(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】軟組織移植片の固定のための双方向調節可能なループ式懸架装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20220104BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61F2/08
A61B17/04
(21)【出願番号】P 2020513277
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 US2018049698
(87)【国際公開番号】W WO2019051050
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-04-14
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カム アンドリュー
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02980356(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189007(US,A1)
【文献】特開2014-171896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨孔内に置換移植片靭帯を固定するための懸架移植片固定装置であって、
上面および底面
、並びに、前記上面から前記底面まで延びる隣接した第一および第二の縫合糸受容開口部を備える細長いアンカー部材と、
前記
細長いアンカー部材に取り付けられた移植片支持ループ要素であって、前記移植片支持ループ要素が第一のリムおよび第二のリムを含む縫合糸で形成される、移植片支持ループ要素と、を備え、
第一および第二のループが前記縫合糸に形成され
かつ前記細長いアンカー部材の前記底面から延びる一方、前記第一および第二のリムが前記上面から延びるように、
前記縫合糸が前記第一および第二の縫合糸受容開口部を通って進み、前記細長いアンカー部材の前記上面から延びる縫合糸の前記第二のリムにスプライスが形成され、前記第一のリムが前記スプライスを通って延びる、懸架移植片固定装置。
【請求項2】
前記第一のリムと前記第二のリムとの間に延びる中央
湾曲部分をさらに備え、前記中央
湾曲部分が、前記第一および第二の縫合糸受容開口部の間の前記細長いアンカー部材の中央ブリッジ部分の上に延びる、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項3】
前記第一のリムが、前記第一の縫合糸受容開口部を通して、前記上面から前記底面に延び、前記第二の縫合糸受容開口部を通して、前記底面から前記上面に延びる、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項4】
前記第二のリムが、前記第二の縫合糸受容開口部を通して、前記上面から前記底面に延び、前記第一の縫合糸受容開口部を通して、前記底面から前記上面に延びる、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項5】
前記第一のループが、前記第一のリムによって形成される、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項6】
前記第二のループが、前記第二のリムによって形成される、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項7】
前記細長いアンカー部材がチタンから成る、請求項1に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項8】
前記細長いアンカー部材の前記上面と前記底面とが、前記細長いアンカー部材の第一の端部と第二の端部との間に延び、
前記第一のループは、前記第一のループに張力がかかると前記スプライスを通して前記第一のリムが引っ張られ
て前記第一のループが長くな
るように形成され、
前記第二のループは、前記第二のループに張力がかかると前記第一の縫合糸受容開口部の上に前記スプライスが引っ張られる
ように形成される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項9】
前記上面から前記底面に延びる前記細長いアンカー部材の前記第一の端部
又は前記第二の端部に
配置開口部をさらに備え、
前記配置開口部がそこを通って
配置縫合糸を受容するように構成される、請求項8に記載の懸架移植片固定装置。
【請求項10】
