1255,1220,1183,1161,1087,1034,964,937,870,844,795,754,721,666,611.HRMS-EI(m/z)calcd.for C28282 +348.2084;found 348.2089[M+].
【0261】
実施例25
【0262】
【化48】
【0263】
実施例5で得られた化合物III-l(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-lは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-lを得た。
【0264】
生成物の性状及び構造同定データ:無色油状液体、収率85%、[α]D 20=95.2(c 1.10,CHCl3),90%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PC-2 column;eluent,acetonitrile/water 60:40;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(minor)=33.33min;tR(major)=35.19min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.65(d,J=8.8Hz,2H),6.59(d,J=8.8Hz,2H),3.82(s,6H),3.40(s,6H),3.09(dd,J=15.2,7.6Hz,2H),2.94-2.91(m,2H),2.67(dd,J=15.6,6.4Hz,2H),1.59-1.52(m,4H),1.48-1.45(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ151.6,150.4,137.6,133.9,110.7,108.8,62.7,56.3,55.7,42.8,34.5,26.6,18.3.IR(neat)ν2999,2919,2850,2832,2050,1810,1596,1488,1460,1448,1436,1329,1312,1297,1254,1239,1213,1186,1164,1117,1094,1073,1049,1003,987,975,953,929,908,875,795,751,714,652,637cm-1.HRMS(ESI)m/z:calcd.for C2432NO4 +:398.2326,Found:398.2324([M+NH4+).
【0265】
実施例26
【0266】
【化49】
【0267】
実施例5で得られた化合物III-m(>99%ee)を基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、III-mは、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-mを得た。
【0268】
生成物の性状及び構造同定データ:無色油状液体、収率56%、[α]D 20=51.8(c 1.10,CHCl3),59.9%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel PA-2 column;eluent,acetonitrile/water 60:40;temp,r.t.;flow rate,0.7mL/min;uv-vis detection,λ=230nm;tR(major)=8.89min;tR(minor)=14.31min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.11(s,2H),3.94(s,6H),3.87(s,6H),3.71(s,6H),3.04(dd,J=15.6,7.2Hz,2H),2.68(dd,J=15.6,6.0Hz,2H),2.51-2.49(m,2H),1.64-1.50(m,4H),1.42-1.37(m,2H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ152.8,150.0,144.4,140.3,126.3,102.4,61.8,61.0,60.5,56.1,43.8,32.9,27.5,19.5.IR(neat)ν2927,2849,1586,1463,1411,1324,1299,1229,1196,1115,1096,1034,947,910,831,793,750cm-1
【0269】
実施例26-1
【0270】
【化50】
【0271】
実施例5の方法を参照して化合物III-s(>99%ee)を製造し、化合物III-sを基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-s’を得た。
【0272】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率82%、[α]D 20=141.7(c 1.10,CHCl3),>99%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel IA-3column;eluent,2-propanol/hexane 10:90;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=214nm;tR(major)=7.38min;tR(minor)=8.54min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.32-7.15(m,7H),6.60(d,J=8.8Hz,1H),6.49(d,J=8.8Hz,1H),4.06-3.99(m,1H),3.64(s,3H),3.36-3.29(m,4H),3.12-2.99(m,2H),2.93-2.87(m,1H),2.55(d,J=16.0Hz,1H),2.42-2.36(m,1H),1.95-1.91(m,1H),1.86-1.83(m,1H),1.77-1.69(m,1H),1.41-1.31(m,1H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ157.2,155.9,148.1,146.9,144.2,138.8,133.2,130.7,130.4,128.3,126.9,126.0,112.3,111.3,111.21,111.17,64.0,55.7,55.5,45.4,42.1,40.3,38.8,38.1,36.4,33.4.IR(neat)ν2923,1574,1469,1259,1191,1082,1021,971,849,797,759,698,671,659,642cm-1.HRMS-EI(m/z)calcd.for C2826Br22 +:552.0294,found:552.0298[M+].
