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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】包装用段ボールを用いた運搬方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/04 20060101AFI20220104BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20220104BHJP
   B65D 5/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B65D5/04
B65D5/42 J
B65D5/42 Z
B65D5/10 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019042726
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020142846
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2019-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515351161
【氏名又は名称】阪神センコー運輸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022895
【氏名又は名称】株式会社トーモク
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】待場 歩
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂男
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 美希
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-100362(JP,U)
【文献】仏国特許発明第01086830(FR,A)
【文献】実開昭49-043332(JP,U)
【文献】特開2007-284062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/04
B65D 5/42
B65D 5/10
B65D 81/05
B65D 81/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用段ボールを用いて一斗缶を保護して運搬する運搬方法であって、
前記包装用段ボールは、前記一斗缶の外側面を一周するよりも長い横長さを有していて、谷折り線により5個の外接面が長手方向に区画形成され、
番目の外接面には、その面上の一部に開口が形成され、
番目の外接面のうち、前記開口と対応する箇所には、手作業により前記1番目の外接面の開口を越えて内側に折り返し得る第1折返し片が切れ目を入れた状態で形成されていて、前記第1折返し片の横幅は80mmであり、
更に、3番目の外接面の面上には、手作業により内側に折り返し得る第2折返し片が切れ目を入れた状態で形成されており、
前記包装用段ボールの前記1番目の外接面を、前記包装用段ボールの前記5番目の外接面と重ね合わせて、前記第1折返し片を、前記1番目の外接面の開口縁に掛止し、前記第1折返し片と共に、前記第2折返し片を折り返すことでスリーブを構成して、前記一斗缶の外側面を覆い、段ボール外接面と、前記一斗缶の外側面との間に遊びを有する関係としつつも、折り返された前記第1、第2折返し片を用いて、前記一斗缶の外面を圧接することで、前記一斗缶にスリーブを固定する第1ステップと、
前記一斗缶をスリーブで覆った状態で、前記一斗缶を運搬する第2ステップと、
前記5番目の外接面と、4番目の外接面との谷折り線を軸として、前記5番目の外接面を回転して、前記第1折返し片を前記1番目の外接面の開口から引き抜くことで前記一斗缶から前記スリーブを離脱させる第3ステップとを含む
ことを特徴とする包装用段ボールを用いた運搬方法。
【請求項2】
前記一斗缶の1の側面には、ラベルが貼り付けられており、前記段ボールには、前記ラベルの貼り付け位置を開口する開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の包装用段ボールを用いた運搬方法。
【請求項3】
前記段ボールによる一斗缶の固定は、
業者の手指の挿通により前記第2折返し片を突き立てるのと共に、前記5番目の前記第1折返し片を前記1番目の外接面の開口を通じて突き立て、一斗缶の外側面を覆うことでなされる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用段ボールを用いた運搬方法。
