IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気興業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図1
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図2
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図3
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図4
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図5
  • 特許-オムニアンテナを用いた通信システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】オムニアンテナを用いた通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/26 20060101AFI20220104BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01Q21/26
H01Q19/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020081144
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176213
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2020-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大岳
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 真一
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/10
H01Q 21/00- 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの端部同士が互いに隣接するように配置された4枚の反射板と、
前記反射板の各面に外向きにそれぞれ取り付けられた1以上の放射素子と、
前記放射素子に給電する給電装置と
を含んでなり、
前記給電装置は、前記放射素子のうちのある反射板に取り付けられた第1組の放射素子と、該第1組の放射素子が取り付けられた反射板に対向する反射板に取り付けられた第2組の放射素子とが互いに逆位相で給電されるように、前記第1組の放射素子の給電方向が、前記第2組の放射素子の給電方向とは反対向きに接続されており、
前記給電装置は1つのハイブリッド回路を含んでおり、該1つのハイブリッド回路が、前記第1組および前記第2組の放射素子以外の別の組の放射素子に所定の位相量で給電することを特徴とする、4面合成のオムニアンテナを用いた通信システム。
【請求項2】
前記給電装置は、前記1のハイブリッド回路の出力それぞれ接続される2分配器をさらに含む、請求項2に記載のオムニアンテナを用いた通信システム。
【請求項3】
前記放射素子は、単一偏波または偏波共用のものである、請求項1または2に記載のオムニアンテナを用いた通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システム等の基地局アンテナに関し、特に4×4MIMOや8×8MIMOなどの通信システムに対応したオムニアンテナ(無指向性アンテナ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体通信システムでは、偏波共用アンテナを使用した2×2MIMO(Multiple Input andMultiple Output)による通信方式が主として利用されている。ここで、MIMOとは、送信機と受信機とがそれぞれ複数のアンテナを使用することによりデータ通信速度を高速化する技術であり、一般に、データ通信に使用されるアンテナ数は「送信×受信」の形式で併記される。
【0003】
