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  • 特許-架橋クラフトパルプの組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】架橋クラフトパルプの組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/20 20060101AFI20220104BHJP
   C08B 11/12 20060101ALI20220104BHJP
   C08B 15/10 20060101ALI20220104BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220104BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20220104BHJP
   D21C 9/10 20060101ALI20220104BHJP
   D21H 11/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
D21H11/20
C08B11/12
C08B15/10
C08L1/02
C08L1/08
D21C9/10 A
D21H11/04
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018544843
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 US2017019457
(87)【国際公開番号】W WO2017147496
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-18
(31)【優先権主張番号】62/299,894
(32)【優先日】2016-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504293447
【氏名又は名称】インターナショナル・ペーパー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,メンクイ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06531593(US,B1)
【文献】国際公開第2015/165588(WO,A1)
【文献】特開2006-188697(JP,A)
【文献】特開昭61-157501(JP,A)
【文献】特開昭58-001701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142481(US,A1)
【文献】特表2012-528256(JP,A)
【文献】特表2013-523919(JP,A)
【文献】特開平02-264087(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102887956(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/20
C08B 11/12
C08B 15/10
C08L 1/02
C08L 1/08
D21C 9/10
D21H 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋セルロース繊維を含むパルプであって、
60センチポアズ(cP)以上の得られたカルボキシメチルセルロース(CMC)粘度、
75%以上の輝度、及び
1.1g/g以上の保水値(WRV)
を有し、
前記得られたCMCは、
前記パルプをイソプロパノール中でスラリー化することと、
スラリー化した前記パルプを含む懸濁液に、前記パルプの置換度に応じた所定量の30%NaOH溶液、及び前記パルプの置換度に応じた所定量のモノクロロ酢酸を添加することと、
前記懸濁液を撹拌して繊維状CMCを得ることと、
得られた前記繊維状CMCを70%エタノールで洗浄することと、
洗浄された前記繊維状CMCを乾燥させることと、を含む方法で得られたものであり、
前記置換度は、ASTM D 1439-03により決定され、
前記得られたCMC粘度は、前記得られたCMCの0.5%溶液を、粘度計を用いてスピンドル2を50RPM及び20℃で使用して、ASTM15法D2196-99に準拠して試験される、パルプ。
【請求項2】
クラフトパルプである、請求項1に記載のパルプ。
【請求項3】
漂白される、請求項1又は請求項2に記載のパルプ。
【請求項4】
銅エチレンジアミンに少なくとも部分的に不溶性である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項5】
前記架橋セルロース繊維の炉乾燥重量で、10%以上のヘミセルロースを更に含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項6】
90cP以上の得られたCMC粘度を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項7】
5以下の得られたCMC色を有する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項8】
25NTU以下の得られたCMC濁度を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項9】
1.4g/g以下のWRVを有する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項10】
88以上のR18値を有する、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項11】
92以下のR18値を有する、請求項10に記載のパルプ。
【請求項12】
200cP以上の落球式粘度を有する、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項13】
X線結晶解析により決定されたセルロース-IIを持たない、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項14】
80%以下の結晶化指数を有する、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項15】
75%以下の結晶化指数を有する、請求項14に記載のパルプ。
【請求項16】
80%以上の輝度を有する、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項17】
88.5%以下の輝度を有する、請求項16に記載のパルプ。
【請求項18】
500g/m以上の坪量を有する、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項19】
1200g/m以下の坪量を有する、請求項18に記載のパルプ。
【請求項20】
0.20g/cm以上の密度を有する、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項21】
700mL以上の濾水度を有する、請求項1~請求項20のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項22】
前記架橋セルロース繊維が、2個以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテル架橋剤に由来する架橋を含む、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項23】
前記架橋セルロース繊維が、174~500の範囲内の重量平均分子量を有するグリシジルエーテル架橋剤に由来する架橋を含む、請求項1~請求項22のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項24】
前記架橋セルロース繊維が、エポキシド当たり140~175の範囲内の重量を有するグリシジルエーテル架橋剤に由来する架橋を含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項25】
前記架橋セルロース繊維が、第1のグリシジル基、第2のグリシジル基、及び前記第1と第2のグリシジル基の間の3個又は4個のいずれかの直鎖炭素原子を有するグリシジルエーテル架橋剤に由来する架橋を含む、請求項1~請求項24のいずれか一項に記載のパルプ。
【請求項26】
前記架橋セルロース繊維が、木材に由来する、請求項1~請求項25のいずれか一項に記載のパルプ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月25日に出願された米国特許仮出願第62/299,894号の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれた前述の出願及び/又は任意の他の資料が本開示と矛盾する限りは、本開示を考慮に入れる。
【0002】
技術分野
本技術は、セルロース生成物(例えば、パルプ)及びセルロース誘導体(例えば、セルロースエーテル)に関する。
【0003】
背景技術
セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、など)は、水溶液を形成し、主に、これらの溶液の粘度に応じた様々なグレードで入手可能である。より粘性の水溶液を形成する高グレードのセルロースエーテルは、粘性がより低い水溶液を形成するより低グレードのセルロースエーテルより利用価値が高い傾向がある。所与のセルロースエーテルがより粘性の水溶液を形成する能力は、重合度、及び/又はそれから所与のセルロースエーテルが生成されるセルロース前駆体の他の特性に密接に関連する。高グレードのセルロースエーテルは、溶解グレードパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)から従来法で生成され、一方、中グレード及び低グレードのセルロースエーテルは、より低価格の木材パルプから従来法で生成される。本開示で参照されるパルプグレードは、Herbert Sixta、Handbook of Pulp、Wiley-Vch(2006)で更に論じられており、これはその全容が参照により本明細書に組み込まれる。大部分の木材パルプの重合度は、約1,500を超えない。対照的に、溶解グレードパルプは、2,400以上の重合度を有することが多い。残念ながら、溶解グレードパルプは、高価になる傾向がある。高グレードのセルロース誘導体の生成用に低価格のパルプを改変する先行技術の試みは、ほんの限られた成功を収めたのみである。したがって、この分野における更なる革新に対する必要性がある。