【請求項4】
前記第1折返し片、及び、前記第2折返し片は、一斗缶の側面のうち、剛性が確保されている高さ位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の包装用段ボールを用いた運搬方法。
【請求項5】
前記1番目から前記4番目までの各外接面の上端又は下端には、谷折線を介して、複数対のフラップが連接しており、当該複数対のうち一方の対は台形形状のフラップ、他方の対は矩形形状のフラップであり、台形フラップの斜辺からは、凸片が突き出ていて、矩形フラップの長辺には、切り込みが形成されており、台形フラップを矩形フラップに重ね合わせ、台形フラップの斜辺から突き出た凸片を矩形フラップの長辺に形成された切込みに嵌めいれることで、蓋部又は底部を形成する
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の包装用段ボールを用いた運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
組立・展開が容易な包装用段ボールを用いた運搬方法に関し、特に、一斗缶を包装する場合の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一斗缶とは、尺貫法の単位である1斗(約18リットル)の容量をもつ角形の金属缶であり、現在でも、食料油、化粧品用溶液、灯油、塗料等の輸送や保管に広く使用されている。
【0003】
上記の運搬物のうち、食用油や化粧品用溶液については、近年特に、厳しい品質基準が要求される傾向がある。例えば、運搬の途中で一斗缶が障害物等と衝突して、外面にへこみが生じたような場合、たとえ運搬物に品質上の問題がないとしても、かかる一斗缶を不良とみなし、廃棄するとの厳しい扱いをとっている。こうした背景から、一斗缶を用いた運搬業務に携わる運輸業者は、食用油や化粧品用溶液の出荷にあたって、これらを収容した一斗缶を、上記包装用段ボールを用いて梱包した上で、運輸車輌に搭載する。
【0004】
一斗缶を包装するための包装用段ボール構造としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1は、蓋板、左側板、底板が谷折線を介して互いに連接した構造の一斗缶包装箱を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案公開昭63-26509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装用段ボールは、容器を形作る際、糊付けやガムテープ、ビス等を用いて、面と面との間を固定することが一般的である。運搬車両からの荷卸しの際、納品作業者は、上記糊付けやガムテープによる固定を破断して、段ボールによる包装を解体する必要があり、そうした破断作業の煩わしさが、作業者の不評を買っている。
【0007】
また、一斗缶から取り去られた段ボールは、古紙又は燃えるゴミとして集積所に保管し、回収業者に引き渡す必要がある。多くの事業所では、段ボールを平積みにするための保管ルールとして、包装容器として使用された段ボールを板紙の状態に戻すという作業を義務付けていることが多い。段ボール自体に剛性があることから、一斗缶から取り外された段ボールを一枚ずつ、板紙の状態に展開する作業は、決して片手間で行える内容のものではない。そうした保管ルールの履行が納品作業者の負担を更に大きくしているという問題がある。尚、特許文献1に記載された一斗缶包装箱は、蓋片と、左側片とを接合した構成になっており、かかる一斗缶包装箱を解体して板紙の状態に展開するには、包装されている一斗缶を持ち上げるか、またカッター等を用いて一斗缶包装箱の段ボールを解体する必要がある。こうした作業が伴うので、段ボールを板紙の状態に展開するまでの労力が充分削減されるとは言い難い。
【0008】
本発明の目的は、一斗缶からの取り外しから、板紙状態への展開までの一連の作業を簡易に行うことができる包装用段ボールを用いた運搬方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、包装用段ボールを用いて一斗缶を保護して運搬する運搬方法であって、
前記包装用段ボールは、前記一斗缶の外側面を一周するよりも長い横長さを有していて、谷折り線により5個の外接面が長手方向に区画形成され、番目の外接面には、その面上の一部に開口が形成され、番目の外接面のうち、前記開口と対応する箇所には、手作業により前記1番目の外接面の開口を越えて内側に折り返し得る第1折返し片が切れ目を入れた状態で形成されていて、前記第1折返し片の横幅は80mmであり、
