(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】感震式ブレーカ制御装置
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20220104BHJP
G01V 1/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01H83/02 H
H01H83/02 E
H01H83/02 D
G01V1/00 D
(21)【出願番号】P 2017160681
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000208477
【氏名又は名称】大和電器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143546
【氏名又は名称】押久保 政彦
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】林田 文孝
(72)【発明者】
【氏名】藤森 孝太郎
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170587(JP,A)
【文献】登録実用新案第3041887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/02
G01V 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセントタップを備えた建築物に保持されるケースと、
コンセントタップに差し込まれる差込プラグと、
前記コンセントタップのアース端子に接続されるアース端子と、
地震による揺れを検知する地震検知部と、
前記建築物に設けられた漏電ブレーカを作動させて電源の遮断を行うブレーカ作動部とを備え、
前記地震検知部は、加速度により震度を検知する加速度検知部と、前記ケースが前記建築物に保持された際に、前記ケースの基準設置状態に対する角度を検知する角度検知部を有し、
前記ケースは、前記建築物に保持された際の角度を修正して前記基準設置状態にすることが可能な角度修正手段を備えていることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の感震式ブレーカ制御装置であって、
前記角度修正手段は、前記ケースに設けられた雌ねじ部にねじ結合され、前記ケースに対して進退自在に形成された雄ねじ部を有し、
前記ケースの表面側に露出し、前記ケースを前記建築物に保持した状態で表面側から回転可能であることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の感震式ブレーカ制御装置であって、
前記角度修正手段は、前記ケースに設けられた凹部と、前記凹部に差し込むことで固定される突出部材であり、
前記突出部材は、前記凹部に差し込まれる向きを変更することにより、前記ケースからの突出量を変更可能であることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感震式ブレーカ制御装置であって、
前記差込プラグが前記ケースに着脱自在に形成されており、前記差込プラグに代えて、前記ケースとは別個に設けられ前記ケースから延びる延長差込プラグを装着可能であることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感震式ブレーカ制御装置であって、
前記地震検知部の検知結果を記憶する不揮発性メモリからなる記憶部と、
前記差込プラグが前記コンセントタップに差し込まれた際に
蓄電され、電源の供給がない場合でも、所定時間、前記地震検知部による検知を
継続する蓄電部と、
前記記憶部における検知結果を消去するキャンセル手段とを備えていることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の感震式ブレーカ制御装置であって、
前記アース端子は、3穴のコンセントタップのアース用の穴に挿入可能なアースピンが着脱自在に形成されると共に、前記アースピンを取り外して2穴のコンセントタップのアース端子に導通ケーブルを介して接続可能に形成され、
