(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20220104BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20220104BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220104BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B23Q17/09 B
G05B19/18 W
G05B19/418 Z
B23Q17/00 D
(21)【出願番号】P 2021028991
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2021-02-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖隆
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-035838(JP,U)
【文献】特開2018-097494(JP,A)
【文献】特開2019-130631(JP,A)
【文献】特開2004-130451(JP,A)
【文献】特許第6797331(JP,B1)
【文献】特開平03-245949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155 - 3/157
B23Q 17/00
B23Q 17/09
G05B 19/18
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械であって、
表示部と、
前記工作機械を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1工具と同種類の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定する処理と、
前記第1工具の使用履歴に基づいて、前記第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断する処理と、
前記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、前記第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、前記他の工作機械で使用される前記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを前記表示部に表示する処理とを実行
し、
前記特定する処理は、
前記他の工作機械でのワークの加工条件を受信する処理と、
前記他の工作機械でのワークの加工条件と、前記工作機械でのワークの加工条件との比較結果に基づいて、前記他の工作機械が前記工作機械と同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する処理とを含む、工作機械。
【請求項2】
第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械であって、
表示部と、
前記工作機械を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1工具と同種類の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定する処理と、
前記第1工具の使用履歴に基づいて、前記第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断する処理と、
前記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、前記第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、前記他の工作機械で使用される前記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを前記表示部に表示する処理とを実行し、
前記特定する処理は、
前記他の工作機械が前記工作機械と同じ加工を行う工作機械であることを示す予め定められた設定情報に基づいて、前記他の工作機械が前記工作機械と同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する処理とを含む、工作機械。
【請求項3】
前記他の工作機械は、前記第2工具の交換時期が到来しているか否かを判断する機能を有しない、請求項1
または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、さらに、前記他の工作機械と通信するための通信部を備え、
前記制御部は、さらに、前記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、前記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための通知を前記他の工作機械に送信する処理を実行する、請求項1
~3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第2警告は、前記他の工作機械の識別情報と、前記第2工具に関する工具情報とを含む、請求項1
~4のいずれか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具の交換時期が到来していることを報知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に備えられる工具は、消耗品である。そのため、工具の寿命が尽きた場合には、当該工具を新たなものに交換する必要がある。
【0003】
特開2004-130451号公報(特許文献1)は、工具の交換時期を表示する機能を備えた工具交換時期表示装置を開示している。当該工具交換時期表示装置は、「複数の設備が存在するラインで、交換対象の刃具数が多い場合でも、計画的かつ効率的に刃具の交換を行い、刃具未交換による設備停止を防ぐこと」を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
