(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】通気部材とこれを用いた通気筐体及び通気容器
(51)【国際特許分類】
F16K 15/16 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
F16K15/16 A
(21)【出願番号】P 2018557581
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2017038726
(87)【国際公開番号】W WO2018116630
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-04-16
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】木上 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】古山 了
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠一
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-324086(JP,A)
【文献】特開昭63-152551(JP,A)
【文献】特開平07-291306(JP,A)
【文献】特開平05-112375(JP,A)
【文献】特開2014-076858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口に固定された状態で、前記開口を通過する気体が透過する防水防塵通気膜と、
前記通気膜の通気領域を覆うように配置された弁フィルムと、を備え、
前記通気膜と前記弁フィルムとは、前記通気膜の周縁部
に位置する領域の周方向の一部
である単一の接合部において、直接、又は中間部材を介して、互いに接合されており、
前記弁フィルムの前記通気膜と接合していない領域は、前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する気体の圧力によって前記通気膜から離間する方向に可逆的な変形が可能であり、
前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する前記気体は、前記通気膜と、前記離間する方向に変形している弁フィルムとの間を通って、前記通気膜の前記弁フィルムと接合されていない周縁部の方向に排出され
、
前記弁フィルムは、少なくとも前記通気膜の前記通気領域を覆う形状を有する、通気部材。
【請求項2】
前記通気膜及び前記弁フィルムの形状及び面積が同一である請求項1に記載の通気部材。
【請求項3】
前記通気膜及び/又は前記弁フィルムの形状が円、楕円、又は多角形である請求項1に記載の通気部材。
【請求項4】
前記通気膜が、前記周縁部に位置する領域にお
いて前記弁フィルムと接合している
前記単一の接合部である第1の部分と、当該領域における前記弁フィルムと接合していない第2の部分と、を有し、前記通気膜の通気領域が、前記通気膜の主面に垂直な方向から見て、前
記第1の部分と、前
記第1の部分の2つの端
部の間を結
ぶ線分と、によって囲まれている請求項
1に記載の通気部材。
【請求項5】
前記通気膜が、前記周縁部に位置する領域にお
いて前記弁フィルムと接合している
前記単一の接合部である第1の部分と、当該領域における前記弁フィルムと接合していない第2の部分と、を有し、前記弁フィルムが、前記弁フィルムの主面に垂直な方向から見て、前
記第1の部分の2つの端
部の間を結ぶ線分に対して外方に突出した部分を有する請求項
1に記載の通気部材。
【請求項6】
前記弁フィルムが、前記通気膜側の面に微粘着層を有する請求項1に記載の通気部材。
【請求項7】
前記微粘着層が、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤から構成される請求項
6に記載の通気部材。
【請求項8】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する23℃での前記微粘着層の粘着力が、0.2N/20mm以下である請求項
6に記載の通気部材。
【請求項9】
前記通気膜と前記弁フィルムとが、両面テープによって直接接合されている請求項1に記載の通気部材。
【請求項10】
前記中間部材が、膜厚方向に通気性を有さないフィルムである請求項1に記載の通気部材。
【請求項11】
前記通気膜における前記弁フィルムが接合された面とは反対側の面の周縁部に、前記通気部材を前記開口に固定する固定部をさらに備える請求項1に記載の通気部材。
【請求項12】
前記固定部が両面テープにより構成される請求項
11に記載の通気部材。
【請求項13】
前記弁フィルムの側から前記通気膜の方向へのガーレー数が10秒/100mL以上である請求項1に記載の通気部材。
【請求項14】
前記弁フィルムの側から前記通気膜の方向へのガーレー数に対する、前記通気膜の側から前記弁フィルムの方向へのガーレー数の比が10以上である請求項1に記載の通気部材。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれかに記載の通気部材が筐体の開口に固定されており、
前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記筐体の外部に面し、前記通気膜の側が前記筐体の内部に面するように、前記開口に固定されている通気筐体。
【請求項16】
請求項1~
14のいずれかに記載の通気部材が容器の開口に固定されており、
前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記容器の外部に面し、前記通気膜の側が前記容器の内部に面するように、前記開口に固定されている通気容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の筐体及び容器等に固定できる通気部材であって、その使用によって筐体及び容器の内部と外部との間で非対称の通気性を確保できるとともに、防水防塵通気膜を備え、当該通気膜による機能を享受できる通気部材と、この通気部材を用いた通気筐体及び通気容器とに関する。
【背景技術】
【0002】
ランプ、圧力センサー、ECU(Electronic Control Unit)等の車両用電装部品及び各種電気製品の筐体に、防水・防塵機能を有する通気膜(防水防塵通気膜)を備える通気部材が取り付けられることがある。通気部材の取り付けによって、筐体の外部と内部との間の通気経路が確保され、温度変化に伴う筐体内部の圧力変動を緩和したり、筐体の内部で発生したガスを外部に放出したりできる。また、防水防塵通気膜によって、当該通気経路を介した筐体の外部から内部への水及び/又は塵芥等の異物の侵入を防ぐことができる。
【0003】
食品等の容器にも通気部材が取り付けられることがある。通気部材の取り付けによって、容器の外部と内部との間の通気経路が確保され、温度変化に伴う容器内部の圧力変動を緩和したり、容器の内部で発生したガスを外部に放出したりできる。
【0004】
対称的な通気性を有する通気部材では、例えば筐体に取り付けたときに、筐体の内部から外部への当該部材の通気度と、外部から内部への当該部材の通気度とは同一である。しかし、非対称の通気性を有する通気部材、例えば筐体に取り付けたときに、筐体の内部から外部への当該部材の通気度と、外部から内部への当該部材の通気度とが異なる通気部材が知られており、その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、非対称の通気性を有する通気部材のニーズが拡大している。
【0007】
一例として、ランプ等の電装部品の筐体に取り付ける通気部材について、筐体に取り付けたときに筐体の外部から内部への当該部材の通気度に比して内部から外部への通気度が大きい通気部材のニーズがある。このような通気部材の採用により、例えば、ランプ点灯に伴う温度上昇による筐体内部の圧力上昇を速やかに緩和するとともに、外部から内部への水蒸気の侵入が抑制され、消灯後の温度低下による筐体内部での結露発生の抑制が期待される。
【0008】
別の一例として、食品等の容器に取り付ける通気部材について、容器に取り付けたときに容器の外部から内部への当該部材の通気度をできるだけ小さくしながら、内部から外部への通気度を大きくした通気部材のニーズがある。このような通気部材の採用により、例えば、容器の内容物である食品から生じたガスを速やかに容器の外部へ排出できる一方で、容器の外部から内部への空気(酸素)の侵入が抑制されることで、容器内の食品の品質の保持が期待される。
【0009】
本発明の目的の一つは、防水防塵通気膜を備えた、非対称の通気性を有する通気部材であって、従来にない新規な構成を有する通気部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の通気部材は、開口に固定された状態で、前記開口を通過する気体が透過する防水防塵通気膜と;前記通気膜の通気領域を覆うように配置された弁フィルムと;を備える。前記通気膜と前記弁フィルムとは、前記通気膜の周縁部の一部において、直接、又は中間部材を介して、互いに接合されている。前記弁フィルムの前記通気膜と接合していない領域は、前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する気体の圧力によって前記通気膜から離間する方向に可逆的な変形が可能である。前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する前記気体は、前記通気膜と、前記離間する方向に変形している弁フィルムとの間を通って、前記通気膜の前記弁フィルムと接合されていない周縁部の方向に排出される。
【0011】
本発明の通気筐体では、上記本発明の通気部材が筐体の開口に固定されており、前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記筐体の外部に面し、前記通気膜の側が前記筐体の内部に面するように、前記開口に固定されている。
【0012】
本発明の通気容器では、上記本発明の通気部材が容器の開口に固定されており、前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記容器の外部に面し、前記通気膜の側が前記容器の内部に面するように、前記開口に固定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防水防塵通気膜を備えた非対称の通気性を有する通気部材であって、従来にない新規な構成を有する通気部材が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、本発明の通気部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の通気部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の通気部材の一例における弁フィルムの変形を説明するための模式図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の通気部材の一例における弁フィルムの変形を説明するための模式図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の通気部材の一例における、防水防塵通気膜を弁フィルムの側から透過しようとする気体Bの圧力が加わった状態を説明するための模式図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の通気部材の一例における、防水防塵通気膜を弁フィルムの方向へ透過しようとする気体Aの圧力が加わった状態及び当該状態における気体Aの通気経路を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の通気部材の一例における接合部を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の通気部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の通気部材の一例における弁フィルムの自由端部を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の通気部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の通気部材の一例における接合部と固定部との関係を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の通気部材の開口への固定状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の通気容器の一例を示す模式図である。