前記ケースは、前記建築物に対面する対向面に、前記導通ケーブルとの干渉を防止するケーブル用溝が設けられていることを特徴とする感震式ブレーカ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震を検知して漏電ブレーカを遮断する感震式ブレーカ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の震度の地震が発生した際に漏電ブレーカを遮断して、建築物内の電気機器による火災等が発生しないように構成されたコンセントタップ差し込み型の感震式ブレーカ制御装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンセントタップに差し込むことでケースを建築物に保持するものが開示されている。当該装置においては、ケース内に震度を判定する手段と、漏電を発生させる漏電発生部とを備えており、所定の震度以上の地震が発生した際に、漏電を発生させて漏電ブレーカを遮断することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置においては、感震センサによって地震の揺れを検出しているが、この感震センサは加速度センサ等のセンサであり、このようなセンサの感度には指向性がある。従って、特許文献1に記載の装置の場合、加速度センサが正しく作動するような基準状態に設置しなければ、正確な震度を検出することができない。
【0006】
しかしながら、一般家庭や事業所等の建築物におけるコンセントタップは、その形状や取り付けられている環境が様々であり、ケースを基準状態に取り付けることができない場合がある。
【0007】
これでは、ケースの設置状態によって当該装置で正確に震度が検出することができず、本来漏電ブレーカを遮断しなければならない震度であっても、漏電発生部が作動しないおそれがある。あるいは、遮断に至らない震度であっても過敏に作動するおそれがある。
【0008】
また、特許文献1に記載の装置では、漏電発生部が作動しないような震度の地震の発生で、建築物が傾く等の損傷を受けた場合であっても、漏電ブレーカを遮断することができない。
【0009】
本発明は、上記不都合を解消するために、建築物のコンセントタップの形状や、周囲の環境に対応させて、正確に震度を検出して震度に応じて適切に漏電ブレーカを遮断することができる感震式ブレーカ制御装置を提供することを目的とする。また、本発明は、震度に関わりなく、建築物が傾く等の事態となった際にも漏電ブレーカを遮断することができる感震式ブレーカ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の感震式ブレーカ制御装置は、コンセントタップを備えた建築物に保持されるケースと、コンセントタップに差し込まれる差込プラグと、前記コンセントタップのアース端子に接続されるアース端子と、地震による揺れを検知する地震検知部と、前記建築物に設けられた漏電ブレーカを作動させて電源の遮断を行うブレーカ作動部とを備え、前記地震検知部は、加速度により震度を検知する加速度検知部と、前記ケースが前記建築物に保持された際に、前記ケースの基準設置状態に対する角度を検知する角度検知部を有し、前記ケースは、前記建築物に保持された際の角度を修正して前記基準設置状態にすることが可能な角度修正手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の感震式ブレーカ制御装置によれば、コンセントタップの形状や、コンセントタップが取り付けられている箇所の周囲の環境によって、従来の装置ではケースを基準設置状態にすることができない場合であっても、角度修正手段によりケースを基準設置状態にすることができる。従って、本発明では、コンセントタップや周囲の状況にかかわらず、ケースを正常な姿勢に保つことができるので、地震検知部における震度の検知が正確に行われる。
【0012】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置によれば、角度検知部により建築物の倒壊等を検知する場合、角度修正手段によりケースを基準設置状態にできるため、常に正確にケースの角度を検知することができる。なお、加速度検知部と角度検知部は、角度検知機能付き加速度センサを用いてもよく、別個のセンサを用いてもよい。
【0013】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置において、前記角度修正手段は、前記ケースに設けられた雌ねじ部にねじ結合され、前記ケースに対して進退自在に形成された雄ねじ部を有し、前記ケースの表面側に露出し、前記ケースを前記建築物に保持した状態で表面側から回転可能であることが好ましい。当該構成によれば、ケースを建築物に保持した状態で、ケースの表面側からケースの角度を修正することができる。