企業によっては、複数の工作機械を運用する際に、加工効率を上げるために、複数のラインで同じような加工を行うことがある。この場合、各工作機械は、類似の工具を使用して類似の加工を行うため、工具の寿命は、各工作機械間で同時期に尽きる。このような点に鑑み、ある工作機械において工具の交換時期が到来したときに、他の工作機械においても工具の交換時期が到来したことを通知するための技術が望まれている。なお、特許文献1に開示される工具交換時期表示装置は、他の工作機械についての工具交換時期を表示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械は、表示部と、上記工作機械を制御するための制御部とを備える。上記制御部は、上記第1工具と類似の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定する処理と、上記第1工具の使用履歴に基づいて、上記第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断する処理と、上記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、上記第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、上記他の工作機械で使用される上記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを上記表示部に表示する処理とを実行する。
【0007】
本開示の一例では、上記他の工作機械は、上記第2工具の交換時期が到来しているか否かを判断する機能を有しない。
【0008】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、上記他の工作機械と通信するための通信部を備える。上記制御部は、さらに、上記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、上記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための通知を上記他の工作機械に送信する処理を実行する。
【0009】
本開示の一例では、上記第2警告は、上記他の工作機械の識別情報と、上記第2工具に関する工具情報とを含む。
【0010】
本開示の一例では、上記特定する処理は、上記他の工作機械でのワークの加工条件を受信する処理と、上記他の工作機械でのワークの加工条件と、上記工作機械でのワークの加工条件との比較結果に基づいて、上記他の工作機械が上記工作機械と同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する処理とを含む。
【0011】
本開示の一例では、上記特定する処理は、上記他の工作機械が上記工作機械と同じ加工を行う工作機械であることを示す予め定められた設定情報に基づいて、上記他の工作機械が上記工作機械と同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する処理とを含む。
【0012】
本開示の他の例では、第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械の制御方法が提供される。上記制御方法は、上記第1工具と類似の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定するステップと、上記第1工具の使用履歴に基づいて、上記第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断するステップと、上記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、上記第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、上記他の工作機械で使用される上記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを上記工作機械の表示部に表示するステップとを実行する。
【0013】
本開示の他の例では、第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械の制御プログラムが提供される。上記制御プログラムは、上記工作機械に、上記第1工具と類似の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定するステップと、上記第1工具の使用履歴に基づいて、上記第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断するステップと、上記第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、上記第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、上記他の工作機械で使用される上記第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを上記工作機械の表示部に表示するステップとを実行させる。
【0014】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】加工システムの装置構成の一例を示す図である。
【
図3】工具使用履歴のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】工作機械特定部が実行する処理を概略的に示す図である。
【
図6】工作機械のディスプレイの表示態様の一例を示す図である。
【
図7】他の工作機械のディスプレイの表示態様の一例を示す図である。
【
図8】工作機械のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】工作機械の制御フローの一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0017】
<A.加工システム10の装置構成>
まず、
