(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20220104BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20220104BHJP
B60K 13/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F02M35/10 101D
F02M35/10 101J
F02M35/16 D
B60K13/02 C
(21)【出願番号】P 2017198991
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】加茂 重樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健二
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-077387(JP,U)
【文献】特開平08-170567(JP,A)
【文献】特開2013-181414(JP,A)
【文献】実開昭62-184030(JP,U)
【文献】国際公開第2009/052170(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/16
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長径方向に沿う1対の対向壁部を短径方向に離間させて相対向させた扁平筒状の領域を少なくとも有し、エンジン側への吸気の流路を区画する吸気ダクトであって、
前記1対の対向壁部のうちの一方の対向壁部側に設けられて、前記エンジン側に接続される開口部と、
前記1対の対向壁部のうちの他方の対向壁部側に設けられて、前記開口部の少なくとも一部に対向し且つ外部側へ
球面状に突出する突出曲面領域と、を備えた
ことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気ダクトであって、
前記他方の対向壁部
の少なくとも前記突出曲面領域
に設けられて、内部側へ凹んだ状態で前記短径方向と交叉する方向へ延びるリブを備えた
ことを特徴とする吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン側への吸気の流路を区画する吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャブオーバ型車両の吸気ダクトが開示されている。この吸気ダクトは、キャブの後壁に固定される吸気ダクトとしてのシュノーケルと、同シュノーケルの下部に一体結合されるゴム製の蛇腹状の上弾性筒体と、上弾性筒体の下向き開口が帽着するロアダクトとを備える。シュノーケルは、樹脂成形品であり、扁平状の膨出容器状である。ロアダクトは、樹脂成形品であり、扁平矩形容器状をなし、その上方に流入開口が形成され、前向き壁上に側方筒が延出形成される。側方筒は、エアクリーナ等を介してエンジン側に接続される。ロアダクトの前向き壁には、3つの内向き突部が形成され、各突部の尖端は後向き壁の内壁面に一体結合される。各突部と後向き壁との結合部分には、ボルトの頭部が埋め込まれており、外部に突出する各ボルトのねじ部には、固定ブラケットが固定されている。固定ブラケットは、ダクト支持用の水平基枠に一体結合される。水平基枠は、ロアダクト及びエアクリーナを固定し、これらを縦向き基枠を介しサイドレールに取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸気ダクトように、扁平筒状に形成されて、短径方向の一側に開口部が設けられ、該開口部がエンジン側に接続される樹脂製の吸気ダクトでは、吸気時にダクト内部に負圧が発生した際に、上記一側の開口部に対向する他側の壁部がダクト内部側に凹んでしまい、吸気の流路の断面積を狭めてしまうおそれがある。
【0005】