前記第一のループに接続されたテザーをさらに備える、請求項8に記載の懸架移植片固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月7日に出願され、「2-Way Adjustable Loop Suspensory Device」と題された、米国仮特許出願第62/555081号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、軟組織損傷の修復および再建のための外科手術装置に一般的に関し、より具体的には、外科手術部位で軟組織移植片を固定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
多くの一般的な外科手術手順には、引き裂かれまたは損傷した軟組織の修復および再建が関与する。例えば、一般的な関節鏡検査外科手術手順において、置換移植片靭帯は、今は損傷を受けている、元の靭帯部位で固定される。引き裂かれまたは損傷した軟組織の修復および再建は、一般的な外科手術手順である。例えば、置換移植片靭帯は、元の靭帯の部位に固定されうる。手順には、一般的に、元の靭帯の部位に隣接する骨に骨孔をあけること、およびこれらの骨孔内に移植片靱帯を固定することが関与する。膝関節などの多くの用途では、こうした手順は関節鏡で実施されうる。移植片靭帯は、自己移植片、同種移植片、異種移植片、または完全に人工的および合成でありうる。一般的なタイプの前十字靱帯(ACL)移植片は、例えば、自己もしくは同種移植片の骨膝蓋腱骨または軟組織(半腱様筋腱および薄筋腱など)であってもよく、両方のタイプが当業者に周知の技術で得られる。
【0004】
移植片靭帯は、様々な方法で骨孔内に固定されうる。最重要なのは、完治する前に引き抜く力に耐えることができる程度である。例えば、孔軸に平行に挿入した干渉ねじを使用して、移植片靭帯の端部を骨孔の壁に押し付けて移植片靭帯を固定し、組織の内部成長を促進させることは公知である。
【0005】
骨孔内に移植片靭帯を固定するために、懸架移植片固定装置が開発されてきた。こうした装置の一つは、米国特許 第8,852,250号(Lombardo et al.)に記載され、Graft Fixation Implantと題され、本譲受人に割り当てられ、参照により本明細書に援用される。懸架移植片固定装置は、骨孔の開口部を横切って横たわることによって機能し、移植片が取り付けられる(この場合、大腿骨)骨の表面の固定点からの移植片保持ループを懸架する、細長いアンカー部材の形態を一般的に取る。細長い部材は、軸と、細長い部材の中心の両側の軸上に対称的に位置する、一対の縫合糸受容開口部とを有する。ACL手順では、しばしばボタンと呼ばれる細長い部材は、外側大腿骨皮質の骨孔の出口開口部を横断して位置付けられるように適合され、一般的に縫合材料で作られた支持ループを、ボタンから吊り下げ、ボタンの縫合糸受容開口部から骨孔内に延ばすことができるようになる。縫合糸ループは、ループを通過した移植片靭帯の一端を支持する。
【0006】
本明細書で使用される場合、「縫合」という用語は、本明細書に記載の装置に必要な、ループ支持および摩擦抵抗を提供できる、生体適合性または生体吸収性のフィラメント、リボン、テープ、織布、または不織布材料などの任意のタイプの繊維状材料であってもよい。ACL再建などの関節鏡検査作手順では、細長いアンカー部材は最初は骨孔の軸と整列し、孔を通って外側大腿骨の遠位端の出口まで引っ張られる。このような懸架移植片固定装置では、移植片靭帯を支持し、骨孔の出口に適切に横方向に配置できるようにするために、縫合糸ループおよび骨孔は両方とも、細長い部材が骨孔を抜け出た時に、軸方向に整列した配向から横方向に「反転」できるように十分に長い必要がある。
【0007】
このような懸架装置の支持ループは、ほとんどの場合、固定された長さのものであるため、移植片固定は所定の長さの移植片靭帯の調製を必要とする。さらに、従来技術の懸架移植片固定装置は、固定ループ長さを有するため、外科手術手順の間に遭遇しうる様々な移植片および孔の長さを適応させるために、複数のサイズ(例えば、ConMed Corporation, Largo,Fla.によって製造されたXO Button(登録商標)インプラントの場合、ループ長さは15mm~60mmの範囲で5mmずつ増加)で製造される。固定された移植片の長さ、ならびに孔およびループ長さのばらつきにより、従来的な懸架靭帯固定が困難になりうる。
【0008】
最近では、調節可能なループ長さを有する懸架装置が作られてきた。例えば、2010年10月7日発行され、Integrated Adjustable Button-Suture-Graft Construct with Two Fixation Devicesと題された、米国特許出願第2010/0256677号(Albertorio et al.)を参照のこと。懸架移植片固定装置のループ長さの調節機能は、前述の刊行物に記述されたものよりもかなり単純な方法で達成されうることが分かっている。