【0004】
本技術の多くの態様は、図1及び図2を参照してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本技術の一実施形態によるパルプを作製する方法を例示するフローチャートである。
図2】本技術の別の実施形態によるパルプを作製する方法を例示するフローチャートである。
【0006】
詳細な説明
本技術の実施形態によるパルプを作製する方法及び関連するシステム並びに組成物は、従来技術に伴う1つ又は複数の問題に、そのような問題が本明細書に明記されていても又はされていなくても、少なくとも部分的に取り組むことができる。例えば、本技術の少なくともいくつかの実施形態による方法により、低価格のパルプが、高グレードのセルロースエーテル及び/又は他のセルロース誘導体(例えば、セルロースエステル)の生成における前駆体として役立つことが可能になる。例えば、クラフトパルプは、溶解グレードパルプよりかなり安価であり且つより広く入手可能である。しかしながら、標準的クラフトパルプがセルロースエーテルの生成用に前駆体として使用されると、得られたセルロースエーテルは低グレードになる傾向がある。
【0007】
セルロース誘導体の生成に使用されるパルプにおける望ましい特性として、高輝度及び高粘度が挙げられる。パルプにおける高輝度により、パルプから生成されるセルロース誘導体はほぼ無色又は全く無色となり得る。セルロース誘導体から作製される多くの製品(例えば、医療用布、食品、乾式壁、など)において、セルロース誘導体が製品に色を付与することは望ましくない。同様に、これらの及び他の用途において、セルロース誘導体が、依然として水に可溶性でありながら高粘度を有することは有用である傾向がある。したがって、ほぼ無色又は全く無色であり且つ高粘度を有するセルロース誘導体は、際立つ色及び低粘度を有するセルロース誘導体より高価になる傾向がある。パルプにおける高反応性により、パルプをセルロース誘導体に変換するために使用される官能基化反応(例えば、エーテル化)の効率が増加する。パルプの反応性は、パルプ中のセルロース繊維の表面が、その表面に官能基化剤が分布している水分子と接触する程度に密接に関連する。セルロース繊維の表面と水分子との接触が大きくなるにつれて、パルプが水を保持する程度もまた増加する。したがって、より高い保水値を有するパルプは、より高い反応性を有するパルプでもある傾向がある。
【0008】
いくつかの従来プロセスは、高粘度の水溶液を形成するセルロースエーテルを生成するクラフトパルプの能力を増加させることに、ある程度成功を収めてきた。残念ながら、これらの従来プロセスは、常に、セルロースエーテルにおける他の望ましい特性を犠牲にして且つ/又はプロセス収率を犠牲にして、その成功を収めてきた。例えば、いくつかの従来プロセスは、クラフトプロセス中の漂白を減少させるか又は省くことを含む。これらのプロセスから得られたパルプは、高リグニン含有量、及び対応して低輝度を有する傾向がある。このため、これらのパルプから生成されるセルロースエーテルにおける望ましくない色に至る。別の例として、いくつかの従来プロセスは、クラフトパルプからのヘミセルロース除去を増加することを含む。しかしながら、これらのプロセスは、ヘミセルロースが与える嵩が除去されることに起因して、低収率を有する。その上、これらのプロセスから得られるパルプは、セルロース-Iからセルロース-IIへの構成要素セルロースの変換に起因して、低い反応性を有する傾向がある。従来の架橋反応もまた、典型的には、パルプの保水値(及び反応性)を減少させる。低輝度、低収率、及び/又は低反応性を許してさえも、低価格のパルプを改変する従来プロセスは、高粘度の溶解グレードエーテルパルプから生成されるセルロース誘導体の粘度と同じくらいの高粘度を有する水溶液を形成するセルロースエーテルを生成するのに好適なパルプを生成することは、依然としてできていない。
【0009】
本技術の少なくともいくつかの実施形態による方法は、比較的高いコンシステンシー(例えば、12%以上のコンシステンシー)のパルプを架橋することを含む。これらの方法は、パルプの保水値を増加させるために選択された架橋剤を用いて、パルプを架橋することを更に含み得る。この目的に十分に適した架橋剤として、例えば、2個以上のグリシジル基及びエポキシド当たり140~175の範囲内の分子量を有するグリシジルエーテル架橋剤が挙げられる。比較的高いコンシステンシーのパルプの架橋及びこの種の架橋剤の使用により、低価格のパルプ(例えば、クラフトパルプ)が、輝度、収率、反応性、及び/又は他の望ましいパルプ特性の関連性のある減少をほとんど伴わないか又は全く伴わず、高グレードのセルロース誘導体の生成に好適となることが、驚いたことに見出された。
【0010】
従来の非架橋クラフトパルプは、亜硫酸パルプ(すなわち、主に亜硫酸塩を使用して木材からリグニンを抽出することにより作製されるパルプ)などの他の化学パルプより低い反応性を有する傾向がある。しかしながら、本技術の少なくともいくつかの実施形態では、架橋クラフトパルプは比較的高い反応性を有する。単に理論として且つそのような理論に限定されることは望まないが、これはセルロース鎖間に均一に追加空間を加える架橋の存在に起因し得る。より長鎖の架橋剤(例えば、ポリグリシジルエーテル)は、同様の架橋条件下で、より短鎖の架橋剤(例えば、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパノール(DCP))より高い反応性を有する架橋パルプを生成し得る。より長鎖の架橋剤を用いて架橋されたパルプは、出発材パルプの結晶化指数より低く、且つ溶解グレードの亜硫酸木材パルプ及びコットンリンターパルプの結晶化指数より更に低い結晶化指数を有し得る。高粘度のエーテル用途のために、亜硫酸パルプの代わりにクラフトパルプを架橋することは、クラフトが亜硫酸パルプ化プロセスより有力なパルプ化プロセスであり、より高い収率(より高いヘミセルロース含有量)を有し、より低価格であり且つ環境をより配慮しているため、少なくともいくつかの場合に有利であり得る。
【0011】
従来のクラフト加工では、パルプは比較的低いコンシステンシー(例えば、10%以下のコンシステンシー)に維持される。パルプのコンシステンシーが増加するにつれて、パイプを通してパルプを流動させ且つパルプを混合することがより困難となる。したがって、高グレードのセルロース誘導体の生成の可能性を増加させるためにクラフトパルプを改変する従来プロセスにおけるいかなる架橋もまた、比較的低いコンシステンシーで実行される。本技術の少なくともいくつかの実施形態と関連性がある驚くべき発見の1つは、架橋中にパルプのコンシステンシーを増加させると、架橋パルプの保水値が増加し得ることである。本技術の少なくともいくつかの実施形態と関連性があるこの発見及び/又は他の発見により、高グレードのセルロース誘導体の生成における高価な溶解グレードパルプの真の代替物及び/又は好適な増量材であるクラフトパルプを生成することが最終的に可能となる。
【0012】
本技術のいくつかの実施形態による、パルプを作製する方法及び関連するシステム並びに組成物の具体的な詳細を、図1及び図2を参照して本明細書に記載する。方法及び関連するシステム並びに組成物は、主に又は完全にセルロース誘導体の生成用にクラフトパルプを改変する文脈において本明細書に開示され得るけれども、本明細書に開示されるものに加えて他の文脈が本技術の範囲内である。例えば、記載された方法、システム、及び組成物の好適な特色は、亜硫酸パルプの文脈において、又は溶解グレードパルプの文脈においてさえ実行され得る。別の例として、記載された方法、システム、及び組成物の好適な特色は、特製の紙製品の製造などの、セルロース誘導体の生成以外の使用のために、クラフトパルプ又は他のパルプを改変する文脈において実行され得る。
【0013】
一般に、本明細書に開示されるものに加えた他の方法、システム、及び組成物は、本技術の範囲内であることを理解されたい。例えば、本技術の実施形態による方法、システム、及び組成物は、本明細書に開示されるものとは異なる及び/又は付加的な操作、成分、相対的構成などを有し得る。その上、当業者は、本技術の実施形態による方法、システム、及び組成物は、本技術から逸脱することなく、本明細書に開示される特定の操作、成分、相対的配置などを伴わなくてもよいことを理解するであろう。
【0014】
試験方法及び頭字語
AOX:EPA法1650Aにより決定される吸着性有機ハロゲン化物。
【0015】
灰分:TAPPI T 211 om-07により決定される。
ASTM:米国材料試験協会。
【0016】
輝度:TAPPI T 525 om-12により決定される。
毛細管粘度:TAPPI T 230 om-99により決定される。
【0017】
カルボキシル含有量:TAPPI T 237 om-08により決定される。
遠心分離容量:米国特許第8,039,683号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
CMC:カルボキシメチルセルロース。
粗度:米国特許第6,685,856号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
結晶化指数:Lionettoら、「Monitoring Wood Degradation during Weathering by Cellulose Crystallinity」、Materials、5、1910~1922(2012)の対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
Cuen溶解度:TAPPI T 254 cm-00の条件下における銅エチレンジアミン中の溶解度。
【0021】
カール指数:米国特許第6,685,856号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
重合度:ASTM-D1795-96により測定されるセルロース分子中のD-グルコースモノマー数。平均重合度は、セルロースポリマー集団中のセルロースポリマー当たりのD-グルコース分子の平均数を表す。
【0023】
置換度(DS):ASTM D 1439-03により決定される。
DWP:溶解木材パルプ。
【0024】