上記特許文献1に記載の吸気ダクトでは、ロアダクトの前向き壁に3つの内向き突部を形成して各突部の尖端を後向き壁の内壁面に一体結合するとともに、各突部と後向き壁との結合部分に埋め込まれたボルトに固定ブラケットが固定されているので、後向き壁の前方への凹みを抑えることができる。しかし、上記特許文献1に記載の吸気ダクトでは、内向き突部を形成したり、ボルトを埋め込んだりする必要があるので、吸気ダクトの構造が複雑であり、吸気ダクトの成形が煩雑になるおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、簡易な構造で内部側への凹みを防止することが可能な吸気ダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、長径方向に沿う1対の対向壁部を短径方向に離間させて相対向させた扁平筒状に形成された領域を少なくとも有し、エンジン側への吸気の流路を区画する吸気ダクトであって、開口部と突出曲面領域とを備える。開口部は、1対の対向壁部のうちの一方の対向壁部側に設けられて、エンジン側に接続される。突出曲面領域は、1対の対向壁部のうちの他方の対向壁部側に設けられて、開口部の少なくとも一部に対向し且つ外部側へ球面状に突出する。
【0008】
上記構成では、吸気ダクトの長径方向に沿う1対の対向壁部のうちの一方の対向壁部側に、エンジン側に接続される開口部を設け、他方の対向壁部側に、開口部の少なくとも一部に対向する突出曲面領域を設ける。このため、吸気する際に吸気ダクトの内部に負圧が発生すると、他方の対向壁部の突出曲面領域に開口部側への力が作用する。他方の対向壁部の突出曲面領域は、外部側へ球面状に突出するので、他方の対向壁部のうち開口部に対向する領域が平面状である場合に比べて、他方の対向壁に開口部側への力が作用した際の開口部側への他方の対向壁部の凹み変形(開口部側へ凹む変形)を抑えることができる。
【0009】
また、一方の対向壁部側に開口部を設け、他方の対向壁部側(他方の対向壁部のうち開口部の少なくとも一部に対向する位置)に突出曲面領域を設けるという簡易な構造であるので、吸気ダクトを容易に成形することができる。
【0011】
さらに、他方の対向壁部側の突出曲面領域が、外部側へ球面状に突出するので、突出曲面領域のいずれの位置においても短径方向に沿った突出曲面領域の断面形状が曲面状となる。このため、他方の対向壁部に開口部側への力が作用した際の開口部側への他方の対向壁部の凹み変形を好適に抑えることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の吸気ダクトであって、リブを備える。リブは、他方の対向壁部の少なくとも突出曲面領域に設けられて、内部側へ凹んだ状態で短径方向と交叉する方向へ延びる。
【0013】
上記構成では、他方の対向壁部に、少なくとも前記突出曲面領域に配置されて内部側へ凹んだ状態で短径方向と交叉する方向へ延びるリブが設けられるので、短径方向の力に対する他方の対向壁部の剛性が高くなり、他方の対向壁部に開口部側への力が作用した際の開口部側への他方の対向壁部の凹み変形を好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、簡易な構造で吸気ダクトの内部側への凹みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸気ダクトを搭載した車両の概略側面図であり、(a)は非チルト状態を、(b)はチルト状態をそれぞれ示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吸気ダクトを搭載した車両の後方からの概略斜視図である。
【
図4】下側吸気ダクトの側方から視た部分断面図である。
【
図7】下側吸気ダクトの成形についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態に係る吸気ダクト10を備える車両1は、例えば、キャブ2が概ねエンジン3の上方に配置されるキャブオーバ型の車両1である。キャブ2は、その前端下部が車体フレーム4に対して回転自在に支持され、キャブ2の後端側が車体フレーム4に支持された非チルト状態(
図1(a)に示す状態)から、キャブ2の後端を前上方へ傾動させてチルト状態(
図1(b)に示す状態)にすることができる。吸気ダクト10は、エンジン3側への吸気の流路を区画する。吸気は、吸気ダクト10によってエアクリーナ5へ案内され、エアクリーナ5を介してエンジン3側へ供給される。