【0273】
実施例26-2
【0274】
【化51】
【0275】
実施例5の方法を参照して化合物III-q(>99%ee)を製造し、化合物III-qを基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-q’を得た。
【0276】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率78%、[α]D 20=210.6(c 1.10,CHCl3),>99%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel IA-3column;eluent,2-propanol/hexane 10:90;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=214nm;tR(major)=7.66min;tR(minor)=8.23min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.27(d,J=8.8Hz,1H),7.20(d,J=8.4Hz,1H),6.55(d,J=8.8Hz,1H),6.44(d,J=8.4Hz,1H),3.81-3.75(m,1H),3.60(s,3H),3.29-3.24(m,4H),3.01(dd,J=16.0,8.4Hz,1H),2.85(dd,J=16.0,10.8Hz,1H),2.51(d,J=15.6Hz,1H),2.27-2.21(m,1H),1.77-1.59(m,3H),1.18-1.11(m,1H),0.87-0.78(m,4H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ157.1,155.9, 148.1,144.5,139.0,133.6,130.6,130.3,112.2,111.3,111.25,111.20,64.3,55.7,55.5,44.8,42.1,40.2,39.5,38.4,34.4,24.7,22.5.IR(neat)ν2946,1573,1470,1274,1257,1188,1099,1077,1047,987,960,805,796,764,670,614cm-1.HRMS-EI(m/z)calcd.for C2324Br22 +:490.0138,found:490.0141[M+].
【0277】
実施例26-3
【0278】
【化52】
【0279】
実施例5の方法を参照して化合物III-r(>99%ee)を製造し、化合物III-rを基質として、実施例13における実験方法を参照して操作し、2モル当量のTiCl4の作用により分子内不斉環化反応を行い、キラル縮合環スピロビインダン骨格化合物I-r’を得た。
【0280】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率75%、[α]D 20=13.2(c 1.10,CHCl3),97%ee。生成物のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel IA-3column;eluent,2-propanol/hexane 10:90;temp,r.t.;flow rate,0.5mL/min;uv-vis detection,λ=214nm;tR(major)=7.38min;tR(minor)=8.54min.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.27(d,J=8.4Hz,1H),7.21(d,J=8.4Hz,1H),6.55(d,J=8.8Hz,1H),6.45(d,J=8.4Hz,1H),3.77-3.60(m,1H),3.60(s,3H),3.37-3.32(m,4H),3.08(dd,J=16.0,8.4Hz,1H),2.82(dd,J=16.0,9.6Hz,1H),2.53(d,J=15.6Hz,1H),2.26-2.20(m,1H),1.72-1.61(m,2H),1.37-1.23(m,2H),0.95-0.86(m,1H),0.83(s,9H).13C NMR(100MHz,CDCl3)δ157.1,155.9,147.9,144.5,138.8,133.9,130.5,130.3,112.0,111.2,111.17,111.12,64.6,55.6,55.5,45.5,42.6,40.3,40.2,39.0,32.4,32.3,27.7,27.4.IR(neat)ν2922,1573,1470,1274,1258,1098,1077,961,796,766,670,615cm-1.HRMS-EI(m/z)calcd.for C2630Br22 +:532.0607,found:532.0621[M+].