【
図18】
図18は、本発明の通気筐体の一例を示す模式図である。
【
図19】
図19は、実施例4において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図20A】
図20Aは、比較例1において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図20B】
図20Bは、比較例1において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図21A】
図21Aは、比較例2において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図21B】
図21Bは、比較例2において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図22】
図22は、実施例1において作製した通気部材における、当該部材に加わる差圧と当該部材を単位時間あたりに透過する気体の量との関係を示す図である。
【
図23A】
図23Aは、実施例13において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図23B】
図23Bは、実施例13において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図24A】
図24Aは、比較例4において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図24B】
図24Bは、比較例4において作製した通気部材を説明するための模式図である。
【
図25】
図25は、通気部材の特性を評価する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の第1態様の通気部材は、開口に固定された状態で、前記開口を通過する気体が透過する防水防塵通気膜と、前記通気膜の通気領域を覆うように配置された弁フィルムと、を備え、前記通気膜と前記弁フィルムとは、前記通気膜の周縁部の一部において、直接、又は中間部材を介して、互いに接合されており、前記弁フィルムの前記通気膜と接合していない領域は、前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する気体の圧力によって前記通気膜から離間する方向に可逆的な変形が可能であり、前記通気膜を前記弁フィルムの方向へ透過する前記気体は、前記通気膜と、前記離間する方向に変形している弁フィルムとの間を通って、前記通気膜の前記弁フィルムと接合されていない周縁部の方向に排出される通気部材である。
【0016】
本開示の第2態様の通気部材では、第1態様の通気部材において、前記通気膜及び前記弁フィルムの形状及び面積が同一である。
【0017】
本開示の第3態様の通気部材では、第1又は第2態様の通気部材において、前記通気膜及び/又は前記弁フィルムの形状が円、楕円、又は多角形である。
【0018】
本開示の第4態様の通気部材では、第1から第3のいずれかの態様の通気部材において、前記通気膜と前記弁フィルムとが、前記通気膜の周縁部に位置する領域の周方向の一部において互いに接合されている。
【0019】
本開示の第5態様の通気部材では、第4態様の通気部材において、前記通気膜が、前記周縁部に位置する領域における前記弁フィルムと接合している少なくとも1つの第1の部分と、当該領域における前記弁フィルムと接合していない第2の部分と、を有し、前記通気膜の通気領域が、前記通気膜の主面に垂直な方向から見て、前記少なくとも1つの第1の部分と、前記少なくとも1つの第1の部分の2つの端部であって、前記第2の部分を挟んで前記周方向に沿って隣接する前記2つの端部の間を結ぶ少なくとも1つの線分と、によって囲まれている。
【0020】
本開示の第6態様の通気部材では、第4又は第5態様の通気部材において、前記通気膜が、前記周縁部に位置する領域における前記弁フィルムと接合している少なくとも1つの第1の部分と、当該領域における前記弁フィルムと接合していない第2の部分と、を有し、前記弁フィルムが、前記弁フィルムの主面に垂直な方向から見て、前記少なくとも1つの第1の部分の2つの端部であって、前記第2の部分を挟んで前記周方向に沿って隣接する前記2つの端部の間を結ぶ線分に対して外方に突出した部分を有する。
【0021】
本開示の第7態様の通気部材では、第1から第6のいずれかの態様の通気部材において、前記弁フィルムが、前記通気膜側の面に微粘着層を有する。
【0022】
本開示の第8態様の通気部材では、第7態様の通気部材において、前記微粘着層が、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤から構成される。
【0023】
本開示の第9態様の通気部材では、第7又は第8態様の通気部材において、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する23℃での前記微粘着層の粘着力が、0.2N/20mm以下である。
【0024】
本開示の第10態様の通気部材では、第1から第9のいずれかの態様の通気部材において、前記通気膜と前記弁フィルムとが両面テープによって直接接合されている。
【0025】
本開示の第11態様の通気部材では、第1から第10のいずれかの態様の通気部材において、前記中間部材が、膜厚方向に通気性を有さないフィルムである。
【0026】
本開示の第12態様の通気部材では、第1から第11のいずれかの態様の通気部材において、前記通気膜における前記弁フィルムが接合された面とは反対側の面の周縁部に、前記通気部材を前記開口に固定する固定部をさらに備える。
【0027】
本開示の第13態様の通気部材では、第12態様の通気部材において、前記固定部が両面テープにより構成される。
【0028】
本開示の第14態様の通気部材では、第1から第13のいずれかの態様の通気部材において、前記弁フィルムの側から前記通気膜の方向へのガーレー数が10秒/100mL以上である。
【0029】
本開示の第15態様の通気部材では、第1から第14のいずれかの態様の通気部材において、前記弁フィルムの側から前記通気膜の方向へのガーレー数に対する、前記通気膜の側から前記弁フィルムの方向へのガーレー数の比が10以上である。
【0030】
本開示の第16態様の通気筐体では、第1から第15のいずれかの態様の通気部材が筐体の開口に固定されており、前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記筐体の外部に面し、前記通気膜の側が前記筐体の内部に面するように、前記開口に固定されている。
【0031】
本開示の第17態様の通気容器では、第1から第15のいずれかの態様の通気部材が容器の開口に固定されており、前記通気部材は、前記弁フィルムの側が前記容器の外部に面し、前記通気膜の側が前記容器の内部に面するように、前記開口に固定されている。
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下は本発明の通気部材の一例に関する説明であり、本発明はこの例が示す範囲に限定されない。
【0033】
(実施形態1)
図1A及び
図1Bに示す通気部材1は、防水防塵通気膜(以下、単に「通気膜」ともいう)2と、通気膜2を覆うように配置された弁フィルム3とを備えている。通気膜2と弁フィルム3とは、通気膜2の周縁部の一部に位置する接合部4において互いに接合されている。通気膜2及び弁フィルム3の形状は円である。なお、
図1Bには、通気膜2の側から見た通気部材1が示されており、
図1Aには、
図1Bに示す断面I-Iが示されている。
【0034】
図2A及び
図2Bに示すように、通気部材1において、弁フィルム3の通気膜2と接合していない領域は、通気膜2を弁フィルム3の方向へ透過する気体Aの圧力によって通気膜2から離間する方向に可逆的な変形が可能である。
【0035】
図3Aに示すように、通気部材1では、弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気は、通気膜2の主面を覆う弁フィルム3により阻害される。このため、通気部材1における弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気度は、相対的に小さくなる。
図1Aに示すように、弁フィルム3の通気膜2と接合していない領域が通気部材1の非通気時に通気膜2と接した状態にある、或いは、通気膜2を弁フィルム3の側から透過しようとする気体Bの圧力(当該方向への通気の圧力)が加わったときに通気膜2と接した状態に変化する場合には、弁フィルム3による当該通気の阻害がより確実となり、通気部材1における弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気度はより小さくなる。
【0036】
一方、
図3Bに示すように、通気部材1では、通気膜2を弁フィルム3の方向へ透過する気体Aは、通気膜2と、上記離間する方向に変形している弁フィルム3との間を通って、通気膜2の弁フィルム3と接合されていない周縁部の方向に排出される(通気経路8)。より具体的に、通気膜2を透過した気体Aは、
図2A及び
図2Bにも示す、通気膜2の弁フィルム3と接合されていない周縁部5と上記離間する方向に変形している弁フィルム3の自由端部6との間の間隙7を、通気膜2の周縁部の方向に排出される。弁フィルム3と通気膜2とが接合部4において接合されていることは
図3Aに示す状態と変わらないが、通気経路8を有する
図3Bに示す状態では、弁フィルム3による通気の阻害の程度が
図3Aに示す状態よりも緩和される。このため、通気部材1における通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気度は、相対的に大きくなる。
【0037】
図3Bに示すように、通気部材1では、通気膜2の主面に垂直な方向とは異なる方向に気体Aが排出される。より具体的に、通気部材1の側方、一例として通気膜2の主面に沿う方向、に気体Aが排出されうるし、通気部材1を固定する開口の通気軸から傾いた方向に気体Aが排出されうる。
【0038】
弁フィルム3の上記可逆的な変形により、通気部材1は、
図3Aに示す状態と
図3Bに示す状態とを交互にとりうる。
【0039】
通気部材1が通気方向に応じて
図3Aに示す状態と
図3Bに示す状態とをとることは、通気部材1が非対称の通気性を有する通気部材であることを、即ち、通気方向により通気度が異なる通気部材であることを、意味する。
【0040】