【0018】
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、吸気ダクト10は、キャブ2の後方で上下方向に延び、下端側がエンジン3側に接続され、上端側の吸気口10aから吸い込んだ吸気(空気)をエンジン3側へ案内する。吸気ダクト10は、キャブ2の背面2aに沿って延びて背面2aに固定される上側吸気ダクト11と、上側吸気ダクト11に対して固定される蛇腹ダクト12と、車体フレーム4側に支持される下側吸気ダクト13とを有する。吸気ダクト10は、キャブ2の背面2aのうち、車幅方向一側(本実施形態では、右側)の外端部に配置される。蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とは、互いに上下に分離可能に連結されている。キャブ2を非チルト状態からチルト状態にすると、上側吸気ダクト11及び蛇腹ダクト12は、下側吸気ダクト13から離脱してキャブ2と共に前上方へ傾動し、下側吸気ダクト13は、傾動することなく車体フレーム4側に支持されている。なお、本実施形態では、吸気ダクト10をキャブ2の背面2aのうち右側の車幅方向外端部に配置したが、これに限定されるものではなく、吸気ダクト10をキャブ2の背面2aの左側の車幅方向外端部に配置してもよいし、或いは、キャブ2の背面2aの車幅方向中央部に配置してもよい。
【0019】
上側吸気ダクト11は、キャブ2の背面2aから後方への突出量を抑えるために前後方向の長さが車幅方向の長さよりも短い扁平筒状に形成される樹脂製のダクトであって、上下方向に延び、内部に吸気の流路(図示省略)を区画する。上側吸気ダクト11の上端部には、上側吸気ダクト11の内部と外部とを連通する吸気口10aが設けられる。吸気口10aには、カバー部材14が取り付けられる。カバー部材14には、複数の開口が形成され、吸気口10aを覆った状態で、上側吸気ダクト11の外部から内部への雨水等の浸入を抑制するとともに、上側吸気ダクト11の外部から内部への空気の流入を許容する。上側吸気ダクト11の下端部は、キャブ2の背面2aの下端部の近傍に配置される。
【0020】
蛇腹ダクト12は、キャブ2の背面2aから後方への突出量を抑えるために前後方向の長さが車幅方向の長さよりも短い扁平筒状に形成される樹脂製のダクトであって、上下方向に延び、上端部側が上側吸気ダクト11の下端部に固定される。蛇腹ダクト12は、蛇腹状に形成されて内部に給気の流路(図示省略)を区画する。蛇腹ダクト12の下端開口(図示省略)は、後述する下側吸気ダクト13の上端部の浸入を許容し、非チルト状態のときに、下側吸気ダクト13の上端部と接続される。蛇腹ダクト12は、非チルト状態で、上側吸気ダクト11と下側吸気ダクト13とを連結し、振動等による上側吸気ダクト11と下側吸気ダクト13との相対的な変位を許容して振動を吸収する。
【0021】
図3~
図6に示すように、下側吸気ダクト13は、ブロー成形によって略同じ板厚で一体成形される樹脂製のダクトであって、略直角に曲折したエルボー型に形成され、上方の上側吸気ダクト11側からの吸気を前方のエアクリーナ5へ案内する。下側吸気ダクト13は、蛇腹ダクト12内に挿入される扁平筒状の挿入連結部13aと、挿入連結部13aの下端から連続して下方へ延びる扁平筒状の下ダクト本体(扁平筒状に形成された領域)13bと、下ダクト本体13bの下端部から前方へ延びてエアクリーナ5(
図1(a)参照)に接続される筒状の接続部13cとを一体的に有する。挿入連結部13a及び下ダクト本体13bは、キャブ2の背面2aから後方への突出量を抑えるために前後方向の長さが車幅方向の長さよりも短い扁平筒状に形成される。なお、下側吸気ダクト13の曲折角度は、略直角に限定されるものではない。
【0022】
下側吸気ダクト13の挿入連結部13aは、車幅方向に長孔状の上端開口18を有する。挿入連結部13aには、ガイド部材19が取り付けられている。ガイド部材19は、下側吸気ダクト13の挿入連結部13aに固定される扁平筒状の固定部19aと、固定部19aから上方へ突出するガイド部19bとを有する。固定部19aは、下側吸気ダクト13の挿入連結部13aの外周に配置された状態で、下側吸気ダクト13の挿入連結部13aに対して固定される。ガイド部19bは、側面視において上方へ向かって先細るように突出する形状を有し、複数の棒体によって形成され、上下方向の空気の流通を許容する。ガイド部19bは、キャブ2をチルト状態から非チルト状態にする際に、キャブ2とともに下方へ傾動する蛇腹ダクト12の下端開口と下側吸気ダクト13の挿入連結部13aとの位置がずれないように、蛇腹ダクト12の下端開口内に下側吸気ダクト13の挿入連結部13aを案内する。