図1を参照して、加工システム10の装置構成について説明する。
図1は、加工システム10の装置構成の一例を示す図である。
【0018】
加工システム10は、2つ以上の工作機械と、1つ以上の情報処理装置とを含む。
図1の例では、加工システム10は、2つの工作機械100A,100Bと、1つの情報処理装置200とで構成されている。
【0019】
工作機械100A,100Bおよび情報処理装置200は、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。一例として、工作機械100A,100Bおよび情報処理装置200は、通信経路NW(たとえば、無線LAN、有線LAN、フィールドネットワークなど)を介して互いに通信を行う。
【0020】
工作機械100Aおよび工作機械100Bは、同一種類の工作機械であってもよいし、異なる種類の工作機械であってもよい。以下では、工作機械100A,100Bを特に区別しない場合には、工作機械100A,100Bのいずれか1つを工作機械100ともいう。
【0021】
工作機械100は、ワークの加工機である。一例として、工作機械100は、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)を行う加工機である。除去加工を行う加工機としては、たとえば、立形のマシニングセンタ、横形のマシニングセンタ、またはターニングセンタなどが挙げられる。あるいは、工作機械100は、旋盤であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。さらに、工作機械100は、これらを複合した複合加工機であってもよい。
【0022】
工作機械100Aには、操作盤130Aが設けられている。操作盤130Aは、作業者による作業を受け付ける。操作盤130Aは、加工に関する各種情報を表示するためのディスプレイ131Aと、工作機械100に対する各種操作を受け付けるための操作キー132Aとを含む。
【0023】
工作機械100Bには、操作盤130Bが設けられている。操作盤130Bは、作業者による作業を受け付ける。操作盤130Bは、加工に関する各種情報を表示するためのディスプレイ131Bと、工作機械100に対する各種操作を受け付けるための操作キー132Bとを含む。
【0024】
以下では、操作盤130A,130Bを特に区別しない場合には、操作盤130A,130Bのいずれか1つを操作盤130ともいう。
【0025】
情報処理装置200は、たとえば、サーバー機能を有するコンピュータなどの情報処理装置である。一例として、情報処理装置200は、デスクトップ型のコンピュータであってもよいし、ノート型のコンピュータであってもよいし、タブレット端末であってもよい。あるいは、情報処理装置200は、分散型サーバーのような複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0026】
<B.概要>
引き続き
図1を参照して、工作機械100Aにおける工具交換の警告機能の概要について説明する。
【0027】
工作機械100Aおよび工作機械100Bのそれぞれが類似の工具を用いて同じような加工を行う場合、これらの工具の寿命は、同時期に尽きる可能性がある。一例として、工作機械100Aが工具A1(第1工具)を有し、工作機械100Bが工具A1’(第2工具)を有するとする。工具A1および工具A1’は、互いに類似する。ここでいう「類似する」とは、一部または全部において工具形状が一致することを言う。工具A1’は、工具A1と同種類の工具であってもよいし、工具A1と同じ加工機能を有する工具であってもよいし、工具A1と同じ工具名の工具であってもよい。
【0028】
工作機械100A,100B間で同じような加工を行う場合、工作機械100Aの工具A1の交換時期が到来したときに、工作機械100Bの工具A1’の交換時期も到来する可能性がある。そこで、工作機械100Aは、工具A1の交換時期が到来したときに、工具A1の交換を作業者に警告するだけでなく、工具A1’の確認も作業者に促す。
【0029】
より具体的には、まず、工作機械100Aは、工具TAと類似の工具TA’を用いてワークの加工を行う他の工作機械100Bを特定する。これにより、工作機械100Aと同じ加工を行う他の工作機械100Bが特定される。一方で、工作機械100Aは、工具TAの使用履歴に基づいて、工具TAの交換時期が到来しているか否かを定期的に判断する。工作機械100Aは、工具TAの交換時期が到来していると判断した場合、工具TAの交換時期が到来していることを示す警告だけでなく、他の工作機械100Bで使用される工具TA’の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための警告もディスプレイ131Aに表示する。
【0030】
これにより、作業者は、工作機械100A内の工具TAの交換時期が到来していることに気付けるだけでなく、工作機械100B内の工具TA’の確認が必要であることにも気付くことができる。このような警告機能は、工作機械100Bが工具寿命の判断機能を有していない場合に特に有効である。
【0031】
<C.機能構成>
次に、
図2~
図7を参照して、工作機械100Aの機能構成について説明する。
図2は、工作機械100Aの機能構成の一例を示す図である。
【0032】
工作機械100Aは、ハードウェア構成として、制御部50と、記憶装置120とを含む。
【0033】
制御部50は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0034】
制御部50は、機能構成として、監視部152と、寿命判断部154と、受信部156と、工作機械特定部158と、工具特定部159と、表示制御部160と、送信部162とを含む。以下では、これらの機能構成について順に説明する。
【0035】
なお、
図2に示される一部の機能構成は、上述の操作盤130A(
図1参照)に実装されてもよいし、サーバーなどの外部機器に実装されてもよい。
【0036】
(C1.監視部152)
まず、
図3を参照して、
図2に示される監視部152の機能について説明する。
【0037】
監視部152は、工作機械100Aの加工プログラム122を監視し、工作機械100A内の各工具が加工に使用された時間をカウントする。工具の総使用時間は、たとえば、