【0014】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置において、前記角度修正手段は、前記ケースに設けられた凹部と、前記凹部に差し込むことで固定される突出部材であり、前記突出部材は、前記凹部に差し込まれる向きを変更することにより、前記ケースからの突出量を変更可能にしてもよい。当該構成によれば、ケースに凹部を設け、ケースからの突出量を変更できる突出部材という簡易な構成によりケースの角度を修正することができる。
【0015】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置において、前記差込プラグが前記ケースに着脱自在に形成されており、前記差込プラグに代えて、前記ケースとは別個に設けられ前記ケースから延びる延長差込プラグを装着可能であることが好ましい。当該構成によれば、差込プラグを装着することによって、ケースをコンセントタップに直接保持させることができる。また、差込プラグをケースから取り外し、ケースを建築物に直接保持させて、延長差込プラグをコンセントタップに差し込むことができる。
【0016】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置において、前記地震検知部の検知結果を記憶する不揮発性メモリからなる記憶部と、前記差込プラグが前記コンセントタップに差し込まれた際に蓄電され、電源の供給がない場合でも、所定時間、前記地震検知部による検知を継続する蓄電部と、前記記憶部における検知結果を消去するキャンセル手段とを備えていることが好ましい。当該構成によれば、ブレーカ制御装置をコンセントタップに接続した後に、ブレーカ制御装置を取り外して再度コンセントタップに接続する必要が生じた際、仮にブレーカ制御装置に振動が加わったり角度が許容範囲を超えた場合であっても、キャンセル手段により地震の誤検出及び誤記憶を防止することができる。
【0017】
また、本発明の感震式ブレーカ制御装置において、前記アース端子は、3穴のコンセントタップのアース用の穴に挿入可能なアースピンが着脱自在に形成されると共に、前記アースピンを取り外して2穴のコンセントタップのアース端子に導通ケーブルを介して接続可能に形成され、前記ケースは、前記建築物に対面する対向面に、前記導通ケーブルとの干渉を防止するケーブル用溝が設けられていることが好ましい。
【0018】
当該構成によれば、本発明の感震式ブレーカ制御装置を、コンセントタップが3穴であっても2穴であっても設置することができる。また、2穴のコンセントタップに設置する場合、ケースと導通ケーブルが干渉しないので、ケースを基準設置状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の一例であるブレーカ制御装置と、3穴のコンセントタップを示す説明図。
【
図2】本実施形態のブレーカ制御装置の内部構造を示す模式図。
【
図3】本実施形態のブレーカ制御装置を表面側から見た斜視図。
【
図4】本実施形態のブレーカ制御装置をコンセントタップに装着した状態を示す説明図。
【
図5】本実施形態のブレーカ制御装置において、アースピンを取り外してアース端子に導通ケーブルを接続した状態を示す説明図。
【
図6】本実施形態のブレーカ制御装置において、プラグ保持部を取り外した状態を示す説明図。
【
図7】
図6のブレーカ制御装置を壁取り付け用ケースに取り付けた状態を示す説明図。
【
図8】本実施形態のブレーカ制御装置を2穴のコンセントタップに取り付ける状態を示す説明図。
【
図9】
図8のブレーカ制御装置を2穴のコンセントタップに装着した状態を示す説明図。
【
図10】スペーサタイプの角度調整部を有するブレーカ制御装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、
図1乃至
図10を参照して、本発明の実施形態の一例である感震式ブレーカ制御装置について説明する。本実施形態の感震式ブレーカ制御装置(以下「ブレーカ制御装置1」)は、一対の差込プラグ用の穴31と、アース用の穴32が設けられた3穴のコンセントタップ30(
図1参照)、及び差込プラグ用の穴31とアース端子34が設けられた2穴のコンセントタップ33に装着可能な装置である(
図5参照)。
【0021】