【0023】
下側吸気ダクト13の下ダクト本体13bは、前後方向(短径方向)の長さL1が車幅方向(長径方向)の長さL2よりも短い扁平筒状に形成され、蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とが連結された状態で蛇腹ダクト12の下方に露出する。下ダクト本体13bは、前後方向に離間して相対向する前後の対向壁部(1対の対向壁部)15,16と、車幅方向に離間して相対向する左右の対向壁部20,21と、挿入連結部13aの上端開口18と対向する位置に配置される底壁部22とを有し、上方からの吸気を下方へ案内する。前後の対向壁部15,16は、上下方向に延びる吸気の流路17(
図4中の二点鎖線6よりも後側の流路)の前後を区画し、左右の対向壁部20,21は、吸気の流路17の左右を区画し、底壁部22は、吸気の流路17の下方を区画する。なお、
図4中の二点鎖線6は、前側の対向壁部15を下方へ直線状に延ばした仮想延長線である。
【0024】
前側の対向壁部(一方の対向壁部)15は、略平板状に形成され、挿入連結部13aの下方で前後方向と交叉した状態で車幅方向に長尺に延びる。前側の対向壁部15の下方(
図4中の二点鎖線6で示す位置)には、下側吸気ダクト13内で下ダクト本体13bの内部の吸気の流路17と、下側吸気ダクト13の接続部13cの後述する吸気の流路24とを連通する前方開口部(開口部)23が設けられる。すなわち、前後の対向壁部15,16のうちの前側の対向壁部15側には、エンジン3側に接続される前方開口部23が設けられる。前方開口部23は、上下方向の長さよりも車幅方向の長さが長い略矩形状に形成される。前方開口部23の上端は、前側の対向壁部15の下端縁によって区画され、前方開口部23の下端は、下ダクト本体13bの底壁部22の前端縁によって区画され、前方開口部23の左右の両側端は、下ダクト本体13bの左右の対向壁部20,21の前端縁によって区画される。
【0025】
後側の対向壁部(他方の対向壁部)16は、背面視において略矩形状に形成され、前後方向と交叉した状態で車幅方向及び上下方向に延びる。後側の対向壁部16には、後側の対向壁部16の略中央部で後方へ球面状に突出する突出曲面領域25と、突出曲面領域25の周囲を囲む平面状の平面領域27とが設けられる。突出曲面領域25は、後側の対向壁部16の上下及び左右の略中央を中心とした背面視円形状の領域であり、前側の対向壁部15の前方開口部23の一部に対向する。後方へ球面状に突出する突出曲面領域25は、前後方向と交叉する方向(上下方向や車幅方向)から視た断面形状(短径方向(前後方向)に沿った断面形状)が、何れの位置においても略円弧状の曲面状となる。背面視における突出曲面領域25の中心部分は、後方へ最も突出する部分であり、後側の対向壁部16の後端となる。突出曲面領域25の上端25aは、前側の対向壁部15の前方開口部23の上端23aよりも上方に配置される。突出曲面領域25の下端25bは、前方開口部23の下端23bよりも僅かに上方に配置される。突出曲面領域25の車幅方向内端25cは、前方開口部23の車幅方向内端23cよりも車幅方向外側、且つ前方開口部23の上端23aよりも下方に配置され、突出曲面領域25の車幅方向外端25dは、前方開口部23の車幅方向外端23dよりも車幅方向内側、且つ前方開口部23の上端23aよりも下方に配置される。後側の対向壁部16には、前方へ凹んだ状態で上下方向に沿って延びる複数(本実施形態では、4本)のリブ27a~27dが設けられる。なお、背面視円形状の突出曲面領域25とは、背面視において完全な円形の突出曲面領域25のみならず、背面視において楕円形の突出曲面領域25を含む。また、球面状の突出曲面領域25は、短径方向(前後方向)と交叉する方向から視た断面形状(短径方向に沿った断面形状)が、何れの位置においても略円弧状の曲面状の領域であればよい。すなわち、球面状の突出曲面領域25は、外部側(本実施形態では、後方)へ向かって突出する完全な球面の突出曲面領域25のみならず、球面に近い状態の突出曲面領域25を含む。また、