図3に示される工具使用履歴126に書き込まれる。
図3は、工具使用履歴126のデータ構造の一例を示す図である。
【0038】
図3に示されるように、工具使用履歴126は、工具の最大使用可能時間と、工具の総使用時間とを工具の識別情報別に対応付けている。工具の識別情報は、工具を一意に識別するための情報である。工具の識別情報は、たとえば、工具ID(Identification)または工具名などで規定される。
【0039】
工具使用履歴126に規定される最大使用可能時間は、新品時から工具の寿命が尽きるまでの時間に相当する。一例として、当該最大使用可能時間には、工具メーカーによって推奨されている時間が予め設定される。あるいは、当該最大使用可能時間には、プログラムの設計者や作業者によって任意に設定されてもよい。
【0040】
工具使用履歴126に規定される総使用時間は、工具が新品時から現在までに加工に用いられた時間に相当する。当該総使用時間は、たとえば、監視部152によって更新される。より具体的には、加工プログラム122は、たとえば、Gコードで規定されており、工作機械100Aの主軸に装着する工具を指定するための工具交換命令や、主軸や工具を回転駆動/送り駆動するための駆動命令などを含む。監視部152は、加工プログラム122に規定されている工具交換命令に基づいて、ワークの加工に用いられる工具の識別情報を特定しておく。次に、監視部152は、加工プログラム122に規定されている駆動命令が実行されたことに基づいて、当該工具の使用時間のカウントを開始する。続いて、監視部152は、加工プログラム122に規定されている停止命令または最終行の命令が実行されたことに基づいて、当該工具の使用時間のカウントを停止する。その後、監視部152は、工具使用履歴126を参照して、当該工具に関連付けられている総使用時間に、カウントされた使用時間を加算する。
【0041】
(C2.寿命判断部154)
引き続き
図3を参照して、
図2に示される寿命判断部154の機能について説明する。
【0042】
寿命判断部154は、工具使用履歴126に基づいて、工作機械100A内の各工具の寿命が尽きたか否かを判断する。より具体的には、寿命判断部154は、総使用時間が最大使用可能時間を超えた工具については寿命が尽きたと判断し、工具の交換時期が到来したと判断する。この場合、寿命判断部154は、交換時期が到来したと判断した工具の識別情報を、工作機械特定部158および表示制御部160のそれぞれに出力する。一方で、寿命判断部154は、総使用時間が最大使用可能時間を超えていない工具については、工具の交換時期が到来していないと判断する。
【0043】
(C3.受信部156)
次に、
図2に示される受信部156の機能について説明する。
【0044】
受信部156は、工作機械100Aの通信ドライバの一部を構成する機能モジュールである。受信部156により、工作機械100Aの受信機能が実現される。受信部156は、後述の通信インターフェイス105を介して、工作機械100Bおよび情報処理装置200のそれぞれと通信する。
【0045】
受信部156は、
図4に示される工作機械情報222を情報処理装置200から受信する。
図4は、工作機械情報222の一例を示す図である。
【0046】
工作機械情報222は、各工作機械が保持している工具の情報を規定している。より具体的には、工作機械情報222は、工作機械の識別情報別に、1つ以上の工具の識別情報を対応付けている。
【0047】
工作機械情報222に規定される工作機械の識別情報は、工作機械を一意に識別するための情報である。工作機械の識別情報は、たとえば、工作機械に予め割り当てられているIDまたは名前などで示される。
【0048】
工作機械情報222に規定される工具の識別情報は、工具を一意に識別するための情報である。工具の識別情報は、たとえば、工具IDまたは工具名などで示される。
【0049】
また、受信部156は、各工作機械から、当該工作機械で用いられる加工プログラムを受信する。
図2の例では、受信部156は、工作機械100Bの加工プログラムを工作機械100Bから受信している。
【0050】
受信部156によって受信された工作機械情報222および加工プログラムは、工作機械特定部158に出力される。
【0051】
(C4.工作機械特定部158)
次に、
図5を参照して、
図2に示される工作機械特定部158の機能について説明する。
図5は、工作機械特定部158が実行する処理を概略的に示す図である。
【0052】
工作機械特定部158は、工作機械100A内の工具と類似の工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定する。異なる言い方をすれば、工作機械特定部158は、工作機械100Aと類似の加工を行う他の工作機械を特定する。以下では、他の工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する例について説明する。
【0053】
工作機械特定部158は、他の工作機械100Bでのワークの加工条件と、工作機械100Aでのワークの加工条件との比較結果に基づいて、他の工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する。ここでいう加工条件とは、ワークの加工に係る種々の情報を包含する概念である。一例として、加工条件は、ワークの加工プログラム、ワークの加工に係る設定パラメータ、加工対象のワークの形状情報、または、その他の情報を含む。
【0054】
ある局面において、工作機械特定部158は、工作機械100Bから受信した加工プログラムを、工作機械100Aの加工プログラム122と比較することで、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する。
【0055】