落球式(FB)粘度:TAPPI T 254 cm-00により決定される。
濾水度:TAPPI T 227 om-04により決定されるカナダ標準濾水度。
【0025】
自由膨潤:米国特許第8,039,683号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
ヘミセルロース含有量:その全容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,541,396号の実施例6及び7に記載される方法により決定されるマンナン及びキシランの合計含有量。本試験は、Dionexイオンクロマトグラフィーによる分析を用いてTAPPI T 249 cm00を基準とする。
【0027】
HPLC:高速液体クロマトグラフィー。
固有粘度(IV):ASTM D1795-96により決定される。
【0028】
ISO:国際標準化機構。
カッパー価:ISO 302:2004により決定される。
【0029】
キンク角度:米国特許第6,685,856号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
キンク指数:米国特許第6,685,856号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
リグニン含有量:その全容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,541,396号の実施例6及び7に記載される方法により決定される。
【0032】
MCA:モノクロロ酢酸。
NCASI:空気及び蒸気振興評議会(National Council for Air and Stream Improvement)。
【0033】
炉乾燥(OD):7重量%以下の湿分まで乾燥される。
R18:TAPPI T 235 cm-00により測定される。
【0034】
得られたCMC粘度:以下の得られたCMC試験法により、得られたCMCの0.5%溶液の粘度を表す。
【0035】
得られたCMC色:以下の得られたCMC試験法を参照されたい。
得られたCMC濁度:以下の得られたCMC試験法を参照されたい。
【0036】
TAPPI:パルプ製紙業界技術協会。
遷移金属含有量:EPA SW-856法3050、200.8により決定される。
【0037】
US EPA:米国環境保護庁。
保水値(WRV):TAPPI T UM256M(2011)により決定される。
【0038】
湿潤嵩:米国特許第8,722,797号に開示される対応する方法により決定され、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
WPE:エポキシド当たりの重量。
得られたCMC試験法
本開示の全体にわたり、パルプの特性は、「得られたCMC」特性の点から特徴付けられ得る。これらは、パルプを使用して生成され得るCMCの特性であり、CMCはセルロース誘導体の代表例として役立っている。CMCは、本技術の実施形態によるパルプが使用されて生成され得る唯一のセルロース誘導体ではないことを理解されたい。本明細書に記載される所与のパルプの得られたCMC特性は、以下の手順により決定される。本手順に関する付加的な詳細は、Nevell T.P.及びZeronian S.、Cellulose Chemistry and its Applications、Chapter 15-Cellulose Ethers(1985)に見出すことができ、これはその全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
最初に、パルプの置換度を決定する。パルプの置換度が少なくとも1.0である場合、下記に規定するように進行する。パルプの置換度が1.0以下である場合、下記に規定するように進行するが、6.4mL(8.0mLの代わりに)の30%NaOH溶液及び2.9g(3.6gの代わりに)のMCAを使用する。80mLのイソプロパノール中の3gの(繊維化された)パルプの(炉乾燥)試料をスラリー化する。8.0mLの30%NaOH溶液を3分間にわたり添加する。20℃で1時間、懸濁液を撹拌する。3.6gのMCA(23.6gのMCA/100mLのイソプロパノールの15.2mL溶液として)を3分間にわたり添加する。温度を55℃まで25分で上昇させ、3.5時間撹拌し続ける。得られた繊維状CMCを排出し、70%エタノールを用いて洗浄する。酢酸を用いて試料を中性(pH7.0)にして、次に濾過する。70%エタノールを用いて濾過ケーキを20℃で再度洗浄し、濾過する。70%エタノールを用いて20℃で更に1回洗浄し、次に100%変性エタノールを用いて20℃で更に3回洗浄して、洗浄及び濾過を繰り返す。試料を固形分70~85%まで空気乾燥し、得られたCMCを形成する。得られたCMCの0.5%溶液を、Brookfield粘度計を用いてスピンドル2及び50RPMを20℃で使用して、ASTM法D2196-99に準拠して試験を行い、得られたCMC粘度を決定する。得られたCMCの0.5%溶液を、US EPA法180.1により試験を行い、得られたCMC濁度を決定し、且つ得られたCMCの0.013%溶液を、NCASI法TB253により試験を行い、得られたCMC色を決定する。
【0041】
出発物質
本技術の実施形態によるパルプを作製する好適な出発物質の例として、木材及び再生紙が挙げられる。少なくともいくつかの実施形態では、出発物質は乾燥させていない。少なくともいくつかの実施形態では、出発物質は乾燥させる。木材パルプ製造業において、樹木は従来法で硬材又は軟材のいずれかとして分類される。出発物質として使用されるパルプは、軟材又は硬材の樹種に由来し得る。好適な軟材樹種の例として、モミ(例えば、ベイマツ及びバルサムモミ)、マツ(例えば、ストローブマツ及びタエダマツ)、トウヒ(例えば、カナダトウヒ)、カラマツ(例えば、アメリカカラマツ)、ヒマラヤスギ属、並びにベイツガ(例えば、カナダツガ及びアメリカツガ)が挙げられる。好適な硬材種の例として、アカシア、ハンノキ(例えば、レッドアルダー及びヨーロッパハンノキ)、ヤマナラシ(例えば、アメリカヤマナラシ)、ブナ、カバノキ、オーク(例えば、ホワイトオーク)、ゴムの木(例えば、ユーカリ樹及びモミジバフウ)、ポプラ(例えば、バルサムポプラ、イースタンポプラ、ブラックコットンウッド、及びハンテンボク)、グメリナ及びカエデ(例えば、サトウカエデ、ベニカエデ、ウラジロサトウカエデ、及びオオバカエデ)が挙げられる。
【0042】
軟材又は硬材の種からの木材は、一般に、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの3種の主要成分を含む。セルロースは、植物の木質構造の約50%を構成し、D-グルコースモノマーの非分岐ポリマーである。個々のセルロースポリマー鎖は、結び付いてより密集した細毛繊維を形成し、それは次々に結び付いて束に配置された細繊維を形成する。その束は、光学顕微鏡又は走査電子顕微鏡下で高倍率において見ると、植物細胞壁の成分として視認できる繊維を形成している。セルロースは、広範囲の分子内及び分子間の水素結合の結果として、高度に結晶性である。ヘミセルロースは、木材中のセルロースと関連性がある、キシラン及びマンナンなどの低分子量の炭水化物ポリマーの不均一群である。ヘミセルロースは、直鎖ポリマーであるセルロースと対照的に、非晶質の分岐ポリマーである。リグニンは、複合芳香族ポリマーであり、木材の約20%~40%を構成し、この場合、非晶質ポリマーとして存在する。
【0043】
未乾燥パルプの使用及び改変クラフトプロセス
上述のように、いくつかの実施形態は、本開示によるパルプの生成用に、出発物質としての未乾燥パルプの使用を含む。大部分のパルプ製造機では、化学パルプ化プロセス(クラフトプロセスなど)により生成されるパルプは、続いて漂白プロセスにより、パルプを更に脱リグニン化且つ白色化する。漂白パルプは、次に出荷用に脱水且つ乾燥される。未乾燥パルプが使用される実施形態は、改変クラフトプロセスを含み得、そこでクラフトパルプ化により生成されるパルプは、次に乾燥前に架橋剤で処理され、架橋パルプを生成する。例えば、パルプは、2回の漂白段階の間、又は選択された漂白段階中若しくはその後などの、漂白プロセス中に架橋剤で処理され得る。この手法は、架橋工程が製造機で利用される標準クラフトプロセスに選択的に組み込まれ得、変動製造能力を可能にするという点で有利であり得る。その上、本開示によるパルプの生成に好適な架橋剤は水性媒体を一般に必要とし、それは漂白プロセス中に提供される。
【0044】
改変クラフトプロセスの例示としての例は、図1と関連して以下に記載される。
一般に、クラフト加工は、セルロース供給原料(例えば、木材チップ)を、昇温且つ昇圧時に、蒸煮用化学物質(例えば、硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウム)の水溶液である白液中で、化学的に蒸解することを含む。蒸煮用化学物質は、供給原料内のセルロース繊維を互いに結び付けているリグニンを溶解する。この化学的蒸解が完了すると、パルプは「送風タンク」として知られる大気タンクに移送される。送風タンクの内容物は、次にパルプ洗浄機に送られ、使用済みの蒸煮用化学物質がパルプから分離される。パルプは、次に様々な段階の洗浄及び漂白を通して進行し、その後、圧縮され且つ乾燥され最終生成物となる。
【0045】
クラフトプロセスは、蒸煮用化学物質及び熱を回収するように設計されている。例えば、使用済みの蒸解用化学物質及びパルプ洗浄水は組み合わせられ得、多重効用型蒸発器システム中で固形分約55%まで濃縮された希黒液を形成する。黒液は、次に、直接接触式蒸発器中で黒液を回収炉からの排煙ガスと接触させることにより、又は間接接触式濃縮器中で、固形分65%まで更に濃縮され得る。濃黒液は、次に回収炉中で燃焼され得る。黒液中に溶解している有機物の燃焼により、プロセス蒸気を生み出すための且つ硫酸ナトリウムを硫化ナトリウムに変換するための熱が提供され得る。黒液中に存在する無機化学物質は、炉の底部で溶融した溶融物として収集され得る。溶融物は、水に溶解して緑液を形成し得、次にこれは苛性化タンクに移送され得、そこで生石灰(酸化カルシウム)が添加され、蒸解釜システムに戻すために、溶液を変換して白液に戻すことができる。苛性化タンクからの石灰泥沈殿物は、石灰キルン中でか焼され、生石灰を再生することができる。
【0046】