【0281】
実施例27
化合物IIを原料として、不斉水素化と環化ワンポット法によって、中間体化合物IIIを分離せずに、水素化反応混合物に適量のTiCl4を加えて、化合物Iを合成した。本実施例では、化合物II-hのワンポット法による不斉水素化-環化反応を用いた化合物I-hの合成を例にして、化合物IIを出発材料としてワンポット法により化合物Iを合成する実験の典型的な操作方法を説明した。
【0282】
【化53】
【0283】
アルゴンガス雰囲気下、水素化フラスコ(150-mL)を無水・無酸素条件で処理して、触媒(S)-tBuPHOX/Ir(I)(96.0mg、0.061mmol)、基質II-h(6.15g、12.55mmol)及び無水ジクロロメタン(75mL)を投入した。グローブボックスにおいて水素化フラスコをオートクレーブに移した。水素ガスを3回置換した後、水素ガスを50atmになるまで導入した。室温で12時間反応させた。水素ガスを慎重に排出した後、アルゴンガスの保護下で、浅黄色の反応液を注射器で無水・無酸素条件で処理した別の三口フラスコ(500-mL)に迅速に移して、無水ジクロロメタン175mLを加え、氷浴で冷却させて、TiCl4(2.75mL、25.1mmol)を緩慢に滴下し、0℃で30分間反応させた後、室温に緩慢に回復させ、6時間撹拌し続け、100mLの水を加えて反応をクエンチさせ、ジクロロメタン(50mL×3)を3回抽出して、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、乾燥剤を濾過除去し、濾液から溶媒を減圧除去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=50:1)、白色固体I-h(5.02g、収率84%、>99%ee)を得た。
【0284】
実施例28(7,7’-ジブロモ置換のキラル縮合環スピロビインダン骨格スピロジフェノールI-nの製造)
【0285】
【化54】
【0286】
上式で示されるように、ステップ1において、実施例27に記載の方法によって、化合物II-hを出発原料として、ワンポット法による不斉水素化-環化反応を行い、2つのステップの全収率84%と>99%eeで化合物I-hを合成した。
【0287】
ステップ2における、BBr3を用いたI-hメチル除去の操作方法:Schlenk瓶(100mL)を無水・無酸素条件で処理した後、アルゴンガスの雰囲気下、(1S,2S,2’S)-I-h(5.02g、10.55mmol)、ジクロロメタン(35.0mL)を加えて、-78℃に冷却させた。BBr3(4M in CH2Cl2)(6.59mL、26.38mmol)を1滴ずつ滴下した。滴下終了後、室温に緩慢に昇温した。次に12時間撹拌後、水(100mL)を加えてクエンチさせた。ジクロロメタン(20mL×3)で抽出して、有機相を合併し、無水Na2SO4で乾燥させて、乾燥剤を濾過除去し、濾液から溶媒を減圧除去して、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル:酢酸エチル=5:1)、白色固体I-n(4.02g、85%)を得た。
【0288】
生成物の性状及び構造同定データ:白色固体、収率85%、M.p.132-133℃、[α]D 20=+301.63(c 1.0,CHCl3)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.25(d,J=8.0Hz,2H),6.50(d,J=8.8Hz,2H),4.58(s,2H),3.07-3.00(m,2H),2.90-2.81(m,4H),1.72-1.66(m,2H),1.60-1.55(m,4H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ152.36,145.39,132.19,132.16,116.85.111.34,62.75,42.60,38.43,23.00,16.09;IR(neat)ν3470,3392,2921,2913,2851,1573,1461,1422,1291,1211,1184,1084,1065,1045,806,718,677,660,627cm-1;EI-MS(70eV),m/z=450([M]+),369,290,263,184,145,124,115,107,94;HRMS-EI(m/z)calcd.for C20182Br2+,447.9668,found,447.9670[M]+
【0289】
実施例29(キラル縮合環スピロビインダン骨格スピロジフェノールI-oの製造)
【0290】
【化55】
【0291】
実施例28で合成した化合物I-nを出発材料として、Pd/Cにより水素化分解および脱臭素化反応を触媒して、95%の収率でキラル縮合環スピロビインダンジフェノールI-oを得た。具体的な操作方法:水素化フラスコ(100mL)に(1S,2S,2’S)-I-n(4.02g、8.97mmol)、メタノール(20.0mL)、酢酸(6mL)及び10%Pd/C(0.40g)を加えて、反応釜に移し、水素ガスを3回置換した後、水素ガスを20atmになるまで導入した。室温で12時間反応させて、水素ガスを慎重に排出して、Pd/Cを濾過除去し、濾液からエタノールを減圧除去し、飽和NaHCO3(100mL)、酢酸エチル(20mL×3)を加えて3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、乾燥剤を濾過除去し、濾液から溶媒を減圧除去して、(1S,2S,2’S)-I-o(2.54g)を得た。
