(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】スピーカユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
H04R9/02 102A
(21)【出願番号】P 2019547935
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2018030983
(87)【国際公開番号】W WO2019073697
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2017199021
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】田端 孝行
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-000396(JP,U)
【文献】特開2011-004308(JP,A)
【文献】特開平07-154896(JP,A)
【文献】特開2002-159091(JP,A)
【文献】特開平01-225299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周円筒部を有し、前記外周円筒部の内側に磁気ギャップとなる環状の空間が形成された磁気回路と、
前記磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、
中央に貫通する中心穴を有し、外周部側がフレームに支持され、内周部の内周面が前記ボイスコイルに接続される振動板と、を有し、
前記磁気回路の外周円筒部が、前記振動板の振動方向に沿って形成された立壁部と、スリットと、を有し、
前記振動板の内周部は、前記立壁部が挿通する立壁挿入部と、前記スリットに挿通する挿通部と、を有
し、
前記振動板の振動方向のうち、前記振動板が前記磁気回路から離れる方向を上、前記振動板が前記磁気回路へ近づく方向を下とした場合、
前記振動板の内周部の内周面を前記ボイスコイルの下部に接続した
ことを特徴とするスピーカユニット。
【請求項2】
外周円筒部を有し、前記外周円筒部の内側に磁気ギャップとなる環状の空間が形成された磁気回路と、
前記磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、
中央に貫通する中心穴を有し、外周部側がフレームに支持され、内周部の内周面が前記ボイスコイルに接続される振動板と、を有し、
前記磁気回路の外周円筒部が、前記振動板の振動方向に沿って形成された立壁部と、スリットと、を有し、
前記振動板の内周部は、前記立壁部が挿通する立壁挿入部と、前記スリットに挿通する挿通部と、を有
し、
前記フレームに接続されるアウタリング部と、
前記ボイスコイルに接続されるインナリング部と、
前記アウタリング部と前記インナリング部との間を橋渡し、前記スリットに挿通する橋絡部と、
前記立壁部を挿通する開口部と、を有するダンパをさらに有する
ことを特徴とするスピーカユニット。
【請求項3】
前記ボイスコイルを覆うダストキャップを設け、
該ダストキャップは、前記振動板と前記ボイスコイルとに接続されている
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記立壁挿入部は、前記振動板の振動方向に貫通する挿入穴であり、
前記振動板の内周部は、各挿入穴よりも前記振動板の内周側に形成されたリング状の内側環状部を有し、
前記内側環状部の内周面が前記ボイスコイルに接続される
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記振動板の内周部と外周部とが一体に成形されている
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記振動板の内周部の厚みが前記振動板の外周部の厚みより大きい
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のスピーカユニット。
【請求項7】
前記振動板の振動方向において、
前記振動板の内周部と前記ボイスコイルとの接着面の厚みが、前記振動板の外周部の厚みより大きい
ことを特徴とする請求項1
又は2記載のスピーカユニット。
【請求項8】
前記ダストキャップは、
該ダストキャップの外周側に形成され、前記振動板と接続される振動板接続部と、
前記振動板接続部よりも内周側に形成され、前記ボイスコイルの上部と接続されるボイスコイル接続部と、を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載のスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカユニットに関し、更に詳しくは、薄型ピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スピーカユニットに対して薄型化の要求が高まっている。薄型化を実現するスピーカユニットの一例として、
