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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】バッテリ端子の被水防止構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/24 20210101AFI20220104BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20220104BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220104BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20220104BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01M50/24
H01M50/298
H01M50/588
H01M50/591
B60R16/04 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017229817
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019102204
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】平田 将之
(72)【発明者】
【氏名】夏目 慶樹
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202764(JP,A)
【文献】特開2016-110755(JP,A)
【文献】特開2016-066558(JP,A)
【文献】特開2016-072024(JP,A)
【文献】特開2016-171028(JP,A)
【文献】特開平08-040156(JP,A)
【文献】特開2011-049014(JP,A)
【文献】特開2007-045294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/24
H01M 50/298
H01M 50/588
H01M 50/591
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに対して固定されるバッテリの上面に設けられてケーブルが接続されるバッテリ端子の被水防止構造であって、
前記車体フレームに対して固定されたカバー取付状態で前記バッテリの前記上面及び前記バッテリ端子を上方から覆うバッテリカバーと、
弾性を有し、前記バッテリカバーに固定され、前記カバー取付状態で前記ケーブルの上方を前記ケーブルと交叉して延びる弾性カバー部材と、を備え、
前記弾性カバー部材のうち前記カバー取付状態で前記ケーブルと交叉する部分には、下方へ開放されて前記ケーブルの挿通を許容する切欠部が形成され、
前記カバー取付状態での前記弾性カバー部材の前記切欠部内の下面は、前記ケーブルの外周面に沿って弾性変形して前記ケーブルに上方から密着し、
前記カバー取付状態での前記弾性カバー部材は、前記ケーブルが延びる横方向から前記バッテリ端子を覆う
ことを特徴とするバッテリ端子の被水防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の被水防止構造であって、
前記弾性カバー部材の上下方向の高さは、前記ケーブルの外径よりも大きく設定され、
前記カバー取付状態の前記切欠部を除く前記弾性カバー部材の下端縁部は、前記バッテリの前記上面に密着する
ことを特徴とするバッテリ端子の被水防止構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の被水防止構造であって、
前記弾性カバー部材の切欠部の幅は、前記ケーブルの外径よりも大きく設定される
ことを特徴とするバッテリ端子の被水防止構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被水防止構造であって、
前記弾性カバー部材が、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材で形成される