図1に示すように、ブレーカ制御装置1は、大略直方体形状のケース2と、ケースから突出し、コンセントタップ30の差込プラグ用の穴31に差し込まれる一対の差込プラグ3と、アース端子4(
図2参照)に取り付けられたアースピン5とを備えている。アースピン5は、コンセントタップ30のアース用の穴32に挿入可能であり、アース端子4にねじ結合で固定されている(
図5参照)。
【0022】
ケース2は、合成樹脂の中空の成形品であり、コンセントタップ30に対面する対向面2aから差込プラグ3及びアースピン5が突出している。なお、差込プラグ3はプラグ保持部28に固定されており、このプラグ保持部28はケース2に着脱自在に装着されている。
【0023】
ケース2の内部には、
図2に示すように、地震を検知する地震検知部として、地震による揺れを検出する加速度センサ6(加速度検知部)が内蔵されている。この加速度センサ6は、角度検知機能を有しており、角度検知部としても機能する。
【0024】
また、ケース2の内部には、マイクロコンピュータ、メモリ等により構成される制御部7が内蔵されている。制御部7は、加速度センサ6の検出値から所定の震度の地震が発生したか否かを判定する判定部8と、後述するスピーカ13を用いて警報を発する警報部9とを備えている。また、制御部7は、地震検知部により検知された地震情報を記憶する記憶部10と、時間の計測を行うタイマ部11と、一対の差込プラグ3の極性を変更させる極性変更部12とを備えている。
【0025】
また、ケース2の内部には、地震発生時に警報を鳴らすためのスピーカ13と、停電が発生した際に所定時間制御部7及び各センサの作動を継続させる蓄電部14が設けられている。また、ケース2の内部には、建築物に設けられた漏電ブレーカ(図示省略)を作動させて電源の遮断を行うブレーカ作動部15が内蔵されている。
【0026】
また、
図3に示すように、ケース2の表面には、操作パネル16が設けられている。この操作パネル16には、リセットスイッチ17及びテストスイッチ18が設けられており、さらに電源が供給されていることを示す電源表示19と、所定の震度以上の震度の地震があったことを示す感震表示20と、スピーカ13用の穴が形成されている。
【0027】
図1に示すように、ケース2の側面には、ケース2をコンセントタップ30に差し込む際に持ち易いように表面が窪んだ把持部2bが形成されている。また、
図3に示すように、一方の把持部2bには、キャンセルボタン22(キャンセル手段)が設けられている。このキャンセルボタン22は、加速度センサ6により検知され、記憶部10に記憶された検知結果を消去する機能を有している。
【0028】
図1を参照して、ケース2の対向面2aには、ブレーカ制御装置1をコンセントタップ30に取り付けた際に、ケース2の姿勢を調整する角度修正部23(角度修正手段)が設けられている。この角度修正部23は、表面に雄ねじ部23aが形成されたねじ部材であり、ケース2に設けられた雌ねじ部24(
図2参照)にねじ結合されて対向面2aに対して進退自在に形成されている。
【0029】
また、ケース2の対向面2aには、
図1に示すように、アースピン5を使用しない場合に、コンセントタップ30のアース端子に接続される導通ケーブル35を接続するための第2アース端子25が設けられている。また、ケース2の対向面2aには、アースピン5を取り外した際に、アースピン5を保持するアースピン収納部26が形成されている。
【0030】
この第2アース端子25は、ケース2の内部でアース端子4に接続されており、導通ケーブル35を介して2穴のコンセントタップ33のアース端子34に接続可能に形成されている。また、第2アース端子25の周囲は、導通ケーブル35が接続された場合であっても、ケース2の対向面2aとコンセントタップ30の表面との間に導通ケーブル35が干渉しないようにケーブル用溝27が設けられている。
【0031】
本実施形態のブレーカ制御装置1は、
図4に示すように、建築物のコンセントタップ30に直接差し込まれてコンセントタップ30によって保持される。差込プラグ用の穴31が上下に2個設けられているコンセントタップ30では、通常下方の差込プラグ用の穴31に取り付けられる。
【0032】
ブレーカ制御装置1をコンセントタップ30に取り付ける際には、作業者は指で把持部2bを持って差込プラグ3及びアースピン5を、差込プラグ用の穴31とアース用の穴32に差し込む。
【0033】
ブレーカ制御装置1がコンセントタップ30に取り付けられると、制御部7は、ケース2の角度が基準設置状態に対して許容角度の範囲内であるか初期チェックを行う。ケース2が傾いており、基準設置状態からの許容角度であるプラスマイナス5°を超えると、電源表示19が点灯し、感震表示20が点滅すると共に、警報部9によってスピーカ13から警報音が発せられる。
