(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、および、電線
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20220104BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20220104BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20220104BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20220104BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20220104BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20220104BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L53/00
C08K3/32
C08L71/12
C08L51/00
H01B7/02 Z
C08K5/51
H01B3/44 K
(21)【出願番号】P 2021527112
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007595
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2020038740
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 賢一
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277595(JP,A)
【文献】特開2012-019001(JP,A)
【文献】特開2016-050287(JP,A)
【文献】特開2015-110716(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026689(WO,A1)
【文献】特表2014-522430(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015991(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/173190(WO,A1)
【文献】特表2012-525477(JP,A)
【文献】特開2014-034668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08K 3/32
C08L 71/12
C08L 51/00
H01B 7/02
H01B 3/44
C08K 5/51-5/5399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂1~35質量部と、
(B)数平均分子量が10万未満であり、かつ、スチレン由来の構成単位の含有量が全構成単位の15~40質量%である、スチレン-オレフィンブロック共重合体99~65質量部とからなる(A)と(B)の合計100質量部に対して、
(C)イントメッセント系難燃剤45~100質量部と、
(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー0.1~3.0質量部とを含
む樹脂組成物であって、前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体、(C)イントメッセント系難燃剤および(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーの合計が、前記樹脂組成物の90質量%以上を占める、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体、(C)イントメッセント系難燃剤および(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーの合計が、樹脂組成物の9
5質量%以上を占める、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体の末端が水酸基で変性されている、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)イントメッセント系難燃剤がリン酸塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンをコアとし、アクリル系樹脂をシェルとするコアシェルポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物を厚み1.6mmのUL94燃焼試験片に成形したときのUL94燃焼試験に基づく難燃性がV-1以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物のISO527に従った引張呼び歪が195%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物のISO178に従った曲げ弾性率が10~180MPaである、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
電線被覆材である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された被覆層を有する電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、および、電線に関する。特に、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン-オレフィンブロック共重合体を含む樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン-オレフィンブロック共重合体を含む樹脂組成物を電線等の被覆層に用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリフェニレンエーテル樹脂50~99質量部と、数平均分子量10万未満かつスチレン由来の構成単位の含有量が15~40質量%のスチレン-オレフィンブロック共重合体50~1質量部とを含む、樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の樹脂組成物は、電線等の被覆層として有益である。一方、近年、電線の被覆などに用いられる樹脂組成物は、引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低いことが求められ、スチレン-オレフィンブロック共重合体の配合量が多い処方とすることが望ましい場合がある。さらに、近年、電線等の被覆層には、そのような樹脂組成物において、難燃性が求められる傾向にある。
ここで、ポリフェニレンエーテル樹脂に配合する難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤が一般的なものとして用いられている。しかしながら、上述のようにスチレン-オレフィンブロック共重合体の配合量が多い処方とすると、リン酸エステル系難燃剤を配合しても、難燃性が向上しないばかりか、曲げ弾性率も高くなってしまうことが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低く、さらに、難燃性に優れた樹脂組成物、ならびに、これを用いた成形品および電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリフェニレンエーテル樹脂と所定のスチレン-オレフィンブロック共重合体に、イントメッセント系難燃剤とフッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーを配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>(A)ポリフェニレンエーテル樹脂1~35質量部と、
(B)数平均分子量が10万未満であり、かつ、スチレン由来の構成単位の含有量が全構成単位の15~40質量%である、スチレン-オレフィンブロック共重合体99~65質量部とからなる(A)と(B)の合計100質量部に対して、
(C)イントメッセント系難燃剤45~100質量部と、
(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー0.1~3.0質量部とを含む、樹脂組成物。