ことを特徴とするバッテリ端子の被水防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリのバッテリ端子の被水を防止する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ端子の被水防止構造が記載されている。この被水防止構造では、バッテリの上面を覆うバッテリカバーの裏面(下面)に弾性カバー部材を固定している。弾性カバー部材は、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材によって下方へ先細りする断面三角形状に形成され、ケーブルと交叉して車幅方向に延びる。弾性カバー部材は、カバー取付状態でケーブルの外周面に沿って円弧状に弾性変形してケーブルに密着する。カバー取付状態の弾性カバー部材の下端縁部は、ケーブルの左右両側でバッテリの上面に密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-110755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバッテリ端子の被水防止構造では、バッテリ端子の被水を防止するために、非連続気泡のスポンジゴム材によって形成された弾性カバー部材が、カバー取付状態でケーブルの外周面に沿って円弧状に弾性変形する。非連続気泡のスポンジゴム材は、連続気泡のスポンジゴム材に比べて変形し難い性質を有するので、カバー取付状態でケーブルの外周面に沿って弾性変形した弾性カバー部材が、バッテリカバーを上方へ押圧し、バッテリカバーが上方へ膨出するように変形してしまう可能性がある。また、連続気泡のスポンジゴム材に比べて変形し難い性質を有する非連続気泡のスポンジゴム材の弾性カバー部材がケーブルの外周面に沿って円弧状に弾性変形すると、ケーブルの両側の弾性カバー部材がバッテリの上面から浮いてしまう可能性があり、弾性カバー部材とバッテリとの間に隙間が生じて所望の被水防止性能を発揮できないおそれがある。このように、弾性カバー部材の材質によっては、カバー取付状態でバッテリカバーが変形して所望の被水防止性能を確保することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、バッテリカバーの変形を抑制し、所望の被水防止性能を確保することが可能なバッテリ端子の被水防止構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車体フレームに対して固定されるバッテリの上面に設けられてケーブルが接続されるバッテリ端子の被水防止構造であって、バッテリカバーと弾性カバー部材とを備える。バッテリカバーは、車体フレームに対して固定されたカバー取付状態でバッテリの上面及びバッテリ端子を上方から覆う。弾性カバー部材は、弾性を有し、バッテリカバーに固定され、カバー取付状態でケーブルの上方をケーブルと交叉して延びる。弾性カバー部材のうちカバー取付状態でケーブルと交叉する部分には、下方へ開放されてケーブルの挿通を許容する切欠部が形成される。カバー取付状態での弾性カバー部材の切欠部内の下面は、ケーブルの外周面に沿って弾性変形してケーブルに上方から密着する。カバー取付状態での弾性カバー部材は、ケーブルが延びる横方向からバッテリ端子を覆う。
【0007】
上記構成では、カバー取付状態において、バッテリカバーは、上方からバッテリ端子を覆い、弾性カバー部材は、ケーブルが延びる横方向からバッテリ端子を覆う。また、弾性カバー部材のうちカバー取付状態でケーブルと交叉する部分には、下方へ開放されてケーブルの挿通を許容する切欠部が形成され、カバー取付状態での切欠部内の下面は、ケーブルの外周面に沿って弾性変形してケーブルに上方から密着する。従って、上方及び横方向からのバッテリ端子の被水をバッテリカバー及び弾性カバー部材によって防止することができる。
【0008】
また、弾性カバー部材のうちカバー取付状態でケーブルと交叉する部分には、下方へ開放されてケーブルの挿通を許容する切欠部が形成されるので、カバー取付状態でケーブルの外周面に沿って弾性カバー部材が弾性変形した際に、弾性カバー部材に押圧されたバッテリカバーの上方への膨出するような変形を抑えることができる。
【0009】
また、弾性カバー部材のうちカバー取付状態でケーブルと交叉する部分に下方へ開放された切欠部を設け、切欠部内の下面がケーブルの外周面に沿って弾性変形してケーブルに上方から密着するので、弾性カバー部材に切欠部を設けることなく、弾性カバー部材の下端縁部をケーブルの外周面に沿って弾性変形させる場合に比べて、弾性カバー部材の変形量を抑えることができ、弾性カバー部材の捲れ等による弾性カバー部材の下端縁部とバッテリとの間の隙間の発生を抑制することができる。