通気部材1では、この非対称性を大きくできる。即ち、通気方向により異なる2つの通気度のうち、相対的に小さな通気度と相対的に大きな通気度との比を大きくできる。より具体的に、弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気度と、通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気度との比を大きくできる。これは、弁フィルム3が通気膜2の通気領域を覆うように配置されていること、通気膜2と弁フィルム3とが通気膜2の周縁部の一部において互いに接合されていること、通気膜2を弁フィルム3の方向へ透過する気体Aの圧力によって上述した弁フィルム3の変形が生じること、通気経路8により気体Aが排出されること、に基づく。
【0041】
図1A及び
図1Bに示す本実施形態の通気部材において、弁フィルム3の通気膜2と接合していない領域は通気部材1の非通気時に通気膜2と接した状態にある。本発明の通気部材はこのような状態をとる部材に限定されず、例えば
図1Cに示すように、弁フィルム3による上述した非対称の通気性が実現する限り、当該領域は通気部材1の非通気時に通気膜2から離れていてもよい。通気部材1の「非通気時」は、通気膜2を弁フィルム3の方向へ透過する気体Aの圧力、及び通気膜2を弁フィルム3の側から透過しようとする気体Bの圧力のいずれも通気部材1に加わっていない状態(定常状態)を意味する。
【0042】
通気膜2と弁フィルム3との接合部4の形状は、通気膜2と弁フィルム3とが通気膜2の周縁部の一部において互いに接合されている限り、限定されない。本実施形態の通気部材1では、
図4に示すように、通気膜2と弁フィルム3とが、通気膜2の周縁部に位置する領域である、リング状の領域9の周方向の一部において互いに接合されている。即ち、本実施形態の通気部材1の接合部4は、通気膜2の周縁部に位置するリング状の領域9の周方向の一部に対応する。なお、各図に示す本実施形態の通気部材1では、通気膜2と弁フィルム3とは通気膜2の周縁部の一部のみにおいて互いに接合されている。
【0043】
通気部材1では、通気膜2の周縁部の一部に位置する接合部4の形状により、例えば、通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気度、及び、弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気度と、通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気度との比を制御でき、また、その制御の自由度を大きくすることも可能である。例えば、通気膜2を弁フィルム3の側から透過しようとする気体Bの圧力に対する通気度の依存性が小さく、より具体的な例として、当該圧力に依らず弁フィルム3の側から通気膜2の方向への低い通気度、場合によってはゼロに近い通気度を示す一方で、通気膜2を弁フィルム3の方向へ透過する気体Aの圧力に対する通気度の感度が高く、より具体的な例として、小さい当該圧力に対しても通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気度の増加を示す通気部材1とすることも可能である。
【0044】
また、接合部4の形状により、例えば、気体Aの圧力によって通気膜2から離間する方向に変形した弁フィルム3の戻り性を制御できる。戻り性は、気体Aの圧力が減じたとき(例えばゼロとなったとき)又は通気部材1が定常状態となったときに、弁フィルム3が変形前の状態に戻ろうとする復元性である。
【0045】
さらに、接合部4の形状により、例えば、通気部材1が定常状態であるときに、上述した通気とは異なる現象である、通気膜2と弁フィルム3との間の僅かな空隙を介した通気部材1の通気膜2側の面と弁フィルム3側の面との間の気体の透過量、例えば酸素の透過量、を制御できる。より具体的な例として、接合部4の形状により、弁フィルム3における通気膜2と接合していない領域が通気部材1の非通気時に通気膜2と接する状態(接する領域の形状、面積、及び面積比等)を制御し、これにより、気体の透過量を制御できる。制御の一例は、定常状態における気体の透過量の抑制である。
【0046】
接合部4において通気膜2と弁フィルム3とは、例えば、加熱溶着及び超音波溶着等の溶着、接着剤若しくは粘着剤による接着、又は両面テープ等の接合部材によって接合されうる。両面テープによる接合は簡便かつ確実であり、通気膜2と弁フィルム3とが両面テープによって接合されている場合、耐久性に優れる通気部材1を生産性よく製造できる。通気膜2と弁フィルム3とが両面テープ10により接合されている本実施形態の通気部材1を
図5に示す。両面テープ10の厚さは小さい方が好ましい。
【0047】
通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気時における弁フィルム3の変形の具体的な態様は限定されない。本実施形態の通気部材1では、弁フィルム3における通気膜2と接合していない領域が、通気膜2との接合部4(例えば両面テープ10)を支点として、通気膜2から離間する方向に反るように変形している。
【0048】
このような弁フィルム3の変形では、
図6に示す、弁フィルム3の端部における周方向の領域Cが、弁フィルムの変形した領域の自由端部6となりうる。即ち、本実施形態の通気部材1では、このような幅を持った領域Cの全域を通気経路8が通過しうる。このことも、上記制御の自由度の向上に寄与する。
【0049】
通気膜2は、少なくとも一部の領域において、膜厚方向に通気性を有する膜である。通気膜2の全領域が膜厚方向に通気性を有していてもよい。また、通気膜2は、防水性及び防塵性を有する膜であり、例えば、JIS L1092の規定に準拠して測定した耐水圧が1kPa以上の通気膜である。通気膜の耐水圧は、2kPa以上、3kPa以上でありうる。また、このような耐水圧を有する通気膜は、通常、防塵性を有する。耐水圧の測定方法は、具体的に次のとおりである。
【0050】
直径2mmの開口を中心に設けた直径47mmのステンレス製円板(耐水圧測定時に変形しない厚さを有する)を準備する。次に、円板の一方の面に、測定対象である通気膜を、上記開口を覆うように固定する。通気膜は、通気膜の中心と開口の中心とが一致するように両面テープにより固定する。固定は、耐水圧の測定時に円板と通気膜との固定部分から水が漏れないように行う。次に、通気膜を固定している円板を試験片として、JIS L1092に記載のA法(低水圧法)又はB法(高水圧法)に従って通気膜の耐水圧を測定する。なお、水圧は、通気膜を固定している面とは反対側の面から試験片に印加する。試験装置には、上記試験片の耐水圧を測定可能な構造(試験片取付構造)を有する以外は、JIS L1092に例示されている試験装置と同様の構成を持つ装置を使用できる。
【0051】
通気膜2は、例えば、膜厚方向に複数の貫通孔を有するポリエチレンテレフタレート(PET)膜、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の延伸多孔質膜である。上記PET膜は、例えば、レーザー等による孔開け加工、又はイオンビーム照射及びその後の化学エッチング処理等による上記貫通孔の形成をPET膜、例えば無孔のPET膜、に実施して形成できる。PTFE延伸多孔質膜は、典型的には、PTFEの無数の微細なフィブリルと当該フィブリル間の無数の細孔とを有する多孔質膜であり、例えば、特公昭42-13560号公報に記載の方法により形成できる。
【0052】
防水防塵通気膜である通気膜2によって、通気部材1では、当該部材を介した液体及び固体の移動を防ぐことができる。通気部材1は、防塵及び/又は防水の通気部材でありうる。このような特性を有する通気部材1は、電装部品及び電気製品等の筐体への使用により、例えば、上述した非対称の通気性による効果を得ながら、さらに、筐体の内部への塵芥及び/又は水等の異物の侵入を抑制できる。また、食品等の容器への使用により、例えば、上述した非対称の通気性による効果を得ながら、さらに、容器内部への塵芥及び又は水等の異物の侵入を抑制できるとともに、内容物に含まれる液体及び/又は固体の当該通気部材1を介した容器外部への漏出を抑制できる。
【0053】
液体の移動をより確実に防ぐ観点からは、通気膜2には撥水処理、撥油処理等の撥液処理がなされていてもよい。これら処理の方法は限定されず、公知の方法を適用できる。
【0054】
通気膜2は透明でありうる。通気膜2が透明である場合、例えば、通気部材1を固定する容器の表面に施された印刷等を通気部材1を通して視認可能となる。この効果を得るためには、上記変形が可能である弁フィルム3は必ずしも透明でなくてもよい。ただし、弁フィルム3も併せて透明でありうる。通気膜2に着色及び/又は印刷が施されていてもよい。
【0055】
通気膜2の厚さは、例えば、10~500μmである。
【0056】
通気膜2の通気領域は、通気部材1に組み込まれた状態で当該膜2の膜厚方向に通気が可能な領域である。例えば、弁フィルム3と接合された領域(接合部4)、及び両面テープ10等の通気性を有さない部材が配置された領域は通気領域に含まれない。
【0057】
通気膜2に補強層が積層されていてもよく、補強層の積層によって通気膜2の強度を向上でき、その効果は、通気膜2の厚さが小さいときほど大きくなる。補強層の材料及び構造は限定されないが、通気膜2よりも通気性に優れる補強層が好ましい。補強層は、例えば、樹脂又は金属からなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、発泡体、多孔質膜である。補強層は、通気膜2と接合されていてもよく、接合は、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着等の手法により実施できる。通気膜2は、補強層を有さない単膜でありうる。
【0058】
弁フィルム3は、上述した変形が可能なフィルムであればよい。
【0059】
弁フィルム3は、膜厚方向の通気性を有さないフィルムである。弁フィルム3は、膜厚方向に貫通し、気体の通気経路となりうる貫通孔及び/又はスリットを有さないフィルムでありうるし、非多孔質の無孔のフィルムでありうる。
【0060】
弁フィルム3は、例えば高分子フィルムであり、より具体的な例は無孔のPETフィルムである。
【0061】
弁フィルム3は、少なくとも通気膜2の通気領域を覆う形状を有する。弁フィルム3は、通気膜2の全領域を覆う形状を有していてもよい。
【0062】
弁フィルム3は透明でありうる。弁フィルム3が透明である場合、例えば、弁フィルム3を通して通気膜2の状態を視認できる。通気膜2もさらに透明である場合、例えば、通気部材1を固定する容器の表面に施された印刷等を通気部材1を通して視認可能となる。弁フィルム3に着色及び/又は印刷が施されていてもよい。
【0063】
弁フィルム3の厚さは、例えば、10~500μmであり、好ましくは25~100μmである。
【0064】
本実施形態の通気部材1では、通気膜2及び弁フィルム3の形状は、ともに円(各膜・フィルムの主面に垂直な方向から見て円)である。また、当該通気部材1では、通気膜2及び弁フィルム3の形状及び面積(各膜・フィルムの主面に垂直な方向から見た形状及び面積)が同一である。形状及び面積が同一である通気膜2及び弁フィルム3を備える通気部材1は、耐久性が高く、生産性にも優れる。
【0065】
通気膜2及び弁フィルム3の形状が円である場合、
図6に示す領域Cが通気膜2の中心から等距離にあるため、上記通気度及び通気度の比の制御の自由度がより向上する。なお、円には略円が含まれる。
【0066】
本発明の効果が得られる限り、通気膜2及び弁フィルム3の形状は限定されない。通気膜2及び/又は弁フィルム3の形状は、楕円であってもよい。楕円には、略楕円が含まれる。通気膜2及び/又は弁フィルム3の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。多角形の角は丸められていてもよい。角を丸めることによって、取り扱い性が向上する、柔らかい容器等への取り付け時に尖った角によって容器が損傷することを防ぐことができる等のメリットがある。実施形態2以降では、通気膜2及び弁フィルム3の形状が四角形である形態について、例示する。
【0067】
