IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社実践環境研究所の特許一覧

<>
  • 特許-排ガス処理装置 図1
  • 特許-排ガス処理装置 図2
  • 特許-排ガス処理装置 図3
  • 特許-排ガス処理装置 図4
  • 特許-排ガス処理装置 図5
  • 特許-排ガス処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/75 20060101AFI20220104BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20220104BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B01D53/75 ZAB
B01D53/40
B01D53/50 110
B01D53/56 300
B01D53/70
B01D53/82
B01J20/20 B
B01J20/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017115747
(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公開番号】P2019000772
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504073908
【氏名又は名称】株式会社実践環境研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 久
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-055338(JP,A)
【文献】特開2007-105603(JP,A)
【文献】特開2005-337509(JP,A)
【文献】特表2017-512123(JP,A)
【文献】米国特許第04688495(US,A)
【文献】特開2015-196133(JP,A)
【文献】国際公開第02/055932(WO,A1)
【文献】特開2002-240435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/96
B01J 20/20、20/04
F22G 1/00- 1/16
F23G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む排ガスを浄化可能な排ガス処理装置であって、
通電によって熱を発生可能な材料から形成され、排ガスを流通可能な流路(200,400)を有し、当該熱によって前記流路を流れる排ガスに含まれる水分を過熱蒸気とすることで、前記流路内を還元雰囲気にする過熱蒸気生成パイプ(20,40)と、
前記過熱蒸気生成パイプを収容可能に設けられ、前記流路に導入される前の排ガスを流通可能に形成され、前記過熱蒸気生成パイプの熱によって排ガスを予備加熱可能なハウジング(10)と、
を備え
前記過熱蒸気生成パイプは、還元雰囲気となる前記流路内において、排ガスに含まれるダイオキシンおよび窒素酸化物を還元分解する、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記過熱蒸気生成パイプは、前記流路の外郭となる筒部(21)、及び、前記筒部の内壁面(213)から径内方向に突出する突部(221,222,223,224)を有する請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記突部の突出高さは、前記筒部の周方向で隣り合う2つの前記突部の間の距離より小さい請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記突部は、前記筒部の中心軸(C21)に垂直な断面において、壁面が曲線のみで構成されるよう形成されている請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記突部は、前記筒部の周方向に等間隔で4つ形成されている請求項4に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記過熱蒸気生成パイプは、螺旋状に形成され、
前記流路に導入される前の排ガスは、螺旋状の前記過熱蒸気生成パイプの内側(413)を通る請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記過熱蒸気生成パイプの外側に設けられ、前記過熱蒸気生成パイプの熱によって加熱可能な受熱部(50)をさらに備え、