【0010】
また、ケーブルをバッテリ端子に接続した後、弾性カバー部材が固定されたバッテリカバーを取り付ければよいので、例えば、バッテリカバーに円形開口を設け、この円形開口にグロメット等を装着した状態でケーブルを挿通させる場合とは異なり、組付け作業性が良い。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の被水防止構造であって、弾性カバー部材の上下方向の高さが、ケーブルの外径よりも大きく設定され、カバー取付状態の切欠部を除く弾性カバー部材の下端縁部が、バッテリの上面に密着する。
【0012】
上記構成では、カバー取付状態において、切欠部を除く弾性カバー部材の下端縁部が、バッテリの上面に密着するので、バッテリ端子に対する横方向からの被水をさらに確実に防止することができる。
【0013】
また、カバー取付状態において、切欠部を除く弾性カバー部材の下端縁部がバッテリの上面に密着するので、ケーブルは、バッテリの上面と弾性カバー部材の切欠部とによって区画される空間を挿通する。このため、ケーブルの剛性が低く、振動等によってケーブルが移動する可能性がある場合、ケーブルの移動範囲を弾性カバー部材の切欠部内に抑制することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様の被水防止構造であって、弾性カバー部材の切欠部の幅が、ケーブルの外径よりも大きく設定される。
【0015】
上記構成では、弾性カバー部材の切欠部の幅が、ケーブルの外径よりも大きく設定されるので、バッテリカバーをカバー取付状態にする際に、弾性カバー部材の切欠部に対してケーブルを容易に挿通させることができ、組付け作業性が良い。
【0016】
本発明の第4の態様は、上記第1~上記第3の態様のいずれかの被水防止構造であって、弾性カバー部材が、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材で形成される。
【0017】
非連続気泡とは、連続気泡以外の独立気泡又は半連続気泡である。また、柔軟性を有するとは、カバー取付状態でケーブルの外周面に沿って湾曲状に弾性変形する程度の柔軟性を有することである。
【0018】
上記構成では、弾性カバー部材が、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材で形成されるので、連続気泡のスポンジゴム材に比べて防水性が高く、その分だけ確実にバッテリ端子の被水を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、バッテリカバーの変形を抑制し、所望の被水防止性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリ端子の被水防止構造を適用した車両の要部の斜視図である。
図2図1のバッテリカバーの斜視図である。
図3図2をIII方向から視た概略図である。
図4図2のIV-IV矢視断面図である。
図5図1をV方向から視た概略図である。
図6図1のVI-VI矢視断面図である。
図7】バッテリ端子とケーブルとの接続状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、前後方向とは車両の進行方向の前後方向であり、左右方向とは車両前方を向いた状態での左右方向である。また、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。
【0022】
図1に示すように、車両の車体フレーム1は、前後方向へ延びる左右1対のサイドメンバ2(左側のみ図示)と、車幅方向へ延びて左右のサイドメンバ2同士を連結する複数のクロスメンバ(図示省略)とを有し、サイドメンバ2(本実施形態では左側のサイドメンバ)の車幅方向外側にはバッテリ3が配置される。バッテリ3の前後位置は、車両の前輪と後輪との間であって、後輪のタイヤ(図示省略)の前方近傍である。
【0023】