更に、3番目の外接面の面上には、手作業により内側に折り返し得る第2折返し片が切れ目を入れた状態で形成されており、前記包装用段ボールの前記1番目の外接面を、前記包装用段ボールの前記5番目の外接面と重ね合わせて、前記第1折返し片を、前記1番目の外接面の開口縁に掛止し、前記第1折返し片と共に、前記第2折返し片を折り返すことでスリーブを構成して、前記一斗缶の外側面を覆い、段ボール外接面と、前記一斗缶の外側面との間に遊びを有する関係としつつも、折り返された前記第1、第2折返し片を用いて、前記一斗缶の外面を圧接することで、前記一斗缶にスリーブを固定する第1ステップと、前記一斗缶をスリーブで覆った状態で、前記一斗缶を運搬する第2ステップと、前記5番目の外接面と、4番目の外接面との谷折り線を軸として、前記5番目の外接面を回転して、前記第1折返し片を前記1番目の外接面の開口から引き抜くことで前記一斗缶から前記スリーブを離脱させる第3ステップとを含むことを特徴とする包装用段ボールを用いた運搬方法により解決される。
【発明の効果】
【0010】
上記包装用段ボール構造では、番目の面から番目の面までの一斗缶の側面を囲み、番目の面と、5番目の面とを重ね合わせ、番目の面の挿通孔に番目の面の折返し片を挿通させることで、段ボールはスリーブになり、一斗缶の側面を覆う。
【0011】
この際、内側に突き立てた折返し片が被装缶の側面と、段ボールとの間に介在し、被装缶の側面を圧迫することで、段ボールは、被装缶の側面に固定される。そのため、被装缶の天板の取っ手を把持して持ち上げたとしても、段ボールがすり落ちることはない。
【0012】
段ボールによる一斗缶の囲繞状態は、第2折返し片を第1面の開口縁に掛止することで維持される。開口縁を掛止めすることによる拘束は、大きな拘束力を伴うものではなく、作業者は第面を反対側に回転することで、容易に解除することができる。これにより作業者は、カッター等の工具を用いることなく、容易に段ボールによる梱包を解体し、板紙の状態に戻すことができる。これにより、段ボールによる梱包を開梱して、段ボール板体を保管スペースに平積みするまでの一連の作業を大きく効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、段ボール板紙100Bの構成を示す。図1(b)は、スリーブ容器100Sの構成を示す。
図2】スリーブ容器100Sの断面構成を示す。
図3】一斗缶200にスリーブ容器100Sを挿通させる過程を示す。
図4】スリーブ容器100Sにより梱包された状態の一斗缶200を示す。
図5】スリーブ容器100Sにより梱包された状態の一斗缶200の断面構成を示す。
図6図6(a)は、スリーブ容器100Sを組み立てる際、作業者がなすべき作業を示す。図6(b)は、スリーブ容器100Sを解体する際、作業者がなすべき作業を示す。
図7】本発明の実施例に係るAフルートタイプの段ボール板紙100Bを示す。
図8】本発明の実施例に係るBフルートタイプの段ボール板紙100Bを示す。
図9】本発明の実施例に係るABフルートタイプの段ボール板紙100Bを示す。
図10図10(a)は、台形フラップ131、矩形フラップ133を具備した段ボール板紙100Cの構成を示す。図10(b)、(c)は、有蓋容器100Dの天面の構成を示す。図10(d)は、台形フラップ131、矩形フラップ133の寸法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る包装用段ボールの実施形態について説明する。本発明に係る段ボール構造は、図1(a)に示す段ボール板紙100Bから、図1(b)に示すスリーブ容器100Sへの組み立てと、図1(a)に示す段ボール板紙100Bへの展開とを容易に行えるものである。
[1]段ボール板紙100B
段ボール板紙100Bは、ABフルートの段ボール原紙を略矩形形状に打ち抜くことで形成され、図1(a)に示すように、右側板101、正面板102、左側板103、背板104、蓋板105を、谷折り線121、122、123、124を介して連接してなる。
【0015】
右側板101~蓋板105は何れも矩形形状である。この右側板101~蓋板105の高さ(図1(a)における高さ100H)は、被装缶である一斗缶の高さと同一値である。また、右側板101~蓋板105の横幅(図1(a)における横幅101W、102W、103W、104W、105W)は、一斗缶の底辺の長さを若干、上回る長さに定められている。一斗缶の底面は、正方形状であり、四辺の底辺は共通の値である。図1(a)における横幅101W、102W、103W、104W、105Wは、この底辺長に若干のマージンを加算した値に設定されている。
段ボール板紙100Bにおいて、右側板101には穿孔111が形成されている。また、左側板103のうち、穿孔111と対向する位置には、折返し片113が切り起こされている。同様に、蓋板105のうち、穿孔111と対向する位置にも、折返し片114が切り起されている。
【0016】