【0009】
時々、外科医は、懸架固定に適した靭帯移植片を受容するのに、適切な長さの骨孔を生成できない状況に遭遇する場合がある。適切な治癒のために骨孔の所定の部分と係合するために、所定の長さの移植片靭帯が必要である。例えば、いわゆる短孔ACL再建は、比較的小さな(狭い)大腿骨を呈することがあり、これは十分に長い骨孔の形成を可能にせず、つまり懸架アンカー部材を、孔から十分に遠くまで進めて、移植片と骨孔壁との間の十分な接触を維持することはできない。それにもかかわらず、こうした状況で調節可能なループを使用すると、外科医は懸架型修復を進めること可能になりうる。
【0010】
ACL再建などの骨孔に軟組織が引き込まれる場合、手順を簡略化し、骨と軟組織の境界面を最大化するために、調節可能なループを有することが望ましい。
【0011】
関連技術セクションの免責条項の説明:特定の特許/刊行物/用途/製品がこの関連技術セクションの説明またはこの開示の他の場所で議論されている限り、これらの議論は議論された特許/刊行物/製品は特許法の目的のための先行技術であるという許可として受け取るべきではない。例えば、考察された特許/刊行物/製品の一部または全ては、時間的に十分早期でなくてもよく、時間的に十分初期に発展した主題を反映しなくてもよく、および/または特許法の目的のために先行技術なるように、十分に有効化されなくてもよい。特定の特許/刊行物/用途/製品が、この関連技術セクションの説明および/または出願全体を通して上記で議論されている限り、その説明/開示は参照により全て本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の実施形態は、(本明細書では上記で論じた)従来的な懸架移植片固定装置での潜在的な問題および/または欠点があることを認識する。本発明のさまざまな実施形態は、本明細書に記載される潜在的な問題および/または欠点のうちの一つまたは複数を解決または減少させ得るという点で有利であり得る。
【0013】
本開示は、外科手術部位に軟組織移植片を固定するための装置および方法に関する。短孔修理に適した懸架移植片靭帯修復システムを製造することが本発明の目的である。
【0014】
望ましい長さに設定した後に、移植片支持ループのサイズおよび位置をロックするよう適合された、懸架移植片固定装置を製造することが、本発明の別の目的である。
【0015】
また、アンカー部材に対して一方向に引っ張ることによって、移植片支持ループを自動的にロックし、反対方向に引っ張ることによって、移植片支持ループの長さを変え、サイズ変更することも本発明の一つの目的である。
【0016】
さらにこの発明の別の目的は、例えば、移植片の過張力、または移植片が骨孔内の奥深くまで進みすぎた場合に、修正することである。
【0017】
一態様では、骨孔内に置換移植片靭帯を固定するための懸架移植片固定装置が提供される。懸架移植片固定装置は、上面および底面を有する細長いアンカー部材、およびその上面から底面まで延びる、隣接した第一および第二の縫合糸受容開口部を含む。移植片支持ループ要素は、アンカー部材に取り付けられ、第一および第二のリムを有する縫合糸で形成される。縫合糸は、第一および第二の縫合糸受容開口部を通って進み、これにより第一および第二のループが縫合糸に形成される。第一および第二のループは底面から延び、第一および第二のリムは上面から延びる。スプライスは、上面から延びる第二のリムに形成され、第一のリムはスプライスを通って延びる。
【0018】
別の態様によれば、懸架移植片固定装置は、第一の端部と第二の端部との間に延びる上面および底面を有する細長いアンカー部材を含む。複数の開口部は、細長いアンカー部材の上面から底面へと延びる。複数の開口部のうちの少なくとも二つは、第一および第二の縫合糸受容開口部に隣接している。装置はまた、アンカー部材に取り付けられた移植片支持ループ要素を含む。移植片支持ループ要素は、第一のリムおよび第二のリムを有する縫合糸で形成される。縫合糸は、第一および第二のループが縫合糸に形成され、細長いアンカー部材の底面から延びる一方、第一および第二のリムが上面から延びるように、第一および第二の縫合糸受容開口部を通って進む。スプライスは、細長い部材の上面から延びる縫合糸の第二のリムに形成され、第一のリムはスプライスを通って延びる。第一のループに張力を加えると、スプライスを通して第一のリムが引っ張られ、第一のループが長くなり、第二のループに張力を加えると、第一の縫合糸受容開口部の上にスプライスが引っ張られる。
【0019】