通気部材1は、通気膜2及び弁フィルム3、並びに必要に応じて両面テープ10というフィルム状の部材のみからなる積層構造を有しうる。このため、通気部材1の厚さ(通気膜2及び弁フィルム3の膜厚方向の厚さ)を小さくすることができ、当該厚さは、例えば1mm以下であり、100μm以下とすることもできる。また、上記積層構造を有する通気部材1は、例えばロールtoロールによる生産も可能である等、生産性が高い。さらに、この通気部材では、フィルム状の部材のみからなる従来の通気部材において封止機能を確保するために必要であった、オイル等の封止剤の使用を省略可能である。封止剤の使用の省略により、例えば、食品の包装容器に通気部材を使用した場合における食品への封止剤の付着を防止できる。
【0068】
通気部材1における弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気度は、透気抵抗度(ガーレー数)で表示して、例えば10秒/100mL以上であり、50秒/100mL以上とすることもできる。ガーレー数は、JIS P8117の規定に準拠して評価できる。
【0069】
通気部材1における通気膜2の側から弁フィルム3の方向へのガーレー数に対する弁フィルム3の側から通気膜2の方向へのガーレー数の比は、例えば、10以上であり、30以上、100以上、さらには200以上とすることもできる。なお、ガーレー数の値は、その単位から明らかであるように、通気度が高いほど小さくなる。
【0070】
上記規格においてガーレー数は、評価対象物に加える差圧を1.22kPaとしたときの透気抵抗度である。通気部材1の構成によっては、弁フィルム3が通気膜2から離間する方向に変形する気体Aの圧力(弁開放圧)が1.2kPaを超えることがある。この場合、上記差圧を、弁フィルム3が通気膜2から離間する方向に十分に変形できる圧力に設定して透気抵抗度を測定し、測定値を差圧1.22kPaあたりに換算した値を、通気部材1における通気膜2の側から弁フィルム3の方向へのガーレー数とすることができる。
【0071】
通気部材1は、開口に固定して使用される。通気部材1を固定する開口を有する物品は限定されない。当該開口を有する物品は、例えば、各種の電装部品及び電気製品の筐体、食品等の容器、並びにこれら筐体及び容器の開口に固定される部材であって、当該開口を通過する気体が通過する開口を有する部材である。開口に固定される際の通気部材1の向きは限定されないが、典型的には、通気膜2の側が物品の内部に面し、弁フィルム3の側が物品の外部に面するように、通気部材1は開口に固定される。
【0072】
通気部材1の開口への固定方法は限定されず、通気部材1は、加熱溶着及び超音波溶着等の溶着、接着剤若しくは粘着剤による接着、又は両面テープ等の接合部材によって開口に固定されうる。通気部材1を開口へ固定する固定部は、例えば、通気膜2における弁フィルム3が接合された面とは反対側の面に設けることができる。固定部を設ける位置及び固定部の形状は特に限定されないが、一例として固定部は、通気膜2における当該反対側の面の周縁部に設けられる。このとき通気部材1は、通気膜2における弁フィルム3が接合された面とは反対側の面の周縁部に、通気部材1を開口に固定する固定部をさらに備える。固定部の形状は額縁状でありうる。なお、通気膜2の面に固定部を設ける場合、通常、当該固定部に対応する通気膜2の領域において膜厚方向の通気性が失われるため、当該部分は通気膜2の通気領域ではなくなる。より具体的な例として、固定部が通気膜2の面に配置された両面テープである場合、この両面テープに対応する通気膜2の領域は通気領域に含まれない。
【0073】
図7に、このような固定部をさらに備える通気部材1の一例を示す。
図7に示す通気部材1は、固定部11をさらに備える以外は、
図5に示す通気部材1と同様である。
図7に示す通気部材1の固定部11は、両面テープ10により構成されている。
【0074】
図7に示す通気部材1は、通気膜2における弁フィルム3が接合された面とは反対側の面の周縁部に、通気部材1を開口に固定する固定部11をさらに備える。固定部11の形状は額縁状の一種であるリング状である。このような固定部11により、通気部材1をより安定かつ確実に開口に固定できる。
【0075】
また、
図7に示す通気部材1では、
図8にさらに示すように、通気膜2と弁フィルム3とが通気膜2の周縁部に位置する領域であるリング状の領域9の周方向の一部において互いに接合されており、固定部11の外周及び内周が、通気膜2の主面に垂直な方向から見て、通気膜2と弁フィルム3とが接合されている、通気膜2の周縁部に位置する当該領域9の外周及び内周と、それぞれ一致している。このような接合部4及び固定部11により、通気部材1をより安定かつ確実に開口に固定できるとともに、通気部材1の通気時(通気膜2の側から弁フィルム3の方向への通気時)にも、開口からの通気部材1の剥離を抑制できる。
【0076】
図7に示す通気部材1を開口12に固定した状態の一例を
図9に示す。通気部材1は、開口12を覆うように当該開口12に固定されている。より具体的に、通気部材1は、開口12を構成する壁13の表面14に固定されており、また、固定部11を介して固定されている。表面14は、壁13を有する筐体及び筐体等の外面でありうる。
【0077】
(実施形態2)
図10A及び
図10Bに示す本実施形態の通気部材1は、通気膜2及び弁フィルム3の形状が四角形、より具体的に正方形、であり、接合部4の形状が異なる以外は、
図1A~
図1Cに示す通気部材1と同様の構造を有している。なお、
図10Aには、通気膜2の側から見た通気部材1が示されており、
図10Bには、
図10Aに示す断面I-Iが示されている。
【0078】
本実施形態の通気部材1では、
図10Aに示すように、通気膜2と弁フィルム3とが、四角形の通気膜2の周縁部に位置する領域における当該四角形の三辺に沿って延びる第1の部分において互いに接合されている。本実施形態の通気部材1の接合部4は、通気膜2の周縁部に位置する領域の周方向の一部である上記第1の部分に対応する。接合部4は、通気膜2の主面に垂直な方向から見てU字状、より具体的にコーナーが直角であるU字状、である。本実施形態の通気部材1は、1つの接合部4を有する。
【0079】
また、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1では、通気膜2が、通気膜2の周縁部に位置する領域における弁フィルム3と接合している1つの上記第1の部分と、当該領域における弁フィルム3と接合していない第2の部分とを有し、通気膜2の通気領域が、通気膜2の主面に垂直な方向から見て、上記第1の部分と、第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する第1の部分の端部15A,15B間を結ぶ線分Lと、によって囲まれている。
【0080】
本実施形態の通気部材1においても、その構成に応じて、実施形態1で説明した効果と同様の効果を得ることができる。また、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1では、通気部材1が定常状態であるときに、通気膜2と弁フィルム3との間の僅かな空隙を介した通気部材1の通気膜2側の面と弁フィルム3側の面との間の気体の透過量、例えば酸素の透過量、を、
図1A~
図1Cに示す通気部材1に比べて抑制できる(以下、上記気体(酸素)の透過量を、単に「気体(酸素)の透過量」という)。より具体的な例として、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1を、内部の酸素濃度が外部空間に比べて低減された通気容器の開口に固定することで、容器内の酸素濃度の経時的な上昇を抑制できる。定常状態における気体の透過量を抑制する効果は、通気膜2の通気領域と、接合部4に対応する第1の部分との上記関係によって、弁フィルム3の自由端部の近傍の領域と通気膜2の通気領域との重複が抑制されることに基づく。また、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1において当該効果は、弁フィルム3が、後述する「外方に突出した部分」を有さないことから、当該部材1が固定された容器の表面が柔らかく、当該表面にうねり等の変形が生じやすい場合にもより確実に保持できる。
【0081】
【0082】
図11A及び
図11Bに示す通気部材1では、接合部4の一方の端部15Aと他方の端部15B(四角形の通気膜2の周縁部に位置する領域における当該四角形の三辺に沿って延びる第1の部分の双方の端部15A,15B)が、当該四角形の残る一つの辺16から後退している。このとき、弁フィルム3は、弁フィルム3の主面に垂直な方向から見て、端部15A,15B間を結ぶ線分Lに対して外方に突出した部分(
図11Aにおける線分Lより辺16側の部分)を有する。弁フィルム3において当該部分は、他の部分に比べて、可逆的に変形しやすい。このため、
図11A及び
図11Bに示す通気部材1では、気体Aの圧力によって通気膜2から離間する方向に変形した弁フィルム3の戻り性を向上できる。
【0083】
【0084】
図12A及び
図12Bに示す通気部材1は、通気膜2における弁フィルム3が接合された面とは反対側の面の周縁部に固定部11を備える以外は、
図11A及び
図11Bに示す通気部材1と同様の構造を有している。また、
図12A及び
図12Bに示す通気部材1では、固定部11により定められた通気膜2の通気領域17が、通気膜2の周縁部に位置する領域における弁フィルム3と接合している上記第1の部分と、当該領域における弁フィルム3と接合していない第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する当該第1の部分の端部15A,15B間を結ぶ線分Lと、によって囲まれている。このため、
図12A及び
図12Bに示す通気部材1では、定常状態における気体の透過量の抑制と、弁フィルム3の戻り性の向上とのバランスを図ることができる。
【0085】
さらに、
図12A及び
図12Bに示す通気部材1では、通気膜2の通気領域17の中心と、弁フィルム3の中心とが一致している。この場合、定常状態における気体の透過量をより確実に抑制できる。これにより、例えば、当該通気部材1を内部の酸素濃度が外部空間に比べて低減された通気容器の開口に固定したときに、より長期にわたり、容器内の酸素濃度の経時的な上昇を抑制できる。なお、一致の程度は厳密である必要がなく、ある程度の「遊び」を有しうることは明らかである。
【0086】
本実施形態の通気部材1は、実施形態1の通気部材1と同様に使用できる。
【0087】
(実施形態3)
図13A及び
図13Bに示す本実施形態の通気部材1は、通気膜2及び弁フィルム3の形状が四角形、より具体的に正方形、であり、接合部4の形状が異なる以外は、
図1A~
図1Cに示す通気部材1と同様の構造を有している。なお、
図13Aには、通気膜2の側から見た通気部材1が示されており、
図13Bには、
図13Aに示す断面I-Iが示されている。
【0088】
本実施形態の通気部材1では、
図13Aに示すように、通気膜2と弁フィルム3とが、四角形の通気膜2の周縁部に位置する領域における、当該四角形の互いに対向する二辺に各々沿う2つの第1の部分において互いに接合されている。本実施形態の通気部材1の接合部4は、通気膜2の周縁部に位置する領域の周方向の一部である上記第1の部分に対応する。本実施形態の通気部材1は、2つの接合部4(4A,4B)を有する。接合部4A,4Bは、ローマ数字の「II」状である。
【0089】
また、
図13A及び