図3及び
図6では、分かり易くするために平面領域27と突出曲面領域25との境界線を図示しているが、平面領域27と突出曲面領域25との境界は、境界線を認識できるほど明確であってもよいし、或いは境界線を認識できない緩やかな曲面状であってもよい。
【0026】
リブ27a~27dは、車幅方向に互いに離間して且つ互いに略平行に配置され、前方へ凹んだ状態で上下方向に直線状に延びる。リブ27a~27dの上端部及び下端部は、後側の対向壁部16の平面領域27に配置され、リブ27a~27dの中間部は、後側の対向壁部16の突出曲面領域25に配置される。すなわち、後側の対向壁部16の平面領域27のうちリブ27a~27dが配置される領域は、前方へ凹んでいる。また、後側の対向壁部16の突出曲面領域25のうちリブ27a~27dが配置される領域は、前方へ凹んでいる。リブ27a~27dの深さ(リブ27a~27dの底面部28から後側の対向壁部16の後面までの長さ)は、突出曲面領域25の上下方向の中央部分が最も深い。
【0027】
下ダクト本体13bの左側の対向壁部20は、前後の対向壁部15,16の車幅方向内端縁同士を連結する。下ダクト本体13bの右側の対向壁部21は、前後の対向壁部15,16の車幅方向外端縁同士を連結する。下ダクト本体13bの底壁部22は、後側の対向壁部16の下端縁から連続して下方の前方へ向かって緩やかに湾曲して延び、その前端縁の上面が前方開口部23の下端23bを区画する。
【0028】
下側吸気ダクト13の接続部13cは、前方開口部23から前方へ延びる給気の流路24を区画する筒状に形成される。接続部13cの前端部26には、エアクリーナ5に接続される円形状の前端開口29が設けられる。すなわち、接続部13cは、前方開口部23から前方へ向かうほど円形状になり、略矩形状の前方開口部23と円形状の前端開口29とを連通する。接続部13cの前端部26の直径(高さ方向の長さ)L3は、下ダクト本体13bの前後方向の長さL1よりも長く、下ダクト本体13bの車幅方向の長さL2よりも短い。また、接続部13cの前端部26の直径L3は、後側の対向壁部16の突出曲面領域25の上下方向の長さよりも短く、且つ前方開口部23の上下方向の長さよりも短い。接続部13cの前端開口29は、背面視において前方開口部23内に配置され、前端開口29の一部の領域は、後側の対向壁部16の突出曲面領域25に対向している。接続部13cの前端開口29の上端29aは、突出曲面領域25の上端25a及び前方開口部23の上端23aよりも下方、且つ突出曲面領域25の上下方向の中央部の高さ位置よりも上方に配置される。接続部13cの前端開口29の下端29bは、前方開口部23の下端23bと略同じ高さ位置に配置される、すなわち、接続部13cの前端開口29の下端29bは、突出曲面領域25の下端25bよりも僅かに下方に配置される。接続部13cの前端開口29の車幅方向内端29cは、突出曲面領域25の車幅方向内端25cよりも車幅方向外側に配置される。接続部13cの前端開口29の車幅方向外端29dは、突出曲面領域25の車幅方向外端25dよりも車幅方向内側に配置される。
【0029】
接続部13cの下面部30の車幅方向中央部には、下方へ突出する排水部31が形成される。排水部31の底部には、図示しない排水口が形成されており、吸気ダクト10内に侵入或いは発生した水滴は、排水部31の排水口から排出される。排水部31よりも前方の下面部30に対する排水部31の前壁部31aの角度(前壁部31aの前方の角度)は、排水部31よりも後方の下面部30に対する排水部31の後壁部31bの角度(後壁部31bの後方の角度)よりも大きい。
図7に示すように、下側吸気ダクト13は、金型32を用いてブロー成型した際に、下ダクト本体13bと接続部13cとの角部を下方にした状態で、金型32から上方へ取り外される。排水部31の前壁部31aは、ブロー成型した下側吸気ダクト13を金型32から取り外す際の取り外し方向に沿って(
図7では上下方向に沿って)直線状に延びている。
