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特許6990375サーマル紙及びサーマル紙を用いた帳票片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】サーマル紙及びサーマル紙を用いた帳票片
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/28 20060101AFI20220104BHJP
   B42D 15/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B41M5/28
B42D15/04 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2016166210
(22)【出願日】2016-08-26
(65)【公開番号】P2018030353
(43)【公開日】2018-03-01
【審査請求日】2019-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 一広
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004024(JP,A)
【文献】特開平06-286370(JP,A)
【文献】特開2001-180125(JP,A)
【文献】特開平07-096656(JP,A)
【文献】特開平04-303678(JP,A)
【文献】特開平07-186554(JP,A)
【文献】特開平07-257041(JP,A)
【文献】特開2009-208333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の表面に、サーマルプリンタによる加熱発色で印字される感熱発色層を備え、該サーマルプリンタによる印字後に切り離される複数の紙片部が長手方向に所定の切断間隔で連続して設けられるロール状に巻回されたサーマル紙において、
前記サーマルプリンタにより感熱発色層を加熱発色させた発色部位における赤外光の反射率が70%以上かつ可視光の反射率が30%以下となるものであって、
各紙片部の表面には、光学的に読取可能な真贋判定用第一光学コードが、透明または可視光で読取不能な淡色の赤外光吸収インキによって、隣合う切断間隔内に少なくとも一個印刷されるように、該第一光学コードの長手方向幅Sが切断間隔Wに対して下記の(1)式を満足し、かつ該第一光学コードの印刷間隔Tが切断間隔Wと長手方向幅Sに対して下記の(2)式を満足する関係で位置設定して、複数印刷されているものであり、
紙片部の表面に、前記第一光学コードと異なる光学的に読取可能な第二光学コードが、該第一光学コードの少なくとも一部分と重なるように、前記サーマルプリンタによって重複印字されるものであることを特徴とするサーマル紙。
(1)W>2S
(2)T≦W-2S
【請求項2】
請求項1記載のサーマル紙から切り離されるものであって、切り離される前に、紙片部の表面に、前記真贋判定用第一光学コードと異なる光学的に読取可能な第二光学コードが、該第一光学コードの少なくとも一部分と重なるように、サーマルプリンタによって重複印字されていることを特徴とするサーマル紙を用いた帳票片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材の表面にサーマルプリンタによる加熱発色で印字される感熱発色層を備えたサーマル紙に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタの印字媒体として使用されるサーマル紙は、該サーマルプリンタによる印字後に切り離される複数の紙片部を備え、切り離された紙片部が、例えば入場券や回数券などのチケットとして用いられるようになっている。こうしたサーマル紙として、例えば、ロール状に巻回され、複数の紙片部が所定の切断間隔で連続して設けられてなるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のチケット等の用途では、その用途に必要な情報を記憶した光学コードが印字される場合がある。この場合のサーマル紙では、各紙片部にサーマルプリンタにより光学コードが印字された後に、該紙片部が切り離されてチケット等として用いられる。ここで、一般的に、サーマル紙に、サーマルプリンタによる加熱発色で印字すると、該印字を視認できる。そのため、サーマルプリンタにより印字された前記光学コードは、コピー機等により容易に複製可能であることから、前記した入場券や回数券等の用途で、容易に偽造されたり改ざんされる虞がある。このような偽造や改ざんを防止するため、例えば、サーマル紙に、赤外発色する感熱発色層を備えたものを使用して、前記光学コードを印字し、さらに、赤外光を透過する隠蔽層によって、該光学コードの全体または一部分を被覆するようにしたものが知られている。かかる構成では、サーマルプリンタで印字した光学コードが隠蔽層により被覆されていることから、コピー機で複製した場合に、隠蔽層により光学コードを正確に複製できず、偽造や改ざんを防止できる。そして、隠蔽層により被覆された光学コードは、赤外発色する感熱発色層に加熱印字されたものであること、および、該隠蔽層が赤外光を透過可能であることから、赤外光を照射する専用の読取装置を用いることで読み取りできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-246151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の、感熱発色層の赤外発色により印字した光学コードを隠蔽層により被覆する構成にあっては、サーマルプリンタによる加熱印字後に、例えば、赤外光を透過する濃色のシールを貼付することにより該隠蔽層が形成される。