図13Bに示す通気部材1では、通気膜2が、通気膜2の周縁部に位置する領域における弁フィルム3と接合している2つの上記第1の部分と、当該領域における弁フィルム3と接合していない第2の部分とを有し、通気膜2の通気領域が、通気膜2の主面に垂直な方向から見て、上記2つの第1の部分と、第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する各第1の部分の端部18間を結ぶ線分L1及びL2と、によって囲まれている。線分L1は、辺19Aに沿う第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する端部18Aと端部18Cとを結ぶ線分である。線分L2は、辺19Bに沿う第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する端部18Bと端部18Dとを結ぶ線分である。
【0090】
本実施形態の通気部材1においても、その構成に応じて、実施形態1で説明した効果と同様の効果を得ることができる。また、
図13A及び
図13Bに示す通気部材1では、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1と同様に、定常状態における気体の透過量、例えば酸素の透過量、を、
図1A~
図1Cに示す通気部材1に比べて抑制できる。また、
図13A及び
図13Bに示す通気部材1において当該効果は、弁フィルム3が上記「外方に突出した部分」を有さないことから、当該部材1が固定された容器の表面が柔らかく、当該表面にうねり等の変形が生じやすい場合にもより確実に保持できる。
【0091】
【0092】
図14A及び
図14Bに示す通気部材1では、接合部4(4A,4B)の端部18A,18C(四角形の通気膜2の周縁部に位置する領域における当該四角形の対向する二辺に沿う第1の部分の端部であって、残る二つの辺から選ばれる一方の辺19A側の端部)が、当該辺19Aから後退している。また、接合部4(4A,4B)の端部18B,18D(上記第1の部分の端部であって、残る二つの辺から選ばれる他方の辺19B側の端部)が、当該辺19Bから後退している。このとき、弁フィルム3は、弁フィルム3の主面に垂直な方向から見て、端部18A,18C間を結ぶ線分L1及び端部18B,18D間を結ぶ線分L2に対して外方に突出した部分(
図14Aにおける線分L1より辺19A側の部分、及び線分L2より辺19B側の部分)を有する。弁フィルム3において当該部分は、他の部分に比べて、可逆的に変形しやすい。このため、
図14A及び
図14Bに示す通気部材1では、気体Aの圧力によって通気膜2から離間する方向に変形した弁フィルム3の戻り性を向上できる。
【0093】
本実施形態の通気部材1では、接合部4の端部18A~18Dから選ばれる少なくとも1つの端部が、上記後退した状態でありうる。また、本実施形態の通気部材1では、接合部4A及び4Bにおける辺19A及び辺19Bから選ばれる一方の辺側の端部が、上記後退した状態でありうる。
【0094】
また、
図14A及び
図14Bに示す通気部材1では、固定部11により定められた通気膜2の通気領域17が、通気膜2の周縁部に位置する領域における弁フィルム3と接合している上記第1の部分と、当該領域における弁フィルム3と接合していない第2の部分を挟んで上記周方向に沿って隣接する第1の部分の端部18間を結ぶ線分L1及びL2とによって囲まれている。このため、
図14A及び
図14Bに示す通気部材1では、定常状態における気体の透過量の抑制と、弁フィルム3の戻り性の向上とのバランスを図ることができる。
【0095】
さらに、
図14A及び
図14Bに示す通気部材1では、通気膜2の通気領域17の中心と弁フィルム3の中心とが一致している。この場合、定常状態における気体の透過量をより確実に抑制できる。
【0096】
本実施形態の通気部材1は、実施形態1の通気部材1と同様に使用できる。
【0097】
(実施形態4)
図15A及び
図15Bに示す本実施形態の通気部材1は、弁フィルム3における通気膜2側の面に微粘着層20が形成されている(弁フィルム3が、通気膜2側の面に微粘着層20を有する)以外は、
図12A及び
図12Bに示す通気部材1と同様の構造を有している。なお、
図15Aには、通気膜2の側から見た通気部材1が示されており、
図15Bには、
図15Aに示す断面I-Iが示されている。
【0098】
本実施形態の通気部材1においても、その構成に応じて、実施形態1又は2で説明した効果と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の通気部材1では、定常状態における気体の透過量、例えば酸素の透過量、をさらに抑制できる。定常状態における気体の透過量をさらに抑制する効果は、通気部材1が定常状態にあるときに、微粘着層20により、弁フィルム3が通気膜2に対してより確実に密着できることに基づく。
【0099】
微粘着層20によって、弁フィルム3が通気膜2から離間する方向に変形を始める気体Aの圧力を調整できる。即ち、通気部材1における開弁の圧力(弁開放圧)を調整できる。弁フィルム3が微粘着層20を有する通気部材1における弁開放圧は、例えば、10kPa以下である。微粘着層20の構成、及び通気部材1の構成によっては、弁開放圧は、8kPa以下、6kPa以下、5kPa以下、4kPa以下、さらには3kPa以下でありうる。弁開放圧の下限は、0.3kPa以上でありうるし、0.5kPa以上、さらには1kPa以上でありうる。
【0100】
微粘着層20は、例えば、粘着剤により構成される層である。粘着剤の種類は限定されない。粘着剤には、公知の粘着剤を使用できる。粘着剤は、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤である。粘着剤は、ウレタン系粘着剤、又はアクリル系粘着剤でありうる。ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤、特にウレタン系粘着剤、は通気膜2に対する濡れ性が高い。このため、これらの粘着剤から構成される微粘着層20では、例えば、開弁後、通気部材1が定常状態となったときの通気膜2に対する弁フィルム3の密着の速度を向上できる。アクリル系粘着剤は通気膜2に対する粘着性が高い。このため、アクリル系粘着剤から構成される微粘着層20では、例えば、通気膜2に対する弁フィルム3の粘着力を向上できる。
【0101】
微粘着層20の粘着力は、PETフィルム(無孔のPETフィルム)に対する常温(23℃)での粘着力にして、例えば0.2N/20mm以下であり、0.15N/20mm以下、0.13N/20mm以下、さらには0.11N/20mm以下でありうる。
【0102】
微粘着層20は、弁フィルム3の通気膜2側の面の全体に形成されていても、一部に形成されていてもよい。微粘着層20を有する弁フィルム3の形成方法は限定されない。例えば、弁フィルム3として使用するフィルムの表面に公知の手法により粘着剤を塗布して、微粘着層20を有する弁フィルム3を形成できる。
【0103】
微粘着層20は、他の実施形態の通気部材1に対しても適用可能である。
【0104】
本実施形態の通気部材1は、実施形態1の通気部材1と同様に使用できる。
【0105】
(実施形態5)
図16A及び
図16Bに示す本実施形態の通気部材1は、通気膜2と弁フィルム3とが、通気膜2の周縁部に位置する領域の一部において、中間部材である中間フィルム31を介して互いに接合されている以外は、
図15A及び
図15Bに示す通気部材1と同様の構造を有している。なお、
図16Aには、通気膜2の側から見た通気部材1が示されており、
図16Bには、
図16Aに示す断面I-Iが示されている。なお、実施形態1~4において説明した通気部材1では、通気膜2と弁フィルム3とは、互いに直接接合されている(両面テープ10等の接合部4を介して直接接合されている)。
【0106】
本実施形態の通気部材1においても、その構成に応じて、実施形態1,2又は4で説明した効果と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の通気部材1では、定常状態における気体の透過量、例えば酸素の透過量、をさらに抑制できる。定常状態における気体の透過量をさらに抑制する効果は、弁フィルム3が微粘着層20を有する場合に、より確実となる。また、中間フィルム31によって、フィルムの積層体でありうる通気部材1の剛性を向上できる。
【0107】
本実施形態の通気部材1では、通気膜2の上に固定部32を介して配置された中間フィルム31の上に接合部4が形成されている。接合部4の形状等の構成は、これまでに説明した各実施形態における接合部4の構成と同様でありうる。
【0108】
中間部材は、典型的には、膜厚方向の通気性を有さないフィルム(中間フィルム31)である。中間フィルム31は、非多孔質の無孔のフィルムでありうる。膜厚方向の通気性を有さない中間フィルム31は、表面に気体の通気経路を有さない。このため、表面の平滑性を通気膜2よりも向上でき、弁フィルム3が当該表面に接した場合の密着度を向上できる。この向上により、定常状態における気体の透過量をより確実に抑制できる。
【0109】
中間フィルム31を構成する材料は限定されず、高分子、金属、及びこれらの複合材料でありうる。中間フィルム31は、例えば高分子フィルムであり、より具体的な例は無孔のPETフィルムである。高分子フィルムである中間フィルム31の使用により、例えば、弁フィルム3が微粘着層20を有する場合に、通気部材1の弁開放圧が過度に高くなることを防止できる。金属フィルムに比べて高分子フィルムの方が、一般に、粘着剤の粘着力が低くなる傾向にあるためである。
【0110】
中間フィルム31の厚さは、例えば3~200μmであり、25~100μmでありうる。
【0111】
中間フィルム31の形状は限定されない。中間フィルム31は、通気膜2の周縁部の形状を有しうる。
図16A及び
図16Bに示す例において、中間フィルム31の形状は、固定部11の形状と同じである。
【0112】
固定部32において通気膜2と中間フィルム31とは、例えば、加熱溶着及び超音波溶着等の溶着、接着剤若しくは粘着剤による接着、又は両面テープ等の接合部材によって接合されうる。また、固定部32は、固定部11と同様の構成を有しうる。
図16A及び
図16Bに示す通気部材1の固定部32は、両面テープにより構成される。
【0113】
固定部32の形状は限定されない。固定部32の形状は、通気膜2の周縁部の形状でありうる。固定部32の形状は、中間フィルム31及び/又は固定部11の形状と同一でありうる。
図16A及び
図16Bに示す例において、固定部32の形状は、中間フィルム31及び固定部11の形状と同じである。
【0114】
中間部材31は、他の実施形態の通気部材1に対しても適用可能である。
【0115】
本実施形態の通気部材1は、実施形態1の通気部材1と同様に使用できる。
【0116】
本発明の通気部材は、例えば、枚葉状のベースフィルム上に配置した形態、帯状のベースフィルム上に配置し、ロール又はリールに巻回した形態で供給できる。ベースフィルムへの通気部材の配置には、固定部11を利用できる。ベースフィルムにおける通気部材が配置される面には、通気部材の使用時にベースフィルムからの当該部材の剥離を容易とする剥離層が形成されていてもよい。ベースフィルムには、例えば、高分子フィルム、紙、金属フィルム、及びこれらの複合フィルム等を使用できる。
【0117】
(通気筐体、通気容器)
本発明の通気部材の用途は限定されない。本発明の通気部材は、例えば、通気性が要求される各種の筐体及び容器の開口に固定して使用できる。本発明の通気部材は非対称の通気性を有しているため、非対称の通気性が要求される各種の筐体及び容器に対して好適に使用できる。また、本発明の通気部材は、非定常の通気性が要求される各種の筐体及び容器に対しても使用できる。なお、非定常の通気性が要求されるとは、特定の期間、例えば加熱時、にのみ通気性が要求されることをいう。
【0118】
本発明の通気部材を備える通気容器の一例を
図17に示す。