【0030】
上記のように構成された吸気ダクト10の下側吸気ダクト13の下ダクト本体13bでは、前後方向(短径方向)の長さL1が、下ダクト本体13bの車幅方向(長径方向)の長さL2よりも短い扁平筒状に形成され、下ダクト本体13bの前側の対向壁部15に前方開口部23が設けられる。このため、吸気する際に吸気ダクト10の下側吸気ダクト13の内部に負圧が発生すると、後側の対向壁部16に前方の前方開口部23側への力が作用する。後側の対向壁部16には、前側の対向壁部15の前方開口部23の一部に対向する突出曲面領域25が設けられ、突出曲面領域25が後方へ球面状に突出するので、後側の対向壁部16に突出曲面領域25を設けることなく後側の対向壁部16を平面状に形成する場合に比べて、後側の対向壁部16に前方への力が作用した際の後側の対向壁部16の凹み変形(前方開口部23側への凹み変形)を抑えることができる。
【0031】
また、扁平筒状に形成された下ダクト本体13bの前側の対向壁部15に前方開口部23を設け、後側の対向壁部16のうち前方開口部23の少なくとも一部に対向する位置に突出曲面領域25を設けるという簡易な構造であるので、吸気ダクト10の下側吸気ダクト13を容易に成形することができる。
【0032】
また、後側の対向壁部16の突出曲面領域25が球面状に突出し、前後方向と交叉する方向(上下方向や車幅方向)から視た突出曲面領域25の断面形状が略円弧状の曲面形状となる。すなわち、突出曲面領域25のいずれの位置においても前後方向に沿った突出曲面領域25の断面形状が曲面状となるので、後側の対向壁部16に前方への力が作用した際の後側の対向壁部16の凹み変形を好適に抑えることができる。
【0033】
また、後側の対向壁部16には、前方へ凹んだ状態で上下方向に沿って延びるリブ27a~27dが設けられるので、前後方向の力に対する後側の対向壁部16の剛性が高くなる。このため、後側の対向壁部16に前方への力が作用した際の後側の対向壁部16の凹み変形を好適に抑えることができる。
【0034】
従って、本実施形態によれば、吸気ダクト10の下側吸気ダクト13を容易に形成することができ、且つ内側への下側吸気ダクト13の後側の対向壁部16の前方への凹みを防止することができる。
【0035】
また、下側吸気ダクト13の排水部31の前壁部31aは、ブロー成型した下側吸気ダクト13を金型32から取り外す際の取り外し方向に沿って(
図7では上下方向に沿って)直線状に延びるので、ブロー成型した下側吸気ダクト13を金型32から上方へ取り外す際に、排水部31の前壁部31aと金型32との干渉を防止することができ、下側吸気ダクト13を金型32から上方へ取り外すことができる。このため、排水部31の前壁部31aと金型32とが干渉する場合とは異なり、金型32のうち排水部31の前壁部31aと対応する位置に、下側吸気ダクト13よりも先に金型32から取り外し可能なスライド型部を設けなくてもよいので、その分だけ金型32を簡易な構造とすることができ、金型32の製造コストを抑えることができる。
【0036】
また、後側の対向壁部16に前方へ凹むリブ27a~27dを設けるので、後方へ突出させる場合とは異なり、吸気ダクト10の後方への突出量を抑えることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、吸気ダクト10を、上側吸気ダクト11と蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とによって構成し、キャブ2をチルト状態にする際に蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とが互いに上下に分離可能なダクトとしたが、吸気ダクト10はこれに限定されるものではない。