こうした従来構成のチケット等を生成するためには、サーマル紙に光学コードを印字したサーマルプリンタに加えて、該隠蔽層となる前記シールを貼付する機器が必要であった。ここで、通常、サーマルプリンタによる印字は、サーマル紙から紙片を切り離す現場(チケット等の販売現場など)で実施されることから、該現場に、サーマルプリンタを設置するスペースに加えて、前記シールの貼付機器を設置するためのスペースが必要となっていた。このようにサーマル紙に印字した光学コードを隠蔽層で被覆するチケット等の用途では、前記現場で、サーマルプリンタおよびシール貼付機器を設置するために広いスペースを必要とするという問題があると共に、該現場で、サーマルプリンタによる印字と隠蔽層の形成という二つの工程が実施されることから、これら二工程に時間を要するという問題もあった。
【0006】
また、上記した光学コードを隠蔽層で被覆するチケット等では、該隠蔽層の存在によって、その下に隠された情報(光学コード)の存在を暗示させてしまう虞もある。そして、偽造等をしようとする者が、隠蔽層により隠された情報を得るために、赤外光を使用することに思い当たれば、該情報(光学コード)を獲得して偽造することも可能である。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決し、サーマルプリンタによる印字後に切り離された紙片部の偽造防止効果が向上し得るサーマル紙を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、紙基材の表面に、サーマルプリンタによる加熱発色で印字される感熱発色層を備え、該サーマルプリンタによる印字後に切り離される複数の紙片部が設けられたサーマル紙において、前記サーマルプリンタにより感熱発色層を加熱発色させた発色部位における赤外光の反射率が70%以上かつ可視光の反射率が30%以下となるものであって、各紙片部の表面には、光学的に読取可能な第一光学コードが、透明または可視光で読取不能な淡色の赤外光吸収インキによって、少なくとも一個印刷されてなり、さらに、各紙片部の表面に、前記第一光学コードと異なる光学的に読取可能な第二光学コードが、該第一光学コードの少なくとも一部分と重なるように、前記サーマルプリンタによって重複印字されるものであることを特徴とするサーマル紙である。
【0009】
ここで、本発明のサーマル紙は、紙基材の表面に感熱発色層を備えたものであり、一般的なものと同様に、インキによる印刷やサーマルプリンタによる加熱発色される前の状態で、可視光および赤外光の反射率が極めて高いもの(例えば、両方の反射率が80%以上)である。
また、第一光学コードと第二光学コードとしては、バーコードや二次元コードを適用でき、さらに誤り訂正機能を有する二次元コードが好適に用いられる。そして、第一光学コードと第二光学コードとは、両方がバーコードまたは二次元コードである場合だけでなく、一方がバーコードで他方が二次元コードであっても良い。
また、各紙片部に印刷された少なくとも一個の第一光学コードは、赤外光の照射により第一光学コードに記憶された情報を読み取りできる状態であるものを示している。そのため、例えば、第一光学コードが前記した誤り訂正機能を有するものである場合には、紙片部に印刷された第一光学コードの一部分が隣りの紙片部に印刷されていたとしても、切り離し後に該誤り訂正機能により復元可能であれば、本発明にかかる各紙片部に印刷された第一光学コードに含まれる。
また、第一光学コードを印刷する赤外吸収インキにあって、可視光を読取不能な淡色とは、該可視光の透過率が極めて高い色を示す。
【0010】
本発明にかかるサーマル紙は、サーマルプリンタによる第二光学コードの印字後に紙片部が切り離され、切り離された該紙片部が、可視光で読取不能な第一光学コードにより真贋判定可能な帳票片(例えば、入場券や回数券などのチケット)として使用可能なものであり、換言すれば、前記真贋判定により偽造防止効果を有する帳票片を生成するためのものである。すなわち、かかる構成にあっては、各紙片部の表面上に、赤外吸収インキにより第一光学コードが印刷されたものであり、サーマルプリンタの印字媒体として使用されて、該サーマルプリンタによって、該第一光学コードの下側(感熱発色層)に第二光学コードが印字される。そして、サーマルプリンタにより第二光学コードが印字された後の紙片部(上記の帳票片に相当)では、感熱発色層の加熱発色により印字された第二光学コードの発色部位と非発色部位とで可視光の反射率に比較的大きな差があることから、該第二光学コードを視認可能であると共に、該可視光を照射する光学コード読取装置(以下、可視光読取装置という)を用いることによって、該第二光学コードを読み取ることができる。ここで、第一光学コードは、透明または淡色で印刷されたものであるから、その印刷部位を可視光が透過して、非印刷部位と可視光の反射率に大きな差が生じないため、視認できず且つ前記可視光読取装置で読取できない。一方、赤外光を照射する光学コード読取装置(以下、赤外光読取装置という)を用いると、第一光学コードの印刷部位で該赤外光を吸収し、非印刷部位で該赤外光を吸収しないことから、該印刷部位と非印刷部位とで赤外光の反射率に比較的大きな差があり、該第一光学コードを読み取ることができる。ここで、第一光学コードの非印刷部位は、感熱発色層の発色部位か否かに関わらず、赤外光の反射率が高い(70%以上)ことから、前記第二光学コードを前記赤外光読取装置で読み取ることができない。こうしたことから、サーマルプリンタによる印字後に切り離された紙片部(帳票片)は、例えば、コピー機(可視光を使用するもの)で複写した場合に、第二光学コードが複写され、第一光学コードが複写されない。そのため、このコピー機による複写物は、前記した赤外光読取装置で第一光学コードを読み取りできないことから、偽物(複写された物)と容易に判定できる。したがって、本発明のサーマル紙によれば、上記した入場券や回数券などの用途に好適に利用可能な高い偽造防止効果を有する紙片部を、サーマルプリンタによる印字後に切断間隔で切り離すことにより容易に生成できる。