図1は、本技術の一実施形態によるパルプを作製する実施例方法100を例示するフローチャートである。例示的実施形態では、方法100は、クラフトプロセスを基準とする。他の実施形態では、方法100に対応する方法は、他の好適なプロセスを基準とし得る。図1を参照すると、方法100は、パルプ化プロセス102及びパルプ化後プロセス104を含み得る。パルプ化プロセス102内で、方法100は、チップを投入すること(ブロック106)及びチップを事前蒸気処理すること(ブロック108)を含み得る。大気圧における蒸気は、チップを事前加熱し且つ空気を追い出して液剤浸透を高めるために使用され得る。事前蒸気処理の後、方法100は、化学物質(例えば、NaOH、NaS、及び/又は他の好適な化学物質)をチップに添加すること(ブロック110)を含み得る。例えば、化学物質は、蒸煮用液剤として添加され得る。次に、木材チップ及び蒸煮用液剤は蒸解釜内に注入され得る。蒸解釜内で、蒸煮用液剤は木材チップに含浸すること(ブロック112)が可能であり得る。蒸煮用液剤の良好な浸透により、木材チップの均一な蒸煮を促進することができる。
【0047】
含浸後、方法100は、木材チップ及び蒸煮用液剤を、並流(ブロック114)及び逆流(ブロック116)の液剤接触で蒸煮することを含み得る。いずれの操作においても、蒸煮用液剤及びチップには熱がもたらされ得る。次に、洗浄液剤は、蒸煮パルプに逆流して流動するように、蒸解釜の底部に導入され得る(ブロック118)。蒸煮は、パルプが冷却洗浄液剤と合わせられると終了し得る。蒸解釜洗浄後、蒸解釜の内容物は、送風され得る(ブロック120)。蒸解釜送風は、木材及び液剤を大気圧で放出することを含み得る。放出は、繊維分離を起こすのに十分な量の力を用いて起こり得る。所望ならば、送風タンクには、操作費用を減少させるために熱回収装置を装備することができる。最終的に、パルプは、パルプからの黒液の分離のために送風タンクから外部パルプ洗浄機へ送られ得る(ブロック122)。
【0048】
パルプ化プロセス102に続いて、パルプは漂白され得、且つパルプ内のセルロース繊維は架橋され得る。標準クラフトプロセスでは、漂白は架橋を伴わず行われる。漂白は、典型的には、パルプのヘミセルロース含有量の実質的な減少を起こさない。代わりに、漂白は、パルプ繊維の長さ及び粘度の付随する減少を伴い、残留リグニンの更なる除去を含む。漂白中に、パルプは、漂白設備における種々の段階で、様々な化学物質で処理され得る。その段階は、従来設計の容器又は塔内で実行され得る。漂白は、典型的には、種々の漂白剤(例えば、酸素、二酸化塩素、など)を用いた1つ又は複数の漂白段階、抽出段階、他の処理段階、などの一連の操作として行われる。漂白段は、その段中に実施される操作順序の点から確認され得る。例えば、漂白段の一例はO-D-E-Dである。そのような漂白段は、酸素漂白段階(「O段階」)、続いて第1の二酸化塩素漂白段階(「D段階」)、続いて抽出段階(過酸化物(「P」)及び/又は酸素(「O」)などの漂白化学物質がリグニン除去のために苛性物と混合される、「E段階」又は「EOP段階」)、並びに第2のD段階を含む。漂白プロセスのいくつかの付加的な例は、米国特許第6,331,354号、及び同第6,605,350号に記載されており、これらはその全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
パルプ化後プロセス104は、酸素を用いてパルプを第1に漂白すること(ブロック124)を含み得る。酸素を用いたパルプの漂白は、リグニン除去に関して、二酸化塩素を用いたパルプ漂白ほど特異的ではない傾向がある。酸素漂白は、酸素反応器中で加圧下で行われ得る。好適な酸素反応器及び関連する酸素漂白プロセスは、米国特許第4,295,925号、同第4,295,926号、同第4,298,426号、及び同第4,295,927号に記載されており、これらはその全容が参照により本明細書に組み込まれる。パルプに添加される酸素量は、パルプの1トン当たり50~80ポンドの範囲内であり得る。酸素漂白中の温度は、100℃~140℃の範囲内であり得る。
【0050】
パルプの酸素漂白後、方法100は、パルプ内のセルロース繊維を架橋すること(ブロック126)を含み得る。少なくともいくつかの場合には、これは、パルプに架橋剤を添加し、且つパルプを更に加工する前に架橋反応が起きることを可能にすることを含む。架橋剤は、比較的強い架橋(例えば、エステル又はイオン性架橋の代わりにエーテル架橋)を形成するように選択され得る。例えば、セルロース誘導体を形成するために使用される官能基化反応(例えば、エーテル化)により架橋が分断されることがあまりないように、比較的強い架橋が、弱い架橋より好ましくあり得る。架橋剤は、パルプに対して、2:100以上、3:100以上、5:100以上、又は別の好適な下限閾値以上の重量比で添加され得る。上限閾値は、パルプからの得られたCMCが水に不溶性になることを起こすことなく使用され得る架橋剤の最大量であり得る。少なくともいくつかの場合には、触媒(例えば、NaOH、テトラフルオロホウ酸亜鉛、Zn(BF)が、架橋中に存在する。付加的に又は代替的に、界面活性剤が、架橋剤の分散及び浸透を促進するためなどで、架橋中に存在し得る。界面活性剤は、疎水性架橋剤と関連して特に有用であり得る。
【0051】
好適な架橋剤として、2個以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテルなどのエーテルが挙げられる。例えば、架橋剤は、第1のグリシジル基、第2のグリシジル基、及び
第1と第2のグリシジル基の間に3個又は4個のいずれかの直鎖炭素原子を含み得る。付加的に又は代替的に、架橋剤は、500以下(例えば、174~500の範囲内)の重量平均分子量を有し得る。更に、架橋剤がエポキシドである時、架橋剤は、エポキシド当たり175以下(例えば、140~175の範囲内)の重量を有し得る。架橋剤は、25℃で500cP以下の粘度を有し得る。少なくともいくつかの実施形態では、架橋剤は、水に少なくとも部分的に不溶性である。この特性は、例えば、架橋反応中に架橋剤とセルロース繊維との接触を増加させるために有用であり得る。好適な架橋剤の特定の例として、数ある中でも、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジエーテルが挙げられる。
【0052】
架橋中に、パルプは、50℃~85℃の範囲内の温度を有し得る。更に、パルプは、9~14の範囲内のpHを有し得る。既に論じたように、パルプのコンシステンシーが比較的高い間の、架橋は、高グレードのセルロース誘導体を生成するパルプの能力を増加させるのに有用であり得る。架橋の全て又は一部(例えば、時間により少なくとも50%)の間のパルプのコンシステンシーは、少なくとも12%(例えば、12%~30%の範囲内)又は少なくとも15%(例えば、15%~30%の範囲内)であり得る。例えば、パルプのコンシステンシーは、架橋前に(例えば、水を押し出すことにより)増加し得る。架橋後に更なるパルプ加工が行われると、パルプのコンシステンシーは、架橋後に(例えば、水を添加することにより)減少し得る。比較的高いコンシステンシー及び/又は他の要因に起因して、架橋は、パルプの反応性(保水値により測定)及び耐アルカリ性(R18により測定)を増加させ得る。対照的に、従来の架橋プロセスは、少なくとも典型的には、これらの望ましい特性のうちの一方又は両方を減少させるか又は影響を与えない。
【0053】
本技術の実施形態による架橋パルプは、高グレードのセルロース誘導体を生成するパルプの能力を増加させるために、他の技術と組み合わせて使用され得る。例えば、パルプ化プロセス102中で上述した蒸煮は、比較的穏やかであり得る。比較的穏やかな蒸煮を用いると、パルプから除去され得るリグニンは、その他の場合より少ない。穏やかな蒸煮後、パルプは25~35のカッパー価を有し得、著しい残留リグニンの存在を示している。別の例として、パルプ化後プロセス104中で以下に記載の漂白及び抽出は、比較的穏やかであり得る。強苛性抽出及び前加水分解を加えることによるクラフトプロセスの改変と異なり、クラフトプロセスに対する前述の改変は、高グレードのセルロース誘導体を生成するクラフトパルプの能力を、輝度、収率、及び/又は反応性を過度に損なうことなく増加的に改善することができる。
【0054】
パルプ内のセルロース繊維を架橋した後、方法100は、1回目に二酸化塩素を用いてパルプを漂白することを含み得る(ブロック128)。二酸化塩素漂白は、リグニン除去に関して酸素漂白より選択的である傾向がある。パルプに添加される二酸化塩素の量は、パルプの1トン当たり20~30ポンドの範囲内であり得る。第1の二酸化塩素漂白中の温度は、50℃~85℃の範囲内であり得る。パルプを最初に二酸化塩素漂白した後、方法100は、パルプからリグニンを除去するために抽出(ブロック130)を含み得る。抽出は、過酸化水素又は別の好適な苛性物をパルプに添加することを含み得る。パルプに添加される過酸化水素の量は、パルプの1トン当たり20~100ポンドの範囲内であり得る。抽出中の温度は、75℃~95℃の範囲内であり得る。ヘミセルロース除去のための強苛性抽出と対照的に、リグニン除去用の抽出は、比較的穏やかであり得る。例えば、抽出は、セルロース繊維の結晶構造を変化させない抽出であり得る。
【0055】
再び図1を参照すると、抽出後、方法100は、2回目に二酸化塩素を用いてパルプを漂白すること(ブロック132)を含み得る。パルプに添加される二酸化塩素の量は、パルプの1トン当たり10~30ポンドの範囲内であり得る。第2の二酸化塩素漂白中の温度は、60℃~90℃の範囲内であり得る。方法100は、図1で特に確認された操作以外の付加的操作を更に含み得る。例えば、パルプ化後プロセス104における操作のいずれかの後に、方法100は、パルプを洗浄することを含み得る。これは、例えば、キャリーオーバを除去して、パルプコンシステンシーなどを増加させるのに有用であり得る。
【0056】