【0292】
生成物の性状及び構造同定データ:無色液体、収率95%、>99%ee.[α]D 20=157.9(c 1.0,CHCl3)。生成物I-oのee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AD-H column.Conditions:hexane/isopropanol=80:20;flow rate=1.0mL/min;UV detection at 230nm;tR=4.84min(minor),9.42min(major))によって測定された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.14(t,J=7.6Hz,2H),6.89(d,J=7.6Hz,2H),6.61(d,J=8.0Hz,2H),4.60(s,2H),3.03(dd,J=18.4,10.8Hz,2H),2.94-2.89(m,4H),1.67-1.55(m,6H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ153.50,145.67,130.72,129.40,118.02,114.76,60.20,43.65,36.92,24.05,16.90;IR(KBr pellet)ν3588,3568,2924,2846,1609,1586,1485,1460,1340,1261,1225,1190,1137,1107,986,933,779,734cm-1;EI-MS(70eV),m/z=292([M]+),290,207,184,169,78,51;HRMS-EI(m/z)[M]+calcd for C20202,292.1463,found,292.1465.Anal.calcd.for C20202:C,82.16;H,6.89%;Found:C,82.46;H,7.04%.
【0293】
実施例30
実施例28と29の前記実験方法を参照して操作し、(R)-tBuPHOX/Ir(I)を不斉水素化触媒として、キラル縮合環スピロビインダン骨格ジフェノールI-pを得た。
【0294】
【化56】
【0295】
(1R,2R,2’R)-I-p:白色固体、収率66%;>99%ee、M.p.53-54℃.[α]D 20=-201.7(c 0.70,CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.16(t,J=7.6Hz,2H),6.85(d,J=7.2Hz,2H),6.64(d,J=7.6Hz,2H),4.41(s,6H),3.44(dd,J=16.8,9.2Hz,2H),3.00-2.98(m,2H),2.80(dd,J=17.2,4.8Hz,2H),2.05-2.01(m,2H),1.60-1.56(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ152.95,145.09,131.90,129.52,117.52,114.14,70.50,50.85,38.76,33.15,;IR(neat)ν3514,3031,2952,2936,2915,1849,2837,1610,1585,1479,1462,1271,1161,989,780,772,742,721cm-1;EI-MS(70eV),m/z=278([M]+),250,231,202,189,171,165,145,115,91,77;HRMS-EI(m/z)calcd for C19182,278.1307,found,278.1310[M]+.Anal.calcd.for C19182:C,81.99;H,6.52%;Found:C,81.82;H,6.62%.
【0296】
実施例31
実施例28と29の前記実験方法を参照して操作し、(R)-tBuPHOX/Ir(I)を不斉水素化触媒として、キラル縮合環スピロビインダン骨格ジフェノールI-qを得た。
【0297】
【化57】
【0298】
(1R,2R,2’R)-I-q:白色固体、収率59%;>99%ee.M.p.132-133℃、[α]D 20=-217.6(c 0.74,CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.18(t,J=7.6Hz,1H),7.05(t,J=7.6Hz,1H),6.95(d,J=7.6Hz,1H),6.84(d,J=7.2Hz,1H),6.59(d,J=8.0Hz,1H),6.53(d,J=8.0Hz,1H),4.89(s,1H),4.46(s,1H),3.74-3.71(m,1H),3.31(dd,J=15.6,6.8Hz,1H),3.06(dd,J=15.6,12.0Hz,1H),2.85(dd,J=15.6,8.4Hz,1H),2.57(d,J=8.0Hz,1H),2.39-2.33(m,1H),1.82-1.77(m,2H),1.65-1.57(m,1H),1.25-1.17(m,1H),0.90-0.81(m,4H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ154.38,152.94,146.58,144.73,132.74,129.84,128.86,128.31,118.99,117.20,115.44,114.58,45.80,42.85,39.34,38.26,35.99,33.72,24.53,22.60;IR(neat)ν3452,3387,2924,2898,1583,1472,1456,1286,1248,1233,1199,981,776,734cm-1;EI-MS(70eV),m/z=306([M]+),249,231,199,189,157,145,115,107,91,71,57,41;HRMS-EI(m/z)calcd