左側のサイドメンバ2の外側面には、金属板製のバッテリキャリア4が固定される。バッテリキャリア4は、キャリア前板部5とキャリア後板部6とキャリア底板部7とを有する。キャリア前板部5は、起立した状態でサイドメンバ2の外側面から車幅方向外側へ延び、前後方向と交叉する。キャリア後板部6は、キャリア前板部5から後方へ離間してキャリア前板部5と相対向し、起立した状態でサイドメンバ2の外側面から車幅方向外側へ延び、前後方向と交叉する。キャリア底板部7は、上下方向と交叉し、キャリア前板部5の下縁部とキャリア後板部6の下縁部とを連結する。
【0024】
キャリア前板部5およびキャリア後板部6の上端縁は、車幅方向内側から車幅方向外側の下方へ向かって、水平方向に対して傾斜して延びている。キャリア前板部5及びキャリア後板部6の上端縁の近傍には、ボルト挿通孔8(キャリア後板部6のボルト挿通孔8のみ図示)が形成される。
【0025】
バッテリ3は、キャリア底板部7に載置されて固定される。本実施形態では、2つのバッテリ3が前後方向に並んで配置され、前後のバッテリ3F,3Rがそれぞれバッテリキャリア4に固定される。前後のバッテリ3F,3Rの各上面の車幅方向の外端部及び内端部には、それぞれバッテリ端子14,15(図6参照)が設けられている。なお、前側のバッテリ3Fのバッテリ端子については、その図示を省略している。前後のバッテリ3F,3Rの左右のバッテリ端子14,15には、複数のケーブル16が接続される。各バッテリ端子14,15とケーブル16とは、バッテリ端子14,15の端子ボルト40にケーブル16の環状端子板41を挿通し、端子ボルト40にナット42を締結することによって接続される(図7参照)。複数のケーブル16のうちの1つのケーブル16aは、後側のバッテリ3Rの車幅方向外側のバッテリ端子14から後方へ延び、その後、車幅方向内側へ延びてサイドメンバ2に支持される。複数のケーブル16のうちの2つのケーブル16b,16cは、前後のバッテリ3F,3Rの車幅方向内側のバッテリ端子15から車幅方向内側へ延びる(図5参照)。なお、バッテリ3の数は、2つに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上であってもよい。また、バッテリ3を車幅方向に並んで配置してもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、バッテリキャリア4の上方には、樹脂製のバッテリカバー20が着脱自在に取り付けられる。バッテリカバー20は、カバー上面部21とカバー前面部22とカバー後面部23とカバー左側面部24とを一体的に有する。すなわち、バッテリカバー20は、その内部空間を下方及び車幅方向内側へ開放する。カバー上面部21は、略矩形板状であり、前側の車幅方向外端部が僅かに前方へ突出し、後側の車幅方向外端部が後方へ突出している。カバー前面部22とカバー後面部23とは、カバー上面部21の前端縁と後端縁とからそれぞれ下方へ曲折して延び、カバー左側面部24は、カバー上面部21の左端縁から下方へ曲折して延びる。車体フレーム1に支持されるバッテリキャリア4にバッテリカバー20が取り付けられたカバー取付状態(図1に示す状態)で、カバー上面部21がバッテリ3の上面3aの全域を上方から覆う。すなわち、カバー取付状態は、バッテリキャリア4等を介して車体フレーム1に対してバッテリカバー20が取り付けられた状態である。
【0027】
カバー後面部23の車幅方向外端部は、バッテリカバー20の内部空間を後方へ拡大するように後方へ突出している。カバー前面部22及びカバー後面部23の各々の車幅方向の略中央部には、前後に突出する突出板部25が形成される。前後の突出板部25は、上下方向と交叉する板部であって、上下方向に貫通するボルト挿通部26をそれぞれ有する。カバー前面部22の突出板部25のボルト挿通部26は、突出板部25を前方から切り欠いた形状であり、カバー後面部23の突出板部25のボルト挿通部26は、突出板部25を後方から切り欠いた形状である。バッテリカバー20をカバー取付状態にするには、バッテリカバー20をバッテリ3の上方に載置した状態で、Jボルト43の一端(下端)側の曲折部を、キャリア前板部5及びキャリア後板部6のボルト挿通孔8に引っ掛け、Jボルト43の他端(上端)側を、カバー前面部22及びカバー後面部23の前後の突出板部25のボルト挿通部26に挿通させて、Jボルト43の他端(上端)側に蝶ナット44を締め付ける。これにより、バッテリカバー20が車体フレーム1に対して固定されたカバー取付状態となる。
【0028】