図10-
図11に示す構造のスピーカユニットがある。
図10は
図11の切断線B-O-Cでの断面図、
図11は
図10のダストキャップを除いた上面図である。
【0003】
図10において、磁気回路8は、一方の端面が開放面となった有底円筒状のヨーク4と、ヨーク4の内部底面上に設けられた円盤状のマグネット7と、マグネット7上に積層されるように配置された円盤状のセンターポール6とからなっている。ヨーク4の円筒部には、周方向に沿って60度ピッチで、開放面側の端部から底部に向かって延びるスリット5が6つ設けられている。また、マグネット7の外周面、センターポール6の外周面と、ヨーク4の円筒部の内周面との間には、隙間が形成され、センターポール6の外周面とヨーク4の内周面の間の隙間は磁気ギャップとなっている。
【0004】
この磁気ギャップに配置されるボイスコイル3は円筒状のボビン1と、ボビン1の周面に巻回されたコイル2とからなっている。
二重リング12は、ヨーク4の外周面と空間を介して対向するアウタリング10と、ボイスコイル3のボビン1に接続されるインナリング9と、アウタリング10、インナリング9を接続する6つの継手11とからなっている。継手11は、磁気回路8のスリット5に対応して配置されている。よって、ボイスコイル3と二重リング12とは一体となっている。
【0005】
二重リング12のアウタリング10の下部には、振動板13の内周部が接続されている。振動板13の外周部は、エッジ15を介してフレーム16に取り付けられている。
よって、二重リング12、ボイスコイル3は、ヨーク4と非接触で移動可能である。
また、振動板13の中心部には、ボビン1、二重リング12を覆うダストキャップ17が設けられている。
【0006】
上記構成の作動を説明する。
磁気回路8の磁気ギャップには、磁界が発生している。この磁気ギャップに配置されたボイスコイル3のコイル2に音声信号を流すと、フレミングの左手の法則に起因してボイスコイル3に駆動力(推進力)が発生し、これによって振動板13が振動し、音が放出される。
【0007】
そして上記構成によれば、振動板13の内周面は、二重リング12のアウタリング10の下部に接続されることにより、スピーカユニットの薄型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、
図10-
図11に示す構成のスピーカユニットは、薄型化は図れるが、二重リング12が必要であり、以下のような問題点がある。
(1) 部品点数が多くなり、コストがかかる。
(2) コイル2に発生する熱により、二重リング12の材質は、耐熱性がある金属等に限定され、コストがかかる。
(3) ボイスコイル3により駆動され振動する部分が振動板13と二重リング12との2つの部材からなり、質量が重くなるので、強力な磁気回路8が必要となり、コストがかかる。
(4) 振動する部分の質量が重くなるので、振動板13の応答が悪くなり、音質が悪くなる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、低コストで、音質がよく、薄型化が図れるスピーカユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決する請求項1に係る発明のスピーカユニットは、外周円筒部を有し、前記外周円筒部の内側に磁気ギャップとなる環状の空間が形成された磁気回路と、前記磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、中央に貫通する中心穴を有し、外周部側がフレームに支持され、内周部の内周面が前記ボイスコイルに接続される振動板と、を有し、前記磁気回路の外周円筒部が、前記振動板の振動方向に沿って形成された立壁部と、スリットと、を有し、前記振動板の内周部は、前記立壁部が挿通する立壁挿入部と、前記スリットに挿通する挿通部と、を有し、前記振動板の振動方向のうち、前記振動板が前記磁気回路から離れる方向を上、前記振動板が前記磁気回路へ近づく方向を下とした場合、前記振動板の内周部の内周面を前記ボイスコイルの下部に接続したことを特徴とする。
課題を解決する請求項2に係る発明のスピーカユニットは、外周円筒部を有し、前記外周円筒部の内側に磁気ギャップとなる環状の空間が形成された磁気回路と、前記磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、中央に貫通する中心穴を有し、外周部側がフレームに支持され、内周部の内周面が前記ボイスコイルに接続される振動板と、を有し、前記磁気回路の外周円筒部が、前記振動板の振動方向に沿って形成された立壁部と、スリットと、を有し、前記振動板の内周部は、前記立壁部が挿通する立壁挿入部と、前記スリットに挿通する挿通部と、を有し、前記フレームに接続されるアウタリング部と、前記ボイスコイルに接続されるインナリング部と、前記アウタリング部と前記インナリング部との間を橋渡し、前記スリットに挿通する橋絡部と、前記立壁部を挿通する開口部と、を有するダンパをさらに有することを特徴とする。
