(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】位置検出装置、及び位置検出システム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B61L25/02 G
(21)【出願番号】P 2020133235
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】關 淳史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】久賀谷 亮
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261028(JP,A)
【文献】特開2003-052105(JP,A)
【文献】特開平06-265617(JP,A)
【文献】特開平09-272438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度情報に基づいて車両位置を演算する演算手段を備える位置検出装置であって、
磁気の強度及び極性を検知する磁気センサと、
磁気マーカの敷設位置を含むデータベースを記憶する記憶手段と、を備え、
前記演算手段は、
前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報から算出される前記車両の走行距離とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定し、誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントするとともに、前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記
走行距離とに基づいて、
前記車両位置の補正を実行するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
車両の速度情報に基づいて車両位置を演算する演算手段を備える位置検出装置であって、
磁気の強度及び極性を検知する磁気センサと、
軌道の延設方向に互いに離間して敷設された同じ極性の複数の磁気マーカによって構成されて前記延設方向に互いに離間して敷設される複数の磁気マーカグループの敷設位置を含むデータベースを記憶する記憶手段と、を備え、
前記演算手段は、前記磁気センサで前記磁気マーカグループ内の磁気マーカを1つでも検知すると、前記磁気マーカグループの検知個数をカウントするとともに、前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正する、
ことを特徴とす
る位置検出装置。
【請求項4】
車両位置を検出する位置検出システムであって、
軌道内に敷設された磁気マーカと、
請求項1又は2に記載の位置検出装置と、を含
み、
前記磁気マーカは、複数の同じ極性でグループを形成し、
隣り合うグループは、互いに異なる極性で敷設される、
ことを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記走行距離とに基づいて、検知した磁気が同じグループ内のものであるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記演算手段は、
前記グループ内の前記磁気マーカを1つでも検知すると、前記車両位置の補正を実行する、
ことを特徴とする
請求項4又は5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記演算手段は、前記グループ内の前記磁気マーカのいずれか、最初に検知した前記磁気マーカのみに基づいて、前記車両位置の補正を実行する、
ことを特徴とする請求項4から5までのいずれか1項に記載の位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の列車制御を行うための位置検出装置、位置検出システム及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の列車制御システムの構成要素である列車の位置検出装置には、地上装置で車両位置を検出するタイプと、車上装置で自車両の位置を認識するタイプとが存在している。
【0003】
地上装置タイプとしては、軌道回路を用いて車両位置を検出するものが、また、車上装置タイプとしては、車両の速度情報を積算することで走行距離を演算し、自らの車両位置を認識するものがそれぞれ知られている。
【0004】