【0034】
このように、初期チェックにおいてケース2の取付角度の異常が検知されると、制御部7は、通常の地震検知を行わないように設定されている。従って、作業者は、ブレーカ制御装置1をコンセントタップ30から取り外し、再度の設置作業を行う必要がある。このとき、角度修正部23のケース2からの突出量を調整し、ケース2が基準設置状態となるようにしておく。
【0035】
ブレーカ制御装置1をコンセントタップ30から取り外した後は、この状態でケース2の傾きをプラスマイナス5°以内に維持すると、電源表示19が点灯し、感震表示20は消灯状態、警報音も鳴らない状態となる。従って、作業者は、これらの表示と警報音により、容易にケース2を基準設置状態及び許容角度内にすることができる。
【0036】
ブレーカ制御装置1がコンセントタップ30に装着されると、
図4に示すように、ケース2の対向面2aの下方部分は、コンセントタップ30の表面から離れており、建築物の壁面Wと対面する。本実施形態のブレーカ制御装置1では、角度修正部23が設けられており、この角度修正部23の長さを対向面2aから壁面Wまでの間隔に調整することにより、ケース2を基準設置状態に保つことができる。
【0037】
ここで、基準設置状態とは、ケース2に内蔵されている加速度センサ6が正しく作動する状態をいう。本実施形態では、ケース2の対向面2aが垂直方向を向いている
図4に示す状態がこれにあたる。
【0038】
ここで、正しく設置されたブレーカ制御装置1をコンセントタップ30から取り外す必要が生じた場合は、作業者はキャンセルボタン22を押しながら作業を行うようにする。ブレーカ制御装置1がコンセントタップ30に取り付けられると、蓄電部14に電力が蓄電される。この蓄電部14に蓄電された電力によって、電源の供給がない場合でも、制御部7は約8秒間地震検知を継続することができる。
【0039】
ブレーカ制御装置1を取り外して、蓄電部14に電力が残っている8秒以内にケース2の角度が許容範囲を超えるか、ケース2に震度5に相当する振動が生じた場合、その情報が記憶部10に記憶される。このままの状態でコンセントタップ30に接続すれば、制御部7は停電時に地震等が発生し、その後電力が復旧したものと判断して、ブレーカ作動部15を作動させることになる。
【0040】
しかしながら、作業者がキャンセルボタン22を押しながら作業を行えば、記憶部10に記憶された情報が消去されるので、その後にブレーカ制御装置1をコンセントタップ30に接続した場合であっても、ブレーカ作動部15が作動することはない。
【0041】
次に、本実施形態のブレーカ制御装置1を2穴のコンセントタップ33に装着する場合について説明する。2穴のコンセントタップ33では、アース用の穴32が設けられておらず、一対の差込プラグ用の穴31と、差込プラグ用の穴31の下方に設けられたアース端子34を備えている(
図5参照)。
【0042】
本実施形態のブレーカ制御装置1を2穴のコンセントタップ33に装着する場合、
図5に示すように、アース端子4からアースピン5を取り外す。アースピン5は、アース端子4に設けられたねじ穴にねじ結合されているので、ねじを緩める方向にアースピン5を回転させることにより、アース端子4からアースピン5を取り外すことができる。
【0043】
また、ブレーカ制御装置1の第2アース端子25に導通ケーブル35の一端を接続する。この導通ケーブル35の他端は、コンセントタップ33のアース端子34に接続する。これらの接続は、各アース端子に設けられたビスによって行う。なお、取り外したアースピン5は、アースピン収納部26に収納することにより、紛失を防止することができる。
【0044】
この状態から、ブレーカ制御装置1の差込プラグ3をコンセントタップ33の差込プラグ用の穴31に差し込むことにより、ブレーカ制御装置1をコンセントタップ33に装着する。このとき、導通ケーブル35がブレーカ制御装置1の対向面2aに接続されているが、対向面2aにはケーブル用溝27が設けられているため、導通ケーブル35がブレーカ制御装置1とコンセントタップ33との間に挟まることがない。
【0045】
また、ブレーカ制御装置1を2穴のコンセントタップ33に装着する場合も、角度修正部23の対向面2aからの突出量を調整することにより、ブレーカ制御装置1を基準設置状態で保持させることができる。
【0046】