【0011】
さらに、上述したようにサーマルプリンタで印字後の紙片部(帳票片に相当)では、目視できる第二光学コードと目視不能な第一光学コードとが印字されていることから、一見して確認できる第二光学コードの存在によって第一光学コードの存在を隠蔽する効果が高い。このように本構成は、第一光学コードの隠蔽効果が高いことから、上述した従来構成のように隠蔽層(隠蔽用のシールなど)を設ける必要が無く、該隠蔽層によって隠蔽された光学コードの存在を暗示させてしまうことも無い。さらに、サーマルプリンタで印字する現場(チケット等の販売現場など)に、従来構成のように隠蔽層を設ける装置(上記したシール添付機器など)を設置する必要がないことから、該現場における装置の設置スペースを省スペース化することができ得る。
【0012】
上述した本発明のサーマル紙にあって、複数の紙片部が長手方向に所定の切断間隔で連続して設けられ、ロール状に巻回されたものであって、第一光学コードが、隣合う切断間隔内に少なくとも一個印刷されるように、該切断間隔と該第一光学コードの長手方向幅とに基づいて定めた印刷間隔をおいて、長手方向に複数印刷されてなるものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成のサーマル紙は、ロール状に巻回された長尺のものであり、その長手方向に複数の紙片部が連続されてなる。そして、本構成は、切断間隔と第一光学コードの長手方向幅とに基づいて設定した印刷間隔をおいて第一光学コードが印刷されたことにより、長手方向に連続する各紙片部に少なくとも一個の第一光学コードが印刷されたものである。すなわち、製造工程にあって、第一光学コードを長手方向に前記印刷間隔をおいて複数印刷することにより、ロール状に巻回された本構成のサーマル紙が安定して製造され得る。ここで、第一光学コードの印刷間隔は、長手方向の間隔であることから、同じ長手方向の切断間隔と該第一光学コードの長手方向幅とに基づいて設定されることで、隣合う印刷間隔内(各紙片部)に少なくとも一個の第一光学コードを確実に印刷できる間隔となり得る。
【0014】
尚、ロール状に巻回されるサーマル紙は、上記のように長尺であることから、各紙片部に第一光学コードが少なくとも一個印刷されたものとするためには、製造工程にあって、各紙片部を構成する隣合う切断間隔内に、少なくとも一個の該第一光学コードが印刷されるように、該第一光学コードの印刷位置を高精度で設定することが必要である。これに対して、本構成によれば、上述したように、切断間隔と第一光学コードの長手方向幅とに基づいて設定した印刷間隔により、第一光学コードの印刷位置を比較的容易かつ安定して定めることができ、各紙片部に少なくとも一個の第一光学コードを確実に印刷できる。
【0015】
したがって、本構成のサーマル紙によれば、サーマルプリンタによる印字後の各紙片部が、上述した偽造防止効果を確実かつ安定して発揮できるものとなるため、各紙片部を切り離すことにより、入場券や回数券などのチケットとして好適に用いられる帳票片を安定して生成できる。
【0016】
尚、第一光学コードが上述したように誤り訂正機能を備えた二次元コードである場合には、印刷間隔を、該誤り訂正機能による復元率(誤り訂正レベル)に用いて補正したものとすることも可能である。すなわち、隣合う切断間隔に跨がって印刷された第一光学コードがあっても、一方の切断間隔内に、誤り訂正機能で復元可能に印刷されていれば良いため、前記復元率で補正された印刷間隔を用いることもできる。
【0017】
上述した本発明のサーマル紙にあって、第一光学コードは、その長手方向幅Sが切断間隔Wに対して下記の(1)式を満足するものであって、該第一光学コードの印刷間隔Tは、該切断間隔Wと第一光学コードの長手方向幅Sとの関係が下記の(2)式を満足するように設定されている構成が提案される。ここで、第一光学コードが光学的に読取可能なものであるという趣旨からすると、必然的にT>0である。
(1)W>2S
(2)T≦W-2S
【0018】
かかる構成にあっては、第一光学コードが、上記(1)式に示すように、その長手方向幅Sの二倍値が切断間隔Wよりも小さいサイズのものであると共に、該第一光学コードの印刷間隔Tが、上記(2)式に示すように、切断間隔Wから該第一光学コードの長手方向幅Sの二倍値を減算した値以下に設定されたものとしたことによって、隣合う切断間隔内に少なくとも一個の第一光学コードが確実に印刷されたものとなっている。また、サーマル紙の各紙片部に等間隔(例えば、切断間隔)で所定図柄を夫々印刷する工程にあっては、通常、該サーマル紙が長尺であり且つ複数の紙片部を連続するものであることから、該サーマル紙の印刷基準位置を高精度で位置決めすることが求められる。これは、印刷基準位置がずれると、例えば、図柄が隣の紙片部に跨がって印刷されたり、図柄が印刷されない紙片部が生じる等のように、正しく図柄が印刷されない紙片部を生じてしまう虞があることに因る。これに対して、本構成のように印刷間隔Tを設定すれば、サーマル紙で印刷基準位置を高精度で位置決めしなくとも、各紙片部に少なくとも一個の第一光学コードを確実に印刷することができる。そのため、本構成によれば、第一光学コードの印刷工程にあって、高精度な位置決め作業を必要とせず、作業負担を軽減できるという優れた利点がある。