後者の車上装置では、例えば、車両の速度情報を速度発電機から取得すると、速度情報に誤差が多く含まれることになるため、軌道内に敷設されたトランスポンダなどの位置補正子を利用して、車両位置(走行距離)の誤差を定期的にリセット(補正)する必要がある(特許文献1及び2参照)。
【0005】
ここで、近年では人手不足などの影響から、自動運転システムの導入が検討されているが、列車の自動運転には正確な位置検出が必須になっている。すなわち、車両の位置検出に高い分解能が求められてくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-157957号公報
【文献】特開平02-290102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、位置検出の分解能を高めようとすると、地上装置の場合、軌道回路を用いて車両位置を検出するため、分解能に応じて多くの設備や多大な費用が必要になってくる。一方、車上装置の場合でも、誤差のリセット回数を多くしようとすると、トランスポンダも安価とはいえないため、多大な費用が必要になってくる。
【0008】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、車両の位置検出を安価で正確にできる位置検出装置、位置検出システム及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る1つの態様は、車両の速度情報に基づいて車両位置を演算する演算手段を備える位置検出装置であって、磁気の強度及び極性を検知する磁気センサと、磁気マーカの敷設位置を含むデータベースを記憶する記憶手段と、を備え、前記演算手段は、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントするとともに、前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正するものである。
(2)上記(1)の態様において、前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定してもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報とに基づいて、前記車両位置の補正を実行するか否かを判定してもよい。
(4)本発明に係る別の1つの態様は、車両位置を検出する位置検出システムであって、軌道内に敷設された磁気マーカと、上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載の位置検出装置と、を含むものである。
(5)上記(4)の態様において、前記磁気マーカは、複数の同じ極性でグループを形成し、隣り合うグループは、互いに異なる極性で敷設されてもよい。
(6)上記(5)の態様において、前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報とに基づいて、検知した磁気が同じグループ内のものであるか否かを判定してもよい。
(7)本発明に係る更に別の1つの態様は、車両の速度情報に基づいて車両位置を演算する位置検出方法であって、軌道内に敷設された磁気マーカを磁気センサで検知し、検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントし、前記検知個数と、前記磁気マーカの敷設位置を含むデータベースとに基づいて、前記車両位置を補正するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の位置検出を安価で正確にできる位置検出装置、位置検出システム及び位置検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の位置検出システムを示す概略図である。
【
図2A】磁気マーカグループの敷設状態を示す概略図である。
【
図2B】磁気マーカグループの敷設状態を示す部分拡大図である。
【
図3A】位置補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の位置検出システム1を示す概略図である。
位置検出システム1は、鉄道用列車制御システムの構成要素の1つであり、列車2(以降、「車両2」という。)の走行位置を、車上に設けられた位置検出装置10によって検知又は認識できるように構成されている。なお、位置検出システム1は、枕木3b上に2本の線路3aを有する鉄道だけでなく、懸垂式鉄道や跨座式鉄道(いわゆる、モノレール)、あるいは案内軌条式鉄道(いわゆる新交通システム)などにも適用可能である。
【0014】