この場合、工作機械特定部158は、各加工プログラムに規定される命令コードをテキストベースで比較することで類似度を算出する。当該類似度は、たとえば、各加工プログラムの一部または全部が比較されることで算出される。一例として、工作機械特定部158は、比較対象の工具が加工可能状態になってから、次の工具が加工可能状態になる前までの命令コード群を加工プログラム122から抽出する。加工可能状態とは、マシニングセンタにおいては工具が主軸に取り付けられている間の状態を意味し、ターニングセンタにおいてはタレットを旋回して工具が使用位置に割り出されている間の状態を意味する。抽出対象の命令コード群は、たとえば、比較対象の工具を呼び出すための命令コードと、次の工具を呼び出すための命令コードとの間に規定される命令コード群である。工作機械特定部158は、工作機械100Aの加工プログラム122から当該命令コード群を抽出し、当該命令コード群を工作機械100Bの加工プログラムと比較する。これにより、上記類似度が算出される。工作機械特定部158は、当該類似度が所定値を超えている場合に、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行うと判断する。また、工作機械特定部158は、当該類似度が所定値以下である場合、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行わないと判断する。
【0056】
あるいは、工作機械特定部158は、各加工プログラムのファイル名の一部または全部が一致している場合に、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行うと判断する。また、工作機械特定部158は、各加工プログラムのファイル名の一部または全部が一致していない場合に、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行わないと判断する。
【0057】
他の局面において、工作機械特定部158は、他の工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であることを示す予め定められた設定情報に基づいて、他の工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械である。当該設定情報において、同じ加工を行う工作機械同士の対応関係が規定されている。当該設定情報は、たとえば、ユーザまたは設計者によって予め設定されている。
【0058】
一例として、工作機械100Aは、自身と通信可能な工作機械のリストを表示する。ユーザは、当該リストに表示される工作機械の中から、工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械を選択する。工作機械100Aは、当該選択操作を受けて、選択された工作機械の識別情報と工作機械100Aの識別情報とを対応付けて上記設定情報に書き込む。これにより、同じ加工を行う工作機械同士が登録される。
【0059】
工作機械特定部158は、工作機械100Aと同じ加工を行うと判断した工作機械の識別情報を、表示制御部160および送信部162のそれぞれに出力する。
【0060】
(C5.工具特定部159)
次に、上述の
図4を参照して、
図2に示される工具特定部159の機能について説明する。
【0061】
工具特定部159は、工作機械特定部158によって工作機械100Aと同じ加工を行うと特定された工作機械100Bが保持している工具の中から、上述の寿命判断部154によって交換時期が到来していると判断された工具と類似する工具を特定する。当該類似する工具は、たとえば、情報処理装置200から受信した工作機械情報222(
図4参照)に基づいて特定される。
【0062】
一例として、工作機械100Aに保持されている工具「A1」の交換時期が到来したと上述の寿命判断部154によって判断されたとする。この場合、工具特定部159は、他の工作機械100Bが保持する工具の中から、工具「A1」と類似する工具「A1’」を特定する。工具「A1’」が工具「A1」と類似しているか否かは、たとえば、工具種別、工具名、工具の型番、または工具の加工機能などの工具情報に基づいて判断される。
【0063】
より具体的には、工具特定部159は、工具「A1」の工具情報と工具「A1’」の工具情報との類似度を算出する。工具特定部159は、当該類似度が所定値を超えている場合、工具「A1’」が工具「A1」と類似していると判断する。一方で、工具特定部159は、当該類似度が所定値を超えていない場合には、工具「A1’」が工具「A1」と類似していないと判断する。
【0064】
工具特定部159は、特定した工具の識別情報を、表示制御部160および送信部162のそれぞれに出力する。
【0065】
(C6.表示制御部160)
次に、
図6を参照して、
図2に示される表示制御部160の機能について説明する。
図6は、工作機械100Aのディスプレイ131Aの表示態様の一例を示す図である。
【0066】
表示制御部160は、工作機械100Aのディスプレイ131Aの表示制御を担う機能モジュールである。一例として、表示制御部160は、上述の工作機械特定部158によって特定された工作機械の識別情報と、上述の工具特定部159によって特定された工具の識別情報とに基づいて、警告141A(第1警告)および警告141B(第2警告)をディスプレイ131Aに表示する。
【0067】
警告141Aは、工作機械100A内にある工具A1の交換時期が到来していることを示す警告である。警告141Aは、工作機械100Aの識別情報142Aと、寿命が尽きた工具A1の識別情報143Aとを含む。識別情報142Aは、工作機械100AのIDで示されてもよいし、工作機械100Aの名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。識別情報143Aは、工具A1のIDで示されてもよいし、工具A1の名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。
【0068】
警告141Bは、他の工作機械100B内にある工具A1’の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための警告である。警告141Bは、工作機械100Bの識別情報142Bと、工具A1と類似する工具A1’の識別情報143Bとを含む。識別情報142Bは、工作機械100BのIDで示されてもよいし、工作機械100Bの名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。識別情報143Bは、工具A1’のIDで示されてもよいし、工具A1’の名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。