【0019】
尚、互いに異なる切断間隔が複数設定されている場合、又は切断間隔が明確に定められていない場合には、最も短い切断間隔Wを用いて印刷間隔Tを設定することによって、上述したように各紙片部に少なくとも一個の第一光学コードが確実に印刷され得る。また、第一光学コードが上述したように誤り訂正機能を備えた二次元コードの場合には、該第一光学コードの長手方向幅Sを、該誤り訂正機能による復元率(誤り訂正レベル)を用いて補正して用いることも可能である。すなわち、復元率により補正された第一光学コードの長手方向幅Sは、誤り訂正機能で復元可能なモジュール数を含む幅であることから、例え、該第一光学コードの一部分が隣の紙片部に印刷されていたしても、該誤り訂正機能によって復元でき、該第一光学コードを読取可能である。ここで、復元率で補正された第一光学コードの長手方向幅Sは、本来の長手方向幅よりも復元率に応じて短くなることから、復元率を用いて設定される印刷間隔Tは、本来の長手方向幅により定める印刷間隔に比して、長く設定することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のサーマル紙によれば、サーマルプリンタの印字媒体として使用され、該サーマルプリンタにより第二光学コードを印字後に切り離された紙片部を、第一光学コードにより真贋判定可能な帳票片として好適に使用できるものである。また、本発明の構成は、目視できる第二光学コードの存在により第一光学コードの隠蔽効果を向上できることから、上述した従来構成のように偽造防止のために隠蔽層を形成する必要が無く、該隠蔽層を形成する機器を設置する必要も無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施例のサーマルロール紙1を示す斜視図である。
図2】第一光学コード21を視認可能に表示して示すサーマルロール紙1の平面図である。
図3】第二光学コード31が印字された紙片部12の、(A)平面図と、(B)第一光学コード21と第二光学コード31との位置関係を示す説明図である。
図4】(A)図2中のX-X線断面の部分拡大図と、(B)図3中のY-Y線断面の部分拡大図である。
図5】サーマルロール紙1をセットした状態のサーマルプリンタ51の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って以下説明する。
本実施例のサーマルロール紙1は、図1に示すように、長尺帯状をなし、円筒状の芯材9に巻回されたものであり、後述するサーマルプリンタ51(図5参照)の印字媒体として用いられるものである。サーマルロール紙1は、図4に示すように、長尺帯状の紙基材3の表面に感熱発色層4を備えたものであり、サーマルプリンタ51のサーマルヘッド55による熱印加を介して該感熱発色層4を加熱発色させることにより印字されるものである。尚、本実施例にあって、サーマルロール紙1が、本発明にかかるサーマル紙である。また、本実施例では、サーマルロール紙1が前記芯材9に巻回されてなるものを、以下、ロール体2と言う。
【0023】
サーマルロール紙1を構成する紙基材3には、上質紙や中質紙等の普通紙、または合成紙などの不透明なものが用いられ、本実施例では、白色の普通紙を用いている。また、感熱発色層4は、発色剤や顕色剤などを混在してなる透明な層構造を成し、熱印加により赤外発色するカーボン等の赤外吸収剤が添加されていない(又は、赤外吸収剤の添加量が極微量である)。こうした本実施例のサーマルロール紙1は、可視光(可視領域の光)や赤外光(赤外領域の光)を照射すると、これらの光が感熱発色層4を透過して紙基材3で反射するものであり、可視光および赤外光の反射率が80%以上である。そして、熱印加により感熱発色層を加熱発色させると、発色部位では、可視光の透過率が低下することから、該可視光の反射率が低下するが、前記のように赤外発色しないことから、赤外光の透過率低下が抑制され、該赤外光の反射率低下が抑制される。具体的には、加熱発色させた発色部位では、可視光の反射率が30%以下に低下すると共に、赤外光の反射率が70%以上で保たれ得る。これにより、サーマルプリンタによる発色部位は、可視光を照射した場合に、非発色部位とで該可視光の反射率の差が大きいことにより顕在化されて、はっきりと読み取ることができる一方、赤外光を照射した場合には、非発色部位との該赤外光の反射率の差が小さいことから、顕在化されず読み取れない。
【0024】
上記のサーマルロール紙1は、図1,2に示すように、長手方向に所定の切断間隔Wをおいて複数の易切断線11が形成されており、該易切断線11を介して複数の紙片部12が長手方向に連続されてなる。この易切断線11は、ミシン目やハーフカット線などから構成され、サーマルロール紙1を幅方向に横断するように形成されている。そして、隣合う易切断線11間の矩形状領域が、前記の紙片部12である。こうしたサーマルロール紙1は、上記のようにサーマルプリンタの印字媒体として用いられ、該サーマルプリンタによる印字後に易切断線11で切断されることにより、紙片部12が切り離される。そして、サーマルロール紙1から切り離された紙片部12が、チケット等の帳票片として用いられ得る。
【0025】