位置検出装置10は、演算手段11や記憶手段12を少なくとも備えている。また、位置検出装置10は、必要に応じて、検出した位置を表示する表示手段、各種設定を行う入力手段、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナデジ回路、車両操作盤など他の車上装置や列車運行管理システムや自動列車運行制御装置などの地上装置と通信可能な通信手段などを更に備えてもよい。
【0015】
演算手段11は、電源からの電力供給によって動作し、記憶手段12内の各種プログラムに応じて、位置検出装置10の全体動作を制御するものである。なお、演算手段11は、後述する位置補正の処理動作において、位置補正プログラムに従って各ステップの処理を実行するように、コンピュータを構成しているといえる。
【0016】
記憶手段12は、例えば、組込型又は可搬型のROM、フラッシュメモリなどを含むもので、各種機能を実現するためのプログラム、アプリケーション、データなどが格納されている。
【0017】
速度発電機20は、車輪の車軸などに取り付けられ、車両2の速度情報Vに関する信号を出力する。この速度発電機20には、例えば、車輪の回転速度に応じた交流電圧を信号として発生するものや、車輪1回転当たりに所定の数のパルス信号を発生するものなどが用いられる。
【0018】
また、速度発電機20は、演算手段11に接続されており、出力された信号は、演算手段11に入力される。演算手段11は、車輪の回転速度に応じた交流電圧を信号として取得すると、その電圧値から車両2の速度を逆算することができる。さらに、演算手段11は、車両2の速度を積分して、走行距離Lや車両位置Xを演算することができる。
【0019】
このようにして、速度発電機20から出力される信号は、車両位置X及び速度情報Vに置き換えられて、記憶手段12に一時的又は継続的に記憶される。
【0020】
なお、速度発電機20が車輪の回転回数に応じたパルス信号を出力する場合、演算手段11は、入力されたパルス数を単純に積算することで、車輪の回転回数を逆算し、車両2の起点からの移動距離、すなわち車両位置Xを演算することができる。また、演算手段11は、単位時間当たりのパルス数を積算するか、あるいは、車両位置Xをパルス収集時間で割ることで、車両2の速度を演算することができる。
【0021】
ところで、速度情報Vを出力する速度発電機20を用いて車両2の車両位置Xを検出する場合、車輪の空転や滑走、あるいは摩耗によって、検出誤差や演算誤差が発生するため、後述する位置補正処理が必要になってくる。
【0022】
つぎに、磁気センサ30は、敷設された磁気マーカ40に対向するように、車両2(例えば、車体の底面や台車など)に設けられている。この磁気センサ30は、磁気マーカ40の磁気の強度(磁力)及び極性(N極及びS極)を検知可能なものであり、例えば、ホール素子、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、フラックス・ゲートセンサなどが、必要精度に応じて適宜選択される。
【0023】
また、磁気センサ30は、演算手段11に接続されており、出力されたアナログ信号又はデジタル信号は、演算手段11に入力される。演算手段11は、取得した磁気信号に基づいて、磁気マーカ40の検知個数をカウントし、また、磁気マーカ40の極性NSを判断する。
【0024】
なお、検知した磁気マーカ40の検知個数及び極性NSは、記憶手段12に一時的又は継続的に記憶されている。
【0025】
つづいて、位置検出システム1の磁気マーカ40について説明する。
図2Aは、磁気マーカグループMGの敷設状態を示す概略図であり、
図2Bは、磁気マーカグループMGの敷設状態を示す部分拡大図である。なお、
図2Aにおいて、各磁気マーカグループMGにそれぞれ1つの磁気マーカ40のみが図示されているが、この磁気マーカ40はイメージ像であって、本実施形態の例では、
図2Bに示すように、1つの磁気マーカグループMGにそれぞれ同じ極性N(又はS)の3つの磁気マーカ40が敷設されている。
【0026】
磁気マーカ40は、永久磁石で形成されたもので、車両2が走行する軌道3内(例えば、線路3aを支持する枕木3bや枕木3b間のバラストなど)に敷設(埋設)されている。ただし、磁気センサ30で検知可能であれば、磁気マーカ40をその他の場所に敷設してもよい。
【0027】
また、磁気マーカ40は、磁気センサ30との間隔が、磁気マーカ40を検知した際の出力信号の大きさ(つまり、出力値)が、地磁気のみを検知した際の出力値や微弱なノイズよりも十分大きくなるように、設定されている。そして、磁気センサ30の出力値が、現実の磁気マーカ40を検知した際の出力値の一定割合以下(例えば、50%以下)であれば、演算手段11はこれを不感帯域のものとして処理する。