<2>前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体、(C)イントメッセント系難燃剤および(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーの合計が、樹脂組成物の90質量%以上を占める、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体の末端が水酸基で変性されている、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記(C)イントメッセント系難燃剤がリン酸塩を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンをコアとし、アクリル系樹脂をシェルとするコアシェルポリマーを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物を厚み1.6mmのUL94燃焼試験片に成形したときのUL94燃焼試験に基づく難燃性がV-1以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物のISO527に従った引張呼び歪が195%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記樹脂組成物のISO178に従った曲げ弾性率が10~180MPaである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>電線被覆材である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<11><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された被覆層を有する電線。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低く、さらに、難燃性に優れた樹脂組成物、ならびに、これを用いた成形品および電線を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、樹脂組成物における(A)成分~(D)成分の状態を示す推測イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、特に述べない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂1~35質量部と、(B)数平均分子量が10万未満であり、かつ、スチレン由来の構成単位の含有量が全構成単位の15~40質量%である、スチレン-オレフィンブロック共重合体99~65質量部とからなる(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)イントメッセント系難燃剤45~100質量部と、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー0.1~3.0質量部とを含むことを特徴とする。
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体からなる樹脂組成物において、電線の被覆などに用いられる樹脂組成物は、引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低いことが求められ、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体の配合量が多い処方とすることが望ましい。しかしながら、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体の配合量を多い処方とした場合、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体とを含む樹脂組成物に一般的に配合しているリン酸エステル等のリン系難燃剤を配合しても、高い難燃性が達成されないことが分かった。
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂に一般的に配合される難燃剤は、例えば、リン酸エステルであり、燃焼した際に、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の炭化を促進し、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂によって炭化層を形成させて、内部に熱を伝わりにくくし、難燃性を達成するものである。しかし、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、燃焼しても、炭化層を形成しにくいので、難燃性の向上が難しいと推測された。本実施形態では、(C)イントメッセント系難燃剤(例えば、リン酸塩)を用いたことにより、(C)イントメッセント系難燃剤自身によって炭化層を形成させることができたと推測される。
さらに、(C)イントメッセント系難燃剤と(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーを併用することにより、曲げ弾性率を低く維持し、引張り呼び歪をより高くできたと推測される。
図1は、樹脂組成物における(A)~(D)の状態を示す推測イメージ図である。具体的には、
図1に示すように、樹脂組成物内で(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーが網の目構造を形成し、それによって、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体が増粘し、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂および(C)イントメッセント系難燃剤を海島構造の島として分散できたと考えられる。そして、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂および(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体が溶融しても、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーは溶融しないので、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂および(C)イントメッセント系難燃剤の適切な分散が達成できると推測される。その結果、曲げ弾性率を低く維持し、引張り呼び歪をより高くできたと推測される。
【0010】
<(A)ポリフェニレンエーテル樹脂>
本実施形態の樹脂組成物に用いられる(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、公知のポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができ、例えば、下記式で表される構成単位を主鎖に有する重合体が例示される。(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。
【0011】
【化1】
(式中、2つのR
aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、2つのR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのR
aがともに水素原子になることはない。)
【0012】
RaおよびRbとしては、それぞれ独立に、水素原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-、3-もしくは4-メチルペンチル基またはヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基または1-エチルプロピル基が挙げられる。特に、Raは第1級もしくは第2級の炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。Rbは水素原子であることが好ましい。
【0013】
好適な(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)等の2,6-ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリエチルフェノール共重合体、2,6-ジエチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジプロピルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体等の2,6-ジアルキルフェノール/2,3,6-トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0014】