図2に示すように、サーマルロール紙1には、その表面に、長手方向に所定の印刷間隔Tをおいて複数の第一光学コード21が並列に印刷されている。ここで、本実施例の第一光学コード21は、所定の真贋判定情報を記憶したQRコード(登録商標)であり、透明な赤外光吸収インキにより印刷されてなる。この赤外光吸収インキは、赤外光を吸収する特性を有するインキであり、赤外光を吸収する顔料(例えば、トリフェニルメタン系のレーキ顔料、錫ドープ酸化インジウム粉末など)を含有したものである。こうした赤外光吸収インキで印刷された第一光学コード21は、可視光を透過し且つ赤外光を透過不能とすることから、該第一光学コード21を感熱発色層4上に印刷したサーマルロール紙1では、該第一光学コード21の印刷部位で、可視光の反射率が70%以上で保たれ、赤外光の反射率が30%以下に低下される。そのため、第一光学コード21が印刷されたサーマルロール紙1に可視光を照射した場合には、該第一光学コード21の印刷部位と非印刷部位との反射率の差がほとんど無いことから、読み取れず、目視できない。一方、赤外光を照射した場合には、第一光学コード21の印刷部位と非印刷部位との反射率の差が大きいことから、顕在化されて、該第一光学コードをはっきりと読み取ることができる。
【0026】
第一光学コード21は、略正方形状のQRコードであり、その一辺がサーマルロール紙1の長手方向に沿うように印刷されている。そして、第一光学コード21の長手方向幅S(一辺の幅)が下記の(1)式を満足するように、該第一光学コード21は、そのサイズが設定されて印刷されている。具体例として、本実施例の第一光学コード21は、その長手方向幅Sが切断間隔Wの約1/3の寸法に設定されている。
(1)W>2S
【0027】
また、サーマルロール紙1に印刷される第一光学コード21の印刷間隔Tは、上記した易切断線11の切断間隔Wと、該第一光学コード21の長手方向幅Sとに基づいて設定されており、本実施例にあっては、印刷間隔Tが、下記の式(2)を満足する間隔に設定されている。
(2)T≦W-2S
【0028】
この印刷間隔Tで上記の第一光学コード21を印刷することにより、サーマルロール紙1には、図2のように、隣合う易切断線11の間(紙片部12)に、少なくとも一個の第一光学コード21が印刷される。これは、印刷間隔Tに、二個分の第一光学コード21の長手方向幅2Sを足し合わせても、切断間隔W以下となることに因り、該切断間隔Wで示される紙片部12の長手方向間隔内には、少なくとも一の印刷間隔Tと少なくとも一個の第一光学コード21とを配することができる。さらに、第一光学コード21を印刷する印刷工程にあっては、該第一光学コード21を印刷するサーマルロール紙1における印刷基準位置を高精度で位置決めしなくとも、各紙片部12に少なくとも一個の第一光学コード21を印刷できる。これは、前記のように印刷間隔Tが設定されていることに因り、前記印刷基準位置に関わらず、長尺のサーマルロール紙1に連続する各紙片部12に、少なくとも一個の第一光学コード21を確実に印刷できる。そのため、第一光学コード21の印刷工程にあって、サーマルロール紙1の印刷基準位置の位置決め作業にかかる負担を軽減することができるという優れた利点もある。
【0029】
尚、本実施例では、第一光学コード21の長手方向幅Sが切断間隔Wの約1/3としていることから、隣合う易切断線11の間(紙片部12)には、一の印刷間隔Tおよび一個の第一光学コード21に加えて、さらに、一の印刷間隔Tまたは一個分の第一光学コード21が配される。そのため、例えば、コード全体が印刷された第一光学コード21を二個備えた紙片部12が生成される場合もあり得る。また、第一光学コード21は、QRコードであり、誤り訂正機能を備えている。そのため、隣合う紙片部12,12に跨がって第一光学コード21が印刷されている場合であっても、一方に印刷された第一光学コード21が、誤り訂正機能により復元可能な状態であれば、該一方の紙片部12は、復元可能な第一光学コード21とコード全体が印刷された第一光学コード21との両方を備えたものとなっている。
【0030】
こうした本実施例のサーマルロール紙1は、上述したようにサーマルプリンタ51の印字媒体として使用されるものであり、該サーマルプリンタ51のサーマルヘッド55で所定の情報等が印字される。
【0031】
サーマルプリンタ51は、一般的に利用される構成のものが利用可能である。例えば、サーマルプリンタ51は、図5に示すように、本体ケース52の内部に、上記したロール体2(サーマルロール紙1が巻回されてなるもの)を保持するロール保持部53と、印字用の各種装置が配設された印刷部54とが前後に並んで設けられている。ロール保持部53の後側に設けられた印刷部54には、サーマルヘッド55とプラテンローラ56とが、前記ロール保持部53寄りに配置されている。サーマルヘッド55とプラテンローラ56とは、ロール保持部53のサーマルロール紙1の幅方向と平行に夫々配設される。さらに、印刷部54には、プラテンローラ56を回動する駆動モータ(図示せず)、サーマルヘッド55を構成する複数の微小発熱体に通電する通電装置(図示せず)、前記駆動モータや通電装置を駆動制御する制御装置(図示せず)等も配設されている。また、サーマルプリンタ51には、作業者により入力操作される情報入力装置(例えば、パソコン等)がデータ送信用のケーブルを介して接続されており(図示せず)、該ケーブルから前記制御装置に印字データが入力されると、該制御装置が駆動モータと通電装置とを駆動制御する。尚、こうした駆動モータ、通電装置、制御装置などは、従来のサーマルプリンタに用いられたものを適用できるため、その詳細については省略する。また、本実施例では、サーマルプリンタ51の前後方向を、図の左側を前とし且つ右側を後とするように規定しているが、この前後方向は本発明を限定するものでは無い。