【0012】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のスピーカユニットによれば、以下のような効果が得られる。
【0014】
(1) 振動板は、磁気回路の外周円筒部の立壁部が挿通する立壁挿通部と、外周円筒部のスリットに挿通する挿通部と、を有することにより、磁気回路の先端よりも下側で振動板とボイスコイルとを接続できる。このため、振動板の振動方向の高さを低くすることなく、スピーカユニットの薄型化が図れる。また、振動板の高低差(全高)を十分に確保できるので、振動板全体の剛性が低下することを抑制できる。
(2) 振動板の中心穴の内周面とボイスコイルの下部とを接続することにより、振動板の振動方向の高さ(全高)を低くすることなく、確実にスピーカユニットの薄型化が図れる。
(3) スピーカユニットを薄型化するために従来必要であった二重リングが不要となり、部品点数が減り、コストダウンが図れる。
(4) ボイスコイルにより駆動され振動する部分が振動板だけとなり、質量が軽くなるので、強力な磁気回路が不要となり、コストダウンが図れる。
(5) 振動する部分の質量が軽くなるので、振動板の応答がよく、音質がよくなる。
【0015】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のスピーカユニットの第1実施形態を説明する分解斜視図である。
【
図7】
図2の切断線VII-VIIでの断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態のスピーカユニットの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態を説明する。
図1は本発明のスピーカユニットの第1実施形態を説明する分解斜視図、
図2は
図1を組み付けた際の正面図、
図3は
図2の背面図、
図4は
図2のIV方向矢視図、
図5は
図2のV方向矢視図、
図6は
図2の切断線VI-VIでの断面図、
図7は
図2の切断線VII-VIIでの断面図である。
【0018】
最初に、本実施形態のスピーカユニット50の全体構成を説明する。
振動板51の外周部51bは、エッジ55を介してフレーム53に取り付けられている。
振動板51は、外周部51bから内周部51cにかけて中央がへこんだ形状とされ、中央(内周部51c)に振動板51の厚み方向に貫通する円形の中心穴51aが形成されている。又、フレーム53は、振動板51と同じ方向に中央がへこんだ形状とされ、中央に底部53aを有し、さらに底部53aには厚み方向に貫通する穴53bが形成されている。
【0019】
フレーム53の底部53aには、磁気回路61が設けられている。この磁気回路61は、ヨーク63と、マグネット65と、ポールピース66とからなっている。
【0020】
ヨーク63は、難磁性材料でなり、一方の面が開放面となった有底円筒状で、フレーム53の底部53aの穴53bに取り付けられる基部67と、基部67の周縁から振動板51の振動方向(
図1、
図4-
図7において矢印A方向)に沿って、フレーム53の底部53aから離れる方向に延出し、磁気回路61の外周円筒部として機能する円筒状の円筒部69と、を有している(
図6参照)。すなわち、円筒部69が、本発明における外周円筒部とされる。円筒部69には、その開放面側の端部から振動板51の振動方向(矢印A方向)に沿って基部67に向かって延びる複数の立壁部69cとスリット69aとが形成されている。
【0021】
本実施形態のスリット69aは、円筒部69の円周方向に沿って90°ピッチで4つ設けられている。よって、円筒部69は、4つのスリット69aと、この4つのスリット69aにより分けられた4つの立壁部69cと、からなっている。また、基部67には、スリット69aに対応して、外側に延出する4つの取付け部67aが形成されている。これら4つの取付け部67aが、フレーム53の穴53bの周縁に形成された4つの取り付け凹部53cに嵌合することにより、磁気回路61のフレーム53に対する位置決めがなされる。
【0022】
マグネット65は、円板状に形成され、ヨーク63の基部67上に載置される。マグネット65の着磁方向は、振動板51の振動方向(矢印A方向)となっている。マグネット65上には、難磁性材料でなる円板状のポールピース66が載置されている。よって、ヨーク63の円筒部69の内周面と、ポールピース66の外周面との間に環状の空間が形成され、この環状の空間は、周方向に略均一な磁界が発生する磁気ギャップGとなっている。
【0023】