そのような従来のオムニアンテナの例を図6(A)~図6(D)に示す。図6(A)は、従来の2×2MIMOオムニアンテナ100のアンテナ俯瞰図を示している。2×2MIMOオムニアンテナ100は、凸部120を有する反射板102と、反射板102の各面に外向きに1つずつ取り付けられた放射素子103とを含み、3面の素子を合成することにより水平面内に無指向性を形成する。この放射素子に偏波共用素子を用いることで、2×2MIMO通信が可能となる。そして、図6(B)は、このオムニアンテナ100を放射素子103のそれぞれの中心を通る断面X’-X’で切断した場合の断面図を示している。また、図6(C)は、従来の4×4MIMOオムニアンテナ200のアンテナ俯瞰図を示している。4×4MIMOオムニアンテナ200は、反射部204及び端部220をそれぞれ有する3枚の反射板202と、反射板202の各面に外向きに2つずつ取り付けられた(図6(D)においてそれぞれ203a~203fで示される)6つの放射素子203とを含んでいる。そして、図6(D)は、このオムニアンテナ200を放射素子203のそれぞれの中心を通る断面Y’-Y’で切断した場合の断面図を示している。ここで、放射素子に偏波共用素子を用いて、3枚の反射板にそれぞれ配置された3つの放射素子203a、203c及び203eの系統と、それ以外の3つの放射素子203b、203d及び203fの別の系統とを、個別に制御してそれぞれ合成することによって、4×4MIMO通信に対応したオムニアンテナを実現している。
【0004】
ここで、図6(B)の2×2MIMOオムニアンテナ100と図6(D)の4×4MIMOオムニアンテナ200とのアンテナ直径を比較すると、アンテナ数を増加したことに伴い、アンテナ直径が(約1.25λから約2.0λへと)約1.6倍に増加している。ここでは、アンテナ直径は、周波数に大きく左右されることを考慮して波長λを用いて表している。
【0005】
現在、より高速な通信を行うために、アンテナ数を増加した4×4MIMOによる通信や8×8MIMOによる通信方式への移行が進められている。そして、通信速度の向上のために、スモールセル局によるエリア構築も進められている。
【0006】
ここで、スモールセル局では、マクロセル局と比較して置局数が多くなることから、設置場所の確保が問題となっている。そのような置局数の確保を制約する一因として、MIMO通信に対応するためのアンテナ寸法の大型化やアンテナ設置数の増加が挙げられる。そこで、移動通信システムに使用する周波数帯の増加に対応するために、複数の周波数帯および偏波を共用した小型のアンテナが求められている。
【0007】
そのような複数の周波数帯および偏波を共用した小型のアンテナとして、例えば、特許文献1の図1および図4には、90°の角度間隔を有して配列されるアンテナ素子より成るアンテナアレイを2段および3段(複数段)設けるとともに、それぞれを一定間隔だけ離間して縦列配置した、ハイブリッド回路を用いた合成アレイアンテナが提案されている。しかしながら、特許文献1の合成アレイアンテナでは、アレイアンテナを複数段設ける必要がある上に、これらを一定間隔離間して縦列配置するため、段数の増加に伴いアンテナサイズが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-120386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後のスモールセル局用のアンテナには、高速通信を行うためアンテナ数を増加した4×4MIMOや8×8MIMOによる通信方式に対応した、寸法の小さいアンテナが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決したオムニアンテナを用いた通信システムを提供する。すなわち、
それぞれの端部同士が互いに隣接するように配置された4枚の反射板と、
前記反射板の各面に外向きにそれぞれ取り付けられた1以上の放射素子と、
前記放射素子に給電する給電装置と
を含んでなり、
前記給電装置は、前記放射素子のうちのある反射板に取り付けられた第1組の放射素子と、該第1組の放射素子が取り付けられた反射板に対向する反射板に取り付けられた第2組の放射素子とが互いに逆位相で給電されるように、前記第1組の放射素子の給電方向が、前記第2組の放射素子の給電方向とは反対向きに接続されていることを特徴とする、4面合成のオムニアンテナを用いた通信システムを提供する。