例えば、洗浄操作は、パルプの酸素漂白後に、且つパルプの架橋前に、パルプコンシステンシーを増加させるために使用され得る。パルプの架橋後の洗浄操作は、キャリーオーバを減少させるか又は除去することができる。キャリーオーバの一例は、吸着性有機ハロゲン化物又はハロゲン化化合物であり、これは典型的には、AOXと表され、AOXレベルのAOX含有量として、通例、百万分率(ppm)で表現される。このような有機ハロゲンは、たとえ塩素元素を含まない無塩素漂白プロセスが使用されたとしても、パルプ生成中に様々な反応物及び添加剤によるか又はそれらと共に導入され得る。例えば、既に論じた架橋剤は、そのような有機ハロゲンの供給源であり得る。いくつかの架橋試薬は、それらのそれぞれの合成プロセスからの反応中間体を含有し得る。これらの反応中間体は、効果的な架橋剤ではないことが多く、パルプ繊維が架橋試薬に曝露される架橋プロセス中に中間体はパルプ繊維と共に存在し、それにより有機ハロゲンを架橋パルプに導入する。AOX含有量は、一般に、好適なセルロースエーテルを生成するパルプの能力に悪影響を与えるほど十分に高くはないけれども、加工からの廃水中のAOX及び他のキャリーオーバ物質に関する特定の取扱要件は費用を増大させることがある。したがって、架橋パルプ中のAOXレベル及び他のキャリーオーバ物質の含有量を、溶解グレードの市場パルプと通常は関連性があるレベルまでなどに減少させることが望ましいことであり得る。
【0057】
洗浄操作は、一般に水を用いて行われるが、任意の好適な洗浄試薬を使用してもよい。架橋パルプ中のAOX含有量は、より低温と比較して、より高温において水を用いて洗浄することによって、より効果的に減少し得る。理論に束縛されることは望まないが、これは、本明細書で論じられる架橋剤及びそれらの予期される中間体の水溶解度の低さに関連し、より高温における洗浄は、パルプからのそれらの除去及びそれらと関連性がある有機ハロゲンの除去を高めると考えられる。したがって、いくつかの方法は、残留架橋剤を除去するために、30℃~80℃の間の温度で、水で架橋パルプ繊維を洗浄することを含む。洗浄操作は、繊維の高エネルギー分散(例えば、Waringブレンド装置又は同様のミキサー中での崩壊)を任意選択で含むか又は伴ってもよく、これは、残留架橋剤とパルプ繊維の間の付加的な反応を促進し、架橋剤の存在と関連性があるAOX含有量もまた減少させると考えられる。このやり方で洗浄された架橋パルプは、このやり方で洗浄されていない架橋パルプと比較して、AOX含有量の著しい減少(例えば、90%まで、95%まで、又は97%までさえ)を呈し得る。いくつかの実施形態では、洗浄前のパルプは、1000ppmまで又はそれを超えるAOX含有量を呈し得、一方、洗浄後のパルプのAOX含有量は、200ppm以下、例えば、100ppm以下、50ppm以下、20ppm以下などであり得る。
【0058】
方法100で例示された実施形態における架橋は、酸素漂白後及び二酸化塩素漂白前に行われるけれども、他の実施形態では、架橋は以下に記載のパルプ化後プロセス104の対応する別の時点で行われ得る。漂白及び抽出操作はまた、他の実施形態では再配置されるか又は取り除かれてもよい。「X」が架橋操作と定義される場合、本技術のいくつかの実施形態によるパルプ化後方法は:非常に多くの他の好適な変形の中でも、O-X-D-E-D(図1)、O-D-X-E-D、O-D-E-X、O-D-E-X-D、O-D-E-D-X、D-X-E-D-E-D、D-E-X-D-E-D、D-E-D-X-E-D、D-E-D-E-X-D、D-E-D-E-D-X、D-X-E-E-D、D-E-X-E-D、D-E-E-X-D、又はD-E-E-D-Xと特徴付けられ得る。更に、架橋は、酸素漂白、二酸化塩素漂白、及び/又は抽出中に行われ得る。したがって、本技術の更にいくつかの実施形態によるパルプ化後方法は:非常に多くの他の好適な変形の中でも、O/X-D-E-D、O-D/X-E-D、O-D-E/X-D、O-D-E/X、O-D-E-D/X、D/X-E-D-E-D、D-E/X-D-E-D、D-E-D/X-E-D、D-E-D-E/X-D、D-E-D-E-D/X、D/X-E-E-D、D-E/X-E-D、D-E-E/X-D、D-E-E-D/Xと特徴付けられ得る。
【0059】
漂白プロセス104の後、方法100は、パルプを使用、販売、及び/又は輸送用に加工すること(ブロック134)を含み得る。例えば、パルプは、使用、販売、及び/又は輸送用に、更に洗浄、乾燥(例えば、フラッシュ乾燥)、圧縮、コンテナ詰めされ、且つ/又はそうでない場合は、パルプは好適な形態(例えば、シート、ベール、ロール、など)に加工され得る。パルプは、500~1200g/mの坪量及び/又は0.2~0.9g/cmの密度を有し得る。
【0060】
乾燥パルプの使用
木質材料の細胞壁構造の一般に受け入れられているモデルでは、セルロースのミクロフィブリルは、それらを取り囲んでいるリグニン-ヘミセルロースのマトリックスと共に、層状構造を形成している。リグニン-ヘミセルロースのマトリックス内及びミクロフィブリル間の層内空隙は、ミクロ細孔と呼ばれることもある小細孔の部分を形成している。化学パルプ化では、大部分のリグニン及びある程度のヘミセルロースが溶解し、マクロ細孔と呼ばれることもある比較的大きい細孔を形成している層間の空隙が残る。
【0061】
繊維細孔構造は、パルプが乾燥すると変化する。詳細には、乾燥プロセス中に水がパルプから除去されると、大部分の細孔は、部分的に又は完全に崩壊し、細孔容積の損失という結果をもたらす。その上、水素結合が細胞壁の間及びその内部に形成され、水素結合により、崩壊した細孔の多くがその状態で永続的に維持される。この現象は角質化として公知であり、パルプのWRVにおける不可逆的減少をもたらす傾向がある。言い換えれば、未乾燥パルプは、乾燥後のパルプと比較すると(たとえ乾燥パルプが次に再度湿ったとしても)、一般により高いWRVを持つ。
【0062】
パルプ乾燥時の水素結合の形成が、吸収体用途において有用である特定の強度及び可撓性特徴などのパルプのいくつかの特性を高める傾向があるけれども、乾燥パルプは、未乾燥パルプと比較して、一般に反応性が乏しいことが予期される。反応性の低減は、反応物の繊維構造への浸透を低減し且つ/又は遅らせる角質化による、細孔容積の損失に起因する。
【0063】
したがって、乾燥パルプ繊維は、架橋剤が浸透し且つ架橋を達成するのに十分な空間体積を持つことが予期されないため、乾燥パルプは本開示によるパルプを生成するのに好適な出発物質ではないことが予期されるであろう。しかしながら、乾燥クラフトパルプは、本開示によるパルプ、すなわち、高粘度水溶液を形成し且つ本明細書に記載される様々な特徴(例えば、WRV、輝度、R18、リグニン及びセルロース-II含有量、など)を持つセルロースエーテルを生成することができる架橋パルプを生成するのに好適な出発物質であることが見出された。
【0064】
乾燥パルプが出発物質として使用される手法は、従来のクラフト市場パルプが広く入手可能であり、且つ一般に安価であり、且つ未乾燥パルプより輸送が容易であるという点で、有利であり得る。その上、乾燥パルプの使用により、出発物質が製造される場所(又は時間)とは異なる設備で且つ/又は異なる時間に架橋が実施されるなどの、架橋プロセスがパルプ漂白プロセスと別に(関連する代わりに)行われることが可能になり得る。
【0065】
乾燥パルプが出発物質として使用される方法の例示としての実施例を、本技術の別の実施形態によるパルプを作製する方法200を例示するフローチャートである図2と関連して、以下に記載する。方法200の記載において惹起される多くの構想は、方法100に対して上記で詳細に論じられているため、方法200に関する考察は、たとえ考察が以下の説明と同一の詳細レベルで記載されていないとしても、本明細書の他の箇所で詳述されるものと同一の範囲を有することを意図するそのような構想の参照により理解され得るであろう。簡潔には、方法200は、既に漂白され且つ乾燥された化学木材パルプ繊維を含むパルプの水性懸濁液を用意する202において開始される。204では、方法は化学木材パルプ繊維を架橋することを含み、206では、方法は架橋後にパルプを乾燥することを含む。次に、パルプは、208において、使用、販売、又は輸送用に市場パルプとして加工される。
【0066】
方法200は、方法100と関連して記載されるように、乾燥且つ漂白された化学木材パルプ繊維は、クラフトパルププロセスにより生成され次に漂白された(架橋を伴わない)化学木材パルプ繊維であり得るという点で、クラフトプロセスを基準としているが、方法200に対応する方法は、任意の好適に乾燥且つ漂白された化学木材パルプ繊維を使用してもよい。202における水性懸濁液は、混合装置内で所望のコンシステンシーにおいて、パルプを水中でスラリー化することによるなどの任意の好適なやり方で生成され得る。
【0067】
いったんパルプの水性懸濁液が提供されると、方法200は、架橋剤を用いて化学木材パルプ繊維を架橋することを含み得る。方法100におけるように、これは、水性懸濁液に架橋剤(及び任意選択で触媒)を添加し、且つ架橋反応がパルプを更に加工する前に起きることを可能にすることを含み得る。架橋剤は、方法100に関して上述の、2個以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテル架橋剤であり、架橋の全て又は一部(例えば、時間により少なくとも50%)の間の水性懸濁液のコンシステンシーは、少なくとも12%(例えば、12%~30%の範囲内)又は少なくとも15%(例えば、15%~30%の範囲内)であり得る。架橋剤及び架橋工程の他の特徴は、方法100において上述のようであり得る。
【0068】
架橋後、方法200は、206においてパルプを乾燥することを含む。208では、方法は、使用、販売、及び/又は輸送用にパルプを加工することを含み得る。乾燥、圧縮、コンテナ詰め、などの様々なパルプ加工操作は、方法100に関して上述されている。
【0069】
また方法100と同様に、方法200も、図2で特に確認された操作以外の付加的操作を含み得る。例えば、方法200は、化学木材パルプ繊維の架橋後及びパルプの乾燥前などに、パルプを洗浄することを含み得る。これは、例えば、パルプのAOX含有量を減少させ且つ/又は残留架橋剤及び他の化学物質を除去することによりキャリーオーバを除去し、パルプコンシステンシーなどを増加させるのに有用であり得る。AOXの減少に関して、洗浄は、30℃~80℃の間の温度で、水を用いて、任意選択でパルプの高エネルギー分散と関連して行われ得る。
【0070】
パルプのブレンド
いくつかの実施形態では、架橋パルプは、すなわち、方法100及び/又は200によるなどの、本開示の態様により生成されたパルプは、乾燥される前に、別のパルプと組み合わせられる。本技術の少なくともいくつかの実施形態によるパルプは、生成物の粘度又は他の望ましい特性を損なうことなく、所与のセルロース誘導体生成物を生成するのに必要とされる高価な溶解グレードパルプの量を減少させるパルプ増量材としての使用によく適している。例えば、架橋パルプが、得られたブレンドパルプのセルロース炉乾燥重量で少なくとも20%(例えば、少なくとも30%)を構成するように、架橋パルプは、別のパルプ(例えば、炉乾燥重量で90%を超えるセルロース含有量を有する溶解グレードパルプ)とブレンドされ得る。他の実施形態では、架橋パルプは、別のパルプとブレンドされることなく使用され得る。