さらに別の態様では、骨孔内に置換移植片靭帯を懸架固定する方法が提供される。方法は、(i)上面および底面を有する細長いアンカー部材、ならびにその上面から底面まで延びる隣接する第一および第二の縫合糸受容開口部を提供するステップと、(ii)第一のリムおよび第二のリムを有し、その間に中央咬合部を有する縫合糸を提供するステップと、(iii)第一のリムを第一の縫合糸受容開口部に上面から底面まで通し、その後、第一のリムを第二の縫合糸受容開口部に底面から上面まで通して、第一のリムに第一のループを形成するステップと、(iv)第二のリムを第二の縫合糸受容開口部に上面から底面まで通し、その後、第二のリムを第一の縫合糸受容開口部に底面から上面まで通して、第二のリムに第二のループを形成するステップと、(v)第一の縫合糸受容開口部から上面から延びる第二のリムにスプライスを作成するステップと、(vi)第一のリムを第二のリムのスプライスに通すステップとを含む。
【0020】
当然のことながら、以下でより詳細に考察した前述の概念および追加的概念のすべての組み合わせは(そのような概念は互いに矛盾していないとすると)、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられる。特に、本開示の最後に現れる請求項に記載された主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により組み込まれる任意の開示においても現れうる、本明細書において明示的に用いられる用語は、本明細書に開示される特定の概念と最も一致する意味と一致するものを理解されるべきである。
【0021】
本発明のこれらおよびその他の態様は、以下に記述される実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の一つまたは複数の態様は、本明細書の終了時に特許請求の範囲の例として特に指摘され、特定的に特許請求される。本発明の前述およびその他の物体、特徴、および利点は、以下の記述から添付図面と併せて明らかである。
【0023】
【
図1】
図1は、一実施形態による、懸架固定装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による、懸架固定装置のアンカー部材の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による、懸架固定装置の概略断面側面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態による、懸架固定装置の概略拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態による、懸架固定装置の概略上面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態による、骨孔内の懸架固定装置の概略側面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態による、移植片に取り付けられ、骨孔の遠位端から延びる第一の構成における懸架固定装置の概略側面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態による、移植片に取り付けられ、骨孔の遠位端から延びる第二の構成における懸架固定装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の態様および特定の特徴、利点、およびその詳細は、添付図面に図示した非限定的な例を参照しながらより完全に説明される。本発明を不必要に不明瞭にしないよう、周知の構造の説明は省略される。しかしながら、本発明の態様を示しつつ、詳細な説明および特定の非限定的な例は、例示のみによって与えられ、限定されるものではないことが理解されるべきである。本発明の主な概念の精神および/または範囲内で、さまざまな置換、修正、追加、および/または配置は、本開示から当業者に明らかであろう。
【0025】
ここで図面を参照すると、同様の参照番号が全体を通して同様の部分を指しており、
図1は、一実施形態による、懸架移植片固定装置100の概略側面斜視図を示す。装置100は、細長いアンカー部材102および縫合糸104の長さを含む。図示の実施形態では、縫合糸104は、超高分子量ポリエチレンなど高強度の繊維状材料からなる繊維状ストランドの形態である。アンカー部材102は、移植可能な等級のチタンなどの金属、またはその他任意の適切な生体吸収性もしくは生体適合性材料(本開示のレビューと併せて当業者によって理解されるべきであるように)からなりうる。実施形態において、アンカー部材102の長さは12mm~20mmの範囲でありうる。
【0026】