ここで、前記給電装置は1以上のハイブリッド回路を含んでおり、該1以上のハイブリッド回路が、前記第1組および前記第2組の放射素子以外の別の組の放射素子に所定の位相で給電する態様であってもよい。また、前記給電装置は、前記1以上のハイブリッド回路に接続される2分配器をさらに含む態様であってもよい。さらに、前記放射素子は、単一偏波または偏波共用のものである態様であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各系統の放射素子を共用することによって配置する放射素子数を少なくすることができるので、アンテナの細径化を図ることができる。そして、対向する反射板上にそれぞれ設置された放射素子に所定の給電位相量で給電することにより、比帯域45%以上の広帯域にわたり、周波数特性が良好なオムニ指向性(水平面内指向性)を有し、4×4MIMOや8×8MIMOに対応したオムニアンテナを用いた通信システムを提供することができる。
また、アンテナ同士のヌル方向が互いに補完されるので、エリアを設計する際にデッドスポットの発生を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本発明の実施に用いられるオムニアンテナ1の俯瞰図である。図1(B)は、図1(A)のオムニアンテナ1を断面X-Xで切断した場合の断面図である。
図2図2(A)は、図1(A)のオムニアンテナ1の各面に設置された複数の放射素子を含むアンテナ3に対して所定の給電位相量で給電する、2入力2出力ハイブリッド回路を1個含む給電手段の配線系統図である。図2(B)は、図1(A)のオムニアンテナ1の各面に設置された複数の放射素子を含むアンテナ3に対して所定の給電位相量で給電する、2入力2出力ハイブリッド回路を2個含む別の給電手段の配線系統図である。
図3図3(A)は、図1(A)のオムニアンテナ1のポート1(Port1:実線で示される)及びポート2(Port2:破線で示される)に接続された給電装置によって、表1(c)に示す給電位相量で放射素子3に給電した場合のオムニアンテナ1の水平面内指向性である。図3(B)は、図1(A)のオムニアンテナ1のポート1における周波数特性(1695MHz、2100MHz、2700MHz)を示す水平面内指向性である。
図4】本発明の実施に用いられる8×8MIMOオムニアンテナ1’の断面図である。
図5図5(A)は、図1(A)の4×4MIMOオムニアンテナのアンテナ直径を示す図である。図5(B)は、図4の8×8MIMOオムニアンテナのアンテナ直径を示す図である。
図6図6(A)は、従来の2×2MIMOオムニアンテナ100のアンテナ俯瞰図である。図6(B)は、図6(A)のオムニアンテナ100を断面X’-X’で切断した場合の断面図である。図6(C)は、従来の4×4MIMOオムニアンテナ200のアンテナ俯瞰図である。図6(D)は、図6(C)のオムニアンテナ200を断面Y’-Y’で切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(A)は、本発明の実施に用いられるオムニアンテナ1の俯瞰図である。オムニアンテナ1は、外側に張り出した端部20を含む反射板2を含む。ここで、反射板2は、端部20を含めて一体成形されている。反射板2は平面形状を有し、その端で屈曲して同じく平面状の端部20を有する。そして、オムニアンテナ1は、端部20が互いに隣接するように反射板2を4枚配置した構造を有し、反射板2は正方形の断面を構成する。そして、オムニアンテナ1は、反射板2の各面の中央付近に反射板2の長手方向に沿って外向きにそれぞれ設置された複数の放射素子30、32、34を含む4組の放射素子を有する。ここで、図1(A)には、反射板2が記載されている。図1(A)のオムニアンテナ1は、4つの反射板によって4面として構成され、4面を合成することで水平面内の指向性が無指向となる。
【0014】
次に、図1(B)は、放射素子30の中心を通り、反射板2に垂直な断面X-Xで切断した場合の断面図である。図1(B)より、放射素子30Aと、放射素子30Aが設置された反射板に対向する反射板に設置された放射素子30Cとは、互いに給電方向が反対になるようにする。同様に、放射素子30Bと、放射素子30Bが設置された反射板に対向する反射板に設置された放射素子30Dとは、互いに給電方向が反対になる。この関係はそれぞれ同一の組に属する放射素子32と34についても同様である。
【0015】