折返し片113の横幅113W及び縦幅113H、折返し片114の横幅114W及び縦幅114Hは、標準的な成人男子の指の径の整数倍に相当する長さに設定されている。そのため作業者は、指先により折返し片113、折返し片114を内側に押し込むことで、折返し片113、折返し片114を、スリーブ容器100Sの内部空間に向けて突出させることができる。
【0017】
[2]スリーブ容器100S
スリーブ容器100Sは、角筒形状であり、図1(b)に示すように、右側板101、正面板102、左側板103、背板104、蓋板105により構成される。スリーブ容器100Sに組み立てられた際、蓋板105は、右側板101を覆った状態になる。蓋板105が右側板101を覆った状態で、蓋板105の折返し片114を内側に折り返し、図1(a)の穿孔111に嵌めいれると、蓋板105は、右側板101に固定される。こうして、蓋板105を右側板101に固定することで、スリーブ容器100Sは完成する。
【0018】
図1(b)のスリーブ容器100Sを、一点鎖線A-Aの位置で切断し矢印の方向から見た場合のスリーブ容器100Sの断面構造を図2に示す。作業者が折返し片114に指を当てて、内側に押し込むことで、折返し片114は、穿孔111を挿通した上、スリーブ容器100Sの内部において、内側に向けて、突出する。折返し片113も同様であり、作業者が折返し片113に指をあてて内側に押し込むと、折返し片113は、内側に向けて、突出する。
【0019】
[3]スリーブ容器100Sによる一斗缶200の挿通
蓋板105を、右側板101に固定した状態で、図3に示すように、一斗缶200にスリーブ容器100Sを覆い被せる。そうすると、一斗缶200の右側面201~背面204は、図4に示すように右側板101~背板104により囲繞される。図4の一点鎖線B-Bの位置でスリーブ容器100Sを切断して矢印の方向から見た場合のスリーブ容器100Sの断面構造を図5に示す。上述したように、右側板101の横幅101W、正面板102の横幅102W、左側板103の横幅103W、背板104の横幅104Wは、一斗缶200の右側面201~背面204の横幅を僅かに上回る大きさに定められている。そのため、スリーブ容器100Sに一斗缶200を挿通した際、スリーブ容器100Sの右側板101と、一斗缶200の右側面201との間には、図5に示すように、僅かな遊び200s、200pが生じる。
【0020】
折返し片113、114が内側に突出した状態で、一斗缶200を挿通したため、折返し片113は、スリーブ容器100Sの左側板103と、一斗缶200の左側面203とに挟持された状態となる。折返し片114も同様であり、スリーブ容器100Sの右側板101と、一斗缶200の右側面201との間に板持された状態となる。このように、折返し片113が挟持されている部分、及び、折返し片114が挟持されている部分は、段ボールの厚みが倍になっているから、当該部分において一斗缶200は、スリーブ容器100Sから強い圧接を受ける。こうした折返し片113、114による圧接により、スリーブ容器100は、一斗缶200に固定される。
【0021】
折返し片114が穿孔111を挿通すると、折返し片114は上向き姿勢となり、フック形状になって穿孔111の開口縁を掛け止める。フック形状になった折返し片114による掛止めにより、蓋板105は、右側板101と重合した状態を維持する。
【0022】
尚、本明細書における遊びとは、折返し片113、折返し片114を折り返さず、ユーザーが取っ手211を把持して一斗缶200を持ち上げた際、スリーブ容器100Sがすり抜けてしまうようなスリーブ容器100Sと、一斗缶200との大きさの関係をいう。こうした遊びは、上記のように右側板101~蓋板105の横幅101W~105Wを一斗缶200の外側面の横幅を上回る長さに設計して段ボール板紙100Bを製造する場合のみならず、右側板101~蓋板105の横幅101W~105Wと、一斗缶200の外側面の横幅とを同じ長さで設計して段ボール板紙100Bを製造する場合とを含む。
【0023】
横幅を同じ長さにしたとしても、スリーブ容器100Sは段ボールを素材している関係上、一斗缶200を緊密に覆うことができず、多かれ少なかれ一斗缶200と、スリーブ容器100Sとの間の空隙により、スリーブ容器100Sがすり落ちる場合がある。こうしたスリーブ容器100Sのすり落ちが発生し得る場合、スリーブ容器100Sには遊びがあるとする。
【0024】
[4]スリーブ容器100Sによる梱包状態
図4において正面板102には角型の穿孔112が切り出されている。穿孔112は、正面板102において大きな面積を占め、正面板102における穿孔112は、一斗缶200の正面202であって、一斗缶200のラベルが貼り付けられた位置に対応する。図4に示すようにスリーブ容器100Sを一斗缶200に挿通させた場合、一斗缶200の印刷ラベル212は、穿孔112を通じて外部に露出する。このように、一斗缶200は、印刷ラベル212を外部に露出した形態で、スリーブ容器100Sにより包装されることになる。