【0028】
つまり、演算手段11は、地磁気やノイズなどによる設定値未満の出力値を磁気センサ30から取得した場合は、磁気マーカ40の磁気を検知したと見做さず、一方、設定値以上の出力値を磁気センサ30から取得した場合は、磁気マーカ40の磁気を検知したと一応判断する。なお、以降の説明において、「磁気マーカ40を検知する」や「磁気センサ30で検知した磁気」や「磁気の検知」などは、磁気センサ30が設定値以上の出力値を出力する場合、あるいは、演算手段11が設定値以上の出力信号を磁気センサ30から取得した場合のことを指すものとする。
【0029】
これらの磁気マーカ40は、同じ極性N(又はS)を有するものが複数個(例えば、本実施形態では3個であるが、これに限らない。)集合して、1つの磁気マーカグループMG(以降、単に「グループMG」という。)を形成している。なお、1つのグループMG内の各磁気マーカ40は、磁気センサ30による検知の際に、互いの磁場が干渉しない間隔P(例えば、25cm~100cm程度)で敷設されるとよい。
【0030】
また、あるk番目のグループMGkと、隣り合うk+1番目のグループMGk+1とは、互いに異なる極性N又はSとなるように敷設されている。そして、グループMGkとグループMGk+1との間隔Dは、例えば、トランスポンダを補正子とした間隔(100m~1000m程度)の半分以下にするとよい。
【0031】
そして、これらの複数の磁気マーカ40からなる複数のグループMGについて、ある起点からの敷設位置(位置情報)を含んで、つまり、グループMGkのグループ番号kと、位置情報xkとが関連付けられて、磁気マーカ40のデータベースDBが構成されている。このデータベースDBは、記憶手段12に記憶されているが、車両2が走行する路線ごとに、書き換えられてもよい。
【0032】
なお、磁気マーカ40は、ある路線の全区間に連続的に敷設されていてもよいが、車両2の運行に重要な施設や地点(例えば、駅(車両基地)、踏切、分岐器、トンネル(地下)、急勾配区間、曲線区間、工事区間など)の付近に断続的に敷設されていてもよい。その場合は、速度発電機20を用いた車両2の車両位置Xから所定の地点に到達すると、位置検出装置10は位置補正処理を開始する。また、運転手の操作により位置補正処理を開始してもよい。
【0033】
最後に、位置検出装置10の位置補正処理について説明する。
図3Aは、位置補正処理を示すフローチャートである。
【0034】
車両2が走行を開始すると、演算手段11は、走行に伴って速度発電機20から出力されるパルス信号に基づいて、速度情報Vを演算し、さらに、現在の車両位置Xを演算し、記憶手段12に記憶する。
【0035】
位置検出装置10は、車両2の走行とともに位置補正処理を開始するか、又は、車両2が所定の地点に到達すると位置補正処理を開始する。
【0036】
ステップS1では、磁気センサ30が磁気マーカ40を検知するまで待機し(ステップS1-NO)、ある地点でグループMGkの磁気マーカ40を検知すると、演算手段11は磁気信号を取得する(ステップS1-YES)。
【0037】
ステップS2では、演算手段11は、磁気マーカ40が存在するグループMGkをカウントし、検知個数に「+1」を加算し、記憶手段12に記憶する。また、演算手段11は、後述する同一グループMG内での磁気検知の回数である同グループMG検知回数をリセットし、カウントを「0」にして記憶手段12に記憶する。
【0038】
ステップS3では、演算手段11は、取得した磁気信号から検知した磁気マーカ40の極性を判断し、例えば極性Nを「1」(極性Sならば「0」)と記憶手段12に記憶する。なお、ステップS2及びS3は、順序が前後してもよい。
【0039】
ステップS4では、演算手段11は、記憶手段12からデータベースDBを読み込み、現在の検知個数に対応するグループMGkのグループ番号kから位置情報xkを取得し、これに基づいて現在の車両位置Xを補正し、時刻とともに記憶手段12に記憶する。その後、ステップS5に進み、次の磁気マーカ40を検知するまで待機する(ステップS5-NO)。
【0040】
その後、次の磁気マーカ40を検知すると、演算手段11は磁気信号を取得する(ステップS5-YES)。
【0041】
ステップS6では、演算手段11は、ステップS3において記憶手段12に記憶した最新の磁気マーカ40の極性NSと、今回取得した磁気の極性NSとを比較し、異なれば「True」のフラグを立て、同じであれば「False」のフラグを立てる。
【0042】