図2(A)及び図2(B)は、図1(A)のオムニアンテナ1の各面に設置された複数の放射素子(30、32、34・・・)を含むアンテナ3に所定の位相量で給電する給電装置の配線系統図の一例である。ここで、給電装置は、図1(B)に示すように反射板2の上に設置されている。図2(A)及び図2(B)では、図1(A)の反射板2の4つの面にそれぞれ設置された各組の放射素子3は、(図1(B)で「A」として示す)アンテナA(「ANT A」)と、(図1(B)で「B」として示す)アンテナB(「ANT B」)と、(図1(B)で「C」として示す)アンテナC(「ANT C」)と、(図1(B)で「D」として示す)アンテナD(「ANT D」)とに分けて示されている。ここで、図2(A)に示す給電装置は、ポート1及びポート2に接続された1個の2入力2出力ハイブリッド回路(図2Aにおいて「HYB」で示される)と、この2入力2出力ハイブリッド回路に接続された2個の2分配器(図2(A)において「2DIV」で示される)とを含む。そして、図2(A)では、1つの2分配器が、互いに対向した反射板上に設置されたアンテナAとアンテナCとの2つに接続されており、別の2分配器が、互いに対向した反射板上に設置されたアンテナBとアンテナDとの2つに接続されている。
【0016】
一方、図2(B)に示す給電装置は、ポート1とポート2とにそれぞれ接続された2個の2分配器と、2個の2分配器にそれぞれ接続された2個の2入力2出力ハイブリッド回路とを含む。そして、図2(B)では、1つの2入力2出力ハイブリッド回路が、互いに隣接した反射板上に設置されたアンテナAとアンテナBとに接続されており、別の2入力2出力ハイブリッド回路が、互いに隣接した反射板上に設置されたアンテナCとアンテナDとの2つに接続されている。例えば、図1(B)を参照して、オムニアンテナ1の4つの反射板2に取り囲まれたスペース内(図1(B)のアンテナ中央部の四角形のスペース内)に、(2分配器と2入力2出力ハイブリッド回路とを含む)上記の給電装置を収納することができる(任意選択的に、このアンテナ中央部の四角形のスペース内に、垂直面内指向性の可変チルト機能(図示せず)をさらに収納することもできる)。これによって、システム全体としてのフットプリントが小さくなり、設置場所の選択肢が増えるというメリットがある。
なお、図2(A)および図2(B)は、1つの偏波分に対応する2ポート分の配線系統図を示している。そのため、放射素子に偏波共用素子を用いて4×4MIMO構成とする場合には、図2(A)または図2(B)の回路をアンテナ内に2つ内蔵することにより、4ポートの出力を実現することができる。
【0017】
次に、表1を参照して、図1(B)に示すアンテナA~Dへの給電位相について説明する。表1(a)は、図1(A)の4つのアンテナA~Dに対し、2入力2出力ハイブリッド回路(図2(A)及び図2(B))のポート1及びポート2から給電される給電位相を示す。互いに対向する反射板に設置されたアンテナA及びCに対し、2入力2出力ハイブリッド回路のポート1及びポート2から同じ給電位相(同相)でそれぞれ給電されている。具体的には、アンテナA及びCに対し、2入力2出力ハイブリッド回路のポート1から同じ給電位相0°で給電され、ポート2から同じ給電位相-90°で給電されている。同様に、互いに対向する反射板に設置されたアンテナB及びDに対し、2入力2出力ハイブリッド回路のポート1及びポート2から同じ給電位相(同相)をもって給電されている。ただし、アンテナB及びDの給電位相は、アンテナA及びCの給電位相とはそれぞれ90°異なっている。具体的には、アンテナB及びDに対し、2入力2出力ハイブリッド回路のポート1から同じ給電位相-90°で給電され、ポート2から同じ給電位相0°で給電されている。
【0018】
【表1】
【0019】
次に、表1(b)は、図1(B)に示す4つのアンテナA~Dの給電方向による給電位相を示す。互いに対向する反射板に設置されたアンテナA及びCは、給電方向が反対方向となるよう設置されていることから、アンテナAの給電位相を0°とした場合、アンテナCへの給電位相は-180°と表せる。アンテナBおよびDも同様に、給電方向が反対方向となるよう設置されていることから、アンテナDの給電位相を0°とした場合にアンテナBの給電位相は-180°と表せる。
ここで、アンテナAとアンテナCとを例として、表1(b)に示す両者間の給電位相差である-180°を付与する仕方として、好ましくは、(アンテナAとアンテナCとに対して給電回路から同相で給電される一方で)アンテナAと給電回路との給電方向とアンテナCと給電回路との給電方向とを互いに逆向きになるように設置する。これにより、周波数特性を低減するので、その結果として、アンテナの水平面内指向性の広帯域性を確保することができる。これに対して、給電回路や給電線路において、ある周波数帯で所定の位相差を付与した場合、別の周波数帯ではこれとは異なる位相差となる(例えば、2100MHzで180°の位相差を給電回路で付与した場合、2700MHzでは231.4°の位相差となる)。この場合には、アンテナの水平面内指向性の広帯域性を確保するのが難しい。