振動板51の内周部51cには、磁気回路61のヨーク63の立壁部69cが挿通する4つの挿入穴57と、磁気回路61のヨーク63のスリット69aに挿通する4つの挿通部59と、が周方向に沿って交互に形成されている。挿入穴57は、振動板51の振動方向(厚み方向)に貫通している。この挿入穴57が、本発明における立壁挿入部とされる。また、振動板51の内周部51cは、各挿入穴57よりも振動板51の内周側に形成されたリング状の内側環状部591と、各挿入穴57よりも振動板51の外周側に形成されたリング状の外側環状部592と、を有している。したがって、内側環状部591と外側環状部592との間に各挿入穴57が形成されている。なお、本実施形態において、内側環状部591の内周面(内周部51cの内周面)により、振動板51の中心穴51aが形成されている。 そして、内側環状部591の内周面がボイスコイル85に接続されている 。
【0024】
なお、図示は省略するが、振動板51の立壁挿入部として、振動板51の挿入穴57の代わりに、振動板51の中心穴51aの内周面に開口した切り欠き形状を形成してもよい。この場合、内側環状部591を形成することなく、各挿通部59の内周面をボイスコイル85に接続するとよい。
【0025】
ボイスコイル85は、ヨーク63の円筒部69(立壁部69c)の内周面と、マグネット65及びポールピース66の外周面との間に配置される筒状のボビン81と、ボビン81の外周面に巻回されたコイル83と、からなっている。そして、コイル83が磁気回路61の磁気ギャップGに位置するように、ボビン81と振動板51の中心穴51aの内周面(振動板51の内周部51cの内周面)とが接続されている。即ち、磁気回路61のヨーク63のスリット69aを介して振動板51の内周部51cの内周面(内側環状部591の内周面)とボイスコイル85とが接続されている。
【0026】
また、振動板51の振動方向(矢印A方向)のうち、振動板51が磁気回路61(ヨーク63の基部67)から離れる方向を上、振動板51が磁気回路61へ近づく方向を下とした場合、ボビン81の下部に振動板51の中心穴51aの内周面(振動板51の内周部51cの内周面)が接続されている。さらに、詳しく説明すると、ヨーク63の基部67側に配置されるボビン81の外周面、即ち、コイル83の下側のボビン81の外周面に振動板51の中心穴51aの内周面(振動板51の内周部51cの内周面)が接続されている。
【0027】
そして、
図7に示すように、振動板51は、外周部51bと内周部51cとが一体に形成されている。また、振動板51の内周部51cの厚みが外周部51bの厚みより大きく(厚く)形成されている。
更に、振動板51の内周部51cは振動方向(矢印A方向)の下側に向かうにつれて漸次縮径する形状に形成されており、振動板51の内周部51cにおいて、外側環状部592よりも内側環状部591が振動方向(矢印A方向)の下側に配置されている。
また、
図6に示すように、振動板51の振動方向(矢印A方向)において、振動板51とボビン81との接着面の厚み(t1)が、外周部51bの厚み(t2) より大きく(厚く)形成されている。
【0028】
振動板51の一部を構成するダストキャップ91は、振動板51の中心穴51aからの塵埃等の浸入を防止するために用いられる。ダストキャップ91は、
図6、
図7に示すように、ボビン81の開口を覆うドーム状のドーム部91cと、振動板51に接続される振動板接続部91aと、ボイスコイル85に接続されるボイスコイル接続部91bと、を有している。振動板接続部91aは、ダストキャップ91の最も外周側に形成されており、振動板51の内周部51cの上側を覆っている。また、ボイスコイル接続部91bは、振動板接続部91aよりも内周側に形成されている。
【0029】
図6では、ダストキャップ91のボイスコイル接続部91bは、ボイスコイル85のコイル83よりも上側のボビン81の外周面(ボビン81の上部)に接続されている。一方、ダストキャップ91の振動板接続部91aの外周縁は、振動板51の内周部51cと外周部51bとの境界付近に位置する内周部51cの外周側に接続されている。また、前述したように、コイル83の下側のボビン81の外周面に振動板51の中心穴51aの内周面(内側環状部591の内周面)が接続されている。このように、振動板51の内周部51cの内周面がボビン81の下部に接続され、内周部51cの外周側がダストキャップ91の振動板接続部91aの外周縁に接続され、ダストキャップ91のボイスコイル接続部91bがボビン81の上部に接続されている。そして、振動板51の内周部51cの上側が振動板接続部91aで覆われることにより、振動板接続部91aの内側には、振動板51の内周部51cとダストキャップ91の振動板接続部91aとボイスコイル85とで囲まれた内部空間が形成されている。
【0030】
又、
図3において、フレーム53にはターミナル52が設けられており、ターミナル52とボイスコイル85のコイル83とは、図示しない錦糸線(リード線)で電気的に接続されている。
【0031】