カバー取付状態では、バッテリカバー20のカバー上面部21が、前後のバッテリ3F,3Rの上面3a及びバッテリ端子14,15を上方から覆い、カバー左側面部24が、前後のバッテリ3F,3Rの上面3a及びバッテリ端子14を左方向から覆い、カバー前面部22及びカバー後面部23が、前後のバッテリ3F,3Rの上面3a及びバッテリ端子14,15を前後方向から覆う。
【0029】
図2図4に示すように、カバー取付状態で下方を向くカバー上面部21の裏面21aには、3つの弾性カバー部材30a,30b,30cが貼着によって固定される。弾性カバー部材30a,30b,30cは、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材(例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム))によって、それぞれ平板状に形成される。なお、弾性カバー部材30a,30b,30cを形成するスポンジゴム材はEPDMに限定されず、柔軟性を有する非連続気泡(連続気泡以外の独立気泡又は半連続気泡)のスポンジゴム材であれば他の素材を任意に選択可能である。また、柔軟性を有するとは、カバー取付状態でケーブル16の外周面の上側領域に沿って円弧状に弾性変形する程度の柔軟性を有することである。
【0030】
図2に示すように、弾性カバー部材30aは、前後方向と交叉する平板状に形成されて車幅方向に直線状に延び、カバー上面部21の前端部に配置されて、カバー上面部21の裏面21aから下方へ延びる。弾性カバー部材30aの車幅方向外端縁は、カバー左側面部24に近接する位置に配置され、弾性カバー部材30aの車幅方向内端縁は、カバー前面部22の車幅方向内端縁から車幅方向外側に離間した位置に配置される。弾性カバー部材30aの車幅方向の外側領域31は、カバー前面部22の後面から僅かに後方へ離間する位置に配置され、弾性カバー部材30aの車幅方向の内側領域32は、カバー前面部22の後面に近接する位置に配置される。弾性カバー部材30aの下端縁部35は、カバー取付状態で前側のバッテリ3Fの上面3aに密着する。これにより、前側のバッテリ3Fのバッテリ端子14は、弾性カバー部材30aによって前方から概ね覆われる。
【0031】
図2図4図6及び図7に示すように、弾性カバー部材30bは、前後方向と交叉する平板状に形成されて車幅方向に直線状に延び、カバー上面部21の後端部に配置されて、カバー上面部21の裏面21aから下方へ延びる。弾性カバー部材30bは、カバー取付状態でケーブル16aの上方をケーブル16aと交叉して車幅方向に延びる。弾性カバー部材30bの車幅方向外端縁は、カバー左側面部24の内面に近接する位置に配置され、弾性カバー部材30bの車幅方向内端縁は、カバー上面部21及びカバー後面部23の車幅方向内端縁から車幅方向外側に離間した位置に配置される。弾性カバー部材30bの車幅方向の外側領域33は、後側のバッテリ3Rの左側のバッテリ端子14の後方に配置され、カバー後面部23の前面から前方へ離間した位置に配置され、弾性カバー部材30bの車幅方向の内側領域34は、カバー後面部23の前面に近接する位置に配置される。弾性カバー部材30bの外側領域33には、弾性カバー部材30bの下端縁部36から上方へ略矩形状に切り欠かれたケーブル挿通部(切欠部)37が形成される。ケーブル挿通部37は、弾性カバー部材30bのうちカバー取付状態でケーブル16aと交叉する部分に設けられる。
【0032】
図4に示すように、弾性カバー部材30bの高さL1は、ケーブル16aの径r1よりも大きい(長い)。弾性カバー部材30bのケーブル挿通部37の高さL2は、ケーブル16aの径r1よりも大きく、ケーブル挿通部37の幅(車幅方向の長さ)L3は、ケーブル16aの径r1よりも大きい。弾性カバー部材30bのケーブル挿通部37の高さL2は、ケーブル16aの配索位置(高さ位置)に応じて設定され、具体的には、カバー取付状態でケーブル16aの外周面の上側領域に沿って僅かに円弧状に弾性変形してケーブル16aに上方から密着する高さに設定される。
【0033】
図4図6及び図7に示すように、カバー取付状態では、弾性カバー部材30bのケーブル挿通部37にケーブル16aが挿通し、ケーブル挿通部37内の弾性カバー部材30bの下面38のうちケーブル16aに上方から当接する部分は、ケーブル16aの外周面の上側領域に沿って僅かに円弧状に弾性変形してケーブル16aに上方から密着する。また、ケーブル挿通部37の左右両側の弾性カバー部材30bの下端縁部36は、カバー取付状態で後側のバッテリ3Rの上面3aに密着する。これにより、後側のバッテリ3Rのバッテリ端子14は、ケーブル挿通部37を除き、弾性カバー部材30bによって後方(ケーブル16aが延びる横方向)から概ね覆われる。