前記受熱部は、前記ハウジング内を流れる排ガスを予備加熱可能である請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記排ガスに含まれる所定の成分を吸着可能な活性炭(311)、及び、前記排ガスに含まれる酸ヒュームを吸収可能なアパタイト(321)の少なくとも一つを有するフィルタ部(30)をさらに備える請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の排ガス処理装置を備える、船舶用排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む排ガスを浄化可能な排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や船舶などのエンジンにおける燃料の燃焼、都市ゴミの焼却処理、有機物の熱分解処理によって排出される排ガスに含まれる環境汚染物質を除去し排ガスを浄化する排ガス処理装置が知られている。環境汚染物質は、処理対象物質に含まれる成分に由来する硫黄化合物やダイオキシン、空気に含まれる成分に由来する窒素酸化物など複数になるため、排ガスの浄化は、それぞれの物質に対応する処理を行う必要がある。このため、排ガス処理装置の構成は比較的複雑になる。例えば、特許文献1には、低温プラズマを生成可能なプラズマ生成部、及び、触媒を備え、低温プラズマと触媒との組み合わせによってダイオキシンや窒素酸化物が含まれる排ガスを浄化する排ガス処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-336653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の排ガス処理装置では、触媒の劣化によって浄化能力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、環境汚染物質を排ガスから効率的に除去可能な簡易な構成を有する排ガス処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水分を含む排ガスを浄化可能な排ガス処理装置は、過熱蒸気パイプ(20,40)、及び、ハウジング(10)を備える。
過熱蒸気生成パイプは、通電によって熱を発生可能な材料から形成され、排ガスを流通可能な流路(200,400)を有する。過熱蒸気生成パイプは、熱によって流路を流れる排ガスに含まれる水分を過熱蒸気とすることで、流路内を還元雰囲気にする
ハウジングは、過熱蒸気生成パイプを収容可能に設けられ、流路に導入される前の排ガスを流通可能に形成されている。ハウジングは、過熱蒸気生成部の熱によって排ガスを予備加熱可能である。
過熱蒸気生成パイプは、還元雰囲気となる流路内において、排ガスに含まれるダイオキシンおよび窒素酸化物を還元分解する。
【0007】
本発明の排ガス処理装置では、流路に導入される前の排ガスは、ハウジング内の過熱蒸気生成パイプの周囲を流れる。このとき、排ガスは、過熱蒸気生成パイプが放出する熱によって予備加熱される。予備加熱された排ガスが過熱蒸気生成パイプの流路に流入すると、排ガスは過熱蒸気生成パイプの熱によってさらに加熱され、排ガス中に過熱蒸気が発生する。過熱蒸気が発生すると、排ガス中の水分に含まれる溶存酸素が体積の膨張によって希薄になるため、流路は高温の還元雰囲気となる。これにより、排ガスに含まれるダイオキシンや窒素酸化物を還元分解することができる。
このように、本発明の排ガス処理装置では、過熱蒸気生成パイプが外側に向けて放出する熱によって流路に導入される前の排ガスを予備加熱するとともに、過熱蒸気によって流路を高温の還元雰囲気としダイオキシン及び窒素酸化物を還元分解する。これにより、本発明の排ガス処理装置は、触媒や添加物を用いることなく、簡易な構成で複数種の環境汚染物質を排ガスから除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態による排ガス処理装置が適用されるタンカーの模式図である。