次に、上記構成のスピーカユニット50の作動を説明する。ターミナル52に入力される電気信号は、錦糸線を介してボイスコイル85のコイル83に流れる。コイル83は、磁気回路61によって発生する磁界内に配置されているので、コイル83(ボイスコイル85)に発生する駆動力により、振動板51が矢印A方向に振動し、音が放射される。
【0032】
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 振動板51は、磁気回路61の円筒部69の立壁部69cが挿通する挿入穴57と、円筒部69のスリット69aに挿通する挿通部59と、を有することにより、磁気回路61の先端(ヨーク63の先端)よりも下側に振動板51とボイスコイル85との接着面を配置できる。このため、振動板51の振動方向の高さを低くすることなく、スピーカユニット50の薄型化が図れる。また、振動板51のコーン形状の高低差を十分に確保できるので、振動板51全体の剛性が低下することを抑制できる。
【0033】
(2) 振動板51の中心穴51aの内周面(振動板51の内周部51cの内周面)とボイスコイル85の下部(ヨーク63の基部67側)とを接続することにより、振動板51の振動方向の高さを低くすることなく、確実にスピーカユニット50の薄型化が図れる。
【0034】
(3) スピーカユニットを薄型化するために従来必要であった二重リングが不要となり、部品点数が減り、コストダウンが図れる。
【0035】
(4) ボイスコイル85により駆動され振動する部分が振動板51だけとなり、質量が軽くなるので、強力な磁気回路が不要となり、コストダウンが図れる。
【0036】
(5) 振動する部分の質量が軽くなるので、振動板51の応答がよく、音質がよくなる。
【0037】
(6) ダストキャップ91は、振動板51に接続される振動板接続部91aと、ボイスコイル85に接続されるボイスコイル接続部91bと、を有することで、振動板51の剛性が高くなる。よって、振動板51内での音が伝播する速度が速くなり、反応(トランジェット特性)がよく、緻密で繊細な音が再現できる。
【0038】
(7) 振動板51の内周部51cと外周部51bとが一体に成形されていることにより、振動板51の剛性を高くすることができる。
【0039】
(8) 振動板51の内周部51cの厚みが振動板51の外周部51bの厚みより大きいことにより、振動板51の内周部51cの剛性を高めながら、振動板51の質量が増加することを抑制できる。
【0040】
(9) 振動板51の内周部51cとボビン81との接着面の振動方向の厚み(t1)が、振動板51の外周部51bの厚み(t2)より大きいことにより、ボビン81と振動板51との接着面積を増加でき、スピーカユニット50の耐久性を向上できる。
【0041】
(10) 振動板51の内側環状部591とボイスコイル85の下部とを接続し、ダストキャップ91のボイスコイル接続部91bとボイスコイル85の上部とを接続し、ダストキャップ91の振動板接続部91aと振動板51の外側環状部592付近とを接続することで、振動板51の内周部51cに挿入穴57を形成しても、振動板51の剛性が低下すること防止でき、振動板51のコーン形状を維持できる。
【0042】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ボイスコイルを支持するダンパがない構成のスピーカユニット50で説明を行ったが、
図8、
図9に示すように、スピーカユニットには、さらにボイスコイルを支持するダンパを設けても良い。
【0043】
図8は本発明の第2実施形態のスピーカユニット150の半断面図、
図9は
図8のダンパ201の斜視図である。
最初に、実施の形態のスピーカユニット150の全体構成を説明する。
【0044】
振動板151の外周部151bは、エッジ155を介してフレーム153に取り付けられている。振動板151は、外周部151bから内周部151cにかけて中央がへこんだ形状とされ、中央(内周部151c)に振動板151の厚み方向に貫通する円形の中心穴151aが形成されている。
【0045】
又、フレーム153は、振動板151と同じ方向に中央がへこんだ形状とされ、中央に底部153aを有し、さらに底部153aには厚み方向に貫通する穴153bが形成されている。フレーム153の底部153aには、磁気回路161が設けられている。この磁気回路161は、ヨーク163と、マグネット165と、ポールピース166とからなっている。
【0046】
ヨーク163は、難磁性材料でなり、一方の面が開放面となった有底円筒状で、フレーム153の底部153aの穴153bに取り付けられる基部167と、基部167の周縁から振動板151の振動方向(
図8において矢印A’方向)に沿って、フレーム153の底部153aから離れる方向に延出し、磁気回路161の外周円筒部として機能する円筒状の円筒部169と、を有している。すなわち、円筒部169が、本発明における外周円筒部とされる。円筒部169には、その開放面側の端部から振動板151の振動方向(矢印A’方向)に沿って基部167に向かって延びる複数の立壁部169cとスリット169aとが形成されている。