本実施形態における(A)ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。また、特開2005-344065号公報に記載されているような末端基数と銅含有率を規定したポリフェニレンエーテル樹脂も好適に使用できる。
【0015】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2~0.8dL/gのものが好ましく、0.3~0.6dL/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dL/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にあり、0.8dL/g以下とすることにより、流動性がより向上し、成形加工がより容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上の(A)ポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、この固有粘度の範囲としてもよい。
【0016】
本実施形態に使用される(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6-ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合する方法を採用することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂を樹脂組成物中に8質量%以上の割合で含むことが好ましく、10質量%以上の割合で含むことがより好ましく、12質量%以上であってもよい。上限については、例えば、30質量%以下であり、25質量%以下、22質量%以下であってもよい。
本実施形態において、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
<(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体>
本実施形態で用いる(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、数平均分子量が10万未満であり、かつ、スチレン由来の構成単位の含有量が全構成単位の15~40質量%であるスチレン-オレフィンブロック共重合体である。
本実施形態で用いる(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、好ましくは分子の少なくとも一方の末端に、より好ましくは分子の両末端に、スチレン由来の構成単位を主成分とする領域(スチレンブロック)を有し、さらに、オレフィン由来の構成単位を主成分とする領域(オレフィンブロック)を有するものであることが好ましい。ここで、スチレン由来の構成単位を主成分とするとは、前記スチレンブロックの90質量%以上が、スチレン由来の構成単位からなることをいう。オレフィンブロックについても同様である。
本実施形態で用いる(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、スチレンブロックおよびオレフィンブロック以外の他の領域を含んでいてもよいが、前記他の領域の割合は、通常、スチレン-オレフィンブロック共重合体の5質量%以下である。
本実施形態で用いる(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、スチレン由来の構成単位の含有量が15~40質量%である。前記スチレン由来の構成単位の含有量の下限値は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。前記スチレン由来の構成単位の含有量の上限値は、35質量%以下であることが好ましく、33質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態で用いるスチレン-オレフィンブロック共重合体は、数平均分子量が10万未満である。このような構成とすることにより、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂をより効果的に分散させることが可能になる。上記数平均分子量の下限値は特に定めるものではないが、例えば、1万以上であり、さらには3万以上である。スチレン-オレフィンブロック共重合体の数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)に従って測定される。上記数平均分子量の上限値は、例えば、8万以下であってもよい。
スチレン-オレフィンブロック共重合体は、その末端が変性されていることが好ましく、水酸基で変性されていることがさらに好ましい。末端変性することにより、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の分散性がより向上する傾向にある。
【0020】
上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、ブタジエン、イソプレン等が例示される。スチレン-オレフィンブロック共重合体に含まれるオレフィンは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
スチレン-オレフィンブロック共重合体の具体例としては、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、ポリスチレン-ビニル-ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体(PS-VPI)等が挙げられ、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)が好ましい。
【0021】
<(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体のブレンド比>
本実施形態の樹脂組成物における(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体のブレンド比は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂1~35質量部に対し、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体99~65質量部である。上記ブレンド比は、好ましくは10~35質量部に対し、90~65質量部であり、より好ましくは15~35質量部に対し、85~65質量部であり、さらに好ましくは17~33質量部に対し、83~67質量部であり、一層好ましくは18~32質量部に対し、82~68質量部である。
本実施形態の樹脂組成物が(A)ポリフェニレンエーテル樹脂および/または(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体を2種以上含む場合、合計量が上記ブレンド比を満たすことが好ましい。
【0022】
<(C)イントメッセント系難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、(C)イントメッセント系難燃剤を含む。(A)ポリフェニレンエーテル樹脂に一般的に配合される難燃剤は、例えば、リン酸エステルであり、燃焼した際に、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の炭化を促進し、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂によって炭化層を形成させて、内部に熱を伝わりにくくし、難燃性を達成するものである。しかし、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体は、燃焼しても、炭化層を形成しにくいので、難燃性の向上が難しいと推測された。本実施形態では、(C)イントメッセント系難燃剤(例えば、リン酸塩)を用いたことにより、(C)イントメッセント系難燃剤自身によって炭化層を形成させることができたと推測される。
(C)イントメッセント系難燃剤は、イントメッセント系難燃剤の特性を発揮する限り特に定めるものではないが、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、リン酸エステルアミド等のリン酸塩;ピロリン酸ピペラジン、ピロリン酸メラミン等のピロリン酸塩等が挙げられ、リン酸塩が好ましい。
【0023】