【0034】
図2図3及び図5に示すように、弾性カバー部材30cは、車幅方向と交叉する平板状に形成されて前後方向に直線状に延び、カバー上面部21の車幅方向内端から車幅方向外側へ離間し、且つ弾性カバー部材30a,30bの車幅方向内端縁から車幅方向内側へ離間した位置に配置されて、カバー上面部21の車幅方向内端部の裏面21aから下方へ延びる。弾性カバー部材30cは、カバー取付状態でケーブル16aの上方をケーブル16b,16cと交叉して前後方向に延びる。弾性カバー部材30cの前端縁はカバー前面部22の後面の近傍に配置され、弾性カバー部材30cの後端縁は、カバー後面部23の前面の近傍に配置される。弾性カバー部材30cには、弾性カバー部材30cの下端縁部39から上方へ略矩形状に切り欠かれた前後2つのケーブル挿通部(切欠部)45,46が形成される。前側のケーブル挿通部45は、弾性カバー部材30cの前後方向の中央部よりも僅かに後方に配置され、車幅方向に貫通した状態で下方へ開放される。後側のケーブル挿通部46は、弾性カバー部材30cの後端部に配置され、車幅方向に貫通した状態で下方及び後方へ開放される。すなわち、後側のケーブル挿通部46は、弾性カバー部材30cの後下部の角部が切り欠かれたような形状に形成される。ケーブル挿通部45,46は、弾性カバー部材30cのうちカバー取付状態でケーブル16b,16cと交叉する部分に設けられる。
【0035】
図3に示すように、弾性カバー部材30cの高さL4は、ケーブル16b,16cの径r2,r3よりも大きい。弾性カバー部材30cの前側のケーブル挿通部45の高さL5は、ケーブル16bの径r2よりも大きく、前側のケーブル挿通部45の幅(前後方向の長さ)L6は、ケーブル16bの径r2よりも大きい。弾性カバー部材30cの後側のケーブル挿通部46の高さL7は、ケーブル16cの径r3よりも大きく、後側のケーブル挿通部46の幅(前後方向の長さ)L8は、ケーブル16cの径r3よりも大きい。弾性カバー部材30cのケーブル挿通部45,46の高さL5,L7は、ケーブル16b,16cの配索位置(高さ位置)に応じて設定され、具体的には、カバー取付状態でケーブル16b,16cの外周面の上側領域に沿って僅かに円弧状に弾性変形してケーブル16b,16cに上方から密着する高さに設定される。
【0036】
図3及び図5に示すように、カバー取付状態では、前側のケーブル挿通部45にケーブル16bが挿通し、前側のケーブル挿通部45内の弾性カバー部材30cの下面47のうちケーブル16bに上方から当接する部分は、ケーブル16bの外周面の上側領域に沿って僅かに円弧状に弾性変形してケーブル16bに上方から密着する。また、カバー取付状態では、後側のケーブル挿通部46にケーブル16cが挿通し、後側のケーブル挿通部46内の弾性カバー部材30cの下面48のうちケーブル16cに上方から当接する部分は、ケーブル16cの外周面の上側領域に沿って僅かに円弧状に弾性変形してケーブル16cに上方から密着する。また、前後のケーブル挿通部45,46を除く弾性カバー部材30cの下端縁部39は、カバー取付状態で前後のバッテリ3F,3Rの上面3aに密着する。これにより、前後のバッテリ3F,3Rのバッテリ端子15は、前後のケーブル挿通部45,46を除き、弾性カバー部材30cによって車幅方向内側(ケーブル16b,16cが延びる横方向)から概ね覆われる。
【0037】
上記のように構成されたバッテリ端子14,15の被水防止構造では、カバー取付状態において、バッテリカバー20は、上方、左方向(車幅方向外側)、及び前後方向からバッテリ端子14,15を覆う。また、弾性カバー部材30aが、前側のバッテリ3Fのバッテリ端子14,15を前方から覆う。また、弾性カバー部材30bが、ケーブル16aの外周面に沿って弾性変形してケーブル16aに密着し、ケーブル16aが延びる後方から後側のバッテリ3Rのバッテリ端子14を覆う。また、弾性カバー部材30cが、ケーブル16b,16cの外周面に沿って弾性変形してケーブル16b,16cに密着し、ケーブル16b,16cが延びる車幅方向内側から前後のバッテリ3F,3Rの右側のバッテリ端子15を覆う。さらに、弾性カバー部材30a,30b,30cの下端縁部35,36,39は、バッテリ3の上面3aに密着する。従って、例えば、車両の後進時等に後輪のタイヤから前方のバッテリ3に向かって水が跳ね上げられた場合であっても、上方及び後方からのバッテリ端子14,15の被水を、バッテリカバー20及び弾性カバー部材30bによって確実に防止することができる。また、車幅方向内側からのバッテリ端子15の被水を、バッテリカバー20及び弾性カバー部材30cによって確実に防止することができる。