【0069】
工作機械100Aの近くにいる作業者は、警告141Aを確認することで、工作機械100A内にある工具TAの交換時期が到来していることに気付くことができる。また、当該作業者は、警告141Bを確認することで、工作機械100B内にある工具TA’の確認が必要であることに気付くことができる。
【0070】
好ましくは、他の工作機械100Bは、工具の交換時期が到来しているか否かを判断する機能を有しない。これにより、当該機能が工作機械100Bに搭載されていない場合でも、作業者は、工具TA’の交換時期を逃さずに済む。
【0071】
(C7.送信部162)
次に、
図7を参照して、
図2に示される送信部162の機能について説明する。
図7は、他の工作機械100Bのディスプレイ131Bの表示態様の一例を示す図である。
【0072】
送信部162は、工作機械100Aの通信ドライバの一部を構成する機能モジュールである。送信部162により、工作機械100Aの送信機能が実現される。送信部162は、後述の通信インターフェイス105を介して工作機械100Bと通信する。
【0073】
送信部162は、上述の工作機械特定部158によって特定された工作機械の識別情報と、上述の工具特定部159によって特定された工具の識別情報とに基づいて、当該工作機械に当該工具の確認通知を送信する。一例として、送信部162は、工具A1’の確認通知144を工作機械100Bに送信したとする。
【0074】
工作機械100Bは、工作機械100Aから確認通知144を受信したことに基づいて、工作機械100Bのディスプレイ131Bに確認通知144を表示する。確認通知144は、工具A1’の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための通知である。確認通知144の表示は、工作機械100B内にある工具TA’を確認するきっかけとなる。
【0075】
確認通知144は、工作機械100Bの識別情報145と、工具A1’の識別情報146とを含む。識別情報145は、工作機械100BのIDで示されてもよいし、工作機械100Bの名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。識別情報146は、工具A1’のIDで示されてもよいし、工具A1’の名前で示されてもよいし、画像などのその他の情報で示されてもよい。
【0076】
<D.ハードウェア構成>
次に、
図8を参照して、工作機械100のハードウェア構成について順に説明する。
図8は、工作機械100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0077】
工作機械100は、主軸22と、ボールねじ25,25,54と、CNC(Computer Numerical Control)ユニット101と、サーボドライバ111A~111Dと、サーボモータ112A~112Dと、エンコーダ113A~113Dと、操作盤130とを含む。CNCユニット101は、制御部50と、ROM102と、RAM103と、通信インターフェイス104とを含む。
【0078】
制御部50は、加工プログラム122や制御プログラム124など各種プログラムを実行することで工作機械100の動作を制御する。加工プログラム122は、各種駆動機構の駆動命令などを規定しており、ワークの加工を実現するためのプログラムである。制御プログラム124は、上述の警告表示処理などを実現するためのプログラムである。制御部50は、プログラムの実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120からROM102にプログラムを読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0079】
通信インターフェイス104は、操作盤130に接続することができるインターフェイスである。工作機械100は、通信インターフェイス104を介して操作盤130とデータをやり取りする。操作盤130は、工作機械100に対する各種の操作を受け付ける。
【0080】
通信インターフェイス105(通信部)は、他の通信機器に接続することができるインターフェイスである。工作機械100は、通信インターフェイス105を介して他の通信機器とデータをやり取りする。当該他の通信機器は、他の工作機械100Bや情報処理装置200を含む。
【0081】
制御部50は、加工プログラム122に従ってサーボドライバ111A~111Dを制御する。サーボドライバ111Aは、制御部50から目標回転速度(または目標位置)の入力を逐次的に受け、サーボモータ112Aが目標回転速度で回転するようにサーボモータ112Aを制御する。より具体的には、サーボドライバ111Aは、エンコーダ113Aのフィードバック信号からサーボモータ112Aの実回転速度(または実位置)を算出し、当該実回転速度が目標回転速度よりも小さい場合にはサーボモータ112Aの回転速度を上げ、当該実回転速度が目標回転速度よりも大きい場合にはサーボモータ112Aの回転速度を下げる。このように、サーボドライバ111Aは、サーボモータ112Aの回転速度のフィードバックを逐次的に受けながらサーボモータ112Aの回転速度を目標回転速度に近付ける。サーボドライバ111Aは、ボールねじ54に接続されるテーブル(図示しない)をX軸方向に沿って移動し、当該テーブルをX軸方向の任意の位置に移動する。
【0082】
同様のモータ制御により、サーボドライバ111Bは、ボールねじ52に接続されるガイド(図示しない)をY軸方向に沿って移動し、当該ガイド上の上記テーブルをY軸方向の任意の位置に移動する。同様のモータ制御を行うことにより、サーボドライバ111Cは、ボールねじ25に接続される主軸頭をZ軸方向の任意の位置に移動する。同様のモータ制御を行うことにより、サーボドライバ111Dは、主軸回転速度を制御する。