図2】第一実施形態による排ガス処理装置の模式図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】第二実施形態による排ガス処理装置の模式図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】第三実施形態による排ガス処理装置が適用される熱分解システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第一実施形態)
第一実施形態による排ガス処理装置を図1~3に基づいて説明する。第一実施形態による排ガス処理装置1は、タンカーに適用される。図1に、排ガス処理装置1が適用されるタンカー5の模式図を示す。タンカー5が備えるエンジン6は、燃料タンク7から送られる重油(図1の実線矢印F7)を燃焼し、タンカー5の推進力を発生する。エンジン6での重油の燃焼によって発生する排ガス(図1の実線矢印F8)は、排ガス処理装置1において環境汚染物質が除去され、タンカー5の外に排出される。このとき、排ガスF8には、重油の燃焼によって発生するダイオキシン、窒素酸化物、硫黄酸化物、酸ヒュームなどの環境汚染物質の他に、水分が含まれている。
【0011】
排ガス処理装置1は、ハウジング10、過熱蒸気生成パイプ20、電力供給部25、及び、フィルタ部30を備える。排ガス処理装置1は、排ガスF8に含まれる複数種の環境汚染物質を除去可能である。
【0012】
ハウジング10は、中空状に形成されている金属からなる部材である。ハウジング10は、収容空間100及び導入口101を有する。
収容空間100は、過熱蒸気生成パイプ20の一部を収容可能に形成されている。
導入口101は、ハウジング10の外壁に形成され、収容空間100とハウジング10の外側とを連通可能である。導入口101には、排ガスF8を収容空間100に導入可能な導入配管11が設けられている。
ハウジング10の外壁には、断熱材12が設けられている。
【0013】
過熱蒸気生成パイプ20は、一方の端部が収容空間100に収容されつつ他方の端部がハウジング10から突出するよう形成されている筒状の部材である。過熱蒸気生成パイプ20は、図3に示すように、筒部21、及び、複数の突部221,222,223,224を有する。筒部21と突部221,222,223,224とは、通電によって熱を発生可能な材料であるニッケル70%-クロム25%をベースとする金属、例えば、インコネル(登録商標)やハステロイ(登録商標)から一体に形成されている。
【0014】
筒部21は、図3に示すように、排ガスF13が流れる方向に垂直な断面形状が円環状となるよう形成されている。筒部21は、排ガス入口211及び排ガス出口212を有する。排ガス入口211は、ハウジング10の導入口101が形成される側とは反対側の収容空間100に位置する一方の端部に形成されている。排ガス出口212は、ハウジング10の導入口101が形成される側からハウジング10の外側に突出する筒部21の他方の端部に形成されている。筒部21は、電力供給部25と電気的に接続している。
【0015】
突部221,222,223,224は、筒部21の内壁面213に設けられている。突部221,222,223,224は、内壁面213から筒部21の径内方向に突出するよう形成されている。第一実施形態では、突部221,222,223,224のそれぞれは、図3に示すように、筒部21の中心軸C21から見て等間隔に設けられている。
筒部21及び突部221,222,223,224は、図2の実線矢印F13で示すように流れる排ガスが通る流路200を形成する。
【0016】
電力供給部25は、筒部21及び突部221,222,223,224に供給される電力を制御可能に設けられている。電力供給部25が電力を供給すると、筒部21及び突部221,222,223,224は発熱する。
【0017】
フィルタ部30は、排ガス処理装置1の排ガスの流れにおいて過熱蒸気生成パイプ20の下流に位置する。フィルタ部30は、フィルタケーシング301、第一フィルタ31、及び、第二フィルタ32を有する。
フィルタケーシング301は、中空状の形状をなしており、第一フィルタ31及び第二フィルタ32を収容している。
【0018】
第一フィルタ31は、過熱蒸気生成パイプ20の排ガス出口212から排出された一次処理排ガスF14のフィルタケーシング301内における流れを妨げるようフィルタケーシング301内の上流側に設けられている。第一フィルタ31は、第一フィルタ31の外郭となるメッシュ310の内側に粒状の活性炭311を収容する。
【0019】