例えば、吸気ダクト10を、蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とが互いに上下に分離しない構成とし、チルトしない車両に吸気ダクト10を適用してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、吸気ダクト10を、上側吸気ダクト11と蛇腹ダクト12と下側吸気ダクト13とによって上下方向(所定方向)に長尺に構成したが、吸気ダクトの形状はこれに限定されるものではなく、例えば、下側吸気ダクト13のように上下方向に短尺の吸気ダクトであってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、吸気ダクト10の下側吸気ダクト13を、曲折したエルボー型のダクトとしたが、下側吸気ダクト13の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、下ダクト本体13bを上方へ開口する有底矩形筒状の箱体状に形成し、下ダクト本体13bの前側の対向壁部15の所定の位置(中央部等)に円形の開口(開口部)を形成し、該開口からエンジン3側へ延びる接続部13cを有するダクトとしてもよい。すなわち、前側の対向壁部15に設けられる開口部は、本実施形態のように、開口部の外縁の一部の領域が底壁部22や左右の対向壁部20,21の前端縁部によって区画される前方開口部23であってもよいし、或いは、開口部の外縁の全域が、前側の対向壁部15によって区画される開口部(前側の対向壁部15の所定の位置(中央部等)に形成される開口部)であってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、上下方向に延びる上側吸気ダクト11及び蛇腹ダクト12と、吸気ダクト10の下端部で前方へ曲折したエルボー型の下側吸気ダクト13とによって構成された吸気ダクト10を例示したが、吸気ダクトはこれに限定されるものではない。吸気ダクトは、長径方向に沿う1対の対向壁部を短径方向に離間させて相対向させた扁平筒状の領域を有する吸気ダクトであればよい。すなわち、吸気ダクトの短径方向は前後方向に限定されず、吸気ダクトの長径方向は車幅方向に限定されず、吸気ダクトが延びる方向は、上下方向に限定されない。また、吸気ダクトの配置位置はキャブ2の後方に限定されるものではない。
【0041】
また、本実施形態では、前方開口部23の形状を、上下方向の長さよりも車幅方向の長さが長い略矩形状としたが、前方開口部23の形状はこれに限定されるものではなく、様々な形状を適用することができる。
【0042】
また、本実施形態では、後側の対向壁部16に、後方へ球面状に突出する突出曲面領域25を設けたが、突出曲面領域25の形状は球面状に限定されるものではない。例えば、突出曲面領域25の形状を、外部側へ円弧状(曲面状)に突出した状態で短径方向と交叉する方向(上下方向や車幅方向等)に直線状に延びる形状としてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、後側の対向壁部16に4本のリブ27a~27dを設けたが、リブの本数はこれに限定されるものではない。後側の対向壁部16には、1本または複数のリブを設けることができる。或いは、後側の対向壁部16にリブを設けなくてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、後側の対向壁部16に上下方向に延びる複数のリブ27a~27dを設けたが、リブ27a~27dを延設する方向はこれに限定されるものではなく、前後方向(短径方向)と交叉する方向であればよい。例えば、車幅方向に沿って延びるリブを後側の対向壁部16に設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、下側吸気ダクト13をブロー成形によって一体成形したが、これに限定されるものではなく、例えば、下ダクト本体13bと接続部13cとを別々に成形した後、互いに固定してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、車両1の吸気ダクト10について説明したが、吸気ダクトを車両1以外に適用してもよい。
【0047】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
3:エンジン
10:吸気ダクト
13:下側吸気ダクト
15:前側の対向壁部(1対の対向壁部のうちの一方の対向壁部)
16:後側の対向壁部(1対の対向壁部のうちの他方の対向壁部)
17:吸気の流路
23:前方開口部(開口部)
25:突出曲面領域
27a~27d:リブ