さらに、例えば、アンテナAとアンテナBとの間の位相差や、アンテナCとアンテナDとの間の位相差についても、(出力位相が周波数によらず一定であるハイブリッド回路などの)給電回路と同様に逆向きに接続することにより、(給電回路や給電線路において所定の位相量を付与する場合と比較して)アンテナの水平面内指向性の広帯域性を確保することができる。
【0020】
表1(c)は、表1(a)と表1(b)との和に対応するものであり、図1(B)のアンテナA~Dのそれぞれに給電される最終的な給電位相を示している。ここで、ポート1の各アンテナへの給電位相は、図1(B)のアンテナAから右回りに+90°ずつ給電位相が変化することで、図3(A)の実線パターンで示す通り、0°方向から左側に約30°の方向に極大値を持つ指向性が得られる。ポート2の各アンテナへの給電位相はポート1とは反対に、図1(B)のアンテナAから右回りに-90°ずつ給電位相が変化するため、図3(A)の点線パターンに示される通り、0°方向から右側に約30°の方向に極大値を持つ指向性が得られる。
【0021】
図3(A)は、図1(B)のアンテナA~Dに対応するアンテナ3を含むオムニアンテナ1において、ポート1及びポート2に接続された給電装置が表1(c)に示す給電位相量でアンテナ3に給電した場合の水平面内指向性を、(実線で示される)ポート1と(点線で示される)ポート2とに分けて示している。図3(A)を参照すると、対向する反射板上に設置された複数の放射素子のそれぞれに対し、表1(c)に示す異なる給電位相量で給電することによって、オムニアンテナ1は、(実線で示される)ポート1と(点線で示される)ポート2とに接続されたアンテナA~Dの極小方向を互いに補完した水平面内指向性を示している。すなわち、ポート1の水平面内指向性が極小値となる場所(または方向)において、ポート2の水平面内指向性が極大値となっていることがわかる。
ここで、図5(A)に示す4×4MIMO対応のアンテナ構成を、図6(D)に示す従来品の4×4MIMO対応のアンテナ構成と比較する。ここで、図6(D)に示す従来品のアンテナ構成では、設置素子数(面数)が6(3面合成×2)であり、アンテナ直径が2.0λ(約350mm)であるのに対し、図5(A)に示すアンテナ構成では設置される設置素子数(面数)が4でありアンテナ直径が1.39λとなっている。そのため、図5(A)に示すアンテナ構成では、ポート1およびポート2がいずれも図1(B)の放射素子A~Dの4つの放射素子を給電する(つまり、各系統の放射素子を共用する)ことができるので、設置される放射素子の数を少なくすることによってアンテナの細径化を図ることができる。
【0022】
図3(B)は、図1(A)のオムニアンテナ1のポート1に接続された複数の放射素子によるアンテナの周波数特性を示している。ここで、図3(B)において「Low」として点線で示される周波数(1695MHz)と、「Mid」として実線で示される周波数(2100MHz)と、「High」として破線で示される周波数(2700MHz)との3つの周波数帯についての周波数特性を示している。図3(B)より、これらの3つの周波数帯における水平面内指向性は同様の振る舞いをしていることがわかる。すなわち、(各放射素子への給電位相自体に位相差を付与するのではなく、各放射素子への給電方向(配線の接続方向)を互いに逆向きにすることによって)広帯域にわたって付加する位相差が一定となり、周波数によらずほぼ同一の水平面内指向性が得られていることがわかる。また、この場合の比帯域は、(2700-1695)/2100≒47.86%となり、45%以上である。
【0023】
図4は、本発明の実施に用いられる8×8MIMOオムニアンテナ1’の断面図であり、これは図1(A)の4×4MIMOオムニアンテナ1の断面X-Xでの断面図に対応するものである。ただし、図4の8×8MIMOオムニアンテナ1’は、図1(A)の4×4MIMOオムニアンテナ1と比較して、反射板2’の各面上に2つの放射素子が設置されて全部で8つの放射素子30A1~30D2を含んでいる点と、反射板2’の端部20’の形状とが異なっている。ここで、図4に示すオムニアンテナ1’に給電する場合、図1(A)の4×4MIMOオムニアンテナ1が2組含まれると考え、図2(A)または図2(B)に示される給電装置を2つ使用する。この場合、図4の実線で示された放射素子30A1、30B1、30C1及び30D1を、表1(c)に示す給電位相で第1の給電装置が給電する。そして、破線で示された放射素子30A2、30B2、30C2及び30D2を、表1(c)に示す給電位相で第2の給電装置が給電する。一般に、4枚の反射板を含むオムニアンテナの各反射板にN個(N系統)の放射素子を設置した場合(ここで、Nは1以上の整数)、図2(A)または図2(B)に示される給電装置を1偏波当たりN個使用すればよい。すなわち、2系統の偏波共用素子(つまり、2偏波分の放射素子)を配置する8×8MIMOオムニアンテナ1’の場合には、図2(A)または図2(B)に示すハイブリッド回路を、オムニアンテナ1‘内に4つ内蔵すればよい。