本実施形態に係る樹脂組成物における(C)イントメッセント系難燃剤の含有量は、(A)と(B)の合計100質量部に対して、45質量部以上であり、48質量部以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃焼時間の短縮効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態における(C)イントメッセント系難燃剤の含有量は、(A)と(B)の合計100質量部に対して、100質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましく、55質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、加工性がより向上する傾向にある。
また、本実施形態に係る樹脂組成物における(C)イントメッセント系難燃剤の含有量は、樹脂組成物の30質量%以上であることが好ましく、また、49質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)イントメッセント系難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
<(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーを含む。コアシェルポリマーを用いることにより、取り扱い性が向上する傾向にある。コアシェルポリマーとしては、フッ素系樹脂をコアとし、アクリル系樹脂をシェルとするコアシェルポリマーが例示され、ポリテトラフルオロエチレンをコアとし、アクリル系樹脂をシェルとするコアシェルポリマーであることが好ましい。尚、本実施形態におけるコアシェルポリマーとは、本発明の技術分野において、コアシェルポリマーと称されるものを含み、例えば、すべてのフッ素系樹脂が中心部に含まれ、すべてのアクリル系樹脂等のシェル材料がコア外側を完全に覆っているものの他、一部の中心部のフッ素系樹脂がシェル材料に覆われていない場合等も含む趣旨である。
また、コアシェルポリマーのコアとなるフッ素系樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
本実施形態で用いるコアシェルポリマーは、フッ素系樹脂の割合が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、コアシェルポリマー中のフッ素系樹脂の割合の上限は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
シェルを形成するアクリル系樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体が好ましい。シェル層のアクリル樹脂により、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体との親和性が向上し、引張呼び歪の低下が抑えられると考えられる。
【0025】
本実施形態に係る樹脂組成物における(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーの含有量は、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であり、0.15質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.6質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃焼時の滴下防止性がより向上する傾向にある。また、本実施形態における(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーの含有量は、(A)と(B)の合計100質量部に対して、3.0質量部以下であり、2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.8質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、加工性がより向上する傾向にある。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
<樹脂成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン-オレフィンブロック共重合体を合計で40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、51質量%以上含むことがさらに好ましく、55質量%以上含むことが一層好ましく、60質量%以上であってもよい。上限値としては、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であってもよい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体、(C)イントメッセント系難燃剤および(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー以外の成分を含んでいてもよいが、(A)~(D)の合計が、樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0028】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。
具体的には、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体と(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分としては、例えば、上記以外のスチレン系樹脂(例えば、ゴム変性スチレン樹脂など)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂添加剤を含んでいてもよい。具体的には、(C)イントメッセント系難燃剤以外の難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機金属系難燃剤等の非イントメッセント系難燃剤)、内部潤滑剤(脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス等)、熱安定剤(酸化亜鉛等)、染料、顔料、離型剤(シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステル等)、酸化防止剤、耐候性改良剤、増核剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤等を含んでいてもよい。これらの成分を含有する場合、その含有量は、合計で、樹脂組成物の0.01~5質量%の範囲とすることが好ましい。
内部潤滑剤については、国際公開第2019/026689号の段落0029~0035の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。熱安定剤については、国際公開第2019/026689号の段落0036の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物の一例として、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体、(C)イントメッセント系難燃剤および(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーに加え、さらに、内部潤滑剤および/または熱安定剤を含む形態が例示される。
また、本実施形態の樹脂組成物の一例として、リン酸エステル系難燃剤(好ましくは、リン酸エステル系難燃剤およびフォスファゼン系難燃剤)を実質的に含まない形態が例示される。実質的に含まないとは、リン酸エステル系難燃剤(好ましくは、リン酸エステル系難燃剤およびフォスファゼン系難燃剤)の含有量が、イントメッセント系難燃剤の含有量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
さらにまた、本実施形態の樹脂組成物の一例として、非イントメッセント系難燃剤を実質的に含まない形態も例示される。実質的に含まないとは、非イントメッセント系難燃剤の含有量が、イントメッセント系難燃剤の含有量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。非イントメッセント系難燃剤とは、イントメッセント系難燃剤以外の難燃剤を意味する。
【0030】
<樹脂組成物の特性>
本実施形態の樹脂組成物は、特に以下の特性を満たすものとすることができる。
具体的には、例えば、本実施形態の樹脂組成物を厚み1.6mmのUL94燃焼試験片に成形したときのUL94燃焼試験に基づく難燃性がV-1以上、すなわち、V-0またはV-1である樹脂組成物とすることができる。