そして、ステップS7において、記憶手段12に記憶している最新の磁気マーカ40の検知位置(車両位置X)から今回取得した磁気信号の検知位置までの走行距離L(速度情報Vと経過時間に基づいて演算可能である。)と、次のグループMGk+1の磁気マーカ40の敷設間隔Dに基づいて設定された閾値Tと、とを比較し、走行距離Lが閾値T以上であれば「True」のフラグを立て、閾値T未満であれば「False」のフラグを立てる。なお、本実施形態では、閾値Tは、2P<T<2(D-P)の範囲に設定される。
【0043】
ステップS8では、演算手段11は、判定マトリクスに従って検知結果の判定を実行する。
図3Bは、判定マトリクスを示す表である。
この判定マトリクスでは、ステップS6の磁気極性の比較の結果と、ステップS7の走行距離の比較の結果とから、(A)「Detect」、(B)「Same」及び(C)「Error」を判定する。
【0044】
そして、「磁気極性の比較」及び「走行距離の比較」の結果、「True」のフラグが2本立てば「Detect」、「True」(又は「False」)のフラグが1本だけ立てば「Error」、「False」のフラグが2本立てば「Same」と判定する。
【0045】
(A)「Detect」は、今回取得した磁気信号は、次のグループMGk+1の磁気マーカ40のものであると判定する。
(B)「Error」は、今回取得した磁気信号は、磁気の誤検知(又は誤作動)であると判定する。
(C)「Same」は、今回取得した磁気信号は、同じグループMGkの磁気マーカ40のものであると判定する。
【0046】
この判定マトリクスによって、閾値T未満の走行距離Lで、同じ極性N(又はS)の磁気を連続して検知した場合には、新たに検知した磁気は、同じグループMGkの磁気マーカ40のものであると判定することができ、また、閾値T以上の走行距離Lで、同じ極性N(又はS)の磁気を連続して検知した場合か、閾値T未満の走行距離Lで、異なる極性N(又はS)の磁気を検知した場合には、新たに検知した磁気は、磁気の誤検知であると判定することができる。そして、閾値T以上の走行距離Lで、異なる極性N(又はS)の磁気を検知した場合には、新たに検知した磁気は、次のグループMGk+1の磁気マーカ40のものであると判定することができる。
【0047】
図3Aに戻って、ステップS8の判定マトリクスの結果、「Same」となった場合、演算手段11は、検知個数の加算や極性NSの記憶を行うことなく、ステップS9で磁気信号の検知があった旨の記録を、時刻や車両位置Xとともに記憶手段12に記憶する。
【0048】
ステップS10では、演算手段11は、同グループMG内の磁気マーカ40を検知したとして同グループMG検知回数に「+1」を加算し、記憶手段12に記憶して、ステップS11に進む。
【0049】
ここで、1つのグループMG内には、同じ極性N(又はS)を有する3つの磁気マーカ40が存在するため、4回連続同じ極性N(又は極性S)を検知することは、通常発生しない。よって、判定マトリクスでの判定で「Same」が3回連続する場合、すなわちステップS11において、同グループMG検知回数が「3」を超える場合(ステップS11-YES)は、磁気の誤検知と判定し、「Error」と見做してステップS12に進む。また、同グループMG検知回数が「2」以下の場合(ステップS11-NO)ならば、ステップS5に進む。
【0050】
ステップS8の判定マトリクスの結果、「Detect」となった場合、ステップS2に戻り、再び、演算手段11は、検知個数に「+1」を加算し、記憶手段12に記憶する。また、演算手段11は、同グループMG検知回数をリセットし、カウントを「0」にして記憶手段12に記憶する。
【0051】
このように、検知個数のカウントは、検知した磁気マーカ40が同じグループMGkのものでなく、次のグループMGk+1のものである場合に行われ、同じグループMGkのものである場合には行われない。これは、同じグループMG内に存在する複数の磁気マーカ40を、実質的に1つの磁気マーカ40と見做すためである。
【0052】
つづいて、ステップS3では、検知した磁気マーカ40の極性Sが、次のグループMGk+1のものであり、先に検知した磁気マーカ40の極性Nと反対であるため、演算手段11は、磁気マーカ40の極性Sを、今回は「0」と記憶手段12に記憶する。
【0053】
ステップS4では、演算手段11は、記憶手段12からデータベースDBを読み込み、現在の検知個数に対応するグループMGk+1のグループ番号k+1から位置情報xk+1を取得し、これに基づいて現在の車両位置Xを補正し、記憶手段12に記憶する。その後、前回と同様にステップS5から各ステップに進む。
【0054】
そして、車両2が終着駅などで運行を停止すると、位置検出装置10は位置補正処理を停止する。
【0055】