【0024】
図5(A)は、図1(A)の4×4MIMOオムニアンテナ1のアンテナ直径(約1.39λ)である。また、図5(B)は、図4に示す8×8MIMOオムニアンテナ1’のアンテナ直径(約2.20λ)である。ここで、4×4MIMO構成を採用する場合、従来構成(図6(D)、φ2.0λ)と本願構成(図5(A)、φ1.39λ)とを比較すると、本願構成を採用することによってアンテナ直径を30%以上も小さくすることができる。また、従来構成である2×2MIMO構成(図6(B)、φ1.24λ)から本願構成である4×4MIMO構成(図5(A)、φ1.39λ)に変更する場合、従来構成とほぼ同じアンテナ直径で4×4MIMO構成を実現することができる。同様に、本願構成(図5(B)、φ2.20λ)を採用することにより、従来構成(図6(D)、φ2.0λ)と比較してほぼ同じアンテナ直径で8×8MIMO構成(図5(B))を実現することができる。
【0025】
以上のように、本発明によれば、各系統の放射素子を共用することによって配置する放射素子数を少なくすることができるので、アンテナの細径化を図ることができる。また、アンテナ直径やアンテナの構成を大きく変更することなく、良好なオムニ指向性(水平面内指向性)を備えたMIMO対応オムニアンテナを実現することができる。
【0026】
本明細書において、特定の実施形態について本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示にすぎない。したがって、例示の実施形態に対して多数の修正を実行することができることや、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の構成を採用することができることが理解されるであろう。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~4の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
それぞれの端部同士が互いに隣接するように配置された4枚の反射板と、
前記反射板の各面に外向きにそれぞれ取り付けられた1以上の放射素子と、
前記放射素子に給電する給電装置と
を含んでなり、
前記給電装置は、前記放射素子のうちのある反射板に取り付けられた第1組の放射素子と、該第1組の放射素子が取り付けられた反射板に対向する反射板に取り付けられた第2組の放射素子とが互いに逆位相で給電されるように、前記第1組の放射素子の給電方向が、前記第2組の放射素子の給電方向とは反対向きに接続されていることを特徴とする、4面合成のオムニアンテナを用いた通信システム。
(請求項2)
前記給電装置は1以上のハイブリッド回路を含んでおり、該1以上のハイブリッド回路が、前記第1組および前記第2組の放射素子以外の別の組の放射素子に所定の位相量で給電する、請求項1に記載のオムニアンテナを用いた通信システム。
(請求項3)
前記給電装置は、前記1以上のハイブリッド回路に接続される2分配器をさらに含む、請求項2に記載のオムニアンテナを用いた通信システム。
(請求項4)
前記放射素子は、単一偏波または偏波共用のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のオムニアンテナを用いた通信システム。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、限定するものではないが、移動体通信システム等の無線通信を含む幅広い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0028】
1、1’ オムニアンテナ
2、2’、102、202 反射板
20、20’、120、220 端部
3 放射素子の組
30、32、34、30A~30D、30A1~30D2 放射素子
100、200 従来のオムニアンテナ
103、203 放射素子
204 反射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6