【0047】
本実施形態のスリット169aは、円筒部169の円周方向に沿って90°ピッチで4つ設けられている。よって、円筒部169は、4つのスリット169aと、この4つのスリット169aにより分けられた4つの立壁部169cと、からなっている。
【0048】
マグネット165は、円板状に形成され、ヨーク163の基部167上に載置される。マグネット165の着磁方向は、振動板151の振動方向(矢印A’方向)となっている。マグネット165上には、難磁性材料でなる円板状のポールピース166が載置されている。よって、ヨーク163の円筒部169の内周面と、ポールピース166の外周面との間に環状の空間が形成され、この環状の空間は、周方向に略均一な磁界が発生する磁気ギャップG’となっている。
【0049】
振動板151は第1実施形態の振動板51と同じ形状であり、振動板151の内周部151cには、磁気回路161のヨーク163の立壁部169cが挿通する4つの挿入穴(立壁挿入部)157と、磁気回路161のヨーク163のスリット169aに挿通する4つの挿通部159と、が周方向に沿って交互に形成されている。挿入穴157は、振動板151の振動方向(厚み方向)に貫通している。
【0050】
ボイスコイル185は、ヨーク163の円筒部169(立壁部169c)の内周面と、マグネット165及びポールピース166の外周面との間に配置される筒状のボビン181と、ボビン181の外周面に巻回されたコイル183と、からなっている。そして、コイル183が磁気回路161の磁気ギャップG’に位置するように、ボビン181と振動板151の中心穴151aの内周面(振動板151の内周部151cの内周面)とが接続されている。即ち、磁気回路161のヨーク163のスリット169aを介して振動板151の内周部151cの内周面とボイスコイル185とが接続されている。
【0051】
また、振動板151の振動方向(矢印A’方向)のうち、振動板151が磁気回路161(ヨーク163の基部167)から離れる方向を上、振動板151が磁気回路161へ近づく方向を下とした場合、ボビン181の下部に振動板151の中心穴151aの内周面(振動板151の内周部151cの内周面)が接続されている。さらに、詳しく説明すると、ヨーク163の基部167側に配置されるボビン181の外周面、即ち、コイル183の下側のボビン181の外周面に振動板151の中心穴151aの内周面(振動板151の内周部151cの内周面)が接続されている。
【0052】
そして、振動板151は、外周部151bと内周部151cとが一体に形成されている。また、振動板151の内周部151cの厚みが外周部151bの厚みより大きく(厚く)形成されている。
【0053】
振動板151の一部を構成するダストキャップ191は、振動板151の中心穴151aからの塵埃等の浸入を防止するために用いられる。ダストキャップ191は、ボビン181の開口を覆うドーム状のドーム部191cと、振動板151に接続される振動板接続部191aと、ボイスコイル185に接続されるボイスコイル接続部191bと、を有している。振動板接続部191aは、ダストキャップ191の最も外周側に形成されており、振動板151の内周部151cの上側を覆っている。また、ボイスコイル接続部191bは、振動板接続部191aよりも内周側に形成されている。
【0054】
ダストキャップ191のボイスコイル接続部191bは、ボイスコイル185のコイル183よりも上側のボビン181の外周面(ボビン181の上部)に接続されている。一方、ダストキャップ191の振動板接続部191aの外周縁は、振動板151の内周部151cと外周部151bとの境界付近に位置する内周部51cの外周側に接続されている。また、前述したように、コイル183の下側のボビン181の外周面に振動板151の中心穴151aの内周面が接続されている。このように、振動板151の内周部151cの内周面がボビン181の下部に接続され、内周部151cの外周側がダストキャップ191の振動板接続部191aの外周縁に接続され、ダストキャップ191のボイスコイル接続部191bがボビン181の上部に接続されている。そして、振動板151の内周部151cの上側が振動板接続部191aで覆われることにより、振動板接続部191aの内側には、振動板151の内周部151cとダストキャップ191の振動板接続部191aとボイスコイル185とで囲まれた内部空間が形成されている。
【0055】
本実施形態では、ボイスコイル185を支持するダンパ201を有している。
図9に示すように、ダンパ201は、フレーム153に接続されるアウタリング部203と、ボイスコイル185に接続されるインナリング部205と、アウタリング部203とインナリング部205との間を橋渡しする橋絡部207と、これらアウタリング部203とインナリング部205と橋絡部207とに囲まれた開口部209と、を有する。アウタリング部203とインナリング部205とは同心状に形成されており、アウタリング部203の内側にインナリング部205が配置されている。