図17に示す通気容器21は、保存時に気体を発生する食品の容器であり、その開口に通気部材1が固定されている。通気部材1は、弁フィルム3の側が容器21の外部に面し、通気膜2の側が容器21の内部に面するように容器21の開口の外面側に固定されている。通気容器21では、通気部材1によって、食品から発生した気体を容器21の外部に排出しながら、容器21の外部から内部への空気(酸素)の導入を抑制できる。また、容器21の外部から内部への塵芥及び水等の異物の侵入を抑制できるとともに、通気膜2の構成によっては、容器21の内容物である食品に由来する液体及び破片等の固体の容器21の外部への漏出を抑制できる。
【0119】
本発明の通気部材を備える通気筐体の一例を
図18に示す。
図18に示す通気筐体22は、ランプの筐体であり、その開口に通気部材1が固定されている。通気部材1は、弁フィルム3の側が筐体22の外部に面し、通気膜2の側が筐体22の内部に面するように筐体22の開口の外面側に固定されている。通気筐体22では、通気部材1により、ランプ点灯時の熱により圧力が上昇した筐体22の内部の気体を筐体22の外部に排出しながら、ランプ消灯後の温度低下により圧力が低下した筐体22の内部への外部からの水蒸気の侵入を抑制できる。筐体22の内部に侵入した水蒸気は結露の原因となるため、通気部材1により、筐体22の内部における結露の発生が抑制される。また、筐体22の外部から内部への塵芥及び水等の異物の侵入を抑制できる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0121】
最初に、実施例1~7及び比較例1~3において作製した通気部材の評価方法を示す。
【0122】
[通気度]
通気部材の通気度(透気抵抗度)は、JIS P8117の規定に準拠して測定したガーレー数(単位:秒/100mL)により評価した。このとき、直径2mmの開口を中心に設けた直径47mmのステンレス製円板を準備し、当該開口を覆うように各々の中心を一致させて評価対象物である通気部材を固定部11の両面テープにより円板に貼付した状態で、ガーレー数の測定を実施した。なお、各通気部材サンプルについて最終的に求めたガーレー数(表1に示すガーレー数)は、上記のようにして実際に測定したガーレー数を、評価した通気部材サンプルの通気領域の面積と上記規定上のガーレー数の基準となる通気面積642mm2とに基づいて、後者の通気面積(642mm2)あたりに換算した値とした。本明細書に記載されている通気部材のガーレー数は、全て、この換算値である。
【0123】
[防水性]
通気部材の防水性は、JIS L1092の規定に準拠して測定した耐水圧により評価した。具体的に、次のとおりである。
【0124】
直径2mmの開口を中心に設けた直径47mmのステンレス製円板(耐水圧測定時に変形しない厚さを有する)を準備した。次に、円板の一方の面に、測定対象である通気部材を、上記開口を覆うように固定した。通気部材は、当該部材が有する通気膜の中心と開口の中心とが一致するように固定部11又は固定部105により固定した。次に、通気部材を固定している円板を試験片として、JIS L1092に記載のA法(低水圧法)又はB法(高水圧法)に従って通気部材の耐水圧を測定した。なお、水圧は、通気部材を固定している面とは反対側の面から試験片に印加した。また、試験片における通気部材を固定している面の側から見て、通気膜又は固定部に1か所でも水滴が観察された時の水圧を、通気部材の耐水圧とした。試験装置には、上記試験片の耐水圧を測定可能な構造(試験片取付構造)を有する以外は、JIS L1092に例示されている試験装置と同様の構成を持つ装置を使用できる。測定された耐水圧に基づいて、以下の基準により、通気部材の防水性を評価した。
◎(優):耐水圧の値が50kPa以上であった。
○(良):耐水圧の値が3kPa以上50kPa未満であった。
△(可):耐水圧の値が1kPa以上3kPa未満であった。
×(不可):耐水圧の値が1kPa未満であった。
【0125】
(実施例1)
実施例1では、
図7,8に示す通気部材1を作製した。具体的に、通気膜2として膜厚方向に複数の貫通孔を有する、撥液処理された円形のPET膜(膜厚方向の通気度は、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数で表示して12.0cm
3/(cm
2・秒)、耐水圧18kPa、厚さ45μm、直径9mm、透明)を、弁フィルム3として無孔のPETフィルム(円形、厚さ50μm、直径9mm、透明)を準備した。
【0126】
通気膜2であるPET膜は、以下のように準備した。膜厚方向に貫通する複数の貫通孔を有する非多孔質の市販のPET膜(it4ip製、Track etched membrane;厚さ45μm、貫通孔の径5.0μm、貫通孔の密度2.3×106個/cm2)を用意した。次に、この膜を、撥液処理液中に3秒間浸漬した後、当該処理液から取り出して常温で30分間放置して乾燥させることで、当該膜の表面に撥液層を形成する撥液処理を実施した。撥液処理液には、信越化学製の撥水撥油剤「X-70-042」を0.1重量%の濃度となるように希釈剤(旭硝子製、アサヒクリン AE-3000)で希釈した溶液を用いた。なお、「X-70-042」は、以下の化学式により示される、直鎖状フルオロアルキル基を有する化合物を単量体として重合した重合体を構成成分とする撥水撥油剤である:CH2=CHCOOCH2CH2C5F10CH2C4F9。このようにして、通気膜2であるPET膜(貫通孔の径5.0μm、気孔率45.1%、貫通孔の密度2.3×106個/cm2)を得た。
【0127】
次に、外径9mm及び内径6mmのリング状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm)を2枚用意し、そのうちの1枚について、リングの中心を通る直線(リングの直径に相当する直線)を切断線として2分割した。次に、2分割した両面テープの一つを外周が一致するように通気膜2の表面に貼り合わせ、さらに、貼り合わせた両面テープの上に外周が一致するように弁フィルム3を貼り合わせて、当該両面テープ10を接合部4として、通気膜2と弁フィルム3とを接合した。
図4に示すように、通気膜2と弁フィルム3とは、通気膜2の周縁部に位置するリング状の領域9の周方向の一部(リングの中心を基準とする角度にして180°の領域)において互いに接合されていた。次に、2分割していないもう一枚の両面テープを外周が一致するように通気膜2における弁フィルム3の接合面とは反対側の面に固定部11として貼り合わせ、
図7,8に示す通気部材1を得た。なお、この通気部材の通気領域は、通気膜2の上記反対側の面に貼り合わせたリング状の両面テープの内周を円周とする円の領域である(他の実施例及び比較例においても同じである)。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0128】
(実施例2)
接合部4及び固定部11に使用したリング状の両面テープの内径を6mmから4mmに変更した以外は実施例1と同様にして、通気部材1を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0129】
(実施例3)
接合部4及び固定部11に使用したリング状の両面テープの内径を6mmから4mmに変更し、弁フィルム3の厚さを50μmから25μmに変更した以外は実施例1と同様にして、通気部材1を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0130】
(実施例4)
準備した2枚の両面テープのうちの1枚を2分割する際に、リングの中心を通る2本の直線であって、リングの中心における互いの交差角度が90°である直線のそれぞれを切断線とし、2分割された両面テープのうち大きな方の一片を通気膜2と弁フィルム3との接合部4に使用した以外は、実施例1と同様にして通気部材1を得た。
図19に示すように、通気膜2と弁フィルム3とは、通気膜2の周縁部に位置するリング状の領域の周方向の一部(リングの中心を基準とする角度にして270°の領域)において、当該部分を接合部4として互いに接合されていた。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0131】
(実施例5)
通気膜2を上記PET膜から、円形のPTFE多孔質膜(日東電工製、NTF1133、膜厚方向のガーレー数1.8秒/100mL、耐水圧60kPa、厚さ80μm、直径9mm、白色)に変更した以外は実施例1と同様にして、通気部材1を得た。実施例5で使用したPTFE多孔質膜は、実施例1と同様の撥液処理剤及び撥液処理方法により撥液処理された膜である。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0132】
(実施例6)
固定部11に使用したリング状の両面テープは変更することなく、接合部4に使用したリング状の両面テープを厚さ100μmの両面テープ(日東電工製、No.5610、外径9mm及び内径6mm)に変更した以外は実施例1と同様にして、通気部材1を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0133】
(実施例7)
接合部4及び固定部11に使用したリング状の両面テープの内径を6mmから7mmに変更し、弁フィルム3の厚さを50μmから25μmに変更した以外は実施例1と同様にして、通気部材1を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0134】
(比較例1)
比較例1では、
図20A及び
図20Bに示す通気部材100を作製した。
図20Bは、
図20Aに示す通気部材100をスリットフィルム101側から見た図である。通気膜103として、実施例1の通気膜2で使用したPET膜と同じPET膜を準備した。また、スリットフィルム101として、
図20A及び
図20Bに示すように、当該フィルムの膜厚方向に貫通する、互いに平行な2本の直線状のスリット(長さ3mm、スリット間の間隔2mm)102を有する円形のPETフィルム(厚さ50μm、直径9mm、透明)を準備した。次に、外径9mm及び内径6mmのリング状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm)を2枚用意し、それぞれの両面テープを、外周が一致するように通気膜103のそれぞれの表面に貼り合わせた。次に、一方の両面テープを接合部104として、通気膜103とスリットフィルム101とを接合した。通気膜103とスリットフィルム101とは、通気膜103の周縁部に位置するリング状の領域の周方向の全部において互いに接合されていた。なお、スリットフィルム101は、上記スリット以外に膜厚方向の通気経路を有さない。通気膜103に貼り合わせた他方の両面テープは固定部105とした。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表1に示す。
【0135】
(比較例2)
スリットフィルム101を、当該フィルムの膜厚方向に貫通する、円形の当該フィルムの中心において等角度で交差する3本の直線状のスリット(長さ3mm)102を有するPETフィルム(厚さ50μm、直径9mm、透明)に変更した以外は比較例1と同様にして、
図21A及び
図21Bに示す通気部材110を得た。なお、
図21Bは、
図21Aに示す通気部材110をスリットフィルム101の側から見た図である。このようにして作製した通気部材の評価結果を以下の表1に示す。
【0136】
(比較例3)
比較例3では、通気膜2を備えない通気部材を作製した。具体的に、通気膜2の代わりに、外径9mm及び内径6mmのリング状のPETフィルム(厚さ50μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、当該通気部材を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を以下の表1に示す。
【0137】
【0138】
表1に示すように、実施例の各通気部材では、防水性を確保しながら弁フィルム3の側から通気膜2の方向への通気をより確実に抑制できるとともに、通気膜2の側から弁フィルム3の方向へのガーレー数に対する弁フィルム3の側から通気膜2の方向へのガーレー数の比B/Aを大きくすることができ、また、当該比の制御の自由度が大きくなった。