ここで、本実施形態のブレーカ制御装置1は、ケース2の上下を逆にしてコンセントタップ33に取り付けることができる。このとき、制御部7の極性変更部12が差込プラグ3の極性を検知して、プラスマイナスが逆の際に、正しい極性に変換するようになっている。
【0047】
また、本実施形態のブレーカ制御装置1は、
図6に示すように、プラグ保持部28を取り外すことにより、ケース2から差込プラグ3を取り外すことができるようになっている。これは、ケース2を直接コンセントタップ30,33に取り付けるのではなく、ケース2を壁に取り付けることができるようにするためである。
【0048】
この場合は、
図7に示すように、差込プラグ3に代えて、壁取り付け用ケース28aを装着する。壁取り付け用ケース28aには2穴用の延長差込プラグ28bが設けられている。この延長差込プラグ28bは、ケース2から延びてコンセントタップ33の差込プラグ用の穴31に差し込んで電源を確保する。この延長差込プラグ28bは、ケース2とは別個に設けられており、壁取り付け用ケース28a内で、通常は差込プラグ3に接続される端子(図示省略)に接続されている。
【0049】
次に、本実施形態のブレーカ制御装置1の地震時の作動について説明する。本実施形態のブレーカ制御装置1は、震度5の地震を検知した際にブレーカ作動部15を作動させて漏電ブレーカを遮断するように設定されている。また、本実施形態のブレーカ制御装置1では、ケース2の角度がプラスマイナス5°以上傾いた際に、建築物が倒壊したと判定してブレーカ作動部15を作動させるように設定されている。
【0050】
地震が発生する前の状態では、ブレーカ制御装置1は、
図4に示すように、一対の差込プラグ3がコンセントタップ30の差込プラグ用の穴31に差し込まれており、アースピン5がアース用の穴32に差し込まれることにより、コンセントタップ30に保持されている。また、ケース2は角度修正部23によって基準設置状態に保たれている。
【0051】
この状態では、操作パネル16の電源表示19のLEDが点灯しており、感震表示20のLEDは消灯している。なお、ブレーカ制御装置1が正常に作動するかどうかを確認するためにテストスイッチ18を押すと、以下に示す地震発生時と同様の作動が行われる。
【0052】
震度5以上の地震が発生した場合は、加速度センサ6によってその際に発生する加速度が検知され、判定部8によって震度5以上であると判定される。このように、判定部8によって震度5以上の地震が発生したと判定されると、制御部7は警報部9を作動させ、スピーカ13から警報を発する。また、制御部7は、同時にタイマ部11を作動させて、地震発生から所定時間(本実施形態では3分)経過したかを計測する。
【0053】
タイマ部11によって地震発生から所定時間経過したことが計測されると、制御部7はブレーカ作動部15を作動させて擬似的に漏電状態を作り出すので、漏電を感知した漏電ブレーカが遮断される。これにより、建築物内の住民が地震発生直後に避難した場合であっても、漏電ブレーカが遮断されるので、電気機器による火災の発生が防止される。
【0054】
ここで、タイマ部11により地震発生から所定時間経過した後にブレーカ作動部15を作動させるのは、仮に地震発生が夜であった場合、地震を検知して即座に漏電ブレーカを遮断すると、建築物内が暗くなり避難が困難となるためである。
【0055】
ところで、震度5以上の地震が発生した場合であっても、建築物内に被害がなかった場合は、警報の発生後、3分以内に住民がリセットスイッチ17を押すことにより、ブレーカ作動部15の作動を行わないようにすることができる。このように、地震発生から3分以内にリセットスイッチ17が押されると、制御部7は、ブレーカ作動部15の作動を行わないように設定されている。
【0056】
一方で、震度に関わりなく、何らかの原因によりケース2の角度が傾斜した場合は、角度センサの機能を有する加速度センサ6によってその角度が計測される。制御部7は、加速度センサ6の検出値がプラスマイナス5°以上である場合、建築物が倒壊したと判定して、この場合は即座にブレーカ作動部15を作動させて漏電ブレーカを遮断する。
【0057】
また、本実施形態においては、制御部7は、判定部8が震度5以上の地震が発生したと判定した場合、または加速度センサ6によってプラスマイナス5°以上の角度が検出された場合、これらの情報を記憶部10に記憶させている。
【0058】