【0083】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置120は、加工プログラム122、制御プログラム124、および上述の工具使用履歴126(
図3参照)などを格納する。これらの格納場所は、記憶装置120に限定されず、制御部50の記憶領域(たとえば、キャッシュ領域など)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0084】
なお、制御プログラム124は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム124の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム124によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム124の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で工作機械100が構成されてもよい。
【0085】
<E.フローチャート>
次に、
図9を参照して、工作機械100の制御フローについて説明する。
図9は、工作機械100の制御フローの一部を示すフローチャートである。
【0086】
図9に示される処理は、たとえば、工作機械100の制御部50が上述の制御プログラム124を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0087】
なお、以下では、工作機械100Aと同じ加工を行う他の工作機械として、工作機械100Bを例に挙げて制御フローの説明を行うが、
図9に示される制御フローは、工作機械100Aと同じ加工を行う可能性がある全ての工作機械について実行され得る。
【0088】
ステップS150において、制御部50は、上述の工作機械特定部158(
図2参照)として機能し、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であるか否かを判断する。制御部50は、工作機械100Bが工作機械100Aと同じ加工を行う工作機械であると判断した場合(ステップS150においてYES)、制御をステップS160に切り替える。そうでない場合には(ステップS150においてNO)、制御部50は、ステップS150の処理を再び実行する。
【0089】
ステップS160において、制御部50は、上述の寿命判断部154(
図2参照)として機能し、工作機械100A内の工具A1の交換時期が到来したか否かを判断する。制御部50は、工作機械100A内の工具A1の交換時期が到来したと判断した場合(ステップS160においてYES)、制御をステップS162に切り替える。そうでない場合には(ステップS160においてNO)、制御部50は、ステップS160の処理を再び実行する。
【0090】
ステップS162において、制御部50は、上述の工具特定部159(
図2参照)として機能し、上述の工作機械情報222(
図4参照)に基づいて、工作機械100Bが保持している工具の中から、寿命が尽きた工具A1と類似する工具A1’を特定する。
【0091】
ステップS164において、制御部50は、上述の表示制御部160(
図2参照)として機能し、警告141A,141B(
図6参照)をディスプレイ131Aに表示する。警告141Aは、工具A1の交換時期が到来していることを示す警告である。警告141Bは、他の工作機械100Bで使用される工具A1’の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための警告である。
【0092】
ステップS166において、制御部50は、上述の送信部162(
図2参照)として機能し、工具A1’の確認通知144を工作機械100Bに送信する。確認通知144は、工具A1’の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための通知である。
【0093】
なお、上述では、工作機械100内の工具A1についてのみステップS160,S162,S164,S166の処理が実行される例について説明を行ったが、ステップS160,S162,S164,S166の処理は、工作機械100A内の全ての工具について実行されてもよい。
【0094】
また、上述では、ステップS150の後にステップS160の処理が実行される例について説明を行ったが、ステップS160の処理は、ステップS150の前に実行されてもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
10 加工システム、22 主軸、25,52,54 ボールねじ、50 制御部、100,100A,100B 工作機械、101 CNCユニット、102 ROM、103 RAM、104,105 通信インターフェイス、111A,111B,111C,111D サーボドライバ、112A~112D サーボモータ、113A~113D エンコーダ、120 記憶装置、122 加工プログラム、124 制御プログラム、126 工具使用履歴、130,130A,130B 操作盤、131A,131B ディスプレイ、132A,132B 操作キー、141A,141B 警告、142A,142B,143A,143B,145,146 識別情報、144 確認通知、152 監視部、154 寿命判断部、156 受信部、158 工作機械特定部、159 工具特定部、160 表示制御部、162 送信部、200 情報処理装置、222 工作機械情報。
【要約】
【課題】工作機械において工具の交換時期が到来したときに、他の工作機械においても工具の交換時期が到来したことを通知するための技術を提供する。
【解決手段】第1工具を用いてワークを加工することが可能な工作機械は、表示部と、工作機械を制御するための制御部とを備える。制御部は、第1工具と類似の第2工具を用いてワークの加工を行う他の工作機械を特定する処理と、第1工具の使用履歴に基づいて、第1工具の交換時期が到来しているか否かを判断する処理と、第1工具の交換時期が到来していると判断された場合に、第1工具の交換時期が到来していることを示す第1警告と、他の工作機械で使用される第2工具の交換時期が到来しているか否かについて確認を促すための第2警告とを表示部に表示する処理とを実行する。
【選択図】
図6