【0071】
架橋パルプ特性
本技術の実施形態によるパルプは、1つ又は複数の以下の特性を有し得る:
200ppm以下(例えば、100ppm、50ppm、及び/又は20ppm以下)のAOX含有量。
【0072】
500g/m以上及び/又は1200g/m以下の坪量。
75%以上(例えば、80%又は85%以上)及び/又は92%以下(例えば、88.5%以下)の輝度。例えば、輝度は80%~88%の範囲内であり得る。
【0073】
X線結晶解析により決定されたセルロース-II構造は僅か(例えば、少なくともセルロース-II構造は実質的にない)。
【0074】
80%以下(例えば、75%以下)の結晶化指数。
完全より少ないCuen溶解度(例えば、不溶性又は部分的にのみ可溶性)。
【0075】
0.20g/cm以上(例えば、0.50、0.55又は0.60g/cm以上)の密度。
【0076】
200cP以上(例えば、200、300、330、500、800、1,000、1,400、2,000、又は3,000cP以上)の落球式粘度。非常に高い架橋度では、本技術の少なくともいくつかの実施形態による架橋パルプの落球式粘度は低くあり得るが、これらのパルプに関して得られたCMC粘度は、依然として非常に高くあり得る。単に理論として且つそのような理論に束縛されることは望まないが、セルロースの分子構造は、高架橋度において、直鎖から高度の分岐に変化し得る。高度の分岐構造を有するセルロースは、低落球式粘度を有し得るが、依然として高グレードのエーテルを形成することができる。
【0077】
700mL以上の濾水度。
重量で6%以上(例えば、10%、13.5%、又は15.5%以上)及び/又は20%以下(例えば、18%、16%、又は14%以下)のヘミセルロース含有量。例えば、ヘミセルロース含有量は、重量で6%~20%の範囲内、7%~17%の範囲内、又は8~15%の範囲内であり得る。
【0078】
1,150mL/g以上(例えば、1,300、1,400、1,500、又は2,100mL/g以上)の固有粘度。
【0079】
1.0%以下(例えば、0.75%又は0.09%以下)のリグニン含有量。
4%以上(例えば、4%、5%、6%、又は7%以上)のマンナン含有量。例えば、マンナン含有量は、4%~8%の範囲内又は5%~7%の範囲内であり得る。
【0080】
88%以上(例えば、89%以上)及び/又は92%以下(例えば、91%又は90%以下)のR18。
【0081】
5以下(例えば、3以下)の得られたCMC色。
25ntu以下(例えば、5又は0.5ntu以下)の得られたCMC濁度。
【0082】
59cP以上(例えば、60、90、120、又は150cP以上)の得られたCMC粘度。
【0083】
20ppm以下の合計遷移金属含有量。鉄含有量は、5ppm以下であり得る。銅含有量は、2ppm以下であり得る。カルシウム含有量は、150ppm以下(例えば、60ppm以下)及び/又は30ppm以上(例えば、50又は70ppm以上)であり得る。遷移金属は、例えば、エーテル化プロセスにおけるセルロースの分解を加速し得るため、パルプ中で望ましくないことが多い。
【0084】
1.0g/g以上(例えば、1.1、1.2、又は1.3g/g以上)及び/又は1.4g/g以下の保水値。
【0085】
4%以上(例えば、5%、6%、又は7%以上)及び/又は16%以下のキシラン含有量。例えば、キシラン含有量は、4%~16%の範囲内、5%~8%の範囲内、又は6%~7%の範囲内であり得る。
【実施例
【0086】
以下に実験実施例を提供し、本開示のある特定の実施形態を例示する。記載された特定の特色に限定されない付加的実施形態は、以下の実験実施例と矛盾しないことを理解されたい。
【0087】
参照とする市販製品
9H4F:Ashland,Inc.からのAqualon 9H4F 高粘度(DS=0.95)CMC。
【0088】
NB416:Weyerhaeuser Company mill in New Bern、NCから入手した、マツ由来、フラフ-グレードのクラフト木材パルプ。
【0089】
NB421:Weyerhaeuser Company mill in New Bern、NCから入手した、マツ由来、エーテル-グレードのクラフト木材パルプ。
【0090】
PW416:Weyerhaeuser Company mill in Port Wentworth、GAから入手した、マツ由来、フラフ-グレードのクラフト木材パルプ。
【0091】
亜硫酸塩1及び亜硫酸塩2:Borregaard ChemCellからの、亜硫酸塩-加工、溶解-グレード、トウヒ-由来のパルプ。
【0092】
本明細書で参照されるWeyerhaeuserパルプは、一般にシート状(例えば、ロール若しくはベール)又は他の乾燥形態で販売されている。以下の実験実施例は、漂白プロセス又はそうでなければ乾燥前(圧縮部分からなど)の様々な時点から得られる試料などの、これらのパルプの未乾燥試料にも言及する。
【0093】
実験実施例1:エポキシド架橋パルプ
本実施例における架橋パルプの調製用の出発物質は、固形分38%(実験室遠心分離の後)の湿潤ラップとして抽出段階(EOP)から得られたPW416パルプであった。パルプを75℃まで予熱した。プラスチック袋中で、パルプの52.6グラムの未乾燥(20グラムのODに相当する)試料を、表1及び表2に示される種々のパルプコンシステンシーにおいて、温水(75℃)、種々の架橋剤、及びNaOH(pH11~13)と混合した。表1及び表2は、架橋パルプ試料及び対応するCMCの特性を列挙する。比較のために、EOP段階からの非架橋PW416パルプは、42cPの得られたCMC粘度を有することが見出された。
【0094】
以下のポリエポキシド架橋剤の試験を行った:CVC Thermosetからの、GE-30(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルポリマー(TMPTGE))及びGE-31(トリメチロールエタントリグリシジルエーテルポリマー)。Aldrichからの、グリセリンジグリシジルエーテル(GDE)。Nagase Chemitexからの、Denacol EX811及びEX810(両方ともエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE))、Denacol EX313(グリセリンポリグリシジルエーテル(GPE))、Denacol EX314(グリセリントリグリシジルエーテル(GTE))、及びEX612(ソルビトールポリグリシジルエーテル)。Momentiveからの、HELOXY modifier 505(ヒマシ油ポリグリシジルエーテル(M505))、HELOXY modifier 48(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、M48(TMPTGE))、HELOXY modifier 67(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、M67(BDDE))、及びHELOXY modifier 68(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、M68)。Dow Chemicalからの、D.E.R.736 Epoxy Resin(D736)、ポリプロピレングリコール、クロロメチルオキシランポリマー、他の供給元からの、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DEGDE)、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパノール(DCP)、GPE、BDDE、EGDE、及びTMPTGE。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示される結果は、ポリエポキシドD736(ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、DEGDE(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル)、EX612(ソルビトールポリグリシジルエーテル)、M505(ヒマシ油ポリグリシジルエーテル)、PEGDE(525のMnを有するポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル)は、高固有粘度を有するパルプを生成する架橋のための良い候補ではなかったことを示している。それらの分子は、2個のグリシジルエーテル官能基の間に5個以上の直鎖原子を有する。
【0097】
試験を行った、2個のグリシジルエーテル官能基の間に5個又は5個より多くの直鎖原子を有する架橋剤の中で、DEGDE及びPEGDEは水に高度に可溶性である。D736は、部分的に水溶性である。EX612及びM505は、水に僅かな溶解度を有する(NG)が、高分子量(>500)、エポキシド当たりの高重量(>175)及び/又は高粘度(>500cP)を有する。したがって、以下の特性を有する少なくともいくつかのポリエポキシドは、本技術の実施形態によるパルプを架橋するのに有用であり得る:500以下の分子量、175以下のエポキシド当たりの重量、500cP以下の粘度、及び2個のグリシジルエーテル官能基の間に5個より少ない直鎖炭素原子がある分子構造。
【0098】
その結果は、高い得られたCMC粘度を有する架橋パルプを生成するのによく適した架橋剤が、2個のグリシジルエーテル官能基の間に5個より少ない直鎖原子を有することも示していた。理論として且つ理論に束縛されることは望まないが、これらの架橋剤は、より長鎖を有する架橋剤より容易に、セルロース構造に浸透し得る。
【0099】