また、本実施形態では、停電が生じた場合を想定して、蓄電部14によって停電発生時から8秒間の間、制御部7、及び加速度センサ6の機能を保持している。さらに、記憶部10は、本実施形態では電源が遮断された後でも情報を保持する不揮発性メモリとなっている。従って、仮に停電になった場合でも、記憶部10に記憶された情報は消去されない。
【0059】
仮に、停電発生時から8秒以内に震度5以上の地震が発生した場合、又はケース2の角度が5°以上傾斜した場合は、記憶部10にこれらの情報が記憶される。その後、停電が復旧した場合、制御部7は記憶部10に記憶されている情報から、震度5以上の地震があったか、プラスマイナス5°以上の傾斜が生じたかが判明し、いずれかの事態が生じている場合、即座にブレーカ作動部15を作動させて漏電ブレーカを遮断する。
【0060】
なお、上記実施形態において、判定部8は震度5以上、又はケース2の角度がプラスマイナス5°以上でブレーカ作動部15を作動させるようにしているが、震度及び角度は任意に設定することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、テストスイッチ18を所定時間(例えば2秒)長押しすることで、即座に漏電ブレーカを遮断する即時遮断機能を備えている。この即時遮断機能によれば、作業者がブレーカ制御装置1を新たに設置した際に、ブレーカ作動部15が作動するか即座にテストを行うことができる。また、建築物の住民が即座に漏電ブレーカを遮断する必要がある際にもこの即時遮断機能が有効となる。
【0062】
次に、本実施形態のブレーカ制御装置1の変形例について説明する。本変形例のブレーカ制御装置1Aは、
図8及び
図9に示すように、角度修正部23bが、ケース2の表面側からケース2の角度を調節可能となっている。
図8においては、ブレーカ制御装置1Aを2穴のコンセントタップ33に装着する際の状態を図示している。この場合、アースピン5はアース端子4から取り外され、第2アース端子25に導通ケーブル35が接続されている。
【0063】
図8及び
図9に示すように、角度修正部23bは、表面に雄ねじ部23cが形成され、ケース2の内部の雌ねじ部24に回転自在にねじ結合されている。角度修正部23bの頭部23dは、ケース2の表面側からドライバー等の工具で回転可能となるように露出している。当該構成によって、ケース2をコンセントタップ33に装着した後に、ドライバー等でケース2の角度を変更可能となるため、ブレーカ制御装置1Aの設置作業が容易となる。
【0064】
また、第2の変形例のブレーカ制御装置1Bとしては、
図10に示すように、角度修正部23を、ケース2に設けられた凹部2cに装着されるスペーサ29(突出部材)としてもよい。このスペーサ29は、筒状の部材であり、軸方向の中央付近にフランジ部29aが設けられている。
図10において、フランジ部29aよりもケース2側の第1軸部29bの長さが、反対側の第2軸部29cよりも長くなっている。
【0065】
凹部2cに第1軸部29bを差し込んだ場合、ケース2の端部から壁面Wに向けて第2軸部29cが突出することになる。逆に、凹部2cに第2軸部29cを差し込んだ場合、ケース2の端部から壁面Wに向けて第1軸部29bが突出することになる。第1軸部29bと第2軸部29cは長さが異なっているので、ブレーカ制御装置1Bの設置場所の状況に応じてどちらの軸部を凹部2cに差し込むかを選択して用いることができる。
【0066】
以上、本発明のブレーカ制御装置1Bの上記各実施例及び変形例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、加速度センサ6が角度検出機能付きのものとなっているが、これに限らず、角度センサを別個に設けてもよい。また、上記実施形態では、キャンセルボタン22をケース2の側面の把持部2bに設けているが、これに限らず、ケース2の上面や正面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B…ブレーカ制御装置、2…ケース、2a…対向面、3…差込プラグ、4…アース端子、5…アースピン、6…加速度センサ、7…制御部、8…判定部、9…警報部、10…記憶部、11…タイマ部、12…極性変更部、13…スピーカ、14…蓄電部、15…ブレーカ作動部、16…操作パネル、17…リセットスイッチ、18…テストスイッチ、19…電源表示、20…感震表示、22…キャンセルボタン、23,23b…角度修正部、25…第2アース端子、27…ケーブル用溝、30,33…コンセントタップ、31…差込プラグ用の穴、32…アース用の穴、34…アース端子、35…導通ケーブル。