図2を簡単に参照すると、一実施形態による、懸架固定装置100のアンカー部材102の概略上面斜視図である。アンカー部材102は、その第一の端部106と第二の端部108との間の中央長手方向y‐y軸に沿って延びる。アンカー部材102はまた、ループを形成する縫合糸104を受容するようにサイズ設定されたまたは別の方法で構成される、一対の中央縫合糸受容開口部110、112を有する。例えば、縫合糸受容開口部110、112の直径は、約1mmであってもよく、一方で縫合糸104の直径は、約1mmまたはUSPサイズ5であってもよい。
図5による一実施形態では、アンカー部材102は長楕円形形状である。特に、示されるように、アンカー部材102の長さLは、アンカー部材102の幅wよりも大きい。アンカー部材102の長楕円形形状は、アンカー部材102が狭い骨孔を通過できるようにする。
【0027】
再び
図2を参照すると、アンカー部材102は、上面114および底面116(
図3~
図4に最もよく示す)を有する。底面116は時に近位面と呼ばれ、骨孔出口に隣接して配置されることが意図される。本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、骨孔を含む骨の側面を指し(すなわち、ACL手順における外側大腿骨の表面から内側に向かって延びる)、および「遠位」という用語は、横方向アンカー部材102が載る骨の側面を指す(すなわち、外側大腿骨の表面から外側に向かって延びる)。
【0028】
図2をさらに参照すると、縫合糸受容開口部110、112は、それらの間に延びる中央ブリッジ部分118の両側に位置する。アンカー部材102はまた、上面114と底面116との間に延びる一つまたは複数の配置開口部120を随意に有することができる。図示した実施形態では、アンカー部材102の第一の端部106に配置開口部120、およびアンカー部材102の第二の端部108に配置開口部120がある。配置開口部120は、骨孔出口における装置100の配置を容易にするために、配置縫合糸140(または別の繊維状ストランド)を受けるようにサイズ設定されたまたは別の方法で構成される。例えば、配置縫合糸140は、配置開口部120に取り付けられ、骨孔を通って引っ張られ、細長いアンカー部材102を骨孔軸に平行に配向することを容易にする。
【0029】
図1に示すように、懸架固定装置100は、アンカー部材102の縫合糸受容開口部110、112を通る蛇行経路をたどるのに好適な繊維状ストランド104を用いてアンカー部材102を動作させるように設計される。一実施形態では、繊維状ストランド104は、適切にサイズ設定された縫合糸の単一の長さである。本明細書で使用される場合、「縫合糸」という用語は、「繊維状材料」と交換可能に使用されてもよく、上述のように、アンカー部材102と組み合わせられた時、以下に記載される方法で置換移植片を支持するように動作することができる、任意の生体適合性または生体吸収性の材料のストランドを意味すると理解される。以下に理解される通り、アンカー部材102の特徴との繊維状ストランド104の組み合わせは、アンカー部材102の縫合受け用開口部110、112を通して縫合104の経路に沿って異なる機能を実施できる。
【0030】
ここで
図3を参照すると、一実施形態による、懸架固定装置100の概略断面側面図である。
図2に示すアンカー部材102をロードするために、繊維状ストランド104は、縫合糸受容開口部110、112に通されるかまたは巻き付けられる。具体的には、
図3に示すように、繊維状ストランド104はまずそれ自体で折り畳まれ、中央の湾曲部分122を形成し、従って、中央湾曲部分122から延びる二つのリム124、126を作成する。各リム124、126は、中央湾曲部分122からリム124、126の自由な何も取り付けられていない端部128、130へと延びる長さを有する。
【0031】
図3をさらに参照すると、第一のリム124は第一の縫合糸受容開口部110を通過し、第二のリム126は第二の縫合糸受容開口部112を通過する(
図3に示すように、下向きで)。第一および第二のリム124、126は、アンカー部材102の上面114からアンカー部材102の底面116まで縫合糸受容開口部110、112を通って延びる。第二のリム126は、アンカー部材102の底面116からアンカー部材102の上面114まで第一の縫合糸受容開口部110を通る。同様に、第一のリム124は、アンカー部材102の底面116からアンカー部材102の上面114まで第二の縫合糸受容開口部112を通る。
図3に示すように、中央湾曲部分122は、アンカー部材102の上面114の中央ブリッジ部分118の上に延び、一方で
図1に示すように、二つの調節可能なループ132、134は、アンカー部材102の底面116を通って縫合糸受容開口部110、112から延びる。
【0032】
アンカー部材102の上面114から延びる、自由な何も取り付けられていない端部128、130により、