for C21222,302.1620,found,306.1617[M]+
【0299】
実施例32
実施例28と29の前記実験方法を参照して操作し、(R)-tBuPHOX/Ir(I)を不斉水素化触媒として、キラル縮合環スピロビインダン骨格ジフェノールI-rを得た。
【0300】
【化58】
【0301】
(1R,2R,2’R)-I-r:白色固体、収率50%;>99%ee、M.p.112-113℃、[α]D 20=-167.4(c 0.835,CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.01(t,J=7.6Hz,1H),6.95(t,J=7.6Hz,1H),6.82(d,J=7.6Hz,1H),6.76(d,J=7.2Hz,1H),6.45(d,J=7.6Hz,1H),6.31(d,J=8.0Hz,1H),5.55(s,1H),4.57(s,1H),3.90-3.88(m,1H),3.28(dd,J=16.0,6.4Hz,1H),3.01(dd,J=15.2,12.0Hz,1H),2.78(dd,J=15.6,8.0Hz,1H),2.46(d,J=8.0Hz,1H),2.27-2.23(m,1H),1.77-1.73(m,1H),1.62-1.58(m,1H),1.39-1.35(m,1H),1.29-1.24(m,1H),0.88-0.80(m,10H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ154.80,152.60,146.44,144.76,133.35,129.87,128.92,118.80,117.49,115.64,114.62,60.94,46.92,42.52,40.05,39.74,36.21,32.19,31.89,27.62,26.74;IR(neat)ν3503,3461,2930,2854,1609,1584,1458,1279,1225,1197,1155,990,776,733,721cm-1;EI-MS(70eV),m/z=348([M]+),291,241,231,202,185,165,145,107,57,41;HRMS-EI(m/z)calcd for C24282,348.2089,found,348.2093[M]+
【0302】
実施例33
実施例28と29の前記実験方法を参照して操作し、(R)-tBuPHOX/Ir(I)を不斉水素化触媒として、キラル縮合環スピロビインダン骨格ジフェノールI-sを得た。
【0303】
【化59】
【0304】
(1R,2R,2’R)-I-s:白色固体、収率50%;>99%ee、M.p.93-94℃、[α]D 20=-222.5(c 0.545,CHCl3);1H NMR(300MHz,CDCl3)δ7.13-7.28(m,6H),7.05(t,J=10.0Hz,1H),6.93(d,J=9.6Hz,1H),6.86(d,J=10.0Hz,1H),6.54(t,J=9.2Hz,2H),5.04(s,1H),4.49(s,1H),3.98(m,1H),3.35(dd,J=21.2,8.4Hz,1H),3.21(dd,J=20.4,16.8Hz,1H),3.00-2.86(m,2H),2.57-2.44(m,2H),2.02-1.93(m,1H),1.84-1.72(m,2H),1.34(dd,J=33.2,16.4Hz,1H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ154.57,152.89,146.68,146.47,144.48,132.79,129.97,128.54,128.34,128.32,126.90,125.99,119.06,117.30,115.61,114.72,60.55,46.39,42.57,39.34,38.00,36.27,35.86,32.82;IR(neat)ν3327,3026,2921,2845,1604,1457,1435,1345,1328,1267,988,779,764,753,737,699cm-1;EI-MS(70eV),m/z=368([M]+),261,250,231,202,127,107,85,71,57,43;HRMS-EI(m/z)calcd for C26242,368.1776,found,368.1771[M]+
【0305】
実施例34(キラル縮合環スピロビインダン骨格ホスホロアミダイトリガンドI-tの合成)
【0306】