活性炭311は、ヤトロファ種子滓から形成されており、細孔直径が0.5~1.0nmの範囲にあり、微分細孔径分布において0.6nmにピークを有する。活性炭311は、相対水蒸気圧0.05において活性炭1g当たりに吸着される水分の質量と相対水蒸気圧0.45において活性炭1g当たりに吸着される水分の質量との差が130mg以上であり、相対水蒸気圧0.25において活性炭1g当たりに吸着される水分の質量と相対水蒸気圧0.45において活性炭1g当たりに吸着される水分の質量との差が101.4mg以上となる特性を有する。また、活性炭311は、相対水蒸気圧0.05~0.45における水蒸気吸着等温線が、下方へ湾曲したカーブを描く特性を有する。
【0020】
第二フィルタ32は、柱状に形成され、フィルタケーシング301内を流れる流体の流れを妨げるようフィルタケーシング301内の下流側に設けられている。第二フィルタ32は、第二フィルタ32の外郭となるメッシュ320の内側に粒状のアパタイト321を収容する。
【0021】
アパタイト321は、ヒドロキシアパタイトであって、水酸基を有する。アパタイト321は、公知の方法によって形成され、例えば、室温において中性若しくはアルカリ性の水溶液中においてカルシウムイオンとリン酸イオンとを反応させることによって形成される。第一実施形態では、第二フィルタ32には直径が2.5mmのアパタイト321の粒状物がメッシュ320の内側に充填されているが、アパタイト321の粒径はこれに限定されない。
【0022】
次に、排ガス処理装置1の作用について、図2,3に基づいて説明する。
エンジン6の排ガスF8が導入配管11を介して収容空間100に流入すると、ハウジング10内の排ガスは、図2の実線矢印F11,F12に示すように、ハウジング10の導入口101が形成される側から導入口101が形成される側とは反対側に向かって過熱蒸気生成パイプ20の周囲を流れる。このとき、過熱蒸気生成パイプ20の周囲を流れる排ガスF11,F12は、過熱蒸気生成パイプ20が外側に向けて放出する熱によって予備加熱される。収容空間100で予備加熱された排ガスは、過熱蒸気生成パイプ20の排ガス入口211を介して流路200に流入する。
【0023】
流路200を流れる排ガスF13は、過熱蒸気生成パイプ20によってさらに加熱され、排ガスF13に含まれる水分は過熱水蒸気となる。これにより、排ガス中の水分に含まれる溶存酸素が体積の膨張によって希薄になるため、流路200は、高温の還元雰囲気となり、排ガスF13に含まれるダイオキシン及び窒素酸化物は、還元分解される。流路200を流れる排ガスは、排ガス出口212からフィルタ部30に向けて排出される。
【0024】
ダイオキシン及び窒素酸化物が除去された一次処理排ガスF14は、フィルタ部30に流入する。フィルタ部30では、第一フィルタ31が有する活性炭311は、排ガスに含まれる「所定のガス」としての硫黄化合物ガスを吸着する。また、第二フィルタ32が有するアパタイト321は、酸性を示す水蒸気である酸ヒュームを吸収する。フィルタ部30を通過した二次処理排ガスF15は、タンカー5の外に排出される。
【0025】
(a)第一実施形態による排ガス処理装置1では、流路200に導入される前の排ガスは、ハウジング10内の過熱蒸気生成パイプ20の周囲を流れる。このとき、排ガスは、過熱蒸気生成パイプ20が外側に向けて放出する熱によって予備加熱される。予備加熱された排ガスが過熱蒸気生成パイプ20の流路200に流入すると、排ガスは過熱蒸気生成パイプ20の熱によってさらに加熱され、排ガス中に過熱蒸気が発生する。過熱蒸気が発生すると、排ガスの水分に含まれる溶存酸素が体積の膨張によって希薄になり、流路200は高温の還元雰囲気となる。これにより、排ガスに含まれるダイオキシンや窒素酸化物を還元分解することができる。
このように、排ガス処理装置1は、過熱蒸気生成パイプ20が放出する熱によって流路200に導入される前の排ガスを予備加熱するとともに、過熱蒸気によって流路200を高温の還元雰囲気としダイオキシン及び窒素酸化物を還元分解する。これにより、排ガス処理装置1は、触媒や添加物を用いることなく、簡易な構成でダイオキシン及び窒素酸化物を排ガスから除去することができる。
【0026】
(b)また、過熱蒸気生成パイプ20は、筒部21の内壁面213に複数の突部221,222,223,224を有している。これにより、流路200を流れる排ガスF13と筒部21及び突部221,222,223,224とが接触する面積を比較的大きくすることができる。したがって、排ガス処理装置1は、比較的少ないエネルギで流路200を還元雰囲気とすることができるため、ダイオキシン及び窒素酸化物を効率的に還元分解することができる。