図3に示すように、スプライス136が第二のリム126に作成される。第一のリム124は、スプライス136を通過し、第一のリム124の周りにジャケットを形成する。図示した実施形態では、スプライス136は、中央湾曲部分122に隣接し、それより上方(遠位)にある。繊維状ストランド104が縫合糸受容開口部110、112に巻き付けられ、アンカー部材102の底面116から延びる調節可能なループ132、134と、アンカー部材102の上面114から延びるスプライス136とを作成し、装置100を使用して、骨孔出口での移植片に張力を調節可能に印加したり解放したりすることができる。
【0033】
装置100の実施形態の縫合糸経路は、
図3に示す通りであるが、代替の実施形態は実行可能である。従って、アンカー部材102を通る縫合糸経路は、二つの調節可能なループ132、134の形態の移植片支持要素を備える装置100をもたらす一方、上述のものとは異なるループ構造もありうる。例えば、調節可能なループ132、134は、縫合糸104(または他の繊維状材料)の単一の長さから形成されるが、代替の実施形態では、調節可能なループ132、134は調節可能なループ132、134を共に形成する複数の個別の長さの縫合糸104によって形成されうる。
【0034】
ここで
図6~
図8を参照すると、展開中の様々な構成での装置100の概略側面図を示す。まず、
図1に示す装置100は、移植片148(
図7~8)に取り付けられる。一実施形態では、移植片148(
図7~
図8)は第二のループ134に取り付けられ、配置縫合糸140はアンカー部材102の配置開口部120を通って進む。配置縫合糸140は、骨孔142の近位端144を通って挿入され、骨孔142の遠位端146に向かって引っ張られる。
図6は、一実施形態による、骨孔142内の装置100の概略側面図を示す。示すように、配置縫合糸140は、骨孔142の遠位端146に向かって引っ張られるか、またはその他の方法で張力を加えられる。図示の実施形態では、配置縫合糸140は、骨孔142を通って引っ張られ、細長いアンカー部材102を骨孔軸z‐zに実質的に平行に配向することを容易にする。
【0035】
ここで
図7を参照すると、移植片148に取り付けられ、骨孔142の遠位端146から延びる第一の構成での装置100の概略側面図を示す。
図7に示すように、配置縫合糸140は、アンカー部材102が骨孔142の遠位端146を抜け出るまで引かれ、移植片148が骨孔142内に残る。移植片148を固定するために装置100を使用する時、二つの調節可能なループ132、134(
図1にも示す)は異なる目的に役立つ。第一のループ132は、第一のリム124から作成され、両方の調節可能なループ132、134の長さのサイズを変更する機能を果たす。第二のリム126から作成され、移植片148に取り付けられた第二のループ134は、装置100を所定の位置にロックするように機能し、それによって骨孔出口(すなわち、骨孔142の遠位端146)に対して移植片148を所定の位置にロックする。
【0036】
使用時、張力は第一のループ132に最初に印加され、これは両方の調節可能なループ132、134のサイズの増加を引き起こす。一実施形態では、
図1に示すように、テザー138(例えば、ロープ、縫合糸、またはその他の繊維状ストランド)が第一のループ132に取り付けられる。テザー138がスプライス136から近位にまたは離れるように引かれると、調節可能なループ132、134にたるみが導入され、調節可能なループ132、134が拡大する。一部の事例では、スプライス136は、第一のループ132が張力を受けた時に、第二の縫合糸受容開口部112に向かって非引っ張られる。しかし、スプライス136は第二の縫合糸受容開口部112に対して大きすぎることがあり、従って第二の縫合糸受容開口部112を通ってアンカー部材102の底面116へと引き出すことはできない。従って、第一のループ132に対する追加的な張力は、第一のリム124(およびスプライス136)を、第二の縫合糸受容開口部112の近位に引っ張り、第一のリム124は、第二の縫合糸受容開口部112に対するそのサイズのために、スプライス136および第二の縫合糸受容開口部112を通して引っ張られ、調節可能なループ132、134に余分なたるみをもたらす。同時に、移植片148によって調節可能なループ132、134の両方にかかる張力が、アンカー部材102を回転させる。
図7~
図8に示すように、移植片148(または移植片148に取り付けられたフィラメント(図示せず))は、骨孔142の近位端144から張力をかけるか、またはその他の方法で近位に引っ張ることができ、調節可能なループ132、134に張力がかかる。移植片148からの張力は、アンカー部材102を、骨孔軸z‐z(