架橋剤が水に不溶性又は部分的にのみ可溶性であることは有利であり得る。不溶性又は部分的にのみ可溶性である架橋剤は、例えば、水に高度に可溶性である架橋剤より容易に、セルロース繊維と接触し且つ反応し得る。水溶解度が低いか又は全くないポリエポキシドは、より大きい水溶解度を有するポリエポキシドより良好な結果をもたらした。例えば、GPEは、EX314がより高い水溶解度を有するように改変されていることを除いて、EX314とほぼ同一の構造を有し;且つEGDEは、EX810がより高い水溶解度を有するように改変されていることを除いて、EX810と同一の構造を有する。表2は、GPE(水不溶性:Mn>204、<500)を、EOPパルプ(NB416又はPW416)と共に、種々のコンシステンシーにおいて使用した付加的な結果を示す。固有粘度(IV*)は、公知の固有粘度を有する市販試料を基準とするモデルから算出された。モデルに関する基礎データは、表2の下部に見出すことができる。得られたモデルは、IV=717.2ln(A)-1817.3(R=0.9988)であった。表2に示される結果は、架橋コンシステンシーが高くなるほど、より良好な結果が得られることを示している。
【0100】
【表2】
【0101】
実験実施例2:漂白されたEGDE架橋パルプ(O-D-E-X)
本実施例では、部分的に水溶性のエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)を架橋剤として使用した。本実施例における架橋パルプの調製用の出発物質は、固形分38.5%(実験室遠心分離の後)の湿潤ラップとして抽出段階から得られたPW416パルプであった。パルプの60グラム(OD)の試料を、水、EGDE、及びNaOHと混合して、EGDE及びNaOHの最終濃度はそれぞれ8.8%及び4.8%であり、最終パルプコンシステンシーは10%であった。パルプ混合物を数分間手動で混合し、濾過して、液体の半分を除去し、次に75℃で2時間反応させた。得られた架橋パルプの半分を完全に水洗浄し、次に747g/mの坪量及び0.53g/cmの密度を有するシートが作製された。シートは、79.3%の輝度及び約1,350cPの落球式粘度を有した。架橋パルプは、銅エチレンジアミンに100%可溶性ではなかった。パルプからのCMCは、86cPの0.5%溶液粘度を有した(表5の試料1A)。架橋パルプの残り半分(洗浄されていない)を、Hを用いて(乾燥パルプ重量で0.76%)、76℃で30分間漂白した(表5の試料1B)。このパルプを洗浄し、746g/mの坪量及び0.54g/cmの密度を有するシートが作製された。パルプシートは、82.3%の輝度及び1,270cPのFB粘度を有した。パルプからのCMCは、84cPの0.5%溶液粘度を有した。他の特性を表5に要約する。
【0102】
実験実施例3:漂白されたGTE架橋パルプ(O-D-E-X-D)
本実施例では、グリセリントリグリシジルエーテル(GTE)を架橋剤として使用した。本実施例における架橋パルプの調製用の出発物質は、固形分38.5%(実験室遠心分離の後)の湿潤ラップとして抽出段階(NB416 EOP)から得られたNB416パルプであった。パルプの60グラム(炉乾燥)の試料を、水、GTE及びNaOHと75℃で1時間、架橋のために混合した。次に架橋パルプを、漂白化学物質(ClO又はH)と75℃で45分間反応のために混合した。漂白された試料は、輝度(78%~86%)及びCMC粘度が増加した(表3)。
【0103】
【表3】
【0104】
実験実施例4:漂白されたEGDE架橋パルプ(O-D-E-D-X)
本実施例では、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)を架橋剤として再び使用した。本実施例における架橋パルプの調製用の出発物質は、固形分38.5%(実験室遠心分離の後)の湿潤ラップとして抽出段階から得られたNB416パルプであった。このパルプの60グラム(炉乾燥)の試料を、水、EGDE、及びNaOHと混合して、EGDE及びNaOHの濃度はそれぞれ11%及び5.4%であり、パルプは10%のコンシステンシーを有した。パルプ混合物を数分間手動で混合した。液体の半分を濾過して、パルプ中のEGDE及びNaOHの最終濃度はそれぞれ4.9%及び2.7%であり、パルプコンシステンシーは20%であった。次に混合物を80℃で2時間反応させた。得られた架橋パルプを完全に水洗浄し、65g/mの坪量及び0.65g/cmの密度を有するTAPPIハンドシートを作製した。シートは、87.8%の輝度及び2,710cPの落球式粘度を有した。パルプは、銅エチレンジアミンに完全に可溶性ではなかった。パルプからのCMCは、126cPの0.5%溶液粘度を有した(表5の試料2A)。湿潤架橋パルプの残り半分を、10%コンシステンシーにおいて、H(乾燥パルプ重量で1%)及び0.5%NaOH(乾燥パルプ重量で0.5%)を用いて、75℃で1時間処理した。漂白パルプを洗浄し、65g/mの坪量及び0.68g/cmの密度を有するTAPPIハンドシートを作製した。架橋パルプは、283cPの落球式粘度及び89.4%の輝度を有した。パルプからのCMCは、107cPの0.5%溶液粘度を有した(表5の試料2B)。
【0105】
実験実施例5:種々の温度における架橋効力
実験実施例4からの手順を繰り返して、EGDEを架橋剤として使用して試料を更に作製し、パルプ中のEGDE及びNaOHの最終濃度はそれぞれ約4.9%及び2.7%であった。パルプは、20%のコンシステンシーにおいて架橋された。架橋パルプを洗浄したが、漂白しなかった。架橋パルプの落球式粘度及びCMC特性を以下の表4に要約する(試料A1~A7)。全ての試料が銅エチレンジアミンに十分に可溶性というわけではなかった。多数の架橋パルプが、銅エチレンジアミンに溶解しなかった。
【0106】
【表4】
【0107】
表4に列挙された架橋パルプに関して、パルプFB粘度は、特に非常に高い架橋密度において、対応するCMC粘度の良好な指標ではなかった。非常に高い架橋密度において、架橋パルプが銅エチレンジアミンに完全には溶解しないため、架橋パルプは実際に低FB粘度を示した。しかしながら、これらの非常に架橋されたパルプからのCMC溶液粘度は非常に高く、CMC溶液は清澄であった。これらのパルプに関する固有粘度(IV)を表4に列挙する。架橋効力に対する温度衝撃は、試験を行った架橋剤に関して明瞭であった。他の架橋剤は、50℃~85℃などの他の最適な温度範囲を有し得る。
【0108】
比較のために、2種の市販の高粘度の溶解エーテルグレードパルプ(亜硫酸塩1及び亜硫酸塩2)並びに2種の市販のクラフトパルプ(PW416及びNB421)は、パルプの第1の架橋を伴わず、CMCが作製された。これらのパルプは、銅エチレンジアミンに可溶性であり、そのパルプFB粘度はそれらのCMC粘度の良好な指標であった。これらの市販の亜硫酸塩及びクラフトパルプからのCMC溶液は清澄であるが、溶液粘度は、特にクラフトパルプからのCMC溶液に関して、比較的低かった。表5中の試料1A及び1Bは、上記の実験実施例2に記載されている。表5中の試料2A及び2Bは、上記の実験実施例4に記載されている。表5に示されるデータに加えて、試料1BからのCMCは、0.2wt.%のリグニン含有量を有することが見出された。表5に示されるCMCデータと比較して、9H4Fは、0.12のCMC色、0.12ntuの0.013%CMC濁度、及び1.1ntuの0.67%CMC濁度を有することが見出された。
【0109】
【表5】
【0110】
実験実施例6:パルプのX線回折
X線回折走査を、高粘度の溶解木材パルプ、コットンリンターパルプ、市販のクラフトパルプ(NB421)、クラフトプロセスの抽出段階からのパルプ、及び本技術の実施形態による対応する架橋パルプに関して実施した。架橋パルプは、15°を超えるピーク及び21.5°~22.5°の間のピークを有し、出発材パルプと同一のセルロース-I結晶構造を有することが見出された。架橋パルプに関する主要ピークは、より高い回折角に僅かにシフトした(漂白パルプは21.5°~22.4°、抽出段階パルプは21.7°~22.2°)。セルロース-II結晶構造は、12.5°におけるピーク及び20°~21.5°の間のピークを有する。セルロース-Iに関して、22°及び18°の回折角におけるピークは、それぞれ、結晶及び非晶質のピークである。セルロース-IIに関して、19°及び15°の回折角におけるピークは、それぞれ、結晶及び非晶質のピークである。表6は、X線回折データを要約する。
【0111】
【表6】
【0112】
実験実施例7:架橋パルプの濾水度及び他の特性
クラフト1は、EGDE濃度が4.6%であり且つNaOH濃度が2.2%であったことを除いて、実験実施例2における試料1Aと同一の手順を使用して調製した。濾水度及び輝度に関して、架橋パルプの試験を行った。結果を表7に列挙する。架橋パルプは、出発材パルプと同様の輝度及び濾水度を有し、したがって同様の排水性を有した。
【0113】
【表7】
【0114】
架橋クラフトパルプからのCMCはまた、亜硫酸塩プロセス(亜硫酸塩2)又はクラフトプロセス(NB421)からの市販の非架橋エーテルグレードのパルプより、高い自由膨潤及び遠心分離容量も有した。
【0115】
実験実施例8:架橋パルプのWRV、湿潤嵩、及び他の特性
湿潤嵩及び他の特性に関して、より多くの架橋パルプ試料の試験を行った。本試験の結果を表8に示す。試験を行った試料は、その全容が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許出願公開第0399564号(試料1)及び米国特許第8,722,797号(試料2)に記載される試料を基準とした。試料1は、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパノール(DCP)架橋クラフトパルプである。試料2は、ポリカルボン酸架橋クラフトパルプである。
【0116】
クラフトAは、パルプコンシステンシーが16%でありEGDE濃度がパルプ乾燥重量に対して4.6%であり且つNaOH濃度が2.2%であったことを除いて、実験実施例2における試料1Aと同一の手順で調製した。クラフト1パルプの湿潤嵩及び容量は、試料1及び2のそれらより低く、通常のフラフパルプ(NB416)のそれらと同様であった。しかしながら、クラフト1パルプは、通常のフラフパルプ及び試料1の両方より、更に高いCMC溶液粘度を生じた。試料2は、比較的弱いエステル架橋の破壊に起因して、非架橋の対照パルプより低いR18を有した。クラフト1試料及び試料1は、エーテル架橋がR18試験プロセス中に比較的安定であったため、非架橋の対照パルプより高いR18を有した。試料1は過度に架橋され、したがって、セルロースエーテルを生成するのに不適であった。
【0117】
【表8】
【0118】
実験実施例9:加水分解された架橋パルプのHPLCスペクトル
実験実施例8からのクラフトAを、HPLC試験用に加水分解した。新規の糖ピークが見られ、試料中のセルロース繊維間の架橋を示していた。
【0119】
実験実施例10:架橋パルプ及びDCM抽出残渣中の金属