【0038】
また、弾性カバー部材30b,30cのうちカバー取付状態でケーブル16と交叉する部分には、下方へ開放されてケーブル16の挿通を許容するケーブル挿通部37,45,46が形成されるので、カバー取付状態でケーブル16の外周面に沿って弾性カバー部材30b,30cが弾性変形した際に、弾性カバー部材30b,30cに押圧されたバッテリカバー20の上方への膨出するような変形を抑えることができる。
【0039】
また、弾性カバー部材30b,30cのうちカバー取付状態でケーブル16と交叉する部分に下方へ開放されたケーブル挿通部37,45,46を設け、ケーブル挿通部37,45,46内の下面38,47,48をケーブル16の外周面に沿って弾性変形させるので、ケーブル挿通部37,45,46を設けない場合に比べて、ケーブル16による弾性カバー部材30b,30cの変形量を抑えることができ、弾性カバー部材30b,30cの捲れ等による弾性カバー部材30b,30cの下端縁部36,39とバッテリ3の上面3aとの間の隙間の発生を抑制することができる。
【0040】
また、カバー取付状態において、ケーブル挿通部37,45,46を除く弾性カバー部材30b,30cの下端縁部36,39が、バッテリ3の上面3aに密着するので、バッテリ端子14,15に対する後方及び車幅方向内側からの被水をさらに確実に防止することができる。
【0041】
また、弾性カバー部材30b,30cが、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材によって形成されるので、連続気泡のスポンジゴム材に比べて防水性が高く、その分だけ確実にバッテリ端子の被水を防止することができる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、バッテリカバー20の変形を抑制し、所望の被水防止性能を確保することができる。
【0043】
また、バッテリ端子14,15にケーブル16を接続した後、弾性カバー部材30b,30cが固定されたバッテリカバー20を取り付ければよいので、例えば、バッテリカバー20に円形開口を設け、この円形開口にグロメット等を装着した状態でケーブル16を挿通させる等の煩雑な作業が不要であり、組付け作業性が良い。
【0044】
また、弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46の幅L3,L6,L8が、ケーブル16の外径r1,r2,r3よりも大きく設定されるので、バッテリカバー20をカバー取付状態にする際に、弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46に対してケーブル16を容易に挿通させることができ、組付け作業性が良い。
【0045】
また、カバー取付状態において、ケーブル挿通部37,45,46を除く弾性カバー部材30b,30cの下端縁部36,39が、バッテリ3の上面3aに密着するので、ケーブル16は、バッテリ3の上面3aと弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46とによって区画される空間を挿通する。このため、ケーブル16の剛性が低く、振動等によってケーブル16が移動する可能性がある場合、ケーブル16の移動範囲を弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46内に抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、弾性カバー部材30b,30cに略矩形状のケーブル挿通部37,45,46を設けたが、ケーブル挿通部37,45,46の形状はこれに限定されるものではない。
【0047】