【0032】
上記のロール保持部53は、ロール体2(サーマルロール紙1)を保持するものであり、本体ケース52に設けられた図示しない開閉部を開放することで、該ロール体2を出し入れ可能とすると共に、閉鎖状態とすることで、該本体ケース52内に該ロール体2を保持する。ロール保持部53には、ロール体2の円筒状の芯材9が遊転可能に外嵌される支持ローラ61を備えており、該支持ローラ61に外嵌された該ロール体2から引き出されたサーマルロール紙1が上記した印刷部54へ給送される。そして、印刷部54では、ロール保持部53から給送されたサーマルロール紙1を、サーマルヘッド55とプラテンローラ56との間を通過させて、該サーマルヘッド55により印字する。その後、印字したサーマルロール紙1を、本体ケース52に設けられた排出口59から該ケース外部へ排出させる。この排出口59の口縁には、サーマルロール紙1を切断する際に用いられる切断片部(図示せず)が設けられており、該サーマルロール紙1の易切断線11で切断することによって、サーマルロール紙1から紙片部12を夫々切り離すことができる。そして、切り離された紙片部12が、個々の帳票片として利用され得る。
【0033】
こうしたサーマルプリンタ51により、サーマルロール紙1の各紙片部12には、図3に示すように、上記した情報入力装置から入力した印字データに従って第二光学コード31が印字される。第二光学コード31は、所定の必要情報を記憶したQRコードであり、上記サーマルヘッド55の熱印加を介して感熱発色層4を加熱発色させることによって印字される。ここで、第二光学コード31は、サーマルロール紙1の各紙片部12(隣合う易切断線11間)で、コード全体が印刷された第一光学コード21に重なるように印字される。サーマルプリンタ51では、第二光学コード31を第一光学コード21の少なくとも一部分と重ねて印字するように、該第二光学コード31の印字位置が設定されている。尚、本実施例では、サーマルプリンタ51が、第二光学コード31を、上記の第一光学コード21よりも大きいサイズに設定すると共に、隣合う易切断線11の長手方向の略中央位置に印字する。
【0034】
次に、上述した本実施例のサーマルロール紙1の実施態様について説明する。
具体例として、サーマルロール紙1は、その各紙片部12を上記したサーマルプリンタ51で印刷後に切り離して、切り離した紙片部(帳票片)12を入場券や回数券等のチケットとする用途に用いられるものである。ここで、本実施例にあって、サーマルプリンタ51により印字される第二光学コード31には、使用期限や使用可能場所などの必要情報を予め定められた暗号化規則に従って暗号化した情報(以下、暗号化情報)が記憶されると共に、サーマルロール紙1に印刷された第一光学コード21には、該暗号化情報を復号化するための情報(以下、復号化情報)が記憶されている。そのため、前記必要情報を得るためには、第一光学コード21と第二光学コード31との両方を正確に読み取ることが必須となる。換言すれば、第一光学コード21と第二光学コード31との一方のみを読み取っただけでは、必要情報が得られない。このように第一光学コード21と第二光学コード31との関係が設定されている。
【0035】
サーマルロール紙1は、上述したように、第一光学コード21が、長手方向に切断間隔Wをおいて並列に複数印刷されている(図2参照)。本実施例では、切断間隔W=30mm、第一光学コード21の長手方向幅S=10mmとし、該第一光学コード21の印刷間隔T=10mmを設定している。すなわち、切断間隔Wと第一光学コード21の長手方向幅Sとは、上記した(1)式を満足すると共に、該第一光学コード21の印刷間隔Tは、上記した(2)式を満足するように設定されている。第一光学コード21を印刷したサーマルロール紙1では、隣合う易切断線11の間(紙片部12)に、コード全体が印刷された第一光学コード21を、少なくとも一個備えている。そのため、後述するように、切り離された各紙片部12では、赤外光の照射により、第一光学コード21を読み取ることが可能である。また、第一光学コード21は、上述したように、透明な赤外光吸収インキにより、サーマルロール紙1の感熱発色層4の表面上に印刷される。そのため、第一光学コード21は、目視できず、可視光の照射によっても読み取ることができない。
【0036】
こうしたサーマルロール紙1は、紙片部12をチケットとして販売する現場などに設置されたサーマルプリンタ51の印字媒体として使用される。サーマルロール紙1は、上述したように、ロール体2の状態でサーマルプリンタ51のロール保持部53に保持され、該ロール体2から引き出されたサーマルロール紙1を、印刷部54のサーマルヘッド55とプラテンローラ56との間に通過させて、排出口59へ至るようにセットされる(図5参照)。このサーマルプリンタ51には、上述したパソコン等の情報入力装置が接続されており、情報入力装置では、作業者などにより入力された必要情報(チケットの使用期限や使用可能場所などの情報)を暗号化し、この暗号化された情報を記憶したQRコードの印字データを生成する。そして、サーマルプリンタ51では、情報入力装置から送信された印字データに従って、サーマルロール紙1の紙片部12に第二光学コード31を印字する(図3参照)。詳述すると、サーマルプリンタ51は、プラテンローラ56の回動により、ロール体2からサーマルロール紙1を引き出して、紙片部12をサーマルヘッド55に対向する位置に配置する。そして、前記のように情報入力装置から印字データを受信すると、プラテンローラ56を回動制御すると共にサーマルヘッド55を駆動制御することにより、サーマルロール紙1の紙片部12の所定位置に、該サーマルヘッド55で熱印加して、該紙片部12の所定位置における感熱発色層4を加熱発色させる。これにより、紙片部12の、第一光学コード21の少なくとも一部分と重なる上記の印字位置に、第二光学コード31を印字する。ここで、サーマルヘッド55により印字される第二光学コード31は、感熱発色層4の加熱発色により印字されることから、該感熱発色層4の表面上に印刷された第一光学コード21の下側に印字された状態となる。そして、第二光学コード31は、上述したように、感熱発色層4の加熱発色により印字されるものであることから、目視できると共に、可視光の照射により読み取り可能である。