【0027】
(c)排ガス処理装置1では、ダイオキシン及び窒素酸化物が除去された一次処理排ガスF14に含まれる硫黄化合物ガス及び酸ヒュームをフィルタ部30において回収する。これにより、排ガス処理装置1は、硫黄化合物ガス及び酸ヒュームを排ガスから確実に除去することができ、タンカー5の外に排出される排ガスをさらに浄化することができる。
【0028】
(第二実施形態)
第二実施形態による排ガス処理装置を図4,5に基づき説明する。第二実施形態では、過熱蒸気生成パイプの形状及び受熱部を備えている点が第一実施形態と異なる。
【0029】
第二実施形態による排ガス処理装置2は、ハウジング10、過熱蒸気生成パイプ40、電力供給部25、受熱部50、及び、フィルタ部30を備える。排ガス処理装置2は、排ガスF8に含まれる複数種の環境汚染物質を除去可能である。
【0030】
過熱蒸気生成パイプ40は、一部が収容空間100に収容されつつ端部がハウジング10から突出するよう形成されているパイプである。過熱蒸気生成パイプ40は、図4に示すように、螺旋状をなしている。過熱蒸気生成パイプ40は、通電によって熱を発生可能な材料であるニッケル70%-クロム25%をベースとする金属、例えば、インコネル(登録商標)やハステロイ(登録商標)から一体に形成されている。過熱蒸気生成パイプ40は、電力供給部25と電気的に接続している。
【0031】
過熱蒸気生成パイプ40は、排ガス入口411、排ガス出口412、及び、流路400を有する。
排ガス入口411は、収容空間100において導入口101が形成される側の過熱蒸気生成パイプ40の端部に形成されている。
排ガス出口412は、ハウジング10の導入口101が形成される側とは反対側からハウジング10の外側に突出する端部に形成されている。
流路400は、排ガス入口411と排ガス出口412とを連通する。流路400は、螺旋状に形成されている。
【0032】
受熱部50は、過熱蒸気生成パイプ40を囲うよう設けられている。第二実施形態では、受熱部50は、螺旋状の過熱蒸気生成パイプ40の径外方向に設けられる略筒状の部材である。受熱部50は、過熱蒸気生成パイプ40が外側に向けて放出する熱を受けて昇温可能な材料から形成されている。受熱部50の一方の端部501は、ハウジング10の導入口101が形成される壁体の内壁面102上に設けられている。受熱部50の他方の端部502は、開口503を有する。
【0033】
次に、排ガス処理装置2の作用について、図4,5に基づいて説明する。
エンジン6の排ガスF8が導入配管11を介して収容空間100に流入すると、ハウジング10内の排ガスは、図4の実線矢印F21,F22に示すように、ハウジング10の導入口101が形成される側から導入口101が形成される側とは反対側に向かって受熱部50の径外方向を流れる。このとき、受熱部50の径外方向を流れる排ガスは、過熱蒸気生成パイプ40が外側に向けて放出する熱に受けて加熱された受熱部50によって一次予備加熱される。収容空間100で一次予備加熱された排ガスは、開口503を介して受熱部50内に流入する。
【0034】
受熱部50内を流れる排ガスは、図4の実線矢印F23,F24に示すように、螺旋状の過熱蒸気生成パイプ40の内側の空間413(図5参照)または過熱蒸気生成パイプ40と受熱部50との間の空間を通って受熱部50の一方の端部501側に向かう。このとき、空間413または過熱蒸気生成パイプ40と受熱部50との間の空間を通る排ガスは、二次予備加熱される。受熱部50の一方の端部501の近傍に到達した排ガスは、図4の実線矢印F25に示すように、過熱蒸気生成パイプ40の排ガス入口411を介して流路400に流入する。
【0035】
流路400を流れる排ガスF26は、螺旋状に形成されている流路400の形状に沿って流れる。このとき、排ガスF26は、過熱蒸気生成パイプ40によってさらに加熱され、排ガスF26に含まれる水分は過熱水蒸気となる。これにより、流路400は、高温の還元雰囲気となるため、排ガスF26に含まれるダイオキシン及び窒素酸化物は、還元分解される。螺旋状の流路400を流れた後の排ガスF27は、排ガス出口412からフィルタ部30に向けて排出される。
【0036】
排ガス出口412から排出される一次処理排ガスF28は、フィルタ部30に流入する。フィルタ部30では、第一実施形態と同様に、活性炭311によって一次処理排ガスF28に含まれる硫黄化合物ガスを吸着し、アパタイト321によって一次処理排ガスF28に含まれる酸ヒュームを吸収する。フィルタ部30を通過した二次処理排ガスF29は、タンカー5の外に排出される。