【0056】
アウタリング部203は、フレーム153の下部側に接続され、エッジ155よりも下側でフレーム153に接続されている。また、インナリング部205は、ボイスコイル185のボビン181と振動板151との接続箇所よりさらに下側でボビン181に接続されている。橋絡部207は、アウタリング部203の半径方向に延出し、アウタリング部203とインナリング部205とを橋渡しするように設けられている。
図9では、ダンパ201は4つの橋絡部207を有している。開口部209は振動板151の振動方向(ダンパ201の厚み方向)に貫通しており、橋絡部207と同数の4つ設けられている。なお、橋絡部207と開口部209の数は、4つずつに限られるものではなく、その他の数を設けることができる。
【0057】
各橋絡部207は、磁気回路161のヨーク163の各スリット169aに挿通している。また、橋絡部207は、半径方向に沿った断面形状が波形となっており、振動板151の振動方向(矢印A’方向)に橋絡部207が撓むことにより、このダンパ201に支持されるボイスコイル185は矢印A’方向に移動可能となっている。また、各開口部209は、磁気回路161のヨーク163の各立壁部169cを挿通している。
【0058】
次に、上記構成のスピーカユニット150の作動を説明する。電気信号がボイスコイル185のコイル183に流れる。コイル183は、磁気回路161によって発生する磁界に配置されているので、コイル183(ボイスコイル185)に発生する駆動力により、振動板151が矢印A’方向に振動し、音が放射される。
【0059】
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 振動板151は、磁気回路161の円筒部169の立壁部169cが挿通する挿入穴157と、円筒部169のスリット169aに挿通する挿通部159と、を有することにより、磁気回路161の先端(ヨーク166)よりも下側に振動板151とボイスコイル185との接着面を配置できる。このため、振動板151の振動方向の高さを低くすることなく、スピーカユニット150の薄型化が図れる。また、振動板151のコーン形状の高低差を十分に確保できるので、振動板151全体の剛性が低下することを抑制できる。
【0060】
(2) 振動板151の中心穴151aの内周面(振動板151の内周部151cの内周面)とボイスコイル185の下部(ヨーク163の基部167側)とを接続することにより、振動板151の振動方向の高さを低くすることなく、確実にスピーカユニット150の薄型化が図れる。
【0061】
(3) スピーカユニットを薄型化するために従来必要であった二重リングが不要となり、部品点数が減り、コストダウンが図れる。
【0062】
(4) ボイスコイル185により駆動され振動する部分が振動板151だけとなり、質量が軽くなるので、強力な磁気回路が不要となり、コストダウンが図れる。
【0063】
(5) 振動する部分の質量が軽くなるので、振動板151の応答がよく、音質がよくなる。
【0064】
(6) ダストキャップ191は、振動板151に接続される振動板接続部191aと、ボイスコイル185に接続されるボイスコイル接続部191bと、を有することで、振動板151の剛性が高くなる。よって、振動板151内での音が伝播する速度が速くなり、反応(トランジェット特性)がよく、緻密で繊細な音が再現できる。
【0065】
(7) 振動板151の内周部151cと外周部151bとが一体に成形されていることにより、振動板151の剛性を高くすることができる。
【0066】
(8) 振動板151の内周部151cの厚みが振動板151の外周部151bの厚みより大きいことにより、振動板151の内周部151cの剛性を高めながら、振動板151の質量が増加することを抑制できる。
【0067】
(9) ボイスコイル185を支持するダンパ201を有することで、ボイスコイル185をエッジ155及び振動体151を介してフレーム153に支持するだけでなく、ダンパ201を介してフレーム153に支持できる。したがって、エッジ155及び振動体151とダンパ201とにより、ボイスコイル185の振動方向の振動を安定して支持できる。また、振動板151が大口径で、ボイスコイル185が大型化してもダンパ201により安定して支持することができ、音質が良くなる。
【符号の説明】
【0068】
50、150 スピーカユニット
51、151 振動板
51a、151a 中心穴
51b、151b 外周部
51c、151c 内周部
53、153 フレーム
57、157 挿入穴(立壁挿入部)
59、159 挿通部
61、161 磁気回路
69、169 円筒部(外周円筒部)
69a、169a スリット
69c、169c 立壁部
85、185 ボイスコイル
A、A’ 振動板の振動方向
G、G’ 磁気ギャップ