【0037】
このようにサーマルヘッド55により第二光学コード31が印字されると、プラテンローラ56の回動により、該第二光学コード31を印字した紙片部12が、サーマルプリンタ51の排出口59から外部に排出される。この紙片部12が、易切断線11で切断されて切り離されることにより、チケット(帳票片)として用いられる。こうして切り離された紙片部12には、図3に示すように、コード全体が印刷された第一光学コード21と、同じくコード全体が印字された第二光学コード31とを備えている。尚、サーマルプリンタ51で印字される第二光学コード31は、そのサイズが、上記した切断間隔W内に収まるように設定される。本実施例では、第二光学コード31が、長手方向幅を約12mmとした略正方形状のものとして設定されている。
【0038】
こうして切り離された各紙片部12にあっては、透明な赤外光吸収インキにより感熱発色層4の表面上に印刷された第一光学コード21が、可視光を透過することから、該感熱発色層4に加熱印字された第二光学コード31が視認可能である。詳述すると、紙片部12に可視光を照射した場合には、第一光学コード21の印刷部位と非印刷部位とに関わらず、同様に該可視光が感熱発色層4に入射される。そして、第二光学コード31を印字した感熱発色層4の発色部位では、非発色部位に比して可視光の透過率が著しく低下する。そのため、可視光の照射により第二光学コード31を読取可能であると共に、該第二光学コードを目視できる。尚、これは、上述したように、感熱発色層4の表面上に、透明な赤外光吸収インキで印刷しても、紙片部12に可視光を照射した場合に、印刷部位と非印刷部位とで、該可視光の反射率に差がほとんど無いこと、および、感熱発色層4の発色部位と非発色部位とで、該可視光の反射率に大きな差が生じることに因る。一方、第一光学コード21の印刷部位は、非印刷部位に比して赤外光の透過率が著しく低下することから、紙片部12に赤外光を照射すると、非印刷部位に比して顕在化される。そして、第二光学コード31を印字した感熱発色層4の発色部位と非発色部位とでは、赤外光の透過率に差がほとんど無い。そのため、紙片部12に赤外光を照射することにより、第一光学コード21を読み取り可能である。尚、これは、上述したように、紙片部12に赤外光を照射した場合に、透明な赤外光吸収インキで印刷した印刷部位と非印刷部位とで、該赤外光の反射率に大きな差が生じること、および、感熱発色層4の発色部位と非発色部位とで、該赤外光の反射率に差がほとんど生じないことに因る。
【0039】
切り離された紙片部12から、第二光学コード31に記憶された必要情報を取得するためには、例えば、赤外光を照射してQRコードを読み取る赤外光読取装置(図示せず)と、可視光を照射してQRコードを読み取る可視光読取装置(図示せず)と、暗号化情報を復号化して必要情報を取得する情報取得装置(図示せず)とが用いられる。これら各装置による紙片部12の読み取り作業としては、前記可視光読取装置により、紙片部12に可視光を照射して、第二光学コード31を読み取って、該第二光学コード31が示す暗号化情報を取得する。そして、前記赤外光読取装置により、紙片部12に赤外光を照射して、第一光学コード21を読み取って、該第一光学コード21が示す復号化情報を取得する。さらに、可視光読取装置で読み取った暗号化情報と赤外光読取装置で読み取った復号化情報とが前記情報取得装置へ出力され、該情報取得装置により、該暗号化情報を該復号化情報で復号化して、必要情報を取得する。ここで、上述したように、紙片部12には、二個の第一光学コード21を備えるものもあり得る。こうした紙片部12を前記赤外光読取装置で読み取った場合には、一方の第一光学コード21から読み取った復号化情報のみを有効とするように処理している。すなわち、赤外光読取装置では、二個の第一光学コード21を読み取り、両者から同じ復号化情報を取得すると、一方のみを有効として、情報取得装置へ出力するようにしている。尚、情報取得装置は、可視光読取装置および赤外光読取装置と別の装置として説明したが、該可視光読取装置または赤外光読取装置と一体の装置であっても良い。すなわち、可視光読取装置と赤外光読取装置とのいずれか一方が、他方で読み取った情報を入力して、必要情報を取得する処理を備えた構成であっても良い。
【0040】
一方、切り離された紙片部12がコピー機等で不正に複写された場合には、一般的なコピー機が可視光を照射するものであることから、その複写物には、第二光学コード31が複写され、第一光学コード21が複写されていない。この不正な複写物に対して上記の光学コード読取装置で読み取り作業を実施すると、第二光学コード31を読み取って暗号化情報を取得できるものの、第一光学コード21を読取できないことから復号化情報を取得できない。そのため、不正な複写物からは必要情報を取得できず、さらに、第一光学コード21を読取不能であることにより、偽物と容易かつ確実に判定できる。
【0041】