実施例28と同様な方法によって、II-hを出発材料として、(R)-tBuPHOX/Ir(I)を触媒として、ワンポット法による不斉水素化/環化によって、得られた生成物を実施例29の方法で脱臭素化して、化合物I-oのエナンチオマーent-I-oを得た。下記式で示されるように、ジフェノールent-I-oとジクロロジメチルアミノホスフィンを、アルカリ性条件において反応させて、対応した単座ホスホロアミダイトリガンドI-tを合成した。
【0307】
【化60】
【0308】
操作方法:Schlenk管(15mL)を無水・無酸素条件で処理した後、アルゴンガス雰囲気下、スピロジフェノールent-I-o(0.30mmol)、THF(3.5mL)及びEt3N(0.15mL)を投入して、0℃に冷却させた。ジクロロジメチルアミノホスフィン(37.9μL、0.33mmol)を緩慢に加えて、滴下終了後、反応液を室温に緩慢に昇温した。室温で12時間撹拌した後、反応溶液から大部分の溶媒を減圧除去し、溶媒(石油エーテル/トリエチルアミン=20:1)でシリカゲルカラムを洗浄して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(溶離剤、石油エーテル/トリエチルアミン=20:1)、オイルポンプで吸引乾燥させて、生成物I-tを得た。
【0309】
生成物化合物I-t、白色固体、収率86%、M.p.89-90℃、[α]D 20=+234.95(c 0.50,CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.11(t,J=7.6Hz,1H),7.03(t,J=7.6Hz,1H),6.93-6.88(m,3H),6.54(d,J=8.0Hz,1H),3.26-3.16(m,2H),2.90-2.69(m,4H),2.19(d,J=8.8Hz,6H),1.95-1.88(m,2H),1.68-1.63(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ149.18(d,J=5.3Hz),145.88(d,J=5.6Hz),145.57(d,J=2.1Hz),144.80,128.72(d,J=2.0Hz),128.59,121.29(d, J=1.7Hz),121.03(d,J=6.5Hz),120.56(d,J=2.5Hz),119.46(d,J=0.8Hz),61.09,46.10,45.85(d,J=1.1Hz),36.57,35.98,35.16,34.97,19.04,19.01,14.93;31P NMR(161MHz,CDCl3)δ125.38;IR(neat)ν2926,2891,2883,2864,2841,1582,1459,1441,1290,1235,1224,1190,1159,1140,1027,972,925,803,790,775,742,725,692,678cm-1;ESI-MS(m/z):365([M]+);HRMS-ESI(m/z):calcd.for C2225NO2+:366.1617,found:366.1626([M+H]+).
【0310】
実施例35(Rh(I)/キラル縮合環スピロビインダン骨格ホスホロアミダイトリガンドI-tにより触媒されたα-デヒドロアミノ酸メチルエステルの不斉水素化)
【0311】
本実施例では、キラル縮合環スピロビインダン骨格ホスホロアミダイトリガンドI-tと[Rh(COD)2OTf]を用いてその場形成した錯体をキラル触媒として、触媒されたα-デヒドロアミノ酸メチルエステルの不斉水素化反応を例にして、本発明に係るキラル縮合環スピロビインダン骨格化合物の不斉触媒における応用を説明した。
【0312】
【化61】
【0313】
操作方法:アルゴンガス雰囲気下、水素化フラスコを無水・無酸素条件で処理して、[Rh(COD)2]OTf(1.17mg、0.0025mmol)とI-t(0.0050mmol)を投入して、アルゴンガスを3回置換した後、CH2Cl2(2.5mL)を加えた。水素化フラスコをグローブボックスに移して、α-デヒドロアミノ酸メチルエステルである基質1’(54.8mg、0.25mmol)を加え、オートクレーブに入れた。水素ガスを3回置換した後、水素ガスを20atmになるまで導入し、室温で12h撹拌した後、水素ガスを慎重に排出し、反応溶液から溶媒を減圧除去して、1H NMRにより転化率を測定し、残留物を酢酸エチルでシリカゲルショートカラムに通して分離して水素化生成物2’を得た。白色固体、収率>99%、M.p.85-87℃、96%ee、[α]D 20=-97.92(c 1.0、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.21-7.31(m,3H),7.09-7.12(m,2H),6.22(d,J=6.4Hz,1H),4.84-4.90(m,1H),3.71(s,3H),3.04-3.16(m,2H),1.97(s,3H)。生成物2’のee値は、キラル高速液体クロマトグラフィーによって測定された。Chiralcel AD column.Conditions:hexane/isopropanol=92:8;flow rate=1.0mL/min;UV detection at 230nm;tR=14.50min(major)、18.99min(minor)).