【0037】
第二実施形態による排ガス処理装置2では、ハウジング10内で予備加熱した後の排ガス中に過熱蒸気生成パイプ40によって過熱蒸気を発生させる。これにより、第二実施形態は、第一実施形態の効果(a)、(c)を奏する。
【0038】
排ガス処理装置2では、流路400を流れる直前の排ガスの一部は、螺旋状の過熱蒸気生成パイプ40の内側の空間413を流れる。空間413は過熱蒸気生成パイプ40に囲まれているため、空間413を流れる排ガスの温度は上昇しやすい。これにより、排ガスを効率的に予備加熱することができる。
【0039】
また、螺旋状に形成されている過熱蒸気生成パイプ40の流路400を流れる排ガスF26は、過熱蒸気生成パイプ40によって加熱される時間が比較的長くなるため、排ガスF26に含まれる水分が過熱蒸気になりやすい。したがって、流路400を確実に高温の還元雰囲気とすることができるため、排ガスに含まれるダイオキシン及び窒素酸化物を確実に還元することができる。
【0040】
排ガス処理装置2は、螺旋状の過熱蒸気生成パイプ40の径外方向に設けられる受熱部50を備える。受熱部50は、過熱蒸気生成パイプ40外側に向けて放出する熱を受けて比較的高温になるとともに、収容空間100を導入口101側から導入口101とは反対側に流れる排ガスF21,F22の流れと、収容空間100を導入口101とは反対側から導入口101側に流れる排ガスF23,F24の流れとに区画する。これにより、排ガスのハウジング10内での滞留時間が比較的長くなるとともに受熱部50によって一次予備加熱及び二次予備加熱がされるため、排ガスを十分に予備加熱することができる。したがって、流路400において過熱蒸気が発生しやすくなるため、流路400を確実に高温の還元雰囲気とし排ガスに含まれるダイオキシン及び窒素酸化物を確実に還元することができる。
【0041】
(第三実施形態)
第三実施形態による排ガス処理装置を図6に基づき説明する。第三実施形態では、排ガス処理装置が適用される分野が第一実施形態と異なる。
【0042】
図6に、排ガス処理装置1が適用される熱分解システム90の模式図を示す。熱分解システム90は、熱源生成炉91、熱分解炉92、及び、排ガス処理装置1を有する。
熱源生成炉91は、熱分解炉92において熱分解の対象となる、例えば、バイオマスを加熱可能な熱源を生成する。第三実施形態の熱源生成炉91は、例えば、燃料を燃焼することによって比較的高温のガスを発生させる。熱分解システム90では、この高温ガスを「熱源」として、バイオマスの熱分解を行う。熱源生成炉91で発生する高温ガスは、配管911を通って熱分解炉92内に導入される。
【0043】
熱分解炉92は、例えば、ロータリーキルンであって、熱分解炉92に設けられている投入口921から投入されるバイオマスBm1を還元雰囲気において加熱する。熱分解炉92は、図示しない駆動部によって回転するため、この回転によって熱分解炉92内のバイオマスは加熱されながら、投入口921が設けられている側の端部から排出口922が設けられている側の端部に移動する。熱分解炉92におけるバイオマスの熱分解処理によって、有機化合物を主成分とする流体、炭素を主成分とする固体の残渣、環境汚染物質、水分などが発生する。このうち、比較的密度が小さい物質は、「排ガス」として配管923を通って排ガス処理装置1に導入される。また、比較的密度が大きい物質、例えば、固体の残渣は、排出口922から熱分解システム90の外部に排出される(図6の白抜き矢印Sr3)。
【0044】
排ガス処理装置1に導入される排ガスは、排ガス処理装置1の収容空間100において予備加熱され、過熱蒸気生成パイプ20の流路200に流入する。流路200に流入した排ガスには、さらに加熱されることで過熱蒸気が発生するため、環境汚染物質は還元分解される。また、有機化合物を主成分とする流体の一つであるバイオマス由来のタールは、例えば、850度以上の還元雰囲気において可燃性ガスに分解される。これにより、過熱蒸気生成パイプ20の排ガス出口212から排出されるガスには、可燃性ガスが比較的多く含まれることとなる。
過熱蒸気生成パイプ20から排出されたガスは、フィルタ部30に導入される。フィルタ部30では、排ガスに含まれる硫黄化合物ガスや酸ヒュームが吸収される。フィルタ部30から排出されるガスF95は、熱分解システム90の外部に排出される。熱分解システム90の外部に排出されたガスF95は、貯留されたり、発電に利用されたりする。