尚、一般的なコピー機には、トナーにカーボン等の赤外吸収剤が添加されていることもあるため、前記の複写物に赤外光を照射すると、第二光学コード31を読み取ってしまうこともあり得る。この場合であっても、第一光学コード21の復号化情報を取得できないことから、必要情報を取得できないと共に、赤外光の照射により、可視光の照射と同じ情報を読み取ることから、偽物と判定できる。さらに、例えば、不正を行おうとする者が、本実施例のサーマルロール紙1を不正に入手し、このサーマルロール紙1に、コピー機により第二光学コード31を複写することも考えられ得る。この場合には、赤外光に照射により、第一光学コード21と、前記のように複写した第二光学コード31との両者を読み取ってしまうことから、可視光と同じ情報(第二光学コード31の暗号化情報)を赤外光で読み取ったことで、偽物と判定することが可能である。
【0042】
上述したように本実施例のサーマルロール紙1は、連続する各紙片部12に、少なくとも一個の第一光学コード21が透明な赤外光吸収インキにより印刷されてなり、サーマルプリンタ51の印字媒体として用いられるものである。そして、紙片部12が、サーマルプリンタ51により第二光学コード31を加熱印字した後に切り離されて、所望の用途(例えば、入場券や回数券等のチケット)で使用され得る。さらに、切り離された紙片部12は、上述したように赤外光と可視光との照射により、第一光学コード21と第二光学コード31とを夫々に読み取りできることから、各光学コード21,31に記憶された情報を取得できると共に、コピー機等により不正に複写されたとしても、この複写物を偽物と容易に判定できる。特に、本実施例では、第二光学コード31に暗号化情報を記憶し、赤外光で読み取り可能な第一光学コード21に該暗号化情報を復号するための復号化情報を記憶していることから、可視光により第二光学コード31を読み取っても暗号化情報を復号できず、該暗号化された必要情報を取得できないことから、該必要情報の不正取得を防止する効果も高い。また、サーマルロール紙1の各紙片部12は、サーマルプリンタ51により、第一光学コード21の一部分と重なるように第二光学コード31を印字するようにしていることから、切り離された後に、目視可能な第二光学コード31により第一光学コード21を隠蔽する効果が高く、偽造防止効果を一層向上できる。
【0043】
また、サーマルロール紙1は、上述したように、長手方向幅Sが切断間隔Wの約1/3(W>2S)に設定された第一光学コード21が、長手方向に印刷間隔Tをおいて並列状に複数印刷されたものであり、該印刷間隔Tが切断間隔Wの1/3(T≦W-2S)に設定されたものであるから、各紙片部12(隣合う易切断線11間)には、少なくとも一個の第一光学コード21が印刷されている。そして、印刷間隔Tを上記(2)式を満足するように設定することにより、第一光学コード21の印刷工程にあって、長尺のサーマルロール紙1の印刷基準位置を高精度で設定しなくとも、連続する複数の紙片部12に、少なくとも一個の第一光学コード21を確実に印刷できるため、該印刷基準位置の設定にかかる作業負担を軽減できるという利点もある。このようにサーマルロール紙1は、連続する各紙片部12に第一光学コード21が印刷されていることから、サーマルプリンタ51で第二光学コード31を印字後に紙片部12を切り離すことで、上述した作用効果を奏し得る帳票片(紙片部12)を生成できる。
【0044】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
上述した実施例では、第一光学コード21の長手方向幅S=10mm、切断間隔W=30mm、印刷間隔T=10mmとして、上記した(1)式および(2)式を満足するように設定したものであるが、これら長手方向幅S、切断間隔W、および印刷間隔Tは、該(1)式と(2)式とを満足すれば、他の値に設定することもでき、上述した実施例と同様の作用効果を奏し得る。また、第二光学コード31のサイズにあっても、切断間隔W内に印字可能であれば、上述した実施例に限らず、適宜設定可能である。
また、上述した実施例では、第一光学コード21を、透明な赤外光吸収インキにより印刷したものであるが、これに限らず、可視光で読取不能な淡色の赤外光吸収インキにより該第一光学コード21を印刷するものであっても良い。この場合にも、可視光で読み取りできず(目視が極めて困難)、コピー機で複写できないことから、上述した本実施例と同様の作用効果を奏し得る。
また、上述した実施例では、第一光学コード21に、第二光学コード31に記憶された暗号化情報を復号するための復号化情報が記憶されたものとしたが、該第一光学コード21と第二光学コード31とに夫々記憶される情報は、これに限らず適宜設定可能である。
また、上述した実施例では、ロール状に巻回されたサーマルロール紙1について説明したが、これに限らず、蛇腹状に折り畳まれたサーマル紙や、矩形状のサーマル紙等であっても良い。これらサーマル紙にあっても、上述した実施例と同様に、コピー機等により不正に複写された物を偽物として容易に判定できる。さらにまた、こうした本発明にかかるサーマル紙(本実施例のサーマルロール紙を含む)は、紙基材の裏面に、粘着剤や擬似接着剤などが塗布されてなるものであっても良い。この構成では、切り離した紙片部を被対象物に貼付することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 サーマルロール紙(サーマル紙)
3 紙基材
4 感熱発色層
12 紙片部
21 第一光学コード
31 第二光学コード
51 サーマルプリンタ
W 切断間隔
T 印刷間隔
S 第一光学コードの長手方法幅
図1
図2
図3
図4
図5