【0314】
実施例36(キラル縮合環スピロビインダン骨格ホスホロアミダイトリガンドI-uの合成)
【0315】
【化62】
【0316】
Schlenk瓶(100-mL)を無水・無酸素条件で処理した後、THF(30mL)とピロリジン(20.0mmol)を投入して、-78℃に冷却させ、n-BuLi(2.4M in Hexanes)(9.17mL、22mmol)を1滴ずつ滴下し、滴下終了後、室温に緩慢に昇温した。別の無水・無酸素条件で処理したSchlenk瓶にTHF(10mL)とPCl3(2.27mL)を投入して、-78℃に冷却させた。リチウムアミド溶液をPCl3のTHF溶液に加え、緩慢に室温に昇温した後、12時間撹拌し続けた。反応系から溶媒を減圧除去して、THF(10mL×3)で洗浄して吸引乾燥させ、過剰のPCl3を除去した。最後にTHF(10mL)を加えて溶液を調製した。
【0317】
Schlenk瓶(15mL)を無水・無酸素条件で処理した後、アルゴンガス雰囲気下、ジフェノールI-p(0.55mmol)、THF(5.0mL)及びEt3N(0.40mL)を加えて、0℃に冷却させた。上記アミノジクロロリン(1.70mL)を緩慢に滴下し、滴下終了後、室温に緩慢に昇温した。次に12h撹拌後、反応を停止させ、反応系から大部分の溶媒を減圧除去し、溶媒(石油エーテル/トリエチルアミン=20:1)でシリカゲルカラムを洗浄して、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離精製して(石油エーテル/トリエチルアミン=20:1)、オイルポンプで吸引乾燥させて、固体生成物(1R,2R,2’R)-I-uを得た。白色固体、収率49%、M.p.87-88℃、[α]D 20=-237.2°(c 0.565、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.18(t,J=8.0Hz,1H),7.08(t,J=8.0Hz,1H),6.93-6.85(m,3H),6.57(d,J=8.0Hz,1H),3.27-3.17(m,2H),2.89-2.78(m,4H),2.73(dd,J=17.2,5.2Hz,2H),2.34-2.26(m,2H),1.99-1.85(m,2H),1.68-1.64(m,4H),1.55-1.52(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ149.67(d,J=4.8Hz),146.13(d,J=5.9Hz),145.48(d,J=2.0Hz),144.96,142.82(d,J=3.6Hz),141.21(d,J=1.2Hz),128.75(d,J=2.0Hz),128.00,121.69(d,J=1.6Hz),120.90(d,J=6.3Hz),120.47(d,J=2.4Hz),119.36(d,J=0.8Hz),71.34,53.18,52.68(d,J=1.2Hz),45.25,45.10,40.90,40.52,31.51,31.32,25.80,25.75;31P NMR(161MHz,CDCl3)δ124.43;IR(neat)ν2922,2850,1732,1582,1460,1293,1227,1206,1075,1006,981,804,780,726,676cm-1;EI-MS(70eV),m/z:377([M]+),348,308,280,202,189,101,70,43;HRMS-EI(m/z):calcd.for C2324NO2P:377.1545,found:377.1543.
【0318】
本発明に記載のすべての文献は、それぞれ単独に参照として引用された場合と同様に、参照として引用により本願に組み込まれる。
【0319】
なお、当業者は本発明の上記開示内容に基づいて、本発明において各種変化又は修正を行うことができ、これら等価形態は同様に本願に添付した特許請求の範囲により限定される範囲に属する。
図1