【0045】
第三実施形態による排ガス処理装置1は、バイオマスの熱分解システム90に適用される。このとき、排ガス処理装置1は、熱分解炉92が排出する排ガスに含まれる環境汚染物質を除去する。したがって、第三実施形態は、第一実施形態の効果(a)~(c)を奏する。
また、第三実施形態による排ガス処理装置1では、収容空間100における予備加熱及び過熱蒸気生成パイプ20における加熱によって排ガスを比較的高温まで昇温することができる。これにより、バイオマスの熱分解処理によって発生するタールなどの比較的分解しにくい有機化合物を可燃性ガスに分解することができる。したがって、第三実施形態は、熱分解処理において効率的に可燃性ガスを発生することができる。
【0046】
(他の実施形態)
第一、二実施形態では、排ガス処理装置は、タンカーの排ガス浄化に用いるとした。また、第三実施形態では、バイオマスの熱分解処理によって発生する排ガスの処理に用いるとした。しかしながら、排ガス処理装置が適用される場面はこれに限定されない。自動車のエンジンにおける燃料の燃焼や都市ゴミの焼却処理、有機化合物の熱処理などによって発生する排ガスであって、水分を含む排ガスであればよい。
【0047】
上述の実施形態では、フィルタ部は、排ガス処理装置の排ガスの流れにおいて過熱蒸気生成パイプの下流に位置するとした。しかしながら、フィルタ部と過熱蒸気生成パイプとの位置関係はこれに限定されない。フィルタ部は、排ガス処理装置の排ガスの流れにおいて過熱蒸気生成パイプの上流に位置してもよい。
【0048】
第一実施形態では、過熱蒸気生成パイプは、筒部と径内方向に突出する突部とから形成されるとした。しかしながら、過熱蒸気生成パイプの構成はこれに限定されない。
【0049】
第一実施形態では、過熱蒸気生成パイプの筒部は、排ガスが流れる方向に垂直な断面形状が円環状となるよう形成されるとした。しかしながら、筒部の断面形状はこれに限定されない。
【0050】
第一実施形態では、過熱蒸気生成パイプの突部は、四個設けられるとしたが、突部の数はこれに限定されない。また、第一実施形態では、突部は、等間隔に設けられるとしたが、突部の配置はこれに限定されない。
【0051】
第二実施形態の過熱蒸気生成パイプの内壁面に第一実施形態の過熱蒸気生成パイプが有する突部を設けてもよい。
【0052】
第二実施形態では、受熱部は、螺旋状の過熱蒸気生成パイプの径外方向に設けられる略筒状の部材であるとした。しかしながら、受熱部の形状はこれに限定されない。受熱部は、過熱蒸気生成パイプの熱によって加熱可能なよう設けられればよい。
【0053】
第三実施形態では、熱源生成炉は、燃料を燃焼して高温のガスを発生させるものであるとした。また、熱分解炉は、ロータリーキルンであるとした。しかしながら、熱源生成炉、及び、分解炉は、これに限定されない。
【0054】
第三実施形態では、熱分解システムは、バイオマスを熱分解するとした。しかしながら、熱分解システムが熱分解する対象はこれに限定されない。産業廃棄物などであってもよく、有機化合物を含むものであればよい。
【0055】
第三実施形態に、第二実施形態の排ガス処理装置を適用してもよい。
【0056】
上述の実施形態では、過熱蒸気生成パイプの筒部と突部とは、ニッケル70%-クロム25%をベースとする金属から一体に形成されているとした。しかしながら、筒部及び突部を形成する材料はこれに限定されない。電流が流れることで発熱可能な材料から形成されていればよい。
【0057】
上述の実施形態では、フィルタ部は、ヤトロファ種子滓を原料とする活性炭及びアパタイトを有するとした。しかしながら、フィルタ部の構成はこれに限定されない。ヤトロファ種子滓を原料とする活性炭のみ、または、アパタイトのみであってもよい。また、活性炭の原料は、ヤトロファ種子滓に限定されない。
【0058】
上述の実施形態では、活性炭は、「所定のガス」として硫黄酸化物ガスを吸着するとした。しかしながら、活性炭が吸着するガスはこれに限定されない。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,2・・・排ガス処理装置
10・・・ハウジング
20,40・・・過熱蒸気生成パイプ
200,400・・・流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6