【0025】
印刷ラベル212には、一斗缶200に収容される収容物の品名や原材料名、内容量、賞味期限、保存方法が示される。その他、劇物、毒物の運搬にあたっては、その危険性等が表示されることがある。穿孔112を通じて、こうした印刷ラベル212が露出するので、作業者は一斗缶200を正しく取り扱うことができる。
【0026】
[5]作業者が行うべき作業
スリーブ容器100Sを組み立てる際に行う作業は、右側板101~蓋板105を起立させ、谷折り線121~123を谷折りにし、筒形状にし、折返し片113、114を内側に突き立てるというものである。これにより、糊付けやビス止め、テープの貼付け等の手作業を一切行うことなく、スリーブ容器100Sを完成させることができる。
【0027】
この後、図6(a)に示すように、床面に起立した一斗缶200の上方から、筒形状のスリーブ容器100Sを覆い被せて、スリーブ容器100Sにより一斗缶200を梱包する。ここで、食用油等を収容した状態の一斗缶200は、10~25kgの重量をなす。こうした重量の一斗缶200を持ち上げることなく、一斗缶200を梱包することができるので、作業者の身体的負担は大きく軽減する。
【0028】
段ボール板紙100Bを解体して、段ボール板紙100Bに展開するにあたっては、図6(b)に示すように、作業者が蓋板105を把持して、半時計周り(図6(b)の矢印H2の方向)に蓋板105を回転させればよい。
【0029】
蓋板105を反対側に回転した場合、谷折り線124を支点、作業者の手の位置を力点、折返し片114を作用点としたてこの原理による力(回転モーメント)が働く。折返し片114による穿孔111の開口縁の掛止は、右側板101を強く拘束するものではないから、上記のモーメントを折返し片114に作用させることで、蓋板105の折返し片114を、右側板101の穿孔111から引き抜くことができる。これにより、折返し片114による右側板101の拘束を解くことができる。そのため、作業者は、一斗缶200を持ち上げることなく、スリーブ容器100Sを段ボール板紙100Bの状態に展開することができる。
【0030】
[6]実施例
一斗缶200の寸法(横幅×縦幅×高さ)は、238.0mm±1.0 × 238.0mm±1.0 × H349.5mm±1.0である。厚みは0.32mmとなる。
【0031】
一方、段ボール板紙100Bの製造にあたっては、3mm、5mm、8mmの厚みの段ボール材を用いることができる。
【0032】
(6-1)Aフルートでの構成例
Aフルートの段ボールで段ボール板紙100Bを構成する場合、スリーブ容器100Sを挿通して、一斗缶200の右側面201~背面204と、右側板101~背板104との遊びを確保するには、右側板101、正面板102、左側板103、背板104のそれぞれの横幅を、図7に示すような値に設定することが望ましい。Aフルートは、厚さ約5mmの段ボール材である。この場合、右側板101の横幅を243mm、正面板102の横幅を250mm、左側板103の横幅を246mm、背板104を255mm、蓋板105の横幅を243mmに定める。また、谷折り線121~124は、20mmのスジ押しと、20mmの切り込みとを交互に繰り返すリード罫(20×20mmリード罫)で構成する。
【0033】
正面板102における穿孔112は、横幅を125mm、縦幅を165mmと定め、正面板102の左右の縁部から62.5mm、上縁から75mmのマージンをとって、
正面板102の中央部に形成する。また、窓112の四方の隅部は、曲率R5の丸隅形状とする(図中の4-R5参照)。
【0034】
穿孔111は横幅が80mm、縦幅が50mmであり、右側板101の左縁から80mm、右縁から83mmのマージン、下縁から174mmのマージンをとった位置に設ける。この高さ位置は、一斗缶200の高さ(348mm)の約半分の値である。つまり、一斗缶200の高さ方向の中腹部に、穿孔111は形成されている。
【0035】
折返し片113は穿孔111と同じ大きさで横幅が80mm、縦幅が50mmに設定される。右側板101の左縁から83cm、右縁から83mmのマージン、下縁から174mmのマージンをとった高さ位置に設ける。
【0036】
折返し片114は横幅が80mm、縦幅が47mmに設定される。蓋板105の左縁から83cm、右縁から80mmのマージン、下縁から171mmのマージンをとった高さ位置に設ける。また、折返し片114の付け根には、8mmの間隔で切込みを設ける。更に、穿孔111、折返し片113、折返し片114の隅部は、曲率R20の丸隅形状とする(図中の6-R20参照)。
【0037】
(6-2)Bフルートでの構成例