また、本実施形態では、弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46の高さL2,L5,L7を、ケーブル16の外径r1,r2,r3よりも大きく設定したが、これに限定されるものではなく、ケーブル16の配索位置(高さ位置)に応じて設定することができる。例えば、ケーブル16がバッテリ3の上面3aに沿って配策される場合には、ケーブル挿通部の高さをケーブル16の外径よりも僅かに小さく設定してもよい。また、ケーブル挿通部の形状を矩形状以外の形状(例えば、円弧形状等)にした場合には、ケーブル挿通部のうち最も高い(深い)部分の高さを、上述したようにケーブル16の配索位置(高さ位置)に応じて設定してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46の幅L3,L6,L8を、ケーブル16の外径r1,r2,r3よりも大きく設定したが、弾性カバー部材30b,30cのケーブル挿通部37,45,46の幅L3,L6,L8をケーブル16の外径r1,r2,r3よりも僅かに小さく設定してもよい。
【0049】
また、ケーブル挿通部37,45,46の形成方法は、矩形状の弾性カバー部材30b,30cから所定の領域を切り欠く方法であってもよいし、或いは所定の領域が予め切り欠かれた形状の弾性カバー部材30b,30cを成形する方法であってもよい。
【0050】
また、本実施形態では、弾性カバー部材30b,30cの下端縁部36,39をバッテリ3の上面3aに密着させたが、これに限定されるものではない。例えば、弾性カバー部材30bをカバー取付状態で後側のバッテリ3Rよりも後方に位置するように配置し、弾性カバー部材30bを上方から後側のバッテリ3Rの上面3aよりも下方まで延ばし、弾性カバー部材30bの下端縁部36を後側のバッテリ3Rの後面に接触させてもよい。或いは、弾性カバー部材の下端縁部を、バッテリ3に接触させなくてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、バッテリカバー20の前端側に弾性カバー部材30aを設けたが、弾性カバー部材30aを設けなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、ケーブル挿通部37,45,46を有する弾性カバー部材30b,30cを、バッテリ端子14から後方へ延びるケーブル16aと、バッテリ端子15から車幅方向内側へ延びるケーブル16b,16cとに対応させて、バッテリカバー20の後端側と車幅方向内端側とに設けたが、ケーブル挿通部(切欠部)を有する弾性カバー部材を設ける位置はこれに限定されるものではなく、ケーブル16が延びる方向に対応させた位置に配置することができる。例えば、バッテリ端子14,15からケーブル16が前方へ延びる場合には、ケーブル挿通部(切欠部)を有する弾性カバー部材をバッテリカバー20の前端側に設けてもよい。また、弾性カバー部材に設けるケーブル挿通部(切欠部)の数は上記に限定されるものではなく、弾性カバー部材と交叉する方向へ延びるケーブル16の本数に応じた数にすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、平板状の弾性カバー部材30b,30cとしたが、弾性カバー部材30b,30cの形状はこれに限定されるものではなく、カバー取付状態でケーブル16との当接によって変形し、且つバッテリカバー20を上方へ変形させない形状であればよい。
【0054】
また、本実施形態では、弾性カバー部材30b,30cを、柔軟性を有する非連続気泡のスポンジゴム材によって形成したが、弾性カバー部材30b,30cの材質はこれに限定されるものではなく、カバー取付状態でケーブル16の外周面の上側領域に沿って円弧状に弾性変形する程度の柔軟性を有するものであればよい。例えば、連続気泡のスポンジゴム材によって弾性カバー部材を形成してもよいし、或いはスポンジゴム材以外の材料によって弾性カバー部材を形成してもよい。
【0055】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1:車体フレーム
3:バッテリ
3a:バッテリの上面
14,15:バッテリ端子
16:ケーブル
20:バッテリカバー
30b,30c:弾性カバー部材
36,39:弾性カバー部材の下端縁部
37,45,46:ケーブル挿通部(切欠部)
38,47,48:ケーブル挿通部内の下面(切欠部内の下面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7