図7)に対して実質的に平行な第一の構成から、骨孔軸z‐z(
図8)に対して実質的に垂直な第二の構成へと回転させる。アンカー部材102が骨孔142を横切って垂直である時、アンカー部材102はスプライス136を第一の縫合糸受容開口部110に当たるようにすることによって所定位置にロックされる。さらに、スプライス136は第一の縫合糸受容開口部110に対して大きすぎることがあり、従って第一の縫合糸受容開口部110を通ってアンカー部材102の底面116へと引き出すことはできない。スプライス136が第二のリム126内に作成されると、第二のリム126は、第一の縫合糸受容開口部110を通して引っ張られてたるみを供給できない代わりに装置100をロックする。
【0037】
定義および本明細書で使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書、および/または定義された用語の通常の意味を制御するために理解されるべきである。
【0038】
本明細書において様々な発明的実施形態が記述され、例示されてきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施および/または結果および/または利点の一つ以上を得るためのさまざまな他の手段ならびに/あるいは構造を容易に想起するであろうし、そのような変形および/または変更の各々は、本明細書に記載の発明的実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が、例示的であり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、教示が使用される一つ以上の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多数の同等物を単に通常の実験を用いて認識することができ、または確認することができる。したがって、前述の実施形態は、単に例示的なものとして提示されており、添付した請求項およびその等価物の範囲内で、具体的に記載され、請求される以外のその他の方法で、実施形態を実行できることが理解されよう。本開示の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、二つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせが、本開示の範囲内に含まれる。
【0039】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。用語「含む(comprise)」(および「含む(comprises)」や「含む(comprising)」などのcompriseの任意の形式)、「有する(have)」(および「有する(has)」や「有する(having)」などのhaveの任意の形式)、「含む(include)」(および「含む(includes)」や「含む(including)」などのincludeの任意の形式)、および「包含する(contain)」(および「包含する(contains)」や「包含する(containing)」などのcontainの任意の形式)は、オープンエンドのリンク動詞であることがさらに理解されるだろう。結果として、一つまたは複数のステップまたは要素を「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」または「包含する(contain)」方法または装置。同様に、一つまたは複数の特徴を「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」または「包含する(contain)」方法のステップ、または装置の要素は、それら一つまたは複数の特徴を有するが、それらの一つまたは複数の特徴のみを保持することに限定されない。さらに、特定の方法で構成される装置または構造は、少なくともそのように構成されるが、リストされていない方法で構成することもできる。
【0040】
以下の特許請求の範囲の全ての手段またはステッププラス機能要素の対応する構造、材料、行為および同等物は、もしあれば、具体的に請求される他の特許請求の要素と組み合わせて、機能を実行するための構造、材料または行為を含むことを意図している。本発明の説明は、例示および説明の目的で提示されてきたが、本発明に開示された形態で網羅的または限定されるものではない。多くの修正および変形は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の一つまたは複数の態様の原理および実際の応用を最もよく説明し、当業者が、考えられる特定の用途に適したさまざまな修正を有するさまざまな実施形態について本発明の一つまたは複数の態様を理解できるように選択および説明された。