一方、ステップS8の判定マトリクスの結果、「Error」となった場合、演算手段11は、磁気センサ30の誤検知や誤作動によるエラーを外部に通信手段などを介して報知し(ステップS12)、位置検出装置10は位置補正処理を停止して、システムのリセットなど再起動を待つことになる。なお、誤検知や誤作動は、磁気センサ30による極性NSの誤認や外部ノイズ、あるいは軌道3内の落下物などにより引き起こされる。
【0056】
また、エラーを報知した後は、駅や車両基地などの安全な施設まで、速度情報Vに基づいて車両位置Xを検出した上で徐行し、到着後に、リセットを行ったり、入力手段を用いて、車両位置Xや検出個数などの変更を手動で行ったりするとよい。
【0057】
このように、位置検出装置10の位置補正処理では、あるグループMGkの磁気マーカ40のうちいずれか1つでも検知されると、残りの検知結果に関わらず、その時点で車両位置Xの位置補正をまず実行する。よって、あるグループMGk内の両端の磁気マーカ40同士の離間距離(本実施形態では、間隔Pの2倍)が、位置補正の誤差になるが、100cm程度であれば、車両2の運行に支障をきたすことがない。なお、あるグループMGkの磁気マーカ40のうち1つしか検知できなかったとしても、「Error」と判定することがない。
【0058】
また、1つのグループMG内には、同じ極性N(又はS)を有する3つの磁気マーカ40が存在するため、4回連続同じ極性N(又はS)を検知することは、通常発生しない。よって、判定マトリクスでの判定を少なくとも3回実行することで、「Same」が3回連続する場合も、「Error」と見做して、磁気の誤検知と判定することができる。なお、1つのグループMG内の磁気マーカ40が4つであれば、判定マトリクスでの判定を少なくとも4回実行すればよいといえる。
【0059】
ところで、例えば、磁気センサ30による磁気マーカ40の見逃し率をEとし、グループMGを構成する磁気マーカ40の個数をnとすると、グループMGの見逃し率は、F=Enとなるから、見逃し率Eを小さくするか、個数nを増やすかで、グループMGの見逃し率Fを小さくすることできる。本実施形態では、n=3であるため、Fの目標値を1×10-8以下にする場合、E=1×10-3程度となるように磁気センサ30の種類や磁気センサ30と磁気マーカ40との対向距離を選択するとよい。また、E=1×10-4程度となるようにできれば、n=2となり、磁気マーカ40の個数を減らすことができる。
【0060】
また、車両位置Xの補正記録や、ステップS9において記憶手段12に記憶した「磁気信号の検知があった旨」の記録を解析することで、磁気センサ30が見逃した磁気マーカ40の敷設位置や磁気マーカ40以外の磁気を検知した位置を確認することができ、軌道3の保守作業時に、磁気マーカ40の位置調整や磁気強度の変更や落下物の回収などに役立てることができる。
【0061】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態の位置検出装置10は、車両2の速度情報Vに基づいて車両位置Xを演算する演算手段11を備える位置検出装置10であって、磁気の強度及び極性NSを検知する磁気センサ30と、磁気マーカ40の敷設位置を含むデータベースDBを記憶する記憶手段12と、を備え、演算手段11は、磁気センサ30で検知された磁気マーカ40の検知個数をカウントするとともに、検知個数とデータベースDBとに基づいて、車両位置Xを補正するものである。
【0062】
また、本発明に係る実施形態の位置検出方法は、車両2の速度情報Vに基づいて車両位置Xを演算する位置検出方法であって、軌道3内に敷設された磁気マーカ40を磁気センサ30で検知し、検知された磁気マーカ40の検知個数をカウントし、検知個数と、磁気マーカ40の敷設位置を含むデータベースDBとに基づいて、車両位置Xを補正するものである。
【0063】
これにより、外部から補正信号を取得することなく、車上に設けられた位置検出装置10で、車両位置Xを逐次補正することができ、車両2の位置検出の精度を向上させることができる。
【0064】
本実施形態の演算手段11は、磁気センサ30で検知した磁気マーカ40の極性NS(新たに検知した磁気の極性NS及び1つ前に検知した磁気の極性NS)と、速度情報V(走行距離Lが閾値T以上であるか否か)とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定する。これにより、ノイズなどの外乱による磁気の誤検知を検出することできる。
【0065】
本実施形態の演算手段11は、磁気センサ30で検知した磁気マーカ40の極性NSと、速度情報Vとに基づいて、車両位置Xの補正を実行するか否かを判定する。これにより、磁気の誤検知などがあった場合には、車両位置Xの補正を実行しないようにすることができる。