Bフルートの段ボールで段ボール板紙100Bを構成する場合、右側板101、正面板102、左側板103、背板104のそれぞれの横幅を、図8に示すような値に設定することが望ましい。Bフルートは、厚さ約3mmの段ボール材である。この場合、右側板101の横幅を241mm、正面板102の横幅を243mm、左側板103の横幅を243mm、背板104を246mm、蓋板105の横幅を241mmに定める。
【0038】
正面板102における穿孔112の横幅、縦幅は、Aフルートの場合と同じ値とし、正面板102の左右の縁部からのマージンを少な目にする(59mm参照)、上縁からのマージンは、同じ値でよい。
【0039】
穿孔111の横幅、縦幅はAフルートの場合と同じであるが、右側板101の左縁、右縁からのマージンは少な目にする(79.5mm、81.5mm)、下縁からのマージンは同一でよい。
【0040】
折返し片113の横幅、縦幅はAフルートの場合と同じであるが、右側板101の左縁、右縁からのマージンは少な目にする(81.5mm、81.5mm)、下縁からのマージンは同一でよい。
【0041】
折返し片114は横幅が80mm、縦幅が48mmに設定される。蓋板105の左縁から81.5cm、右縁から79.5mmのマージン、下縁から172mmのマージンをとった高さ位置に設ける。また、折返し片114の付け根には、6mmの間隔で切込みを設ける。
【0042】
(6-3)ABフルートでの構成例
ABフルートの段ボールで段ボール板紙100Bを構成する場合、右側板101、正面板102、左側板103、背板104のそれぞれの横幅を、図9に示すような値に設定することが望ましい。ABフルートは、厚さ約5mmのAフルートと、厚さ約3mmのAフルートとを貼り合わせた構造であり、約8mmの厚みを有する。つまり、右側板101の横幅を245mm、正面板102の横幅を258mm、左側板103の横幅を249mm、背板104を266mm、蓋板105の横幅を245mmに定める。
【0043】
正面板102における穿孔112の横幅、縦幅は、Aフルート、Bフルートと同じ値に定める。正面板102の左右縁部からのマージンは、Aフルート、Bフルートよりも大き目にする(66.5mm)。上縁からのマージンは同じ値でよい。
【0044】
穿孔111は横幅が80mm、縦幅が50mmであり、右側板101の左縁から80.5mm、右縁から84.5mmのマージン、下縁から174mmのマージンをとった位置に設ける。
【0045】
折返し片113は穿孔111と同じ大きさで横幅が80mm、縦幅が50mmに設定され、左縁から84.5cm、右縁から84.5mmのマージン、下縁から174mmのマージンをとった高さ位置に設ける。
【0046】
折返し片114は横幅が77mm、縦幅が42mmに設定される。右側板101の左縁から86cm、右縁から82mmのマージン、下縁から169mmのマージンをとった高さ位置に設ける。また、折返し片114の付け根には、19mmの間隔で切込みを設ける。
【0047】
[7]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが本発明は上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり以下の変形例が考えられる。
【0048】
(変形例1)
段ボール板紙100Bを組み立てた際の形態を、スリーブ形状のスリーブ容器100Sとしたがこれに限らない。有蓋容器として構成してもよい。図10(a)は、有蓋容器を構成する場合の段ボール板紙100Bを示す。
【0049】
本図の段ボール板紙100Cにおいて、右側板101、正面板102、左側板103、背板104の上縁には、折り返し線125~128を介して、台形フラップ131、矩形フラップ133が連接している点が異なる。台形フラップ131の台形端縁131L、台形端縁131Rからは、凸片135、136が左右に向けて突き出ている。また矩形フラップ133の上端には、切込部137、138が形成されている。
【0050】
かかる構成の段ボール板紙100Cにおいて、以下の手順で、有蓋容器100Dを組み立てる。具体的にいうと、図10(b)において台形フラップ131を矩形フラップ133に重ね合わせ、台形フラップ131から突き出た凸片135を、矩形フラップ133の切込部138に嵌めいれる。凸片136についても同様にして、切込部137に嵌めいれる。残りの台形フラップ131の凸片135、凸片136についても、同様の処理を行えば、図10(c)に示すように有蓋の段ボール容器100Dが完成する。かかる有蓋の段ボール容器100Dは組立が簡単であり、一斗缶200の天面を簡易に封函できる。また、図10(a)~(c)では、右側板101、正面板102、左側板103、背板104の上縁に、折り返し線125~128を介して、台形フラップ131、矩形フラップ133を設けたが、これに限らない。右側板101、正面板102、左側板103、背板104の下縁に、折り返し線125~128を介して、台形フラップ131、矩形フラップ133を設け、有底容器を構成してもよい。この場合、台形フラップ131、矩形フラップ133を重ね合わさることで、底板を形成するので、床を傷つけないとの利点がある。段ボール板紙100Cへの展開にあたっては、一斗缶200を僅かに持ち上げるだけでよい。そのため作業者は、僅かな労力を払うことで、床面を保護しつつ、簡単に有底容器100Dを解体することができる。