【0139】
(実施例8)
実施例1で作製した通気部材について、通気膜2の側から弁フィルム3の方向へ透過する気体Aの圧力(通気部材に加わる、通気膜2の側が正の差圧)を増加させたときの通気膜2及び通気部材を透過する単位時間あたりの気体の量(mL/分)の変化と、弁フィルム3の側から通気膜2の方向へ透過しようとする気体Bの圧力(通気部材に加わる、弁フィルム3の側が正の差圧)を増加させたときの通気膜2及び通気部材を透過する単位時間あたりの気体の量の変化とを評価した。評価結果を
図22に示す。なお、
図22では、前者の場合を「(通気部材の)通気側」、後者の場合を「(通気部材の)封止側」としている。
【0140】
図22に示すように、当該通気部材では、通気膜2の側を正とする僅かな差圧によって非対称の通気性が実現するとともに、差圧が大きい場合にも非対称の通気性を維持することができた。
【0141】
実施例9~14及び比較例4において作製した通気部材の評価方法を示す。
【0142】
[弁開放圧]
通気部材が開弁する気体Aの圧力である弁開放圧は、次のように測定した。
【0143】
直径2mmの開口を中心に設けた直径47mmのステンレス製円板(弁開放圧の測定時に変形しない厚さを有する)を準備した。次に、円板の一方の面に、測定対象である通気部材を、上記開口を覆うように固定した。通気部材は、当該部材が有する通気膜の中心と開口の中心とが一致するように固定部11又は固定部105により固定した。次に、通気部材を固定している円板を試験片として、当該試験片を
図25に示す評価装置の固定冶具204に固定した。
【0144】
固定冶具204は、円形の断面を有する有底筒体であり、通気部材203が固定された試験片201を開口に固定できる構造を有する。固定冶具204の底部には、流量計206、圧力計207、レギュレータ208及びポンプ209が接続された配管205が接続されている。固定冶具204は、開口に試験片201を固定したときに、配管205を除き、試験片201の開口202及び当該開口202に固定された通気部材203のみが外部から固定冶具204の内部への通気経路となる構造を有している。試験片201は、通気部材203を固定している面が固定冶具204の内部に面するように、当該冶具204の開口に固定した。
【0145】
次に、ポンプ209を駆動し、配管205を介して固定冶具204の内部の減圧を開始した。減圧速度は、レギュレータ208により、10kPa/分とした。減圧の開始とともに、流量計206により、配管205の内部を通過する空気の流量の測定を開始した。そして、0.01L/分以上の流量であって、減圧速度から算出される流量を超えて急激に流量が増加したときの固定冶具204内の圧力Pを記録した。測定時の大気圧から圧力Pを引いた値を、通気部材の弁開放圧とした。
【0146】
[通気度]
通気部材の通気度(透気抵抗度;ガーレー数)は、実施例1~7及び比較例1~3において作製した通気部材に対する通気度の測定方法と同じ方法により測定した。なお、弁開放圧が、JIS P8117において定められた、評価対象物に対する差圧1.22kPaを超える場合、弁開放圧を超える圧力に上記差圧を設定して透気抵抗度を測定し、測定値を差圧1.22kPaあたりに換算した値を、当該通気部材のガーレー数とした。
【0147】
[単位時間あたりの通気量]
通気度(透気抵抗度)とは別に、通気部材の通気膜側の面と、弁フィルム又はスリットフィルム側の面との間の差圧(気体Aの圧力)を1.5kPaとしたときに当該部材を通過する単位時間あたりの空気の流量(通気量)を評価した。なお、弁開放圧が1.5kPaを超える通気部材では、この値をゼロとした。当該通気量は、次のように測定した。
【0148】
直径2mmの開口を中心に設けた直径47mmのステンレス製円板(通気量の測定時に変形しない厚さを有する)を準備した。次に、円板の一方の面に、測定対象である通気部材を、上記開口を覆うように固定した。通気部材は、当該部材が有する通気膜の中心と開口の中心とが一致するように固定部11又は固定部105により固定した。次に、通気部材を固定している円板を試験片として、当該試験片を、弁開放圧の測定に使用した評価装置(
図25参照)の固定冶具204に、弁開放圧の測定時と同様に固定した。
【0149】
次に、ポンプ209を駆動し、配管205を介して固定冶具204の内部を減圧した。減圧は、レギュレータ208により、固定冶具204の内圧が測定時の大気圧より1.5kPa低くなるようにした。固定冶具204の内圧が安定した後、流量計206により、配管205の内部を通過する空気の流量を測定して、上記単位時間あたりの通気量を求めた。
【0150】
[戻り性]
通気部材の戻り性は、以下のように評価した。
【0151】
上述した弁開放圧の測定方法により、評価対象である通気部材の弁開放圧(初期開放圧)を測定した。次に、配管205を介して固定冶具204の内部空間を開放し、固定冶具204内の圧力を大気圧に戻した。大気圧に戻しておよそ1分間経過した後、再度、上記方法により通気部材の弁開放圧を測定した。再度の測定値が初期開放圧から1kPa以上低下した場合を「△(可)」、0.5kPaを超え1kPa以下の範囲で低下した場合を「〇(良)」、0.5kPa以下の範囲で低下した場合を「◎(優)」とした。
【0152】
[定常状態の酸素透過量]
通気部材の定常状態における酸素透過量は以下のように測定した。
【0153】
コックを備える内容積2000mLのアルミパウチ袋(ジーエルサイエンス製、AAK-2)に、通気部材を固定した時に各通気部材の固定部11又は固定部125により囲まれた範囲に収まる開口を設けた。次に、当該開口を覆うように、固定部11又は固定部125を介して、通気部材を袋の外面に固定した。次に、コックを介して、袋内に窒素ガスを流量300mL/分にて5分間、流通させた。5分間の流通後、300mL程度の窒素ガスが収容された袋をヒートシールにより密閉し、通気部材の弁開放圧を超える圧力を袋にかけないようにして常温で保管した。所定期間(ヒートシール後、1日、5日又は7日)の経過後、酸素濃度計(飯島電子工業製、RO-103S)にて袋内の酸素濃度を測定し、当該酸素濃度により、定常状態における通気部材の酸素透過量を評価した。なお、ヒートシール直後の酸素濃度(初期酸素濃度)を別途、測定したところ、いずれの通気部材においても、初期酸素濃度は0.01~0.03%の範囲にあった。
【0154】
(実施例9)
実施例9では、通気膜2及び弁フィルム3の形状が正方形であり、通気膜2と弁フィルム3とが、通気膜2の周縁部に位置する領域における当該正方形の三辺に沿って延びた部分において接合部4により互いに接合されている通気部材1(
図12A及び
図12B参照)を作製した。ただし、実施例9において作製した通気部材1の接合部4の端部15A及び15Bは、
図10A及び
図10Bに示す通気部材1と同様に、残る一つの辺16と同じ位置とした(辺16から後退させなかった)。接合部4の幅(コーナー部を除き、接合部4が延びる方向に垂直な方向の幅、以下同じ)は、2mmとした。
【0155】
通気膜2には、膜厚方向に複数の貫通孔を有する、正方形(サイズ20mm×20mm)のPET膜を準備した。準備したPET膜の膜厚方向の通気度は、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数で表示して20.0cm3/(cm2・秒)、耐水圧は2kPa、厚さは12μmであり、当該PET膜は透明であった。
【0156】
通気膜2であるPET膜は、以下のように準備した。厚さ12μmの無孔のPET膜を用意した。次に、用意したPET膜に対し、レーザーを用いた貫通孔形成加工により、PET膜の主面に垂直な方向に直線状に延びる、孔径21.5μmの貫通孔を複数形成した。貫通孔は、その開口がPET膜の表面に対して均等に配列するように、かつ、PET膜の表面の気孔率が6.45%となるように形成した。なお、表面の気孔率は、表面の面積に対する、当該表面に存在する貫通孔の開口の面積の合計値の割合である。
【0157】
弁フィルム3には、正方形(サイズ20mm×20mm)である以外は実施例1で使用した弁フィルム3と同一のPETフィルムを準備した。
【0158】
次に、接合部4である、直角のコーナーを有するU字状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm、幅2mm)を用意し、外周が一致するように通気膜2の表面に貼り合わせた。さらに、貼り合わせた両面テープの上に外周が一致するように弁フィルム3を貼り合わせて、当該両面テープを接合部4として通気膜2と弁フィルム3とを接合した。
【0159】
次に、外周のサイズが20mm×20mm、内周のサイズが10mm×10mmであり、外周の中心と内周の中心とが一致している、直角のコーナーを有する額縁状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm)を用意し、外周が一致するように、通気膜2における弁フィルム3の接合面とは反対側の面に固定部11として貼り合わせた。このようにして、実施例9の通気部材1を得た。
【0160】
また、実施例9では、上記作製した通気部材1とは別に、微粘着層20を有するPETフィルムを弁フィルム3に使用した通気部材を、微粘着層20の種類を変更して2種類準備した。具体的に、弁フィルム3(サイズ20mm×20mmの正方形)に、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303、厚さ50μm、微粘着剤層の粘着力0.04N/20mm)と、アクリル系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、RP207、厚さ60μm、微粘着剤層の粘着力0.11N/20mm)とを使用した。弁フィルム3は、微粘着層20が通気膜2に面するように、通気膜2と接合した。微粘着層を有する弁フィルム又はスリットフィルムを使用した、以降の実施例及び比較例の通気部材においても同様に、微粘着層が通気膜に面するように、通気膜と弁フィルム又はスリットフィルムとを接合した。
【0161】
準備した弁フィルムにおける微粘着剤層の粘着力は、常温(23℃)において、次のように評価した。最初に、評価対象である微粘着層が一方の面に形成された上記PETフィルム(幅20mm、長さ150mm)を、当該フィルムが有する微粘着層の全面を介して、厚さ100μmの無孔のPETフィルム(東レ製、ルミラーS10)に接合した。次に、弁フィルムの上に重量2kgのローラを一往復させた後、接合体を30分放置した。次に、300mm/分の引き剥がし速度にて、微粘着層を有するフィルムをPETフィルムから引き剥がす180°ピール試験を実施し、その際に測定された引き剥がし力の最大値を微粘着剤層の粘着力とした。微粘着剤層の粘着力の測定方法は、後述するAW343及びRP109Cにおいても同じである。
【0162】
このようにして作製した、弁フィルム3が互いに異なる3種類の通気部材の評価結果を、以下の表2に示す。表2の「弁フィルム又はスリットフィルムの種類」の欄における「PET」は、微粘着層を有さない弁フィルム又はスリットフィルムを意味する。なお、実施例9で作製した3種類の通気部材は、いずれも、実施例1~7と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。また、弁フィルム3が微粘着層20を有さない場合のガーレー数Aは、1.1秒/100mLであった。
【0163】
(実施例10)
実施例10では、通気膜2及び弁フィルム3の形状が正方形であり、通気膜2と弁フィルム3とが、通気膜2の周縁部に位置する領域における当該正方形の対向する二辺の各々に沿った部分において接合部4により互いに接合されている通気部材1(
図14A及び
図14B参照)を作製した。ただし、実施例10において作製した通気部材1の接合部4の端部18A~18Dは、
図13A及び