【0066】
本実施形態の位置検出システム1では、磁気マーカ40は、複数の同じ極性N(又はS)で磁気マーカグループMGを形成し、隣り合う磁気マーカグループMGは、互いに異なる極性NSで軌道3内に敷設されている。これにより、ノイズなどの外乱により、磁気センサ30による磁気マーカ40の見逃しが起きたとしても、同じ磁気マーカグループMG内で複数回検知を行うことができ、車両位置Xの検出精度や信頼性を向上させることができる。また、地上補正子である磁気マーカ40に永久磁石を用いることで、費用を抑えることができ、保守作業を減らすことができる。
【0067】
本実施形態の演算手段11は、磁気センサ30で検知した磁気の極性NSと、速度情報Vに基づいて、検知した磁気の極性NSが同じグループMGk内のものであるか否かを判定する。これにより、検知した磁気マーカ40が次のグループMGk+1のものであれば、車両位置Xの補正を実行することができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0069】
(変形例)
上記実施形態では、磁気マーカグループMGは、隣り合う磁気マーカグループMG同士が異なる極性NSとなるように敷設されたが、所定の規則(例えば、N極を「1」、S極を「0」として、繰り返し周期が最大となるM系列など)に従った配列で敷設されてもよい。そして、この場合、「Error」などの判定は、同じ極性NSが連続したときでなく、データベースDB内の極性NSの配列と一致しないときになる。
【0070】
上記実施形態では、磁気マーカグループMGは、複数の磁気マーカ40からなる集合で構成したが、磁気検知の信頼性やエラー発生時の安全性に問題がない場合には、磁気マーカグループMG構成する磁気マーカの数は1つでも構わない。
【0071】
つまり、真に
図2Aに示すとおり、単一の磁気マーカ40で1つの磁気マーカグループMGを構成してもよい。このとき、磁気マーカ40は、S極及びN極の極性が交互に異なるように敷設されることになる。そして、磁気マーカ40の検知個数は、グループMGの検知個数でなく、真に磁気マーカ40の検知個数となる。また、同グループMG検知回数が「1」となる場合は、磁気の誤検知と判定される。
【0072】
なお、隣り合う磁気マーカグループMGの間隔D(この場合、隣り合う磁気マーカ40の間隔Dとなる。)を、例えば、トランスポンダを補正子とした敷設間隔の半分以下にすることで、磁気センサ30が1つの磁気マーカ40を完全に見逃す検知漏れ(エラー)があったとしても、従前の補正間隔を上回ることができる。そのため、位置検出装置10による位置検出の誤差は致命的なものとならない。ただし、システム上の安全性が確保できる間隔Dであれば、上記のものに限らない。また、この場合でも、上記変形例で述べたように、交互配列以外のものであってもよい。
【0073】
上記実施形態では、ステップS8で判定マトリクスに従って判定を実行したが、判定マトリクスを分解して、ステップS6の磁気極性の比較で分岐した後、ステップS7の走行距離の比較をそれぞれ判定してもよい。
【0074】
上記実施形態では、速度情報Vを車軸に取り付けた速度発電機20から出力される信号に基づいて演算していたが、速度情報Vは、車両2の走行モータの回転速度やモータ制御盤の指令信号などから演算するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態の位置検出システム1は、衛星測位システム単独で、あるいは、速度発電機20を併用して車両位置X及び速度情報Vを演算するようなものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 位置検出システム
2 車両(列車)
3 軌道、3a 線路、3b 枕木
10 位置検出装置
11 演算手段
12 記憶手段、DB データベース
20 速度発電機
30 磁気センサ
40 磁気マーカ、MG 磁気マーカグループ(グループ)
V 速度情報
X 車両位置
【要約】
【課題】車両の位置検出を安価で正確にできる位置検出装置、位置検出システム及び位置検出方法を提供する。
【解決手段】車両2の速度情報V(20)に基づいて車両位置Xを演算する演算手段11を備える位置検出装置10であって、磁気の強度及び極性NSを検知する磁気センサ30と、磁気マーカ40の敷設位置を含むデータベースDBを記憶する記憶手段12と、を備え、演算手段11は、磁気センサ30で検知された磁気マーカ40の検知個数をカウントするとともに、検知個数とデータベースDBとに基づいて、車両位置Xを補正するものである。
【選択図】
図1