また、例えば、本実施形態の樹脂組成物のISO527に従った引張呼び歪を、例えば、195%以上(好ましくは198%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは205%以上、また、例えば、270%以下、さらには、260%以下)とすることができる。
さらに、例えば、本実施形態の樹脂組成物のISO178に従った曲げ弾性率を180MPa以下、好ましくは160MPa以下、より好ましくは140MPa以下とすることができる。また、本実施形態の樹脂組成物のISO178に従った曲げ弾性率を例えば10MPa以上、さらには、20MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、70MPa以上、80MPa以上とすることもできる。
上記難燃性、引張り呼び歪および曲げ弾性率は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0031】
<樹脂組成物の用途>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、特に、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂のブレンド物が一般的に用いられる用途に広く用いられる。
例えば、自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品が挙げられる。具体的には、バンパー、フェンダー、ドアパネル、モール、エンブレム、エンジンフード、ホイルカバー、ルーフ、スポイラー、エンジンカバー等の外装・外板部品、アンダーフード部品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックストリム等の内装部品等に適している。
また、各種コンピューターおよびその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクター等の部品としても用いることができる。
さらに、金属導体または光ファイバーに被覆して得られる電線・ケーブルの被覆材、固体メタノール電池用燃料ケース、二次電池電槽、燃料電池配水管、水冷用タンク、ボイラー外装ケース、インクジェットプリンターのインク周辺部品・部材およびシャーシ、および水配管、継ぎ手などの成形体、シート・フィルムを延伸して得られるリチウムイオン電池用セパレータとして利用できる。
本実施形態の樹脂組成物は、下記の(1)~(4)からなる群より選ばれる用途に用いられることが好ましい。
(1)シート・フィルムまたは延伸シート・フィルム
(2)自動車外装・外板部品、自動車内装部品、または自動車アンダーフード部品
(3)樹脂組成物で金属導体または光ファイバーを被覆して得られる電線・ケーブル
(4)インクジェットプリンターのインク周辺の部品・部材またはシャーシ
より好ましくは、本実施形態の樹脂組成物は、電線被覆材として用いられる。
【0032】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成されたものである。特に、本実施形態の樹脂組成物から形成された被覆層を有する電線であることが好ましい。
本実施形態の成形品は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形(シート、フィルム)、中空成形により成形して得られる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0034】
<原料>
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂:PX100L、ポリキシレノールシンガポール社製
(B)スチレン-オレフィンブロック共重合体:セプトンHG-252(末端OH基変性SEEPS)、クラレ社製、スチレン由来の構成単位の割合28質量%、数平均分子量約6万
(C)-1 イントメッセント系難燃剤:リン酸塩、FP2100JC、ADEKA社製、融点270℃より高い、引火点280℃より高い
(C)-2 リン系難燃剤:PX-200(レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート)、大八化学工業社製
(D)-1 フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー:ポリテトラフルオロエチレン(シェル)とアクリル系樹脂(コア)のコアシェルポリマー:メタブレンA3800、三菱ケミカル社製、フッ素系樹脂の割合約50質量%
(D)-2 フッ素系樹脂:ポリテトラフルオロエチレン:エースフロンSG3000、MC山三ポリマーズ社製
【0035】
実施例1~4、比較例1~6
下記表1に示す割合(質量基準)で各成分を混合し、二軸押出機(東芝機械社製:TEM18SS)を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数350rpmで溶融混練を行い、樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られた樹脂組成物(ペレット)を用いて、下記評価を行った。結果を表1に示した。
【0036】
<引張呼び歪>
上記の製造方法で得られたペレットを50℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度40℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に従って、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で引張呼び歪を測定した。単位は、%で示した。
【0037】
<曲げ弾性率>
上記の製造方法で得られたペレットを50℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度40℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に従って、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0038】
<難燃性(UL94燃焼試験)>
上記で得られた樹脂組成物(ペレット)を50℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度40℃の条件で127mm×12.7mm×1.6mmの燃焼試験片を成形し、UL94燃焼試験に基づき測定を行った。V-0が最も難燃性に優れており、V-1、V-2と順に劣る。燃焼時間が30秒を超えると難燃性NG、また燃焼時間30秒以内でも燃焼試験中に垂れ落ちが発生し、サンプル下の脱脂綿が着火した場合はV-2となる。
【0039】
【0040】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低く、難燃性に優れていた(実施例1~4)。
これに対し、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマーを配合しない場合、比較例1または2に示すように、垂れ落ちが発生し、難燃性がV-2となってしまった。また、比較例3に示すように、(C)イントメッセント系難燃剤の配合量が少ない場合、燃焼時間が30秒をオーバーしてしまい、NGとなってしまった。さらに、比較例4および比較例5に示すように、リン酸エステル系難燃剤を使用すると、曲げ弾性率が高くなってしまった。また、垂れ落ちも発生してしまった。
また(D)成分の代わりに、コアシェル構造を持たないポリテトラフルオロエチレンを用いた場合(比較例6)、引張呼び歪の向上効果が見られず、却って低下する結果となった。
【符号の説明】
【0041】
A ポリフェニレンエーテル樹脂
B スチレン-オレフィンブロック共重合体
C イントメッセント系難燃剤
D フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー
【要約】
引張り呼び歪が高く、曲げ弾性率が低く、さらに、難燃性に優れた樹脂組成物、ならびに、これを用いた成形品および電線の提供。(A)ポリフェニレンエーテル樹脂1~35質量部と、(B)数平均分子量が10万未満であり、かつ、スチレン由来の構成単位の含有量が全構成単位の15~40質量%である、スチレン-オレフィンブロック共重合体99~65質量部とからなる(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)イントメッセント系難燃剤45~100質量部と、(D)フッ素系樹脂をコアとするコアシェルポリマー0.1~3.0質量部とを含む、樹脂組成物。