【0051】
台形フラップ131、凸片135、136の具体的な寸法は図10(d)の通りであり、台形フラップ131の縦幅を70mm、凸片135、136の長さを24mmと定めることが望ましい。
【0052】
(変形例2)
上記実施形態において、スリーブ容器100Sにより包装される金属缶は一斗缶200としたがこれに限らない。円筒形状のペール缶であってもよい。ペール缶とは18リットルまたは20リットルの鋼鉄製の缶であり、潤滑油や塗料、溶剤などの運搬・貯蔵に用いられる。かかるペール缶の包装を行う場合、右側板101、正面板102、左側板103、背板104の横幅は、上記ペール缶の径を若干上回る値に設定する。こうすることで、上記実施形態に述べたように、ペール缶の上記から覆いかぶせる形で、スリーブ容器100Sを挿通させることができる。この際、内側に突き出た折返し片113、折返し片114がペール缶と、右側板101、左側板103との間の遊びに挟まり、圧迫される。この圧迫により、右側板101、左側板103は、ペール缶に固定されることになる。また、金属缶に限らず、引越し用段ボール等の二重梱包にスリーブ容器100Sを利用してもよい。更に、段ボールとよく似た形状の樹脂製ケースの梱包にスリーブ容器100Sを使用してもよい。加えて、家具、精密機械の梱包にスリーブ容器100Sを利用してもよい。更に、スリーブ容器100Sにより包装される被装缶の形状はペール缶の円筒形状、一斗缶の角柱形状に限らない。被装缶の外側面の数Nは、3以上の任意の整数であればよい。
【0053】
(変形例3)
穿孔111、折返し片113、折返し片114の高さ位置については、高さ方向の中央付近としたがこれに限らない。一斗缶200の天板205近くの高さ位置に、穿孔111、折返し片113、折返し片114を設けてもよい。一斗缶200の右側面201~背面204の剛性は、天板205に近づくにつれ大きくなる。このように、右側面201~背面204の剛性が大きい位置に、穿孔111、折返し片113、折返し片114を設けることで、スリーブ容器100Sを一斗缶200に強固に固定することができる。
【0054】
(変形例4)
上記実施形態では、折返し片113-折返し片114の組を一組としたがこれに限らない。右側板101の複数箇所に穿孔111を設け、折返し片113と、折返し片114との組を複数設けてもよい。この場合、右側板101、左側板103において複数箇所で一斗缶200をロックすることができ、スリーブ容器100Sによる固定を強固にすることができる。
【0055】
(変形例5)
上記実施形態では、蓋板105の数を1つとしたが、これに限らない。蓋板105を2つ設けて、右側板101の他、背板104を覆うようにスリーブ容器100Sを構成してもよい。同様に、蓋板105を3つ設けて、右側板101、背板104、左側板103を覆うようにスリーブ容器100Sを構成してもよい。
【0056】
(変形例6)
段ボール板紙100Bを構成する段ボール材は、一対のライナー紙に、芯材を挟み込んだ構成になっており、本実施形態において、この段ボール材の芯材は、縦波又は横波の波目をなす。
【0057】
段ボール材として、縦波のものを使用した場合、段ボール板紙100Bは、折り曲げ易く、折返し片113、114による拘束力が強くなるとの利点がある。逆に、段ボール材として、横波のものを使用した場合、スリーブ容器100Sを堅牢に構成することができる。
【0058】
こうした利点、不利点を勘案して、段ボール板紙100B、スリーブ容器100Sを構成することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、一斗缶200やペール缶を保護する際のスリーブ容器100Sの組み立てや段ボール板紙100Bへの展開を容易に行うことができるので、運輸業界や食料品業界、化粧品業界等様々な産業分野で利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0060】
100 スリーブ容器
100B、100C 段ボール板紙
100D 有蓋容器
100S スリーブ容器
100D 段ボール容器
101 左側板
102 正面板
103 右側板
104 背板
105 蓋板
111、112 穿孔
113、114 折返し片
121~123 谷折り線
131 台形フラップ
133 矩形フラップ
137 切込部
200 一斗缶
212 印刷ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10