最終の架橋剤及びNaOHの濃度がそれぞれ4.7%及び2.6%であったことを除いて、付加的試料を実験実施例4の手順を使用して調製した。コンシステンシーは19%であり、温度は75℃であった。反応時間を表9に列挙する。パルプの洗浄後、金属含有量、落球式粘度、及び得られたCMC粘度の試験を行った。
【0120】
【表9】
【0121】
低カルシウム含有量及び低遷移金属含有量は、特定の最終使用にとって重要であり得る。架橋パルプからのDCM残渣もまた試験を行った。架橋パルプは、0.01%未満の抽出物を有することが見出された。架橋を伴わない通常の漂白パルプもまた、0.01%未満のDCM抽出物を有した。残渣に関するIRスペクトルは、架橋剤を何も示さなかった。
【0122】
実験実施例11:繊維形態
架橋パルプの走査電子顕微鏡分析は、早材のマツを示した。繊維分析は、架橋が繊維形態を変化させたことを示した。架橋パルプの粗度、カール指数、及びキンク指数は、架橋コンシステンシーにつれて増加した(表10)。より高い粗度、カール、及びキンクは、誘導体化反応中に繊維接近可能性を増加させるためなどに望ましいことであり得る。
【0123】
【表10】
【0124】
実験実施例12:架橋セルロースを調製するプロセス
PW416パルプを、固形分38%(実験室遠心分離の後)の湿潤ラップとして抽出段階から得た。このパルプの20グラムの(OD)試料を80℃まで予熱し、プラスチック袋中で、温水(80℃)、架橋剤、及びNaOHと混合し、架橋剤及びNaOHの最終濃度は、それぞれ2.0%及び2.3%であった。パルプコンシステンシーは、試料L、M及びNを生成するために10、15及び20%であった。全ての架橋混合物は、11を超えるpHを有した。架橋は2時間行われることが許容された。
【0125】
カウチトリムからのNB421パルプ(完全漂白、未乾燥)を、固形分32.8%の湿潤ラップとして得た。このパルプを使用して、試料O、P、及びQを調製した。試料L、M及びNに関する上述と同一の手順を使用して、試料O、P、及びQはそれぞれ10、15、及び20%の対応するコンシステンシーを有した。試料Rは、60℃の架橋温度を有した。これらの試料の特性を、工場生産からの対照パルプの特性と共に表11に示す。架橋は2時間行われることが許容された。0.67%CMC及び1.33%CMCの粘度を表11に示し、一方、本開示の他の箇所で、0.5%CMC粘度を提供する。
【0126】
【表11】
【0127】
特定の条件下(例えば、15~20%のパルプコンシステンシー)で、架橋クラフトパルプは、出発材パルプよりかなり高い(例えば、100%より大きく高い)落球式粘度を有し得る。これらの架橋クラフトパルプは、Cuenに100%可溶性ではなかった。しかし、驚いたことに、これらの架橋パルプは、清澄であり、且つ242cPの落球式粘度を有するNB421クラフトパルプから生成されるCMC溶液より、高い粘度を有する水溶性CMC溶液を生み出すことが見出された。架橋パルプは抽出を経ておらず、したがって、標準的クラフトパルプのように、高ヘミセルロース含有量及びセルロース-I結晶構造を有した。架橋され漂白されたクラフトパルプは、高輝度を有した。抽出段階からの架橋パルプもまた高輝度を有した。架橋は、高パルプコンシステンシー(例えば、11~30%)で、9~14のpHを用いて、且つ50~85℃の温度で実施されることが有利であり得る。
【0128】
実験実施例13:パルプ固有粘度及び得られたCMCの剪断速度
3種の対照パルプ(亜硫酸塩1、亜硫酸塩2、及びコットンリンター)、1つの市販パルプ(Ashland CompanyからのAqualon 9H4F)、及び2種の架橋クラフトパルプ(コンシステンシーが17%であることを除いて、表2におけるクラフト2として調製されたクラフトA及びクラフトB)を使用して、1%及び0.5%のCMC溶液を形成した。これらのパルプからのCMC溶液の、種々の剪断速度下における固有粘度を表12に示す。
【0129】
【表12】
【0130】
実験実施例14:洗浄手順及びAOX含有量
パルプのAOX含有量は、それが含有する吸着性有機ハロゲン化物(又はハロゲン化化合物)の量を示している。参照として、NB421(1460ml/gのSCAN IVを有する)の2つの異なる試料のAOX含有量は、それぞれ2.8及び5.3ppmであることが見出された。1760ml/gのSCAN IVを有する市販のコットンリンターパルプのAOX含有量は、4.6ppmであることが見出された。より高いAOXレベルが、本明細書に記載される架橋パルプ又はそれから生成された得られたCMCの所望の特性への何らかの有害作用と関連性があることは見出されなかったけれども、高純度パルプに通例見出されるAOX含有量より高いAOX含有量は、パルプ加工中に使用される水の処理及び取扱いにおける下流コストを表し得る。
【0131】
80gのOD繊維と同等の未乾燥繊維を含有し、200cPの落球式粘度、15%のヘミセルロース含有量、86%のISO輝度及び87.5%のR18含有量を有する未乾燥NB416クラフト木材パルプ(Weyerhaeuser Company)の試料を、プラスチック袋中で75℃まで加温した。パルプに、19%のパルプコンシステンシーを生み出すのに十分な、温水(75℃)、架橋剤(GTE)、及びNaOHの混合物を、それぞれ4.9%及び7.4%(パルプのOD重量を基準とする)のNaOH及びGTE用量で添加した。混合物を75℃で1時間炉中に置き、反応させた。
【0132】
架橋反応後、混合物をWaringブレンド装置中で分散させ、次に酢酸で中和し、洗浄し、次に冷水(約20℃)を用いて2回濾過して、湿潤パルプを得て、次にこれを空気乾燥させる前に遠心分離にかけた。
【0133】
架橋パルプのAOX含有量を32ppmであると決定した。パルプのR18値は92%であった。架橋パルプからのCMCを調製した。0.5%CMC溶液は、230cPの固有粘度を有することが見出された。
【0134】
Waringブレンド装置中で崩壊させる代わりに架橋パルプを中和及び洗浄の前に手動で撹拌したことを除いて、上記と同一の手順を繰り返した。この種々の洗浄操作を用いて生成された架橋パルプは、1050ppmのAOX含有量を呈した。
【0135】
最終パルプコンシステンシーが12%であり洗浄操作がWaringブレンド装置中での高エネルギー分散の代わりに手動の撹拌を含んだことを除いて、上記と同一の手順をもう一度繰り返した。このやり方で生成された架橋パルプは、724ppmのAOX含有量を呈した。
【0136】
実験実施例15:乾燥パルプの使用
200cPの落球式粘度、15%のヘミセルロース含有量、86%のISO輝度及び87.5%のR18含有量を有する乾燥NB416クラフト木材パルプ(Weyerhaeuser Company)の80gのOD試料を、プラスチック袋中で75℃まで加温した。パルプに、12.9%のパルプコンシステンシーを生み出すのに十分な、温水(75℃)、架橋剤(M67)、及びNaOHの混合物を、それぞれ5.0%及び7.5%(パルプのOD重量を基準とする)のNaOH及びM67用量で添加した。混合物を75℃で1時間炉中に置き、反応させた。
【0137】
架橋反応後、混合物を酢酸で中和し、洗浄し、次に温水(約50℃)を用いて2回濾過して、湿潤パルプを得て、次にこれを空気乾燥させる前に遠心分離にかけた。
【0138】
架橋パルプのAOX含有量を7.8ppmであると決定した。パルプのWRVは1.17g/gであり、且つパルプのR18値は91.3%であった。リグニン含有量は1%未満であることが見出され、パルプはセルロース-II構造が皆無であった。架橋パルプからのCMCを調製した。0.5%CMC溶液は、89cPの固有粘度及び1438ml/gの等価SCAN IVを有することが見出された。
【0139】
架橋パルプが100℃の温度で乾燥されたことを除いて、同一の手順を繰り返した。パルプのWRVは1.01g/gであり、且つ得られたCMC粘度は82cPであった。
【0140】
結論
本開示は、網羅的であることを意図するものではなく、又は本明細書に開示される正確な形態に本技術を限定することを意図するものではない。特定の実施形態は、例示的な目的で本明細書に開示されるけれども、当業者が認識するように、本技術から逸脱することなく様々な同等の改変が可能である。場合によっては、周知の構造及び機能は、本技術の実施形態の記載を不必要に不明瞭にすることを回避するために、示されず、且つ/又は詳細が記載されていない。方法の工程が、特定の順序で本明細書に提示され得るけれども、代替の実施形態では、工程は別の好適な順序を有してもよい。同様に、特定の実施形態の文脈において開示される本技術の特定の態様は、他の実施形態に組み合わせられるか又は削除されてもよい。更に、特定の実施形態と関連性がある利点は、それらの実施形態の文脈において開示され得る一方、他の実施形態もまたそのような利点を示してもよく、全ての実施形態が、そのような利点又は本明細書に開示される他の利点が本技術の範囲内にあることを、必ずしも示す必要はない。
【0141】
本開示の全体にわたり、単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、語「又は」が、2個以上の項目の列挙に関連する他の項目から排除される、単一の項目のみを意味すると明白に限定されない限り、そのような列挙における「又は」の使用は、(a)列挙される中の任意の単一の項目、(b)列挙される中の全ての項目、又は(c)列挙される中の項目の任意の組合せを含むと解釈されるべきである。加えて、「含む(comprising)」などの用語は、本開示の全体にわたり、少なくとも記載された特色を含むことを意味して使用され、任意のより多くの同一の特色及び/又は1つ若しくは複数の付加的な種類の特色は除外されない。このような用語は、絶対的な状況判断を示すものではないことを理解されたい。「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、又は同様の設計に対する本明細書での言及は、実施形態と関連して記載される特定の特色、構造、操作、又は特徴が、本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書におけるそのような語句又は明確な表現の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を示しているわけではない。更に、様々な特定の特色、構造、操作、又は特徴は、本技術の1つ又は複数の実施形態において任意の好適なやり方で組み合わせられてもよい。
図1
図2