図13Bに示す通気部材1と同様に、辺19A,19Bと同じ位置とした(辺19A,19Bから後退させなかった)。接合部4の幅は2mmとした。
【0164】
通気膜2及び弁フィルム3には、それぞれ、実施例9で使用したPET膜及びPETフィルムを準備した。
【0165】
次に、接合部4である一対の帯状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30mm、長さ20mm、幅2mm)を用意し、各両面テープを、当該両面テープの長さ方向の辺が通気膜2の辺に一致するように、かつ、各々の両面テープが通気膜2における対向する二辺の各々に沿うように、通気膜2の表面に貼り合わせた。さらに、貼り合わせた両面テープの上に、通気膜2と外周が一致するように弁フィルム3を貼り合わせて、当該両面テープを接合部4として通気膜2と弁フィルム3とを接合した。
【0166】
次に、実施例9で容易したものと同一の額縁状の両面テープを用意し、外周が一致するように、通気膜2における弁フィルム3の接合面とは反対側の面に固定部11として貼り合わせた。このようにして、実施例10の通気部材1を得た。
【0167】
また、実施例10では、上記作製した通気部材1とは別に、微粘着層20を有するPETフィルムを弁フィルム3に使用した通気部材を、微粘着層20の種類を変更して2種類準備した。具体的に、弁フィルム3(サイズ20mm×20mmの正方形)に、実施例9で使用した、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)と、アクリル系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、RP207)とを使用した。
【0168】
このようにして作製した、弁フィルム3が互いに異なる3種類の通気部材の評価結果を、以下の表2に示す。なお、実施例10で作製した3種類の通気部材は、いずれも、実施例1~7と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。また、弁フィルム3が微粘着層20を有さない場合のガーレー数Aは0.43秒/100mLであった。
【0169】
(実施例11)
実施例11では、弁フィルム3に微粘着層20を有するPETフィルムを使用した以外は実施例1と同様にして、通気膜2及び弁フィルム3の形状が円である通気部材1を作製した。弁フィルム3には、実施例9で使用した、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)を使用した。ただし、当該フィルムは、直径9mmの円形とした。
【0170】
このようにして作製した通気部材の評価結果を、実施例1で作製した通気部材の評価結果と併せて、以下の表2に示す。実施例9で作製した通気部材は、実施例1と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。
【0171】
(実施例12)
実施例12では、接合部4として使用した両面テープの形状を変更することで、接合部4の端部15A及び15Bを通気膜2の辺16から後退させるとともに、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)を弁フィルム3に使用した以外は、実施例9と同様にして、通気部材1を作製した(
図15A及び
図15B参照)。接合部4の端部15A及び15Bは、端部15A,15Bを結ぶ線分Lが通気部材1(通気膜2)の通気領域17から辺16側に2mm離れた位置を通過するようにした。
【0172】
このようにして作製した通気部材の評価結果を以下の表2に示す。なお、実施例12で作製した通気部材は、実施例1~7と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。
【0173】
(実施例13)
実施例13では、固定部11として使用した両面テープの形状を変更することで、通気膜2の通気領域17の形状を10mm×13mmの長方形とし、通気膜2における接合部4が形成されていない辺16の方向に通気領域17を3mm拡張させるとともに、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)を弁フィルム3に使用した以外は、実施例9と同様にして、通気部材1を作製した(
図23A及び
図23B参照)。
【0174】
このようにして作製した通気部材の評価結果を以下の表2に示す。なお、実施例13で作製した通気部材は、実施例1~7と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。
【0175】
(実施例14)
実施例14では、中間フィルム31と、中間フィルム31を通気膜2に固定する固定部32とを有するとともに、ウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)を弁フィルム3に使用した以外は、実施例12と同様にして、
図16A及び
図16Bに示す通気部材1を作製した。
【0176】
固定フィルム31は、固定部11と同一の形状を有する無孔のPETフィルム(厚さ50μm)とした。固定部32は、固定部11と同一の両面テープとした。
【0177】
実施例14の通気部材1は、通気膜2の一方の表面に固定部32を貼り合わせ、当該固定部32の上に中間フィルム31を貼り合わせ、さらに、当該中間フィルム31の上に接合部4及び弁フィルム3を貼り合わせた後、通気膜2における固定部32を貼り合わせた面とは反対側の面に固定部11を貼り合わせて作製した。各部材を貼り合わせる際には、それぞれの外周が一致するようにした。
【0178】
また、実施例14では、上記作製した通気部材1とは別に、微粘着層20の種類を変更した通気部材1をさらに3種類準備した。具体的に、弁フィルム3(サイズ20mm×20mm)に、上述したRP207、ならびにPETフィルムの一方の面にウレタン系粘着剤から構成される微粘着層20が形成されたフィルム(日東電工製、AW343、厚さ65μm、微粘着剤層の粘着力0.03N/20mm)、及び一方の面にアクリル系粘着剤から構成される微粘着層20が形成されたフィルム(日東電工製、RP109C、厚さ55μm、微粘着剤層の粘着力0.07N/20mm)を使用した。
【0179】
このようにして作製した、弁フィルム3が互いに異なる4種類の通気部材の評価結果を、以下の表2に示す。なお、実施例14で作製した4種類の通気部材は、いずれも、実施例1~7と同様のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aを満たしていた。
【0180】
【0181】
通気膜123として、実施例9の通気膜2において使用したPET膜と同じPET膜を準備した。また、スリットフィルム121として、
図24A及び
図24Bに示すように、当該フィルムの膜厚方向に貫通する1本の直線状のスリット(長さ5mm)122を有する正方形のPETフィルム(サイズ20mm×20mm、厚さ50μm、透明)を準備した。スリット122の位置は、スリットフィルム121における当該スリット122に最も近い辺127から4mmとした。
【0182】
次に、外周のサイズが20mm×20mmであり、内周のサイズが10mm×10mmであり、外周の中心と内周の中心とが一致している、直角のコーナーを有する額縁状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm)を用意し、外周が一致するように、通気膜123における一方の面に固定部125として貼り合わせた。次に、外周のサイズが20mm×20mmであり、内周のサイズが18mm×18mmであり、外周の中心と内周の中心とが一致している、直角のコーナーを有する額縁状の両面テープ(日東電工製、No.5603、厚さ30μm)を用意し、外周が一致するように、通気膜123における他方の面に接合部124として貼り合わせた。次に、接合部124である両面テープにより、通気膜123の上に、外周が一致するようにスリットフィルム121を接合した。通気膜123とスリットフィルム121とは、通気膜123の周縁部に位置する領域の周方向の全部において互いに接合されていた。なお、スリットフィルム121は、上記スリット122以外に膜厚方向の通気経路を有さない。通気膜2の主面に垂直な方向から見て、スリット122は、固定部125により定められた通気膜123の通気領域126と重ならない。
【0183】
また、比較例4では、上記作製した通気部材とは別に、微粘着層を有するPETフィルムをスリットフィルム121に使用した通気部材を、微粘着層の種類を変更して2種類準備した。具体的に、スリットフィルム121に、スリット122を有する以外は、実施例9で使用したウレタン系粘着剤から構成される微粘着層が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、AW303)と、アクリル系粘着剤から構成される微粘着層が一方の面に形成されたフィルム(日東電工製、RP207)とを使用した。
【0184】
このようにして作製した、スリットフィルム121が互いに異なる3種類の通気部材の評価結果を、以下の表2に示す。比較例4で作製した3種類の通気部材のガーレー数B、及びガーレー数の比B/Aは、いずれも、比較例1又は2で作製した通気部材と同程度であった。
【0185】
(比較例5)
比較例5では、通気膜2を備えない通気部材を作製した。具体的に、通気膜2の代わりに中間フィルム31と同一のPETフィルムを用いた以外は実施例14と同様にして、通気部材を得た。このようにして作製した通気部材の評価結果を、以下の表2に示す。比較例5で作製した通気部材の防水性は、上述の基準にして「×(不可):耐水圧の値が1kPa未満」であった。
【0186】
【0187】
表2に示すように、実施例の通気部材について、比較例4の通気部材に比べて定常状態における酸素の透過量を低減できた。また、接合部の形状が同じ場合、弁フィルムが微粘着層を有することによって、当該酸素の透過量をより低減できた。比較例4の通気部材では、スリットフィルムが微粘着層を有するか否かは、定常状態における酸素の透過量に影響を与えなかった。中間フィルムを有する実施例14では、より長期間にわたる、高いレベルでの酸素の透過量の抑制が可能であった。実施例の通気部材では、弁フィルムにおける微粘着層の有無及びその種類によって、弁開放圧の調整が可能であった。比較例5の通気部材は通気膜を備えておらず、当該通気部材の防水性の評価結果は不可であった。
【0188】
本発明は、その意図及び本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味及び範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の通気部材は、従来の通気部材と同様の用途、例えば、通気性が求められる筐体及び容器に使用できる。本発明の通気部材は、とりわけ、非対称の通気性が求められる筐体及び容器に使用できる。
【符号の説明】
【0190】
1 通気部材
2 通気膜
3 弁フィルム
4 接合部
5 (通気膜2の弁フィルム3と接合されていない)周縁部
6 (弁フィルム3の)自由端部
7 間隙
8 通気経路
9 (通気膜2の)周縁部の領域
10 両面テープ
11 固定部
12 開口
13 壁
14 表面
15A,15B 端部
16 辺
17 通気領域
18A,18B,18C,18D 端部
19A,19B 辺
20 微粘着層
31 中間フィルム
32 固定部
100,110 通気部材
101 スリットフィルム
102 スリット
103 通気膜
104 接合部
105 固定部
120 通気部材
121 スリットフィルム
122 スリット
123 通気膜
124 接合部
125 固定部
126 通気領域
127 辺
201 試験片
202 開口
203 通気部材
204 固定冶具
205 配管
206 流量計
207 圧力計
208 レギュレータ
209 ポンプ